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2024年11月21日
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【妹の日】
2011年09月06日
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん! 驚くべきことなんだよ!」
「ぐべっ」
授業も終わったしさあ帰ろうと下駄箱で靴を履き替えてたら、校門から妹のみゆが高速でこちらに走り寄ってきて、なんの躊躇もなくランニングネックブリーカードロップを兄である俺に決めた。
「げほっげほっげほっ……な、何事?」
「驚くことだよ、驚くべきことなんだよ!」
みゆは倒れた兄の上にのっしと跨ると、じーっとこちらの顔を覗きこんできた。
「今の技が?」
「今のはお兄ちゃんに飛びつこうとしたら、勢いがつきすぎてプロレス技になっちゃっただけ! まーよくあることだよ」
「そんなことはないです」
「それよりお兄ちゃん、今はみゆの驚くべき情報を聞いて驚いてはいかがかにゃ?」
「兄は首が痛いうえ、周囲の人にじろじろと見られて非常に居心地が悪いので後にしてほしいのですが」
「あのねあのね! 今日は妹の日なの!」
兄の話なんてちっとも聞かず、妹は満面の笑みで伝えた。
「はぁ、そうなのですか」
「つまり、今日はみゆの日なので、抱っこしなさい!」
「意味が分かりません」
分からないが、両手を出して抱っこしてポーズをされては仕方がない。素直にもふもふしてあげる。
「ふにゃー♪ なんという夢心地!」
「それでみゆさん、そろそろ兄はここから逃げ出したいのですが」
「にゃ?」
依然変わらず周囲の人が物珍しげに兄と妹をじろじろ見ているのですよ。下駄箱ですから、ここ。
「だいじょぶ! みゆは気にならない!」
「いや、兄が気になるのですが」
「ふにゅふにゅ♪」
「チクショウ、この猫妹今日も兄の話をちっとも聞きやしねえ!」
頬をすりすりされてしまい相好を崩したまま叫ぶ兄です。
「とはいえいつまでも下駄箱で寝転がっていてもしょうがないと思い、不屈の精神力でどうにか下校した兄を妹はどう思うか」
「結婚したいと思います!」
兄妹だけあってお互い頭が悪いなあ、と思ったので妹の頭をなでてあげる。
「ふにゃふにゃ」
「んで、妹の日って言ってたけど、具体的にどういう日なんだ?」
「ぐぐれかす!」(満面の笑みで)
「うっうっうっ……」
「はにゃーっ! お兄ちゃんが一切の躊躇なく泣き出した! なんというレア表情! 写真写真!」
ケータイで全方向からパシャパシャ撮られ、兄はもう一体どうすれば。
「写真より慰めてください」
「もう泣き止んじゃったのにゃー……」
「つーかだな、みゆ。汚い言葉はダメです。言葉に引っ張られて性格も容姿も悪くなっちゃうぞ?」
「にゃっ! みゆ、反省! まー、さっきのはネットスラングが出ちゃっただけだよ! 普段は優しい妹なのでだいじょぶなのだよ!」
「優しい、という一文だけが看過できない」
「そんなことないよ! さっきランニングネックブリーカーした時も、お兄ちゃんの首が折れないように注意してたもん! ちょー優しいよ!」
妹の優しさの定義が一般人のそれと乖離しているように思えてならない。
「そんなことより、お兄ちゃん。妹の日ってのは、その年に活躍した妹の功績を称えるらしいよ? 将来はみゆが毎年連続で受賞するに違いないよ!」
「功績って、何をするつもりですか」
「せかいせいふく!」(ぺかーっとした笑顔で)
俺の妹がこんなにマッドなわけがない。
「あの、みゆさん。やめてください」
「だいじょぶだよ! お兄ちゃんはみゆと一緒で、搾取する側だから!」
「いやいや、いやいやいや。世界征服とか勘弁してください」
「ふにゅー……お兄ちゃんがそう言うなら、考え直すよ」
ちょっと残念そうだったが、みゆはそう言ってくれた。こいつなら冗談ではなく本当にやってしまいそうで怖い。
「んじゃ、代わりにお兄ちゃんを征服します!」
そう言うと、みゆは兄の背中に乗り、後ろから頬擦りしだした。
「……ほふー。外でも家の中でも、お兄ちゃんに触れてるとリラックスするよ」
「んじゃ、今日はおんぶで帰るか? 今日は妹の日らしいし、それくらいはサービスするぞ?」
「なんというありがたい提案! 乗るしかない、このびっぐうぇーぶに!」
「普通に答えれ。んじゃ、鞄だけ持っててくれ」
「お任せだよ、お兄ちゃん!」
そんなわけで妹と鞄を背に乗せ、ゆっくり歩き出す。そのまましばらく歩いてると、後ろからかすかな声が聞こえてきた。
「んにゃが……うぅ、振動とお兄ちゃんの暖かさとリラックスの相乗効果で、眠気が史上最大にまっくすだよぅ……」
「ん、寝ちゃうか? 家に着いたら起こすから、そのまま寝ちゃってもいいぞ」
「よろしく……しちゃうのにゃー……」
ほどなくして、妹のすぴゃすぴゃした寝息が聞こえてきた。俺はできるだけ振動を起こさないよう、さらにゆっくり歩くのだった。
「ぐべっ」
授業も終わったしさあ帰ろうと下駄箱で靴を履き替えてたら、校門から妹のみゆが高速でこちらに走り寄ってきて、なんの躊躇もなくランニングネックブリーカードロップを兄である俺に決めた。
「げほっげほっげほっ……な、何事?」
「驚くことだよ、驚くべきことなんだよ!」
みゆは倒れた兄の上にのっしと跨ると、じーっとこちらの顔を覗きこんできた。
「今の技が?」
「今のはお兄ちゃんに飛びつこうとしたら、勢いがつきすぎてプロレス技になっちゃっただけ! まーよくあることだよ」
「そんなことはないです」
「それよりお兄ちゃん、今はみゆの驚くべき情報を聞いて驚いてはいかがかにゃ?」
「兄は首が痛いうえ、周囲の人にじろじろと見られて非常に居心地が悪いので後にしてほしいのですが」
「あのねあのね! 今日は妹の日なの!」
兄の話なんてちっとも聞かず、妹は満面の笑みで伝えた。
「はぁ、そうなのですか」
「つまり、今日はみゆの日なので、抱っこしなさい!」
「意味が分かりません」
分からないが、両手を出して抱っこしてポーズをされては仕方がない。素直にもふもふしてあげる。
「ふにゃー♪ なんという夢心地!」
「それでみゆさん、そろそろ兄はここから逃げ出したいのですが」
「にゃ?」
依然変わらず周囲の人が物珍しげに兄と妹をじろじろ見ているのですよ。下駄箱ですから、ここ。
「だいじょぶ! みゆは気にならない!」
「いや、兄が気になるのですが」
「ふにゅふにゅ♪」
「チクショウ、この猫妹今日も兄の話をちっとも聞きやしねえ!」
頬をすりすりされてしまい相好を崩したまま叫ぶ兄です。
「とはいえいつまでも下駄箱で寝転がっていてもしょうがないと思い、不屈の精神力でどうにか下校した兄を妹はどう思うか」
「結婚したいと思います!」
兄妹だけあってお互い頭が悪いなあ、と思ったので妹の頭をなでてあげる。
「ふにゃふにゃ」
「んで、妹の日って言ってたけど、具体的にどういう日なんだ?」
「ぐぐれかす!」(満面の笑みで)
「うっうっうっ……」
「はにゃーっ! お兄ちゃんが一切の躊躇なく泣き出した! なんというレア表情! 写真写真!」
ケータイで全方向からパシャパシャ撮られ、兄はもう一体どうすれば。
「写真より慰めてください」
「もう泣き止んじゃったのにゃー……」
「つーかだな、みゆ。汚い言葉はダメです。言葉に引っ張られて性格も容姿も悪くなっちゃうぞ?」
「にゃっ! みゆ、反省! まー、さっきのはネットスラングが出ちゃっただけだよ! 普段は優しい妹なのでだいじょぶなのだよ!」
「優しい、という一文だけが看過できない」
「そんなことないよ! さっきランニングネックブリーカーした時も、お兄ちゃんの首が折れないように注意してたもん! ちょー優しいよ!」
妹の優しさの定義が一般人のそれと乖離しているように思えてならない。
「そんなことより、お兄ちゃん。妹の日ってのは、その年に活躍した妹の功績を称えるらしいよ? 将来はみゆが毎年連続で受賞するに違いないよ!」
「功績って、何をするつもりですか」
「せかいせいふく!」(ぺかーっとした笑顔で)
俺の妹がこんなにマッドなわけがない。
「あの、みゆさん。やめてください」
「だいじょぶだよ! お兄ちゃんはみゆと一緒で、搾取する側だから!」
「いやいや、いやいやいや。世界征服とか勘弁してください」
「ふにゅー……お兄ちゃんがそう言うなら、考え直すよ」
ちょっと残念そうだったが、みゆはそう言ってくれた。こいつなら冗談ではなく本当にやってしまいそうで怖い。
「んじゃ、代わりにお兄ちゃんを征服します!」
そう言うと、みゆは兄の背中に乗り、後ろから頬擦りしだした。
「……ほふー。外でも家の中でも、お兄ちゃんに触れてるとリラックスするよ」
「んじゃ、今日はおんぶで帰るか? 今日は妹の日らしいし、それくらいはサービスするぞ?」
「なんというありがたい提案! 乗るしかない、このびっぐうぇーぶに!」
「普通に答えれ。んじゃ、鞄だけ持っててくれ」
「お任せだよ、お兄ちゃん!」
そんなわけで妹と鞄を背に乗せ、ゆっくり歩き出す。そのまましばらく歩いてると、後ろからかすかな声が聞こえてきた。
「んにゃが……うぅ、振動とお兄ちゃんの暖かさとリラックスの相乗効果で、眠気が史上最大にまっくすだよぅ……」
「ん、寝ちゃうか? 家に着いたら起こすから、そのまま寝ちゃってもいいぞ」
「よろしく……しちゃうのにゃー……」
ほどなくして、妹のすぴゃすぴゃした寝息が聞こえてきた。俺はできるだけ振動を起こさないよう、さらにゆっくり歩くのだった。
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