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2025年04月06日
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【ホワイトデー かなみ】
2011年03月17日
今日はホワイトデーだ。何をお返しすればいいのか色々調べたのだけど、結局よく分からなかったので何も用意していない俺を君は責めるか。
「責めるわよッ!」
というようなことをチョコレートをくれた女性であるところのかなみに伝えると、超怒られた。
「どういうことよ!?」
「や、だからさっき説明したとおりのことで」
「別にそんな高いのじゃなくてもいいわよ?」
「まず値段を気にするのですね」
いっぱい殴られた。
「痛いのですが」
「うっさい! いーから今日の放課後一緒に買い物行くわよ!」
「いや、めんどくさいし別にいいよ。かなみにはなんかそこらの石とか贈るよ。あいつ結構馬鹿だから隕石とか適当言ったら喜ぶに違いないよ」
「その石で動けなくなるまで殴られたくなかったら来い」
「はい」(ガクガク震えながら)
そんなわけで、放課後かなみと一緒に街まで出てきた。いつもの調子でエロゲ屋に入ろうとしたら、首根っこを掴まれた。
「学生服でどこに入ろうとしてるかっ!」
「ああ、これは失敬」(ぬぎぬぎ)
「服を脱げばいいって話じゃないっ! 今日は私の用事でしょ!」
「待って待って引っ張らないでズボンがズボンが脱げたままです!」
下半身の防具がパンツだけという恥ずかしい状態で連れて来られたのは、なんだか高そうな貴金属が並んでいるお店の前。
「ほら、入るわよ」
「あのさ、かなみ。お前が俺の懐事情を知らないのを加味したとしても、無理なの分かるだろ」
必死でズボンをはき直しながらかなみを説得する。こんなもん絶対無理だ。
「何よ、情けないわねぇ……大丈夫よ、見るだけだから」
「そうか? それならまあいいが……」
戦々恐々しながら店内に入る。店員のいらっしゃいませ、という声に過敏に反応してしまう俺はどこまでいっても小市民だ。
そんな俺を引っ張り、かなみはリングが並んでいるコーナーへ向かった。
「へぇ、値段の割に結構いいじゃない」
かなみの後ろから値札を見る。なんかいっぱい0が並んでる!
「数字だけで脂汗がにじみ出てきた」
「寄るなっ!」
誰が連れてきたんだ、誰が。
「ったく、これくらい軽く買うくらいの甲斐性ないの?」
「ただの学生に無茶を言うな。俺に買えるのはせいぜいこっちだ」
高級リング類の隣に、0が一つ少ない指輪を売ってるコーナーがある。そこの指輪をひとつ手に取り、かなみの指にはめる。
「え、え!?」
「うん、似合うんじゃないか?」
「で、でも、あの、あのね? ……き、気づいてない?」
「うん?」
「……ひ、ひだりて」
俺がはめた指輪は、かなみの左手、それも悪いことに、薬指にはまってます。
「おおぉおおお!?」
「……ぷ、ぷろぽーず?」
「違う違いますまだ早いです!」
「ま、まだ!?」
混乱するのも分かるが落ち着け俺。深呼吸だ。すーはーすーはーすーはー。
「……ふぅ落ち着いた」
しかし、かなみはまだ落ち着いてないようで、顔を真っ赤にしたまま、どこか陶然とした表情で指輪を見つめている。
「…………」
「ああっ! 何すんのよ!」
無言で指輪を抜き取り、今度は右手の薬指にはめる。
「こっちな、こっち」
「あ、う、うん。……買ってくれるの?」
「このくらいの値段ならなんとかいけるので。そりとも他のがいいか?」
「ううんっ、ううんっ! これがいいっ!」
「そ、そか」
あまりの勢いに少し驚きながらも、何やら超ご機嫌な様子なので特に何も言わないでおく。そんなわけでレジで清算して店から出る。
「へへー。……ふへへー」
それからもかなみは手を透かして指輪を見てはニヤニヤしているので一寸怖い。
「超嬉しそうですね」
「だっ!? だ、誰が嬉しそうだってのよ、誰が! あ、アンタなんかからのお返しなんだから、嬉しくなんてないんだからっ! アンタの財布に大ダメージを与えたのが嬉しいのっ!」
「なんて歪んだ奴だ。まあどっちにしろ、お前が嬉しいならそれでいいや」
「う……な、何よ! そんなこと言われても、感謝とかしないんだからっ!」
「元よりお返しだ、感謝される覚えはない」
「う……ううーっ!」
「頬を引っ張るな」
なんだか俺の頬は誰かに引っ張られがちです。
「ふぅ。……あのさ」
しばらくぎうぎう引っ張って満足したのか、かなみは俺の隣を歩きつつ、目だけをこちらに向けて呟いた。
「……そ、その。アンタの財布にさ、いっぱいダメージ与えたからさ、いっぱい悲しいでしょ?」
「や、一万円いかなかったし、これくらいは覚悟してたから大丈夫」
「いっぱい悲しいでしょ!?」
「はい」
明らかに勢いで押されたが、そうしないと進まない感じだったので肯定しておく。
「でしょ? だ、だからさ。特別にさ。……て、手、繋いだげる」
「はい?」
「とっ、特別なのっ! こういう機会でもないとアンタ一生誰とも手なんて繋げないだろうしっ!」
「や、まあ、それは否定できないけど……」
「だ、だから繋いだげる。お金の分ね、その分ね。それ以外の理由なんてないし」
「はぁ」
「……そ、それとも、この私が相手なのに、不満だって言うの?」
どこか不安げな眼差しが俺に注がれる。何て顔してんだ、この娘は。
「……ああ、不満だな」
「……そ、そか。そなんだ」
「お前が俺に断られるかもしれない、なんて思ってるだなんてな」
意地悪く笑いながら、素早く手を繋ぐ。
「…………」
「いやはや、あんなモテ台詞を言う羽目になるとは。超恥ずかしいですね」
「……う、うぅーっ!」(ふにふに)
かなみは突然俺の腕に抱きつくと、わっさわさと俺の腕に顔をこすりつけた。
「な、何!?」
「うー……うっさい! アンタがかっこつけた言い回しするから! 普通に手を繋ぎたいって言ったらよかったのに!」
噛み付くような言葉とは裏腹に、かなみの顔はこれ以上ないくらい赤かった。
「あー……いやあ、こういう時くらい調子に乗りたいじゃないですか」
「アンタが調子に乗っていい時なんてないの!」
「酷い話だ」
そう言われながら何度も手をにぎにぎされ、知らず頬が緩む。
「に、ニヤニヤするな! へんたい!」
「しょうがないだろ、変態なんだから。ていうか、お前が手を握るだけじゃなくてにぎにぎなんてするからニヤニヤしちまうんだよ」
「アンタの手を握りつぶそうとしてるの!」
「なんて無茶な言い訳だ。ところで、もうちょっと色々回りたいのですが、よろしいですかね?」
「え? いいけど……何か買う物でもあるの?」
「いや、デートだし。沢山かなみといたいし」
「でっ、デートじゃない! デートじゃないもん! ホワイトデーのお返しを一緒に買いに来ただけ!」
「手を繋いでデートじゃないとかなみは言い張る」
「……お、お礼。これはお礼だからいいの」
「そんな些細なことさえデートの記憶にしてしまう俺は凄い」
「で、デートデートうるさいっ! 違うからっ! 絶対デートなんかじゃないからっ!」
「そうなのにゃー?」
「そうなのにゃー! ……って、変なこと言わせるなっ!」
「うわ、この娘超可愛い」(なでなで)
「頭なでるなーっ!」
もぎゃもぎゃ言われたが、デートを続行できたので、大変楽しかったです。
「責めるわよッ!」
というようなことをチョコレートをくれた女性であるところのかなみに伝えると、超怒られた。
「どういうことよ!?」
「や、だからさっき説明したとおりのことで」
「別にそんな高いのじゃなくてもいいわよ?」
「まず値段を気にするのですね」
いっぱい殴られた。
「痛いのですが」
「うっさい! いーから今日の放課後一緒に買い物行くわよ!」
「いや、めんどくさいし別にいいよ。かなみにはなんかそこらの石とか贈るよ。あいつ結構馬鹿だから隕石とか適当言ったら喜ぶに違いないよ」
「その石で動けなくなるまで殴られたくなかったら来い」
「はい」(ガクガク震えながら)
そんなわけで、放課後かなみと一緒に街まで出てきた。いつもの調子でエロゲ屋に入ろうとしたら、首根っこを掴まれた。
「学生服でどこに入ろうとしてるかっ!」
「ああ、これは失敬」(ぬぎぬぎ)
「服を脱げばいいって話じゃないっ! 今日は私の用事でしょ!」
「待って待って引っ張らないでズボンがズボンが脱げたままです!」
下半身の防具がパンツだけという恥ずかしい状態で連れて来られたのは、なんだか高そうな貴金属が並んでいるお店の前。
「ほら、入るわよ」
「あのさ、かなみ。お前が俺の懐事情を知らないのを加味したとしても、無理なの分かるだろ」
必死でズボンをはき直しながらかなみを説得する。こんなもん絶対無理だ。
「何よ、情けないわねぇ……大丈夫よ、見るだけだから」
「そうか? それならまあいいが……」
戦々恐々しながら店内に入る。店員のいらっしゃいませ、という声に過敏に反応してしまう俺はどこまでいっても小市民だ。
そんな俺を引っ張り、かなみはリングが並んでいるコーナーへ向かった。
「へぇ、値段の割に結構いいじゃない」
かなみの後ろから値札を見る。なんかいっぱい0が並んでる!
「数字だけで脂汗がにじみ出てきた」
「寄るなっ!」
誰が連れてきたんだ、誰が。
「ったく、これくらい軽く買うくらいの甲斐性ないの?」
「ただの学生に無茶を言うな。俺に買えるのはせいぜいこっちだ」
高級リング類の隣に、0が一つ少ない指輪を売ってるコーナーがある。そこの指輪をひとつ手に取り、かなみの指にはめる。
「え、え!?」
「うん、似合うんじゃないか?」
「で、でも、あの、あのね? ……き、気づいてない?」
「うん?」
「……ひ、ひだりて」
俺がはめた指輪は、かなみの左手、それも悪いことに、薬指にはまってます。
「おおぉおおお!?」
「……ぷ、ぷろぽーず?」
「違う違いますまだ早いです!」
「ま、まだ!?」
混乱するのも分かるが落ち着け俺。深呼吸だ。すーはーすーはーすーはー。
「……ふぅ落ち着いた」
しかし、かなみはまだ落ち着いてないようで、顔を真っ赤にしたまま、どこか陶然とした表情で指輪を見つめている。
「…………」
「ああっ! 何すんのよ!」
無言で指輪を抜き取り、今度は右手の薬指にはめる。
「こっちな、こっち」
「あ、う、うん。……買ってくれるの?」
「このくらいの値段ならなんとかいけるので。そりとも他のがいいか?」
「ううんっ、ううんっ! これがいいっ!」
「そ、そか」
あまりの勢いに少し驚きながらも、何やら超ご機嫌な様子なので特に何も言わないでおく。そんなわけでレジで清算して店から出る。
「へへー。……ふへへー」
それからもかなみは手を透かして指輪を見てはニヤニヤしているので一寸怖い。
「超嬉しそうですね」
「だっ!? だ、誰が嬉しそうだってのよ、誰が! あ、アンタなんかからのお返しなんだから、嬉しくなんてないんだからっ! アンタの財布に大ダメージを与えたのが嬉しいのっ!」
「なんて歪んだ奴だ。まあどっちにしろ、お前が嬉しいならそれでいいや」
「う……な、何よ! そんなこと言われても、感謝とかしないんだからっ!」
「元よりお返しだ、感謝される覚えはない」
「う……ううーっ!」
「頬を引っ張るな」
なんだか俺の頬は誰かに引っ張られがちです。
「ふぅ。……あのさ」
しばらくぎうぎう引っ張って満足したのか、かなみは俺の隣を歩きつつ、目だけをこちらに向けて呟いた。
「……そ、その。アンタの財布にさ、いっぱいダメージ与えたからさ、いっぱい悲しいでしょ?」
「や、一万円いかなかったし、これくらいは覚悟してたから大丈夫」
「いっぱい悲しいでしょ!?」
「はい」
明らかに勢いで押されたが、そうしないと進まない感じだったので肯定しておく。
「でしょ? だ、だからさ。特別にさ。……て、手、繋いだげる」
「はい?」
「とっ、特別なのっ! こういう機会でもないとアンタ一生誰とも手なんて繋げないだろうしっ!」
「や、まあ、それは否定できないけど……」
「だ、だから繋いだげる。お金の分ね、その分ね。それ以外の理由なんてないし」
「はぁ」
「……そ、それとも、この私が相手なのに、不満だって言うの?」
どこか不安げな眼差しが俺に注がれる。何て顔してんだ、この娘は。
「……ああ、不満だな」
「……そ、そか。そなんだ」
「お前が俺に断られるかもしれない、なんて思ってるだなんてな」
意地悪く笑いながら、素早く手を繋ぐ。
「…………」
「いやはや、あんなモテ台詞を言う羽目になるとは。超恥ずかしいですね」
「……う、うぅーっ!」(ふにふに)
かなみは突然俺の腕に抱きつくと、わっさわさと俺の腕に顔をこすりつけた。
「な、何!?」
「うー……うっさい! アンタがかっこつけた言い回しするから! 普通に手を繋ぎたいって言ったらよかったのに!」
噛み付くような言葉とは裏腹に、かなみの顔はこれ以上ないくらい赤かった。
「あー……いやあ、こういう時くらい調子に乗りたいじゃないですか」
「アンタが調子に乗っていい時なんてないの!」
「酷い話だ」
そう言われながら何度も手をにぎにぎされ、知らず頬が緩む。
「に、ニヤニヤするな! へんたい!」
「しょうがないだろ、変態なんだから。ていうか、お前が手を握るだけじゃなくてにぎにぎなんてするからニヤニヤしちまうんだよ」
「アンタの手を握りつぶそうとしてるの!」
「なんて無茶な言い訳だ。ところで、もうちょっと色々回りたいのですが、よろしいですかね?」
「え? いいけど……何か買う物でもあるの?」
「いや、デートだし。沢山かなみといたいし」
「でっ、デートじゃない! デートじゃないもん! ホワイトデーのお返しを一緒に買いに来ただけ!」
「手を繋いでデートじゃないとかなみは言い張る」
「……お、お礼。これはお礼だからいいの」
「そんな些細なことさえデートの記憶にしてしまう俺は凄い」
「で、デートデートうるさいっ! 違うからっ! 絶対デートなんかじゃないからっ!」
「そうなのにゃー?」
「そうなのにゃー! ……って、変なこと言わせるなっ!」
「うわ、この娘超可愛い」(なでなで)
「頭なでるなーっ!」
もぎゃもぎゃ言われたが、デートを続行できたので、大変楽しかったです。
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【バレンタインに豆を浴びせてくるツンデレ】
2011年02月15日
登校するなり豆を浴びせられ俺はもう一体どうすれば。
「今日は節分じゃないですよ?」
「うっさい、ばーか! 来るの遅いのよ!」
そう言いながら依然俺に豆をぶつけ続けるかなみさん。酷い。
「いつも通りの登校時間なのですが」
「バレンタインデーなんだから、アンタみたいな勘違い男は早く来てソワソワしてたらいいの!」
「や、それがね、お前の言う通り登校中はチョコ何個貰えるかなあ、とか思ってたんですが、途中でふと我に返り、もらえるわけねえかとなり生きるのを諦めかけてたんだ。それでもどうにか登校した俺を褒めろ」
「ばーか」
褒められるどころか、馬鹿にされた。
「バレンタインデーにチョコではなく豆を配る奴に馬鹿呼ばわりされしたくないな」
「うっさい! アンタなんか豆で充分よ、ばーか!」
などと言いながら、なおも俺に豆をぶつけるかなみ。なんて酷い奴だ、許せない!
「くそぅ、こうなったら豆が地面に落ちるより早く口の中に入れて滋養にしてやる!」
酸素不足の金魚みたいに口をぱくぱくさせたが、その様子を見たかなみが嫌そうな顔をしてもう豆を投げてくれなかったので、結果そこには変な金魚がいるだけになりました。
「……恥ずかしいじゃないか」
居住まいを正すが、居心地の悪さはとんでもない。周囲のクラスメイトがこちらをちらちら見ながら何かひそひそ言い合ってるし。
「知らないわよ!」
「まあいいや。それよりチョコおくれ、チョコ。義理でいいから」
「アンタなんかにあげるわけないでしょ、ばーか」
「じゃあもう本命でもいいから」
「なんで本命の方が下の扱いなのよっ!」
叱られる&豆を投げられるばかりで一向にチョコが手に入らない。まあ、ダメ元で頼んでるし、しょうがないか。
などと自分を納得させていると、先生がやってきてこの豆はなんだと言う。
「コイツが投げてました」
あろうことか、かなみの奴が俺のせいにした。俺も必死に反論したが、クラスメイトが一丸になって俺のせいにする。普段の行いがこういうところで出るよね。敗訴。
そんな悲しい時間を過ごしてると、もう放課後。
「……あー、まあ、こんなもんだわな」
収穫0。しょうがないとはいえ、やっぱ悲しいね。
まあないものねだりをしてもは仕方ない。家に帰って不貞寝するかと思いつつ鞄に教科書を詰めてると、不意にかなみが教室に戻ってきた。先に帰ったと思ったのだけど……?
「な、何一人で居残りしてるのよ。まさか誰かにチョコもらえるかもとか思って残ってたの? 気持ち悪いわねー」
「気持ち悪い言うない。じゃなくて、朝の豆事件の責任を被らされ、さっきまで一人で掃除してたんだよ。分かったか真犯人」
「私は普段から品行方正に生きてるから、先生の覚えがいいの。アンタとちょうど真逆ね?」
「よくもまあいけしゃあしゃあと……帰ってから想像の中で3回くらい犯してやる」
「変態っ!」
俺の思想はよく弾圧されます。
「まったく……でも、なんで掃除サボらなかったの? 私が言うのもなんだけど、アンタが豆まいたんじゃないのに」
「教室が汚いままだと明日みんなが嫌がるかも、と偽善者精神をフル回転させた」
「ぎ……あ、先に言った! ずるい!」
「お前の言わんとすることなど、俺にかかればまるっとお見通しだ!」
「……え、えっち」
何がだ。
「そ、それより。アンタ今日は誰かにチョコもらったの?」
「なんかね、女子が男子に渡すシーンはいっぱい見たんですが、その鉢が俺には回ってこないんですよ」
「あははっ、やっぱもらってないんだ?」
「義理でもくれりゃいいと思うんだけどな。うちのクラスの女子はみんな冷たいよ」
「アンタを集団リンチしないだけみんな優しいわよ」
「そこまで目の敵にされてたのか、俺」
「しょっちゅう更衣室で覗きしておいて、よくもまあ嫌われてないと思えるわね……」
毎回見つかるが、それでも未だ停学になってない辺り、俺もなかなかの話術を持っているといえよう。
「覗きで思い出したが、なんでかなみってブラしてるの? 必要か? 絆創膏で充分かと」
「分かった、死ね」
かなみから殺気が質量を伴って一気に噴出した。近辺の犬が一斉に悲鳴とも思える甲高い声を上げる。いかん、死ぬ。
「すいません嘘です凄い巨乳なので絆創膏ではとてもとても!」
「くっ……この、白々しいことを」
「いや、本当に! 一見するとただの平原だが、心の目で見るとそこはもうエベレストもかくやと思えるほどの山がそびえ立っているという噂が!」
「結局見た目はうすぺたいって言ってるじゃない!」
「おお、本当だ。はっはっは。でもまあいいじゃん、俺貧乳大好きだし」
「あっ、アンタの好みなんて知らないわよ! ばーかばーかばーか!」
「痛い痛い痛い」
いっぱい殴られたが、普段の生存を諦めそうになる暴力と違い、なんかちょっと手加減してる感じだった。いやそれでも充分痛いですが!
「そ、それより。話を戻すけど。……チョコの話だけど」
「ああ、はあ。まだ馬鹿にし足りないのか」
「そ、そじゃなくて! ……え、えと」
何か言いづらいことでもあるのか、かなみは髪をいじくりながら視線をさまよわせた。
……む、何やら空気が変貌を。さっきまでの血で血を洗う戦場空気はどこへやら、何やら青春っぽい雰囲気が!
「ち、チョコ。……えっと、えと、あの。……ち、チョコ」
視線が俺の顔に来たかと思えば、胸元に行ったり腰に行ったり忙しない。かと思えば、なんかどんどんかなみの顔が赤くなっていってるし。
「は、はい」
いかん、なんか俺まで緊張してきた。呼吸ってどうやるんだっけ!?
「あ、あの、あのね。ぎ、義理。そう、義理なの。義理だからいいの」
「は、はい。いや全くその通りで?」
「だ、だから、いる?」
「はい?」
「だ、だから。チョコ!」
「は、はい!」
「ぎ、義理だから。絶対義理だから。アンタに本命なんてありえないから。勘違いしたらぶっ殺すから」
「こんな可愛いらしい殺意ぶつけられたの初めてだ」
「い、いーから受け取りなさい!」
「へぎゅっ」
鼻っ柱になんかぶつけられた。
「いたた……あ、これ」
俺の鼻に押し付けられていたのは、可愛くラッピングされた箱だった。
「義理だから! 絶対に義理だから! 中にも義理って書いてるから! ハート型のチョコ真ん中で割って失恋を意味してるから!」
「悪意しか感じられねえ」
「悪意てんこもりだから! 毒入りだから!」
「食べられません」
「食べないと殺すから!」
知らない間にDEAD ENDルートに入ってたようだ。どっちにしても死ぬ。
「しょうがない。どうせ死ぬなら食って死のう」
「そ、それがいい。食べて死んで」
かなみは俺の隣の席に座り、真剣な表情でこちらを見つめている。視線を感じながらピンク色の包装をぺりぺりと破ると、両手で収まるほどの大きさの箱が姿を現した。なるほどハート型だが、これを開けると亀裂があるのだなあ。
そう思いながら蓋を取ると、本来あるはずの亀裂がない。しかも、義理とも書いてない。これはどういうことかとかなみを見ると、
「あ、わ、割るの忘れてたし、義理って書くのも忘れてた」
なんて、あわあわしながら棒読みで読み上げる始末。
「……な、何よ。文句あるなら言いなさいよ!」
「勘違いしてもよろしいか?」
「だ、ダメに決まってるでしょ! ばか、ばーか!」
「痛い痛い痛い」
またしてもぺこぽこ殴られた。
「ほ、ほら。いーから早く食べなさいよ、ばか」
「あ、うん。ちなみに、毒は?」
「入ってる。食べたら死ぬ」
「なるほど」
ということで、一口かじる。大変甘くておいしい。
「ど、どう? おいしい? 死ぬ?」
「ふむ。おいしいけど、死なない」
「あ、え、えっと、毒入れるの忘れてた。残念、それただの義理チョコね」
「しかも、亀裂も義理って入れるのも忘れてるから、俺に本命チョコと勘違いされ、喜ばれる始末」
「……め、迷惑よね。ちょー迷惑よね」
気づいてるのかどうか知らないが、かなみの口角が吊りあがってる。なんかすっげー嬉しそう。言うと怒られそうだが。でも言いたいなあ。
「かなみ、ニコニコしてる」
欲求に耐え切れず、口から言葉がこぼれる。
「わ、笑ってないわよ! こ、こっち見るな、ばかっ! 変態っ!」
「はっはっは。あのさ、かなみ。ホワイトデー、覚悟しろよ」
「う……」
「俺は勘違いする変態なんでな。義理チョコを本命と勘違いし、全力でお返しするからな?」
「う……うっさい! ばか! 死ね! 全力で死ね! 笑うな! ばかーっ!」
などと酷いことを言いながら、真っ赤な顔で俺をぺこぽこ叩くかなみだった。
「今日は節分じゃないですよ?」
「うっさい、ばーか! 来るの遅いのよ!」
そう言いながら依然俺に豆をぶつけ続けるかなみさん。酷い。
「いつも通りの登校時間なのですが」
「バレンタインデーなんだから、アンタみたいな勘違い男は早く来てソワソワしてたらいいの!」
「や、それがね、お前の言う通り登校中はチョコ何個貰えるかなあ、とか思ってたんですが、途中でふと我に返り、もらえるわけねえかとなり生きるのを諦めかけてたんだ。それでもどうにか登校した俺を褒めろ」
「ばーか」
褒められるどころか、馬鹿にされた。
「バレンタインデーにチョコではなく豆を配る奴に馬鹿呼ばわりされしたくないな」
「うっさい! アンタなんか豆で充分よ、ばーか!」
などと言いながら、なおも俺に豆をぶつけるかなみ。なんて酷い奴だ、許せない!
「くそぅ、こうなったら豆が地面に落ちるより早く口の中に入れて滋養にしてやる!」
酸素不足の金魚みたいに口をぱくぱくさせたが、その様子を見たかなみが嫌そうな顔をしてもう豆を投げてくれなかったので、結果そこには変な金魚がいるだけになりました。
「……恥ずかしいじゃないか」
居住まいを正すが、居心地の悪さはとんでもない。周囲のクラスメイトがこちらをちらちら見ながら何かひそひそ言い合ってるし。
「知らないわよ!」
「まあいいや。それよりチョコおくれ、チョコ。義理でいいから」
「アンタなんかにあげるわけないでしょ、ばーか」
「じゃあもう本命でもいいから」
「なんで本命の方が下の扱いなのよっ!」
叱られる&豆を投げられるばかりで一向にチョコが手に入らない。まあ、ダメ元で頼んでるし、しょうがないか。
などと自分を納得させていると、先生がやってきてこの豆はなんだと言う。
「コイツが投げてました」
あろうことか、かなみの奴が俺のせいにした。俺も必死に反論したが、クラスメイトが一丸になって俺のせいにする。普段の行いがこういうところで出るよね。敗訴。
そんな悲しい時間を過ごしてると、もう放課後。
「……あー、まあ、こんなもんだわな」
収穫0。しょうがないとはいえ、やっぱ悲しいね。
まあないものねだりをしてもは仕方ない。家に帰って不貞寝するかと思いつつ鞄に教科書を詰めてると、不意にかなみが教室に戻ってきた。先に帰ったと思ったのだけど……?
「な、何一人で居残りしてるのよ。まさか誰かにチョコもらえるかもとか思って残ってたの? 気持ち悪いわねー」
「気持ち悪い言うない。じゃなくて、朝の豆事件の責任を被らされ、さっきまで一人で掃除してたんだよ。分かったか真犯人」
「私は普段から品行方正に生きてるから、先生の覚えがいいの。アンタとちょうど真逆ね?」
「よくもまあいけしゃあしゃあと……帰ってから想像の中で3回くらい犯してやる」
「変態っ!」
俺の思想はよく弾圧されます。
「まったく……でも、なんで掃除サボらなかったの? 私が言うのもなんだけど、アンタが豆まいたんじゃないのに」
「教室が汚いままだと明日みんなが嫌がるかも、と偽善者精神をフル回転させた」
「ぎ……あ、先に言った! ずるい!」
「お前の言わんとすることなど、俺にかかればまるっとお見通しだ!」
「……え、えっち」
何がだ。
「そ、それより。アンタ今日は誰かにチョコもらったの?」
「なんかね、女子が男子に渡すシーンはいっぱい見たんですが、その鉢が俺には回ってこないんですよ」
「あははっ、やっぱもらってないんだ?」
「義理でもくれりゃいいと思うんだけどな。うちのクラスの女子はみんな冷たいよ」
「アンタを集団リンチしないだけみんな優しいわよ」
「そこまで目の敵にされてたのか、俺」
「しょっちゅう更衣室で覗きしておいて、よくもまあ嫌われてないと思えるわね……」
毎回見つかるが、それでも未だ停学になってない辺り、俺もなかなかの話術を持っているといえよう。
「覗きで思い出したが、なんでかなみってブラしてるの? 必要か? 絆創膏で充分かと」
「分かった、死ね」
かなみから殺気が質量を伴って一気に噴出した。近辺の犬が一斉に悲鳴とも思える甲高い声を上げる。いかん、死ぬ。
「すいません嘘です凄い巨乳なので絆創膏ではとてもとても!」
「くっ……この、白々しいことを」
「いや、本当に! 一見するとただの平原だが、心の目で見るとそこはもうエベレストもかくやと思えるほどの山がそびえ立っているという噂が!」
「結局見た目はうすぺたいって言ってるじゃない!」
「おお、本当だ。はっはっは。でもまあいいじゃん、俺貧乳大好きだし」
「あっ、アンタの好みなんて知らないわよ! ばーかばーかばーか!」
「痛い痛い痛い」
いっぱい殴られたが、普段の生存を諦めそうになる暴力と違い、なんかちょっと手加減してる感じだった。いやそれでも充分痛いですが!
「そ、それより。話を戻すけど。……チョコの話だけど」
「ああ、はあ。まだ馬鹿にし足りないのか」
「そ、そじゃなくて! ……え、えと」
何か言いづらいことでもあるのか、かなみは髪をいじくりながら視線をさまよわせた。
……む、何やら空気が変貌を。さっきまでの血で血を洗う戦場空気はどこへやら、何やら青春っぽい雰囲気が!
「ち、チョコ。……えっと、えと、あの。……ち、チョコ」
視線が俺の顔に来たかと思えば、胸元に行ったり腰に行ったり忙しない。かと思えば、なんかどんどんかなみの顔が赤くなっていってるし。
「は、はい」
いかん、なんか俺まで緊張してきた。呼吸ってどうやるんだっけ!?
「あ、あの、あのね。ぎ、義理。そう、義理なの。義理だからいいの」
「は、はい。いや全くその通りで?」
「だ、だから、いる?」
「はい?」
「だ、だから。チョコ!」
「は、はい!」
「ぎ、義理だから。絶対義理だから。アンタに本命なんてありえないから。勘違いしたらぶっ殺すから」
「こんな可愛いらしい殺意ぶつけられたの初めてだ」
「い、いーから受け取りなさい!」
「へぎゅっ」
鼻っ柱になんかぶつけられた。
「いたた……あ、これ」
俺の鼻に押し付けられていたのは、可愛くラッピングされた箱だった。
「義理だから! 絶対に義理だから! 中にも義理って書いてるから! ハート型のチョコ真ん中で割って失恋を意味してるから!」
「悪意しか感じられねえ」
「悪意てんこもりだから! 毒入りだから!」
「食べられません」
「食べないと殺すから!」
知らない間にDEAD ENDルートに入ってたようだ。どっちにしても死ぬ。
「しょうがない。どうせ死ぬなら食って死のう」
「そ、それがいい。食べて死んで」
かなみは俺の隣の席に座り、真剣な表情でこちらを見つめている。視線を感じながらピンク色の包装をぺりぺりと破ると、両手で収まるほどの大きさの箱が姿を現した。なるほどハート型だが、これを開けると亀裂があるのだなあ。
そう思いながら蓋を取ると、本来あるはずの亀裂がない。しかも、義理とも書いてない。これはどういうことかとかなみを見ると、
「あ、わ、割るの忘れてたし、義理って書くのも忘れてた」
なんて、あわあわしながら棒読みで読み上げる始末。
「……な、何よ。文句あるなら言いなさいよ!」
「勘違いしてもよろしいか?」
「だ、ダメに決まってるでしょ! ばか、ばーか!」
「痛い痛い痛い」
またしてもぺこぽこ殴られた。
「ほ、ほら。いーから早く食べなさいよ、ばか」
「あ、うん。ちなみに、毒は?」
「入ってる。食べたら死ぬ」
「なるほど」
ということで、一口かじる。大変甘くておいしい。
「ど、どう? おいしい? 死ぬ?」
「ふむ。おいしいけど、死なない」
「あ、え、えっと、毒入れるの忘れてた。残念、それただの義理チョコね」
「しかも、亀裂も義理って入れるのも忘れてるから、俺に本命チョコと勘違いされ、喜ばれる始末」
「……め、迷惑よね。ちょー迷惑よね」
気づいてるのかどうか知らないが、かなみの口角が吊りあがってる。なんかすっげー嬉しそう。言うと怒られそうだが。でも言いたいなあ。
「かなみ、ニコニコしてる」
欲求に耐え切れず、口から言葉がこぼれる。
「わ、笑ってないわよ! こ、こっち見るな、ばかっ! 変態っ!」
「はっはっは。あのさ、かなみ。ホワイトデー、覚悟しろよ」
「う……」
「俺は勘違いする変態なんでな。義理チョコを本命と勘違いし、全力でお返しするからな?」
「う……うっさい! ばか! 死ね! 全力で死ね! 笑うな! ばかーっ!」
などと酷いことを言いながら、真っ赤な顔で俺をぺこぽこ叩くかなみだった。
【ツンデレと年越し】
2010年12月31日
家でコタツ入ってテレビ見てたのに、かなみに呼び出された。超めんどくさいので嫌だと言ったが、来たらおっぱい見せてやると言うのでワープ9の速度でかなみ宅へ。
「はぁはぁ……きっ、来たぞ! おっぱいを!」
「嘘に決まってるじゃない、ばーか」
玄関先ということも忘れ、膝から全力で崩れ落ちる。
「ちょ、そこまで落ち込まなくても……」
「なんて酷い奴だ! こんな手で何回も俺を騙しやがって! もう二度とひっかからねえからな!」
「このやりとり、今年だけで100回越すんだけど」
「先ほどの台詞により、俺には学習能力がないことが判明しました」
「そんなの最初っから知ってるわよ、ばーか」
「馬鹿馬鹿言うない。ていうかだな、用事ないなら呼ぶな。テレビ見てたんだよ」
「あるわよ。あるから呼んだに決まってるじゃない。ほら、行くわよ」
かなみに引っ張られ、かなみの部屋に通される。
「ほら、入って」
「あい」
「はい、コタツ」
「もい」
指し示されたコタツにもそもそ入る。
「うぉぉ、超寒ぃ! 畜生、罠だったか! 俺もここまでか!」
「スイッチ入ってないだけよ! イチイチ叫ぶな、ばか!」
俺の頭をはたいてから、かなみはコタツのスイッチを入れ、自身もコタツに入った。しばらくすると、徐々に暖かくなってきた。
「ふぃぃ……死ぬかと思った」
「そのまま死んじゃえば良かったのに」
「なんて言い草だ。んで、用事ってのは?」
「あ、そだ。ミカン食べる?」
「食べる」
「んと……はい」
手渡されたミカンの皮を剥き、実を食う。
「ん、甘い」
「でしょ」
かなみと一緒に、点いてるテレビをぼんやり見る。
「……いやいやいや! 思わずまったりしてしまったが、用事はどうした?」
「うるさいなあ。今いいとこなんだからちょっと黙っててよ」
「あ、はい」
しょうがないので、そのままかなみと一緒にぼーっとテレビ見てたら、なにやら足元がもぞもぞと。
「ちょっと。足触んないでよ、ヘンタイ」
「いやいや、お前が触ってきてるんだろ。もしくは、コタツに潜んでる空き巣がお前の足に偶然触れたんだろ」
「変な怖い嘘つくなっ! まったく……」
と言いながらも、依然俺の足のもぞもぞ感は取れていない。
「あのさ、やっぱお前が触ってねえか?」
「してないわよ。ていっ、必殺の足四の字固め」
「全然なってねえ。ていうか語るに落ちてないか?」
「気のせいよ」
何やらニヤニヤしながら、かなみは器用に足の指で俺の足をつねった。
「痛い痛い。何だその技」
「へへー。すごい? 将来はもっと改良してアンタの皮膚を引き千切れるようになるまで頑張るからね」
「将来の職業は拷問官がぴったりですね」
「最初の罪人はアンタに決定ね」
「たぶん冤罪で入れられるんだろうなあ」
「アンタのことだから下着ドロとか覗きとかで捕まるに決まってるじゃない。ばーかばーか」
「人の将来を勝手に決めおって……」
「私を拷問官なんかにして、人のこと言えないじゃない。……そ、それにしても寒いわね」
「コタツの温度上げたらどうだ?」
「もう最高まで上げてるわよ。……さ、寒いし、しょがないわよね」
「はい?」
突然かなみがコタツの中にもぐった。これは大変かなみはヤドカリの亜種だったのかと思っていなかったら、俺のすぐ隣からかなみが顔を出した。
「あー暖かかった。う、うわ、アンタの横だったの。戻る場所間違えた」
「なんスか、その超棒読みは」
「で、でも、戻るのも面倒だし、ここからテレビ見よ」
「いや、意味が分からん。そして依然続くその棒読みは何なのだ」
「もうっ、うるさいっ! 集中できないでしょ!」
「なんで俺が怒られてるの?」
そんなわけで、かなみと肩を寄せ合いながらテレビを見る。
「ちょっと、何触ってんのよ。いやらしいわね」
「狭いから肩があたるんだよ。冤罪だ。……はっ、いかん!」
「ふっふー。拷問官の出番かしらね?」
「やめて皮膚を取らないで!」
「えい、えい♪」
かなみは楽しげに笑いながら俺の頬をふにふにと引っ張った。しかし、それは決して痛くはなく、優しいタッチでむしろ心地よいものだった。
「あははっ。あー楽し……くないっ!」
さっきまで超笑ってたのに、突然かなみは怒った表情を見せた。
「なんだいきなり」
「う、うるさいっ! 調子乗るな、ばかっ!」
「繰り返すが、意味が分からん。いつ調子に乗った」
「その顔がなんか超調子乗ってる!」
「言いにくい。チョウチョウシ、チョウチョウシ。……いかん、俺の毛嫌いする日本語ラップが俺の口から! ええい、年末にかなみと過ごせる俺をやっかむ奴からの呪いかっ!?」
「知らんっ! ……て、ていうか、ボケの中に変なの入れるな、ばか」
「どれですか」
「うー……わ、分かってるくせに分からないフリとかするし」
「さてはて」
「うぅ……うぅーっ!」
「人の鼻をつまむな」
「さ……寒いっ!」
「は?」
「寒いからひっつくの! 他意はないのっ!」
とかなんとか言いながら、かなみが俺にむぎゅーっと引っ付いてきた。
「いや、あの。先手を打たれたので何も言えない俺はどうすればいいのでしょうか」
「なるほど寒いからしょうがないねとか思ってもないこと思ってればいいじゃない、ばかっ!」
「無茶苦茶言ってることに気づいてますか?」
「ついでに私の頭とかなでたらいいじゃないのっ!」
「やっぱり意味が分からないのですが」
「私はそんなのされたらすっごく嫌だけど、どーせアンタは変態だから嫌がる私を見て喜ぶんでしょ!」
「変態ですが、紳士たれと思っている俺なので、嫌がる女性を見るのは趣味じゃないです」
「いーからなでろッ!」
「はい、すいません」
おしっこちびるくらい怖かったので、すぐにかなみの頭をなでる。
「ううううぅ……」
「すいませんもうしないので殺さないでください」
「怒ってないッ! 恥ずかしーのっ!」
「なんだ。真っ赤な顔ですげぇ形相でこっち睨んでるんで、俺は今日死ぬんだと覚悟を決めるところだったぞ」
「馬鹿ばっか言って。ばか、ばーか!」
「はい、すいません」
「謝ってないで、そっちからもちゃんと抱っこしろ!」
「はい」
もふっとかなみを抱っこしてから気づく。なんで俺かなみを抱っこしてるの?
「……い、言っとくけどね。アンタなんか嫌いなんだからねっ! ホントなんだから!」
「いや、聞いてないから」
「寒いからくっついてるの! ホントに! それ以外の理由皆無っ!」
「繰り返すが、聞いてないから。……あ、そだ」
「な、なに? 抱っこ嫌になった?」
「いや、それは全然」
「そ、そなんだ……。よかった──ってないッ! よくないの! あーホント抱っこされて嫌よねっ!」
「厄介な性質ですね」
「う、うるさい。ばか」
ちょっと思うところがあったのか、かなみはほんのり頬を染めながら呟いた。
「そ、それで、何?」
「ああ、そうそう。何か用事があったんだろ? そのためにわざわざ俺を呼び出したみたいだし」
「そっ! ……そ、その、えっと。……アンタが一人で寂しいだろうから、わざわざ私が呼んであげたの! 感謝しなさいよねっ!」
「なるほど、かなみが寂しくなっちゃったのか。じゃあ仕方ないな」
「アンタ! アンタが寂しくなったの! 私はちっとも寂しくないの!」
「大丈夫、寂しくない。用事が済んだようなので俺はこれで」
「そうでもないッ!」
コタツから出るフリをしたら、全体重をかけてかなみが阻止にかかった。
「かなみ、重い」
「うるさいっ! テレビ見終わって、一緒に年越しそば食べて、一緒に初詣行って、一緒に帰ったら解放してやるから、それまで我慢しなさいっ!」
「かなみと一緒にいるのに、我慢とか意味が分からないのですが」
「ず……頭突きっ!」
「痛いっ!?」
宣言どおりの技をされて超痛え。
「いたた……あのな、かなみ。痛いから。痛すぎるから」
「あ、アンタが恥ずかしいこと言うからっ! ……恥ずかしくて死にそうじゃない、ばか」
「おおぅ。それは大変申し訳ありませんでした」
全力で顔を赤くするかなみに、深々と礼をする。
「うぅー……ばか。ばかばか。死んじゃえ、ばか」
「さっきかなみが言ったことを全部やるので、許してはもらえませんでしょうか」
「……本年は色々お世話になりました。来年もよろしくお願いします」
「はいこちらこそお願いします。いやそうじゃなくて。え、なんでこのタイミングで挨拶?」
「今逃したら言えそうな気がしなかったの! あと抱っこが緩んでる!」
「あ、はい」
かなみを抱っこしなおす。そのついでだかなんだか知らないが、かなみが小さい声でふにゅふにゅ言いながら俺にすりすりしてきたので頭がやヴぁくなってきた。
「う……に、ニヤニヤするな、ばかっ! アンタがすりすりしてきた時に苦しくてちょっと声が漏れちゃっただけよっ! 私からしたんじゃないんだからっ!」
「ああもう、いい匂いがするし柔らかいし素敵すぎるぞこの娘!」
「やっぱ変態! 年末年始ずーっと変態!」
ぎゃうぎゃう言いながらも、結局かなみは俺にむぎゅーっと抱きついたままでした。
「勃たないようにするの超大変でした」
「本領発揮して下ネタ言うなっ、このド変態のサイテー男っ!」
ぺちぺち叩かれながらも、かなみと一緒に初詣に向かう俺なのだった。
「はぁはぁ……きっ、来たぞ! おっぱいを!」
「嘘に決まってるじゃない、ばーか」
玄関先ということも忘れ、膝から全力で崩れ落ちる。
「ちょ、そこまで落ち込まなくても……」
「なんて酷い奴だ! こんな手で何回も俺を騙しやがって! もう二度とひっかからねえからな!」
「このやりとり、今年だけで100回越すんだけど」
「先ほどの台詞により、俺には学習能力がないことが判明しました」
「そんなの最初っから知ってるわよ、ばーか」
「馬鹿馬鹿言うない。ていうかだな、用事ないなら呼ぶな。テレビ見てたんだよ」
「あるわよ。あるから呼んだに決まってるじゃない。ほら、行くわよ」
かなみに引っ張られ、かなみの部屋に通される。
「ほら、入って」
「あい」
「はい、コタツ」
「もい」
指し示されたコタツにもそもそ入る。
「うぉぉ、超寒ぃ! 畜生、罠だったか! 俺もここまでか!」
「スイッチ入ってないだけよ! イチイチ叫ぶな、ばか!」
俺の頭をはたいてから、かなみはコタツのスイッチを入れ、自身もコタツに入った。しばらくすると、徐々に暖かくなってきた。
「ふぃぃ……死ぬかと思った」
「そのまま死んじゃえば良かったのに」
「なんて言い草だ。んで、用事ってのは?」
「あ、そだ。ミカン食べる?」
「食べる」
「んと……はい」
手渡されたミカンの皮を剥き、実を食う。
「ん、甘い」
「でしょ」
かなみと一緒に、点いてるテレビをぼんやり見る。
「……いやいやいや! 思わずまったりしてしまったが、用事はどうした?」
「うるさいなあ。今いいとこなんだからちょっと黙っててよ」
「あ、はい」
しょうがないので、そのままかなみと一緒にぼーっとテレビ見てたら、なにやら足元がもぞもぞと。
「ちょっと。足触んないでよ、ヘンタイ」
「いやいや、お前が触ってきてるんだろ。もしくは、コタツに潜んでる空き巣がお前の足に偶然触れたんだろ」
「変な怖い嘘つくなっ! まったく……」
と言いながらも、依然俺の足のもぞもぞ感は取れていない。
「あのさ、やっぱお前が触ってねえか?」
「してないわよ。ていっ、必殺の足四の字固め」
「全然なってねえ。ていうか語るに落ちてないか?」
「気のせいよ」
何やらニヤニヤしながら、かなみは器用に足の指で俺の足をつねった。
「痛い痛い。何だその技」
「へへー。すごい? 将来はもっと改良してアンタの皮膚を引き千切れるようになるまで頑張るからね」
「将来の職業は拷問官がぴったりですね」
「最初の罪人はアンタに決定ね」
「たぶん冤罪で入れられるんだろうなあ」
「アンタのことだから下着ドロとか覗きとかで捕まるに決まってるじゃない。ばーかばーか」
「人の将来を勝手に決めおって……」
「私を拷問官なんかにして、人のこと言えないじゃない。……そ、それにしても寒いわね」
「コタツの温度上げたらどうだ?」
「もう最高まで上げてるわよ。……さ、寒いし、しょがないわよね」
「はい?」
突然かなみがコタツの中にもぐった。これは大変かなみはヤドカリの亜種だったのかと思っていなかったら、俺のすぐ隣からかなみが顔を出した。
「あー暖かかった。う、うわ、アンタの横だったの。戻る場所間違えた」
「なんスか、その超棒読みは」
「で、でも、戻るのも面倒だし、ここからテレビ見よ」
「いや、意味が分からん。そして依然続くその棒読みは何なのだ」
「もうっ、うるさいっ! 集中できないでしょ!」
「なんで俺が怒られてるの?」
そんなわけで、かなみと肩を寄せ合いながらテレビを見る。
「ちょっと、何触ってんのよ。いやらしいわね」
「狭いから肩があたるんだよ。冤罪だ。……はっ、いかん!」
「ふっふー。拷問官の出番かしらね?」
「やめて皮膚を取らないで!」
「えい、えい♪」
かなみは楽しげに笑いながら俺の頬をふにふにと引っ張った。しかし、それは決して痛くはなく、優しいタッチでむしろ心地よいものだった。
「あははっ。あー楽し……くないっ!」
さっきまで超笑ってたのに、突然かなみは怒った表情を見せた。
「なんだいきなり」
「う、うるさいっ! 調子乗るな、ばかっ!」
「繰り返すが、意味が分からん。いつ調子に乗った」
「その顔がなんか超調子乗ってる!」
「言いにくい。チョウチョウシ、チョウチョウシ。……いかん、俺の毛嫌いする日本語ラップが俺の口から! ええい、年末にかなみと過ごせる俺をやっかむ奴からの呪いかっ!?」
「知らんっ! ……て、ていうか、ボケの中に変なの入れるな、ばか」
「どれですか」
「うー……わ、分かってるくせに分からないフリとかするし」
「さてはて」
「うぅ……うぅーっ!」
「人の鼻をつまむな」
「さ……寒いっ!」
「は?」
「寒いからひっつくの! 他意はないのっ!」
とかなんとか言いながら、かなみが俺にむぎゅーっと引っ付いてきた。
「いや、あの。先手を打たれたので何も言えない俺はどうすればいいのでしょうか」
「なるほど寒いからしょうがないねとか思ってもないこと思ってればいいじゃない、ばかっ!」
「無茶苦茶言ってることに気づいてますか?」
「ついでに私の頭とかなでたらいいじゃないのっ!」
「やっぱり意味が分からないのですが」
「私はそんなのされたらすっごく嫌だけど、どーせアンタは変態だから嫌がる私を見て喜ぶんでしょ!」
「変態ですが、紳士たれと思っている俺なので、嫌がる女性を見るのは趣味じゃないです」
「いーからなでろッ!」
「はい、すいません」
おしっこちびるくらい怖かったので、すぐにかなみの頭をなでる。
「ううううぅ……」
「すいませんもうしないので殺さないでください」
「怒ってないッ! 恥ずかしーのっ!」
「なんだ。真っ赤な顔ですげぇ形相でこっち睨んでるんで、俺は今日死ぬんだと覚悟を決めるところだったぞ」
「馬鹿ばっか言って。ばか、ばーか!」
「はい、すいません」
「謝ってないで、そっちからもちゃんと抱っこしろ!」
「はい」
もふっとかなみを抱っこしてから気づく。なんで俺かなみを抱っこしてるの?
「……い、言っとくけどね。アンタなんか嫌いなんだからねっ! ホントなんだから!」
「いや、聞いてないから」
「寒いからくっついてるの! ホントに! それ以外の理由皆無っ!」
「繰り返すが、聞いてないから。……あ、そだ」
「な、なに? 抱っこ嫌になった?」
「いや、それは全然」
「そ、そなんだ……。よかった──ってないッ! よくないの! あーホント抱っこされて嫌よねっ!」
「厄介な性質ですね」
「う、うるさい。ばか」
ちょっと思うところがあったのか、かなみはほんのり頬を染めながら呟いた。
「そ、それで、何?」
「ああ、そうそう。何か用事があったんだろ? そのためにわざわざ俺を呼び出したみたいだし」
「そっ! ……そ、その、えっと。……アンタが一人で寂しいだろうから、わざわざ私が呼んであげたの! 感謝しなさいよねっ!」
「なるほど、かなみが寂しくなっちゃったのか。じゃあ仕方ないな」
「アンタ! アンタが寂しくなったの! 私はちっとも寂しくないの!」
「大丈夫、寂しくない。用事が済んだようなので俺はこれで」
「そうでもないッ!」
コタツから出るフリをしたら、全体重をかけてかなみが阻止にかかった。
「かなみ、重い」
「うるさいっ! テレビ見終わって、一緒に年越しそば食べて、一緒に初詣行って、一緒に帰ったら解放してやるから、それまで我慢しなさいっ!」
「かなみと一緒にいるのに、我慢とか意味が分からないのですが」
「ず……頭突きっ!」
「痛いっ!?」
宣言どおりの技をされて超痛え。
「いたた……あのな、かなみ。痛いから。痛すぎるから」
「あ、アンタが恥ずかしいこと言うからっ! ……恥ずかしくて死にそうじゃない、ばか」
「おおぅ。それは大変申し訳ありませんでした」
全力で顔を赤くするかなみに、深々と礼をする。
「うぅー……ばか。ばかばか。死んじゃえ、ばか」
「さっきかなみが言ったことを全部やるので、許してはもらえませんでしょうか」
「……本年は色々お世話になりました。来年もよろしくお願いします」
「はいこちらこそお願いします。いやそうじゃなくて。え、なんでこのタイミングで挨拶?」
「今逃したら言えそうな気がしなかったの! あと抱っこが緩んでる!」
「あ、はい」
かなみを抱っこしなおす。そのついでだかなんだか知らないが、かなみが小さい声でふにゅふにゅ言いながら俺にすりすりしてきたので頭がやヴぁくなってきた。
「う……に、ニヤニヤするな、ばかっ! アンタがすりすりしてきた時に苦しくてちょっと声が漏れちゃっただけよっ! 私からしたんじゃないんだからっ!」
「ああもう、いい匂いがするし柔らかいし素敵すぎるぞこの娘!」
「やっぱ変態! 年末年始ずーっと変態!」
ぎゃうぎゃう言いながらも、結局かなみは俺にむぎゅーっと抱きついたままでした。
「勃たないようにするの超大変でした」
「本領発揮して下ネタ言うなっ、このド変態のサイテー男っ!」
ぺちぺち叩かれながらも、かなみと一緒に初詣に向かう俺なのだった。
【カップルが妬ましいツンデレ】
2010年12月08日
かなみと一緒に帰宅してると、何やらすげぇ圧が。一体どうしたのかと思って隣を見たら、あらかなみさん鬼の形相。
「すいませんこれだけしかないんです」
「震えながら財布を出すなッ!」
必死の危険回避も空しく殴られた。
「そうじゃなくて、あれ」
「ん? あー」
かなみが指差した先に、男女の生徒がいた。手を繋ぎ、仲睦まじげに笑い合いながら歩いてる。
「ね、二人でぶち殺さない?」(満面の笑み)
「もう怖すぎて俺にはこうするしか」
「だから、財布を出すなッ!」
また殴られた。よく殴られます。
「ったく……冗談よ、ばーか。でも、ムカつくわね。なんか楽しそうに笑っちゃってさ」
「そっか? 微笑ましいじゃん」
「うわ、うそ臭。死ね」
「…………」
そうこうしているうちに、件の恋人たちは角を曲がって視界から消えてしまった。
「手なんか繋いじゃってさ……どうかと思うわよ」
「だと言うのに、かなみは未だ例の恋人たちのことを喋っていた。それほど嫉妬の炎が彼女の内を焦がしているのだろうか。いや、そうではなく、あの女性の胸が平均よりも大きいことに嫉妬を感じずにはぐええええ」
首を絞めて言葉を止める荒業を受ける。
「違うわよッ! 外で普通に手を繋いでうらやましいなーって……あ」
「ああ。そうだったのか。気づかず申し訳なかった」
すかさずかなみの手を握る。
「ちがっ、違うわよっ! なんでアンタなんかと手を繋がなくちゃいけないのよ!」
「なんでって……恋人同士だから?」
その台詞だけでかなみの顔がみるみる赤くなっていく。
「そ、そんなわけないでしょっ! アンタが一方的にあたしを好きなだけで、あたしはしょーがなくつきあってあげてるのっ! 優しいから!」
この恋人は一事が万事この調子なので、手を繋ぐのも一苦労。何せ、人前では恥ずかしがって、とてもじゃないが繋いでくれないのだ。
「そ、それはともかく、早く離しなさいよ、馬鹿」
「でもですね、かなみさん。周囲にはいま俺たち以外いないようなのですが」
「ほっ、ホント!? ……ホントだ」
かなみは慌てた様子で周囲をうかがった。俺たち以外はブロック塀の上で猫がアクビしてるくらいで、人影はないようだった。
「……じゃ、じゃあ。繋ぐ」
かなみは下を向き、小さな小さな声で呟いた。髪から覗く耳がやたら赤い。
「──じゃないっ、繋いであげる! アンタがあんまりにも繋ぎたいみたいだから!?」
がぶあっと顔をあげ、かなみは突然叫んだ。目がぐるぐるしてて怖い。
「おりゃ」
「ふにゃーっ!?」
なので、ほっぺを引っ張って落ち着かせてみる。
「はひふふほほっ!」
「落ち着いたか?」
「ほひふははひはほっ、ははっ!」
翻訳家がいないので何言ってんだか全く分からないので、とりあえず手を離してみたら殴られた。
「痛いのですが」
「人のほっぺをいきなり引っ張ったりするからよ、ばかっ!」
「まあ、なんだ。ちょっとは落ち着いたようですね」
「え、あ、うん。……べ、別にさっきのパニックとアンタと手を繋ぐことは関係ないからね。ほ、ホントに」
「でもまあ、またああなったら嫌だし今回は手を繋ぐのナシということで」
「ダメッ!!!」
殊の外大きい声でびっくりした。だが、出した本人が一番びっくりしてる。
「あ、その、えと……違う。いや、違わない。え、えと、その……えと、どっ、どうしたらいいの!?」
「知らんがな……」
なんかもう疲れちゃったので、かなみの手をさりげなく握る。
「ふひゃっ!?」
「帰ろ。とっとと帰ろ」
「あ、あの、あの! て、手! 手、繋いでる!?」
「あーそだな」
「そだなじゃなくて、そだなじゃなくて!」
「あんまりうるさくすると、何事かと人が集まること請け合い」
「う……」
かなみは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに口をつぐんだ。ただ、真っ赤な顔で俺をじーっと見ているので大変居心地が悪い。
「……ち、違うからね。別にアンタと手なんか繋いでも嬉しくなんてないから」
「何も言ってないのですが」
「う、うるさい! 黙らないと、黙らないと……えと、アンタって何されたら辛い?」
「かなみに嫌われると辛い」
かなみが全力で赤くなった。
「そ、そーゆートコ嫌い! 嫌い嫌い嫌い!」
「悲しい限りだ」
「全っ然思ってないでしょ! なんかニヤニヤしてるもん! もーっ! 嫌い嫌い、大っ嫌い!!!」
嫌い嫌いと言いながらも、決して俺の手を離そうとしないかなみだった。
「すいませんこれだけしかないんです」
「震えながら財布を出すなッ!」
必死の危険回避も空しく殴られた。
「そうじゃなくて、あれ」
「ん? あー」
かなみが指差した先に、男女の生徒がいた。手を繋ぎ、仲睦まじげに笑い合いながら歩いてる。
「ね、二人でぶち殺さない?」(満面の笑み)
「もう怖すぎて俺にはこうするしか」
「だから、財布を出すなッ!」
また殴られた。よく殴られます。
「ったく……冗談よ、ばーか。でも、ムカつくわね。なんか楽しそうに笑っちゃってさ」
「そっか? 微笑ましいじゃん」
「うわ、うそ臭。死ね」
「…………」
そうこうしているうちに、件の恋人たちは角を曲がって視界から消えてしまった。
「手なんか繋いじゃってさ……どうかと思うわよ」
「だと言うのに、かなみは未だ例の恋人たちのことを喋っていた。それほど嫉妬の炎が彼女の内を焦がしているのだろうか。いや、そうではなく、あの女性の胸が平均よりも大きいことに嫉妬を感じずにはぐええええ」
首を絞めて言葉を止める荒業を受ける。
「違うわよッ! 外で普通に手を繋いでうらやましいなーって……あ」
「ああ。そうだったのか。気づかず申し訳なかった」
すかさずかなみの手を握る。
「ちがっ、違うわよっ! なんでアンタなんかと手を繋がなくちゃいけないのよ!」
「なんでって……恋人同士だから?」
その台詞だけでかなみの顔がみるみる赤くなっていく。
「そ、そんなわけないでしょっ! アンタが一方的にあたしを好きなだけで、あたしはしょーがなくつきあってあげてるのっ! 優しいから!」
この恋人は一事が万事この調子なので、手を繋ぐのも一苦労。何せ、人前では恥ずかしがって、とてもじゃないが繋いでくれないのだ。
「そ、それはともかく、早く離しなさいよ、馬鹿」
「でもですね、かなみさん。周囲にはいま俺たち以外いないようなのですが」
「ほっ、ホント!? ……ホントだ」
かなみは慌てた様子で周囲をうかがった。俺たち以外はブロック塀の上で猫がアクビしてるくらいで、人影はないようだった。
「……じゃ、じゃあ。繋ぐ」
かなみは下を向き、小さな小さな声で呟いた。髪から覗く耳がやたら赤い。
「──じゃないっ、繋いであげる! アンタがあんまりにも繋ぎたいみたいだから!?」
がぶあっと顔をあげ、かなみは突然叫んだ。目がぐるぐるしてて怖い。
「おりゃ」
「ふにゃーっ!?」
なので、ほっぺを引っ張って落ち着かせてみる。
「はひふふほほっ!」
「落ち着いたか?」
「ほひふははひはほっ、ははっ!」
翻訳家がいないので何言ってんだか全く分からないので、とりあえず手を離してみたら殴られた。
「痛いのですが」
「人のほっぺをいきなり引っ張ったりするからよ、ばかっ!」
「まあ、なんだ。ちょっとは落ち着いたようですね」
「え、あ、うん。……べ、別にさっきのパニックとアンタと手を繋ぐことは関係ないからね。ほ、ホントに」
「でもまあ、またああなったら嫌だし今回は手を繋ぐのナシということで」
「ダメッ!!!」
殊の外大きい声でびっくりした。だが、出した本人が一番びっくりしてる。
「あ、その、えと……違う。いや、違わない。え、えと、その……えと、どっ、どうしたらいいの!?」
「知らんがな……」
なんかもう疲れちゃったので、かなみの手をさりげなく握る。
「ふひゃっ!?」
「帰ろ。とっとと帰ろ」
「あ、あの、あの! て、手! 手、繋いでる!?」
「あーそだな」
「そだなじゃなくて、そだなじゃなくて!」
「あんまりうるさくすると、何事かと人が集まること請け合い」
「う……」
かなみは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに口をつぐんだ。ただ、真っ赤な顔で俺をじーっと見ているので大変居心地が悪い。
「……ち、違うからね。別にアンタと手なんか繋いでも嬉しくなんてないから」
「何も言ってないのですが」
「う、うるさい! 黙らないと、黙らないと……えと、アンタって何されたら辛い?」
「かなみに嫌われると辛い」
かなみが全力で赤くなった。
「そ、そーゆートコ嫌い! 嫌い嫌い嫌い!」
「悲しい限りだ」
「全っ然思ってないでしょ! なんかニヤニヤしてるもん! もーっ! 嫌い嫌い、大っ嫌い!!!」
嫌い嫌いと言いながらも、決して俺の手を離そうとしないかなみだった。
【かなみは俺の嫁】
2010年09月19日
「若い身空で結婚、それも学生婚とな。ほほう」
朝食後、コーヒーをごくごく飲みながらぽけーっと呟いてみる。
「ねー、アンタよく何もないところに向かってぶつぶつ呟いてるけど、病気? 脳の」
人が折角色んな人に分かりやすく俺達の状況を説明しているというのに、俺の嫁であるところのかなみが酷いことを言う。そして色んな人とは誰だ。アレか、俺の脳内劇場に出てくる観客か。じゃあ俺は頭の病気だ。
「そうです」
「あー、やっぱり」
「やっぱりとか言うな」
「あははっ。……あ、あの、違うよね? 本当は病気とかじゃなくて」
「当たり前だろうが。何を心配そうな顔をしてる」
「しっ、心配なんてしてないわよ! た、ただ、本当だったらヤだなーとか、介護大変だなーとか、一緒に出かけらんなくなっちゃうなーとか……」
言ってる内に想像してしまったのか、かなみの顔がどんどんと暗くなっていく。
「ぐええ」
そこで、急に泡吹いて倒れてみる。
「!!!!?」
すると、目に見えてかなみがパニックを起こしたので必死でなだめる。
「嘘です、嘘ですから!」
「う、うそ……?」
涙目で力なくぺたんと座ってるかなみに、何度もうなずく。
「そ、そーゆー嘘は禁止! ……な、泣いちゃうじゃない、ばか」
「いやはや。ごめんな」
「……おいしいご飯食べさせてくれるなら、ゆるす」
「分かったよ。今度一緒に牛丼食べに行こうな?」
「牛丼!? 女の子連れで!?」
「おいしいよ?」
「お、おいしいけど……デートなんだからもうちょっと気合入れた場所に連れて行きなさいよ!」
「や、そういった場所には疎くて」
「はぁ……今度そういう雑誌買ってくるから、ちゃんと調べること! いいわね!?」
「超めんどくせえ」
「何か言った!?」
「何も言ってないです」(半泣きになりつつ)
「そっ。ならいいのよ」
「でも、かなみの作る飯は美味いので、そこらの店では太刀打ちできないかと」
これは世辞でもなんでもなく、俺の嫁が作る飯は信じられないくらい美味い。いや最初は正直勘弁してくださいと逃げては殴られるレベルだったが、それを堪えて毎日食ってたら次第に俺好みの味になり、今ではそこらの弁当では吐いちゃうほど。なに、信じられない? じゃあ今すぐ吐いてやる!(今日も電波と会話中)
「こう、うお……ぐええ」
「なにをいきなり吐こうとしてるか!」
吐瀉物を探そうと口に指を突っ込んでたら、かなみに止められた。
「もー、アンタってばいついかなる時でも訳が分からないわね」
「かなみの飯の美味さを証明しようとしたら、なぜか吐かざるを得ない状況に自ら追い込まれたんだ」
「説明されても分かんないわよ……」
言われてみると本当だ。俺の思考は謎に包まれていると言えよう。
「そ、それより。……そんなあたしの作るご飯が好きなの?」
「好き。愛してる。結婚してください」
「……も、もうしてる」
かなみの手を取ったら、そんな恥ずかしい台詞で切り伏せられた。かなみはかなみで顔を赤くして視線をさ迷わせてるし。ええい。
「……う、ううーっ! もうっ! 恥ずかしいじゃないの! 変なこと言わせないでよ、ばかっ!」
「思わぬ展開に俺も驚いてるところだ」
「も、もー。……ばか」
かなみは俺の手を取り、ちらちらとこちらを見た。そして視線が合うと、ぼしょぼしょと何やら呟き始めた。
「あ、あのさ。……あたしと結婚して、嬉しい?」
「当然」
「……あ、あたしも。……ってぇーっ! 何よ、このむず痒空間! ああもうっ、痒い痒い痒いっ!」
「おまーから始めたんだろーが」
「ううう……あ、ああーっ!?」
「今度は何だ。破水でもしたか?」
「まだ妊娠すらしてないッ! ……た、種はいっぱい仕込まれたケド」
だから、そういうことを赤い顔でごにょごにょ言うな。
「じゃ、じゃなくて! 時間っ! 遅刻!」
「はっはっは。余裕を持って起床→朝食のコンボを決めたのに遅刻なわけぶくぶくぶく」
「時計見ただけで泡吹くなっ、ばかっ!」
「ぶくぶく……いや、あまりの時間の過ぎっぷりにびっくりして。これは好きな人と一緒にいると時間が早く過ぎてしまうというウラシマ効果に相違ありませんね?」
「ウラシマ効果じゃないけど……そ、そう。す、好きな……ああもうっ! アンタ恥ずかしい台詞言いすぎっ!」
「ゲペルニッチ将軍」
「だからといって全く意味のない台詞を言えってコトじゃないっ!」
「よく俺の言わんとしたことがすぐに分かったな。流石は俺の嫁」
「う……うっさい! そ、そんなこと言われても、別に嬉しくなんてないんだからねっ!」
「今日も俺の嫁は可愛いなあ」
「う……うぅーっ! 可愛いとか言うなッ!」
「分かった、分かりましたから殴らないで。顔の形が変わります」
この嫁は照れ隠しに人をたくさん殴るので、俺の命が日々危機に晒されるスリル満点の新婚生活と言えよう。普通の新婚生活がいいよ。
「ともかく、遅刻するので行きましょう」
「わ、分かったわよ。それより血拭きなさいよ。血まみれよ」
ハンケチで顔をぐいぐい拭われると、それだけで血が止まった。この特異な能力があるおかげで今日も僕は生きていられます。ていうか毎日殴られた結果備わってしまったのだけど。
「ん! 今日もいいおと……ぶ、ぶさいくね!」
「旦那に向かって今日も失敬だな、おまいは……」
「う、うっさい! ほら、行くわよ馬鹿!」
かなみに手を引っ張られ、今日も登校する俺たち夫婦なのだった。
朝食後、コーヒーをごくごく飲みながらぽけーっと呟いてみる。
「ねー、アンタよく何もないところに向かってぶつぶつ呟いてるけど、病気? 脳の」
人が折角色んな人に分かりやすく俺達の状況を説明しているというのに、俺の嫁であるところのかなみが酷いことを言う。そして色んな人とは誰だ。アレか、俺の脳内劇場に出てくる観客か。じゃあ俺は頭の病気だ。
「そうです」
「あー、やっぱり」
「やっぱりとか言うな」
「あははっ。……あ、あの、違うよね? 本当は病気とかじゃなくて」
「当たり前だろうが。何を心配そうな顔をしてる」
「しっ、心配なんてしてないわよ! た、ただ、本当だったらヤだなーとか、介護大変だなーとか、一緒に出かけらんなくなっちゃうなーとか……」
言ってる内に想像してしまったのか、かなみの顔がどんどんと暗くなっていく。
「ぐええ」
そこで、急に泡吹いて倒れてみる。
「!!!!?」
すると、目に見えてかなみがパニックを起こしたので必死でなだめる。
「嘘です、嘘ですから!」
「う、うそ……?」
涙目で力なくぺたんと座ってるかなみに、何度もうなずく。
「そ、そーゆー嘘は禁止! ……な、泣いちゃうじゃない、ばか」
「いやはや。ごめんな」
「……おいしいご飯食べさせてくれるなら、ゆるす」
「分かったよ。今度一緒に牛丼食べに行こうな?」
「牛丼!? 女の子連れで!?」
「おいしいよ?」
「お、おいしいけど……デートなんだからもうちょっと気合入れた場所に連れて行きなさいよ!」
「や、そういった場所には疎くて」
「はぁ……今度そういう雑誌買ってくるから、ちゃんと調べること! いいわね!?」
「超めんどくせえ」
「何か言った!?」
「何も言ってないです」(半泣きになりつつ)
「そっ。ならいいのよ」
「でも、かなみの作る飯は美味いので、そこらの店では太刀打ちできないかと」
これは世辞でもなんでもなく、俺の嫁が作る飯は信じられないくらい美味い。いや最初は正直勘弁してくださいと逃げては殴られるレベルだったが、それを堪えて毎日食ってたら次第に俺好みの味になり、今ではそこらの弁当では吐いちゃうほど。なに、信じられない? じゃあ今すぐ吐いてやる!(今日も電波と会話中)
「こう、うお……ぐええ」
「なにをいきなり吐こうとしてるか!」
吐瀉物を探そうと口に指を突っ込んでたら、かなみに止められた。
「もー、アンタってばいついかなる時でも訳が分からないわね」
「かなみの飯の美味さを証明しようとしたら、なぜか吐かざるを得ない状況に自ら追い込まれたんだ」
「説明されても分かんないわよ……」
言われてみると本当だ。俺の思考は謎に包まれていると言えよう。
「そ、それより。……そんなあたしの作るご飯が好きなの?」
「好き。愛してる。結婚してください」
「……も、もうしてる」
かなみの手を取ったら、そんな恥ずかしい台詞で切り伏せられた。かなみはかなみで顔を赤くして視線をさ迷わせてるし。ええい。
「……う、ううーっ! もうっ! 恥ずかしいじゃないの! 変なこと言わせないでよ、ばかっ!」
「思わぬ展開に俺も驚いてるところだ」
「も、もー。……ばか」
かなみは俺の手を取り、ちらちらとこちらを見た。そして視線が合うと、ぼしょぼしょと何やら呟き始めた。
「あ、あのさ。……あたしと結婚して、嬉しい?」
「当然」
「……あ、あたしも。……ってぇーっ! 何よ、このむず痒空間! ああもうっ、痒い痒い痒いっ!」
「おまーから始めたんだろーが」
「ううう……あ、ああーっ!?」
「今度は何だ。破水でもしたか?」
「まだ妊娠すらしてないッ! ……た、種はいっぱい仕込まれたケド」
だから、そういうことを赤い顔でごにょごにょ言うな。
「じゃ、じゃなくて! 時間っ! 遅刻!」
「はっはっは。余裕を持って起床→朝食のコンボを決めたのに遅刻なわけぶくぶくぶく」
「時計見ただけで泡吹くなっ、ばかっ!」
「ぶくぶく……いや、あまりの時間の過ぎっぷりにびっくりして。これは好きな人と一緒にいると時間が早く過ぎてしまうというウラシマ効果に相違ありませんね?」
「ウラシマ効果じゃないけど……そ、そう。す、好きな……ああもうっ! アンタ恥ずかしい台詞言いすぎっ!」
「ゲペルニッチ将軍」
「だからといって全く意味のない台詞を言えってコトじゃないっ!」
「よく俺の言わんとしたことがすぐに分かったな。流石は俺の嫁」
「う……うっさい! そ、そんなこと言われても、別に嬉しくなんてないんだからねっ!」
「今日も俺の嫁は可愛いなあ」
「う……うぅーっ! 可愛いとか言うなッ!」
「分かった、分かりましたから殴らないで。顔の形が変わります」
この嫁は照れ隠しに人をたくさん殴るので、俺の命が日々危機に晒されるスリル満点の新婚生活と言えよう。普通の新婚生活がいいよ。
「ともかく、遅刻するので行きましょう」
「わ、分かったわよ。それより血拭きなさいよ。血まみれよ」
ハンケチで顔をぐいぐい拭われると、それだけで血が止まった。この特異な能力があるおかげで今日も僕は生きていられます。ていうか毎日殴られた結果備わってしまったのだけど。
「ん! 今日もいいおと……ぶ、ぶさいくね!」
「旦那に向かって今日も失敬だな、おまいは……」
「う、うっさい! ほら、行くわよ馬鹿!」
かなみに手を引っ張られ、今日も登校する俺たち夫婦なのだった。