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2024年11月24日
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【男のワイシャツとツンデレとデレデレ】

2010年02月23日
 長年着ていたワイシャツがよれよれになってしまった。
「……捨てるか」
「その行為STOPだ、別府タカシっ!」
「その通りだよ、お兄ちゃん!」
「ぐべっ」
 ワイシャツをゴミ箱に入れようとした瞬間、友人のみことと隣家のちみっこ、夕美が弾丸のように突っ込んできて俺を吹っ飛ばした。きりもんで飛んで行く俺を尻目に、二人は空中を舞うワイシャツをがっしと掴んだ。
「か、勘違いするでない。別にこのようなものいらぬのだが、捨てるなぞもったいないからな。私が廃物利用してやろう」
「夕美は是非欲しいよ! 家宝にする勢いだよ! みことおねーちゃん、どっちでもいいなら夕美にちょうだい!」
「む……い、いやしかし、こういうことは所有者に決めてもらうのが一番だろう。ということでタカシ……ぬ?」
「ああっ、お兄ちゃんが壁にめり込んでるっ!」
 二人して壁から抜いてもらう。
「やれやれ。気のせいかもしれないが、なんだか既視感を感じるよ」
「そんなのどうでもいいよっ! お兄ちゃん、夕美にくれるよね? ね?」
「何を言うか。気心の知れた親友に渡して当然だろう」
「童貞を?」
「違います」
 軽い冗談なのに夕美には冷静に否定され、みことからは侮蔑の視線を刺され、俺はもうどうしたら。
「傷心の俺は一人旅に出るのだった」
「旅に出る前にどっちに渡すかだけ決めてよ、お兄ちゃん!」
「そうだぞ。……もっとも、私は残念なことにこのダメ男に惚れられているが故に、渡されるであろうな。ああ嫌だ嫌だ」
 夕美の目がすっと細まった。
「……どゆこと、お兄ちゃん?」
「体が目当てなんだ」
 みことに殴られた上、夕美からは軽蔑の視線を受けた。
「冗談です。えーーーーーーと、その、……俺は夕美も好きだぞ?」
 適当なことを言ってお茶を濁してみる。いや、嘘ではないが。
「えっ、えっ? もー、お兄ちゃんってばー、このロリコン♪ 夕美、小学生なのに……もう、やんやん♪」
 夕美はやたら嬉しそうにニコニコしながら俺の背中をばんばん叩いた。
「…………」
 そして今度はみことが怖い感じになったので怖い。
「すすすすす好きと言ってもこう、アレだぞ? 妹に対して、みたいな?」
 夕美に対して言っているように見えて、その実みことに向けて話す。
「つまり、お兄ちゃんにとっては攻略対象なんだよね?」
「はい」
 しまった、本音が! ていうか攻略対象とか言うな、夕美。
「……ということだよ、みことおねーちゃん。お兄ちゃんはロリコンさんなので、ちっこい夕美の方が好きなんだよ。と、いうわけで、ワイシャツは夕美がいただきだよ!」
「……ふ、ふふふふふ。哀れなり夕美殿! こやつがロリコンなのは百も承知! 我が肉体がどれほど凹凸に恵まれていないか知らぬのか!」
 胸を張って悲しい事を言うぺったんこ。もとい、みこと。
「そして夕美殿、貴殿には未来がある! 成長、という未来が! 一方、既に成長期を過ぎた私にはその可能性はないに等しい! この場合、別府タカシがどちらを採るか……聡い貴殿にはもう分かるであろう?」
「にゃにゃ!? ……で、でも夕美のお母さんもぺったんこだもん! きっと夕美もあんな感じになるもん!」
 なんだか議論がずれているような。確かワイシャツの話じゃなかったっけ。まあいいや、二人ともいい感じにヒートアップしてるし、ばれないように逃げよう。
「そこ。逃げるな」
 すぐばれた。部屋の中央に引っ張られ、正座させられる。
「そもそも、貴様がいかんのだ。誰彼構わず好き好き言いおって……その舌引っこ抜いてくれようか」
「ひぃ! 助けて夕美!」
 あまりの恐怖に夕美に抱きつく。
「……お、お兄ちゃん。いきなりだと、夕美、びっくりさんだよ」
 夕美は困ったような、でも満更でもないような表情でにっこり笑った。
「あ、いやその……ごめんな」
「う、ううん、いいんだよ。……えへへ」
「あは、あはは……」
「……誰か忘れていまいか、別府タカシ?」
 背後から聞こえる声に、律儀に血の気が引く。
「わ、ワイシャツが欲しいのならみことにあげるよ?」
「ほ、本当か? ……あ、いや、別にいらぬのだが、どうしてもというのなら受け取ってやらなくもないぞ」
 一瞬笑顔になったみことだったが、すぐに表情を引き締めた。
「夕美にくれないとその舌引っこ抜くよ?」
 前門の虎、後門の狼とはこのことを言うのかなあ、とか思いながら笑顔の夕美を眺める。
「「……で、どっちにくれるの?」」
「……こんなものがあるから争いが止まないんだ! こんなもの!」
 意を決し、全ての元凶であるワイシャツを引き裂く! ……ひ、引き裂く!
「……お兄ちゃん、全然破れてないよ」
「まあ、ちょっと引っ張った程度で破れるものではないしな。……さあ、どちらに渡すのだ」
 さて、今度こそ進退窮まった。

 ので、もう一つあるワイシャツもあげることにした。
「ま、まあこんなものいらぬのだが、どうしてもと言うなら、な。……ふふふふふ」
「やった、やったよ! これでいつでもお兄ちゃんと一緒な感じだよ! くんくん……はふー。くんくんくん……はふー!」
 喜び勇んで(みことは必死に隠しているようだったが)ワイシャツを抱きしめる二人だった。

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臭いフェチはかわいい!!
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