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2025年04月19日
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【男が「あー、うざってえな、もう」って言ったのをツンデレが自分の事と勘違いしたら】
2011年11月19日
11月だというのにまだ蚊がいる。しっかりしろ、季節!
「あー、うざってえな、もう」
耳元でぶんぶんうるさいので、手でパタパタとあおぎつつ文句を垂れる。全く、困ったものだ。
とか思ってたら、何やら目の前に驚愕の表情を浮かべた娘が現れた。どうしたのだろう。
「……これは驚いた。タカシがとうとう私に反逆の狼煙を」
目をまん丸にしたちなみが俺に奇妙なことを言う。
「何の話でしょうか」
「ここは一つ二度と逆らわないよう、爪を剥がす必要がありそうだ」
「そんな必要はないです!」
平成の世だというのに拷問に遭う羽目になりそうだったので、必死で説得する。
「……タカシのくせに、私にうざったいとか酷いことを言うから、お返しに酷いことをするしかない、と心に誓っただけだ」
「いやいや、いやいやいや! 思いっきり言葉にしてた! 超怖かったです! やめてください!」
「……分かった。次からはいきなり実行する」
「しまった、対処したら悪化した!」
このままでは俺の指が大変危険なので、ちなみの頭をなでて大人しくさせる。
「……ぷしゅー」
大人しくなった。
「ていうかだな、うざってえと思ったのは蚊に対してであり、ちなみに対しては思っていない」
「……しかし、私はタカシをうざってえと思っている。……困った、これでは両想いになれない」
「そんな両想い聞いたことねえ」
ちなみの頬をむいむい引っ張りながら言う。
「むいむい」
「別に擬音を口に出す必要はないです」
「口に出す?」
「そういう単語だけ抜き出すな!」
『聞いた? 別府くん、ちなみの口に出したんだって』
『うわ、別府くん幼女無双……』
ほら、早速周囲の女学生が俺達を見てひそひそと囁きあってるし。あと、ちなみはちっこいだけで、別に幼女ではない。ていうかなんだ、幼女無双って。
「……世間で話題のカップル?」
「カップルと言うか、俺だけな。しかも、悪い意味で話題のな」
蔑むような視線を背に感じながら、ちなみの頭をなんとなくなでる。
「……幼女無双奥義、なでなでが出た」
「勝手に必殺技にしないでください」
「……これを受けると、どんな幼女も意のままという噂」
「ちなみ、全く理由はないが今日遊びに来ないか!? 素敵な洋服がいっぱいあるぞ!」
「……私は見た目が幼いだけで、実際には幼女ではないので効かないが」
「しまった、俺のコスプレ願望が漏れ出ただけで終わってしまった!」
周囲の囁き声が増えた。これ以上ちなみと関わっていては俺の学校生活がとんでもないことになってしまう。
「……しかし、タカシがどんなコスプレが好きなのか興味があるので、遊びに行ってやってもいい」
「着てくれるの!? じゃ、スク水着て、スク水! ブルマでも可! 裸ランドセルとかもいいなあ! あ、その際にはもちろん靴下着用のこと!」
「……さすが幼女無双、どんな時でも情欲を忘れないそのポリシーには脱帽だ」
周囲の囁き声が囁き声のレベルを超えだした。ていうか、ちなみではなく俺が悪いような気がする。
「ちょっと落ち着こう」
「……私は常に落ち着いてる。タカシが勝手に墓穴を掘っているだけだ」
「ぐぅの音も出やしねえ」
「……タカシいじりを堪能したので、その礼というわけではないが、今日本当に遊びに行ってやってもいい。思うがまま私を着せ替え人形にすればいい」
「マジかっ!? どんな服着てもらおうかなあ!」
「……ただ、裸ランドセルだけは勘弁な」
「ほう。詳しく聞かせてもらおうか、別府」
偶然にも教室に入ってきた教師が冷たい声で俺に伝える。ちなみを見ると、口元だけ笑っていた。罠でした。畜生。
放課後、先生方にたくさんの絞られ、職員室を出ると廊下でちなみが待っていた。
「……おっす、変態」
「誰のせいだ、策士」
「……何のことやら」
「はぁ……いつものことだし、まあいいや。待っててくれたんなら、一緒に帰ろうぜ」
「ん。……約束通り、コスプレしてやる」
「え。……あの、ネタじゃなかったのか?」
「……貧乳のコスプレショーなど見たくない、とタカシは言う」
「言ってねえ! あ、いや、してくれるなら大変嬉しいですが、その、いいのか?」
「……裸ランドセルの際、ばんそうこうを三枚貼る許可をくれるなら」
「しなくていいっ!」
その単語のせいで死ぬほど絞られたんだ、しばらくはいい。ていうか、そもそも冗談だし。
「……ともかく、帰ろ?」
「ん、ああ」
そんなわけで、ちなみと一緒に帰宅。そして。
「……魔女っ子ちなみ、爆誕」
我が家で変な魔女っ子が嬉しそうにポーズを決めているわけで。
「ていうか、元々変な着ぐるみばっか着てたし、そういうの好きだよな」
「……べ、別に好きじゃないし。タカシがどしてもやってほしいって言うからやってるだけだし」
「へーへー」
「……馬鹿にすると、裸ランドセルの状態で叫ぶ」
「ち、ちなみのコスプレはとってもいいなあ!」
この年で捕まりたくない。必死こいてちなみを褒める。
「……これは困った。どうしても私のばんそうこうをできるだけゆっくり剥がしたい、とタカシは言う」
「言ってねえ! そもそも魔女っ子のコスプレだし! それを言うならせめて裸ランドセルになってから言え!」
「……タカシは高校の同級生に裸ランドセルを強要する」
言葉だけ抜き出すとなんて台詞だ。
「お前はさながら悪魔だな」
「……変態に言われても、痛くもかゆくもない。……それより、どう?」
スカートの端を小さくつまみ、ちなみが尋ねる。
「何が」
「……感想を言え、と言っている」
「ん、ああ。大変可愛いです」
「う。……た、タカシって、そういうこと普通に言うよね」
「? 感想を、と言われたから言っただけなのだが……何かまずかったか?」
「だ、だから。……か、可愛いとか」
「ふむ。よく見たら可愛くない」
「えい」(さくり)
「おおおおおっ!?」
ノーモーションで目潰しをされ、痛さのあまり部屋をごろごろ転がる。
「……別に可愛くないと言われたいわけじゃない」
「だからと言って目潰ししないで!」
「……うるさい。ばか」
「いたた……難しい奴め」
「ふん。……でも、そっか。……可愛いと思うんだ」
「見た目は性格を反映しないからいいよね」
「ふっ。ふっ。ふっ」
「やっ、はっ、とっ」
繰り出される目潰しを鮮やかに避ける。
「……よけるな」
「来ると思ってたからな。分かってれば避けるのは容易い」
「……えい」(ちらり)
「おおおおおっ!?」
「……えい」(さくり)
「おおー」
スカートが少しまくりあげられ太ももが露わになった瞬間、目潰し炸裂。おめめがいたいので、またしても部屋をごろんごろん転がる。
「……今日もタカシは馬鹿だ」
「だってあんなことされたら誰だって注視しちゃいますよ!」
「……ごろごろ転がらない。邪魔」
「痛いんです、痛いんです!」
「……じゃ、邪魔だから、これで大人しくなれ」
「お?」
転がってるところを捕獲され、何か柔らかなところに頭が誘導された。
「これはまさかよもや可能性を吟味すれば」
「……長い」(ちょっぷ)
「──膝枕ですかっ!?」
「…………」(ちょっぷちょっぷちょっぷ)
「痛い痛い。鼻を付け狙うな」
まだ視界がぼやけているのでよく分からないが、ちなみの顔がやけに赤いような気がする。
「……と、とにかく。このままじっとしてるなら、もうちょっとだけしてやる」
「任せろ、心臓だって止めてやる!」
「……それは好都合。今すぐ死ね」
「言い過ぎたのを加味したとしても、この魔女っ子は冷たすぎる」
「しね。しーね」
何やら楽しげに人の頬を引っ張るちなみだった。
「あー、うざってえな、もう」
耳元でぶんぶんうるさいので、手でパタパタとあおぎつつ文句を垂れる。全く、困ったものだ。
とか思ってたら、何やら目の前に驚愕の表情を浮かべた娘が現れた。どうしたのだろう。
「……これは驚いた。タカシがとうとう私に反逆の狼煙を」
目をまん丸にしたちなみが俺に奇妙なことを言う。
「何の話でしょうか」
「ここは一つ二度と逆らわないよう、爪を剥がす必要がありそうだ」
「そんな必要はないです!」
平成の世だというのに拷問に遭う羽目になりそうだったので、必死で説得する。
「……タカシのくせに、私にうざったいとか酷いことを言うから、お返しに酷いことをするしかない、と心に誓っただけだ」
「いやいや、いやいやいや! 思いっきり言葉にしてた! 超怖かったです! やめてください!」
「……分かった。次からはいきなり実行する」
「しまった、対処したら悪化した!」
このままでは俺の指が大変危険なので、ちなみの頭をなでて大人しくさせる。
「……ぷしゅー」
大人しくなった。
「ていうかだな、うざってえと思ったのは蚊に対してであり、ちなみに対しては思っていない」
「……しかし、私はタカシをうざってえと思っている。……困った、これでは両想いになれない」
「そんな両想い聞いたことねえ」
ちなみの頬をむいむい引っ張りながら言う。
「むいむい」
「別に擬音を口に出す必要はないです」
「口に出す?」
「そういう単語だけ抜き出すな!」
『聞いた? 別府くん、ちなみの口に出したんだって』
『うわ、別府くん幼女無双……』
ほら、早速周囲の女学生が俺達を見てひそひそと囁きあってるし。あと、ちなみはちっこいだけで、別に幼女ではない。ていうかなんだ、幼女無双って。
「……世間で話題のカップル?」
「カップルと言うか、俺だけな。しかも、悪い意味で話題のな」
蔑むような視線を背に感じながら、ちなみの頭をなんとなくなでる。
「……幼女無双奥義、なでなでが出た」
「勝手に必殺技にしないでください」
「……これを受けると、どんな幼女も意のままという噂」
「ちなみ、全く理由はないが今日遊びに来ないか!? 素敵な洋服がいっぱいあるぞ!」
「……私は見た目が幼いだけで、実際には幼女ではないので効かないが」
「しまった、俺のコスプレ願望が漏れ出ただけで終わってしまった!」
周囲の囁き声が増えた。これ以上ちなみと関わっていては俺の学校生活がとんでもないことになってしまう。
「……しかし、タカシがどんなコスプレが好きなのか興味があるので、遊びに行ってやってもいい」
「着てくれるの!? じゃ、スク水着て、スク水! ブルマでも可! 裸ランドセルとかもいいなあ! あ、その際にはもちろん靴下着用のこと!」
「……さすが幼女無双、どんな時でも情欲を忘れないそのポリシーには脱帽だ」
周囲の囁き声が囁き声のレベルを超えだした。ていうか、ちなみではなく俺が悪いような気がする。
「ちょっと落ち着こう」
「……私は常に落ち着いてる。タカシが勝手に墓穴を掘っているだけだ」
「ぐぅの音も出やしねえ」
「……タカシいじりを堪能したので、その礼というわけではないが、今日本当に遊びに行ってやってもいい。思うがまま私を着せ替え人形にすればいい」
「マジかっ!? どんな服着てもらおうかなあ!」
「……ただ、裸ランドセルだけは勘弁な」
「ほう。詳しく聞かせてもらおうか、別府」
偶然にも教室に入ってきた教師が冷たい声で俺に伝える。ちなみを見ると、口元だけ笑っていた。罠でした。畜生。
放課後、先生方にたくさんの絞られ、職員室を出ると廊下でちなみが待っていた。
「……おっす、変態」
「誰のせいだ、策士」
「……何のことやら」
「はぁ……いつものことだし、まあいいや。待っててくれたんなら、一緒に帰ろうぜ」
「ん。……約束通り、コスプレしてやる」
「え。……あの、ネタじゃなかったのか?」
「……貧乳のコスプレショーなど見たくない、とタカシは言う」
「言ってねえ! あ、いや、してくれるなら大変嬉しいですが、その、いいのか?」
「……裸ランドセルの際、ばんそうこうを三枚貼る許可をくれるなら」
「しなくていいっ!」
その単語のせいで死ぬほど絞られたんだ、しばらくはいい。ていうか、そもそも冗談だし。
「……ともかく、帰ろ?」
「ん、ああ」
そんなわけで、ちなみと一緒に帰宅。そして。
「……魔女っ子ちなみ、爆誕」
我が家で変な魔女っ子が嬉しそうにポーズを決めているわけで。
「ていうか、元々変な着ぐるみばっか着てたし、そういうの好きだよな」
「……べ、別に好きじゃないし。タカシがどしてもやってほしいって言うからやってるだけだし」
「へーへー」
「……馬鹿にすると、裸ランドセルの状態で叫ぶ」
「ち、ちなみのコスプレはとってもいいなあ!」
この年で捕まりたくない。必死こいてちなみを褒める。
「……これは困った。どうしても私のばんそうこうをできるだけゆっくり剥がしたい、とタカシは言う」
「言ってねえ! そもそも魔女っ子のコスプレだし! それを言うならせめて裸ランドセルになってから言え!」
「……タカシは高校の同級生に裸ランドセルを強要する」
言葉だけ抜き出すとなんて台詞だ。
「お前はさながら悪魔だな」
「……変態に言われても、痛くもかゆくもない。……それより、どう?」
スカートの端を小さくつまみ、ちなみが尋ねる。
「何が」
「……感想を言え、と言っている」
「ん、ああ。大変可愛いです」
「う。……た、タカシって、そういうこと普通に言うよね」
「? 感想を、と言われたから言っただけなのだが……何かまずかったか?」
「だ、だから。……か、可愛いとか」
「ふむ。よく見たら可愛くない」
「えい」(さくり)
「おおおおおっ!?」
ノーモーションで目潰しをされ、痛さのあまり部屋をごろごろ転がる。
「……別に可愛くないと言われたいわけじゃない」
「だからと言って目潰ししないで!」
「……うるさい。ばか」
「いたた……難しい奴め」
「ふん。……でも、そっか。……可愛いと思うんだ」
「見た目は性格を反映しないからいいよね」
「ふっ。ふっ。ふっ」
「やっ、はっ、とっ」
繰り出される目潰しを鮮やかに避ける。
「……よけるな」
「来ると思ってたからな。分かってれば避けるのは容易い」
「……えい」(ちらり)
「おおおおおっ!?」
「……えい」(さくり)
「おおー」
スカートが少しまくりあげられ太ももが露わになった瞬間、目潰し炸裂。おめめがいたいので、またしても部屋をごろんごろん転がる。
「……今日もタカシは馬鹿だ」
「だってあんなことされたら誰だって注視しちゃいますよ!」
「……ごろごろ転がらない。邪魔」
「痛いんです、痛いんです!」
「……じゃ、邪魔だから、これで大人しくなれ」
「お?」
転がってるところを捕獲され、何か柔らかなところに頭が誘導された。
「これはまさかよもや可能性を吟味すれば」
「……長い」(ちょっぷ)
「──膝枕ですかっ!?」
「…………」(ちょっぷちょっぷちょっぷ)
「痛い痛い。鼻を付け狙うな」
まだ視界がぼやけているのでよく分からないが、ちなみの顔がやけに赤いような気がする。
「……と、とにかく。このままじっとしてるなら、もうちょっとだけしてやる」
「任せろ、心臓だって止めてやる!」
「……それは好都合。今すぐ死ね」
「言い過ぎたのを加味したとしても、この魔女っ子は冷たすぎる」
「しね。しーね」
何やら楽しげに人の頬を引っ張るちなみだった。
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【超能力ちなみん】
2011年11月01日
ちなみが超能力を身につけた、と言い張る。
「へー。それはすごい」
「……今日もタカシは全く私の言うことを信用していない。貧乳の言は信用に足らず、とタカシは言う」
「そこまでは言ってねえ」
「……ちなみのちっちゃいおっぱいを揉みしだきてえ、とタカシは言う」
「いっ、言ってねえ」
「……動揺が見られる。揉むむ?」
「揉ままない!」
「……残念」
「お前なあ……もうちょっと、なんつーか、男に対して警戒心を露にしろ。いつか食われるぞ」
「……タカシはいつだって私を独占したがっている。やれやれ、もてる女は辛い」
「殴りましょうか」
「……いじめるの?」(嘘泣き)
「いじめません」(なでなで)
嘘だって完全に分かっているというのに、俺という生物は泣かれると何もできなくなるので厄介です。
「……タカシは今日も簡単だ。やーいばーかばーか」
「…………」(なでなでから頬引っ張りに完全移行)
「おおおおお?」
「はぁ……冗談はともかく、マジに気をつけろよ? 世の中俺みたいなチキンばっかじゃねーんだから」
「……だいじょぶ。タカシにしかしないから」
「やれやれ、もてる男は辛い」
「…………」
「無言で頬を染めるなッ!」
「そ、染めてない。た、タカシの勘違い。や、やれやれ、これだからもてない野郎は」
……まあいい。ここをほじくり返すと互いにダメージを受けそうだ。
「そ、それで、えと……そう。超能力」
「そ、そうか。それはすごいな」
お互いに先ほどの空気を打ち消すべく、一緒になって話題を転換させる。
「そ、そう、すごい。……こんな感じ。えい」
「お?」
ちなみが何やら念じると、俺の手が勝手に動いた。
「手が! 俺の手が!」
「……超能力。すごい?」
「うわ、これはマジにすげえ! どうやったんだ?」
「……なんか、寝て起きたら使えるようになってた」
「コメントのしようがないです」
「……頑張った。褒める?」
「頑張った要素がないので褒めません」
「…………」(不満げ)
「怒るな。それより、そろそろ解放してはくれまいか。手が動かないのですが」
「……頑張った私を褒めないタカシなんて知らない。……こーしてくれる」
「お?」
俺の手が俺ならざる力にいざなわれ、ちなみを抱きしめています。
「……やれやれ、タカシは私が大好きすぎる」
「俺の意思が介在していないのに」
「……嫌いと申すか」(半泣き)
「そうは申さぬけど!」(なでなで)
「……むふー。……ん? なでろって命令してないのに、なでられてる」
「ん、ああ。たぶん超能力なんかよりも、『ちなみをなでねば!』という俺の意志力が上回ったのだろう。たぶん」
「……そんなに人を擦りたいのか。……タカシの性癖はちょっとおかしい」
「ちげーよ。泣いてるお前見てるの苦手だから、なでずにはいられないんだよ」
「…………。や、やれやれ。これだからタカシは、その、アレだ。ダメだ」
「もうちょっと語彙をどうにかしてください」
「う、うるさい、ばか。……あの」
「ん?」
「……な、なんでもない」
珍しく顔中を真っ赤にさせ、ただじっとうつむいて俺に頭をなでられるちなみだった。
「へー。それはすごい」
「……今日もタカシは全く私の言うことを信用していない。貧乳の言は信用に足らず、とタカシは言う」
「そこまでは言ってねえ」
「……ちなみのちっちゃいおっぱいを揉みしだきてえ、とタカシは言う」
「いっ、言ってねえ」
「……動揺が見られる。揉むむ?」
「揉ままない!」
「……残念」
「お前なあ……もうちょっと、なんつーか、男に対して警戒心を露にしろ。いつか食われるぞ」
「……タカシはいつだって私を独占したがっている。やれやれ、もてる女は辛い」
「殴りましょうか」
「……いじめるの?」(嘘泣き)
「いじめません」(なでなで)
嘘だって完全に分かっているというのに、俺という生物は泣かれると何もできなくなるので厄介です。
「……タカシは今日も簡単だ。やーいばーかばーか」
「…………」(なでなでから頬引っ張りに完全移行)
「おおおおお?」
「はぁ……冗談はともかく、マジに気をつけろよ? 世の中俺みたいなチキンばっかじゃねーんだから」
「……だいじょぶ。タカシにしかしないから」
「やれやれ、もてる男は辛い」
「…………」
「無言で頬を染めるなッ!」
「そ、染めてない。た、タカシの勘違い。や、やれやれ、これだからもてない野郎は」
……まあいい。ここをほじくり返すと互いにダメージを受けそうだ。
「そ、それで、えと……そう。超能力」
「そ、そうか。それはすごいな」
お互いに先ほどの空気を打ち消すべく、一緒になって話題を転換させる。
「そ、そう、すごい。……こんな感じ。えい」
「お?」
ちなみが何やら念じると、俺の手が勝手に動いた。
「手が! 俺の手が!」
「……超能力。すごい?」
「うわ、これはマジにすげえ! どうやったんだ?」
「……なんか、寝て起きたら使えるようになってた」
「コメントのしようがないです」
「……頑張った。褒める?」
「頑張った要素がないので褒めません」
「…………」(不満げ)
「怒るな。それより、そろそろ解放してはくれまいか。手が動かないのですが」
「……頑張った私を褒めないタカシなんて知らない。……こーしてくれる」
「お?」
俺の手が俺ならざる力にいざなわれ、ちなみを抱きしめています。
「……やれやれ、タカシは私が大好きすぎる」
「俺の意思が介在していないのに」
「……嫌いと申すか」(半泣き)
「そうは申さぬけど!」(なでなで)
「……むふー。……ん? なでろって命令してないのに、なでられてる」
「ん、ああ。たぶん超能力なんかよりも、『ちなみをなでねば!』という俺の意志力が上回ったのだろう。たぶん」
「……そんなに人を擦りたいのか。……タカシの性癖はちょっとおかしい」
「ちげーよ。泣いてるお前見てるの苦手だから、なでずにはいられないんだよ」
「…………。や、やれやれ。これだからタカシは、その、アレだ。ダメだ」
「もうちょっと語彙をどうにかしてください」
「う、うるさい、ばか。……あの」
「ん?」
「……な、なんでもない」
珍しく顔中を真っ赤にさせ、ただじっとうつむいて俺に頭をなでられるちなみだった。
【ツンデレが美人過ぎて男がおいそれと声を掛けられなかったら】
2011年08月03日
学校の中庭には、木がたくさんある。そのうちの一つ、とある木陰に座り込み、思索にふける。思索にふけるとか、俺はなんてかっこいいだ……!
「……あ、何やら難しげな顔をしているけど、実際は何も考えてない馬鹿発見」
「し、失敬な! 少しは考えてますよ! 今日の晩ご飯のこととか! ソーメン飽きたからそろそろ違うの食べたいが、先日母がスーパーで大量に仕入れていたのを見てしまったのでそれも夢幻になりそうだなあとか!」
くるりと振り返り、なんだか自分で言ってて悲しくなりそうなことをちなみにぶちまける。
「……予想以上にくだらないことを考えていた」
「まあそれだけじゃないんですがね」
「……? どったの? 悩み事? 相談する? みんなに言いふらすけど」
ちなみは俺の隣にちょこんと座りこみ、小さく小首を傾げた。
「最後の一言さえなければ百点だったのになあ」
「……それはもう、諦めるしかない。そのために心配したフリをしてやったのだから」
「普通の友人が欲しい……!」
「……それは私も同様」
お互いままならないようだ。
「……で、本当にどしたの?」
ちなみは再びくりっと首を傾げた。今度は本当に心配しているのだろう。多少は。
「いやね、お前が美人過ぎておいそれと声をかけられない状態になりたいのだが、なれないのだよ」
「……意味が分からないが、不愉快にはなった」
ちなみは俺を睨みながら全力で人の頬を引っ張った。
「まあ待て、落ち着け。誰もブサイクとは言ってないだろう」
「……言ったも同然」
「違う違う。お前は美人ではなく、明らかに可愛いの系統だと言いたかったんだ」
「…………。そ、それくらいで機嫌を直すほど、私は簡単じゃない」
と言いながらも、明らかに俺の頬が受ける痛みが激減している。あと、頬が少し赤らんでいる。
「まあそれはそれとして、お前が美人と仮定して、おいそれと声をかけられない状況を作りたいのだが、どうだろう」
「……どうもこうも、頭が悪いなあ、という印象を受けた」
あながち間違っていない。
「……ま、いい。暇だし。付き合ってやる」
ちなみは俺から手を離し、すっくと立ち上がった。
「本当か? 時々ちなみはいい奴だよな」
「…………」
「ちなみはいつだっていい奴だよー」
またつねられたので言論を調整した。
「……はぁ。それで、私はどうしたらいいの?」
「美人オーラを振りまきながらしゃなりしゃなりとこちらに歩いてきてくれ。そうしたら、俺が行動を起こすから」
「…………。分かった」
ちなみは難しい顔をしながら向こうへ行った。さて。
「……う、うっふん。うっふん」
なんかうねうねしながら歩いてる変な人が来た。
「それは、美人では、ないです」
ちなみの頭をぽふぽふ叩きながら、一字一句区切って説明してやる。
「……わ、分かってる。自分でもちょっと変だと思ってた」
「じゃあやるな」
「……でも、どういうのが美人かよく分からない」
「む、言われてみると確かに。俺は可愛い系にしか興味がないのでそういうものはよく見てなかった。具体例を示すなら、こんな感じの奴」
「……何をするか」
ちなみのほっぺをふにふにしたら額を殴られた。痛い。
「時々お前のほっぺを触りたくてしょうがなくなる時があるんだ。一日に数回」
「大変に迷惑。今すぐ死ね」
「嫌です。んじゃ、もっかい美人オーラを出しながらこっちへ来てくれ」
「……さっきと同じ展開になること請け合い」
それはお互いなんとしても避けたいところだ。うぅむと知恵をひねり出す。
「……! ……ひらめいた」
「おおっ、ちなみの頭上に豆電球が光っている!」
「……幻覚が見えている様子」
なんてドライなつっこみだ。
「えへんえへん。んじゃまあ、やってみろ」
ちなみはこくこくうなずいて、先ほどの位置まで戻った。そして。
「……うっふんにゃ。うっふんにゃ」
やっぱりうねうねしながら歩いてる変な人が来た。
「繰り返すが、それは、美人では、ないです」
「……せっかく媚びてやったのに」
「もっと上手に媚びてください。ていうか媚びるとか言うな」
「ふにゃー」
「……いや、はい。ごめんなさい可愛いです」(なでなで)
「ふにゃふにゃ」
「いや、そうじゃない。初志貫徹しなければ!」
「……今日もタカシは私に操られてばかりだ」
うるさいやい。
「と、とにかくだ! 最後にもう一度、やってみようではないか!」
「……もう飽きた」
「ま、まあそう言わず! 最後だから!」
「……次の休み、私の買い物に付き合うならやってやる」
「ん、ああ。それくらいなら別に構わないが……」
「……やたっ。タカシのお金で贅沢三昧」
「おごるとは言ってませんよ!?」
「……じゃあ、言質もとったので、最後にやってやる」
「取ってません、取ってません! おごるとは言ってません!」
俺の言葉を完膚なきまでに無視し、ちなみは三度向こうへ行った。
「……にゃっにゃにゃにゃ。にゃっにゃにゃにゃ」
もう原型を留めてないほどワケ分かんない状態で、うねうねしながら歩いてる人がこっちに来た。
「……にゃー?」
そして、期待に満ちた目でこちらを見上げている。
「これは良い猫だ」(なでなで)
「ふにゃふにゃ。……いや、違う。なでなでじゃなくて、何かするんでしょ?」
「いやね、ちなみさん。実は『美人過ぎておいそれと声をかけられない奴に、「おいそれ!」と声をかける』という小ネタをやろうとしたんですが、そんなのよりなんかうにゃうにゃ言ってる奴をなでる方を優先したいと思った次第でありまして」
「……酷い話だ」
「まさかこんな引っ張るとは思わなくて。そもそもお前が最初から普通に美人オーラを出して歩けばいいものを、なんか語尾ににゃがついたり極めつけは全部にゃになったりするからこうなるのだ」
「……酷い責任転嫁を見た。……それで」
「ん?」
「……いつまで人の頭をなでてるか」
「ん、おおっ!」
言われてみれば、確かに俺の手はちなみの頭をずっとなでていた。
「なんかね、幸せなんですよ、なでてると」
「……タカシが幸せになると、それに比例して私は不愉快になる」
「うーむ。じゃ、こうしよう。うにゃうにゃ言われると、俺は不幸になります!」
「……大変胡散臭いが、やってみよう。……うにゃうにゃ」
「ああ不幸だあ!」(なでなでなで)
「……ものすごく棒読み。……なでなでも強まったし」(不満げ)
「きっ、気のせいダヨ?」
「……もっかい実験。……うにゃうにゃ」
「不幸に違いない!」(なでなでなで)
「……やはり棒読み&なで力があっぷしているように思える」
「じゃあ、もう一度うにゃうにゃ言ってください。あ、次は可愛い感じでお願いします」
「……不幸になる?」
「なる! なります!」
「……死ぬほど胡散臭いが……まあ、いい。……うにゃうにゃ」
いつもより半音高めのうにゃうにゃが出た。しかも、手を丸め、俺の胸を軽く叩く攻撃付き!
「ああ不幸だこれは実に不幸だあ!」(激なでなで)
「……喜んでいるようにしか見えない」
「いやいや、そんなまさか! 喜ぶだなんて、そんな!」
「……うにゃー」
「ああもうちなみは可愛いなあ!」(超なでなで)
「……馬脚を現した」
「しまったあ! でも、ちなみも途中で……というか、たぶん最初から気づいてたよな」
「……な、なんのことか、ちっとも分からないにゃ。……猫なので」
ちなみは顔を赤らめつつ、明後日の方を見ながらぼそぼそっと呟いた。
「猫か。それなら仕方ないな」
「……そうなのにゃ」
そんな感じでで、猫の頭をなでまくりでした。
「……あ、何やら難しげな顔をしているけど、実際は何も考えてない馬鹿発見」
「し、失敬な! 少しは考えてますよ! 今日の晩ご飯のこととか! ソーメン飽きたからそろそろ違うの食べたいが、先日母がスーパーで大量に仕入れていたのを見てしまったのでそれも夢幻になりそうだなあとか!」
くるりと振り返り、なんだか自分で言ってて悲しくなりそうなことをちなみにぶちまける。
「……予想以上にくだらないことを考えていた」
「まあそれだけじゃないんですがね」
「……? どったの? 悩み事? 相談する? みんなに言いふらすけど」
ちなみは俺の隣にちょこんと座りこみ、小さく小首を傾げた。
「最後の一言さえなければ百点だったのになあ」
「……それはもう、諦めるしかない。そのために心配したフリをしてやったのだから」
「普通の友人が欲しい……!」
「……それは私も同様」
お互いままならないようだ。
「……で、本当にどしたの?」
ちなみは再びくりっと首を傾げた。今度は本当に心配しているのだろう。多少は。
「いやね、お前が美人過ぎておいそれと声をかけられない状態になりたいのだが、なれないのだよ」
「……意味が分からないが、不愉快にはなった」
ちなみは俺を睨みながら全力で人の頬を引っ張った。
「まあ待て、落ち着け。誰もブサイクとは言ってないだろう」
「……言ったも同然」
「違う違う。お前は美人ではなく、明らかに可愛いの系統だと言いたかったんだ」
「…………。そ、それくらいで機嫌を直すほど、私は簡単じゃない」
と言いながらも、明らかに俺の頬が受ける痛みが激減している。あと、頬が少し赤らんでいる。
「まあそれはそれとして、お前が美人と仮定して、おいそれと声をかけられない状況を作りたいのだが、どうだろう」
「……どうもこうも、頭が悪いなあ、という印象を受けた」
あながち間違っていない。
「……ま、いい。暇だし。付き合ってやる」
ちなみは俺から手を離し、すっくと立ち上がった。
「本当か? 時々ちなみはいい奴だよな」
「…………」
「ちなみはいつだっていい奴だよー」
またつねられたので言論を調整した。
「……はぁ。それで、私はどうしたらいいの?」
「美人オーラを振りまきながらしゃなりしゃなりとこちらに歩いてきてくれ。そうしたら、俺が行動を起こすから」
「…………。分かった」
ちなみは難しい顔をしながら向こうへ行った。さて。
「……う、うっふん。うっふん」
なんかうねうねしながら歩いてる変な人が来た。
「それは、美人では、ないです」
ちなみの頭をぽふぽふ叩きながら、一字一句区切って説明してやる。
「……わ、分かってる。自分でもちょっと変だと思ってた」
「じゃあやるな」
「……でも、どういうのが美人かよく分からない」
「む、言われてみると確かに。俺は可愛い系にしか興味がないのでそういうものはよく見てなかった。具体例を示すなら、こんな感じの奴」
「……何をするか」
ちなみのほっぺをふにふにしたら額を殴られた。痛い。
「時々お前のほっぺを触りたくてしょうがなくなる時があるんだ。一日に数回」
「大変に迷惑。今すぐ死ね」
「嫌です。んじゃ、もっかい美人オーラを出しながらこっちへ来てくれ」
「……さっきと同じ展開になること請け合い」
それはお互いなんとしても避けたいところだ。うぅむと知恵をひねり出す。
「……! ……ひらめいた」
「おおっ、ちなみの頭上に豆電球が光っている!」
「……幻覚が見えている様子」
なんてドライなつっこみだ。
「えへんえへん。んじゃまあ、やってみろ」
ちなみはこくこくうなずいて、先ほどの位置まで戻った。そして。
「……うっふんにゃ。うっふんにゃ」
やっぱりうねうねしながら歩いてる変な人が来た。
「繰り返すが、それは、美人では、ないです」
「……せっかく媚びてやったのに」
「もっと上手に媚びてください。ていうか媚びるとか言うな」
「ふにゃー」
「……いや、はい。ごめんなさい可愛いです」(なでなで)
「ふにゃふにゃ」
「いや、そうじゃない。初志貫徹しなければ!」
「……今日もタカシは私に操られてばかりだ」
うるさいやい。
「と、とにかくだ! 最後にもう一度、やってみようではないか!」
「……もう飽きた」
「ま、まあそう言わず! 最後だから!」
「……次の休み、私の買い物に付き合うならやってやる」
「ん、ああ。それくらいなら別に構わないが……」
「……やたっ。タカシのお金で贅沢三昧」
「おごるとは言ってませんよ!?」
「……じゃあ、言質もとったので、最後にやってやる」
「取ってません、取ってません! おごるとは言ってません!」
俺の言葉を完膚なきまでに無視し、ちなみは三度向こうへ行った。
「……にゃっにゃにゃにゃ。にゃっにゃにゃにゃ」
もう原型を留めてないほどワケ分かんない状態で、うねうねしながら歩いてる人がこっちに来た。
「……にゃー?」
そして、期待に満ちた目でこちらを見上げている。
「これは良い猫だ」(なでなで)
「ふにゃふにゃ。……いや、違う。なでなでじゃなくて、何かするんでしょ?」
「いやね、ちなみさん。実は『美人過ぎておいそれと声をかけられない奴に、「おいそれ!」と声をかける』という小ネタをやろうとしたんですが、そんなのよりなんかうにゃうにゃ言ってる奴をなでる方を優先したいと思った次第でありまして」
「……酷い話だ」
「まさかこんな引っ張るとは思わなくて。そもそもお前が最初から普通に美人オーラを出して歩けばいいものを、なんか語尾ににゃがついたり極めつけは全部にゃになったりするからこうなるのだ」
「……酷い責任転嫁を見た。……それで」
「ん?」
「……いつまで人の頭をなでてるか」
「ん、おおっ!」
言われてみれば、確かに俺の手はちなみの頭をずっとなでていた。
「なんかね、幸せなんですよ、なでてると」
「……タカシが幸せになると、それに比例して私は不愉快になる」
「うーむ。じゃ、こうしよう。うにゃうにゃ言われると、俺は不幸になります!」
「……大変胡散臭いが、やってみよう。……うにゃうにゃ」
「ああ不幸だあ!」(なでなでなで)
「……ものすごく棒読み。……なでなでも強まったし」(不満げ)
「きっ、気のせいダヨ?」
「……もっかい実験。……うにゃうにゃ」
「不幸に違いない!」(なでなでなで)
「……やはり棒読み&なで力があっぷしているように思える」
「じゃあ、もう一度うにゃうにゃ言ってください。あ、次は可愛い感じでお願いします」
「……不幸になる?」
「なる! なります!」
「……死ぬほど胡散臭いが……まあ、いい。……うにゃうにゃ」
いつもより半音高めのうにゃうにゃが出た。しかも、手を丸め、俺の胸を軽く叩く攻撃付き!
「ああ不幸だこれは実に不幸だあ!」(激なでなで)
「……喜んでいるようにしか見えない」
「いやいや、そんなまさか! 喜ぶだなんて、そんな!」
「……うにゃー」
「ああもうちなみは可愛いなあ!」(超なでなで)
「……馬脚を現した」
「しまったあ! でも、ちなみも途中で……というか、たぶん最初から気づいてたよな」
「……な、なんのことか、ちっとも分からないにゃ。……猫なので」
ちなみは顔を赤らめつつ、明後日の方を見ながらぼそぼそっと呟いた。
「猫か。それなら仕方ないな」
「……そうなのにゃ」
そんな感じでで、猫の頭をなでまくりでした。
【財布を忘れたツンデレ】
2011年08月02日
夏は暑いので結構な頻度で自販機のジュースを買う。学校でもまた同様。しかも、学校の自販機は安いのでお得だ。しかし、レパートリーがお前それ誰が飲むんだ的なものも多いので、注意が必要だ。
とか思ってるとノドが乾いた。よし、実際に買って偏った品揃えを脳内で実況しよう。
そんなわけで件の自販機に向かうと、先客がいた。ちなみだ。何やら途方に暮れた様子で自販機を見上げているが……あ、こっちに気づいた。
ちなみはずかずかとこちらに歩いてくると、殴る勢いで手を出した。
「……金を出せ」
「脅迫とな! お兄さん流石に驚いたよ。よもや学校で犯罪に巻き込まれるとは予想だにしなかった」
「……くだんないこと言ってないで、いーから金を出せ」
「財布でも忘れたのか?」
ちなみは「ぐ」と小さくうめいて、手を震わせた。
「……わ、忘れてない。家に置いてきただけ。……無意識に」
「それを一般的に忘れたというのです」
「……いーから早く金を出せ」
「へーへー」
ちゃりちゃりと小銭を投入口に入れてやる。
「んで、何飲むんだ?」
「……タカシには関係ない」
「金出したの、俺」
ちなみは半眼で俺をじろーっと睨んだあと、嫌そうに小さく呟いた。
「……ぎゅうにゅう」
「……あー、いや、今更そんなの飲んでも背も乳も無理だと思……痛っ、痛え!」
俺のすねを遠慮なく蹴りまくるちなみさん。痛いです。
「……黙れゴミ虫。また背とか胸のこと言ったら殺す」
「どちらも俺のストライクゾーンど真ん中なのに!?」
「……それもあるから、大きくなりたい」
「そんな馬鹿な!!? ちなみはこの全体的にちっこい感じが可愛らしいのに! 世界はまた俺を裏切るのか!?」
「……最後のだけ聞くとかっこいいのに、前半部分のせいで全部台無しだ」
「いやあ厨二病っぽいの大好きなんですよえへへへへ」
「……照れるな。気持ち悪い」
ままならぬ。
「……いーから早く牛乳を買え、のろま」
「ええい、イチイチ罵詈雑言が付着しやがる……ほい」
購入ボタンを押し、取り出し口から牛乳を取り出す。それをちなみに差し出すと、ひったくるように奪われた。
「ん。……ん、よく冷えてておいしい」
「そいつぁ何より。さて、俺も何か飲むかな……」
「……クラスの女子の噂によると、これを買う男子が今モテモテらしい」
「なんだと!? そいつぁ聞き逃せん! どれだっ!?」
ちなみが指す先を見る。
「……あの、このクソ暑いのにどうして『あったか~い』コーナーがあるんでしょうか」
「……この学校の七不思議のひとつ」
「そして、その中でもひときわ異彩を放っているものを指しているような気がするのですが」
「……だいじょぶ、気のせい」
そう言って、ちなみはニヤニヤと底意地の悪い笑みを見せた。
「あの。なんですか、『なす汁』って」
「……なすびの、汁?」
「いやいや、いやいやいや。そんなわけない、そんなわけない。だって、金を取ってるんだよ? 金を取って、消費者に買ってもらうんだよ? 仮にも大人が……いやいや、そんなハズがない」
「……じゃあ、買ってみればいい」
「う、うぅむ……」
「……なす汁を飲む男性って、かっこいい」
「あ」
手が無意識にボタンを押下していた。ガチャコン、と無慈悲な音が取り出し口から響く。
「……おおぅ、チャレンジャー」
「てめぇ! 何しやがる! てめぇ!」
「……やったのは自分」
「だってあんなこと言われたら体が勝手に動きますよ、普通!」
「……そんなことはない」
「ああもう、ああもう! 暑いからジュース飲みに来たのに! よりにもよってなすびの汁! しかもあったか~い! 優しい響きがまた恨めしい!」
「……うるさい」
ちなみは迷惑そうに眉をひそめた。
「……いーから早く飲み干してこの場から去れ。もしくはこの世界から去れ」
「死ねって言われた!?」
「……だから、うるさい。早く飲め」
「いや、でも……」
改めて缶を見る。全体が紫色で染め上げられており、一目見ただけで食欲を減退させる仕組みになっている。しかも、その紫色の上に『なす汁』という単語が無秩序に、これでもかというほど並べられている。呪いの品だと言われても納得しそうだ。
「あの、やっぱり……」
「飲め。のーめ」
ちなみは手をぱたぱたやって俺を追い立てた。
「人が飲むと思って、勝手なことを……!」
「……それとも、ちなみが選んだの、飲んでくれないの……?」(うるうる)
「飲むに決まってるじゃないか!」
一瞬の躊躇なく缶を飲み干……
「げほげほげほばびゅらっ!」
無理。人類には無理ですこんなの。
「……折角媚びてやったのに、飲まないなんてタカシらしくない」
「いや頑張りましたよ!? ただ、無理です。もう完全にナスビの汁なんです。それをぬるくした感じです」
『あったか~い』ではなく、『ぬる~い』だった。節電の影響か。
「……はぁ、しょがない。まあ、面白かったので我慢してやる」
「別に俺は面白がらせようとした覚えはないです。潤いが欲しかっただけです」
「……新しいジュースを買えばいい」
「一日にそう何度も買えるほど金銭的余裕ないんだよ……」
「びんぼーにん」
「その貧乏人に奢らせたの誰だ」
「……はぁ。しょがない、これをちょっとだけやる」
そう言って、ちなみは自分が先ほどまで飲んでいた牛乳を差し出した。
「……いいのか?」
「……元々おごってもらったものだし、別に構わない」
「あー……いや、それとは別の件で」
「……? ……! ……か、構わない。そ、そんなの全然ヘーキだし」
ようやっと思い至ったのか、ちなみは顔を赤くしながら目をそむけた。
「まあ、お前がそう言うなら……」
「の、飲むだけ。口つけるところぺろぺろしたら殺す」
「どんだけ変態だと思われてんだ、俺は」
「タカシならやりかねない……」
これだけ変態だと思われている様子。悲しい。
「まあいい、いただきます」
ストローに口をつけてちうちう飲む。先ほどのナス汁が洗い流され、清涼感に包まれる。
「……んマいっ! いや、久々に牛乳飲んだけど、うまいのな!」
「……い、いーから早く飲め、ばか」
俺の感想なんて聞かずに、ちなみは落ち着かない様子で俺と牛乳を交互に見ていた。
「あー……その、どしてもアレだったらも一個買ってもいいんだが……」
「……さっき、お金ないって言ってた」
「や、ないのは事実だけど、まあ明日ジュース飲むの我慢すればいい話で」
「……だ、だいじょぶ。へーき。タカシなんかには負けない」
「いや、負けないって……」
「……ほ、ほら。もういいでしょ。返して」
ちなみは俺から牛乳を奪い取ると、赤い顔でじっと見つめた。
「……じゃ、じゃあ。飲む。飲むから」
「は、はあ。どうぞ」
無駄に緊張感をみなぎらせ、ちなみは宣言した。そこまで嫌なら素直にもう一個おごられりゃいいのに。
「……ん、んー」
「…………。あの、ネタでしょうか」
「……?」
「どうして、ストロー口にキスしてるんですか」
「!!? ……ちっ、違う。ちょっと緊張しすぎただけ。別にタカシとキスしたいとかそんなの欠片も思ってない」
普段ならそりゃそうだろうと信じるが、もう顔全体がりんごみたいに赤くなってるので、ちょっとばかり信憑性が怪しい感じだ。
「……う、うぅ。……に、ニヤニヤするな、変態!」
「痛えっ!?」
再びすねを蹴り上げられるも、顔の弛緩を止められない俺だった。
とか思ってるとノドが乾いた。よし、実際に買って偏った品揃えを脳内で実況しよう。
そんなわけで件の自販機に向かうと、先客がいた。ちなみだ。何やら途方に暮れた様子で自販機を見上げているが……あ、こっちに気づいた。
ちなみはずかずかとこちらに歩いてくると、殴る勢いで手を出した。
「……金を出せ」
「脅迫とな! お兄さん流石に驚いたよ。よもや学校で犯罪に巻き込まれるとは予想だにしなかった」
「……くだんないこと言ってないで、いーから金を出せ」
「財布でも忘れたのか?」
ちなみは「ぐ」と小さくうめいて、手を震わせた。
「……わ、忘れてない。家に置いてきただけ。……無意識に」
「それを一般的に忘れたというのです」
「……いーから早く金を出せ」
「へーへー」
ちゃりちゃりと小銭を投入口に入れてやる。
「んで、何飲むんだ?」
「……タカシには関係ない」
「金出したの、俺」
ちなみは半眼で俺をじろーっと睨んだあと、嫌そうに小さく呟いた。
「……ぎゅうにゅう」
「……あー、いや、今更そんなの飲んでも背も乳も無理だと思……痛っ、痛え!」
俺のすねを遠慮なく蹴りまくるちなみさん。痛いです。
「……黙れゴミ虫。また背とか胸のこと言ったら殺す」
「どちらも俺のストライクゾーンど真ん中なのに!?」
「……それもあるから、大きくなりたい」
「そんな馬鹿な!!? ちなみはこの全体的にちっこい感じが可愛らしいのに! 世界はまた俺を裏切るのか!?」
「……最後のだけ聞くとかっこいいのに、前半部分のせいで全部台無しだ」
「いやあ厨二病っぽいの大好きなんですよえへへへへ」
「……照れるな。気持ち悪い」
ままならぬ。
「……いーから早く牛乳を買え、のろま」
「ええい、イチイチ罵詈雑言が付着しやがる……ほい」
購入ボタンを押し、取り出し口から牛乳を取り出す。それをちなみに差し出すと、ひったくるように奪われた。
「ん。……ん、よく冷えてておいしい」
「そいつぁ何より。さて、俺も何か飲むかな……」
「……クラスの女子の噂によると、これを買う男子が今モテモテらしい」
「なんだと!? そいつぁ聞き逃せん! どれだっ!?」
ちなみが指す先を見る。
「……あの、このクソ暑いのにどうして『あったか~い』コーナーがあるんでしょうか」
「……この学校の七不思議のひとつ」
「そして、その中でもひときわ異彩を放っているものを指しているような気がするのですが」
「……だいじょぶ、気のせい」
そう言って、ちなみはニヤニヤと底意地の悪い笑みを見せた。
「あの。なんですか、『なす汁』って」
「……なすびの、汁?」
「いやいや、いやいやいや。そんなわけない、そんなわけない。だって、金を取ってるんだよ? 金を取って、消費者に買ってもらうんだよ? 仮にも大人が……いやいや、そんなハズがない」
「……じゃあ、買ってみればいい」
「う、うぅむ……」
「……なす汁を飲む男性って、かっこいい」
「あ」
手が無意識にボタンを押下していた。ガチャコン、と無慈悲な音が取り出し口から響く。
「……おおぅ、チャレンジャー」
「てめぇ! 何しやがる! てめぇ!」
「……やったのは自分」
「だってあんなこと言われたら体が勝手に動きますよ、普通!」
「……そんなことはない」
「ああもう、ああもう! 暑いからジュース飲みに来たのに! よりにもよってなすびの汁! しかもあったか~い! 優しい響きがまた恨めしい!」
「……うるさい」
ちなみは迷惑そうに眉をひそめた。
「……いーから早く飲み干してこの場から去れ。もしくはこの世界から去れ」
「死ねって言われた!?」
「……だから、うるさい。早く飲め」
「いや、でも……」
改めて缶を見る。全体が紫色で染め上げられており、一目見ただけで食欲を減退させる仕組みになっている。しかも、その紫色の上に『なす汁』という単語が無秩序に、これでもかというほど並べられている。呪いの品だと言われても納得しそうだ。
「あの、やっぱり……」
「飲め。のーめ」
ちなみは手をぱたぱたやって俺を追い立てた。
「人が飲むと思って、勝手なことを……!」
「……それとも、ちなみが選んだの、飲んでくれないの……?」(うるうる)
「飲むに決まってるじゃないか!」
一瞬の躊躇なく缶を飲み干……
「げほげほげほばびゅらっ!」
無理。人類には無理ですこんなの。
「……折角媚びてやったのに、飲まないなんてタカシらしくない」
「いや頑張りましたよ!? ただ、無理です。もう完全にナスビの汁なんです。それをぬるくした感じです」
『あったか~い』ではなく、『ぬる~い』だった。節電の影響か。
「……はぁ、しょがない。まあ、面白かったので我慢してやる」
「別に俺は面白がらせようとした覚えはないです。潤いが欲しかっただけです」
「……新しいジュースを買えばいい」
「一日にそう何度も買えるほど金銭的余裕ないんだよ……」
「びんぼーにん」
「その貧乏人に奢らせたの誰だ」
「……はぁ。しょがない、これをちょっとだけやる」
そう言って、ちなみは自分が先ほどまで飲んでいた牛乳を差し出した。
「……いいのか?」
「……元々おごってもらったものだし、別に構わない」
「あー……いや、それとは別の件で」
「……? ……! ……か、構わない。そ、そんなの全然ヘーキだし」
ようやっと思い至ったのか、ちなみは顔を赤くしながら目をそむけた。
「まあ、お前がそう言うなら……」
「の、飲むだけ。口つけるところぺろぺろしたら殺す」
「どんだけ変態だと思われてんだ、俺は」
「タカシならやりかねない……」
これだけ変態だと思われている様子。悲しい。
「まあいい、いただきます」
ストローに口をつけてちうちう飲む。先ほどのナス汁が洗い流され、清涼感に包まれる。
「……んマいっ! いや、久々に牛乳飲んだけど、うまいのな!」
「……い、いーから早く飲め、ばか」
俺の感想なんて聞かずに、ちなみは落ち着かない様子で俺と牛乳を交互に見ていた。
「あー……その、どしてもアレだったらも一個買ってもいいんだが……」
「……さっき、お金ないって言ってた」
「や、ないのは事実だけど、まあ明日ジュース飲むの我慢すればいい話で」
「……だ、だいじょぶ。へーき。タカシなんかには負けない」
「いや、負けないって……」
「……ほ、ほら。もういいでしょ。返して」
ちなみは俺から牛乳を奪い取ると、赤い顔でじっと見つめた。
「……じゃ、じゃあ。飲む。飲むから」
「は、はあ。どうぞ」
無駄に緊張感をみなぎらせ、ちなみは宣言した。そこまで嫌なら素直にもう一個おごられりゃいいのに。
「……ん、んー」
「…………。あの、ネタでしょうか」
「……?」
「どうして、ストロー口にキスしてるんですか」
「!!? ……ちっ、違う。ちょっと緊張しすぎただけ。別にタカシとキスしたいとかそんなの欠片も思ってない」
普段ならそりゃそうだろうと信じるが、もう顔全体がりんごみたいに赤くなってるので、ちょっとばかり信憑性が怪しい感じだ。
「……う、うぅ。……に、ニヤニヤするな、変態!」
「痛えっ!?」
再びすねを蹴り上げられるも、顔の弛緩を止められない俺だった。
【ツンデレに最近太ったんじゃないの?って言われたら】
2011年07月20日
本屋をうろうろしてたら、ちなみがいたので頭をなでてみた。
「……これはびっくり。豚が私の頭をなでている」
豚。てっきり人間だと思っていたのだけど、俺は豚だったのか。これは新事実だ。
「初めまして、人間改め豚です。……ところで、俺の豚語は通じているのでしょうか?」
「……普通の人間には通じないが、私は天才なのでだいじょぶ」
「それは幸い。ところで、俺の将来はどうなるのでしょうか? やはり出荷?」
「……どなどなどーなーどーなー」
なんということだ。未来が何も見えない。
「……ていうか、太ったよね、タカシ」
「むぅ」
豚ごっこは終わりのようで、ちなみは俺の腹を指でぷにぷにと押した。
「そんな一見して分かるほど太ってるか?」
「……一見しては分からないけど、タカシ研究家の私には分かる。……2kgは太ってるに違いない」
「人を勝手に研究するない」
ちなみのほっぺをむいむい引っ張って抗議するが、まるで堪えた様子がない。
「……それで、実際はどのくらい太ったの?」
「知らん。体重計に乗る習慣がないもので」
「……全世界の女子に謝れ」
「ごめんなさい」
とりあえず代表してちなみに謝ってみる。
「……あと、ジュースもおごれ」
「なんでやねん」
ぺしんとちなみのおでこに軽くつっこむ。とはいえ、俺もノドは乾いている。……よし。
おでこを押さえて不満げにしてるちなみに来い来いと手招きすると、何の疑いもない顔でふらふら寄ってきたので一緒に本屋を出る。そしてそのまま近くの喫茶店へ移動。
「……なんでやねんからのおごり。……やはりタカシは侮れない」
「俺もノド乾いたからね」
「……なるほど、こうしてブクブクと肥え太るのか」
「非常に不愉快です」
「……不愉快の人、パフェも頼んでいい?」
「ダメです」
「……タカシの好きな気持ち悪い萌え動作をしてやるから」
「そんな前置きをされて、どうして俺が喜ぶと思うのだ」
「……お兄ちゃん、大好き」
「よぅし、全メニューおごってやろう!」(なでなで)
「……やはりタカシは今日もダメだ。というか、ダメじゃない日がない」
反論する材料が全くない。
「……まあ、全部おごられても食べきれないので、パフェだけにする」
というわけで、俺はアイスコーヒー、ちなみはチョコパフェを注文する。待ってる間何するかなと思ってると、ちなみが俺のすぐ隣に移動してきた。
「どしました」
「……実測」
「お?」
横合いからもふっと抱きつかれた。
「……ふぅむ。やはりいつもより肉付きがあるように思える」
「こ、これはさしもの俺も勘違いをしそうだ!」
「……かんちがいしないでよね贅肉の量を測っただけなんだからね?」
テンプレ通りなのにちっとも萌えない。チクショウ。
「……悲しそう。やーいばーかばーか」
「悲しさのあまり亜脱臼しそうだ」
「……亜人間だから?」
「普通の人間です! 亜じゃねえ!」
コイツは俺のボケにさらにボケを被せてくるから油断ならない。
「……タカシはゴブリンの間なら人気ありそう」
「亜から脱却したいです」
「……来世に期待?」
「そこまでのインターバルが長すぎるゼ……!」
などとちなみにいじめられていると、注文の品が運ばれてきた。俺の前にアイスコーヒー、そしてちなみの前に、
「おおおおお……」
パフェがででんと置かれる。あまりのオーラにちなみも思わず声が出ている。それにしても……美味そう感が半端ではない!
「な、なあちなみ。俺にも一口」
「絶対にあげない」
「…………」
「はぐはぐ。……おお、おおおおお」
美味さに打ち震えている。一方こちらは悔しさに打ち震えています。
「タカシ、タカシ」
「な、なんだ? くれるのか?」
「……はぐっ。……ああ、おいしい」
これみよがしに食べてるところを見せ付けられるだけでした。
「あの、ちなみさん。覚えてないかもしれないけれど、これ、俺のおごりなんだよ? なのに、俺には一口も食べさせてくれないの?」
「むぐむぐ。……あー」
口を開けてアイスを見せるだけとか……!
「もむもむ。タカシのおごりのパフェはとてもおいしい」
「……ずずず」
悔しさを紛らわすため、アイスコーヒーを飲む。うまい。……うまいけど! うまいけどさ!
「……食べたい?」
「いいのかっ!?」
「聞いただけ」
「…………」
「タカシの悔しそうな顔を肴に食べるパフェは格別だ。もぐもぐ」
仮に怨念が質量を持ったら、俺は即それに潰され死ぬことだろう。
「……どしても食べたい?」
「今度こそ本当かっ!?」
「……しょがない。じゃあ」
「やったあ! さっすがちなみ、世界が誇る貧乳とはまさにこのことだ」
「…………。タカシの口にパフェが入ることはないと思え」
「しまった! なんたるチア! 俺って奴はいつもこうだ! 貧乳が褒め言葉ではないと何故学習しない!」
「……今日もタカシは通常運行だ」
「はぁ……しょうがない。潔く諦めよう」
しょんぼりしたままアイスコーヒーを飲んでると、つんつんと服を引っ張られた。
「ん、なんだ?」
「……名案が浮かんだ」
「たぶんきっと絶対に名案じゃない」
俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみは話を続けた。
「……まず、タカシが私を抱っこする。次に、私がパフェを食べる。その際、パフェが冷たいので私の体温が若干下がる。タカシは私を抱っこしているので、それを感じることができる」
「はぁ」
「……結果として、タカシもパフェを食べたのと同じ現象を味わうことができる」
「えええええ!? なんて無茶な理論だ! だがちなみを抱っこすることに異論はないので是非やろう」
「……明らかに別目的で私を抱っこしようとしている。これだからえろやろうは」
「なななんのことか俺にはさっぱり! ていうか言い出したのお前だろ」
「……なんのことか私にはさっぱり。……いーから早く抱っこしろ」
「なんていい台詞なんだ。録音したいのでもう一度お願いします」
「……一回百万円」
そんなお金はないので、諦めてちなみを後ろから抱きしめる。
「ん、お前痩せたか?」
「……ちょこっと。暑いから。……でも、よく分かったね」
「お前が俺に抱きついて太ったかどうか分かるように、俺もお前を抱っこすりゃ分かるんだ」
「……頻繁に抱かれている」
「……いや、そうなんだけど。もうちょっと別の言い方だと人聞きも悪くないのでありがたいのですが」
「……頻繁に中に出され」
「明らかに別の方ですよね、それっ!?」
「……ふふん?」
「はぁ……いーから早くパフェを食え」
「……これだから早漏は」
「せっかち! せっかちって話ですよね!?」
「……やれやれ、そういう話になるとすぐあわあわする。……これだから童貞は」
悔しいのでちなみのつむじをむぎゅーっと押してやる。
「……やめろ。背が縮みそうだ」
「中学生や小学生どころか、幼稚園児に間違われてしまえ!」
「……幼稚園児に性的いたづらをする性犯罪者として捕まってしまえ」
「ままならないなあ」
「……まったくだ。……もぐもぐ」
そのような感じで、ぱくぱくとパフェを食べるちなみを後ろから抱っこしてました。
「……これはびっくり。豚が私の頭をなでている」
豚。てっきり人間だと思っていたのだけど、俺は豚だったのか。これは新事実だ。
「初めまして、人間改め豚です。……ところで、俺の豚語は通じているのでしょうか?」
「……普通の人間には通じないが、私は天才なのでだいじょぶ」
「それは幸い。ところで、俺の将来はどうなるのでしょうか? やはり出荷?」
「……どなどなどーなーどーなー」
なんということだ。未来が何も見えない。
「……ていうか、太ったよね、タカシ」
「むぅ」
豚ごっこは終わりのようで、ちなみは俺の腹を指でぷにぷにと押した。
「そんな一見して分かるほど太ってるか?」
「……一見しては分からないけど、タカシ研究家の私には分かる。……2kgは太ってるに違いない」
「人を勝手に研究するない」
ちなみのほっぺをむいむい引っ張って抗議するが、まるで堪えた様子がない。
「……それで、実際はどのくらい太ったの?」
「知らん。体重計に乗る習慣がないもので」
「……全世界の女子に謝れ」
「ごめんなさい」
とりあえず代表してちなみに謝ってみる。
「……あと、ジュースもおごれ」
「なんでやねん」
ぺしんとちなみのおでこに軽くつっこむ。とはいえ、俺もノドは乾いている。……よし。
おでこを押さえて不満げにしてるちなみに来い来いと手招きすると、何の疑いもない顔でふらふら寄ってきたので一緒に本屋を出る。そしてそのまま近くの喫茶店へ移動。
「……なんでやねんからのおごり。……やはりタカシは侮れない」
「俺もノド乾いたからね」
「……なるほど、こうしてブクブクと肥え太るのか」
「非常に不愉快です」
「……不愉快の人、パフェも頼んでいい?」
「ダメです」
「……タカシの好きな気持ち悪い萌え動作をしてやるから」
「そんな前置きをされて、どうして俺が喜ぶと思うのだ」
「……お兄ちゃん、大好き」
「よぅし、全メニューおごってやろう!」(なでなで)
「……やはりタカシは今日もダメだ。というか、ダメじゃない日がない」
反論する材料が全くない。
「……まあ、全部おごられても食べきれないので、パフェだけにする」
というわけで、俺はアイスコーヒー、ちなみはチョコパフェを注文する。待ってる間何するかなと思ってると、ちなみが俺のすぐ隣に移動してきた。
「どしました」
「……実測」
「お?」
横合いからもふっと抱きつかれた。
「……ふぅむ。やはりいつもより肉付きがあるように思える」
「こ、これはさしもの俺も勘違いをしそうだ!」
「……かんちがいしないでよね贅肉の量を測っただけなんだからね?」
テンプレ通りなのにちっとも萌えない。チクショウ。
「……悲しそう。やーいばーかばーか」
「悲しさのあまり亜脱臼しそうだ」
「……亜人間だから?」
「普通の人間です! 亜じゃねえ!」
コイツは俺のボケにさらにボケを被せてくるから油断ならない。
「……タカシはゴブリンの間なら人気ありそう」
「亜から脱却したいです」
「……来世に期待?」
「そこまでのインターバルが長すぎるゼ……!」
などとちなみにいじめられていると、注文の品が運ばれてきた。俺の前にアイスコーヒー、そしてちなみの前に、
「おおおおお……」
パフェがででんと置かれる。あまりのオーラにちなみも思わず声が出ている。それにしても……美味そう感が半端ではない!
「な、なあちなみ。俺にも一口」
「絶対にあげない」
「…………」
「はぐはぐ。……おお、おおおおお」
美味さに打ち震えている。一方こちらは悔しさに打ち震えています。
「タカシ、タカシ」
「な、なんだ? くれるのか?」
「……はぐっ。……ああ、おいしい」
これみよがしに食べてるところを見せ付けられるだけでした。
「あの、ちなみさん。覚えてないかもしれないけれど、これ、俺のおごりなんだよ? なのに、俺には一口も食べさせてくれないの?」
「むぐむぐ。……あー」
口を開けてアイスを見せるだけとか……!
「もむもむ。タカシのおごりのパフェはとてもおいしい」
「……ずずず」
悔しさを紛らわすため、アイスコーヒーを飲む。うまい。……うまいけど! うまいけどさ!
「……食べたい?」
「いいのかっ!?」
「聞いただけ」
「…………」
「タカシの悔しそうな顔を肴に食べるパフェは格別だ。もぐもぐ」
仮に怨念が質量を持ったら、俺は即それに潰され死ぬことだろう。
「……どしても食べたい?」
「今度こそ本当かっ!?」
「……しょがない。じゃあ」
「やったあ! さっすがちなみ、世界が誇る貧乳とはまさにこのことだ」
「…………。タカシの口にパフェが入ることはないと思え」
「しまった! なんたるチア! 俺って奴はいつもこうだ! 貧乳が褒め言葉ではないと何故学習しない!」
「……今日もタカシは通常運行だ」
「はぁ……しょうがない。潔く諦めよう」
しょんぼりしたままアイスコーヒーを飲んでると、つんつんと服を引っ張られた。
「ん、なんだ?」
「……名案が浮かんだ」
「たぶんきっと絶対に名案じゃない」
俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみは話を続けた。
「……まず、タカシが私を抱っこする。次に、私がパフェを食べる。その際、パフェが冷たいので私の体温が若干下がる。タカシは私を抱っこしているので、それを感じることができる」
「はぁ」
「……結果として、タカシもパフェを食べたのと同じ現象を味わうことができる」
「えええええ!? なんて無茶な理論だ! だがちなみを抱っこすることに異論はないので是非やろう」
「……明らかに別目的で私を抱っこしようとしている。これだからえろやろうは」
「なななんのことか俺にはさっぱり! ていうか言い出したのお前だろ」
「……なんのことか私にはさっぱり。……いーから早く抱っこしろ」
「なんていい台詞なんだ。録音したいのでもう一度お願いします」
「……一回百万円」
そんなお金はないので、諦めてちなみを後ろから抱きしめる。
「ん、お前痩せたか?」
「……ちょこっと。暑いから。……でも、よく分かったね」
「お前が俺に抱きついて太ったかどうか分かるように、俺もお前を抱っこすりゃ分かるんだ」
「……頻繁に抱かれている」
「……いや、そうなんだけど。もうちょっと別の言い方だと人聞きも悪くないのでありがたいのですが」
「……頻繁に中に出され」
「明らかに別の方ですよね、それっ!?」
「……ふふん?」
「はぁ……いーから早くパフェを食え」
「……これだから早漏は」
「せっかち! せっかちって話ですよね!?」
「……やれやれ、そういう話になるとすぐあわあわする。……これだから童貞は」
悔しいのでちなみのつむじをむぎゅーっと押してやる。
「……やめろ。背が縮みそうだ」
「中学生や小学生どころか、幼稚園児に間違われてしまえ!」
「……幼稚園児に性的いたづらをする性犯罪者として捕まってしまえ」
「ままならないなあ」
「……まったくだ。……もぐもぐ」
そのような感じで、ぱくぱくとパフェを食べるちなみを後ろから抱っこしてました。