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2024年11月22日
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【お化けが怖いツンデレ】

2010年04月25日
 幽霊が俺の部屋に住み着いて困る。
「ねーねー、テレビ見たいから点けて、テレビ」
 幽霊がコタツに入ったまま、顎でリモコンを示した。
「うるさい、無駄飯食らい。おまえ物掴めるんだから自分でやれ。俺は寒いからコタツから出たくない」
「だ、誰が無駄飯食らいよッ! たまに掃除とか手伝ってあげてるじゃない!」
「じゃあテレビ点けるのも自分で出来るよな?」
「いーから早くしてよ! 早くしないと暴れて近所から心霊現象の起こる家って噂させるよ?」
 脅迫されたので、俺は素直に床に落ちたリモコンを拾い、テレビを点けた。
「怪奇現象スペシャル? また馬鹿みたいなのやってんな」
 幽霊に話しかけるが、答えはない。
「どした?」
「……ね、ねぇ、こんなのつまんないし、別の見よ?」
 幽霊は小刻みに震えていた。……まさかとは思うが、そういうことなのか?
「いやいやいや、たまにはこういうのを見るのも一興かと」
「わ、私ちょっと幽霊の会合に行ってくるね」
「……幽霊のくせに怖いのか?」
 ふらふら出て行こうとする幽霊の後姿に呟きかける。
「こ、怖いわけないじゃないの! 怪奇現象そのものの私がそんなわけ、ねぇ?」
「じゃー見よ」
「う、ぐ、……ううううう、いいわよ、見てあげるわよ!」
 巧みな話術で幽霊をコタツに引っ張り込み、一緒にテレビを見る。
「ほう、リカちゃん電話の話か。結構有名だよな」
「う、う?」
 最初はコタツの右側に座っていた幽霊だけど、気づいたら俺の脇に寄って来ていた。
「……なんで寄って来てんの?」
「き、来てない。気のせい」
「……そうか?」
 幽霊はコクコクコクと頷いた。
「……まぁいいや」
 テレビに目を戻すと、少女がリカちゃんからの電話に怯えるシーンが描かれていた。
「……こ、子供騙しね」
 幽霊はぷるぷる震えながら俺を見上げた。よく見ると目じりに涙が溜まってる。
「まぁ、こういうのに演技力を求める方が酷な話だと思うが……それはそうと、なんで俺の腕抱きしめてんの?」
「さ、サービス。アンタもてないから、サービスで抱きしめてあげてんの。だ、だから、いいよね?」
「……はぁ」
 必死の形相でサービスとか言われても信用ならないが、まぁいいか。
 テレビの方もぼちぼちクライマックスのようで、度々かかってくるリカちゃんからの電話に恐怖する少女が映されていた。
「こ、こんなので怖くなるのなんて子供うっきゃあああああ!!!」
 テレビで電話が鳴ったのと同時に、家の電話が鳴った。
「あれ、こんな夜中に誰だろ」
 コタツから出て受話器を取ろうとしたら、服を引っ張られた。見ると、幽霊が必死に俺の服を引っ張っていた。
「だっ、ダメッ! リカちゃんからの電話よ!」
「……いや、あの」
「ダメったらダメ! 殺されちゃうわよ!? アンタに憑りついていいのは、私だけなんだから!」
 俺はぼうっと幽霊を見ていた。しばらくそのままでいると、電話は鳴り止んだ。
「……よ、よかった。リカちゃん、諦めてくれた……」
 心底力が抜けた、という感じで幽霊はへたりこんだ。
「……あの、現実と虚構について色々教えてあげたいところなんだが、それより」
 幽霊は不思議そうに小首を傾げた。
「……俺に憑りついていいのはお前だけってのは、その」
 幽霊の半透明な顔が赤くなった。
「な、なんでもない! 気のせい! 耳の迷い!」
「いや、でもさ。ところで耳の迷いってなに?」
「うるさい、うるさい、うるさい! だいたいアンタがこんな変な番組見せるのが悪いんだから!」
 幽霊は顔を赤くしたまま捲し立てるのだった。

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