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2025年04月21日
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【男から告白された夢を見たツンデレ】

2010年03月25日
 夕暮れ迫る校舎裏で、気がつくと、ボクはタカシに話しかけられていた。
「……梓。あの、今さらなんだが、その……ええっと、なんだ。アレだ、……分かるな?」
「分かんないよ。あっ、アレって……昨日体育の着替え覗いたのやっぱりタカシなの!?」
「おまいは俺をなんだと思っているのだ。昨日は覗いてないぞ」
「昨日『は』?」
「ん、え、あ、その、言葉のアヤだ。本当に。……じゃなくて! 俺の話を聞け!」
「怪しいなぁ……で、なんなの? ボク、早く帰りたいんだけど」
「……あー、おまえ鈍いからとっとと言うな。……好きだ。俺と付き合え」
「え……えええええ!?」
「うるさい」
「え、でも……え!? ボクだよ、タカシがいっつもボクっ娘ボクっ娘言って馬鹿にしてるボクだよ!?」
「うるさい黙れ。惚れちまったんだ。諦めろ」
「え、あれ……ドッキリ?」
「なんでやねん」
「じゃあ……夢?」
 夢だった。
「……あぅぅぅぅ」
 両手で顔を押さえて、今見た夢のあまりの恥ずかしさに思わず身悶える。
「う、うう~……なんだよなんだよ、あれじゃボクがタカシに好きって言って欲しいみたいじゃんよぉ……」
 ああもぉ、自分で言ってて頬が熱くなってくるじゃん。タカシのばか。

「……あの、梓たん? 何か怒ってらっしゃいませんか?」
「別に!」
 いつもみたいにタカシと一緒に登校する。するけど、さっき見ちゃった夢のせいか、タカシの顔をまともに見れない。
「……ひょっとして、昨日体育の着替え覗いてたの、ばれた?」
「ええっ!? だって、昨日はしてないって言ったじゃん!」
「え? いや、んなこと俺一言も言ってないぞ?」
「あ……」
 それは夢の話だった。そこから連想して、またタカシのばかの告白を思い出しちゃう。
「そもそも俺は覗きなどしてなくて、ただ女体の神秘を探ろうとしただけなので先生に告げ口するのは勘弁して欲しいというか……梓?」
「な、なに?」
「顔真っ赤だが……調子悪いのか?」
「わ、悪くない悪くない! へーきだよ!」
 タカシの心配そうな顔が迫ってきたので、ボクは慌てて両手を振って平気なことをアピールした。
「そうか? よく分からんが、無理すんなよ。学校で調子悪くなったらちゃんと言えよ」
 そう言って、タカシはボクの髪を優しくなでた。
 ……なんだよ。普段いじわるなことばっかするくせに、なんでこういう時だけ優しいんだよ。ずるいよ、タカシ。
「子供のせいか、ボクっ娘の髪はほわほわで気持ちいいなぁ」
「子供じゃないよ、同い年だよっ!」
 前言撤回。やっぱタカシはいじわるだ。
「これはご冗談を。俺と同い年と言うなら、ちょっとは大人らしい所を見せてみるべし」
「ど、どっからどこ見ても大人だよ? ほ、ほらほら、うっふーん!」
 ボクは少しだけ肩をはだけて、タカシに見せ付けた。これでタカシもメロメロメローンになるはず!
「ちっともメロメロメローンにはならないです」
「ええっ!? ていうかなんでボクの考え分かるの!?」
「お前の考えてることくらい、全部まとめてまるっとお見通しだ」
「じゃ、じゃあ今考えてること言えよっ!」
「子供か」
「いーから言えよ、ほらっ!」
「んーと、目の前の人が大好きだなぁ、抱っこしたいなぁ、とか」
「な、ななななんでだよっ! そんなこと1ミリも考えたことないよっ!」
 ……1ミリってのは嘘だけど。
「しまった、そりゃ俺の考えだった」
「え……えええええっ!? それってそれってそれって、タカシがボクをボクをボクをす、すす……好きって、好きってコト!?」
「動揺しすぎだ」
「するよ、しまくりだよ! ロマンチックが欠片もない告白されたよ、どうするの!?」
「安心しろ、半ば冗談だ」
「…………」
「ありゃ、梓がフリーズした。再起動しないと」
「……もーっ!」
「しまった、再起動に失敗して牛になった」
「牛じゃないよっ! そんな冗談ダメだよ許せないよ乙女心を粉砕したよっ!」
「じゃあ今日から乙女心の変わりに男心をその小さな胸に宿せ。大丈夫、ボクっ娘なら立派なボクっ男になれる。太鼓判押そう」
「そんな太鼓判貰っても嬉しくないし、小さなってのは余計だよっ!」
「そう怒るでない。言ったろ、半ば冗談と」
「だから、そんな冗談は……」
「『半ば』だ。残りはどうだろうな」
「え……え? それって……え?」
「さって、ボチボチ学校着くな。とっとと行って温まるべ、梓」
 目を白黒させてるボクを置いて、タカシは先に行ってしまった。
「あっ、待ってよタカシ!」
 小走りでタカシの横に並んだけど、タカシはボクの方を見ようとしない。
「はぁはぁ……あのさ、さっきの話だけど、えと……タカシ?」
「なんですか」
「なんでずっと向こう見てるの? 人と話す時はちゃんと顔見ながら話さないとダメだよ?」
「寝違えたんだ」
「……ひょっとして、照れてるの?」
「……ふん」
 タカシの耳がどんどん赤くなっていく。
「……えへへっ♪」
「うわっ!?」
 その耳を見ているうちになんだか嬉しくなって、ボクは思わずタカシに腕に抱きついていた。
「あ、あの、梓たん、気のせいか俺の俺の腕に抱きついているような」
「気のせいじゃないの?」
「そ、そっかな」
「そうだよ♪」
 珍しくうろたえるタカシにくっついたまま、ボクらは校門をくぐった。

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【「(友達として)ずっと一緒にいてくれ」と言われて勘違いするツンデレ】

2010年03月23日
 正月だけど、暇だ。あんまり暇なのでボクっ娘に電話して部屋に招待する。
「なんだよぉ……ボク、コタツで寝てたのにぃ」
 眠そうに目を擦りながら、梓は面倒くさそうに言った。
「ダメだぞ、正月だからってだらだらコタツ入ってたら。あまつさえミカンなんて、ベタすぎて芸がないぞ」
 そう梓をたしなめ、コタツに入ったままミカンを口に入れる。甘くておいしい。
「言ってる本人がそのものズバリの行動してたら説得力ないよぉ」
 いそいそとコタツに入り、梓は当然のように机上のミカンの皮をむいた。
「これ甘い? ボクすっぱいの苦手なんだ」
「激辛。子供が食ったら発狂死する」
「辛いミカンなんて聞いたことないよ! もー、タカシは嘘ばっかついて……えんま様に舌抜かれるよ?」
「さるスジから聞いた話によると、閻魔様は幼女だとか。となると、ちっちゃな子に舌を引っ張られるのか。……いいな!」
「よくないよ! どっからそんな嘘話仕入れてきたんだよ!」
「なんか、夢で。閻魔様がロリぃ声で抱っこしてーとか言ってたような」
「……タカシってさ、時々本当に頭が可哀想な人みたいだよね」
「梓のくせに失礼な」
 またほっぺでも引っ張ってやろうとか思ったが、面倒なので梓のミカンを奪取するだけにする。
「ああっ、ボクのミカン! 取んなよぉ!」
「正確には俺の、な。さらに正確に言うなら母さんの田舎から大量に送られてきたモノだから……ええと、梓、俺のばあさんの名前なんてったっけ?」
「そんなのボクが知ってるわけないだろ!」
「ダメだぞ、そんなんじゃ(友達として)俺とずっと一緒にいる資格がないぞ」
「えっ……えええええ!」
「正月からうるさい」
「だ、だってだってだって! さっき! ずっと一緒とか!」
「さういえば、昔そんなゲームあったな。ずっといっしょ。やったことないけど」
「んなことどーでもいいよっ! ず、ずっと一緒って、そ、それって……そういうことなの?」
「そうだ」
 なんのことか一切分からないが、何か問われたらとりあえずうなずけと昔恩師に教わったので強くうなずく。
「わ……わわ、わわわわわ!」
 すると梓の口からわが一杯出てくるは顔真っ赤になるはで愉快痛快。
「わ、わかったよ! ボク、タカシが恥ずかしくないよう頑張るよ! ……だ、だから、これからずっと一緒……なんだよね?」
「うむ!」
 変わらぬ友情を確かめるように、強くうなずく。
「ね、ねぇ、式はどうする?」
「む」
 疑問形が来た。どうしよう。
「和式? 洋式? ……あ、でもまだ早いかな、ボクら学生だし」
「いや、そんなことはないと思うぞ」
 和式とか洋式ってことは、便所のことだろう。便所行くのに早いとかはないだろう。
「そ……そう?」
「んむ。ちなみにウチは和式だ」
「和式かぁ、文金高島田だね。……似合うかなぁ」
 変な言葉が出た。文金高島田って何? 人名? ……いや、なんか似合うとか言ってるし、髪型、もしくは服?
「どしたの? なんかぼーっとして」
「あ、いや、梓の文金高島田を想像してて。……うむ、似合うんじゃないか?」
「……え、えへへ、……そう?」
 梓はもう幸せすぎて溶けちゃうんじゃないかと思うくらいほにゃほにゃの笑顔を見せた。
「……あ、あのさ、……ちゃんと幸せにしてよね?」
「ははっ、なに言ってんだ。まるでこれから結婚するみたいな台詞だな」
「まるでって……ちょっとタカシ、ボク、少し質問があるんだけど、いっかな?」
 ほにゃほにゃ笑顔は一瞬で消え、梓の目尻が釣りあがる。なんかヤバイこと言ったみたいですよ、俺。
 で、追求されるうち、適当言ってたのが全部ばれた。
「まったくまったくまったくタカシはぁ! 適当なことばっか言って! もうもうもう!」
「日本語ラップ、もしくは牛ですね」
「ラップじゃないし、牛じゃないよっ! タカシのばかぁ、反省しろっ!」
 大層怒られました。次はばれないよう頑張る。
「言っとくけど、ばれたことを反省すんじゃないからねっ!」
 時々梓は嫌になるくらい鋭い。

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【ツンデレが「5分レスがなかったらタカシはボクのもの」ってカキコしたら】

2010年03月20日
 急な用事で出かけ、帰ってくると梓が俺の部屋でパソコンをいじってた。面白そうなので、ドアの影からこっそり観察することにする。
「えっと、5分レスがなかったらタカシはボクの、っと。……これでいいのカナ?」
 どうやらどっかの掲示板に書き込んでいるようだが…何やってんだアイツ。
「……ふぅ。こんなの書いてもなぁ。折角遊びに来てやったっていうのに、どこ行っちゃったんだよ、ばか」
「ここにいます」
「うっひゃあああ!」
 気配を消して梓の後ろからそっと声をかけたら、悲鳴をあげられた。
「びっくりした?」
「は、はぅはぅ……た、タカシ?」
「はい、そうです。5分レスがなかったらボクっ娘の所有物になるタカシです」
 梓の顔が真っ赤になった。
「ち、違うよ? そんなの書いてないよ? 気のせいだよ? 聞き間違いじゃないの?」
「ほほぅ、ならディスプレイに『5分レスがなかったらタカシはボクの』という文字が踊っているのは、俺の気のせいかな?」
「気のせいだよっ! 見ないでいいよ! 見るなばかっ!」
 俺とパソコンの間に入り、梓はディスプレイを隠してしまった。
「いや、マイッタね、どうも。こうまで梓に愛されてるとは」
「あ、愛してなんかないよっ! 全然だよ! ホントだもん!」
 今世紀最大に顔が赤まった状態で言われても、信じる方が難しい。
「いやはや、どうしてそんな俺の嗜虐心をそそるかね、このボクっ娘は」
「知んないよっ! そそってなんかないよ! いーから出てけよっ!」
「ここ、俺の部屋。そして、お前は俺のごちそう」
「た、食べるの? ボク……食べられちゃうの?」
「……なんか嬉しそうだから食べない」
 期待に胸を膨らませてる(物理的にはちっとも膨らんでない)梓を放ってベッドに寝転び、落ちてた漫画を読む。
「嬉しくない、嬉しくないよ! あー、嫌だなぁ。……食べられちゃうカナ?」
「食べないよ」
「ここまで言ってんだから食べろよッ! ボク、おいしーんだぞ!」
 面白いネタで一日中からかえて、楽しかったです。

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【髪型を馬鹿にされ悪魔になったツンデレ】

2010年03月20日
 ボクっ娘が家に遊びに来たので、からかおう。
「お前の髪型、いっつもショートカットな。この少年的髪型に飽きがこないのか?」
「カッチーンときたよ! どっからどー見ても女性的要因でいっぱいのボクにそんなこと言うなんて、許せない気持ち満載だよ!」
 軽い気持ちでボクっ娘の髪をいじったら、なんか嫌な予感。
「許せない気持ちMAXだよっ! うぬぬぬぬ……やーっ! 変身、悪魔verのボクだよっ!」
 変な掛け声と同時に稲光が走り、光が収まるとそこに悪魔っぽい衣装に身を包んだ梓がいた。
「嫌な予感はしていたが、まさか悪魔になるとはお兄さん予想だにしていなかったよ。褒めてやろう」(なでなで)
「わふわふ♪ ……はっ、違う違うよっ! 喜んでないよ、喜んでないよ!?」
「しっぽをふるでない」
「ふってないよ! いや悪魔だからしっぽあるけど、ふりふりしてないよ! でもあんまり見るなよ!」
 先が尖ってるしっぽを両手で押さえているが、押さえ切れないのかしっぽがふりふり動いていた。
「しっぽをふるために悪魔になったのか?」
「あっ、そうだよ悪魔に変身したんだよ! 悪魔の力でタカシを呪うよ! えっと、悪魔力を使うにはいけにえが……ねータカシ、この辺に野良ヤギとかいないかなぁ?」
「頭が少々アレな悪魔ならいるが、ヤギはいないなぁ」
「アレとか言うなよっ! うー、いけにえはないけど、頑張って悪魔力を使ってタカシを呪うよ! うにゅにゅにゅにゅ……」
 一生懸命うなってる所悪いが、なんか眠くなってきた。
「んー……なんか眠い。梓、膝枕して」
「しないよっ! 呪ってるんだから、じっとしててよ」
「任せろ!」
 望まれた通り、極めて小刻みに震える。
「タカシ、超高速のおじいちゃんみたい」
 爺呼ばわりに少々ショックを受ける。
「さすがは悪魔、嫌がらせが上手い」
「えっ、えっ? どれ? おじいちゃんってセリフ? ……いや、超高速かな? やーい超高速」
 やっぱりこの悪魔は少々アレだと思う。だけど、ちょっとは乗ってあげようと思う俺は優しいのかもしれない。
「亜光速ぐらい速いゼ!」
 かっこいいポーズで歯を輝かせる。どうだ?
「タカシ、ばかみたい」
 折角乗ってやったというのに馬鹿呼ばわり。超ショック。
「馬鹿の塊みたいな奴にバカと言われるのは事の他効くなぁ」
「ばっ、馬鹿の塊ってなんだよ! タカシ失礼だよ、失礼ちゃんだよ!」
「失礼ちゃんって何ですか」
「そんなのどうでもいいよっ! やっぱりタカシは一度呪われた方がいいよ! うにゅにゅにゅにゅ……えいっ!」
 両手を前に突き出したので、呪ったとみた! よし、呪われるぞ!
「ぐはあっ! いかん、寿命が120年縮まった」
「そんな呪いしてないし、そんな縮んでたら即死だよっ! なんで吐血してるんだよぉ!?」
「いや、雰囲気で。呪われたら血くらい出すのが礼儀かな、と」
「そんな礼儀ないよっ! ボクがやってる呪いは『ボクの髪型を褒める』って呪いなんだから、血なんて吐く必要ないよ」
「じゃあ何を吐けばいいというのだ」
「何も吐くなっ! なんでそんな吐きたがるんだよっ! ふつーにボクの髪型を褒めればそれでいいの! ほら、褒めて褒めて」
 褒めればいいようだが、なんだか褒めたくない。
「うーん、この毛並みたまらんなぁ。ほお擦りほお擦り……いてて、爪を立てるな」
「それタカシんちの猫だよっ! こっちこっち、こっちだよ! 悪魔っぽいボクの髪褒めるの!」
「いかん、急に失明した。何も見えないのでこれでは褒められない」
「いきなり失明なんてしないっ! これだよ、これ褒めるの!」
 右手を梓の頭にもってかれた。
「ほらほら、どう? さらさらでしょ?」
「うーん、さらさらというよりぺたぺただなぁ」
「そこボクのおっぱいだよ!? なんで左手でボクのおっぱい触ってるんだよぉ! ていうかぺたぺたって言うなっ!」
「隙あらばエロい人なので、つい」
「つい、じゃないよっ! 反省しろ、ばかっ! あと髪褒めて!」
 ここまでやってもまだ髪型を褒めろと言うか。少しばかり感心したので、褒めることにする。
「分かった。俺も覚悟を決めた。やる」
「う、うん。さぁ、どうぞ」
 軽く咳払いして、梓に向き直る。
 ……ええい。たかが髪を褒めるだけで、なんでこんな無駄に緊張しなきゃいけないのだ。
「え、えっと、だな」
「は、はい」
 で、なんで梓の顔まで赤らんでんだ。これじゃ告白みたいじゃないか。……って、何を考えてんだ俺は! 言うぞ、褒めるぞ! それで終わり!
「その、お前の髪って……」
「な、なに?」
「……んーと、その、だな。……まぁ、なんだ。見る人が見れば悪いと思わないような気がしないような気がするような」
「長いよ! もっと短く、ぱしっと、ね?」
「も」
「短すぎるよ! “も”なんてさっきのセリフに入ってなかったし!」
「あーもーいいじゃん。なんとなく分かるだろ? それより、どっか遊びに行ったりとか」
「ダメだよ、ちゃんと褒めるまで逃がさないよ! そうしないと、傷つけられた乙女のはーとは修復しないんだよ!」
「……傷つく?」
「へ?」
「そこだ。そこがそもそもおかしい。何故に傷つく必要がある」
「え、だってタカシがボクの髪型が男の子っぽいって言うから、ボクの乙女回路はズタズタに……」
「いや、俺は馬鹿にしたつもりはないぞ。男の子っぽくても、梓にはその髪型が似合ってるんだ。傷つく必要ないんじゃないか?」
「…………」
「ん、どした?」
「……褒められたよ」
「え、あ」
 しまった。話の流れ上、つい。
「……そっか、タカシはボクの髪型、似合うと思ってくれてたんだ」
「え、いや、そりゃ、……まぁ」
「……ならいいやっ♪ 悪魔もーど、しゅーりょーっ」
 また稲光が走り、視界が戻るといつもの梓がそこにいた。
「いや~、タカシがそんなこと思ってたなんて、ボク知らなかったよ~」
 いやらしい笑みを浮かべながらすりよってくる梓に背を向ける。
「ニホンゴ、ワカリマセン」
「……タカシってさ、照れ屋だよね~」
「うるさい帰れっ! タカシさんはおねむですっ!」
「あははははっ、タカシ可愛い♪ むぎゅ~♪」
 いつもと立場が逆転してしまい、背中から抱きしめられて困る俺だった。

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【チェーンソー振り回すツンデレ】

2010年03月18日
「たまにだけどね、チェーンソーとか振り回したくなるよね」
 とある休日、家に来たボクっ娘が突然猟奇趣味を告白なんてしやがったので、口に含んだコーヒーがどばどばこぼれた。
「うわっ、汚いなっ! 何やってんだよ!」
「す、すいません、キレイにしますからどうかチェーンソーでバラバラだけは勘弁してください」
「やんないよっ! 人をなんだと思ってんだよっ!」
「快楽殺人者」
 ほっぺを引っ張られて痛い痛い。
「まったくもう、人を危ない人みたいに言ってぇ……そうじゃなくて、たまにああいう危ないの振り回したくなるんだよ。実際にはやんないけどね」
 ぶちぶち言う梓と一緒にこぼれたコーヒーを掃除する。
「いや、チェーンソー振り回したいなぁ、目の前の血がつまった肉袋を切り刻んだらどれだけ楽しいのかなぁ、とか笑いながら、しかし目は冷め切ったままで言ってたし、快楽殺人者なのかなって」
「前者はともかく後者は言わない言ってない言うわけないよっ! 怖いよっ!」
「そう言う梓の手にチェーンソーが! 切り刻まれる俺! 昼食は俺が材料なのか!?」
「チェーンソーないし切り刻まないしお昼ご飯はチャーハンの予定だよっ!」
「手抜き」
「うっ……いっ、いいじゃん、作ってあげてんだし。てゆーか感謝される立場なんだよ、ボクは」
 梓は休日になると俺の家まで来て飯を作る奇特な人なので、そんなことを言われているのだと思う。
「感謝なあ……じゃ、どっか買い物でも行くか? おごってやるよ」
「えっ、いいの? 珍しいね、何買ってもらおっかな? ね、何円までいい? 300円?」
「貴様は俺の財力を舐めた。なので貴様を舐める」
 べろりと梓のほおを舐めたらなんだか甘い。
「うわわわわっ! な、なにすんだよっ!」
「頬舐め。なんか甘かったような」
「人のほっぺ舐めちゃダメだよ、ばかっ!」
「そんなこと言われたの初めてだ」
「ボクもだよ。なんでこんなこと注意しなきゃいけないんだよ……」
 うな垂れながらも、梓の頬はちょっと赤かった。
「そりゃ、梓が俺の財力を舐めたからだ。お前が思っている以上に小金を持ってるぞ。たぶん」
「へー? それだけ言うならさ、高いの買ってもらうよ?」
「任せろ。どんなチェーンソーがいい?」
「なんでチェーンソーに決定してるの!?」
「いや、チェーンソーの他に簡単に人をバラバラにできる凶器を知らないもので。勉強不足でお恥ずかしい」
「なんでそこまでボクを怖い人にすんだよっ!」
「嫌がるかなーって。てへ」
 誤魔化すために小首をかしげ梓のご機嫌をうかがう。
「タカシ、首が取れかけのロボットみたい」
 超ショック。
「もう寝る。おやすみ」
「どっ、どこに潜り込んでんだよっ、そこボクのスカートの中だよ!?」
「なんだ、道理で狭いと思った。ところで梓、最近なんか本買った? もし買ったなら俺にも貸して」
「いいから出ろ、ばかっ! なんでボクのスカートの中で世間話してんだよっ!」
「スカート以外となると、パンツくらいしか。しかし、パンツの中に潜り込むには多少抵抗が」
 いっぱい叩かれたので魅惑の三角地帯から頭を抜き出す。
「タカシのえっちえっちえっち! ド変態! ぱんつまにあ!」
「大丈夫、下着だけでなく中身も大好きです。いやむしろ中身の方が!」
「そんなこと告白されても嬉しくないよっ!」
「ところで、もう昼です。腹減った。梓、ごはん」
「ボク怒ってんだよ、作るわけないよっ!」
「む、それは困る。週に一度の楽しみを奪われては、もう何もやる気がしない」
 ぐったりと床に寝そべり、やる気のなさを体で表現する。
「う……そ、そんなボクのご飯好きなの?」
「好き。超好き。結婚してください」
「すっごいやる気のないプロポーズされた!?」
「チャーハンとなら、きっと生涯を共に歩けると思う」
「ボクじゃなくてチャーハンと結婚する気だったの!?」
「オムライスでも可。あ、オムライス食べたいオムライス。梓、作って」
「……はぁ、タカシ見てたら怒ってるのバカらしくなってきたよ。いーよ、作ったげるよ」
「やたっ。さすがは梓、給士のボクっ娘とはよく言ったものだ」
「そんなこと言われたことないよっ!」
 怒りながらもエプロンを装着する梓は、いい奴だと思う。

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