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2024年11月22日
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【ツンデレの家に男の写真があったら】

2010年04月21日
 暇なので、最近仲良くなった藪坂の家に遊びに行くことにした。無断で。
 スネークがダンボールを使えば大丈夫だ、と言ってたので落ちてたダンボール被ってストーキング。
「……何やってんの、おまえ」
 藪坂が俺の方を見つめていた。いや、大丈夫。ダンボール被ってるから見つかるはずない!
 と思ってたら、藪坂は無言でダンボールを取り去った。後に残されるのは、道端に座り込んでる俺のみ。
「や、偶然」
「怪しすぎるぞ、おまえ。何やってんの?」
「や、その、……追跡?」
「すんな! てーか、こんな怪しいダンボールが後ろから着いてきたら変に思うに決まってるだろ!」
 藪坂は俺の不備をずびずび叱った。
「スマン。次はもっとばれないようにストーキングする」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
 何に怒ってるのかよく分からないけど、顔を締め付けるアイアンクローの強さからみて、かなり怒ってるのだなぁと思った。あと、顔もげる。
「いててて……おまえ女なんだから、もーちっと女らしくしろよ。人の顔をもごうとするなんざ、女のすることじゃないぞ」
「うっせーな、オレの勝手だろ。お前も女は女らしくしろ、ってタチか?」
「んー……別に俺の顔をもがなけりゃ、どうでもいい。てーか、女らしい藪坂なんて、気持ち悪い」
「あはは、オレもそう思う」
 にっこり笑って、藪坂は俺の顔をもぎにかかった。あと一回でたぶんもげる。
「で? なんでオレの後つけたりしたんだ?」
「暇だし、遊びに行こうかな、と」
「ええっ!?」
 大変驚かれたので、逆に俺が驚いた。
「な、なんで? オレん家来てもすることないぞ?」
「いや、暇つぶしだし別にそれでも構わん。ほれほれ、行こう行こう」
「いや、来るなって! それよりええと、ほら、そこのゲーセン行こうゲーセン!」
「金ないし、なによりそれほど頑なに断られると逆に行きたくなる」
「だから、来るなって言ってるだろ!」
 その後、何度も来るなと言われつつ殴られたりしたけど、俺の熱意に負けたのか、藪坂は家に行くことを認めてくれた。
「……変なことするなよな」
 釘を刺してから、藪坂は俺を部屋に通した。
 どんな部屋かと期待してみれば、なんということはない、特に変なところも見つからない至極普通の部屋だった。
「あんまきょろきょろすんなよ。じゃオレ、なんか飲み物取ってくる。なにがいい?」
「母乳」
「出るかッ!」
 怒鳴られたので、大人しくコーヒーを頼み、部屋の真ん中に座ってきょろきょろする。
 普通の部屋だけど、藪坂らしく女の子らしい品は見当たらない。それでも、部屋に漂う甘やかな香りに、藪坂が女の子だということを改めて意識してしまう。
「ん?」
 机の上に、写真立てがあった。誰が写っているのか興味に駆られ、俺は机に近寄った。
「ほい、お待たー……あああああッ!」
「痛いッ!?」
 戻ってきた藪坂が絶叫を上げると同時に、俺の顔に硬い何かが命中した。痛みのあまり転げまわる。
「う、ううう……缶コーヒー?」
「おっ、おまえ、見た? 見たのか!?」
 俊敏な動作で写真立てを伏せ、藪坂は真っ赤な顔で俺を激しく揺さぶった。
「そんなことより、人の顔に缶コーヒーをぶつけたことに対する詫びが先かと」
「見たか!? 見てないのか!?」
「まぁ、見る前に撃沈されたんだけど」
「……そ、そっかぁ」
 藪坂は心底ほっとしたように息を吐き、その場に座り込んだ。
「誰の写真なんだ?」
「だっ、誰でもいいだろ、ばか!」
 照れ隠しのように俺の背をばしんばしん叩く。すごく痛い。
「好きな男とか?」
 藪坂の顔がタコみたいに赤くなった。
「ははぁ、なるほどなぁ。いや、藪坂でも好きな奴いたのか。なんかお兄さん安心したよ」
「……どーいう意味だよ、それ」
「おにゃのこにやたら人気あるみたいだし、てっきり同性に走るかとぐぁっ」
 殴られた。
「うっせぇ、馬鹿! そんなわけあるか!」
「いつつ……で、誰?」
「そ、そんなのどうでもいいだろ! ほ、ほら、ゲームでもしようぜ!」
 無理やりはぐらかされたけど、まぁいいか。ただの興味本位で聞くこともない。
 しかしまぁ、藪坂の好きな奴か……どんな奴なんだろうな。こいつのことだ、どうせ変な奴に惚れたに違いない。
「……なんだよ、変な顔して」
「いや、別に」
 藪坂はふて腐れたように、ちょっとだけ口を尖らした。

「やっと帰ったか、あの馬鹿」
 タカシが帰宅した後、藪坂はほっとしたように息を吐いた。
「……ホントに見なかっただろうな、別府の奴」
 伏せてあった写真立てを立てる。そこに、必死な顔で弁当を食べてるタカシがいた。
「なんで飯食うだけでこんな必死になれるんだろな。……へへっ、馬鹿みたい」
 藪坂はだらしないくらい頬を緩ませ、タカシの顔をちょこんと突付くのだった。

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