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2025年04月20日
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【男のワイシャツとツンデレとデレデレ】
2010年02月23日
長年着ていたワイシャツがよれよれになってしまった。
「……捨てるか」
「その行為STOPだ、別府タカシっ!」
「その通りだよ、お兄ちゃん!」
「ぐべっ」
ワイシャツをゴミ箱に入れようとした瞬間、友人のみことと隣家のちみっこ、夕美が弾丸のように突っ込んできて俺を吹っ飛ばした。きりもんで飛んで行く俺を尻目に、二人は空中を舞うワイシャツをがっしと掴んだ。
「か、勘違いするでない。別にこのようなものいらぬのだが、捨てるなぞもったいないからな。私が廃物利用してやろう」
「夕美は是非欲しいよ! 家宝にする勢いだよ! みことおねーちゃん、どっちでもいいなら夕美にちょうだい!」
「む……い、いやしかし、こういうことは所有者に決めてもらうのが一番だろう。ということでタカシ……ぬ?」
「ああっ、お兄ちゃんが壁にめり込んでるっ!」
二人して壁から抜いてもらう。
「やれやれ。気のせいかもしれないが、なんだか既視感を感じるよ」
「そんなのどうでもいいよっ! お兄ちゃん、夕美にくれるよね? ね?」
「何を言うか。気心の知れた親友に渡して当然だろう」
「童貞を?」
「違います」
軽い冗談なのに夕美には冷静に否定され、みことからは侮蔑の視線を刺され、俺はもうどうしたら。
「傷心の俺は一人旅に出るのだった」
「旅に出る前にどっちに渡すかだけ決めてよ、お兄ちゃん!」
「そうだぞ。……もっとも、私は残念なことにこのダメ男に惚れられているが故に、渡されるであろうな。ああ嫌だ嫌だ」
夕美の目がすっと細まった。
「……どゆこと、お兄ちゃん?」
「体が目当てなんだ」
みことに殴られた上、夕美からは軽蔑の視線を受けた。
「冗談です。えーーーーーーと、その、……俺は夕美も好きだぞ?」
適当なことを言ってお茶を濁してみる。いや、嘘ではないが。
「えっ、えっ? もー、お兄ちゃんってばー、このロリコン♪ 夕美、小学生なのに……もう、やんやん♪」
夕美はやたら嬉しそうにニコニコしながら俺の背中をばんばん叩いた。
「…………」
そして今度はみことが怖い感じになったので怖い。
「すすすすす好きと言ってもこう、アレだぞ? 妹に対して、みたいな?」
夕美に対して言っているように見えて、その実みことに向けて話す。
「つまり、お兄ちゃんにとっては攻略対象なんだよね?」
「はい」
しまった、本音が! ていうか攻略対象とか言うな、夕美。
「……ということだよ、みことおねーちゃん。お兄ちゃんはロリコンさんなので、ちっこい夕美の方が好きなんだよ。と、いうわけで、ワイシャツは夕美がいただきだよ!」
「……ふ、ふふふふふ。哀れなり夕美殿! こやつがロリコンなのは百も承知! 我が肉体がどれほど凹凸に恵まれていないか知らぬのか!」
胸を張って悲しい事を言うぺったんこ。もとい、みこと。
「そして夕美殿、貴殿には未来がある! 成長、という未来が! 一方、既に成長期を過ぎた私にはその可能性はないに等しい! この場合、別府タカシがどちらを採るか……聡い貴殿にはもう分かるであろう?」
「にゃにゃ!? ……で、でも夕美のお母さんもぺったんこだもん! きっと夕美もあんな感じになるもん!」
なんだか議論がずれているような。確かワイシャツの話じゃなかったっけ。まあいいや、二人ともいい感じにヒートアップしてるし、ばれないように逃げよう。
「そこ。逃げるな」
すぐばれた。部屋の中央に引っ張られ、正座させられる。
「そもそも、貴様がいかんのだ。誰彼構わず好き好き言いおって……その舌引っこ抜いてくれようか」
「ひぃ! 助けて夕美!」
あまりの恐怖に夕美に抱きつく。
「……お、お兄ちゃん。いきなりだと、夕美、びっくりさんだよ」
夕美は困ったような、でも満更でもないような表情でにっこり笑った。
「あ、いやその……ごめんな」
「う、ううん、いいんだよ。……えへへ」
「あは、あはは……」
「……誰か忘れていまいか、別府タカシ?」
背後から聞こえる声に、律儀に血の気が引く。
「わ、ワイシャツが欲しいのならみことにあげるよ?」
「ほ、本当か? ……あ、いや、別にいらぬのだが、どうしてもというのなら受け取ってやらなくもないぞ」
一瞬笑顔になったみことだったが、すぐに表情を引き締めた。
「夕美にくれないとその舌引っこ抜くよ?」
前門の虎、後門の狼とはこのことを言うのかなあ、とか思いながら笑顔の夕美を眺める。
「「……で、どっちにくれるの?」」
「……こんなものがあるから争いが止まないんだ! こんなもの!」
意を決し、全ての元凶であるワイシャツを引き裂く! ……ひ、引き裂く!
「……お兄ちゃん、全然破れてないよ」
「まあ、ちょっと引っ張った程度で破れるものではないしな。……さあ、どちらに渡すのだ」
さて、今度こそ進退窮まった。
ので、もう一つあるワイシャツもあげることにした。
「ま、まあこんなものいらぬのだが、どうしてもと言うなら、な。……ふふふふふ」
「やった、やったよ! これでいつでもお兄ちゃんと一緒な感じだよ! くんくん……はふー。くんくんくん……はふー!」
喜び勇んで(みことは必死に隠しているようだったが)ワイシャツを抱きしめる二人だった。
「……捨てるか」
「その行為STOPだ、別府タカシっ!」
「その通りだよ、お兄ちゃん!」
「ぐべっ」
ワイシャツをゴミ箱に入れようとした瞬間、友人のみことと隣家のちみっこ、夕美が弾丸のように突っ込んできて俺を吹っ飛ばした。きりもんで飛んで行く俺を尻目に、二人は空中を舞うワイシャツをがっしと掴んだ。
「か、勘違いするでない。別にこのようなものいらぬのだが、捨てるなぞもったいないからな。私が廃物利用してやろう」
「夕美は是非欲しいよ! 家宝にする勢いだよ! みことおねーちゃん、どっちでもいいなら夕美にちょうだい!」
「む……い、いやしかし、こういうことは所有者に決めてもらうのが一番だろう。ということでタカシ……ぬ?」
「ああっ、お兄ちゃんが壁にめり込んでるっ!」
二人して壁から抜いてもらう。
「やれやれ。気のせいかもしれないが、なんだか既視感を感じるよ」
「そんなのどうでもいいよっ! お兄ちゃん、夕美にくれるよね? ね?」
「何を言うか。気心の知れた親友に渡して当然だろう」
「童貞を?」
「違います」
軽い冗談なのに夕美には冷静に否定され、みことからは侮蔑の視線を刺され、俺はもうどうしたら。
「傷心の俺は一人旅に出るのだった」
「旅に出る前にどっちに渡すかだけ決めてよ、お兄ちゃん!」
「そうだぞ。……もっとも、私は残念なことにこのダメ男に惚れられているが故に、渡されるであろうな。ああ嫌だ嫌だ」
夕美の目がすっと細まった。
「……どゆこと、お兄ちゃん?」
「体が目当てなんだ」
みことに殴られた上、夕美からは軽蔑の視線を受けた。
「冗談です。えーーーーーーと、その、……俺は夕美も好きだぞ?」
適当なことを言ってお茶を濁してみる。いや、嘘ではないが。
「えっ、えっ? もー、お兄ちゃんってばー、このロリコン♪ 夕美、小学生なのに……もう、やんやん♪」
夕美はやたら嬉しそうにニコニコしながら俺の背中をばんばん叩いた。
「…………」
そして今度はみことが怖い感じになったので怖い。
「すすすすす好きと言ってもこう、アレだぞ? 妹に対して、みたいな?」
夕美に対して言っているように見えて、その実みことに向けて話す。
「つまり、お兄ちゃんにとっては攻略対象なんだよね?」
「はい」
しまった、本音が! ていうか攻略対象とか言うな、夕美。
「……ということだよ、みことおねーちゃん。お兄ちゃんはロリコンさんなので、ちっこい夕美の方が好きなんだよ。と、いうわけで、ワイシャツは夕美がいただきだよ!」
「……ふ、ふふふふふ。哀れなり夕美殿! こやつがロリコンなのは百も承知! 我が肉体がどれほど凹凸に恵まれていないか知らぬのか!」
胸を張って悲しい事を言うぺったんこ。もとい、みこと。
「そして夕美殿、貴殿には未来がある! 成長、という未来が! 一方、既に成長期を過ぎた私にはその可能性はないに等しい! この場合、別府タカシがどちらを採るか……聡い貴殿にはもう分かるであろう?」
「にゃにゃ!? ……で、でも夕美のお母さんもぺったんこだもん! きっと夕美もあんな感じになるもん!」
なんだか議論がずれているような。確かワイシャツの話じゃなかったっけ。まあいいや、二人ともいい感じにヒートアップしてるし、ばれないように逃げよう。
「そこ。逃げるな」
すぐばれた。部屋の中央に引っ張られ、正座させられる。
「そもそも、貴様がいかんのだ。誰彼構わず好き好き言いおって……その舌引っこ抜いてくれようか」
「ひぃ! 助けて夕美!」
あまりの恐怖に夕美に抱きつく。
「……お、お兄ちゃん。いきなりだと、夕美、びっくりさんだよ」
夕美は困ったような、でも満更でもないような表情でにっこり笑った。
「あ、いやその……ごめんな」
「う、ううん、いいんだよ。……えへへ」
「あは、あはは……」
「……誰か忘れていまいか、別府タカシ?」
背後から聞こえる声に、律儀に血の気が引く。
「わ、ワイシャツが欲しいのならみことにあげるよ?」
「ほ、本当か? ……あ、いや、別にいらぬのだが、どうしてもというのなら受け取ってやらなくもないぞ」
一瞬笑顔になったみことだったが、すぐに表情を引き締めた。
「夕美にくれないとその舌引っこ抜くよ?」
前門の虎、後門の狼とはこのことを言うのかなあ、とか思いながら笑顔の夕美を眺める。
「「……で、どっちにくれるの?」」
「……こんなものがあるから争いが止まないんだ! こんなもの!」
意を決し、全ての元凶であるワイシャツを引き裂く! ……ひ、引き裂く!
「……お兄ちゃん、全然破れてないよ」
「まあ、ちょっと引っ張った程度で破れるものではないしな。……さあ、どちらに渡すのだ」
さて、今度こそ進退窮まった。
ので、もう一つあるワイシャツもあげることにした。
「ま、まあこんなものいらぬのだが、どうしてもと言うなら、な。……ふふふふふ」
「やった、やったよ! これでいつでもお兄ちゃんと一緒な感じだよ! くんくん……はふー。くんくんくん……はふー!」
喜び勇んで(みことは必死に隠しているようだったが)ワイシャツを抱きしめる二人だった。
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【ツンデレとホワイトデー】
2010年02月22日
一ヶ月ほど前、近所に住む年上の幼なじみ、みこねえから義理(という割に手作りで気合入ってた)チョコを貰ったので、その一ヵ月後、つまり今日、お返ししないといけない。
しかし、お金を使うのは嫌だ。だからといってそこらの雑草をプレゼントと称して渡しても、
『はい、プレゼントふぉーゆー』
『ふむ、美麗な箱だな。それで、中身は何だ?』
『くさ』
『結婚しよう』
となる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。なので、無難に近所のスーパーで適当な品を買おうと学校帰りに寄ると、みこねえに遭遇した。
「む? どうして貴様がこんなところにいるのだ」
嫌そうな顔をされたので半泣きで店の外に出ようとしたら、慌てた様子のみこねえに引き止められた。
「な、何も泣かずともよい! 怒ってないぞ、私は怒ってないからな」
幼児にするように頭をなでられた。やや屈辱。
「それで、何しに来たのだ? 母君のおつかいか? 偉いぞ」
この人は俺を幼稚園児と勘違いしてるに違いない。お使いで褒められるのは小学生までだろう。もう高校生ですよ、俺。
「や、ただのお返……」
待て。ここで素直にお返しを買いに来たと言ったと仮定しよう。
『ホワイトデーのお返しを買いに来たんだ』
『私へのお返しをこんなおんぼろスーパーで買うつもりか? 死んだほうがいいな』(鈍く光る刃物片手に)
さくっぶしゅーぎにゃーぱたり。
『さよなら愛しい人』
とBADEND一直線に違いない。適当な言い訳を!
「おかえ?」
「陸へ行きたいなあ、進化したいなあ、という進化しそこねた過去の水棲生物の記憶が突如蘇ったんだ」
「…………」
不憫な子を見る目をしたみことに頭をなでられた。
「まあそんなこんなでぶらりとお買い物に来ただけなので、俺の事は気にせずみこねえは好きに行動してください。俺は俺で適当にうろつくから」
「何を言うか。貴様のような不審人物を放っておけるか。ほら、一緒に回るぞ」
手を引っ張られ、一緒に店内を回ることになってしまった。困った、これではお返しの菓子を買えない。
「そうだ、今日はうちで一緒にご飯食べるか? 父も母もお前のことを心配していたぞ」
うちは両親が共働きで忙しいので、子供の頃はよくみこねえの家で飯を食っていた。その延長で、今でもたまに飯を食べさせてもらっているが、さすがにこの歳になると食い気より申し訳なさの方が先に立つ。
「や、折角のお誘いだけど……」
「今日は特別に私がオムライスを作ってやるぞ」
「行く」
みこねえの作るオムライスは絶品なので大好きだ。申し訳なさ? そんなのオムライスの前では塵芥に等しいですよ!
「そうか。久々に腕を振るおうとしよう」
再びみこねえは俺の頭をなでた。やめてほしいが、機嫌よさそうになでてるので我慢しよう。ほら、大人なので。
「~♪」
鼻歌を口ずさむみこねえと手を繋ぎ、一緒に店内を回ってると、見覚えのある女生徒を見かけた。
「あら、みことじゃない。それに、弟クンも。こんにちは」
見覚えある女性は、よくみこねえと一緒にいる友達のようだった。とまれ、挨拶を返そう。
「こんにちは」
「はい、よくできました」
女生徒はにっこり笑い、背伸びして俺の頭をぐりぐりなでた。……どうして年上の女性というのは俺の頭を撫でるのだろう。そういう決まりでもあるのだろうか。
「姉弟そろってお買い物?」
「別に姉弟ではない。こいつが寄ってくるだけだ。全く、迷惑な話だ」
「あらそうなの? じゃ弟クン、私と一緒に来る?」
お誘いを受けた。どうしようかとみこねえの顔を窺う。
「す、好きにしたらいいだろう。私には関係ない」
顔を背けながらも、みこねえは俺の手をぎゅっと握った。……うーん、やっぱみこねえと一緒にいたいな。よし、断ろう。
「ね、弟クン。……いけない遊び、しよっか?」
「する」
思わず脊髄反射で答えると、握られた手に渾身の力が込められた。骨が軋む音がここまで聞こえてくるようだ。
「ぼぼぼくはみこねえと一緒にお買い物しているので、折角ですが辞退させてください」
「あらそう残念。じゃあね、二人とも♪」
お姉さんはひらひらと手を振って去っていった。……したかったなあ。いけない遊び、したかったなあ!
歯噛みして悔しがってると、みこねえが俺を睨んでるのに気がついた。
「……お前は可愛い子が相手だと、すぐホイホイついていこうとするな。……お姉ちゃんがいるというのに」
みこねえは口を尖らせ俺を責めた。みこねえの一人称が私ではなくお姉ちゃんとなった時、それは姉ぶっている時であり、大概面倒なことになる。
「や、そ、その、男と生まれたからにはやはり女性に恥をかかせてはならないと思ったまでで! 決していけない遊びに惹かれたのではないですヨ?」
「…………」
「嘘です惹かれました男の子ですから!」
みこねえには嘘はつけない。べべべつに無言の圧力が怖いとかじゃなくて! ホントに!
「……はぁ。お姉ちゃんはどうかと思うぞ」
「すいません」
「まったく……まぁ、着いていかなかったから、いいけど」
ようやっと機嫌が直ったようだ。やれやれ、困った姉だ。
「ところで、お前は何を買うんだ?」
「ホワイトデーのお返しを」
「…………」
しまった、普通に答えてしまった! いかん、俺の未来予想図(BADEND一直線)が現実のものに! 回避、かいひー!
「……誰のだ」
底冷えのする声でみこねえが俺に尋ね……いや、詰問する。
「答えろ。誰へのお返しだ」
「みみみみみこねえへのデス」
「……へ?」
よほど意外だったのか、みこねえは珍しく間の抜けた返事をした。
「だ、だから、みこねえへのお返し」
「……わ、私のために、か?」
包丁ENDかと思われたが、意外にも感触は悪くなかったようで、みこねえは少し顔を赤らめて訊ねた。
「え、あ、うん。……当日にこんなスーパーで探すのもどうかと思うけど」
「いやっ、いやいやいや! 大丈夫だ、お姉ちゃんは気にしないぞ! そうか、私のためか……ふふっ、そうか!」
途端、みこねえの機嫌がとてもよくなった。見てて怖くなるくらい。
「買うお金あるか? お姉ちゃんがあげようか?」
「い、いや、みこねえへのプレゼントなんだし、それは自分で出さないとダメだろ」
「~~~~~っ!!」
感極まったようにみこねえが俺を抱きしめ、動物にするかのように何度も何度もほお擦りする。
「偉いぞ! 流石は自慢の弟だ!」
「み、みこねえ! 当たってる、さほど大きくはないがそれでもしっかりと自己を訴えかける二つの膨らみが当たってる!」
「ん? ……さ、触りたいのか?」
「女の子がそういうこと言うのダメー!」
「お、お姉ちゃん、お前が相手なら……」
「のー! ダメ! ばつ!」
両手でバツを作る。
「いいから買い物すませよう! な、みこねえ?」
「その後で、ということか? ……ま、まったく、えっちな奴め」
「ちげーっ!」
そんなこんなで買い物を終え、飯をお呼ばれし、むしゃむしゃ後、みこねえの部屋に移動する。
「さて。腹もこなれたので、ホワイトデーの真骨頂を見せる時間です」
「……ぷ、プレゼントはお前なのか? ……お、お姉ちゃん、ちょっとドキドキだぞ」
「そう実は俺がプレゼント大事にしてねってちげーよ」
「ノリツッコミだ」
何故か拍手された。
「これ。クッキー。おいしいよ、きっと」
そこそこ高級なクッキーがあったので、みこねえに隠れて買っておいたのだ。
「クッキーか。よし、一緒に食べよう」
「え、いや、お返しだからそれはおかしいと」
「飲み物は何がいい? コーヒーか? 紅茶か?」
「尿」
殴られたのでコーヒーを頼む。
「ほら。熱いから気をつけろ。それとも、お姉ちゃんがふーふーしようか?」
それはとても恥ずかしいので断る。
「ふー、ふー。……ほら、ちょうどいい温度になったぞ」
断ったのにふーふーされた。
「みこねえにこれって間接息だよなって言ったら」
「よ、余計な事を言うな、ばかっ」
と、怒られます。
「しかし……義理チョコだったのに、こうして律儀にお返ししてくれるなんて、お前は偉いな。お姉ちゃんは誇らしいぞ。うにうに」
誰も見てない事をいいことに、みこねえは俺を後ろから抱っこして頬をすりすりする。
「ほら、あーん」
そしてその状態のままクッキーを食べさせようとする。
「みこねえ、流石に恥ずかしいのでやめもがもが」
「どうだ? おいしいか?」
「もがもぎゅもぎゅごくん。おいしい」
制止している最中にクッキーを食べさせられ感想を強要された。おいしかった。
「ふふっ、そうか」
そして、再びすりすり。
「ほら、あーん」
「いやあのみこねえ、これはお返しなのでみこねえが食べないともがもがもが」
「おいしい?」
「もぎゅもぎゅごくん。おいしい。いやそうじゃなくて」
「んー♪」
三度すりすり。
「みこねえ、俺ばかり食べるのはおかしいと」
「あーん♪」
「いや、その、これはみこねえのために買ったものでもがもが」
「どうだ?」
「もぐごきゅん。おいしい」
「んきゅ~~~~♪」
またすりすりされた。
結局、クッキーは全部俺が食べました。
しかし、お金を使うのは嫌だ。だからといってそこらの雑草をプレゼントと称して渡しても、
『はい、プレゼントふぉーゆー』
『ふむ、美麗な箱だな。それで、中身は何だ?』
『くさ』
『結婚しよう』
となる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。なので、無難に近所のスーパーで適当な品を買おうと学校帰りに寄ると、みこねえに遭遇した。
「む? どうして貴様がこんなところにいるのだ」
嫌そうな顔をされたので半泣きで店の外に出ようとしたら、慌てた様子のみこねえに引き止められた。
「な、何も泣かずともよい! 怒ってないぞ、私は怒ってないからな」
幼児にするように頭をなでられた。やや屈辱。
「それで、何しに来たのだ? 母君のおつかいか? 偉いぞ」
この人は俺を幼稚園児と勘違いしてるに違いない。お使いで褒められるのは小学生までだろう。もう高校生ですよ、俺。
「や、ただのお返……」
待て。ここで素直にお返しを買いに来たと言ったと仮定しよう。
『ホワイトデーのお返しを買いに来たんだ』
『私へのお返しをこんなおんぼろスーパーで買うつもりか? 死んだほうがいいな』(鈍く光る刃物片手に)
さくっぶしゅーぎにゃーぱたり。
『さよなら愛しい人』
とBADEND一直線に違いない。適当な言い訳を!
「おかえ?」
「陸へ行きたいなあ、進化したいなあ、という進化しそこねた過去の水棲生物の記憶が突如蘇ったんだ」
「…………」
不憫な子を見る目をしたみことに頭をなでられた。
「まあそんなこんなでぶらりとお買い物に来ただけなので、俺の事は気にせずみこねえは好きに行動してください。俺は俺で適当にうろつくから」
「何を言うか。貴様のような不審人物を放っておけるか。ほら、一緒に回るぞ」
手を引っ張られ、一緒に店内を回ることになってしまった。困った、これではお返しの菓子を買えない。
「そうだ、今日はうちで一緒にご飯食べるか? 父も母もお前のことを心配していたぞ」
うちは両親が共働きで忙しいので、子供の頃はよくみこねえの家で飯を食っていた。その延長で、今でもたまに飯を食べさせてもらっているが、さすがにこの歳になると食い気より申し訳なさの方が先に立つ。
「や、折角のお誘いだけど……」
「今日は特別に私がオムライスを作ってやるぞ」
「行く」
みこねえの作るオムライスは絶品なので大好きだ。申し訳なさ? そんなのオムライスの前では塵芥に等しいですよ!
「そうか。久々に腕を振るおうとしよう」
再びみこねえは俺の頭をなでた。やめてほしいが、機嫌よさそうになでてるので我慢しよう。ほら、大人なので。
「~♪」
鼻歌を口ずさむみこねえと手を繋ぎ、一緒に店内を回ってると、見覚えのある女生徒を見かけた。
「あら、みことじゃない。それに、弟クンも。こんにちは」
見覚えある女性は、よくみこねえと一緒にいる友達のようだった。とまれ、挨拶を返そう。
「こんにちは」
「はい、よくできました」
女生徒はにっこり笑い、背伸びして俺の頭をぐりぐりなでた。……どうして年上の女性というのは俺の頭を撫でるのだろう。そういう決まりでもあるのだろうか。
「姉弟そろってお買い物?」
「別に姉弟ではない。こいつが寄ってくるだけだ。全く、迷惑な話だ」
「あらそうなの? じゃ弟クン、私と一緒に来る?」
お誘いを受けた。どうしようかとみこねえの顔を窺う。
「す、好きにしたらいいだろう。私には関係ない」
顔を背けながらも、みこねえは俺の手をぎゅっと握った。……うーん、やっぱみこねえと一緒にいたいな。よし、断ろう。
「ね、弟クン。……いけない遊び、しよっか?」
「する」
思わず脊髄反射で答えると、握られた手に渾身の力が込められた。骨が軋む音がここまで聞こえてくるようだ。
「ぼぼぼくはみこねえと一緒にお買い物しているので、折角ですが辞退させてください」
「あらそう残念。じゃあね、二人とも♪」
お姉さんはひらひらと手を振って去っていった。……したかったなあ。いけない遊び、したかったなあ!
歯噛みして悔しがってると、みこねえが俺を睨んでるのに気がついた。
「……お前は可愛い子が相手だと、すぐホイホイついていこうとするな。……お姉ちゃんがいるというのに」
みこねえは口を尖らせ俺を責めた。みこねえの一人称が私ではなくお姉ちゃんとなった時、それは姉ぶっている時であり、大概面倒なことになる。
「や、そ、その、男と生まれたからにはやはり女性に恥をかかせてはならないと思ったまでで! 決していけない遊びに惹かれたのではないですヨ?」
「…………」
「嘘です惹かれました男の子ですから!」
みこねえには嘘はつけない。べべべつに無言の圧力が怖いとかじゃなくて! ホントに!
「……はぁ。お姉ちゃんはどうかと思うぞ」
「すいません」
「まったく……まぁ、着いていかなかったから、いいけど」
ようやっと機嫌が直ったようだ。やれやれ、困った姉だ。
「ところで、お前は何を買うんだ?」
「ホワイトデーのお返しを」
「…………」
しまった、普通に答えてしまった! いかん、俺の未来予想図(BADEND一直線)が現実のものに! 回避、かいひー!
「……誰のだ」
底冷えのする声でみこねえが俺に尋ね……いや、詰問する。
「答えろ。誰へのお返しだ」
「みみみみみこねえへのデス」
「……へ?」
よほど意外だったのか、みこねえは珍しく間の抜けた返事をした。
「だ、だから、みこねえへのお返し」
「……わ、私のために、か?」
包丁ENDかと思われたが、意外にも感触は悪くなかったようで、みこねえは少し顔を赤らめて訊ねた。
「え、あ、うん。……当日にこんなスーパーで探すのもどうかと思うけど」
「いやっ、いやいやいや! 大丈夫だ、お姉ちゃんは気にしないぞ! そうか、私のためか……ふふっ、そうか!」
途端、みこねえの機嫌がとてもよくなった。見てて怖くなるくらい。
「買うお金あるか? お姉ちゃんがあげようか?」
「い、いや、みこねえへのプレゼントなんだし、それは自分で出さないとダメだろ」
「~~~~~っ!!」
感極まったようにみこねえが俺を抱きしめ、動物にするかのように何度も何度もほお擦りする。
「偉いぞ! 流石は自慢の弟だ!」
「み、みこねえ! 当たってる、さほど大きくはないがそれでもしっかりと自己を訴えかける二つの膨らみが当たってる!」
「ん? ……さ、触りたいのか?」
「女の子がそういうこと言うのダメー!」
「お、お姉ちゃん、お前が相手なら……」
「のー! ダメ! ばつ!」
両手でバツを作る。
「いいから買い物すませよう! な、みこねえ?」
「その後で、ということか? ……ま、まったく、えっちな奴め」
「ちげーっ!」
そんなこんなで買い物を終え、飯をお呼ばれし、むしゃむしゃ後、みこねえの部屋に移動する。
「さて。腹もこなれたので、ホワイトデーの真骨頂を見せる時間です」
「……ぷ、プレゼントはお前なのか? ……お、お姉ちゃん、ちょっとドキドキだぞ」
「そう実は俺がプレゼント大事にしてねってちげーよ」
「ノリツッコミだ」
何故か拍手された。
「これ。クッキー。おいしいよ、きっと」
そこそこ高級なクッキーがあったので、みこねえに隠れて買っておいたのだ。
「クッキーか。よし、一緒に食べよう」
「え、いや、お返しだからそれはおかしいと」
「飲み物は何がいい? コーヒーか? 紅茶か?」
「尿」
殴られたのでコーヒーを頼む。
「ほら。熱いから気をつけろ。それとも、お姉ちゃんがふーふーしようか?」
それはとても恥ずかしいので断る。
「ふー、ふー。……ほら、ちょうどいい温度になったぞ」
断ったのにふーふーされた。
「みこねえにこれって間接息だよなって言ったら」
「よ、余計な事を言うな、ばかっ」
と、怒られます。
「しかし……義理チョコだったのに、こうして律儀にお返ししてくれるなんて、お前は偉いな。お姉ちゃんは誇らしいぞ。うにうに」
誰も見てない事をいいことに、みこねえは俺を後ろから抱っこして頬をすりすりする。
「ほら、あーん」
そしてその状態のままクッキーを食べさせようとする。
「みこねえ、流石に恥ずかしいのでやめもがもが」
「どうだ? おいしいか?」
「もがもぎゅもぎゅごくん。おいしい」
制止している最中にクッキーを食べさせられ感想を強要された。おいしかった。
「ふふっ、そうか」
そして、再びすりすり。
「ほら、あーん」
「いやあのみこねえ、これはお返しなのでみこねえが食べないともがもがもが」
「おいしい?」
「もぎゅもぎゅごくん。おいしい。いやそうじゃなくて」
「んー♪」
三度すりすり。
「みこねえ、俺ばかり食べるのはおかしいと」
「あーん♪」
「いや、その、これはみこねえのために買ったものでもがもが」
「どうだ?」
「もぐごきゅん。おいしい」
「んきゅ~~~~♪」
またすりすりされた。
結局、クッキーは全部俺が食べました。
【ツンデレに鞄を持たされたら】
2010年02月20日
「おい、そこの人間廃棄物」
帰る準備をしてたら酷いあだ名で呼ばれたので振り向くと、みことが腕を組んで立っていた。
「違います」
「うるさい。貴様なぞ廃棄物で充分だ。特別に私の鞄を持つ栄誉を与えてやろう」
当然のように鞄を俺に放り、みことは教室を出て行った。
「なんつー傲慢な奴だ! この俺がホイホイついていくと思ったら大間違いだ! 今すぐこの鞄を引き裂き、中身を千切っては投げ千切っては投げ」
「早くしろ愚図」
「はい」
廊下からの声に、しょんぼりしながら教室を出る。まだ残ってた数人の級友が可哀想な人を見る目で俺を見ていた。
「遅いぞ莫迦。私を待たせるなぞ100億光年早い」
「光年は距離の単位だと思うますが」
「私に意見するなぞ100兆年早いわ、廃棄物。貴様は黙って鞄を持っていればいいのだ」
くの……この野郎。怒り心頭、犯してくれる!(脳内で) ふははは、スク水姿でよがり狂っておるわ!(脳内で)
「おい、貴様の見るに耐えない醜悪な顔が更に歪んでいる。私の視界に入らぬ位置でやれ」
「はい、すいません」
半泣きでみことの家まで着いていき、鞄を届ける。
「寄っていけ、廃棄物」
「あい」
てってけてーとみことに着いていき、彼女の部屋へ。
「適当に座れ」
言われた通り適当に座布団の上に座り、その俺の上にみことが座る。
「ふん。人間の屑のくせに、座り心地は中々だな」
「そいつはどうも」
偉そうに鼻を鳴らし、みことは俺にもたれた。
「今日の稽古も、貴様が相手しろ」
「とても嫌だ」
「何か言ったか?」
「みことに相手してもらえるだなんて、光栄の至りだなあ」
本当は竹刀でべこんぼこんにされるので、とても嫌だ。
「ふん、当然だ。私に選ばれた栄誉を噛み締めていろ」
「や、別にいいんだけど……俺、弱いよ? みことは強いんだから、俺みたいな素人じゃなくて、門下生の人とやった方がいいんではないかと」
みことの家はなんとかという流派の道場の始祖らしく、今では全国に沢山の道場があるらしい。当然、その娘であるみことはトテモツヨイので、俺なんかじゃ到底相手できないのだが……。
「私に意見するな、愚図。貴様は黙って私の相手をしていればいいのだ」
そう言って、みことは全国から選りすぐられた門下生たちと手合わせせず、俺ばかりいじめる……もとい、稽古をつける。
「……それに、貴様も一応は門下生ではないか」
「誰も頼んでないのにな」
気がつけばみことに無理矢理入門させられていた。本当は俺みたいな素人は門前払いされるらしいが、みことの知り合いということで特別に入門を許されたのだ。
「貴様の軟弱さがあまりに目に余ったからだ。私の優しさに感激し、涙で溺れぬようにな」
「そいつぁどうも」
「……感謝の念が感じられんな。貴様はもっと私を尊敬しろ」
「無茶を言うない。まったく、みことがいなけりゃ、こんなとこ今すぐ辞めてんだけどなあ」
後ろからみことをぎゅっと抱きしめ、胸いっぱいに彼女の匂いを吸い込む。
「……何をしている」
「みこと臭を吸収中」
「やめんか、変態めが! ええい、離せ!」
「うーん、ムラムラしてきた」
「ふ、ふざけるな! そんなつもりで連れてきたのではないわ、たわけ! ええい、いつもいつも私に欲情しおって……この変態が!」
「ちゅーしたいな、ちゅー」
「だ、ダメに決まっているだろう、莫迦が!」
「ちゅー」
「んぷ……む、ちゅ……や、やめろと言ったはずだ、この莫迦が。ど、どうしてお前は毎回私にちゅーをするのか。まったく、貴様の脳はどうかしている」
「…………」
「な、なんだ? 己の低脳さに気づき、命を絶つ事を決心したか?」
「悪口言いながら俺にしがみ付いてるみことラブ」
「んにゃ!? ち、ちちち違うぞこれは違うぞ!? こ、これは……そ、そう、このまま貴様を締め落として殺そうと画策している最中だ!」
「あーもう、たまらんなあ!」
「んにゃ!? こ、このみこと様をぎゅーっとするなぞ、本来なら万死に値するぞ、莫迦めが。……と、特別に今だけは許してやるが」
むぎゅーと抱きしめられ、憮然とした表情で頬を高揚させるみことだった。
帰る準備をしてたら酷いあだ名で呼ばれたので振り向くと、みことが腕を組んで立っていた。
「違います」
「うるさい。貴様なぞ廃棄物で充分だ。特別に私の鞄を持つ栄誉を与えてやろう」
当然のように鞄を俺に放り、みことは教室を出て行った。
「なんつー傲慢な奴だ! この俺がホイホイついていくと思ったら大間違いだ! 今すぐこの鞄を引き裂き、中身を千切っては投げ千切っては投げ」
「早くしろ愚図」
「はい」
廊下からの声に、しょんぼりしながら教室を出る。まだ残ってた数人の級友が可哀想な人を見る目で俺を見ていた。
「遅いぞ莫迦。私を待たせるなぞ100億光年早い」
「光年は距離の単位だと思うますが」
「私に意見するなぞ100兆年早いわ、廃棄物。貴様は黙って鞄を持っていればいいのだ」
くの……この野郎。怒り心頭、犯してくれる!(脳内で) ふははは、スク水姿でよがり狂っておるわ!(脳内で)
「おい、貴様の見るに耐えない醜悪な顔が更に歪んでいる。私の視界に入らぬ位置でやれ」
「はい、すいません」
半泣きでみことの家まで着いていき、鞄を届ける。
「寄っていけ、廃棄物」
「あい」
てってけてーとみことに着いていき、彼女の部屋へ。
「適当に座れ」
言われた通り適当に座布団の上に座り、その俺の上にみことが座る。
「ふん。人間の屑のくせに、座り心地は中々だな」
「そいつはどうも」
偉そうに鼻を鳴らし、みことは俺にもたれた。
「今日の稽古も、貴様が相手しろ」
「とても嫌だ」
「何か言ったか?」
「みことに相手してもらえるだなんて、光栄の至りだなあ」
本当は竹刀でべこんぼこんにされるので、とても嫌だ。
「ふん、当然だ。私に選ばれた栄誉を噛み締めていろ」
「や、別にいいんだけど……俺、弱いよ? みことは強いんだから、俺みたいな素人じゃなくて、門下生の人とやった方がいいんではないかと」
みことの家はなんとかという流派の道場の始祖らしく、今では全国に沢山の道場があるらしい。当然、その娘であるみことはトテモツヨイので、俺なんかじゃ到底相手できないのだが……。
「私に意見するな、愚図。貴様は黙って私の相手をしていればいいのだ」
そう言って、みことは全国から選りすぐられた門下生たちと手合わせせず、俺ばかりいじめる……もとい、稽古をつける。
「……それに、貴様も一応は門下生ではないか」
「誰も頼んでないのにな」
気がつけばみことに無理矢理入門させられていた。本当は俺みたいな素人は門前払いされるらしいが、みことの知り合いということで特別に入門を許されたのだ。
「貴様の軟弱さがあまりに目に余ったからだ。私の優しさに感激し、涙で溺れぬようにな」
「そいつぁどうも」
「……感謝の念が感じられんな。貴様はもっと私を尊敬しろ」
「無茶を言うない。まったく、みことがいなけりゃ、こんなとこ今すぐ辞めてんだけどなあ」
後ろからみことをぎゅっと抱きしめ、胸いっぱいに彼女の匂いを吸い込む。
「……何をしている」
「みこと臭を吸収中」
「やめんか、変態めが! ええい、離せ!」
「うーん、ムラムラしてきた」
「ふ、ふざけるな! そんなつもりで連れてきたのではないわ、たわけ! ええい、いつもいつも私に欲情しおって……この変態が!」
「ちゅーしたいな、ちゅー」
「だ、ダメに決まっているだろう、莫迦が!」
「ちゅー」
「んぷ……む、ちゅ……や、やめろと言ったはずだ、この莫迦が。ど、どうしてお前は毎回私にちゅーをするのか。まったく、貴様の脳はどうかしている」
「…………」
「な、なんだ? 己の低脳さに気づき、命を絶つ事を決心したか?」
「悪口言いながら俺にしがみ付いてるみことラブ」
「んにゃ!? ち、ちちち違うぞこれは違うぞ!? こ、これは……そ、そう、このまま貴様を締め落として殺そうと画策している最中だ!」
「あーもう、たまらんなあ!」
「んにゃ!? こ、このみこと様をぎゅーっとするなぞ、本来なら万死に値するぞ、莫迦めが。……と、特別に今だけは許してやるが」
むぎゅーと抱きしめられ、憮然とした表情で頬を高揚させるみことだった。
【部屋に全裸でいたらツンデレがやってきた】
2010年02月17日
近頃とっても暑いので、ちょっとは涼しくなるかと全裸になってみたらこれが涼しい!
そんなわけで、気をよくして部屋で生まれたままの姿でいたら、突然来訪したみことが悲鳴をあげた。
「それは分かる。ただ、どうして俺が殴られるのか、その意味が分からない」
「ううううう、うるさいっ! どうして裸でいるんだお前は! この馬鹿、変態、露出狂!」
「いや、まだ露出して気持ちよくなる域までは達してない。ただ、みことが望むのであれば、俺も頑張る」
「頑張るな! そ、それより、早く服を着ろ!」
「ああ、まだ着てなかったっけ。道理でみことがこっちを見ないわけだ。はっは」
みこと方面から不穏な空気を感じたので、慌てて服を着る。
「ほい、もーいいぞ」
「そ、そうか。まったく、お前という奴は……チャックが開いているぞ!!!」
「わざとなんだ」
また殴られたので、チャックを閉める。
「この変態めが……」
「ちょっとした冗談なんだ。ただ、冗談から本気になる可能性も否めないから、するべきではないと分かっているんだ」
「分かっているならするなッ!」
とても怒られた。怖かった。
「それより、聞いてくれみこと。大変なことを発見してしまったんだ」
「……どうにも嫌な予感しかしないが、聞いてやろう。なんだ?」
「裸だと、すごく涼しいんだ。だから、みことも裸に」
皆まで言う前に殴られた。鼻血出た。
「するわけないだろう、このたわけっ! ちょっと考えれば分かる道理だろう!」
「何かの奇跡で『そうねそうねその通りね、ここはいっちょう全裸になるべきね!』とか言い出すかと」
鼻にティッシュ詰めながらそう言ったら、みことがため息をついた。
「どうしてお前はそう阿呆なのだ……?」
「うむ、確かにいきなり全裸を勧めるのは阿呆だろう。ここはそれよりレベルの下がる水着でどうだろう」
「それでも阿呆だ、阿呆。……ふむ、だがこうも暑くては水着になりたがる気持ちも分からんでもない」
「言質を取った! 最早みことのエロ姿は絵空事ではない! ふふ……ふわーっはっはっはっはっは!」
また殴られたので話を進める。
「つまり、プールに行きましょうという話なのです」
「プールだと? まだ開いてないと記憶しているが」
「あー。確かにまだ春だからなあ。ふむ……あ、超名案を思いついた!」
みことがあからさまに嫌そうな顔をしたが、気づかないフリをする。
「水風呂に水着で入ればいい! 涼しいし目の保養だし、ひょっとしたらぽろりもあるかも! あと、狭い風呂場で肌が触れ合うのがとても楽しみだ!」
「えい」
「ぐ」
ノドを地獄突きされた。苦しさのあまり床を転がる。
「ふむ。ぽろりや触れ合いはともかく、水風呂はよい案だな」
「なら何故突く」
「邪な気を感じた故に」
「じゃあ俺は常に突かれてますよ! どうだ!」
「威張るな、馬鹿者!」
またノドを突かれた。再びごろごろ転がる。
「まあ、水風呂は私も賛成だ。……だが、一緒に入るなど論外だ」
「そんなあ! じゃ、じゃあ、外で待ってるから、後で水着を着たままいやらしいことはしていいよね? 擬音で説明するとぬるぬるぐちょぐちょOKだよね?」
「論外だッッッ!!!」
ものすごい勢いで拳が迫ってきて、暗転。
気がつくと、部屋で転がっていた。みことはもういない。
「……うーん、帰っちまったか。残念」
軽くノドが渇いたので、台所で水を飲む。ごくごく、うまい。そのまま部屋に戻ろうとしたら、風呂場から物音がした。
「……まさか」
風呂場のドアを開ける。果たして、そこに水着姿のみことがいた。
「ああ、起きたか。まったく、あれしきで気絶するとは精進が足りんぞ」
「ひとんちの風呂に勝手に入るって凄いよな」
「なんだ、嫌なのか? それならすぐにでもあがるが」
「そんなこと一言も言ってないじゃないか! いいか、待ってろよ! 絶対だぞ! すぐ水着取ってくるから、一人であがったりしたら泣くぞ!」
「こ、こら! 誰も一緒に入ってやるなどと……ぬう、もう行ってしまったか。……まったく」
体感では光速を超える速さで水着を探し、目にも止まらないであろう速さで装着し、全速で風呂場に戻る。
「ぜっ、ぜっ……み、水着、きっ、着た……ぜっ、……ぜっ」
「ちょっとは落ち着け! そう慌てずともあがらんわ!」
「……じゃ、じゃあ?」
「……ま、まあ、一緒に入ってやってもいいぞ。だ、だが勘違いするな! 別に貴様と一緒に入りたいのではない、あまりに貴様が哀れだから許可してやっただけにすぎないのだからなっ!」
みことは顔を真っ赤にして俺を指差した。
「哀れでよかった! じゃあ入るぞ! 今から嫌だとか言っても聞かないぞ!」
「……う、うむ」
みことは俺一人が入れる分のスペースを開けてくれた。その余地にゆっくりと腰を下ろす。
「こ、こら、あまり近寄るな馬鹿!」
「狭いんだから無茶を言うない」
我が家は高級なる家でもなんでもないので、一般的な風呂として狭い。二人で入った日には肌と肌が触れ合うのも仕方のないことだろう。
「いいか、貴様が泣いて頼むから一緒に入ってやったまでで、えっちなことをしたら即排斥するぞ。繰り返すが、えっちなことは絶対にするなよ?」
「ダチョウ倶楽部方式ですね、分かります」
目を三角にして俺の頬を千切らんばかりにつねることから、違うらしいという結論が出た。
「しかしだな、みことよ。スク水を着ておいてえろす不可とは、随分と酷な話ではないか?」
みことは学校指定のスクール水着を着ていた。みことの起伏のない体と濃紺の水着、その美しきコントラストに、そして何よりほんのりと桜色に色付く頬に、魅了されずにはいられなかった。
「ばっ、馬鹿者! 勘違いするでない! ほ、他の水着がなかっただけで、別に貴様を喜ばせるために着たんじゃない! ほ、本当だからな!?」
「理由はどうあれ、とても淫靡かつ可愛らしくてお兄さん何か下半身が大変だよ」
「大変?」
みことは視線を俺の下腹部に転じた。俺の分身が「こんにちは!」って水着越しに挨拶してた。
「なっ、なななななっ、何を大きくしているっ、この大馬鹿者っ!!!」
「だってさー、こんな美少女と一緒に風呂入ったら普通こうなるさな」
「びっ、美少女……ばっ、ばかっ、そういうこと言うなっ、ばかっ!」
とても俺を昏倒させた者と同一とは思えないほどの迫力のなさで、みことは俺をぽかぽか叩いた。
「かーわいい」
「うっ、うるさいっ! 馬鹿にするな! いーからそれをどうにかしろ!」
みことは両目を覆ったが、指の隙間から俺のこんにちはを見てた。
「自力で小さくするのは至難の技です。みことが隣にいるのなら尚のこと」
「ちょっとは小さくする努力をしろ!」
「みことが協力してくれるなら、やぶさかではない」
「ほ、本当か?」
「ええ、もちろん」
俺は、にっこり笑った。
「……二度と貴様なんかと一緒に風呂なぞ入らん! 入らんからな!」
「まーまー、そう怒るな。そんな大した事じゃないと思うのだけど」
部屋の隅っこで体育座りをし、怒気を振りまくみことに笑いかける。
「どこが大した事じゃないんだ!? あ、あんな……あんな……」
先ほどの行為を思い出したのか、みことの顔が火がついたように赤くなった。
「うう……雰囲気に呑まれて……私の馬鹿ぁ……」
「紺色に白色のコントラストが素敵でしたよ」
「言うなああっ! よくもあんなものを私にかけおって……ええい腹立たしい!」
みことは俺に馬乗りになり、べこぼこ殴った。
「痛っ、痛いっ! いやあのその、とても気持ちよかったですから! まさか、手」
「だああああっ! 言うな、言うなああっ! その口を一生閉じていろ、馬鹿めっ!」
赤い人に何度も何度も殴られました。
風呂の出来事(エロ注意)は……
「……そ、それで、どうしたらいいのだ?」
「ええと、出せば済むんだけど……とりあえず、慣れることから始めようか」
風呂の縁に座り、みことを招きよせる。そして、みことの手を取り、俺の股間にいざなう。
「何をするか、不埒者ッ!」
「げはあっ!?」
すると腹部に深々とみことの拳が突き刺さり、痛い。
「ううう……痛いよう、腸が飛び出そうだよう」
「い、いきなり何をさせようというのだ! この変態めが!」
「手伝ってくれるって言ったのに、いきなり殴られた……ひでー、みことさん、ひでー」
「む、ぐ……い、いやしかしだな」
「やっぱみことって口だけなんだな」
「! 口だけとは何だ! いいだろう、やってやろうではないか! ほら、指示しろ!」
軽い挑発で簡単にのった。ふふ、容易し。
「じゃあ、水着の上から触ってみて」
「む……」
ビンビンに猛っている俺の息子に、みことは怯えているようだった。
「別に噛み付いたりしないから安心しろ」
「かっ、噛み付く種類もあるのかっ!?」
「そうだ」
面白いので騙そう。
「そうか……世界は驚きに満ちているな」
何故かみことは感慨深そうな表情をしていた。
「とにかく、これは安全な種類なので、落ち着いて触ってくれ」
「む……わ、分かった」
ごくりと唾を飲み込み、みことは思い切り俺の竿を握った。
「!!!!!」
「どっ、どうした!? 痛いのか!?」
「つ……強すぎだ、馬鹿……」
「え、ええっ!? こ、こんなことするの初めてだから加減なぞ分かるか! 先に言え、阿呆!」
狼狽しながらも俺を叱責するのを忘れないのは、ある種驚嘆に値すると言えよう。
「も、もっと優しく、壊れ物を扱うように触っていただけると何かと助かります」
「む……こ、こうか?」
そう言って、みことは優しく俺の竿を包んだ。
「そ、そう。もうちょっと強くても構わない」
「む、むぅ……こうか? ……なっ、何かドクンドクン言ってるぞ!?」
「あー、まあ血が通ってるからなあ。それはさておき、慣れたか?」
「む、ま、まあ、多少は。私にかかればどのようなことも容易よ」
「じゃあ」
おもむろに水着を脱ぐ。
「!!! い、いきなり何をしているか、この変態ッ!」
「へぶうっ!?」
再び腹部にみことの拳が深々と突き刺さり、大層痛い。
「な、慣れたなら次のステップに移行するのが当たり前じゃん。うう、痛いよう、ぽんぽん痛いよう」
「粗末なものをぷらぷらさせるな、愚か者ッ!」
「そ、粗末とは失礼ナリ! 多分標準レベルだと思いますよ! 仮性ですが!」
「火星……?」
みことは下の情報に詳しくないようだった。
「や、まあそれはいいや。とにかく、しゃぶれ」
鼻血が出るまで殴られたので、許しを請う。
「嘘です冗談です手で充分です。殺さないでください」
「はーっ……はーっ……当然だ、馬鹿者が」
「口はまた後日ということで」
みことの目に危ない光が宿ったので、全力で土下座する。
「一度お前は死んだほうがいいかも知れんな……」
「あ、あはははは、冗談きっついなー」
「冗談、なぁ……」
冗談だよね。そうだよね。そうだと言ってよ。
「とにかく! 手でいいからお願いします」
洗い場に移動し、ぺたりと座る。そして、みことを手招き。
「ぬ、ぬぅ……」
みことは俺のきかん棒をチラチラ見ては、うめき声を上げていた。
「怖いと。“あの”みこと様が、たかが肉の棒に恐れを抱いていると。俺の付属物を恐れていると」
「だっ、誰が怖いと言った、誰が! ふん、こんなものに恐怖を抱こうはずもない!」
安い挑発に簡単にのり、みことは俺の広げた脚の間に座った。
「……で、その。……どっ、どうすればいい?」
不安と羞恥に顔を曇らせ、みことは囁くように訊ねた。
「ええと、まずさっきみたいに握って」
「さ、触るのか!? ち、直で?」
「そりゃ、触らないともう納まらないからなあ……」
みことの視線に晒され、もはや別の生き物のように腫れ上がっている竿を見て呟く。
「う、うう……」
「……あー、どうしても無理なら一人で処理するから、なんだったら別に」
「わ、私を愚弄するか! いつ、誰が無理だと言った! 私はみことだぞ、この私に不可能など存在せん!」
自らを鼓舞するような発言と同時に、みことは俺の竿を握った。
「ひゃっ!? あ、熱いし、ビクビク言ってるぞ!? ……こんな熱いものなのか、これって」
「や、その、……正直、俺もここまでなったのは初めてなので」
みことは珍しい物でも見るかのように、俺のをゆっくり指でなぞった。
「す、すごいな……こうなるのか、男は」
「ん、ぐ……み、みこと、焦らすのはいいから、そろそろ頼む」
「む、うむ」
小さくうなずき、みことは俺の竿を優しくこすった。自分でするのとは全く違う感覚に、あっという間に達しそうになる。
「……ふっ、ふうっ、……ふっ」
みことの荒い呼気が肩にかかる。
「みこと……」
「ん? なんだ?」
「キス、したいのだが……」
「えっ!? なっ、そっ、そんなの、だ、ダメに決まってるだろ! な、何を言ってるんだ、この馬鹿!」
「みこと……」
「うっ……そ、そんな顔で見るな」
じっと見つめると、みことはうろたえた様に視線をさ迷わせた。
「……そ、その。……特別だぞ?」
「え……じゃあ!」
「そ、そんな喜ぶな、ばか! あっ、こらっ……ん」
有無を言わさず、みことに口付けする。口と口を合わせるだけのキスだが、頭の中は爆発が起こったみたいにわやくちゃだ。
「ん……ぷはっ。……も、もう、ムードも何もあったもんじゃないな。……ファーストキスだったんだぞ。感謝しろ、ばか」
拗ねたような上目遣いで、俺のハートを攻撃するみこと。
「あー、うん。する。しまくる。だからもっかい」
「ええ!? ちょ、ちょっと……んうっ」
再びみことに口づけする。唇をなぞり、軽く噛む。
「んっ、は、噛むなぁ……」
恍惚とした声で不満の声を上げるみことを無視し、舌を差し入れる。
「!!? しっ、舌っ!?」
「逃げるな」
「んーっ!?」
舌に驚き離れたみことの腕を取り、再び口づけする。歯の隙間から舌を差し入れ、縮こまった舌を探り当て、ぺろぺろとみことの舌を味わう。
「んー、ひゃらあ、……ちゅううっ、ぺ、ぺろぺろふんなぁ……」
「……ちゅ。みこと、手がお留守だぞ」
「ふぇ? あ、んー」
俺の竿をこすらせ、その最中もみことの口を味わう。今現在に限るのであれば、地球で一番俺が幸せに違いない。
「みこと、おっぱい見せて」
「はむ、ちゅー……ん、うん」
唇を甘噛みしながら頼んだら、思ったより簡単に許可が出た。みことの水着をずらし、ちいさな乳首を露出させる。みことは陶然とした表情でされるがままだった。
鳥がするようにみことの唇をついばみながら、ピンク色の小さな乳首を軽く触る。
「ひゃわっ!? で、電気走ったあ……」
「電気マンだから仕方ないんだ」
「違うだろっ! ……もー、お前はこんな時までそんななんだな」
「電気マンだからな」
「違うって言ってるだろ! ……ふふっ、まあいい。ほら、キスの続きだ」
みことからのキスのおねだりに、内心驚きながら口を合わせる。口の端から涎がこぼれるのも構わず、みことの口を貪る。
「んー……ちゅ♪ ぷあっ、ちゅっちゅ、ちゅー……んむ」
もうどっちの舌が自分の舌なのか分からなくなる錯覚に陥るほどに絡ませあい、みことの涎を嚥下する。気のせいか、ほの甘い。口を離し、みことの乳首をクリクリと刺激する。
「ひゃっ! こ、この馬鹿、触り方がえっちだぞ!」
そう言いながらも、みことの手は俺の竿を擦り続けている。既にカウパーでみことの手はぬるぬるどころか泡までたっており、達するのは最早時間の問題だった。
だが、少しでもこの幸福で気持ちいい時間を長く保つために必死で我慢する。
「……? 何を変な顔をしている。もっとちゅーしろ、ばかやろう」
人が必死で射精感と戦っているというのに、みことの奴は俺の顔を片手で掴み、おもむろにキスをした。くちゅくちゅと口内で絡み合う舌の交わりに、腰骨が浮き立つような快楽を覚えた。
「っ!!」
「ひゃっ!?」
自制する間もなく、精が解き放たれる。みことの手を汚し、水着を白く彩り、みことの顔まで白く化粧してしまった。
「……はーっ、はーっ……気持ちよかった、今まで生きてきた中で一番気持ちよかった」
「……か、顔」
「ん?」
「……顔にかかったあ」
みことの泣きそうな顔に、悪戯心がむくむくと鎌首をもたげる。
「恋人同士だと、飲んだりするものだから大丈夫だ」
「そ、そうなのか?」
顔にかかった精液をすくい、みことは犬のようにくんくんと匂いを嗅いだ。
「……生臭い。生臭いぞ、これ! 本当に飲めるものなのか?」
「大丈夫大丈夫。ささっ、ぐぐーっと」
「ぬー……んっ!」
しばらくためらっていたが、やがてみことは意を決して口に含んだ。
「ん~っ!?」
「まずいのか?」
みことは涙目でコクコクうなずいた。
「いいから吐いちゃえ。まあ、飲んでくれると嬉しいけど」
「…………。……んっ」
みことのノドが動いた。飲み込んだようだ。
「……うあ~、まずい、まずいぃぃ……。ノドが、ネバネバするぅ……」
「そんなにか?」
「自分で飲んでみろ、馬鹿者ぉ……」
それだけは絶対に御免だ。
「とにかく、ありがとな、みこと。まさか飲んでくれるとは……」
「ふ、ふん。勘違いするな、私に不可能などないことを示したまでだ」
「じゃあもう一度お願いしようかな♪」
「もう一度? ……ひっ! な、なんでまたおっきくなってるんだ!?」
「や、みことが頑張ってる姿見てたら、こう、むくむくと」
「むくむくと、じゃないっ! きりがないじゃないか! 貴様、出したら納まると言ったではないか!」
「不思議だね」
「不思議だね、ではないっ! こら、寄るな! 寄るなと言っている!」
三回出しました。
そんなわけで、気をよくして部屋で生まれたままの姿でいたら、突然来訪したみことが悲鳴をあげた。
「それは分かる。ただ、どうして俺が殴られるのか、その意味が分からない」
「ううううう、うるさいっ! どうして裸でいるんだお前は! この馬鹿、変態、露出狂!」
「いや、まだ露出して気持ちよくなる域までは達してない。ただ、みことが望むのであれば、俺も頑張る」
「頑張るな! そ、それより、早く服を着ろ!」
「ああ、まだ着てなかったっけ。道理でみことがこっちを見ないわけだ。はっは」
みこと方面から不穏な空気を感じたので、慌てて服を着る。
「ほい、もーいいぞ」
「そ、そうか。まったく、お前という奴は……チャックが開いているぞ!!!」
「わざとなんだ」
また殴られたので、チャックを閉める。
「この変態めが……」
「ちょっとした冗談なんだ。ただ、冗談から本気になる可能性も否めないから、するべきではないと分かっているんだ」
「分かっているならするなッ!」
とても怒られた。怖かった。
「それより、聞いてくれみこと。大変なことを発見してしまったんだ」
「……どうにも嫌な予感しかしないが、聞いてやろう。なんだ?」
「裸だと、すごく涼しいんだ。だから、みことも裸に」
皆まで言う前に殴られた。鼻血出た。
「するわけないだろう、このたわけっ! ちょっと考えれば分かる道理だろう!」
「何かの奇跡で『そうねそうねその通りね、ここはいっちょう全裸になるべきね!』とか言い出すかと」
鼻にティッシュ詰めながらそう言ったら、みことがため息をついた。
「どうしてお前はそう阿呆なのだ……?」
「うむ、確かにいきなり全裸を勧めるのは阿呆だろう。ここはそれよりレベルの下がる水着でどうだろう」
「それでも阿呆だ、阿呆。……ふむ、だがこうも暑くては水着になりたがる気持ちも分からんでもない」
「言質を取った! 最早みことのエロ姿は絵空事ではない! ふふ……ふわーっはっはっはっはっは!」
また殴られたので話を進める。
「つまり、プールに行きましょうという話なのです」
「プールだと? まだ開いてないと記憶しているが」
「あー。確かにまだ春だからなあ。ふむ……あ、超名案を思いついた!」
みことがあからさまに嫌そうな顔をしたが、気づかないフリをする。
「水風呂に水着で入ればいい! 涼しいし目の保養だし、ひょっとしたらぽろりもあるかも! あと、狭い風呂場で肌が触れ合うのがとても楽しみだ!」
「えい」
「ぐ」
ノドを地獄突きされた。苦しさのあまり床を転がる。
「ふむ。ぽろりや触れ合いはともかく、水風呂はよい案だな」
「なら何故突く」
「邪な気を感じた故に」
「じゃあ俺は常に突かれてますよ! どうだ!」
「威張るな、馬鹿者!」
またノドを突かれた。再びごろごろ転がる。
「まあ、水風呂は私も賛成だ。……だが、一緒に入るなど論外だ」
「そんなあ! じゃ、じゃあ、外で待ってるから、後で水着を着たままいやらしいことはしていいよね? 擬音で説明するとぬるぬるぐちょぐちょOKだよね?」
「論外だッッッ!!!」
ものすごい勢いで拳が迫ってきて、暗転。
気がつくと、部屋で転がっていた。みことはもういない。
「……うーん、帰っちまったか。残念」
軽くノドが渇いたので、台所で水を飲む。ごくごく、うまい。そのまま部屋に戻ろうとしたら、風呂場から物音がした。
「……まさか」
風呂場のドアを開ける。果たして、そこに水着姿のみことがいた。
「ああ、起きたか。まったく、あれしきで気絶するとは精進が足りんぞ」
「ひとんちの風呂に勝手に入るって凄いよな」
「なんだ、嫌なのか? それならすぐにでもあがるが」
「そんなこと一言も言ってないじゃないか! いいか、待ってろよ! 絶対だぞ! すぐ水着取ってくるから、一人であがったりしたら泣くぞ!」
「こ、こら! 誰も一緒に入ってやるなどと……ぬう、もう行ってしまったか。……まったく」
体感では光速を超える速さで水着を探し、目にも止まらないであろう速さで装着し、全速で風呂場に戻る。
「ぜっ、ぜっ……み、水着、きっ、着た……ぜっ、……ぜっ」
「ちょっとは落ち着け! そう慌てずともあがらんわ!」
「……じゃ、じゃあ?」
「……ま、まあ、一緒に入ってやってもいいぞ。だ、だが勘違いするな! 別に貴様と一緒に入りたいのではない、あまりに貴様が哀れだから許可してやっただけにすぎないのだからなっ!」
みことは顔を真っ赤にして俺を指差した。
「哀れでよかった! じゃあ入るぞ! 今から嫌だとか言っても聞かないぞ!」
「……う、うむ」
みことは俺一人が入れる分のスペースを開けてくれた。その余地にゆっくりと腰を下ろす。
「こ、こら、あまり近寄るな馬鹿!」
「狭いんだから無茶を言うない」
我が家は高級なる家でもなんでもないので、一般的な風呂として狭い。二人で入った日には肌と肌が触れ合うのも仕方のないことだろう。
「いいか、貴様が泣いて頼むから一緒に入ってやったまでで、えっちなことをしたら即排斥するぞ。繰り返すが、えっちなことは絶対にするなよ?」
「ダチョウ倶楽部方式ですね、分かります」
目を三角にして俺の頬を千切らんばかりにつねることから、違うらしいという結論が出た。
「しかしだな、みことよ。スク水を着ておいてえろす不可とは、随分と酷な話ではないか?」
みことは学校指定のスクール水着を着ていた。みことの起伏のない体と濃紺の水着、その美しきコントラストに、そして何よりほんのりと桜色に色付く頬に、魅了されずにはいられなかった。
「ばっ、馬鹿者! 勘違いするでない! ほ、他の水着がなかっただけで、別に貴様を喜ばせるために着たんじゃない! ほ、本当だからな!?」
「理由はどうあれ、とても淫靡かつ可愛らしくてお兄さん何か下半身が大変だよ」
「大変?」
みことは視線を俺の下腹部に転じた。俺の分身が「こんにちは!」って水着越しに挨拶してた。
「なっ、なななななっ、何を大きくしているっ、この大馬鹿者っ!!!」
「だってさー、こんな美少女と一緒に風呂入ったら普通こうなるさな」
「びっ、美少女……ばっ、ばかっ、そういうこと言うなっ、ばかっ!」
とても俺を昏倒させた者と同一とは思えないほどの迫力のなさで、みことは俺をぽかぽか叩いた。
「かーわいい」
「うっ、うるさいっ! 馬鹿にするな! いーからそれをどうにかしろ!」
みことは両目を覆ったが、指の隙間から俺のこんにちはを見てた。
「自力で小さくするのは至難の技です。みことが隣にいるのなら尚のこと」
「ちょっとは小さくする努力をしろ!」
「みことが協力してくれるなら、やぶさかではない」
「ほ、本当か?」
「ええ、もちろん」
俺は、にっこり笑った。
「……二度と貴様なんかと一緒に風呂なぞ入らん! 入らんからな!」
「まーまー、そう怒るな。そんな大した事じゃないと思うのだけど」
部屋の隅っこで体育座りをし、怒気を振りまくみことに笑いかける。
「どこが大した事じゃないんだ!? あ、あんな……あんな……」
先ほどの行為を思い出したのか、みことの顔が火がついたように赤くなった。
「うう……雰囲気に呑まれて……私の馬鹿ぁ……」
「紺色に白色のコントラストが素敵でしたよ」
「言うなああっ! よくもあんなものを私にかけおって……ええい腹立たしい!」
みことは俺に馬乗りになり、べこぼこ殴った。
「痛っ、痛いっ! いやあのその、とても気持ちよかったですから! まさか、手」
「だああああっ! 言うな、言うなああっ! その口を一生閉じていろ、馬鹿めっ!」
赤い人に何度も何度も殴られました。
風呂の出来事(エロ注意)は……
「……そ、それで、どうしたらいいのだ?」
「ええと、出せば済むんだけど……とりあえず、慣れることから始めようか」
風呂の縁に座り、みことを招きよせる。そして、みことの手を取り、俺の股間にいざなう。
「何をするか、不埒者ッ!」
「げはあっ!?」
すると腹部に深々とみことの拳が突き刺さり、痛い。
「ううう……痛いよう、腸が飛び出そうだよう」
「い、いきなり何をさせようというのだ! この変態めが!」
「手伝ってくれるって言ったのに、いきなり殴られた……ひでー、みことさん、ひでー」
「む、ぐ……い、いやしかしだな」
「やっぱみことって口だけなんだな」
「! 口だけとは何だ! いいだろう、やってやろうではないか! ほら、指示しろ!」
軽い挑発で簡単にのった。ふふ、容易し。
「じゃあ、水着の上から触ってみて」
「む……」
ビンビンに猛っている俺の息子に、みことは怯えているようだった。
「別に噛み付いたりしないから安心しろ」
「かっ、噛み付く種類もあるのかっ!?」
「そうだ」
面白いので騙そう。
「そうか……世界は驚きに満ちているな」
何故かみことは感慨深そうな表情をしていた。
「とにかく、これは安全な種類なので、落ち着いて触ってくれ」
「む……わ、分かった」
ごくりと唾を飲み込み、みことは思い切り俺の竿を握った。
「!!!!!」
「どっ、どうした!? 痛いのか!?」
「つ……強すぎだ、馬鹿……」
「え、ええっ!? こ、こんなことするの初めてだから加減なぞ分かるか! 先に言え、阿呆!」
狼狽しながらも俺を叱責するのを忘れないのは、ある種驚嘆に値すると言えよう。
「も、もっと優しく、壊れ物を扱うように触っていただけると何かと助かります」
「む……こ、こうか?」
そう言って、みことは優しく俺の竿を包んだ。
「そ、そう。もうちょっと強くても構わない」
「む、むぅ……こうか? ……なっ、何かドクンドクン言ってるぞ!?」
「あー、まあ血が通ってるからなあ。それはさておき、慣れたか?」
「む、ま、まあ、多少は。私にかかればどのようなことも容易よ」
「じゃあ」
おもむろに水着を脱ぐ。
「!!! い、いきなり何をしているか、この変態ッ!」
「へぶうっ!?」
再び腹部にみことの拳が深々と突き刺さり、大層痛い。
「な、慣れたなら次のステップに移行するのが当たり前じゃん。うう、痛いよう、ぽんぽん痛いよう」
「粗末なものをぷらぷらさせるな、愚か者ッ!」
「そ、粗末とは失礼ナリ! 多分標準レベルだと思いますよ! 仮性ですが!」
「火星……?」
みことは下の情報に詳しくないようだった。
「や、まあそれはいいや。とにかく、しゃぶれ」
鼻血が出るまで殴られたので、許しを請う。
「嘘です冗談です手で充分です。殺さないでください」
「はーっ……はーっ……当然だ、馬鹿者が」
「口はまた後日ということで」
みことの目に危ない光が宿ったので、全力で土下座する。
「一度お前は死んだほうがいいかも知れんな……」
「あ、あはははは、冗談きっついなー」
「冗談、なぁ……」
冗談だよね。そうだよね。そうだと言ってよ。
「とにかく! 手でいいからお願いします」
洗い場に移動し、ぺたりと座る。そして、みことを手招き。
「ぬ、ぬぅ……」
みことは俺のきかん棒をチラチラ見ては、うめき声を上げていた。
「怖いと。“あの”みこと様が、たかが肉の棒に恐れを抱いていると。俺の付属物を恐れていると」
「だっ、誰が怖いと言った、誰が! ふん、こんなものに恐怖を抱こうはずもない!」
安い挑発に簡単にのり、みことは俺の広げた脚の間に座った。
「……で、その。……どっ、どうすればいい?」
不安と羞恥に顔を曇らせ、みことは囁くように訊ねた。
「ええと、まずさっきみたいに握って」
「さ、触るのか!? ち、直で?」
「そりゃ、触らないともう納まらないからなあ……」
みことの視線に晒され、もはや別の生き物のように腫れ上がっている竿を見て呟く。
「う、うう……」
「……あー、どうしても無理なら一人で処理するから、なんだったら別に」
「わ、私を愚弄するか! いつ、誰が無理だと言った! 私はみことだぞ、この私に不可能など存在せん!」
自らを鼓舞するような発言と同時に、みことは俺の竿を握った。
「ひゃっ!? あ、熱いし、ビクビク言ってるぞ!? ……こんな熱いものなのか、これって」
「や、その、……正直、俺もここまでなったのは初めてなので」
みことは珍しい物でも見るかのように、俺のをゆっくり指でなぞった。
「す、すごいな……こうなるのか、男は」
「ん、ぐ……み、みこと、焦らすのはいいから、そろそろ頼む」
「む、うむ」
小さくうなずき、みことは俺の竿を優しくこすった。自分でするのとは全く違う感覚に、あっという間に達しそうになる。
「……ふっ、ふうっ、……ふっ」
みことの荒い呼気が肩にかかる。
「みこと……」
「ん? なんだ?」
「キス、したいのだが……」
「えっ!? なっ、そっ、そんなの、だ、ダメに決まってるだろ! な、何を言ってるんだ、この馬鹿!」
「みこと……」
「うっ……そ、そんな顔で見るな」
じっと見つめると、みことはうろたえた様に視線をさ迷わせた。
「……そ、その。……特別だぞ?」
「え……じゃあ!」
「そ、そんな喜ぶな、ばか! あっ、こらっ……ん」
有無を言わさず、みことに口付けする。口と口を合わせるだけのキスだが、頭の中は爆発が起こったみたいにわやくちゃだ。
「ん……ぷはっ。……も、もう、ムードも何もあったもんじゃないな。……ファーストキスだったんだぞ。感謝しろ、ばか」
拗ねたような上目遣いで、俺のハートを攻撃するみこと。
「あー、うん。する。しまくる。だからもっかい」
「ええ!? ちょ、ちょっと……んうっ」
再びみことに口づけする。唇をなぞり、軽く噛む。
「んっ、は、噛むなぁ……」
恍惚とした声で不満の声を上げるみことを無視し、舌を差し入れる。
「!!? しっ、舌っ!?」
「逃げるな」
「んーっ!?」
舌に驚き離れたみことの腕を取り、再び口づけする。歯の隙間から舌を差し入れ、縮こまった舌を探り当て、ぺろぺろとみことの舌を味わう。
「んー、ひゃらあ、……ちゅううっ、ぺ、ぺろぺろふんなぁ……」
「……ちゅ。みこと、手がお留守だぞ」
「ふぇ? あ、んー」
俺の竿をこすらせ、その最中もみことの口を味わう。今現在に限るのであれば、地球で一番俺が幸せに違いない。
「みこと、おっぱい見せて」
「はむ、ちゅー……ん、うん」
唇を甘噛みしながら頼んだら、思ったより簡単に許可が出た。みことの水着をずらし、ちいさな乳首を露出させる。みことは陶然とした表情でされるがままだった。
鳥がするようにみことの唇をついばみながら、ピンク色の小さな乳首を軽く触る。
「ひゃわっ!? で、電気走ったあ……」
「電気マンだから仕方ないんだ」
「違うだろっ! ……もー、お前はこんな時までそんななんだな」
「電気マンだからな」
「違うって言ってるだろ! ……ふふっ、まあいい。ほら、キスの続きだ」
みことからのキスのおねだりに、内心驚きながら口を合わせる。口の端から涎がこぼれるのも構わず、みことの口を貪る。
「んー……ちゅ♪ ぷあっ、ちゅっちゅ、ちゅー……んむ」
もうどっちの舌が自分の舌なのか分からなくなる錯覚に陥るほどに絡ませあい、みことの涎を嚥下する。気のせいか、ほの甘い。口を離し、みことの乳首をクリクリと刺激する。
「ひゃっ! こ、この馬鹿、触り方がえっちだぞ!」
そう言いながらも、みことの手は俺の竿を擦り続けている。既にカウパーでみことの手はぬるぬるどころか泡までたっており、達するのは最早時間の問題だった。
だが、少しでもこの幸福で気持ちいい時間を長く保つために必死で我慢する。
「……? 何を変な顔をしている。もっとちゅーしろ、ばかやろう」
人が必死で射精感と戦っているというのに、みことの奴は俺の顔を片手で掴み、おもむろにキスをした。くちゅくちゅと口内で絡み合う舌の交わりに、腰骨が浮き立つような快楽を覚えた。
「っ!!」
「ひゃっ!?」
自制する間もなく、精が解き放たれる。みことの手を汚し、水着を白く彩り、みことの顔まで白く化粧してしまった。
「……はーっ、はーっ……気持ちよかった、今まで生きてきた中で一番気持ちよかった」
「……か、顔」
「ん?」
「……顔にかかったあ」
みことの泣きそうな顔に、悪戯心がむくむくと鎌首をもたげる。
「恋人同士だと、飲んだりするものだから大丈夫だ」
「そ、そうなのか?」
顔にかかった精液をすくい、みことは犬のようにくんくんと匂いを嗅いだ。
「……生臭い。生臭いぞ、これ! 本当に飲めるものなのか?」
「大丈夫大丈夫。ささっ、ぐぐーっと」
「ぬー……んっ!」
しばらくためらっていたが、やがてみことは意を決して口に含んだ。
「ん~っ!?」
「まずいのか?」
みことは涙目でコクコクうなずいた。
「いいから吐いちゃえ。まあ、飲んでくれると嬉しいけど」
「…………。……んっ」
みことのノドが動いた。飲み込んだようだ。
「……うあ~、まずい、まずいぃぃ……。ノドが、ネバネバするぅ……」
「そんなにか?」
「自分で飲んでみろ、馬鹿者ぉ……」
それだけは絶対に御免だ。
「とにかく、ありがとな、みこと。まさか飲んでくれるとは……」
「ふ、ふん。勘違いするな、私に不可能などないことを示したまでだ」
「じゃあもう一度お願いしようかな♪」
「もう一度? ……ひっ! な、なんでまたおっきくなってるんだ!?」
「や、みことが頑張ってる姿見てたら、こう、むくむくと」
「むくむくと、じゃないっ! きりがないじゃないか! 貴様、出したら納まると言ったではないか!」
「不思議だね」
「不思議だね、ではないっ! こら、寄るな! 寄るなと言っている!」
三回出しました。
【星を見て綺麗と言ったツンデレにお前のほうが……って言ったら】
2010年02月15日
部活をしていたら腹が減ったので部活の面子と一緒にラーメンを食いつつだべってたら、随分と遅くなってしまった。現在夜の8時、子供は帰る時間です。男子として、女子を送らねば。
「流石にこんな時間だし、送ってくよ」
男子連中が女の子たちを送ろうと打診している中、帰る方向が一緒ということで、俺もみことにその旨を伝える。
「結構だ。むしろ、貴様に送られる方が不安だ」
人の善意をごく自然に踏みにじるみこと嬢。人をなんだと思ってやがる。
「何もしないよ。本当だよ。きっとしないという噂だよ。もししたら、罰としてしっぺしてもいいよ」
「なんだその罰は! 何かする気満々ではないか! 絶対に貴様などに送ってなどもらわん!」
みことは一人でとっとと歩き出してしまった。友人たちに別れの挨拶を告げてから、慌てて追いかける。
「待て、待てって。冗談に決まっとろーが。お前みたいなのでも女の子なんだから、一人で帰るな、馬鹿」
早足でみことの元まで走り、隣を歩く。
「馬鹿は貴様だ、馬鹿」
「ばかって言う方がばかなんですー」
「子供か」
「ストライクポイントが? まあ、そうなんですが! そういえばみことも子供体型で嬉しい限りですねウヒヒヒヒ」
無言で鼻っ柱を殴られ鼻血が止まらないが、一緒に帰ることはなんとか許可を頂いた。
「はぁ……まったく、どうして貴様はそんなに変態なのだろうな」
「いや、俺が特別変態というわけではないと思うぞ。ただ、俺が人より心のうちをポンポン言うので変態扱いされるんじゃないか?」
鼻にティッシュを詰めつつ、そんなことを言ってみる。
「分かっているなら自重しろ、変態」
「みことに嘘をつくのは嫌なんだ」
「んなっ……きっ、貴様はなんでそういうことをさらっと……この、ばかっ!」
「痛い痛い痛い!」
なんか知らんがみことが赤い顔で俺を攻撃するので痛い。
「むー……」
「なんで殴ったお前が不服そうなんだよ……」
「うるさいっ、ばかっ!」
なんか何を言っても殴られるので、黙って歩く。口を開くと怒られるので、なんとはなしに空を見上げる。ぽつぽつとだが、星が瞬いていた。
「……こんな住宅街でも、結構星が見えるものなのだな」
そのまましばらく星を眺めながら歩いてたら、俺にならって星を見ていたみことがぽつりとつぶやいた。
「そだな。ほら、あの星なんてはっきり見えるぞ」
「ああ、あれはデネブだな」
「あー。なんか、昔習ったような」
「その隣がベガ、その隣がアルタイル。この三つを夏の大三角形という」
まるで先生のような口ぶりに、思わず口元が緩む。
「な、なんだ。……どうせ、私が星の名前を知ってるなんて、似合わないとでも言いたいのだろう」
「や、そうじゃなくて」
「ふん。いいじゃないか、私が星に詳しくても」
みことはぷいっと顔を背けてしまった。うーむ、誤解なんだがなあ。
「……私のような人間でも、星を見て綺麗と思う心はある」
「……そだな。確かに星は綺麗だな」
けど、と言って、一旦言葉を止める。……うむ、ちょっと照れ臭いが、言っちゃおう。
「お前の方が綺麗……だと、思う」
隣の人物がえらい勢いでこっちを向く気配があるが、こっちはこっちでえらい勢いでそっぽを向いたので確認できないし、したくもない。
「……は、恥ずかしい事を言う奴だな、お前は」
「いや、全く。らしくもないが、嘘を言った覚えはない」
「……う、うー」
唸り声がしたかと思ったら、服の裾を掴まれた。
「恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め」
そんな声と共に、腹あたりをぐりぐりされる感覚。たぶん、頭をぐりぐり押し付けられているのだと思うが、ちょっとわけありで視線が明後日の方向に固定されているので確認できません。
「何度も何度も言うな。自覚はしてるんだから」
「……うー」
うーうー唸り続けるみことを連れ、夜道を散歩するかのようにゆっくりゆっくり帰った。結局最後まで目を合わせられませんでした。
「流石にこんな時間だし、送ってくよ」
男子連中が女の子たちを送ろうと打診している中、帰る方向が一緒ということで、俺もみことにその旨を伝える。
「結構だ。むしろ、貴様に送られる方が不安だ」
人の善意をごく自然に踏みにじるみこと嬢。人をなんだと思ってやがる。
「何もしないよ。本当だよ。きっとしないという噂だよ。もししたら、罰としてしっぺしてもいいよ」
「なんだその罰は! 何かする気満々ではないか! 絶対に貴様などに送ってなどもらわん!」
みことは一人でとっとと歩き出してしまった。友人たちに別れの挨拶を告げてから、慌てて追いかける。
「待て、待てって。冗談に決まっとろーが。お前みたいなのでも女の子なんだから、一人で帰るな、馬鹿」
早足でみことの元まで走り、隣を歩く。
「馬鹿は貴様だ、馬鹿」
「ばかって言う方がばかなんですー」
「子供か」
「ストライクポイントが? まあ、そうなんですが! そういえばみことも子供体型で嬉しい限りですねウヒヒヒヒ」
無言で鼻っ柱を殴られ鼻血が止まらないが、一緒に帰ることはなんとか許可を頂いた。
「はぁ……まったく、どうして貴様はそんなに変態なのだろうな」
「いや、俺が特別変態というわけではないと思うぞ。ただ、俺が人より心のうちをポンポン言うので変態扱いされるんじゃないか?」
鼻にティッシュを詰めつつ、そんなことを言ってみる。
「分かっているなら自重しろ、変態」
「みことに嘘をつくのは嫌なんだ」
「んなっ……きっ、貴様はなんでそういうことをさらっと……この、ばかっ!」
「痛い痛い痛い!」
なんか知らんがみことが赤い顔で俺を攻撃するので痛い。
「むー……」
「なんで殴ったお前が不服そうなんだよ……」
「うるさいっ、ばかっ!」
なんか何を言っても殴られるので、黙って歩く。口を開くと怒られるので、なんとはなしに空を見上げる。ぽつぽつとだが、星が瞬いていた。
「……こんな住宅街でも、結構星が見えるものなのだな」
そのまましばらく星を眺めながら歩いてたら、俺にならって星を見ていたみことがぽつりとつぶやいた。
「そだな。ほら、あの星なんてはっきり見えるぞ」
「ああ、あれはデネブだな」
「あー。なんか、昔習ったような」
「その隣がベガ、その隣がアルタイル。この三つを夏の大三角形という」
まるで先生のような口ぶりに、思わず口元が緩む。
「な、なんだ。……どうせ、私が星の名前を知ってるなんて、似合わないとでも言いたいのだろう」
「や、そうじゃなくて」
「ふん。いいじゃないか、私が星に詳しくても」
みことはぷいっと顔を背けてしまった。うーむ、誤解なんだがなあ。
「……私のような人間でも、星を見て綺麗と思う心はある」
「……そだな。確かに星は綺麗だな」
けど、と言って、一旦言葉を止める。……うむ、ちょっと照れ臭いが、言っちゃおう。
「お前の方が綺麗……だと、思う」
隣の人物がえらい勢いでこっちを向く気配があるが、こっちはこっちでえらい勢いでそっぽを向いたので確認できないし、したくもない。
「……は、恥ずかしい事を言う奴だな、お前は」
「いや、全く。らしくもないが、嘘を言った覚えはない」
「……う、うー」
唸り声がしたかと思ったら、服の裾を掴まれた。
「恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め」
そんな声と共に、腹あたりをぐりぐりされる感覚。たぶん、頭をぐりぐり押し付けられているのだと思うが、ちょっとわけありで視線が明後日の方向に固定されているので確認できません。
「何度も何度も言うな。自覚はしてるんだから」
「……うー」
うーうー唸り続けるみことを連れ、夜道を散歩するかのようにゆっくりゆっくり帰った。結局最後まで目を合わせられませんでした。