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2025年04月19日
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【ツンデレの家に避難したら】

2011年06月24日
 まだ6月なのにこの暑さはどういうことなのか。
「たまらず隣の家に避難した俺を誰が非難できようか」
 お隣の家に住んでるとあるヤツの部屋に飛び込み、ベッドに寝そべる。俺の部屋には存在しないクーラーが素敵。なんで居間と両親の部屋だけにしかないんだよ、俺んち。
「……避難と非難。……どうしよう、笑った方がいいのだろうか。……無理だ。自分を偽ってまで笑うことなんて、私には、できない……」
「素直につまんないと言ってもらった方が、どれだけ助かったか……!」
「……全部計算ずく。……偉い?」
 とても偉いので、頭をなでてほしそうなオーラを発しているちなみのほっぺを引っ張ってやる。
「……おかしい、褒めてもらってる気がしない」
「何を神妙な顔をしとるか」
 そのままついでにほっぺをぐにぐにする。何度も触ったことがあるのだが、何度やっても楽しい。
「……むぅ、べとべとする。タカシの妖怪らしさが私を不快にする」
「人をなんだと思ってるんだ、この娘は……。これはただの汗だ」
「……すたんどばっく。ゆーすてぃんく。ていくあしゃわー」
「DUO3.0だと!?」
「……ふふん」
 なんか誇らしげだったので、もっかいほっぺをぐにぐにしてやる。
「……タカシはすぐに私のほっぺをぐにぐにする」
「妖怪ほっぺこねだから仕方ないんだ。主に女性のほっぺをこねることで生計を立てている善良な妖怪だったのだが、ある時誤ってオカマの頬をこねてしまい、以来女性不信に陥っている。前科2犯」
「……既に犯罪を犯している」
「しまった!」
 適当に喋った結果、前科がついてしまった。そんなつもりはなかったので、ちなみのほっぺから手を離す。
「……むぅ」
「何を口を尖らせているか」
「……前科を増やすチャンスだったのに、残念無念」
 そんな軽口を叩きながら、ちなみは俺の隣にぽすんと座った。そして、俺の肩口に鼻をよせ、クンクンと犬のように嗅いだ。
「……むぅ。大変な悪臭がここを中心に発生している。……はっ、まさか、……死臭?」
「死んでねえ!」
「なんだ。……タカシにはがっかりだ」
 どんな期待を抱いてんだ。
「……くんくん。……うーん、臭い」
「そんな臭い臭い言うな。……あー、仕方ない。面倒だが、ちょっと家に戻ってシャワー浴びてくるわ」
 そう言いながら立とうとしたら、クンッと引っかかりの感触が。ちなみが俺の服の裾を小さく握っていた。
「……べ、別にそこまでしなくていい。私のせいで追い出すみたいで気分が悪い。ああ気分が悪い。タカシは死んだ方がいい」
「文章がおかしい」
「……途中から本音が出た。しっぱいしっぱい」
 できれば隠し通していただきたい。
「……まあ、そういうわけだから、別にシャワーとか浴びなくていい。……タカシとは本来臭いものだから、仕方がないのだ」
 そう言ってる今も、ちなみは俺の服をくいくい引っ張り続けている。
「別に俺は本来臭い生物ではないが、まあ、そこまで言うならここにいるけど……」
 中腰の状態から再び腰をベッドに下ろす。ちなみは満足げにコクコクうなずくと、さっきと同じように俺の肩に顔をよせた。
「……うーん、臭い」
「風呂に入らなくていいと言いながら……お前は俺にどうしろと言うのだ」
「……まあ、タカシとは本来死んでいるものだから、この匂いは仕方がない」
 臭い理由が判明した。
「なんだってお前は幼なじみをゾンビにしたいんだ」
「……小学生を見ても息を荒げないだけ、ゾンビの方がマシだ」
 ぐぅの音も出やしねえ。
「いいやあの違う違うんです、最近の小学生はこれがもう発達が凄くて、お前より胸が小さい奴の方が少ないくらいで!」
「……これはびっくり。なんの言い訳にもなってないことをしどろもどろになりながら言われた」
 言われて見ると確かに。俺は何を言ってるのだ。
「……そしてさりげなく侮辱された。貧乳は人にあらず、と慣れた様子でタカシは言う」
「慣れた様子ってのは、お前の捏造を指すのか?」
「…………」
「いていて」
 ちなみは頬を膨らませながら俺の腹を指でなんども突いた。地味に痛い。
「……今日もタカシのお腹はぷよぷよだ。……筋肉のぬの字も見えない」
「そもそも筋肉にぬの字はない」
「……それは盲点だった」
 などと適当ぶっこきながら、ちなみはなおも人の腹をさすっている。手持ち無沙汰なので、こちらはちなみの頬をむにむにする。
「……本当はおっぱいをむにむにしたいに違いない」
「抜かった、エスパー機関の人間かッ!?」
「……今日もタカシは愚かしい。そして今日の出来事はブログにアップしておくので、お楽しみに」
「個人情報保護法とか知ってます?」
「……だいじょぶ、私のことはぼかしてる」
「なんで俺は実名なんでしょうか」
「……だいじょぶ、気にしない」
「頼む、気にしてくれ」
「……?」
「そこで不思議そうな顔をされると俺にはもうどうにも!」
 ちなみは人の秘密をいっぱい握っているのでとても困るなあと思った。

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【看病 クロワッサン 謳歌】

2011年03月20日
 季節の変わり目にやられ、風邪をひいてしまった。たいした事はないと思うのだが、大事をとって休んでたら悪魔襲来。
「……馬鹿は風邪をひかないというのに、タカシは風邪を引いたと言い張る。……そこまでして私に看病してほしいのかと思うと、正直うんざりする」
 勝手にやって来て難癖をつけつつ、ちなみが寝てる俺の頬をむいむいと引っ張る。
「一切頼んでねえ」
「……でもまあ、優しい優しい私は看病してやるので一生感謝しろ」
「なんて押しつけがましさだ」
「……とりあえず、買ってきた見舞いの品を食べろ」
 ちなみは持ってきた学生鞄の中から、紙袋を取り出した。……明らかにパン屋の包みだ。
「あの。一応病人なんで、パンとかは避けていただけると幸いです」
「……だいじょぶ。これは、タカシの大好物。私の気遣いに思わず惚れてしまうだろうけど、とても迷惑なのでやめろ」
 常に勝手なことを言いながら、ちなみは紙袋から目的の品を取り出した。
「……はい、クロワッサン。焼き立てだから、おいしいこと請け合い」
「え? いや、それは俺の好物ではないぞ?」
「……?」
「俺の好物はクリームパンだ」
「……でも、この間一緒にご飯食べた時、これ食べてたよ?」
「あの時は売り切れてて、しょうがなしに買ったんだ」
「……でも、おいしそうに食べてたよ?」
「パンは大体なんでも好きなんだ」
「……じゃあいいじゃん」(ほっぺぷくー)
「そう怒るな。どっちにしろ、病気の時にこんなの食えやしねえよ」
 膨れたほっぺを指でむにむに押しながら、ちなみをなだめる。
「ぷしー。……まあ、無理矢理食べさせて吐かれても気持ち悪いし。……はい、本命」
「お、ポカリ」
「……水分補給は大事。……これを飲まないと、明日ミイラ化した死体がこのベッドで見つかること請け合い」
「ここはどこの砂漠だ」
「……タカシ砂漠。迷い込んだら最後、奇妙極まる着ぐるみを着せられるという地獄のような砂漠。……まぐまぐ」
「いやそりゃちなみ砂漠だろってお前何を普通にクロワッサンを食ってるか」
「……おいしいよ?」(小首をこてりと傾げながら)
「あら可愛い。じゃなくて! 一応そりゃ俺の見舞いだろ?」
「……食べたら吐いちゃうようなものを、意地汚くもタカシはよこせと言う。それとも、私との間接キスが目的なのだろうか。汚らわしいと断言できる」
「少なくとも間接キス目的ではないです」
「…………」(不満げ)
「睨むな。……あー、なんかお前と話してたら疲れた」
「……貧乳と会話すると体力を吸い取られる、とタカシは言う」
「言ってねえ。あー悪い、ちょっと寝るわ」
「……そか。じゃ」
「おおぉおお!?」
 クロワッサンを机の上に置いたと思ったら、なんかちなみがちなみが俺の布団にもそもそって入ってきたよ!?
「い、一体何がこの世界に起きているのか説明していただきたい!」
「……間近でタカシが苦しみもだえ死ぬところを見て、自分の健康を謳歌したい」
「いや、ただの風邪なので死にません」
 酷い発言に一瞬で冷静になった。
「…………」(不満げ)
「だから、睨むな」
「……しょがない。じゃあ、おやすみ」
「いや、おやすみじゃなくて。何を人の布団で寝ようとしてるか」
「……じゃあ、今からこの布団は私の布団」
「所有権の話ではなくて!」
「……むぅ、寒い」
「抱きつかないで!」
「……貧乳に抱きつかれても肋骨がゴリゴリ当たるばかりでちっとも嬉しくない、とタカシは言う」
「いや俺は貧乳とか超好きだからそれは別にいいんだけど」
「……しまった、罠だった。このままでは貧乳好きの変態にちゅーとかされてしまう」
「しません」
「…………」(超不満げ)
「だから、睨むなっての」
 布団の中でじろーっと睨まれ続け、大変居心地が悪かったです。

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【ツンデレに妹欲を見咎められたら】

2011年01月22日
 なんかもう超妹が欲しい。超。どうしよう。
「……近頃のタカシは目つきが尋常ではない。簡単に言うと、鼻息が荒い。ふがーふがーって。迷惑だ」
 などと、クラスメイトのちなみに頭をぺしぺし叩かれる程度には俺のダメさが周囲に伝播しているようだ。
「電波が伝播している。なんちて。うひゃひゃ」
「……ぴっぴっぴっ」
「手馴れた様子で119って押さないで!」
「……ぴっぴっぴっ?」
「違う、9を0にしろという話ではない! 何を『これでいい?』って顔をしてるか!」
 つむじをぐりぐりぐりーっと指で押したら、不満げな顔をされた。
「……折角タカシのために電話してやろうとしたのに。なんて酷い奴なんだ。タカシは地獄行きに違いない」
「仮にそうなったとしても、地獄の鬼(幼女)にいたづらするから平気さ」
「おおお。……タカシの性欲は次元を超越している」
 なんか賞賛された。
「……でも、そうしたら地獄で働いている人たちが可哀想なので、タカシが死ぬと魂まで消滅することにする。決定」
「人の運命を勝手に決めるねい。閻魔か」
「……魂まで消滅していい?」(小首をこてりと傾げながら)
「はい! ……ああっ、しまった! 思わず自ら肯定を! チクショウ、この娘自分の武器を知ってやがる!」
「……どうしてタカシはそんなに簡単なのか」
「いやね、聞いてくださいよちなみさん。いま俺はとても妹が欲しくて、その最中であったがために妹的雰囲気を配合しているちなみにそのような可愛らしい所作をされるとお兄さん矢も盾もたまらず首肯しちゃいますよ?」
「……全体的に頭が悪い」
 なかなか的を射ている。チクショウ。
「……でも、どうしてそんなに妹を?」
「なんかちっちゃい子が好きなんです」
「……これは困った。タカシの頭の悪さがとどまるところを知らない」
 口を開けば開くだけ俺のダメさが広がっていく。
「……はっ。そういえば私は小さかった。このままではタカシに妹にされそうだ」
「なんて台詞だ」
「……でもまあ、長い人生妹になるのも経験かもしれない。条件次第でタカシの妹になってやってもいい」
「すげぇ! 何もしてないのにトントン拍子で俺の都合どおりに! で、その条件ってのは?」
「……とりあえず、死んで」
「無理です」
「……ダメだ、この兄使えねえ」
「この妹は俺の想像する妹と違う! 妹ってのは『お兄ちゃん♪』って甘ったるいバカみたいな台詞を吐く生物なんだ!」
「……馬鹿にしているように聞こえる。タカシは本当に妹に恋焦がれているのか」
「当たり前だろ。よし、ちなみ。お前が本当に妹という責務に耐え得るか実験だ。一度俺にお兄ちゃんと言ってみろ」
「……お兄ちゃん」(デスボイス)
 膝から崩れ落ちる。そりゃねえよ神様。
「……お兄ちゃん大好き」(デスボイス)
「勘弁してください! いつもの萌え声でどうかひとつ!」
「……タカシは死んだ方がいい」
 声は戻ったが台詞も戻った。
「ああもう! 何一つ俺の思い通りになりやしねえ! 俺はただ妹にお兄ちゃん大好きって言ってもらって頭なでたりなでられたりそりゃもううへへへへ」
「……これはいけない。タカシの気持ち悪さが危険域を突破している」
 想像の中の妹の頭をなでていたら、ちなみが虫か何かを見ているような目でこちらを見ていることに気づいた。
「おほん。……で、結局妹になってくれるのか?」
 できるだけ冷静さを装いながら居住まいを正す。
「……あんな醜態をさらす生物の妹とか絶対無理」
 ぐぅの音も出やしねえ。
「はぁ……ま、しょうがない。妹ではないが、これで妹分を補給しよう」(なでなで)
「……無理だと言っているのにタカシは人の頭をなでて愉悦に浸っている。タカシは人の嫌がることを喜ぶ悪魔に違いない」
「と言いながら満更でもない顔をするちなみだった」
「……などと勝手なことを言うタカシは死んだ方がいいと思う」
 なんて酷いことを言いながらも、ちなみは俺の手を振り払うことなく、ただなでられていた。
「なんだかんだ言って、ちなみって超いい奴だな」
「……ひとなで100円」
 罠だった。

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【ツンデレの幸せな時間】

2010年08月03日
 暑いのでお隣のちなみの家に侵入。
「……また来た。なんという迷惑、恐るべき厚顔無恥」
 何かの本を読んでたちなみが、嫌そうな顔で俺を出迎えた。
「あちいのです。お部屋にクーラー欲しいのです。ガチで熱中症の心配をして対策法をググる俺なんです」
「……水風呂に入って、身体あんまり拭かなくて、扇風機の前で涼んで、そのまま外に出て逮捕されればいい?」
「途中までは素敵な提案だったのに、最後が獄中エンドなので却下します」
「……なんて贅沢な。……まあ、いい。好きなだけ涼んでいったらいい」
「いつもありがとうございます」
 感謝の言葉を述べてから、ちなみのベッドにぽふりと座る。そよそよと部屋を循環する冷気が気持ちいい。
「あー、本当にここはいいな。涼しくて落ち着く」
「……勝手に落ち着かれては困る。ここは私の部屋で、タカシの部屋ではない」
「そうなんだけどさ。夏だけは許してくれ。暑くて自分の部屋での生活が困難なんだ」
「……そう言っておきながら、冬は寒いから暖めろと言って来るし、春は眠いからここで寝させろと言って来るし、秋は暇だから構えと言って用もないのに来るし」
「ちなみといると楽しいからしょうがないんだ」
「……これは困った。告白された」
「そんなつもりはないのに」
「……やれやれ、もててもてて困る」
「コイツ今日も俺の話を聞いてやがらねえ」
 ちなみの頭をぺちぺち叩いてから、本棚を探る。今日は何にするか指差し確認しながら眺めてると、面白そうな本を発見した。
「折角だから俺は久々にこれを読むぜ!」
「……らんま1/2。名作。ぱちぱちぱち」
 なんだか拍手をされたので意味もなくかっこいいポーズをしてみる。
「……おおぅ、今日もタカシは精神科医が見たら新しい病名を思いつきそうなかっこいいポーズをしている」
 どうしても褒められている気がしない。
「まあいいや。んじゃ、読ませてもらうな」
「……ん」
 適当に床に転がり、仰向けで漫画を読む。何度も読んだはずなのに、毎回面白い。
 しばらくそのまま読んでると、腹にかすかな圧迫感。
「何をしている」
「……これはびっくり。枕が喋った」
「有機物です」
 いつの間にかちなみが俺の腹に頭を乗せ、寝そべって漫画を読んでいた。
「……居場所を提供してやっているのだから、枕くらいにはなるべき」
「まあ、いいけど。あ、そこの枕取ろうか?」
「……いい」
 ベッドの上の枕を指したが、あっさり断られた。
「……どーもあの枕とは相性がよくなくて。……この腹枕は私に絶妙にマッチする」
「褒められているのに嬉しくないpart2だぜ」
「……このだらしのないぷよぷよした腹が、私の頭を優しく包み込む」
「今日から毎日腹筋してやる」
「……なむなむ。……三日坊主の呪いをかけた。これでもし腹筋をしたら、深夜、タカシの部屋を三日坊主が覗きに来る。毎日」
「怖っ、怖あっ! 三日坊主の呪い怖あっ!」
「……それが嫌なら今後も怠惰な生活を続け、私にぷよぷよお腹を提供するがいい」
「なんて酷い奴だ。ていうか、そんな俺の腹ぷよぷよか?」
「……ぷよぷよ。……ぱよえーんってくらいぷよぷよ」
「例えを出されたら余計に分からなくなったよ」
「……まあ、ぷよぷよだけど、そんな過剰に太ってなので気にしなくていい。……今後も私の枕として精進したまえ」
「なんて役柄だ。ていうか、ぷよぷよ言ってるが、お前のほっぺも結構なぷよぷよ加減だぞ」
 手を伸ばし、ちなみのほっぺを触る。相も変わらずぷよぷよしてて気持ちいい。
「……可憐な女性のほっぺを無造作に触るだなんて、今日もタカシは悪辣だ」
「なんて言われようだ。ていうか、可憐な女性は人を枕になんてしないと思うが」
「……貧乳はコンクリを枕にしろ、とタカシは言う」
「言ってねえ。……はぁ、まあいいか」
 ちなみを腹に乗せたまま、漫画を読み続ける。時折なんとなくちなみの頭をぽふぽふ触る。
「……?」
 視線だけで「何か用か」と聞いてきたので、こちらも「別に」と視線で返す。返しながらも、片手でちなみのほっぺをうにうにしているが。
「……やれやれ」
 軽く嘆息して、ちなみは俺にほっぺをいじられたまま再び漫画を読み始めた。

「……ん~っ!」
 10巻ほど読み、いい加減疲れたので今日はこれでお仕舞い。軽く伸びをしてると、ちなみがじーっとこちらを見てるのに気づいた。
「……終わり?」
「うぃ」
「……そう。……んじゃ、ちょっと」
 ちなみは俺を立ち上がらせると、ベッドの上に誘導し、寝ろと指で示した。
「はぁ。まあ、いいけど」
 言われたとおりにすると、ちなみも俺の隣に寝そべり、俺にべそっと抱きついた。
「ほほう」
「……眠くなった。隣に抱き枕的な何かが必要なのに、それに該当するのがタカシしかいないという悲しい現実が私を襲う」
「失礼な。紳士機能が付属しているので、寝ている時にちなみにいたづらしたりしないお買い得品なのだぞ?」
「……タカシに付属してるのは類似品の変態紳士機能なので、間違いなくいたづらされる」
「あー、まあ、頭なでたり背中さすったり抱っこしたりはするな」
「……ちゅーとかもされる予感」
「しません」
「…………」
 なんで不満げに睨む。
「……この変態紳士は嘘までつく欠陥品だ。返品希望」
「しねえっての」
「……貧乳にキスすると青紫色に変色する、とタカシは言う」
「言ってねえ。ていうか、なんでデンプンのヨウ素液反応が俺に起こるのだ」
「……ぐぅぐぅ」
「コイツ今日も人の話聞いてやがらねえ」
 狸寝入りするちなみの頭を数度なでる。
「……ん。もっとしてもいい。……優しい私が特別に許可してやる」
「これ以上なでると青紫色に変色するが、いいか?」
「ヨウ素液返しだ」
 そんな言葉はありません、と思いながらちなみの頭をなでる。
「……ん」
 コクコクうなずくちなみをなでながら、二人して寝るのだった。

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【ブブゼラちなみん】

2010年06月27日
 いつものように帰宅すると、俺のベッドに巨大な何かが鎮座していた。嫌な予感しかしません。
 このまま回れ右してしばらく友人の家にお泊りでもしたいところだが、既に当の本人に見つかってしまったようで、期待に満ち溢れた目がこちらをじぃーっと見つめている。しょうがないので、とぼとぼベッドへ向かう。
「……はぁ。で、何のつもりだ」
「ぶおー、ぶおー」
「うるせえ」
 巨大なプラスチックのラッパのようなものに全身包まれているちなみをはたく。
「……痛いですよ?」
 ちなみは両手を合わせ、ちょこんと小首を傾げた。その所作だけならあら可愛い抱っこしようねとなるのだが、今のちなみは珍妙ラッパに包まれているため、何やってんだこの馬鹿という印象以外受け付けない。
「理由を問うているのです。何故にそのような珍妙な衣装に身を包んでいるのか聞いているのです」
「……タカシのような珍妙極まる人間が、他者の珍妙さを問うなんておこがましいと思わんかね」
 とりあえずちなみのほっぺをむにょーんと引っ張る。
「……むにょーん」
 チクショウ、まるで堪えてねぇ。いつもの無表情に半眼の様子で、ほっぺを引っ張られたままむにょーんとか余裕で言ってやがる。
「……今日もタカシは私をいじめる。めそめそ」
「さういう台詞は通常モードの時に言ってこそ効果があると思うます。ネタ着ぐるみ状態では何も思いません」
「……今日もちなみは可愛くねぇ、とドSのタカシは言う」
「そこまでは言ってねぇ。ていうかいうかていうかですね、なんなんだ今日の着ぐるみは」
「……ブブゼラ。ぶおー」
「ああ、アレな。サッカーの」
「……話題沸騰のアレ。……タカシも興味津々」
「実はサッカーに興味ないんだ」
 ちなみは困ったように眉を八の字にした。
「……興味、持ってください」
「そう言われても」
「……今なら、ブブゼラ吹き放題。……やったね、ラッキー」
 全く幸運と思えないのは俺の心がゆがんでいるからなのか。ていうか、人の顔をぺちぺち叩かないで。
「……というわけで、吹いて」
「吹け、と言われても……え、これ音が出るの?」
「……出る」
 とりあえず一度吹けばちなみも満足すると思ったので吹こうと思ったのだが、吹き口が見つからない。広がった部分の反対側にあると思うのだが、ラッパ部は頭にあり、その反対とは即ち尻であり、え、尻?
「……ええと。じゃあ、尻を出せ」
「……何の躊躇もなく人のお尻をまさぐろうだなんて、タカシは今日も鬼畜だ」
「酷い愚弄を受けたものだ。じゃなくて、吹き口が尻にあるんだろ?」
「……お尻から息を吹き込まれて喜ぶ性癖はないので、そこに設置してない」
「それはよかった。ていうか女の子が性癖とか言うな」
「……今日もタカシは女性に幻想を抱いている」
 うるせえ。
「……吹き口は、ここ」
 そう言ってちなみが指差したのは、ちょっとばかり問題がある箇所だった。
「……えっと、ちなみさん。間違いじゃあないですかね?」
「……全く間違ってない。……ここに口をつけて、吹き鳴らす。……ぶおーって」
 ちなみが指差した場所。そこは誰がどう見てもおっぱいだった。
「客観的に見て、非常にヤクイ光景だと思うのだけど」
「……搾乳?」
「だから、女の子がそういう台詞を言うなッ!」
「……今日もタカシの童貞パワーは健在だ」
「そろそろ泣くぞ」
「……それは、搾乳の後にどうぞ」
「だから! ……ええい、名称はまあいい。その、アレだよな? 何か笛的なものがそこからまろびでるシステムなんだよな?」
「…………。うん」
「その間は嘘の間ですよね」
「……ちなみ、嘘なんてついてないよ?」(うるうる)
「いや全くその通りで誰だこんな可愛いちなみを嘘つき扱いした奴は! とっちめてやる!」
 ちなみをむぎゅーっと抱きしめながら混乱する。今日も俺は女性の涙に弱いようです。
「……き、今日もタカシは私の嘘泣きにしてやられている。ま、まったく、簡単で困る」
「俺の気のせいでなければ、全力で顔を赤くして目を回してやいませんか、ラッパの人」
「き、気のせい。……ほ、ほら、ブブゼラなので赤くならなければならないので。……ぶおー」
 別にブブゼラ全てが赤いとは限らないと思うが。まあ、ぶおぶお言ってるので、黙っておこう。
「それで、えっと。どうすればいいのだ?」
「……え、えと。……ちょ、ちょっと待って。落ち着く。……ふぅー」
 ちなみは俺から離れると、数度深呼吸し、俺に向き直った。顔の赤さが取れている。どうにか落ち着きを取り戻したようだった。
「……じゃあ、準備する。ぽち」
「ぽち?」
 ぽちと言いながら、ちなみは胸の上部にあるボタンを押した。すると、胸の部分が開き、そこから──
「下着を付けろ!!!」
「……おおぅ」
 全力で目を逸らしながら、ちなみに指摘する。ええい、なんかピンクいのが見えちゃったじゃねえか!
「……まあ、胸がないので下着は必要ないのです。……絆創膏、貼る?」
「チクショウ、なんて心揺れる誘惑をしやがる! 上も下も貼りたい所存です!」
「わ。……よもや肯定されたうえ、下も貼りたいとは。……タカシはいつも私の予想を上回る。……すごいね?」
 嬉しくない。
「……まあ、ともかく。手で隠したので、こっち見てもだいじょぶ」
 恐る恐るちなみの方を見れば、なるほど確かに指で見てはいけない部分を隠している。
「ていうか、さっきのボタンをもっかい押して元に戻した方がいいのでは」
「……もう戻らない。開く専門ボタン」
「なんて使えないんだ」
「うるさい。……それより、ここを吹けばぶおーって鳴る。……予感?」
「そこを吹いても俺が嬉しいばかりで鳴らないと思います」
「……だいじょぶ。私も嬉しい」
 違う。そういう問題ではない。
「……まあ、さういうわけでいっちょ吸ってみてはどうか」
「吸うじゃねえ! 吹くんだろ!」
「……ちっ」
 このお嬢さん超怖え。
「……じゃあ、気を取り直して、ちゅぱちゅぱれろれろしてみてはどうか」
「もう騙す気すらねーだろ」
「……てへ?」(小首をくいっと傾げながら)
「あら可愛い」
「……褒められた」
 ちなみはほんのり頬を染めながら、ぼそりとつぶやいた。なんでそこは普通に照れるんだ。
「……ともあれ、ちゅっちゅすべし」
 むにーっと口を尖らせだしたので、その唇を指できゅっと挟む。
「…………」
 ちなみは目と眉で困ってる事を俺の訴えた。訴えが届いたので、手を離してやる。
「……今日もタカシは極悪非道だ」
「なんでやねん。ていうか、ブブゼラを鳴らすという話だったのでは。どうしてむちゅー姿勢になってるのか、理解に苦しむ」
「……タカシの見事な話術にしてやられた?」
「疑問系なので納得できません」
「……むぅ。……じゃあ、ぶおーって吹き鳴らすべし」
 そう言ってちなみは両手を下ろしたら貴方平らなおっぱいが丸見えじゃあないですか!?
「隠せ! ええい、隠せ!」
「……おおぅ」
 狼狽した俺の行動により、俺の手がちなみのおっぱいを触るという事態に陥った現在、ほのかな柔らかさに脳が支配されておりまする。
「あ。いやその、わざとじゃなくて!」
「……え、えっちだ。タカシはえっちだ」
「いやその、だから! ……はい。えっちです」
 どんな言い訳をしようが触ったことは事実だしやたら柔らかいし、素直に認める。
「……す、素直なのはいいこと。……だ、だから、鳴らしたら許してあげる」
「……ええと。まさかとは思いますか、ブブゼラを?」
「……そ、そう」
「い、いや、流石にそれは」
「……吹かないと、痴漢されたって言いふらす」
「どうか俺にブブゼラを吹かせてくださいお願いします」
 と、いうわけで。
「え、ええと。んじゃ、やるぞ?」
「……う、うん。……あ、あの。優しく、優しくすること。命令。噛むとか禁止」
「お、おう。分かってる」
 ゆっくりと、人には言えないちなみのどこかの部位に口に含み、少しばかり尖ってる箇所に舌が触れないよう注意しながらぷうぷう吹く。
「……ぶ、ぶおー。……ぶ、ぶおっ!? ……うう、タカシの息が非常にこそばゆい」
「細心の注意は払っているのですがそればっかりはどうにもこうにも! 謝る以外どうしようもないですごめんなさい!」
「……で、でも、鳴らせと言ったのは私の方。……し、しょがないので、あと100回鳴らしたら、解放してあげる」
「ええと。そりはつまり、100回ぷうぷうしなければならないということなのでしょうか?」
「……そう。……ちょっと、ふやけそうだ」
 自分の胸を見下ろすちなみに、果たして理性を保つことができるのか自問自答する俺だった。
「……と、途中でのどが渇いたら、吸ってもいい予感?」
 理性を保てず途中でのどが超渇いてしまうに1万カボス。

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