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2024年11月22日
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【どうしてもスクリューパイルドライバーが出せないツンデレ】

2010年04月28日
 先日委員長をゲーセンに連れて行ったら、えらく気に入ってくれたようで、何かあると連れてけ催促する。
「一人で行けばいいじゃん」
「あんなところ、一人で行けるわけないじゃないですか。不良に絡まれたらどう責任取ってくれるんです」
「…………」
 委員長は頭がいいくせに情報は古かった。
 そういうわけで、今日も今日とて委員長に連れられゲーセンへ。
「今日は、このザンギエフとかいう人使ってみます」
「……毛フェチ」
「聞こえましたよっ! 違いますっ!」
 俺は手足に異常があるインド人を使う。
「えいっ」
 毛の濃い人物が近寄ってきて、骨男を捕まえた。
「ええと、スクリューパイルドライ……あれ?」
 しかし、画面にはインド人が普通に投げられたモーションが映るだけだった。
「おかしいですね……今度こそ、スクリュー……あれ?」
 今度はモヒカン男が空から求愛してきた。恐怖に駆られたので、すかさずテレポートして逃げる。
「あっ! ずるいですよ!」
「技だよ、技」
「次逃げたら、宿題見せません!」
「…………」
 物凄い技を出されたので、俺は今後ボタンを押せません。
「一回くらいは……えいっ!」
 またモヒカン野郎が空から降ってきた。怖いけど、しっかり受け止める。
「……これ、壊れてるんじゃないですか? 一回もできないですよ?」
「レバー1回転なんて素人にゃ無理だよ、無理。諦めろって」
「むっ、無理なんかじゃないです! 今日はできるまで付き合ってもらいますからね!」
 日が暮れるまで相手したけど、一度もできなかった。
「明日も練習付き合ってもらいますからね! いいですね、逃げたら二度と宿題見せませんよ!」
 ずびしと俺に指を突きつけ、デートの約束を取り付ける委員長だった。

拍手[6回]

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【金欠ンデレ】

2010年04月27日
 物を書いて飯を食うようになって早数年。近頃はどうにか書き物だけで暮らしていけるようになった。
 なわけで、家でぽちぽちとキーボードを叩いてたら、インターホンが鳴った。今は家政婦さんは買い物に出かけているようなので、もったらもったら受話器のあるとこまで移動する。
「はいはい」
『…………』
「ええと、どなたでしょうか」
『……開けろ』
「ははーん。強盗だな? 困ります」
『いいから早く開けなさいこの馬鹿ッ!』
「ひぃ」
 とても怖かったので受話器を戻して部屋に戻りガタガタ震えてると、携帯が鳴った。このアニソンは……!
「智恵理か! ちょうどよかった、いま俺の家に強盗が入らんと企んでいるみたいなんだ! お前の無駄にある暴力性を発揮する時だ、蹴散らしてくれ! 後の始末は俺に任せろ、ただ死体は原型を留めておいてくださると何かと助かりますが、無理なら好きにしろ」
『アンタはあたしをなんだと思ってんのよ!』
「無手での殺しを得意とする学生。握力500kg」
『ただの学生よッ! あと、不満だけど、アンタの仕事仲間!』
 智恵理は学生という身分でありながら俺の小説の挿絵を描いてくれているすごい奴で、俺の大事な仲間だ。
「で、そのゴリラ仲間が何の用だ?」
『アンタの嘘説明が混じってる! ただの仕事仲間よ! んなことより、早く開けなさいよ!』
「何を?」
『玄関のドア! いつまで待たせるのよ!』
 ドアとな。玄関の方まで行き、耳を澄ます。
『早くしなさいってば!』
 携帯から聞こえてくる声と、表から聞こえてくる声が一致。ここから導き出される答えは……!
「智恵理、大変だ。玄関先の奴が、お前と全く同じこと喋ってる! すごい偶然が今ここに!」
『あたしがアンタの家の前で携帯で喋ってるの!』
「実は玄関のくだり辺りから分かってたんだ」
『…………。早く開けないと殺す』
 死ぬのは嫌なので震えながら玄関のドアを開ける。拳がお出迎えとはどういうことだ。
「開けたのに」
「早くしないからよ! 殺されないだけマシと思いなさいよね!」
「悪魔のような台詞ですね」
「うっさい! そんなのどーでもいいの!」
 そう言うと、智恵理は俺を押しのけて勝手に家の中にずかずかと入っていった。どこに行くのかついていくと、着いた場所は台所?
 智恵理はシンク下の棚を漁り、カップヌードルを取り出すと、ぺりぺりとビニールを破りだした。慌てて奪う。
「ちょ! 何するのよ!」
「それはこっちの台詞だ。いきなり何をする」
「食べるの!」
 変な事を言ってると感じているのは俺だけではないはずだ。俺が高く掲げているカップヌードルを取ろうと、ぴょんこぴょんこジャンプしている智恵理を見ながら思った。
「うー……ちょっと背が高いからって馬鹿にして!」
「普通の身長です。お前が小さいだけだ」
「うるさいの!」
 146cmが怒った。
「ていうかだな、人の家に来てまず飯を食うって、どういうこと? お前の家の両親は飯を食わせてくれないのか? ネグレクト?」
「一人暮らししてるのっ! パパとママを悪く言うなッ!」
 口で言えば分かります。いちいち殴らないで。そりゃ鼻血も出ますよ。
「……ちょっと、パソコン新調したら、お金なくなっちゃって」
「はぁ。そりゃ自業自得で」
「むー。……パソコンは挿絵を描くのに使うの! 必要経費なの!」
「む。そう言われたら弱い。しょうがない、お兄さんがご飯食べさせてあげよう」
「やたっ、ラッキー♪」
「しかし、飯代くらい残ってないのか?」
「……あと、服とかコスメとかアクセサリーとかおやつとか本とかゲームとか携帯代とか学校帰りに買い食いしたりとかで、その……」
 カップヌードルを元あった場所に戻しながら訊ねると、智恵理はばつの悪そうな顔をしながら答えた。
「やっぱ飯なし」
「えーっ! 何よそれ! 男なら一度言ったことは守りなさいよね!」
「さっき言ってた物の値段の方がパソコン本体より高いだろ。ていうか、明らかに無駄遣いだよな」
「うるさいの! 女の子はそーゆーのが大事なの! 文句言ったらアンタの小説に絵つけないわよ!?」
「仕事だろ」
「うっさい! アンタの駄小説なんて、私の絵で売れてるようなものなのよ? 分かってる? 私が描かなかったら、アンタなんか即お払い箱よ?」
 もうダメだ。
「ちょ、いきなり倒れないでよ! ……うわ、泣いてる」
「もういい。死にます。帰ってください」
「……もー、すぐ傷つく。……こほん。……あ、あのね、ホントはアンタの小説、面白いわよ? みんな私の絵なんておまけ程度にしか思ってないわよ?」
「なんだそうか! いややっぱりな、薄々そうじゃないかと思ってたんだ! わはははは!」
「はぁ……しかもすぐ立ち直るし。防御力はヤケクソに低いくせに、その回復力の高さはなんなのよ」
 智恵理は呆れたような顔をして俺の頬を引っ張った。
「……で」
「ん?」
「ごはん! 早くどっか連れて行きなさいよ!」
「そういう話でしたっけ」
「そういう話だったの! お腹空いたの! ごはん食べたい、ごはん!」
「チクショウ、智恵理が演ずる欠食児童の姿が火垂るの墓の節子と重なる! 分かった、俺に全部任せろ!」
「そっ、それはいいけど抱きつくなっ!」
 節子の非業の最期を思い出してしまい、気がつくと智恵理を力いっぱい抱きしめていた。慌てて離れる。
「……もー、ばか。痛いじゃないの」
「あ、や。そ、その、ごめん」
「……まー、いいケドさ」
 智恵理はほんのり頬を染めながら、俺の胸を軽く押した。どうにも気恥ずかしくて困る。
「さ、さて! とりあえず、飯でも食うか!」
「そ、そうね! そうしましょうか!」
 先の雰囲気を払拭すべく、殊更明るく言ったら智恵理も乗ってきた。

「……で、なんだってカップラーメンなのよ」
 小さなちゃぶ台を挟み、俺の前に座っている智恵理が不満をぶつけてくる。
「よく考えたら俺もお金なかった」
「はぁ……かいしょーなし」
「面目次第もない」
「ばーかばーかばーか」
 言葉とは裏腹に、智恵理はなんだか楽しそうに俺のおでこを小突いていた。
「それ以上突付くとおでこに穴が開き、俺のあだ名がクリリンになりますがよろしいか」
「じゃ、六ヶ所突つかないとね♪」
「鬼だ……!」
 とかなんとかやってる内に三分経った。できあがり。蓋をぺりぱり剥がす。
「こんなの食べるの久々だけど、やっぱおいしそーね」
「む。なんだか見てたら俺も腹減ってきたので、少しくれ」
「嫌」
「お前が一度口に含んだものでも我慢して食うから」
「絶対嫌!」
 交渉の結果、拒絶の度合いが強くなった。
「アンタねー……学校での私見たら、我慢なんて台詞口が裂けても出てこないわよ?」
「ほう? 学校で君臨してるのか?」
「そうそう、私ってば学校中の不良をこてんぱんにした伝説の不良少女なのよってなんでやねーん」
 智恵理は満面の笑みで俺にツッコミをした。世界が凍りついた。
「……うー、アンタがやらせたんでしょうが! 何か言いなさいよ!」
 羞恥心はあるのか、智恵理は顔を真っ赤にしながら俺にがうがう言った。
「ひどいノリツッコミを見た」
 ツッコミではないパンチが俺の顔面に炸裂。
「まったく……あのね、こう見えても私、学校では文武両道の才媛で通ってるのよ? ラブレターとか貰いまくり。……すごいでしょ?」
「はぁ」
「はぁ、って……張り合いないわねー。もうちょっと驚いたりなんかしたりできないの?」
「智恵理が相撲部部長とは知らなかった。是非俺にも練習風景を見せてくれ」
「勝手に捏造しろとは言ってない!」
 智恵理との会話は難しい。
「まーいーわ。じゃ、いただきまーす」
 行儀よく手を合わせ、智恵理は麺をすすった。
「んー! おいしー♪」
「…………」
「そんな目で見てもやんないわよ。これ、ぜーんぶ私のなんだから♪」
「善意であげたものを、智恵理は独り占めするんだな」
「うっ……」
 これでも良心が存在したのか、智恵理は少し苦しそうに俺を見た。
「……も、もーっ! 分かったわよ! ちょっとだけ分けてあげるから、そんな目で見るなっ!」
「わーい」
 早速食べようとしたその時、はたと気づいた。箸がない。わざわざ取りに台所へ向かうのも面倒だ。ならば……!
「? どしたの、馬鹿みたいに口開けて。まあ馬鹿なのは知ってるけど」
「食べさせて」
「なっ! そっ、そんなの嫌に決まってるでしょ!」
「ええと、何にするか……あ、そうだ。ほら、取材。これを元に書くから。実体験は大事だし」
「絶対嘘! 何にするかって言ってたもん!」
「理由は後付けだが、それでも取材にはなり得ると思うます」
「うっ……そ、そんなの、知らないわよ! 勝手に想像してやったらいいじゃないの!」
「それも悪くないが、実体験と照らし合わせて書いた方が都合がいいんだ。あと、食べさせてくれない場合、俺の唾液が満遍なくラーメンの汁に注がれますがよろしいか」
「う、うう、ううううう~! わ、分かったわよ! そんなことされるくらいなら、アンタに食べさせてあげるわよ! その代わり、一回だけよ!?」
 よし、勝った。
「い、いい? アンタに強制されて嫌々やってんのよ? そこを勘違いしたら殺すわよ!?」
「恐怖のあまり涎がこぼれそうだ」
「ラーメンに近寄るなッ! そこでじっとしてろ!」
 威嚇されたので大人しく座して待つ。
「……ほ、ほら。あーん」
 智恵理は麺をすくうと、俺に向けた。
「睨むな。怖い」
「う、うっさい! ほ、ほら、早く食べなさいよ!」
「間違えて指を咥えそうだ」
「間違えたら、殺すッ!」
 失敗を許さない歪んだ社会を垣間見た。とまれ、差し出された麺を食べる。
「もしゃもしゃ」
「……ど、どうなの?」
「カップヌードル」
「知ってるわよ! じゃなくて、ほ、ほら。……私に手ずから食べさせてもらったんだから、ちょっとはおいしく感じるでしょ?」
「うーん。一緒」
「あによっ! 折角食べさせてあげたんだから、ちょっとはお世辞くらい言ったらどうなのっ!?」
「怖すぎてやはり涎がこぼれそうだ」
「ちょっとでもその場から動いたら、殺すッ!」
 どうして飯を食うだけで死に瀕さなければならないのか。
「しかし、動かないのであれば、俺はカップラーメンを食べられないままなのだけど」
「……しょ、しょうがないから私が食べさせてあげるわ。かっ、勘違いしないでよ、アンタが無駄に動いたら余計に労力がかかるからよ! 他意はないんだからねっ!」
「…………。うん、分かってる」
「その間は何よっ!?」
「まあ、気にするな。それより、お前も食え」
「ええっ!?」
「何を驚いている。そもそも、飯を食いに来たのだろ? なのに、俺ばかり食べては本末転倒じゃないか」
「て、てことは、私が食べて、次にアンタに食べさせて、ってのを順番でやれってコト……?」
「お、ないすあいであ。それ採用」
 智恵理の顔がみるみる赤くなっていく。
「そっ、そんな超間接キス合戦を私にやれって!?」
「智恵理にこれって超間接キス合戦だよなって言ったら」
「真面目に聞けッ!」
 言葉の響きが面白かったので言ってみたら怒られた。
「まあ、どうしてもとは言わないが、やってくれない場合、ショックのあまり今書いてる小説の締め切りが伸びまくることだけは覚悟しておけ。最悪の場合落ちます」
「脅迫よそれ!? ていうか、それって自分の首も絞めてるわよ!」
「だから、やってくれると俺も助かる」
「アンタ絶対に脳みそおかしいわよ!」
「学生時代よく言われた」
「はぁ……」
 やるせない感じのため息を吐かれた。
「う、うー……しょうがないわね。やってあげるわよ!」
「わーい」
「喜ぶなッ! 私は自分のためにやんの! もしアンタが落としたりしたら、私の評判も下がるから、しょうがなくやってあげるの! そこ勘違いしたら殺すわよ!」
「智恵理はよく俺を殺そうとするよね」
「ぐだぐだ言ってないで口開けろ!」
「なんてムードのないイチャイチャだ」
「い、イチャイチャとか言うなっ、ばかっ!」
「もがっ」
 口に麺が突っ込まれる。
「もがもが、もぐ。……あのさ、死ぬから」
「う、うっさい! ……で、次は、私が」
 容器から麺をすくい、じーっと箸を見つめた後、智恵理は意を決したように目をぎゅっとつぶって麺を口にした。
「ん、んー! ……ふぅ。ほ、ほら、どうよ? か、間接キスくらい、なんでもないわよ!」
「全力で顔が赤いですが、指摘しない方がいいでしょうか」
「しない方がいいわねッ!」
 口で言えば分かるので、殴らないで。
「そ、それで、いつまでこれ続けるの?」
「そりゃ、当然全て食べ終わるまでだろ。もったいないお化けが出たら怖い」
「全部!?」
 智恵理の声につられるように容器の中を見る。まだまだ沢山残っていた。
「……そ、そろそろアンタも飽きてきたでしょ? もう終わりでいいよね?」
「一生飽きない予感がある」
「そんな予感捨ててしまえっ! ああもうっ、分かったわよ! 全部食べ切るまでやってあげるわよっ! ほらっ、あーんっ!」
 半ば投げやりな感じで、智恵理は俺に口を開けさせるのだった。

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【妹祭】

2010年04月26日
 シスプリした。こんな世界があるのかと感動した。
「あ、おはよータカシ」
「違うぞかなみ、お兄ちゃんと呼べ!」
「……壊れた? なに? お兄ちゃんって」
「おー、兄だぞかなみ」
 かなみをぎゅーっと抱きしめる。
「わ、ちょ、ちょっといきなり何を……」
 顔を赤くしているかなみを置いて、ちなみの元へ行く。
「……おはよ、タカシ」
「ノンノンノン。にぃにぃだ」
「……にぃにぃ?」
「おー、兄だぞちなみ」
 ちなみをぎゅーっと抱きしめる。
「う、ううう……朝から破廉恥な行為をタカシはする」
 ちなみは不満そうに言った。頬が赤いのは気のせいなのか。
「お、そこにおわすはみことじゃないか。おはようみこと、兄様と呼べ」
 ちなみを拘束から解き、不思議そうにこっちを見ていたみことに駆け寄る。
「……とうとう脳が湧いたか。馬鹿ではあるが、いい奴だったのだがな」
「いーからほれ、兄様と呼ぶのだ」
「……まぁ、これも餞別と思えば。……ええと、兄様?」
「おお、兄だぞみこと」
 みことをぎゅーっと抱きしめる。
「ぬ、こ、これは……」
 赤ら顔を見せるみことを見てると、色々な感情が呼び覚まされるようだ。
「何をしてる、別府」
「おお、アンタも俺を兄と呼びたいのか……先生」
「職員室来い」
「はい」
 妹祭は説教数時間をもって終わった。

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【お化けが怖いツンデレ】

2010年04月25日
 幽霊が俺の部屋に住み着いて困る。
「ねーねー、テレビ見たいから点けて、テレビ」
 幽霊がコタツに入ったまま、顎でリモコンを示した。
「うるさい、無駄飯食らい。おまえ物掴めるんだから自分でやれ。俺は寒いからコタツから出たくない」
「だ、誰が無駄飯食らいよッ! たまに掃除とか手伝ってあげてるじゃない!」
「じゃあテレビ点けるのも自分で出来るよな?」
「いーから早くしてよ! 早くしないと暴れて近所から心霊現象の起こる家って噂させるよ?」
 脅迫されたので、俺は素直に床に落ちたリモコンを拾い、テレビを点けた。
「怪奇現象スペシャル? また馬鹿みたいなのやってんな」
 幽霊に話しかけるが、答えはない。
「どした?」
「……ね、ねぇ、こんなのつまんないし、別の見よ?」
 幽霊は小刻みに震えていた。……まさかとは思うが、そういうことなのか?
「いやいやいや、たまにはこういうのを見るのも一興かと」
「わ、私ちょっと幽霊の会合に行ってくるね」
「……幽霊のくせに怖いのか?」
 ふらふら出て行こうとする幽霊の後姿に呟きかける。
「こ、怖いわけないじゃないの! 怪奇現象そのものの私がそんなわけ、ねぇ?」
「じゃー見よ」
「う、ぐ、……ううううう、いいわよ、見てあげるわよ!」
 巧みな話術で幽霊をコタツに引っ張り込み、一緒にテレビを見る。
「ほう、リカちゃん電話の話か。結構有名だよな」
「う、う?」
 最初はコタツの右側に座っていた幽霊だけど、気づいたら俺の脇に寄って来ていた。
「……なんで寄って来てんの?」
「き、来てない。気のせい」
「……そうか?」
 幽霊はコクコクコクと頷いた。
「……まぁいいや」
 テレビに目を戻すと、少女がリカちゃんからの電話に怯えるシーンが描かれていた。
「……こ、子供騙しね」
 幽霊はぷるぷる震えながら俺を見上げた。よく見ると目じりに涙が溜まってる。
「まぁ、こういうのに演技力を求める方が酷な話だと思うが……それはそうと、なんで俺の腕抱きしめてんの?」
「さ、サービス。アンタもてないから、サービスで抱きしめてあげてんの。だ、だから、いいよね?」
「……はぁ」
 必死の形相でサービスとか言われても信用ならないが、まぁいいか。
 テレビの方もぼちぼちクライマックスのようで、度々かかってくるリカちゃんからの電話に恐怖する少女が映されていた。
「こ、こんなので怖くなるのなんて子供うっきゃあああああ!!!」
 テレビで電話が鳴ったのと同時に、家の電話が鳴った。
「あれ、こんな夜中に誰だろ」
 コタツから出て受話器を取ろうとしたら、服を引っ張られた。見ると、幽霊が必死に俺の服を引っ張っていた。
「だっ、ダメッ! リカちゃんからの電話よ!」
「……いや、あの」
「ダメったらダメ! 殺されちゃうわよ!? アンタに憑りついていいのは、私だけなんだから!」
 俺はぼうっと幽霊を見ていた。しばらくそのままでいると、電話は鳴り止んだ。
「……よ、よかった。リカちゃん、諦めてくれた……」
 心底力が抜けた、という感じで幽霊はへたりこんだ。
「……あの、現実と虚構について色々教えてあげたいところなんだが、それより」
 幽霊は不思議そうに小首を傾げた。
「……俺に憑りついていいのはお前だけってのは、その」
 幽霊の半透明な顔が赤くなった。
「な、なんでもない! 気のせい! 耳の迷い!」
「いや、でもさ。ところで耳の迷いってなに?」
「うるさい、うるさい、うるさい! だいたいアンタがこんな変な番組見せるのが悪いんだから!」
 幽霊は顔を赤くしたまま捲し立てるのだった。

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【ツンデレの家に男の写真があったら】

2010年04月21日
 暇なので、最近仲良くなった藪坂の家に遊びに行くことにした。無断で。
 スネークがダンボールを使えば大丈夫だ、と言ってたので落ちてたダンボール被ってストーキング。
「……何やってんの、おまえ」
 藪坂が俺の方を見つめていた。いや、大丈夫。ダンボール被ってるから見つかるはずない!
 と思ってたら、藪坂は無言でダンボールを取り去った。後に残されるのは、道端に座り込んでる俺のみ。
「や、偶然」
「怪しすぎるぞ、おまえ。何やってんの?」
「や、その、……追跡?」
「すんな! てーか、こんな怪しいダンボールが後ろから着いてきたら変に思うに決まってるだろ!」
 藪坂は俺の不備をずびずび叱った。
「スマン。次はもっとばれないようにストーキングする」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
 何に怒ってるのかよく分からないけど、顔を締め付けるアイアンクローの強さからみて、かなり怒ってるのだなぁと思った。あと、顔もげる。
「いててて……おまえ女なんだから、もーちっと女らしくしろよ。人の顔をもごうとするなんざ、女のすることじゃないぞ」
「うっせーな、オレの勝手だろ。お前も女は女らしくしろ、ってタチか?」
「んー……別に俺の顔をもがなけりゃ、どうでもいい。てーか、女らしい藪坂なんて、気持ち悪い」
「あはは、オレもそう思う」
 にっこり笑って、藪坂は俺の顔をもぎにかかった。あと一回でたぶんもげる。
「で? なんでオレの後つけたりしたんだ?」
「暇だし、遊びに行こうかな、と」
「ええっ!?」
 大変驚かれたので、逆に俺が驚いた。
「な、なんで? オレん家来てもすることないぞ?」
「いや、暇つぶしだし別にそれでも構わん。ほれほれ、行こう行こう」
「いや、来るなって! それよりええと、ほら、そこのゲーセン行こうゲーセン!」
「金ないし、なによりそれほど頑なに断られると逆に行きたくなる」
「だから、来るなって言ってるだろ!」
 その後、何度も来るなと言われつつ殴られたりしたけど、俺の熱意に負けたのか、藪坂は家に行くことを認めてくれた。
「……変なことするなよな」
 釘を刺してから、藪坂は俺を部屋に通した。
 どんな部屋かと期待してみれば、なんということはない、特に変なところも見つからない至極普通の部屋だった。
「あんまきょろきょろすんなよ。じゃオレ、なんか飲み物取ってくる。なにがいい?」
「母乳」
「出るかッ!」
 怒鳴られたので、大人しくコーヒーを頼み、部屋の真ん中に座ってきょろきょろする。
 普通の部屋だけど、藪坂らしく女の子らしい品は見当たらない。それでも、部屋に漂う甘やかな香りに、藪坂が女の子だということを改めて意識してしまう。
「ん?」
 机の上に、写真立てがあった。誰が写っているのか興味に駆られ、俺は机に近寄った。
「ほい、お待たー……あああああッ!」
「痛いッ!?」
 戻ってきた藪坂が絶叫を上げると同時に、俺の顔に硬い何かが命中した。痛みのあまり転げまわる。
「う、ううう……缶コーヒー?」
「おっ、おまえ、見た? 見たのか!?」
 俊敏な動作で写真立てを伏せ、藪坂は真っ赤な顔で俺を激しく揺さぶった。
「そんなことより、人の顔に缶コーヒーをぶつけたことに対する詫びが先かと」
「見たか!? 見てないのか!?」
「まぁ、見る前に撃沈されたんだけど」
「……そ、そっかぁ」
 藪坂は心底ほっとしたように息を吐き、その場に座り込んだ。
「誰の写真なんだ?」
「だっ、誰でもいいだろ、ばか!」
 照れ隠しのように俺の背をばしんばしん叩く。すごく痛い。
「好きな男とか?」
 藪坂の顔がタコみたいに赤くなった。
「ははぁ、なるほどなぁ。いや、藪坂でも好きな奴いたのか。なんかお兄さん安心したよ」
「……どーいう意味だよ、それ」
「おにゃのこにやたら人気あるみたいだし、てっきり同性に走るかとぐぁっ」
 殴られた。
「うっせぇ、馬鹿! そんなわけあるか!」
「いつつ……で、誰?」
「そ、そんなのどうでもいいだろ! ほ、ほら、ゲームでもしようぜ!」
 無理やりはぐらかされたけど、まぁいいか。ただの興味本位で聞くこともない。
 しかしまぁ、藪坂の好きな奴か……どんな奴なんだろうな。こいつのことだ、どうせ変な奴に惚れたに違いない。
「……なんだよ、変な顔して」
「いや、別に」
 藪坂はふて腐れたように、ちょっとだけ口を尖らした。

「やっと帰ったか、あの馬鹿」
 タカシが帰宅した後、藪坂はほっとしたように息を吐いた。
「……ホントに見なかっただろうな、別府の奴」
 伏せてあった写真立てを立てる。そこに、必死な顔で弁当を食べてるタカシがいた。
「なんで飯食うだけでこんな必死になれるんだろな。……へへっ、馬鹿みたい」
 藪坂はだらしないくらい頬を緩ませ、タカシの顔をちょこんと突付くのだった。

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