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2024年11月23日
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【妹の首筋に手を押し当てたら】

2014年11月26日
 登校中、隣を歩く妹、みゆの首筋になんとなく手を押し当てる。
「にゃー?」
 くりくりとした目がこちらを見返してきたので、意味もなく『初めまして』的な視線を返す。
「にゃー! 初めましてじゃないよ、毎日会ってるよ、エンカウント率極めて高しだよ!」
 俺の妹はすごい意思伝達能力を持ってるなあと思いつつ頭をなでる。
「にゃにゃにゃ……にゃふ~」
「ところでみゆきちさん」
「にゃむきち!」エッヘン
「最近寒いですね」
「おや? こりは突然吹雪になって洞窟にお兄ちゃんと一緒に閉じ込められて裸で抱き合って一晩過ごして一線超えるフラグ……?」
「勘違いが過ぎる」ナデナデ
「しっぱい!」テヘペロ
「この猫あざといな」ナデナデ
「ふにゃー」
「じゃなくて。寒いですねと言ってます」
「にゃ。そだね。朝晩の冷え込みも厳しくなってまいりましたね」
「うちの妹が急に仰々しくなった」
「で? 寒いとどーなんの? 寒さのあまりみゆの胸元に手をつっこんでもみもみして暖を取りたいとか? ばっちこいですにゃ!」フンス
「違う。フンスじゃねー」
「にゃー!」(ふんがい)
「怒るな」ナデナデ
「にゃふ~」(やすらか)
「ぼちぼちコタツ出そうか」
「お兄ちゃんが具現化魔法を」
「妹の想像力には眼を見張るものがあるが、そうではなく、押し入れからコタツを取り出して設置しましょうかという意味合いです」
「にゃんだ。ただ、その提案には賛成! なぜならねこはコタツで丸くなるものだから!」
「ねこなのか」ナデナデ
「妹という噂なのに!」プンスカ
「こいつ適当だな」ナデナデ
「にゃふー」(満足げ)
「じゃ、帰ったら出しましょうね」
「にゃんと! 喜び庭駆け回るよ!」
「犬か」ナデナデ
「妹です」ニャー
 にゃーと言いながら妹と言ったらぶれるなあと思ったが、言うと怒られるので黙ってなでておいた。
「ネコミミ妹だからそれでいいの! まったく、こりだからお兄ちゃんは! ふんとにもう!」
 黙ってても大体ばれるので困るなあと思った。

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【みゆ とある秋の日】

2012年10月07日
「秋ですね」
「ふにゃ」
 朝晩めっきりもっきり冷えだした今日この頃、俺は妹(猫系)のみゆと膝を突き合わせて会話していた。
「秋といえば」
「妹可愛がり!」
「初耳です」
「というわけで、みゆを可愛がってはいかがかにゃ?」
「いいえ」
「いいえ」
「兄の拒否を更に拒否とな。じゃあ仕方ない、可愛がります」
「なんでもやってみるものですにゃ!」
 というわけで、今日はみゆを可愛がる日になった。
「で、何をして可愛がられたいですか」
「sex」
「もうちょっとソフトな方向で!」
「せっくす」
「言い方を柔らかくしろと言ったのではない」(なでなで)
「ふにゃ」
「もうちょっと、こう、一般的な兄妹が行う範囲のことでお願いしたいのだけれど」
「極めて一般的の範疇だよぅ! ふんとにもう!」
 兄の知らない間に世間が随分とロックになっていた。
「でもまー、お兄ちゃんの頼みは断れないよ。見つかっても通報されない方向で考えるよ」
「あ、一般的ではあるが捕まりはするんだね」
「うーにゅにゅにゅにゅ……」
 みゆは両手を組み、どうするか考え込んだ。眉間にシワまで寄せて、随分と真剣に考えているようだ。これは邪魔をしたくなる。
「とやっ」(なでなで)
 というわけで、とりあえず頭をなでて思考の邪魔をしてみた。
「にゃーにゃー♪」(嬉しい)
 すると、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ばれた。
「邪魔をしたのですが」
「みゆは喜びました!」
「おかしな話だ」
「もっとなでて?」
「はあ」(なでなで)
「ふにゃー♪」(嬉しい)
「で、何か思いつきましたか」
「肉の交わりを断たれたら、もうみゆは何も思いつかないよ」
「肉て。もうちょっと何かあるだろうに。遊園地に行くとか、水族館に行くとか、動物園に行くとか」
「どこそこへ行くばっかり……そんなにどっか行きたいなら一人でどこにでも行っちゃいなさい!」
「なんで兄が怒られてるの?」
「出かけるのめんどいの! 家でお兄ちゃんとごろごろしてたいの! ごろごろしませんか! か?」
「はい」
 というわけで、ごろごろすることになった。のだが。
「ぶにゃー♪」
「これはごろごろではないと思う」
 妹は布団に俺を入れると、自分もその中に入って兄に抱きついている。
「んじゃ、ごろごろするよ?」
 そしてその状態のまま転がり出した。自然、抱きつかれてる兄も転がり、そして家は狭いのでやたらと身体が周囲の家具にあたる。
「ううううう……お兄ちゃんにいじめらりたぁ……」
 そしてタンスに頭をぶつけ、みゆが涙目になっていた。
「言いがかりだ! その証左に、ほら兄にもたんこぶが!」
「いぎあり! 自分が犯人でないと示すため、あえてつけたに違いないよ! ばばーん!」
「否! これはみゆが兄に抱きついて転がったため、タンスにぶつかってついた傷だ! いわば、これ自体がみゆが犯人である証拠!」
「しまった、ばりた!」
「罰としてなでます」(なでなで)
「罰なら仕方ないですにゃあ」(すりすり)
 と、ぐだぐだ話したり寝たりすりすりしたりしてたら一瞬で休日が終わったので、時間って野郎は平等じゃないなあと思った。

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【泳ぎみゆ】

2012年08月11日
「あっちいので泳ぎたいです、お兄ちゃん!」
 ここ数日の暑さにやられ床でごろごろしてたら、妹のみゆが寄ってきてごろごろ真っ最中の俺の腹の上に座り込んできた。
「なるほど、話はよく分かった。だが、先立つものがないのだよ」
「プール行くお金くらいあるよ? ええと……じゃじゃーん、みゆ貯金ー!」
 じゃじゃーんな効果音も高らかに、みゆはポケットから小銭を取り出した。
「じゃあ行ってらっしゃい」
「お兄ちゃんも行くのー! みゆが一人で行って、頭悪そーな人にさらわれたらどうするの!?」
「みゆは超者なので無理だと思うが……もしそうなったら、世を儚んで自殺するorテロリストとして日本という国を完膚なきまで粉砕した後に自殺する」
「一瞬で何もかもを諦めたよこの人!? じゃなくて、そうならないようにお兄ちゃんがついてくの!」
「そうだな、暑いし死にたくないしそれが一番いい案だな」
 そんなわけで、近所の市営プールへやってきた。やはり誰しも暑いのだろう、人でごった返していた。
「それじゃみゆ、後で」
「了解であります、お兄ちゃん!」
 ばびっと敬礼して、みゆは女子更衣室へ向かっていった。それを追跡する俺。見つかる俺。つまみ出される俺。しょうがないので着替えてぼやーっと待つ俺。
「お待たせですだよ、お兄ちゃん」
 そんな俺まみれの俺に、声がかけられたので振り向くと、水着に着替えたみゆが立っていた。
「にゃはー……どうかにゃ? 可愛い? ぐっとくる? 押し倒したくなる? そこの陰でする?」
「質問が色々問題ありすぎです!」
「みゆが可愛くないって言うの!!!!?」
「大変可愛いです」
 どうして土下座しながら褒めなければならないのか。
 ……まあ冗談はともかく、身内贔屓を差し引いても妹は可愛いのではなかろうか!
「特に真っ赤なビキニに覆われた極小の胸がたまらない」
「お兄ちゃんお兄ちゃん、声に出てるよ?」
「わざとなんだ」
「ぬぬ……本来であれば怒るシーンなのだろうけど、みゆはお兄ちゃんがぺたんこ好きの変態やろーと知っているので怒れない! それどころか喜ばしい!」
 妹は基本的に声が大きいので、家族連れやら恋人たちが僕を犯罪者を見る目で見るので死にたい。
「にゃにゃっ、お兄ちゃんがまとうオーラが負に!? 出ろ~元気出ろ~」
 にゅろにゅろと手を動かし、珍妙な呪いをかける愛しの妹。知り合いじゃなければダッシュで逃げてる。
「まじなわれた結果、元気が出た」
「まじなった甲斐があった!」
 どんな会話だ、と思いながらも感謝の意を込めてみゆの頭をなでる。
「まじなってくれてありがとうな、みゆ」
「ふにゅにゅ……みゆ、照れ照れだよぅ」
 なでられて嬉しそうなみゆを引きつれ、とりあえず波が押し寄せるプールへ向かう。
「解説しよう! このプールは人工的な波が常に押し寄せており、この施設の中でも一二を争う人気プールだ!」
「そりはつまり、人が多い&波が押し寄せるので、うまいことお兄ちゃんに抱きつき放題って解釈でいいのかにゃ?」
「いいえ」
「そんにゃー……」
「代わりに兄が妹に抱きつくスポットとなっております」
「よっしゃこい! どさくさに紛れてみゆの尻やら乳を揉めばいいよ!」
「女子として最低限の恥じらいが欲しいです」
「にゃ、つい本能が先走っちゃったよ。ごめんね、お兄ちゃん。次からは恥ずかしがるよ」
「宣言されると萎えます」
「うんとー……それ以上近寄ると舌を噛んで死にまする!」
「極端に過ぎると思う。口調の割りに水着だし」
「もー! お兄ちゃん文句ばっかだよ! モンクだらけだよ! こぶしこぶしこぶし!」
「はは痛い痛いマジで痛いすいませんごめんなさい許してぇ!」
 文句とモンク(FFとかでお馴染みの殴る系のジョブ)をかけてぺこぽこ殴ってきたのはいいが、予想をはるかに超える攻撃力により、あっという間に兄のHPは一桁になったので土下座で許しを請う。
「許して欲しかったら波のどさくさに紛れてみゆに触ったりぎゅーってしたり大好きだよーって言いなさい!」
 後半は波とか関係ねぇと思ったが、このままぺこぽこされると黄泉路へ誘われてしまうので必死にうなずく。
「にゃ! んじゃプールへごーだよ、お兄ちゃん!」
「それはいいが、兄は何者かにべこんぼこんにされ死にそうなので少し休みたい」
「ほいみー! ……回復した?」
「いいえ」
「ぬぬ……ほいみー!」
 ほいみーと叫びながらみゆが抱きついてきた。ほにゃっとした柔らかな身体が、ちっこいながらもふにふにとその存在を見せ付ける胸が、すべすべな太ももが俺の脳髄を刺激する。
「回復したかにゃ?」
「した。あとダメな部分も隆起しがち」
「……そ、そりはおうちに帰ったあとで大人しくさせるから、今は我慢だよ、お兄ちゃん?」
「おや、そのもじもじとした羞恥はとてもいいですね。非常にえろいですよ」(なでなで)
「にゃんと! 覚えておくよ、お兄ちゃん! 夜の営みでお兄ちゃんをもっともっと満足させるべく!」
「あまり大きな声で叫ばないでください」
 気がつけば周囲の視線が犯罪者を見るものしか存在してなかったので、妹の頭をなでながら諭す。
「ふにゃ。ところでお兄ちゃん、今日はこの水着でするのはどうですかにゃ?」
「うちの妹は兄を刑務所に入れてほしいのだろうか」
「みゆを抱っこしていーこいーこしてくれるなら、そゆこと言わなくなる可能性が少しだけあるよ!」
「少しなの?」
「いーから抱っこしていーこいーこして大好きだよーって言って帰りに結婚式を挙げなさい!」
「うちの妹は無茶が過ぎる。抱っこ&いーこいーこで我慢しなさい」(なでなで)
「にゃっこあんどにゃーごにゃーご♪」
 なんかわからんが嬉しそうなのでよかった。
「ふひゅー。大変喜ばしくなったところで、そろそろプールに入らない、お兄ちゃん?」
「待つんだ、妹よ。体操しないと足が吊って溺れて死んでみゆと二度と会えないなんて!!!!?」
「落ち着けお兄ちゃん! 想像で苦しみもだえてもしょうがないよ!」
 それもそうだと思ったので、普通に兄妹で体操する。合間に抱きつかれたり抱きついたり監視員にマークされたりしながら、体操を終える。
「ふひゅー……いっしょけんめーしたら体操もけっこーしんどいね、お兄ちゃん?」
「兄は監視員の目が気になって気になって」
「もー! みゆと一緒にいる時は、みゆだけを見なさい!」
「おや、恋人の台詞のようですね」
「兄妹は恋人よりも深い絆で結ばれているので、それも当然の帰結なのだよ! ……難しい言葉使えたよ? 偉い?」
「偉い偉い」
 褒めてほしそうだったので、頭をなでてあげる。
「にゃーにゃー♪ 今日はいっぱいなでてもらえて、みゆはすっごく嬉しいよ!」
「じゃあ、ぼちぼち水に浸かろう。プールサイドでわーきゃー言うのもいい加減暑くて死にそうだ」
「ラジャったよ、お兄ちゃん!」
 そんなわけで、ようやっとプールに侵入する。ぬるめの水が暑く火照った身体を優しく冷ましていく。
「ほふー……涼しいね、お兄ちゃん!」
「いやはや全く。一生ここにいたいな」
「どーしてもそうしたいならみゆがここと交渉するけど……冬になったら凍っちゃうよ?」
 軽い気持ちで住処を変更させられそうになったので、そのぐらい心地がいいことを比喩しただけを伝える。
「にゃんだ、まぎららしい」
「勘違いするほうがどうかと思います。あと、紛らわしい、です」
「まぎららしい、まぎららしい……にゅー、言えないよう」
「頑張れ妹! ファイトだ妹!」
「……ええい、一か八かだ! マギー司郎!」
「うむ!」
「うむ!?」
 なんかびっくりしてる妹の頭をなでてると、波がざっぷんざっぷん二人の身体を揺らしだした。
「ほわわ……結構激しい波だね、お兄ちゃん」
「この激しい波に、二人の仲が引き裂かれそうだ」
「絶対に離れないもん!!!」
 両手両足を俺に絡ませ、みゆがしがみついてきた。
「凄まじい重みが兄を襲う」
「女の子は羽みたいに軽いもん!」
「羽が大群を成して攻めてきたようだ」
「軽いもん!!!」
 ぐらぐら揺らされ、その隙を突いて波が押し寄せてきた。二人まとめて水中に没す。
「げぼげぼげば」
「にゃぐにゃぐにゃべ」
 水中会話は困難と判断し、犬かき猫かき水面へ浮上。
「ぷはっ! ……やー、苦しかった」
「ぷはー! はふー、でも気持ちよかったね!」
「水中でおっぱいを揉んだ甲斐があった」
「そういう意味じゃないし、揉まれてないよ、お兄ちゃん! ……あの、揉みたかったの?」
「揉むほどないです」
「あるよ?」
 手を掴まれ、そのままみゆの胸へと誘われる。確かに平らいが、それでも指が多少埋まる程度は……ある!
「ね? あるでしょ? お兄ちゃん、らっきー♪」
 ついでなので、そのままもみもみ。
「にゃ、んにゃ……っ、あ、あの、お兄ちゃん、ここでしたら捕まっちゃうと思うんだけど……が、我慢できる? むり?」
「無理! みゆの柔らかさを前にしたら、当然の事よ!」
「捕まったら、みゆとえっちできなくなっちゃうよ?」
「清廉潔白な俺を捕まえて、誰が犯罪者か!」
「もはや清々しささえ漂うよ、お兄ちゃん!」
 とにかくこのままでは捕まるのも時間の問題なので、みゆのおっぱいから手を離す。
「にっゃ。……お兄ちゃん、もっと触りたかった?」
「勿論!!!」
「お兄ちゃんのえっちっちー♪」
「金輪際貴様なんかの乳なぞ揉むか!」
「にゃんですって!?」
「すいません揉みまくりたいです」
 もうおしっこ漏れそうなくらい怖かったので許しを請う。
「それでいいんだよー♪ じゃ、とっとと帰ってもみもみするる?」
「大変心惹かれる提案ですが、兄としてはもう少しここで妹ときゃっきゃうふふな遊びを行いたいです。まだ水没しただけなので」
「それもそだね。んじゃ、次のプールへごーだよ、お兄ちゃん!」
 次のプールは普通の25mプールだった。ここは普通のプールなので、人の数もそれなりで落ち着いて遊べそうだ。
「お兄ちゃん、ここで競争しよ? 負けた方が勝った方のいうこときくの!」
「じゃあ兄が勝ち、みゆと一緒に寝る権利を得てみせる!」
「いつも一緒に寝てるよ?」
「む。じゃ、みゆにご飯作ってもらう権利を!」
「毎日みゆがご飯作ってるよ?」
「むむ。じゃあじゃあ、みゆと一緒にお風呂に入る権利を」
「毎日一緒でうっふんあっはんだよ?」
「畜生! 何一つとして願いがねえ!」
「にゃはは。んじゃね、お兄ちゃんが勝ったら、おこづかいあっぷしたげるよ!」
「なんと! しかし、兄の小遣いはその大半がみゆへの奢りに使うのであまり意味がない気がする」
「え、えーと……気にしないのが一番だよ!」
「……まあいいや。で、みゆが勝ったら何するんだ?」
「にゅーっとね、そだね、お兄ちゃんにぎゅーってしてもらう!」
「はい、ぎゅー」
 その場でみゆをぎゅっと抱きしめる。
「にゃ!? ……にゃー♪」(嬉しい)
「完了しました」
「ぬぬ、お願いが完了しちったよ! んじゃんじゃ、なでなでしてもらう!」
「なでなで」
「にゃーにゃー♪ ……はうわっ、またなでられちった! このままではお願い事が尽きてしまうですにゃ!」
「ククク……兄が味わった苦しみをその身で味わうがいい!」
「にゅー……じゃあ、お兄ちゃんにちゅーしてもらう!」
「ぬ」
「お兄ちゃんはお外でみゆにちゅーするの恥ずかしがるので、これならお願いとして成立すること請け合い!」
「じゃあ兄はみゆとここでえっちする!」
「捕まりますが」
「がむでぶ! 俺の望みはすぐ捕まる!」
「じゃあ、そーゆーことでげっとれでぃーだよ、お兄ちゃん」
 二人でプールの中に入り、準備を行う。俺が勝っても何の権利も得られないが、公衆の面前で妹とキスという甘美な誘惑から逃れるためには、なんとしても勝たねば!
「すたーとって言ったらすたーとなのでもうすたーと!」
「卑怯スタートとは卑怯な、みゆ! そして卑怯スタートという名目なので卑怯なのは当たり前と言ってる間にすごい距離行かれた!」
 みゆを追いかけ、水をかく。特別水泳が得意というわけではなく、そして特別下手でもない俺の泳ぎでは、人魚のように水面を滑るみゆには一向に追いつけない。完璧超人め。
「このままでは……こうなってはターボ発動げぼげばごば」
 泳いでる最中に大口を開けたので口内に大量の水が入ってきたが、それでもなんとかターボを発動させる。
「! ターボとはやるね、お兄ちゃんげぼげば!」
「震えて眠るがいい、みゆごばげば!」
 二人してプールの水量を減らしながら、ターボの力を量る。気分の問題なので実際には変化がないはずだが、思い込みの強さは人類で五本の指に入るくらい強いので、かなり速度アップ。
「もう追いついてきたがばにゃばごば!」
「兄の底力思い知ったかごばげばごはっ!」
 いい加減腹がたぷたぷしてきたが、それでもみゆの足が届く範囲まで追いついた。そしてその結果、うにうに動くみゆの尻が目の前で揺れてるのでこれ以上先に進めない。
「……ぷはっ! みゆ、いっちゃーく!」
 そのまま普通にゴールされた。しょうがないのでみゆの泳いでたレーンへ移動し、勢いを殺さないままみゆの尻に顔を埋める。
「にゃにゃっ!? もー、お兄ちゃん! みゆのお尻に顔つっこまないの!」
「……ぷはっ。いや、尻が」
「にゅ? とにかく、みゆの勝ちだよ!」
「異論! 兄がみゆの躍動感あふれる尻を鑑賞せずに抜くことができないことを、みゆが気づかないだろうか。いや、そんなわけない。このレースで兄が勝てる可能性などなかったのだ!」
「……だからみゆを抜かなかったの?」
 こっくりうなずくと、ため息をつかれた。
「もう何百回とみゆのお尻見たろうに、お兄ちゃんって……」
「何度見ても飽きません」
「まあ、どっちにしてもみゆの勝ちだよ。ちゅーだよ、ちゅー!」
 うーむ。してもいいのだけど、恥ずかちいしなあ。なんかみんな見てるし。そりゃ、兄妹がちゅーちゅー言ってたら見るか。
「ぬー……約束を反故したら、大変な目に遭うよ?」
「具体的には?」
「てんちゅーって声と共に水着を剥がれ、そのまま女子更衣室に放り込まれる災難に巻き込まれる」
 その後の事態を考えなければ最高の災難だが、きっと自宅に戻るのに数ヶ月かかる。
「ちゅーと前科、どっちがいいかにゃー?」
 にんまりとした笑みを浮かべる妹に、両手を上げる。
「えへへー? ちゅーかにゃ?」
「分かった。俺も男だ、勘弁して下さい」
 そのまま手を水面に置き、土下座へ。だが、水中では土下座は難しい!
「……うーん、失敗したバタ足みたいだね。なので不許可!」
「じゃあしょうがない、ちゅーしましょう」
 水から顔を上げ、がっしとみゆの両肩に手をかける。
「わ、わわ……あ、あの、お兄ちゃん。優しく……ね?」
 うるうる揺れるみゆの瞳が、静かに閉じられる。ゆっくりとみゆの顔に唇を寄せ──
「げふーっ」
 ──てたら、みゆの口から重低音のゲップが出た。
「……え、えと」
「ま、まあ、沢山水飲んだしなあ。しょうがない」
「優しい反応は逆に酷だよ、お兄ちゃん!」
 もうキスとかそんな雰囲気は雲散霧消してしまったので、わははと笑いながらみゆの頭に手をのせる。
「うにゅー……とってもとっても残念だよ」
「ま、いいじゃん。普通に遊ぼうぜ」
「しょうがないけど……分かったよ、お兄ちゃん。しかし、みゆはまだ諦めてはいない! みゆはようやく登りはじめたばかりだからな、このはてしなく遠い男坂をよ……」
「妹が打ち切られた」
「にゃはは。んじゃ気を取り直して泳ご、お兄ちゃん?」
 連載再開を夢見て一緒に遊ぶ俺たちだった。

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【妹の日】

2011年09月06日
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん! 驚くべきことなんだよ!」
「ぐべっ」
 授業も終わったしさあ帰ろうと下駄箱で靴を履き替えてたら、校門から妹のみゆが高速でこちらに走り寄ってきて、なんの躊躇もなくランニングネックブリーカードロップを兄である俺に決めた。
「げほっげほっげほっ……な、何事?」
「驚くことだよ、驚くべきことなんだよ!」
 みゆは倒れた兄の上にのっしと跨ると、じーっとこちらの顔を覗きこんできた。
「今の技が?」
「今のはお兄ちゃんに飛びつこうとしたら、勢いがつきすぎてプロレス技になっちゃっただけ! まーよくあることだよ」
「そんなことはないです」
「それよりお兄ちゃん、今はみゆの驚くべき情報を聞いて驚いてはいかがかにゃ?」
「兄は首が痛いうえ、周囲の人にじろじろと見られて非常に居心地が悪いので後にしてほしいのですが」
「あのねあのね! 今日は妹の日なの!」
 兄の話なんてちっとも聞かず、妹は満面の笑みで伝えた。
「はぁ、そうなのですか」
「つまり、今日はみゆの日なので、抱っこしなさい!」
「意味が分かりません」
 分からないが、両手を出して抱っこしてポーズをされては仕方がない。素直にもふもふしてあげる。
「ふにゃー♪ なんという夢心地!」
「それでみゆさん、そろそろ兄はここから逃げ出したいのですが」
「にゃ?」
 依然変わらず周囲の人が物珍しげに兄と妹をじろじろ見ているのですよ。下駄箱ですから、ここ。
「だいじょぶ! みゆは気にならない!」
「いや、兄が気になるのですが」
「ふにゅふにゅ♪」
「チクショウ、この猫妹今日も兄の話をちっとも聞きやしねえ!」
 頬をすりすりされてしまい相好を崩したまま叫ぶ兄です。

「とはいえいつまでも下駄箱で寝転がっていてもしょうがないと思い、不屈の精神力でどうにか下校した兄を妹はどう思うか」
「結婚したいと思います!」
 兄妹だけあってお互い頭が悪いなあ、と思ったので妹の頭をなでてあげる。
「ふにゃふにゃ」
「んで、妹の日って言ってたけど、具体的にどういう日なんだ?」
「ぐぐれかす!」(満面の笑みで)
「うっうっうっ……」
「はにゃーっ! お兄ちゃんが一切の躊躇なく泣き出した! なんというレア表情! 写真写真!」
 ケータイで全方向からパシャパシャ撮られ、兄はもう一体どうすれば。
「写真より慰めてください」
「もう泣き止んじゃったのにゃー……」
「つーかだな、みゆ。汚い言葉はダメです。言葉に引っ張られて性格も容姿も悪くなっちゃうぞ?」
「にゃっ! みゆ、反省! まー、さっきのはネットスラングが出ちゃっただけだよ! 普段は優しい妹なのでだいじょぶなのだよ!」
「優しい、という一文だけが看過できない」
「そんなことないよ! さっきランニングネックブリーカーした時も、お兄ちゃんの首が折れないように注意してたもん! ちょー優しいよ!」
 妹の優しさの定義が一般人のそれと乖離しているように思えてならない。
「そんなことより、お兄ちゃん。妹の日ってのは、その年に活躍した妹の功績を称えるらしいよ? 将来はみゆが毎年連続で受賞するに違いないよ!」
「功績って、何をするつもりですか」
「せかいせいふく!」(ぺかーっとした笑顔で)
 俺の妹がこんなにマッドなわけがない。
「あの、みゆさん。やめてください」
「だいじょぶだよ! お兄ちゃんはみゆと一緒で、搾取する側だから!」
「いやいや、いやいやいや。世界征服とか勘弁してください」
「ふにゅー……お兄ちゃんがそう言うなら、考え直すよ」
 ちょっと残念そうだったが、みゆはそう言ってくれた。こいつなら冗談ではなく本当にやってしまいそうで怖い。
「んじゃ、代わりにお兄ちゃんを征服します!」
 そう言うと、みゆは兄の背中に乗り、後ろから頬擦りしだした。
「……ほふー。外でも家の中でも、お兄ちゃんに触れてるとリラックスするよ」
「んじゃ、今日はおんぶで帰るか? 今日は妹の日らしいし、それくらいはサービスするぞ?」
「なんというありがたい提案! 乗るしかない、このびっぐうぇーぶに!」
「普通に答えれ。んじゃ、鞄だけ持っててくれ」
「お任せだよ、お兄ちゃん!」
 そんなわけで妹と鞄を背に乗せ、ゆっくり歩き出す。そのまましばらく歩いてると、後ろからかすかな声が聞こえてきた。
「んにゃが……うぅ、振動とお兄ちゃんの暖かさとリラックスの相乗効果で、眠気が史上最大にまっくすだよぅ……」
「ん、寝ちゃうか? 家に着いたら起こすから、そのまま寝ちゃってもいいぞ」
「よろしく……しちゃうのにゃー……」
 ほどなくして、妹のすぴゃすぴゃした寝息が聞こえてきた。俺はできるだけ振動を起こさないよう、さらにゆっくり歩くのだった。

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【コタツみゆ】

2010年11月29日
「じーっ……」
 先ほどから妹のみゆがコタツの中に入り込み、顔だけ出してこっちをじーっと見てるので困る。
「あの、みゆさん。何か御用でしょうか?」
「お兄ちゃんを捕獲したいんだけど、みゆは乙女なのでそんなことは口に出せずに困ってるところなんだよ、お兄ちゃん!」
 言ってる。全部言ってる。
「なるほど兄を捕獲したいのか。じゃあブービートラップでも仕掛ければいいんじゃなかろうか」
「猿は関係ないよ! 全くお兄ちゃんはいついかなる時も頭が悪いんだから! ふんとにもう!」
 本当に頭が悪いのはどちらなのだろう。
「まあ猿は置いといてー。……ぶるぶるぶる。このコタツは寒いにゃー。壊れてるから電気が入らないのにゃー。人肌恋しいにゃー」
「こっちに来てストーブに当たればいいと思う」
「覇ッ!」
 妹が気合を飛ばすと、ストーブが吹っ飛んで壁にめり込んだ。
「あにゃー、ストーブなくなっちった。ふしぎ!」
 妹がどんどん人外の能力をつけていくので将来が不安すぎる。
「てなわけでー。にゅー、寒いよ寒いよー。誰かあっためてくんないかなー?」
「ここにカイロもあります」
「覇ぁッ!」
 妹の気合により、手の平にあったカイロが一瞬で弾け飛び、中の鉄粉が中空を舞った。
「あにゃー、今度はカイロもなくなっちったよ。ふしぎ! ──あと、これ以上コタツ以外の暖房器具を見せたら殺す」
 妹に殺すって冷徹な声で言われた。
「んじゃ、今度こそ。……ぶるぶるぶる。うにゅー、寒くて寒くて泣いちゃいそうだよー」
「兄は寒さとは別の理由により震えが止まらず、かつ泣きそうです」
「一緒だね、一緒だね! 嬉しいね!」
 なかなかその喜びは共有できない。
「ふんじゃ、そのお似合い兄妹は、一緒にコタツに入るべきだと思います! ていあん!」
「その提案を蹴ったらどうなるんでしょうか」
「兄妹のどっちかがミンチに! ふしぎ!」
 たぶんきっと絶対確実に兄がミンチになるんだろうなあ。
「……はぁ。あー、寒いからコタツにでも入るかなあ」
 妹の目がきんらきんらしだした。
「ここ! ここに入っては如何かな、お兄ちゃん! 今ならみゆ付きなので、あったかですにゃ!」
「じゃあ入ります」
 なんかもう抵抗しても無駄っぽいので、素直にみゆの隣に身体を滑り込ませる。なるほど確かに電源は入っていないので中は寒いが、隣に猫系妹がいるのでそんなに悪くない。
「えへへー、お兄ちゃんが隣ー♪ お兄ちゃんが隣ー♪」
 やたら嬉しそうにニコニコしながら、妹が鼻をピスピス言わせつつ身体を寄せてきた。
「鼻が鳴ってますよ」
「お兄ちゃんだけが聞ける最高の楽器だよ! お兄ちゃん、らっきー♪」
 兄には鼻づまりにしか聞こえない。とか思ってたら、コタツの中でみゆが足を絡ませてきた。
「へへー。こしたらもっと暖かいよ?」
「生足ですね」
「女の子の生足をすりすりできて、お兄ちゃんらっきー♪」
 ……そこはまあ、ノーコメントでひとつ。
「つまり、お兄ちゃんもらっきーと思ったんだね?」
「どうして兄の思考を読むのですか」
「にゃははー。みゆにかかればお茶の子さいさいだよ!」
 勘弁してほしい。本当に。
「では、引き続きすりすりへ移行しますか? そりともおっぱいすりすりの方がいいですかにゃ?」
「なんか性的な響きが聞こえた気がしますが、気のせいだな!」
「おっぱいもみもみがいいの? にゃ……お兄ちゃん、えっちだよぉ」
 してない。そんな提案してない。
「でもまぁ、お昼からそんなことしたらダメだもんね。そゆことするのは夜だもんね」
「いや、別に決まってないとは思うが……」
「んじゃ、するる?」
「しません」
「残念なことこのうえないのにゃー……」
 どうにかえろす方向への道を封鎖することに成功。やれやれだ。
「しょがない。今日の夜までお預けだね、お兄ちゃん」
 ……半日だけ封鎖に成功。
「ふわわわ……にゅー、なんか眠くなってきちゃったよ」
「幸いにしてコタツだし、寝るのも可かも。あ、でも壊れてるからこのまま寝ると風邪引くか……」
「うんしょ、うんしょ」
 みゆはコンセントを取り出すと、コタツから身体を半分だけ出して近くのソケットに差し込んだ。
「ふひゅー。外は寒いねー」
 そして、素早くコタツの中に戻り、兄に抱きついた。
「ええっと。……お?」
 そのまますりすりされてると、コタツの中がどんどん暖かくなっていくではないか。
「壊れてたんじゃ?」
「あれ、うそ!」
 ぺかーっとした笑顔で言われては、もう何も言えない。
「お兄ちゃんとコタツに入ってふにゃふにゃしたかったから嘘ついた! 嘘つきは泥棒の始まりだけど、みゆは既にお兄ちゃんのハート泥棒なのでいいよね?」
「よくはないと思う」
「がががーん! じゃあ、嘘つきめーってお兄ちゃんに怒られて、罰だーってことでいっぱいいっぱい中に出されちゃうのカナ?」
「後半おかしい」
「あ、まちがいまちがい。いっぱいいっぱい膣に」
「大変ストップ! 膣と書いて“なか”と読まないで!」
「ふああ……にゅー、暖かくなってきたら眠くなってきちったよ。寝ていーい?」
「あー……うん。なんか、まあいいや」
「にゅー♪」
 嬉しげに兄の胸にすりすりしてるみゆを見てたら、なんかこっちまで眠くなってきた。よし、寝よう!
「あ、お兄ちゃん。寝てる時にみゆにいたづらしてもいいけど、最後までしちゃダメだよ? 最後までするのは、みゆが起きてる時に!」
「色々間違いを直したいです」
「ふんじゃ、お休みなさいですにゃ、お兄ちゃん!」
 寝られた。畜生。まあいいや、兄も寝よう。
 そんなわけで、妹を抱きかかえて一緒に寝ました。

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