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2025年04月21日
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【テストにまったく自信のない男】
2010年02月04日
今日はテストですが、昨日「早起きして勉強した方がはかどるよね。よし、寝よう」とか思って寝たら、早起きどころか遅刻しそうな勢い。
そんなわけで全力疾走で学校へ来て、今更ながら必死で試験範囲の内容を頭に詰め込んでると、嬉しそうな顔をしたかなみがやってきた。
「ずいぶん必死ねー。アンタひょっとして、勉強してこなかったんじゃ?」
嬉しそうなかなみの眉間にチョップを入れ、黙らせる。
「ぐおお……あ、アンタいきなり何すんのよ! 割れるかと思ったじゃない!」
「割ろうとしたんだ」
「なお悪いッ! ……ったく、図星つかれたからって、女の子に暴力振るうってサイテーよ」
「大丈夫、性格の悪い奴にしか俺の力は振るわれない」
「誰が性格悪いってのよ!」
なんかぎゃーぎゃー言ってるが、それどころではないので必死で頭に教科書の内容を詰め込む。
「……ね、なんだったらあたしが勉強教えてあげよっか?」
「結構です」
「まーまー、そう言わずに。こう見えてもあたし、結構頭いいのよ?」
「頭から昆布が垂れてるのに?」
「昆布違うッ! 髪! ツインテールだっての!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「かなみだって言ってるでしょうがッ!」
八重歯をむき出しにして、はるぴー(自称かなみ)が怒った。
「まあ、そうだな。そこまで(?)言うなら勉強教えてもらおうか」
「ふふ……だぁれがアンタなんかに教えてやるもんですか! どうしても教えてほしいなら、跪いてあたしの靴を舐めることね! そしたら考えてあげなくもないわ」
もう実にイキイキとした表情で言うもんだから、ぽかーんとしてしまった。アレか、これが言いたかったから勉強教えるとか言い出したのか。
「まあいいや、靴じゃなくて足なら舐めよう」
「え? ちょ、こら何すんのよ!」
かなみの靴&靴下を脱がし、足を取って指先を舐める。
「ひゃ……っ、く、靴よ、靴! 靴を舐めるの! 足じゃなくて!」
「ぺろぺろ。水虫の味がする」
「水虫なんてないわよッ!」
『聞いたか? 椎水さん、水虫だってよ』
『うわ、ショック……』
周囲から漏れ聞こえてくる声に、かなみの顔がゆっくりと赤く染まっていく。
「ど、どーしてくれんのよ!」
「水虫で可哀想だと思う。でも、それ以上に水虫を舐めさせられる俺が可哀想だと思う」
「だから、水虫じゃないって言ってるでしょうがッ! いーから舐めるなッ!」
足を思い切り引っ張り、かなみは俺の舌から逃れた。
「ったく……なんだってこんなことになるのよ。はぁ、もういいわ。ほら、見てあげるからノート貸しなさい」
「え、マジに? なんだ、いい奴じゃん、かなみって」
「かっ、勘違いしないでよね! テストの成績が悪かった理由をあたしに押し付けられても迷惑だから、教えてあげるだけなんだからねっ!」
「なんでもいいや。ほら、教えて教えて」
「わ、分かったわよ……あ」
チャイムっぽい音が鳴った。先生っぽい人も来た。
「あ、あは。……たいむおーばー?」
「…………」
テスト終了。机に突っ伏し、思い切り息を吐く。
「うぉーい、生きてるかー?」
「…………」
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
「生きてるよっ! 散々な結果だったぜ……」
顔を上げると、少しだけ申し訳なさそうな顔をしたかなみがいた。
「あ、あたしが悪いんじゃないわよ? アンタが勉強しなかったせいなんだし……」
「登校してすぐ勉強したら、多少なりとも挽回できたと思うが。そして、お前が邪魔しなけりゃそれも叶ったはずだが」
「ひ、人のせいにしないでよねっ! そもそもアンタが勉強してくれば済む話でしょうが! そ、それに、教えようともしたでしょ! 時間足んなかったけど!」
「いや、仮に教えられたとしても、頭から昆布垂らしてるような奴の教えでは成績も変わらんだろ」
「だから、髪だって言ってるでしょうがッ! あーもー、そこまで言うなら家に来なさい! 明日の試験の勉強見てあげるわよ!」
「いいえ、結構です」
「断るなッ! いいわね、絶対よ? 首に縄つけても連れてくからねっ!」
「なんと強引なデートの誘いだろうか」
「で、デートなんかじゃないわよ、ばかっ!」
真っ赤な顔で叫ぶかなみだった。
そんなわけで全力疾走で学校へ来て、今更ながら必死で試験範囲の内容を頭に詰め込んでると、嬉しそうな顔をしたかなみがやってきた。
「ずいぶん必死ねー。アンタひょっとして、勉強してこなかったんじゃ?」
嬉しそうなかなみの眉間にチョップを入れ、黙らせる。
「ぐおお……あ、アンタいきなり何すんのよ! 割れるかと思ったじゃない!」
「割ろうとしたんだ」
「なお悪いッ! ……ったく、図星つかれたからって、女の子に暴力振るうってサイテーよ」
「大丈夫、性格の悪い奴にしか俺の力は振るわれない」
「誰が性格悪いってのよ!」
なんかぎゃーぎゃー言ってるが、それどころではないので必死で頭に教科書の内容を詰め込む。
「……ね、なんだったらあたしが勉強教えてあげよっか?」
「結構です」
「まーまー、そう言わずに。こう見えてもあたし、結構頭いいのよ?」
「頭から昆布が垂れてるのに?」
「昆布違うッ! 髪! ツインテールだっての!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「かなみだって言ってるでしょうがッ!」
八重歯をむき出しにして、はるぴー(自称かなみ)が怒った。
「まあ、そうだな。そこまで(?)言うなら勉強教えてもらおうか」
「ふふ……だぁれがアンタなんかに教えてやるもんですか! どうしても教えてほしいなら、跪いてあたしの靴を舐めることね! そしたら考えてあげなくもないわ」
もう実にイキイキとした表情で言うもんだから、ぽかーんとしてしまった。アレか、これが言いたかったから勉強教えるとか言い出したのか。
「まあいいや、靴じゃなくて足なら舐めよう」
「え? ちょ、こら何すんのよ!」
かなみの靴&靴下を脱がし、足を取って指先を舐める。
「ひゃ……っ、く、靴よ、靴! 靴を舐めるの! 足じゃなくて!」
「ぺろぺろ。水虫の味がする」
「水虫なんてないわよッ!」
『聞いたか? 椎水さん、水虫だってよ』
『うわ、ショック……』
周囲から漏れ聞こえてくる声に、かなみの顔がゆっくりと赤く染まっていく。
「ど、どーしてくれんのよ!」
「水虫で可哀想だと思う。でも、それ以上に水虫を舐めさせられる俺が可哀想だと思う」
「だから、水虫じゃないって言ってるでしょうがッ! いーから舐めるなッ!」
足を思い切り引っ張り、かなみは俺の舌から逃れた。
「ったく……なんだってこんなことになるのよ。はぁ、もういいわ。ほら、見てあげるからノート貸しなさい」
「え、マジに? なんだ、いい奴じゃん、かなみって」
「かっ、勘違いしないでよね! テストの成績が悪かった理由をあたしに押し付けられても迷惑だから、教えてあげるだけなんだからねっ!」
「なんでもいいや。ほら、教えて教えて」
「わ、分かったわよ……あ」
チャイムっぽい音が鳴った。先生っぽい人も来た。
「あ、あは。……たいむおーばー?」
「…………」
テスト終了。机に突っ伏し、思い切り息を吐く。
「うぉーい、生きてるかー?」
「…………」
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
「生きてるよっ! 散々な結果だったぜ……」
顔を上げると、少しだけ申し訳なさそうな顔をしたかなみがいた。
「あ、あたしが悪いんじゃないわよ? アンタが勉強しなかったせいなんだし……」
「登校してすぐ勉強したら、多少なりとも挽回できたと思うが。そして、お前が邪魔しなけりゃそれも叶ったはずだが」
「ひ、人のせいにしないでよねっ! そもそもアンタが勉強してくれば済む話でしょうが! そ、それに、教えようともしたでしょ! 時間足んなかったけど!」
「いや、仮に教えられたとしても、頭から昆布垂らしてるような奴の教えでは成績も変わらんだろ」
「だから、髪だって言ってるでしょうがッ! あーもー、そこまで言うなら家に来なさい! 明日の試験の勉強見てあげるわよ!」
「いいえ、結構です」
「断るなッ! いいわね、絶対よ? 首に縄つけても連れてくからねっ!」
「なんと強引なデートの誘いだろうか」
「で、デートなんかじゃないわよ、ばかっ!」
真っ赤な顔で叫ぶかなみだった。
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【ツンデレの下半身から何か音がしたんですが】
2010年02月01日
昼休み。教室でもっさもっさパンを食んでいると、一緒に昼食してたかなみの下半身らしき部位から小さな音がした。
「これはもうリモコンローターが振動したに違いないと確信を持っているが、仮にも女性相手なので口に出すのははばかられたがつい言ってしまった。どうしよう?」
40回くらい殴られた。
「ったく……これよ、これ」
「そう言ってかなみが取り出したのは、まぎれもなくローターだった」
もう10回殴られた。
「訂正、携帯電話だった」
「どう見てもそうじゃない! 変なことばっか言って……いやらしい」
「てへ☆」
「キモッ!」
「なんだと!? ちょっと待て、俺の媚びごまかしが本当に気持ち悪いかクラスのみんなに判定してもらう! おーいみんな、ちょっと」
俺を殴って行動を封じてから、かなみが営業スマイルでなんでもないと誤魔化した。
「……ふぅ。えーと……あ、ママからメール」
ため息一つついて、かなみは携帯を操作した。
「ほほう」
ずずいっと寄ってメールの中身を見ようとしたが、隠された。
「見ないで。プライバシーの侵害よ」
「分かった。じゃ、代わりに……ほほう」
「携帯を見なかったらパンツを見ていいとは言ってない!」
スカートの中に頭を突っ込んだら、とても蹴られた。
「だったら最初っから言ってくれよな。まったく、いい迷惑だ!」
「言わなくても分かるでしょ! 常識から考えたら!」
「本当は分かってたけど、適当言ってパンツ見たかったんだ」
正直に言うと殴られる。なんて世だ!
「アンタねぇ、今世紀最大のアイドルにそんなことして、事務所とファンと親衛隊が黙ってないわよ!」
何を言ってるのだろう、この子は。
「……アンタ、その顔は忘れてるでしょ。あたしがアイドルだっての」
……あ、あー。そういえば、なんか最近テレビでよく見るような。
「お、覚えてたぞ? いや本当に。サインください」
「このやりとりする度にサインして、もう10枚以上した! アンタ保存してるんでしょうね!?」
「鍋の下とか本棚の下とかに保存してます」
「それ下敷きにしてるんじゃない! ぶち殺すわよ!?」
このアイドル超怖え。
「嘘、嘘です。かなみのサインをそんな粗末に扱うわけないじゃないか」
「本当に?」
「本当、本当。いつも寝るとき抱いて寝ます」
「……そ、それならいいけど」
心なしか、かなみの頬が赤らんだような。
「で、朝起きたら色紙べきばき。わはは」
「笑い事じゃないでしょ! あに人のサイン折ってるのよ!」
「あと、寝る時に色紙の角が当たって超痛え。どうにかなりません?」
「ならないッ! もーいー! アンタには金輪際サインしてやんない!」
「じゃあ、『金輪際サインしません』ってサインして」
「がー!」
かなみが怒った。
「分かったよ、そんな怒るならもういいよ。はぁ……かなみに婚姻届を書いてもらうのも夢と消えたな」
「えにゃ!?」
「えにゃ?」
「そ、それはいいの! そ、そじゃなくて、その、さっき! ……こ、婚姻がどーとか」
「ああ、いつか書いて欲しかったんだが……もうサインしてもらえないなら、無理な話だな」
「……べ、別に、アンタがサインを粗末にしないなら、その、……さ、サイン、してもいーけど」
「本当か!?」
「かっ、勘違いしないでよね! 普通のサインよ、サイン! 婚姻届なんかには絶対しないから!」
「……そうか」
「なっ、何を落ち込んでるフリしてるのよ! そもそもアンタなんかがあたしと釣り合い取れると思ってるの!?」
「……ああ。パンおいしいなあ」
机に顔をべたりと乗せた状態で、手を使わずにくっちゃくっちゃとパンを食む。
「……だぁーっ、もうっ! 辛気臭いなあ! 分かったわよ、考えてあげるわよ!」
「本当か!?」
がぶあっと起き上がり、かなみの両肩に手を置く。
「かっ、考えるだけよ、考えるだけ! サインする確率なんて万に一つもないのよ!」
「でも、0じゃないんだろ?」
「……ま、まあ」
「それならなんとかなるさな。わはははは!」
「あに笑ってんのよ! 書くかもって話よ! そ、そりゃ先の話だからどうなるか分かんないし、あたしもできれば書──って、なっ、なんでもないっ!」
「うん? まあとにかく、よかったよかった!」
「あ、……あぅぅ」
かなみはなんだか小さくなって、顔を赤らめている。変な奴。
「とまれ、これで俺の趣味『知り合いに婚姻届のサインをしてもらったもので紙飛行機を作る』が行えるかもしれない! ありがとな、かなみ!」
「……趣味?」
どうしたことか、かなみの顔が笑顔なのにとってもおっかないよ。
「別府くーん、あのね、宿題……べっ、別府くんっ!?」
「やあ犬子。できることなら保健室へ連れて行ってはくれまいか」
「いーけど……どしたの? そんなズタボロで」
とある知り合いの女性に目を覆わんばかりの仕打ちを受け、もはや自力では動けない俺を不思議そうな目で見る犬子だった。
「これはもうリモコンローターが振動したに違いないと確信を持っているが、仮にも女性相手なので口に出すのははばかられたがつい言ってしまった。どうしよう?」
40回くらい殴られた。
「ったく……これよ、これ」
「そう言ってかなみが取り出したのは、まぎれもなくローターだった」
もう10回殴られた。
「訂正、携帯電話だった」
「どう見てもそうじゃない! 変なことばっか言って……いやらしい」
「てへ☆」
「キモッ!」
「なんだと!? ちょっと待て、俺の媚びごまかしが本当に気持ち悪いかクラスのみんなに判定してもらう! おーいみんな、ちょっと」
俺を殴って行動を封じてから、かなみが営業スマイルでなんでもないと誤魔化した。
「……ふぅ。えーと……あ、ママからメール」
ため息一つついて、かなみは携帯を操作した。
「ほほう」
ずずいっと寄ってメールの中身を見ようとしたが、隠された。
「見ないで。プライバシーの侵害よ」
「分かった。じゃ、代わりに……ほほう」
「携帯を見なかったらパンツを見ていいとは言ってない!」
スカートの中に頭を突っ込んだら、とても蹴られた。
「だったら最初っから言ってくれよな。まったく、いい迷惑だ!」
「言わなくても分かるでしょ! 常識から考えたら!」
「本当は分かってたけど、適当言ってパンツ見たかったんだ」
正直に言うと殴られる。なんて世だ!
「アンタねぇ、今世紀最大のアイドルにそんなことして、事務所とファンと親衛隊が黙ってないわよ!」
何を言ってるのだろう、この子は。
「……アンタ、その顔は忘れてるでしょ。あたしがアイドルだっての」
……あ、あー。そういえば、なんか最近テレビでよく見るような。
「お、覚えてたぞ? いや本当に。サインください」
「このやりとりする度にサインして、もう10枚以上した! アンタ保存してるんでしょうね!?」
「鍋の下とか本棚の下とかに保存してます」
「それ下敷きにしてるんじゃない! ぶち殺すわよ!?」
このアイドル超怖え。
「嘘、嘘です。かなみのサインをそんな粗末に扱うわけないじゃないか」
「本当に?」
「本当、本当。いつも寝るとき抱いて寝ます」
「……そ、それならいいけど」
心なしか、かなみの頬が赤らんだような。
「で、朝起きたら色紙べきばき。わはは」
「笑い事じゃないでしょ! あに人のサイン折ってるのよ!」
「あと、寝る時に色紙の角が当たって超痛え。どうにかなりません?」
「ならないッ! もーいー! アンタには金輪際サインしてやんない!」
「じゃあ、『金輪際サインしません』ってサインして」
「がー!」
かなみが怒った。
「分かったよ、そんな怒るならもういいよ。はぁ……かなみに婚姻届を書いてもらうのも夢と消えたな」
「えにゃ!?」
「えにゃ?」
「そ、それはいいの! そ、そじゃなくて、その、さっき! ……こ、婚姻がどーとか」
「ああ、いつか書いて欲しかったんだが……もうサインしてもらえないなら、無理な話だな」
「……べ、別に、アンタがサインを粗末にしないなら、その、……さ、サイン、してもいーけど」
「本当か!?」
「かっ、勘違いしないでよね! 普通のサインよ、サイン! 婚姻届なんかには絶対しないから!」
「……そうか」
「なっ、何を落ち込んでるフリしてるのよ! そもそもアンタなんかがあたしと釣り合い取れると思ってるの!?」
「……ああ。パンおいしいなあ」
机に顔をべたりと乗せた状態で、手を使わずにくっちゃくっちゃとパンを食む。
「……だぁーっ、もうっ! 辛気臭いなあ! 分かったわよ、考えてあげるわよ!」
「本当か!?」
がぶあっと起き上がり、かなみの両肩に手を置く。
「かっ、考えるだけよ、考えるだけ! サインする確率なんて万に一つもないのよ!」
「でも、0じゃないんだろ?」
「……ま、まあ」
「それならなんとかなるさな。わはははは!」
「あに笑ってんのよ! 書くかもって話よ! そ、そりゃ先の話だからどうなるか分かんないし、あたしもできれば書──って、なっ、なんでもないっ!」
「うん? まあとにかく、よかったよかった!」
「あ、……あぅぅ」
かなみはなんだか小さくなって、顔を赤らめている。変な奴。
「とまれ、これで俺の趣味『知り合いに婚姻届のサインをしてもらったもので紙飛行機を作る』が行えるかもしれない! ありがとな、かなみ!」
「……趣味?」
どうしたことか、かなみの顔が笑顔なのにとってもおっかないよ。
「別府くーん、あのね、宿題……べっ、別府くんっ!?」
「やあ犬子。できることなら保健室へ連れて行ってはくれまいか」
「いーけど……どしたの? そんなズタボロで」
とある知り合いの女性に目を覆わんばかりの仕打ちを受け、もはや自力では動けない俺を不思議そうな目で見る犬子だった。
【ツンデレに初詣に連れて行かれたら】
2010年01月25日
今年の正月は寝正月と決め込んでいたのに、かなみが突然やってきて初詣に行こうというの。
「一年の計は元旦にありって言うじゃない。優しいあたしがわざわざ誘ってあげてるんだから、喜んで来なさいよ」
「寒いしめんどい」
「いいから行くのっ!」
「あぁん」
そういうわけで、無理やり有名でもなんでもない近所の神社に連れて来られた。とはいえ流石は正月、それでも結構な人の数で溢れている。
「やっぱこういう場所に来ると気が引き締まるわねー……って、あれ? タカシ?」
「もぐもぐもぐ」
「何を一人でたこ焼き食べてるか!」
出店があったのでたこ焼き買って食べてたら怒られた。
「おいしいよ?」
「味が問題じゃないの!」
「分かったよ、一個やるよ……」
「そ、そういうことでもなくて……」
つまようじでたこ焼きを一つぷすりと刺し、それをかなみに向けると、かなみは顔を真っ赤にしながらあわあわした。やがて、きょろきょろ周囲を見回すと、観念したように口を大きく開けた。
「……あ、あーん」
「ほい」
「もぐもぐ……」
「うまいか?」
「う、うん。……じゃ、じゃなくて! こんなの食べるより、お参りするほうが大事でしょ!」
「待ってまだ全部食べてない」
「ああもう、早く食べちゃいなさいよ!」
「分かった分かったあっちぃ!」
「落ち着けっ!」
「食べさせてくれたら落ち着いて食べられそう」
「う……な、なんであたしがアンタに食べさせなくちゃならないのよ!」
「特に理由はないのだけど、そうしてくれると喜ぶ。主に俺が」
「……あ、ああもうっ、この甘えっ子! ほら、貸しなさい!」
かなみは俺からたこ焼きをプラスチックトレイごと奪うと、つまようじでたこ焼きをぷすりと刺し、俺に向けた。
「あ、あーん」
「かなみ、顔が怖い」
「う、うっさい! 早く食べなさい!」
「あと、顔が赤い」
「言うなっ! 刺すわよ!」
とても怖かったので慌ててたこ焼きを食べる。
「もぐもぐもぐ」
「……お、おいし?」
「かなみに食べさせてもらうと格別かと」
「い、いらんことは言わんでいいっ!」
「痛い痛い耳が痛い」
耳を引っ張られながら拝殿へ向かう。参列者の列に並びながら何を誓うか考えてると、かなみがこしょこしょと耳打ちしてきた。
「ね、アンタは何をお願いするの?」
「うーん。健康?」
「うわっ、アンタおっさん?」
「失礼な。そういうお前は何を願うんだ?」
「えっ、あ、あたしは……」
かなみは俺をじーっと見ると、なぜか顔を赤くしていった。
「うっ、うっさい! アンタなんかに教える必要ないでしょ!」
「酒焼けが治りますようにっていう願いか?」
「未成年よっ!」
そんな感じでぎゃーぎゃー言い合ってる(というか主に俺が一方的に言われている)と、俺たちの番になった。賽銭箱に小銭を投げ入れ、でっかい鈴のついた縄をがらんがらん振り、手を二回打ち鳴らし、礼する。
えーと、何にするかな。……まあ、さっき言ったし、健康でいいか。今年一年健康でいられますように、っと。あとついでにかなみも風邪とか引きませんようにっと。
終わったので隣を見ると、かなみが目をつぶったまま真剣な表情で何か呟いていた。風に乗って今年こそやらタカシがどうとか聞こえたが、はて。
「……よしっ! ほら、行くわよ」
「ん、あ、ああ」
かなみに手を引かれ、向かった先はおみくじ販売所だ。一枚百円か。
「どーせアンタは大凶だろうから、あたしの大吉の運を少し分けてあげるわね。感謝しなさいよ?」
「なんで既に決定されてんだ」
「日頃の行いよ」
などと言いながらおみくじを引く。
「お、大吉。らっくぃー。かなみ、お前は?」
「…………」
見ると、かなみはおみくじを手にしたまま呆然としていた。手元を覗き見ると、『大凶』の文字が。
「すげぇ……大凶ってホントに入ってんだな」
「うー……なんでアンタが大吉で、あたしが大凶なのよ……」
「日頃の行い?」
かなみが言う分にはいいらしいが、俺が言うと殴られます。理不尽。
「まあ、アレだ。俺の大吉やるよ。で、お前の大凶よこせ」
そう言いながら、既にかなみの大凶は奪い、代わりに大吉を押し付けている。
「あっ、そんなのダメよ! 返しなさい!」
「や、俺は基本的にこういうのあまり信じてないもので。かなみは信じてるっぽいから、いいのやるから俺に恩に着ろって話だ」
「……な、何よ。こんなので恩に着たりしないわよ!」
「ええっ!? これで恩に着させ、あとでちゅーとかしてもらう俺の完全なる計画が早くも頓挫しただと!?」
「す、するわけないでしょ!」
「むう、非常に残念。あ、向こうの木に結ぶみたいだぞ」
「え、あ、う、うん」
おみくじの木と化している木に、さらにおみくじをくくりつける。
「こうして……っと。結べたか?」
「…………」
「かなみ? どした、疲れたか?」
「え、あ、ううん。……うー」
かなみは何度か自分のおみくじと俺の顔を見た後、しぶしぶといった感じで木におみくじを結んだ。
「あれ、ホントはアンタの分なのに……」
「時々善人を演じたくなるだけだから気にするな」
「……むー」
納得してない感じだったが、それ以上かなみは何も言わなかった。
「さて、と。んじゃ帰るべ。それとも出店ひやかすか?」
「……帰る」
心なしか元気がないかなみと一緒に帰途に着く。うーむ、失敗したか。いつかこういうことを嫌味なく出来る大人になりたいものだ。
などとを思いながら静かな街並みを歩いてると、ふと手に柔らかな感触が。
「……ええと?」
「……かっ、勘違いしないでよね! お、恩には着ないけど、借りを作りっぱなしってのは嫌だから。……そっ、それだけ!」
あわあわしながらかなみが早口にまくし立てていた。
「つまり、おみくじの礼に手を繋いでやるってえことでせうか?」
「そ、そうよ。……ほ、他のがよかった? 膝枕とか、むぎゅーって抱っことか、ほっぺすりすりとか」
「いやいや、いやいやいや。それも大変魅力的ですが、この手ってのもなかなかどうして俺は大変好きです。かなみの手はやーらかくて気持ちいいし」
「……へ、変態」
「知らなかったのか?」
「受け入れるなッ! ……で、でも、そっか。アンタ、あたしの手、好きなんだ」
「うん。好き」
きゅっとかなみの手を強めに握る。かなみはこちらをちらりと見ると、おずおずと握り返した。
「……えへ。なんかね、いいね。こーいうの」
かなみのはにかんだ笑顔に、少しばかり照れる。
「……あ、あのね? ……もうちょっと、そっち行っていい?」
「いいけど、よりまくって俺の身体を壁に押し付け、その摩擦により俺を摩り下ろし殺すつもりなら断りたいです」
「やらないわよっ! なんでそんなこと思うのよ……」
「人と頭の中身が違うからだと思う。ダメな方向に」
「あー」
あーとか言われると悲しくなる。
「あははっ、うそうそ」
かなみはニッコリ笑って、俺の腕に自分の腕を巻きつけた。
「……えへへ。ね、あたしとくっつけて嬉しい?」
「かなみほどではないにしろ、嬉しい」
「あっ、あたしは嬉しいとか、そういうのじゃないもん。アンタに借りを返すためだけにやってるだけだもん」
「ほほう。つまり、かなみ自身は嫌々やってるのですな?」
「そ、そうだもん。あー、なんだってアンタなんかと腕を組まなきゃならないのかなー」
「かなみ、かなみ」
「ん?」
「そういう台詞を言うときは、ニコニコしてない方がよいと思います」
「ええっ!? ……し、してた?」
「超」
「う、うー……今のなし。……あー、なんだってアンタなんかと腕を組まなきゃならないのかなー。……どう?」
「まだ笑ってる」
「まだ!? ……い、嫌なのよ? ホントよ? アンタと腕組んで、嬉しいとか思ってないんだからね?」
「はいはいはい」
「し、信じなさいよ、ばかーっ!」
文句を言いながらも、俺の腕は決して離そうとしないかなみと一緒にゆっくり帰りましたとさ。
「一年の計は元旦にありって言うじゃない。優しいあたしがわざわざ誘ってあげてるんだから、喜んで来なさいよ」
「寒いしめんどい」
「いいから行くのっ!」
「あぁん」
そういうわけで、無理やり有名でもなんでもない近所の神社に連れて来られた。とはいえ流石は正月、それでも結構な人の数で溢れている。
「やっぱこういう場所に来ると気が引き締まるわねー……って、あれ? タカシ?」
「もぐもぐもぐ」
「何を一人でたこ焼き食べてるか!」
出店があったのでたこ焼き買って食べてたら怒られた。
「おいしいよ?」
「味が問題じゃないの!」
「分かったよ、一個やるよ……」
「そ、そういうことでもなくて……」
つまようじでたこ焼きを一つぷすりと刺し、それをかなみに向けると、かなみは顔を真っ赤にしながらあわあわした。やがて、きょろきょろ周囲を見回すと、観念したように口を大きく開けた。
「……あ、あーん」
「ほい」
「もぐもぐ……」
「うまいか?」
「う、うん。……じゃ、じゃなくて! こんなの食べるより、お参りするほうが大事でしょ!」
「待ってまだ全部食べてない」
「ああもう、早く食べちゃいなさいよ!」
「分かった分かったあっちぃ!」
「落ち着けっ!」
「食べさせてくれたら落ち着いて食べられそう」
「う……な、なんであたしがアンタに食べさせなくちゃならないのよ!」
「特に理由はないのだけど、そうしてくれると喜ぶ。主に俺が」
「……あ、ああもうっ、この甘えっ子! ほら、貸しなさい!」
かなみは俺からたこ焼きをプラスチックトレイごと奪うと、つまようじでたこ焼きをぷすりと刺し、俺に向けた。
「あ、あーん」
「かなみ、顔が怖い」
「う、うっさい! 早く食べなさい!」
「あと、顔が赤い」
「言うなっ! 刺すわよ!」
とても怖かったので慌ててたこ焼きを食べる。
「もぐもぐもぐ」
「……お、おいし?」
「かなみに食べさせてもらうと格別かと」
「い、いらんことは言わんでいいっ!」
「痛い痛い耳が痛い」
耳を引っ張られながら拝殿へ向かう。参列者の列に並びながら何を誓うか考えてると、かなみがこしょこしょと耳打ちしてきた。
「ね、アンタは何をお願いするの?」
「うーん。健康?」
「うわっ、アンタおっさん?」
「失礼な。そういうお前は何を願うんだ?」
「えっ、あ、あたしは……」
かなみは俺をじーっと見ると、なぜか顔を赤くしていった。
「うっ、うっさい! アンタなんかに教える必要ないでしょ!」
「酒焼けが治りますようにっていう願いか?」
「未成年よっ!」
そんな感じでぎゃーぎゃー言い合ってる(というか主に俺が一方的に言われている)と、俺たちの番になった。賽銭箱に小銭を投げ入れ、でっかい鈴のついた縄をがらんがらん振り、手を二回打ち鳴らし、礼する。
えーと、何にするかな。……まあ、さっき言ったし、健康でいいか。今年一年健康でいられますように、っと。あとついでにかなみも風邪とか引きませんようにっと。
終わったので隣を見ると、かなみが目をつぶったまま真剣な表情で何か呟いていた。風に乗って今年こそやらタカシがどうとか聞こえたが、はて。
「……よしっ! ほら、行くわよ」
「ん、あ、ああ」
かなみに手を引かれ、向かった先はおみくじ販売所だ。一枚百円か。
「どーせアンタは大凶だろうから、あたしの大吉の運を少し分けてあげるわね。感謝しなさいよ?」
「なんで既に決定されてんだ」
「日頃の行いよ」
などと言いながらおみくじを引く。
「お、大吉。らっくぃー。かなみ、お前は?」
「…………」
見ると、かなみはおみくじを手にしたまま呆然としていた。手元を覗き見ると、『大凶』の文字が。
「すげぇ……大凶ってホントに入ってんだな」
「うー……なんでアンタが大吉で、あたしが大凶なのよ……」
「日頃の行い?」
かなみが言う分にはいいらしいが、俺が言うと殴られます。理不尽。
「まあ、アレだ。俺の大吉やるよ。で、お前の大凶よこせ」
そう言いながら、既にかなみの大凶は奪い、代わりに大吉を押し付けている。
「あっ、そんなのダメよ! 返しなさい!」
「や、俺は基本的にこういうのあまり信じてないもので。かなみは信じてるっぽいから、いいのやるから俺に恩に着ろって話だ」
「……な、何よ。こんなので恩に着たりしないわよ!」
「ええっ!? これで恩に着させ、あとでちゅーとかしてもらう俺の完全なる計画が早くも頓挫しただと!?」
「す、するわけないでしょ!」
「むう、非常に残念。あ、向こうの木に結ぶみたいだぞ」
「え、あ、う、うん」
おみくじの木と化している木に、さらにおみくじをくくりつける。
「こうして……っと。結べたか?」
「…………」
「かなみ? どした、疲れたか?」
「え、あ、ううん。……うー」
かなみは何度か自分のおみくじと俺の顔を見た後、しぶしぶといった感じで木におみくじを結んだ。
「あれ、ホントはアンタの分なのに……」
「時々善人を演じたくなるだけだから気にするな」
「……むー」
納得してない感じだったが、それ以上かなみは何も言わなかった。
「さて、と。んじゃ帰るべ。それとも出店ひやかすか?」
「……帰る」
心なしか元気がないかなみと一緒に帰途に着く。うーむ、失敗したか。いつかこういうことを嫌味なく出来る大人になりたいものだ。
などとを思いながら静かな街並みを歩いてると、ふと手に柔らかな感触が。
「……ええと?」
「……かっ、勘違いしないでよね! お、恩には着ないけど、借りを作りっぱなしってのは嫌だから。……そっ、それだけ!」
あわあわしながらかなみが早口にまくし立てていた。
「つまり、おみくじの礼に手を繋いでやるってえことでせうか?」
「そ、そうよ。……ほ、他のがよかった? 膝枕とか、むぎゅーって抱っことか、ほっぺすりすりとか」
「いやいや、いやいやいや。それも大変魅力的ですが、この手ってのもなかなかどうして俺は大変好きです。かなみの手はやーらかくて気持ちいいし」
「……へ、変態」
「知らなかったのか?」
「受け入れるなッ! ……で、でも、そっか。アンタ、あたしの手、好きなんだ」
「うん。好き」
きゅっとかなみの手を強めに握る。かなみはこちらをちらりと見ると、おずおずと握り返した。
「……えへ。なんかね、いいね。こーいうの」
かなみのはにかんだ笑顔に、少しばかり照れる。
「……あ、あのね? ……もうちょっと、そっち行っていい?」
「いいけど、よりまくって俺の身体を壁に押し付け、その摩擦により俺を摩り下ろし殺すつもりなら断りたいです」
「やらないわよっ! なんでそんなこと思うのよ……」
「人と頭の中身が違うからだと思う。ダメな方向に」
「あー」
あーとか言われると悲しくなる。
「あははっ、うそうそ」
かなみはニッコリ笑って、俺の腕に自分の腕を巻きつけた。
「……えへへ。ね、あたしとくっつけて嬉しい?」
「かなみほどではないにしろ、嬉しい」
「あっ、あたしは嬉しいとか、そういうのじゃないもん。アンタに借りを返すためだけにやってるだけだもん」
「ほほう。つまり、かなみ自身は嫌々やってるのですな?」
「そ、そうだもん。あー、なんだってアンタなんかと腕を組まなきゃならないのかなー」
「かなみ、かなみ」
「ん?」
「そういう台詞を言うときは、ニコニコしてない方がよいと思います」
「ええっ!? ……し、してた?」
「超」
「う、うー……今のなし。……あー、なんだってアンタなんかと腕を組まなきゃならないのかなー。……どう?」
「まだ笑ってる」
「まだ!? ……い、嫌なのよ? ホントよ? アンタと腕組んで、嬉しいとか思ってないんだからね?」
「はいはいはい」
「し、信じなさいよ、ばかーっ!」
文句を言いながらも、俺の腕は決して離そうとしないかなみと一緒にゆっくり帰りましたとさ。
【お腹痛いツンデレ】
2010年01月25日
放課後になったのでふらふら部室にやってきたら、既にかなみがいた。
「うぃす。早いな」
「お前が遅いんだ、ばかー……」
かなみは席に着いたまま、ぐでーっと頭を机に乗せていた。いつものように悪態は吐いているものの、どこか元気がない。
「どした、どっか痛いのか?」
頭をもふりながらそう言ったら、途端、かなみはぴんっと背筋を伸ばした。
「ぜっ、ぜんっぜん! どっこも痛くない!」
「…………」
「ほ、ホントだよ? どこも痛くないよ?」
じーっとかなみを見つめる。頭、顔、鎖骨、胸、……腹。そこに手が添えられていた。
「腹?」
びびくんっとかなみの身体が跳ねた。
「な、なんで分か……はっ!」
「……はぁ。とっとと保健室行くぞ」
「嫌だー! 注射とか打つんだろ!」
「言うこと聞かないと医師免許を持ってない俺が打つ」
「悪魔だーっ!」
そんなわけで、引きずるように(というか、後半担ぎ上げた)かなみを保健室へ連行する。
「これこれこういうわけなんで、先生、ここは一つ特大で極太で激痛の注射を」
「そんなのお前が打たれろーっ!」
「お薬飲みましょうね」
残念なことに注射は打たないようだ。しかし、ここでまた問題が発生。
「嫌だ! 薬なんか飲まなくても、寝てれば治る!」
「断るな。お前のことだ、どうせ苦い薬が嫌なだけだろう」
「そっ、そそそ、そんなことない……ヨ?」
目が泳いでる。汗も大量に発生している。吹けもしない口笛も吹いている。……ここまでコンボを決められると、逆に感心する。
「はぁ。困ったわねえ、先生ちょっと出ないといけないし」
先生は頬に手を当て、ため息を吐いた。ちらりとこちらに視線を向ける。
「じゃ、後は俺に任してください。注射器のある場所だけ教えてくれれば、後はなんとかします」
「すぐ注射しようとすんな、ばかーっ!」
逃げようとするかなみを追いかけ、どうにか捕まえる。
「うーっ! 離せ、ばかーっ!」
「暴れるな。先生、鎮静剤を」
「はいはい。丁度いいからそのまま持っててねー」
「きゃうわっ!?」
先生はかなみの前へやってくると、めろりと制服をまくった。すわ百合行為が俺の目の前に、と思ったが、違ったみたい。
「……うーん、ね、かなみちゃん。ここ押すと痛い?」
「う、ううん」
「ここは?」
「……うー、ちょっと痛い」
先生は触診しているようだ。かなみのお腹に手を当て、何か探っている。
「なんだ。それなら俺も触診したかった。胸とか」
思ったことを言っただけなのに、かなみが獣のような目で睨んできたのでしないことにする。
「……うん、ただの腹痛ね。寝てれば治るわ」
「だから言ったのにぃ……」
終わったようなので、拘束を解く。かなみは俺を一発蹴ってから慌てて逃げた。
「いちいち蹴るな」
「うっさい、ばか!」
「はいはいはい、喧嘩しない。じゃ、かなみちゃん。そういうことなんで、しばらく休んでおいてね」
「うん!」
かなみはすっごい笑顔を先生に見せると、ベッドに飛び乗った。そのままぼふぼふスプリングの柔らかさを楽しんでいる。
「跳ねるな」
「お前の言うことなんて聞かないもんねー」
「かなみちゃん、跳ねたりしちゃダメよ」
「はーい!」
先生の言うことなら素直に聞きやがる。……寝てる間にその馬鹿みたいにでかいリボンを赤から黒にしてやる。
「……? なんだろ、寒気がする」
「じゃ、先生ちょっと出てくるから、別府くん、後は頼むわね」
「えーっ!? コイツいるの? ……いたづらされそうで嫌だなあ」
先生がぼくを犯罪者を見る目で見ます。
「……うん。分かった、します!」
「先生助けて!」
「……じゃ、後は任せるわね」
どこか疲れた様子で先生は部屋から出て行った。後に残される我ら二人。
「……ホントにいたづらしたら、教頭せんせーに言って退学にしてもらうかんね」
「じゃあ今のうちに校長に根回ししとく」
「ず、ずるい!」
同好の士なので、校長とは仲が良い。たまに泣かすが。
「冗談はともかく、寝てろ。腹痛いんだろ?」
「んー……なんか、お前とぎゃーぎゃー言いあってたら、ちょっと戻った」
「いーから寝てろ」
起き上がろうとするかなみの頭を押して、ベッドに寝かせる。近くにあったパイプ椅子を持ってきて、そこに座る。
「見ててやるから、安心して寝ろ」
「よけーに寝れないっての……」
ぶつくさ言ってるかなみの頭をくしゃくしゃっとしてから、持ってた文庫本を取り出し、暇を潰す。
「……うー」
全体の2割ほど読んだ頃だろうか、かなみが声をあげた。
「どした? 腹痛むのか?」
「……ちょっと」
「だから薬飲めって言ったのに……」
「う、うるさいっ! 過ぎたことをぐにゃぐにゃ言うな、ばかっ!」
「ぐにゃぐにゃは言わんが……しかし、どこに何の薬があるか分からないしなあ」
勝手に探るのもまずいだろうし……仕方ないか。
「うにゃっ!?」
布団に手をつっこみ、そのままかなみの腹にも手をつっこむ。
「なななななな、なに!? いたづらするのしてるのされてるの!?」
「落ち着け、ただの手当てだ。何もしないよりマシだろ」
そのまま、ゆっくりかなみの腹をさする。
「うう……私のお腹が陵辱されてる」
「よくもまぁ人聞きの悪い言葉がポンポン出てくるな」
言葉は俺を全否定していたが、それ以上嫌がる様子もなかったので、そのまま続けて腹をさすりつづける。
「どうだ? ちょっとはマシか?」
「んー。もうちょっとやんないと分かんないカモ」
「間違って手を上部に動かし、乳を揉みしだく可能性があるが、言われた通りもうちょっとお腹をなでます」
「…………」
悪魔のような目で見られたので、乳は揉まない。
「……まったく、お前は私の魅惑のぼでぃーに釘付けだな」
「貧乳が大好きだからね!」
「ひっ、貧!?」
「ていせい。無乳が大好きだから!」
「無ーっ!?」
「だって、ほら」
布団をまくりあげ、さらに制服もまくりあげる。仰向けに寝てるせいか、全くと言っていいほど膨らみのない胸部と、その真中にある桜色の蕾が──って。
「ブラが──ない!?」
「にゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「あぐっ」
かなみは俺のあごを蹴り上げ、すぐさま布団を被りなおした。
「みっ、みっ、みっ、見ーっ!?」
「あいたたた……いや、あの、まさか直で制服だとは思いませんでしたので」
「うう……うううううー!」
見る間にかなみの瞳に涙が溜まっていく。大変いけない。
「いやそのあの、ごめんなさい。故意ではないにしろ、許されることではないです」
地面にぺたーっと土下座する。おでこも床にぐりぐりこすりつける。
「……わざとじゃないのだな?」
「自身に誓って」
「……ぐすっ。じゃ、許す」
「…………」(ニヤリ)
「計算どーり!? やっぱ絶対許さない!」
「冗談だよ。いやはや、よかった」
「私のおっぱい見れてか!?」
「いや、それはもちろんそうですけど、そうじゃなくて、許してもらえて」
「う、にゅ……」
かなみはしばらく自分の手をこねこねこねていたが、やがてちらりとこちらに視線を向けた。
「……お腹、痛くなくなるまでさすってくれてたら、許す」
「そいつぁ願ってもない命令だ」
「でっ、でも次おっぱい見たら許さないからなっ!? 絶対だかんな!」
「あんま女の子がおっぱいおっぱい連呼するな」
「誰のせいだっ!?」
依然ぎゃーぎゃーうるさいかなみのお腹を、ずっとさすっていた。
「うぃす。早いな」
「お前が遅いんだ、ばかー……」
かなみは席に着いたまま、ぐでーっと頭を机に乗せていた。いつものように悪態は吐いているものの、どこか元気がない。
「どした、どっか痛いのか?」
頭をもふりながらそう言ったら、途端、かなみはぴんっと背筋を伸ばした。
「ぜっ、ぜんっぜん! どっこも痛くない!」
「…………」
「ほ、ホントだよ? どこも痛くないよ?」
じーっとかなみを見つめる。頭、顔、鎖骨、胸、……腹。そこに手が添えられていた。
「腹?」
びびくんっとかなみの身体が跳ねた。
「な、なんで分か……はっ!」
「……はぁ。とっとと保健室行くぞ」
「嫌だー! 注射とか打つんだろ!」
「言うこと聞かないと医師免許を持ってない俺が打つ」
「悪魔だーっ!」
そんなわけで、引きずるように(というか、後半担ぎ上げた)かなみを保健室へ連行する。
「これこれこういうわけなんで、先生、ここは一つ特大で極太で激痛の注射を」
「そんなのお前が打たれろーっ!」
「お薬飲みましょうね」
残念なことに注射は打たないようだ。しかし、ここでまた問題が発生。
「嫌だ! 薬なんか飲まなくても、寝てれば治る!」
「断るな。お前のことだ、どうせ苦い薬が嫌なだけだろう」
「そっ、そそそ、そんなことない……ヨ?」
目が泳いでる。汗も大量に発生している。吹けもしない口笛も吹いている。……ここまでコンボを決められると、逆に感心する。
「はぁ。困ったわねえ、先生ちょっと出ないといけないし」
先生は頬に手を当て、ため息を吐いた。ちらりとこちらに視線を向ける。
「じゃ、後は俺に任してください。注射器のある場所だけ教えてくれれば、後はなんとかします」
「すぐ注射しようとすんな、ばかーっ!」
逃げようとするかなみを追いかけ、どうにか捕まえる。
「うーっ! 離せ、ばかーっ!」
「暴れるな。先生、鎮静剤を」
「はいはい。丁度いいからそのまま持っててねー」
「きゃうわっ!?」
先生はかなみの前へやってくると、めろりと制服をまくった。すわ百合行為が俺の目の前に、と思ったが、違ったみたい。
「……うーん、ね、かなみちゃん。ここ押すと痛い?」
「う、ううん」
「ここは?」
「……うー、ちょっと痛い」
先生は触診しているようだ。かなみのお腹に手を当て、何か探っている。
「なんだ。それなら俺も触診したかった。胸とか」
思ったことを言っただけなのに、かなみが獣のような目で睨んできたのでしないことにする。
「……うん、ただの腹痛ね。寝てれば治るわ」
「だから言ったのにぃ……」
終わったようなので、拘束を解く。かなみは俺を一発蹴ってから慌てて逃げた。
「いちいち蹴るな」
「うっさい、ばか!」
「はいはいはい、喧嘩しない。じゃ、かなみちゃん。そういうことなんで、しばらく休んでおいてね」
「うん!」
かなみはすっごい笑顔を先生に見せると、ベッドに飛び乗った。そのままぼふぼふスプリングの柔らかさを楽しんでいる。
「跳ねるな」
「お前の言うことなんて聞かないもんねー」
「かなみちゃん、跳ねたりしちゃダメよ」
「はーい!」
先生の言うことなら素直に聞きやがる。……寝てる間にその馬鹿みたいにでかいリボンを赤から黒にしてやる。
「……? なんだろ、寒気がする」
「じゃ、先生ちょっと出てくるから、別府くん、後は頼むわね」
「えーっ!? コイツいるの? ……いたづらされそうで嫌だなあ」
先生がぼくを犯罪者を見る目で見ます。
「……うん。分かった、します!」
「先生助けて!」
「……じゃ、後は任せるわね」
どこか疲れた様子で先生は部屋から出て行った。後に残される我ら二人。
「……ホントにいたづらしたら、教頭せんせーに言って退学にしてもらうかんね」
「じゃあ今のうちに校長に根回ししとく」
「ず、ずるい!」
同好の士なので、校長とは仲が良い。たまに泣かすが。
「冗談はともかく、寝てろ。腹痛いんだろ?」
「んー……なんか、お前とぎゃーぎゃー言いあってたら、ちょっと戻った」
「いーから寝てろ」
起き上がろうとするかなみの頭を押して、ベッドに寝かせる。近くにあったパイプ椅子を持ってきて、そこに座る。
「見ててやるから、安心して寝ろ」
「よけーに寝れないっての……」
ぶつくさ言ってるかなみの頭をくしゃくしゃっとしてから、持ってた文庫本を取り出し、暇を潰す。
「……うー」
全体の2割ほど読んだ頃だろうか、かなみが声をあげた。
「どした? 腹痛むのか?」
「……ちょっと」
「だから薬飲めって言ったのに……」
「う、うるさいっ! 過ぎたことをぐにゃぐにゃ言うな、ばかっ!」
「ぐにゃぐにゃは言わんが……しかし、どこに何の薬があるか分からないしなあ」
勝手に探るのもまずいだろうし……仕方ないか。
「うにゃっ!?」
布団に手をつっこみ、そのままかなみの腹にも手をつっこむ。
「なななななな、なに!? いたづらするのしてるのされてるの!?」
「落ち着け、ただの手当てだ。何もしないよりマシだろ」
そのまま、ゆっくりかなみの腹をさする。
「うう……私のお腹が陵辱されてる」
「よくもまぁ人聞きの悪い言葉がポンポン出てくるな」
言葉は俺を全否定していたが、それ以上嫌がる様子もなかったので、そのまま続けて腹をさすりつづける。
「どうだ? ちょっとはマシか?」
「んー。もうちょっとやんないと分かんないカモ」
「間違って手を上部に動かし、乳を揉みしだく可能性があるが、言われた通りもうちょっとお腹をなでます」
「…………」
悪魔のような目で見られたので、乳は揉まない。
「……まったく、お前は私の魅惑のぼでぃーに釘付けだな」
「貧乳が大好きだからね!」
「ひっ、貧!?」
「ていせい。無乳が大好きだから!」
「無ーっ!?」
「だって、ほら」
布団をまくりあげ、さらに制服もまくりあげる。仰向けに寝てるせいか、全くと言っていいほど膨らみのない胸部と、その真中にある桜色の蕾が──って。
「ブラが──ない!?」
「にゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「あぐっ」
かなみは俺のあごを蹴り上げ、すぐさま布団を被りなおした。
「みっ、みっ、みっ、見ーっ!?」
「あいたたた……いや、あの、まさか直で制服だとは思いませんでしたので」
「うう……うううううー!」
見る間にかなみの瞳に涙が溜まっていく。大変いけない。
「いやそのあの、ごめんなさい。故意ではないにしろ、許されることではないです」
地面にぺたーっと土下座する。おでこも床にぐりぐりこすりつける。
「……わざとじゃないのだな?」
「自身に誓って」
「……ぐすっ。じゃ、許す」
「…………」(ニヤリ)
「計算どーり!? やっぱ絶対許さない!」
「冗談だよ。いやはや、よかった」
「私のおっぱい見れてか!?」
「いや、それはもちろんそうですけど、そうじゃなくて、許してもらえて」
「う、にゅ……」
かなみはしばらく自分の手をこねこねこねていたが、やがてちらりとこちらに視線を向けた。
「……お腹、痛くなくなるまでさすってくれてたら、許す」
「そいつぁ願ってもない命令だ」
「でっ、でも次おっぱい見たら許さないからなっ!? 絶対だかんな!」
「あんま女の子がおっぱいおっぱい連呼するな」
「誰のせいだっ!?」
依然ぎゃーぎゃーうるさいかなみのお腹を、ずっとさすっていた。
【いきなり男の部屋をチェックするツンデレ】
2010年01月22日
部屋でぼんにゃりラブプラスをしてたら、突然勢いよくドアが開いて闖入者が現れた。
「何事か!? チクショウ、凛子は俺が守る!」
「凛子って誰よ!?」
闖入者はかなみでした。ほっとしたのもつかの間、凄い勢いで俺に詰め寄ってきた。
「僕の最愛の人です」
「アンタを殺してあたしも死ぬっ!」
安心したので素直に言ったら、ダメな選択肢だったようで。このままヤンデレENDかと思われたが、俺の手元にあるDSを見てかなみは落ち着きを取り戻した。
「……なんだ、ゲームか。それならそうと最初から言いなさいよ、馬鹿」
「すいません。でも、いきなり人の部屋に乱入してきて殺すとか言う人の方が馬──すいません何でもないです」
途中でかなみの鬼のような目を見てしまったので謝ざるを得なくなる。目は時に言葉より多くを語りやがるので悔しい。
「まったく……さて、と」
そう言うと、かなみは俺の部屋を不躾にじろじろ眺めた。
「見るのは構わないけど、本棚の方は見ないでください。見る人によっては気分を害する可能性があります」
「アンタまたエロ本を堂々と本棚に並べてる! しかもロリエロ漫画! こんなの誰が見ても気分を害するわよ!」
「なんだと!? お前と同じ体型の方々がくんずほぐれつ大騒ぎしてるのにか!?」
沢山殴られた。
「この変態! 変態変態!」
「そんな連呼されると、いささか興奮します」
「ちょっとは堪えろ、ばかぁ!」
正直に答えたのに怒られた。ままならぬ。
「うぅ……ま、負けないんだから!」
かなみは決意の炎を目に灯らせると、本棚に手を伸ばし、俺のエロ本を手に取ったあ!?
「こんなのがあるからコイツはいつまで経っても変態なのよ! 全部捨てちゃえ!」
「待ってそれは流石に洒落にならない!」
「うっさい変態! アンタの言うことなんて聞かないわよ!」
「俺のほとばしる性欲が行く場所をなくし、その結果かなみを襲ってしまったらどうすると言うのだ!?」
無茶な理論だが、今はそれで捨てる気をなくさせるしかない! ……と思ったのに。
「……あ、あたし相手でも、そーゆー気分になるの?」
手をぴたりと止め、かなみは俺をじーっと見つめた。なんでほんのり頬を染めてますですか。
「え、ええと、そりゃ、まあ」
「う……じゃ、じゃあ、あたしがここの本ぜーんぶ捨てたら、あたし、襲われちゃうの?」
背中を汗が伝う。なに、この状況。なんでちょっと声に期待の色が入ってるの。そして、なんで俺が追い詰められてるの。
「あー……」
「(どきどき、どきどき)」
「ちょっと思考がパンクしそうなので、とりあえずパンツを見せて。そうすることで脳の血液が股間に送られ、結果冷静になるのです」
「…………」
「うん? どうしました、かなみ嬢。パンツです、パンツ。できるならば羞恥で泣きそうになりながら両手でスカートを捲り上げて欲しいものです」
「……うん、よし。やっぱ殺そう」
「おや、まあ」
で。
「はー……殴りすぎて手が痛いわ」
「ふふ。生きているのが不思議だ」
ぼろ雑巾か俺なのか判別が難しい状況まで追い込まれた俺です。
「まったく、どこまで馬鹿なんだか……じゃ、この本全部捨てるわね」
「畜生! させるかあ!」
最後の力を振り絞り、かなみに襲い掛かる!
「きゃあ! こっ、こらっ、どこ触ってんのよ!」
「この本は俺の命だ、させないぞ! あと触ってる箇所は胸です。触っていると言うよりも揉んでいます」
「冷静に説明するなあっ!」
「見た感じはほぼ平らでしたが、ちゃんと揉めたことに、そして何よりその柔らかさに感動しています。埋もれた指の一本一本が幸福に満ちています」
「だから、説明するなってばあ! ふゃっ……いっ、いーから手ぇ離せ、ばかぁっ」
「混乱しているフリをして胸を揉み、さらには全てをうやむやにする作戦だったのですが、思いのほか冷静に胸を揉んでしまい俺はどうしたら」
そう言いながらも指はかなみの胸部をまさぐり続けている。服ごしとはいえ、その柔らかさは俺の脳髄を痺れさせるに充分だった。
「ひゃんっ! ……いっ、いいから、……ふンっ、……ひ、人の胸を、も、揉むなぁ」
「本を捨てないと約束するならやめます」
「す……るっ、約束する、……す、るっ! ……か、からっ」
約束されてしまったので、しぶしぶかなみの胸から手を離す。もっと触りたかった。あと俺の股間が大変なことに。
「はぁ……っ。……うー」
自分を抱きしめるようにしながら、かなみは前屈みな俺を睨んだ。
「いや、あの。……混乱していたのですよ?」
「嘘つけっ! ものすっごい冷静に説明してたじゃない!」
「いやはや。自分の冷静さが嫌になる」
「うっさい馬鹿! ……うー、でも、一応約束は約束だから今回は捨てないでおく。でもね! 次来た時は絶対に捨てるからね!」
「じゃあ俺も次は服ごしではなく、直接揉めるよう精進します」
「つ、次とかないわよ、この変態っ! 覚えときなさいよ、ばかっ!」
かなみはアッカンベーすると、真っ赤な顔のまま逃げるように部屋を後にしたのだった。
「何事か!? チクショウ、凛子は俺が守る!」
「凛子って誰よ!?」
闖入者はかなみでした。ほっとしたのもつかの間、凄い勢いで俺に詰め寄ってきた。
「僕の最愛の人です」
「アンタを殺してあたしも死ぬっ!」
安心したので素直に言ったら、ダメな選択肢だったようで。このままヤンデレENDかと思われたが、俺の手元にあるDSを見てかなみは落ち着きを取り戻した。
「……なんだ、ゲームか。それならそうと最初から言いなさいよ、馬鹿」
「すいません。でも、いきなり人の部屋に乱入してきて殺すとか言う人の方が馬──すいません何でもないです」
途中でかなみの鬼のような目を見てしまったので謝ざるを得なくなる。目は時に言葉より多くを語りやがるので悔しい。
「まったく……さて、と」
そう言うと、かなみは俺の部屋を不躾にじろじろ眺めた。
「見るのは構わないけど、本棚の方は見ないでください。見る人によっては気分を害する可能性があります」
「アンタまたエロ本を堂々と本棚に並べてる! しかもロリエロ漫画! こんなの誰が見ても気分を害するわよ!」
「なんだと!? お前と同じ体型の方々がくんずほぐれつ大騒ぎしてるのにか!?」
沢山殴られた。
「この変態! 変態変態!」
「そんな連呼されると、いささか興奮します」
「ちょっとは堪えろ、ばかぁ!」
正直に答えたのに怒られた。ままならぬ。
「うぅ……ま、負けないんだから!」
かなみは決意の炎を目に灯らせると、本棚に手を伸ばし、俺のエロ本を手に取ったあ!?
「こんなのがあるからコイツはいつまで経っても変態なのよ! 全部捨てちゃえ!」
「待ってそれは流石に洒落にならない!」
「うっさい変態! アンタの言うことなんて聞かないわよ!」
「俺のほとばしる性欲が行く場所をなくし、その結果かなみを襲ってしまったらどうすると言うのだ!?」
無茶な理論だが、今はそれで捨てる気をなくさせるしかない! ……と思ったのに。
「……あ、あたし相手でも、そーゆー気分になるの?」
手をぴたりと止め、かなみは俺をじーっと見つめた。なんでほんのり頬を染めてますですか。
「え、ええと、そりゃ、まあ」
「う……じゃ、じゃあ、あたしがここの本ぜーんぶ捨てたら、あたし、襲われちゃうの?」
背中を汗が伝う。なに、この状況。なんでちょっと声に期待の色が入ってるの。そして、なんで俺が追い詰められてるの。
「あー……」
「(どきどき、どきどき)」
「ちょっと思考がパンクしそうなので、とりあえずパンツを見せて。そうすることで脳の血液が股間に送られ、結果冷静になるのです」
「…………」
「うん? どうしました、かなみ嬢。パンツです、パンツ。できるならば羞恥で泣きそうになりながら両手でスカートを捲り上げて欲しいものです」
「……うん、よし。やっぱ殺そう」
「おや、まあ」
で。
「はー……殴りすぎて手が痛いわ」
「ふふ。生きているのが不思議だ」
ぼろ雑巾か俺なのか判別が難しい状況まで追い込まれた俺です。
「まったく、どこまで馬鹿なんだか……じゃ、この本全部捨てるわね」
「畜生! させるかあ!」
最後の力を振り絞り、かなみに襲い掛かる!
「きゃあ! こっ、こらっ、どこ触ってんのよ!」
「この本は俺の命だ、させないぞ! あと触ってる箇所は胸です。触っていると言うよりも揉んでいます」
「冷静に説明するなあっ!」
「見た感じはほぼ平らでしたが、ちゃんと揉めたことに、そして何よりその柔らかさに感動しています。埋もれた指の一本一本が幸福に満ちています」
「だから、説明するなってばあ! ふゃっ……いっ、いーから手ぇ離せ、ばかぁっ」
「混乱しているフリをして胸を揉み、さらには全てをうやむやにする作戦だったのですが、思いのほか冷静に胸を揉んでしまい俺はどうしたら」
そう言いながらも指はかなみの胸部をまさぐり続けている。服ごしとはいえ、その柔らかさは俺の脳髄を痺れさせるに充分だった。
「ひゃんっ! ……いっ、いいから、……ふンっ、……ひ、人の胸を、も、揉むなぁ」
「本を捨てないと約束するならやめます」
「す……るっ、約束する、……す、るっ! ……か、からっ」
約束されてしまったので、しぶしぶかなみの胸から手を離す。もっと触りたかった。あと俺の股間が大変なことに。
「はぁ……っ。……うー」
自分を抱きしめるようにしながら、かなみは前屈みな俺を睨んだ。
「いや、あの。……混乱していたのですよ?」
「嘘つけっ! ものすっごい冷静に説明してたじゃない!」
「いやはや。自分の冷静さが嫌になる」
「うっさい馬鹿! ……うー、でも、一応約束は約束だから今回は捨てないでおく。でもね! 次来た時は絶対に捨てるからね!」
「じゃあ俺も次は服ごしではなく、直接揉めるよう精進します」
「つ、次とかないわよ、この変態っ! 覚えときなさいよ、ばかっ!」
かなみはアッカンベーすると、真っ赤な顔のまま逃げるように部屋を後にしたのだった。