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2025年02月02日
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【ツンデレとプールへ行ったら】
2013年08月14日
夏なのでプールに行きたい。暑いからね。それだけの理由だからね。別に肌色占有率の変遷とかに興味はなくてね。スク水がどうとかどうでもよくてね。個人的には旧スクが一番好きだけどそれはどうでもよくてね。
「……後半に行くに従って本音が漏れていくのはどういう仕様なのか」
いつもの半眼がジロリと俺を睨み上げる。今日もちなみは鋭くて困る。というより、気づくと考えをひとりごちている俺に問題がある。
「べ、別に本音というわけではなくてだな……あ」
軽く声をあげると、ちなみは不思議そうに小首を傾げた。
「こほん。……か、勘違いしないでよねっ! 別に本音なわけじゃないんだからねっ!」
「…………。ばーか」
たっぷり間をとったあと、ちなみは全力で俺を馬鹿にした。
「否定はできない。だけど、我慢できなかったんだ。どうしてもツンデレ語を使いたかったんだ……!」
「……どうしてタカシはこうも馬鹿なのか。夏か。夏のせいなのか。なら夏のない国へ行って戻ってくるな。迷惑だ」
言葉以上に迷惑そうなしかめっ面で、犬でも追い払うかのようにシッシってされた。シッシって。
「ウッシッシ。なんちて。うひゃひゃ」
「……そこまで追い詰められてたなんて。……私にできることなら、なんでもやる。……だから、リハビリ、がんばろ?」
結果としては大成功なのだが、ちなみの哀れみの視線がどうにも辛いよ。つーか、なんだ、リハビリって。
なんでもやるとか言ってたので、一緒にプールに来てみた。
「も、もちろん水着DEワッショイですからね! プールですから! プールなので水着も変じゃないですから! もちろん将来的には一緒にお風呂に入った時に水抜き穴から手を入れる予定ですから、これは予行演習ということでよろしいでしょうか」
プールの監視員達からのものすごい熱視線を受けながら、一人ちなみを待つ。女性の着替えは時間がかかるものだ、男たるもの、どっしりと構えていたいものだ。
「さてはて、ちなみはまだかな?」ソワソワソワソワソワソワソワソワ
「……その動きは法に引っかかる。即刻やめるべき」
「お、俺のどっしりとした構えが犯罪だと!? どういう了見……」
くるりと振り向くと、そこに紺色の人魚がいた。
「……いったいどこにどっしりなんて擬音が存在するのか。……外宇宙にまで探検しても見つからないに決まってる」
いた。ここに俺の天国が。旧スク天国が今ここに。
「……じ、じろじろ見ない。ばか」
「ああ。あああ。ああああ」
肩にかけてたパーカーを着られてしまった。うすぺたい乳を隠され、これでは魅惑のデルタ地帯を鑑賞することしかできない。
「まあ、それは、それで」
「……う、うう。一体どこまで変態なら気が済むのか」
「はっ」
気がつけば、ちなみの下半身に鼻息が届くほど間近に迫り、全力で凝視していた。恥ずかしげな顔でこちらをちらちら見ているちなみが可愛い。
「恐るべきは、スク水の魔力か……!」
「……いや、衆人環視の中、女の子の下半身を凝視できるタカシの精神力の方が恐ろしいと思う」
成る程ちなみの言う通り周囲は夏休みということで人でごった返しており、さらにこちらをちらちら見つつヒソヒソ囁き合っており、さらにさらに言うならちなみは一見小学生的であり、これはもう完全に俺が変質者。
「ち、ちなみ、友人のちなみ。向こうの人があまりいないプールに行こう、すぐに行こう。楽しく一緒に遊ぶんだねぇー」
「……ちなみに、また、あの白いの飲ませるの?」ウルウル
はい出た、出ましたよちなみさんの秘技、幼女変化! 子供っぽく振る舞い、俺に致命的ダメェジを与える秘技! 主に社会的に致命的な被害があり、結構な確率で通報されるのでやめてください。
というわけで、もう何を言っても俺が加害者のイメージは覆そうになかったので、ちなみを脇に抱えて全力ダッシュ。
「お。おお。おおおー」キラキラ
抱えられたちなみは楽しそうで何よりだが、監視員達が無線で何か連絡をとりあってるのが視界の端に映ってたのがどうにも気にかかる。
「はぁはぁ……。あのなあ、ちなみ。ああいう冗談はお前の容姿と相まって洒落になんねーから、なるべく抑えるようにしてくれませんかねェ……?」
「……善処する」
「この政治家め」
「……秘書がやりました」
「政治家だ!」
「……えっへん」
よく分からんが胸を張っていばってるちなみの頭をなでつつ、ふと先ほどの発言を思い出す。
「つーか、白いのを飲ませるってなんだ。そんな非道なマネしてねーぞ」
「……前に、タカシの家に行った時に、カルピス飲んだ」
「あー。なんつーベタな」
「……白くてベタベタした液体を、タカシが無理やり私に飲ませた」
「無理やりじゃねえ。おかわりしてたし」
「……普段飲まないから、結構おいしかった。次遊びに行ったら、また出せ。濃いのな、濃いの」
「あー分かった分かった」
なんとなくちなみをなでながら周囲を見回す。ここはただの大きなプールだ。しかも結構な深さがあるため、人影は先ほどのレジャープールに比べ、あまりない。
「俺なら肩まで浸かる程度で済むが、ちなみのような幼女気質の人間の場合、ものの数秒で頭まで沈み溺れ死ぬこと請け合い」
「……その場合、絶対に道連れにしてやる」
手近な椅子にちなみのパーカーをかけてから、暗い笑みを浮かべる死神を連れ、件の深いプールへ。
「おお。こりゃ結構深いな。大丈夫か、ちなみ?」
「……へ、へっちゃら」
と口では言ってるが、常に泳いでいないといけないため、結構大変そうだ。顔にいつもの余裕がない。
「大丈夫か? 他のトコ行くか?」
「へっ、へっちゃらと、言ってる!」
「へーへー。疲れたら早めに言えよ、素早く上から押さえつけるから」
「……今こそ、道連れの時……!」
「うわっ」
がしっ、とちなみが抱きついてきた。……いや、今の擬音は間違いだ。
ふにょん、とちなみが抱きついてきた。
「え、ええと、ええぇとだな、その、間違いでなければ、その、俺の、俺様の黄金の右腕にだな、その、ふにょりと柔らか物質的な物が」
「…………」
ちなみは黙って頬を染めている。困ったような顔で、こちらをちらりちらりと伺っている。そんなの、こちらも困ってますよ!
「まあ、その、事故的なものですし、ええと、その」
「……う、うぅ。貧乳のくせにあててんのよをするとか笑止、とタカシは言う」
「言ってねえ!」
「……え、ええと。……一応、私のおっぱいです」
「分かってるよ! 何の謙遜だよ! びっくりしてんだよ!」
「……あまりの小ささに?」
「女体の柔らかさに! あっ」
「…………」
言わなくていいことを言いました。なぜなら、ちなみの顔がもう目に見えて赤くなっているから、言わなくていいと分かったのです。
「……えろ。タカシのえろ。えろー」
片手で俺に抱きついたまま、空いてる手でちなみがパシャパシャと俺に水をかけてきた。
「すいません。すいません」
「……このままではプールの中で犯されてしまう。エロ同人みたいに」
「そんな同人見たことねえ。AVではあるが」
冷静になりました。色々どうでもいい。
「はぁ……何もしてねえのに疲れた。しばらく泳ぐのはいいや、ぷかぷかと漂うことにする」
「……さながらタカシの人生のよう」
「人の人生をクラゲみたく言うない」
「……ふふり」
薄く笑って、俺の隣にぷかりとちなみが浮く。……が、すぐに沈んでしまう。
「……むぅ。浮かない」
不満げな顔で、ちなみが浮上してくる。
「脂肪が少ないと浮きにくいらしいな。これは全く関係ないが、おっぱいってのは脂肪の固まりらしいな」
「…………」
ちなみが無言で自分の胸をぺたぺた触った。心なしか悲しげだ。だがそれも一瞬のことで、こちらを見るとニヤッと笑った。
「……そのおっぱいを、タカシは先程どう評価したっけ?」
「ぐぅ」
正直ぐうの音も出ないが、悔しいのでぐうの音を絞り出す。
「……ふふり」
満足げに微笑み、ちなみはさっきと同じように俺の腕に抱きついた。
「お、おい」
「……別に、抱きつきたいわけじゃないもん。……脂肪が少ない、スレンダーな体つきだから、無駄に脂肪がついてるタカシにくっついて、一緒に浮かんでるだけだもん」ギュー
「別に俺はデブじゃないデブー」
「……急にデブ語を駆使しだした。はろはろー」ムニー
「腹を押すない。あ、そだ。浮き輪でも買うか? それなら俺にくっついてなくても浮かぶと」
「いらない」
「え、いや、でも」
「節約は大事。いらない」
「や、そんな高いものでもないし、それくらいなら」
「いらない」キッパリ
「……まあ、そこまで言うなら」
普段のだらだらとした口調ではなく、はっきりいらないとちなみが言う。経済観念のしっかりした娘さんで感心する。将来はこういうのを嫁にしたいね。貧乳だし。
「ん。いらない。節約大事。ちょー大事」ギュー
「……気のせいか、それ以外の何らかの目的を感じるのだが、気のせいだろうか」
「気のせい。タカシは勘が鈍いのだから、気のせいに決まってる」ギュー
「そうなのだろうか」
「そうなのだ」ムギュー
「先程から抱きつくというよりしがみつくという方が相応しいほどくっつかれてるのだが、それは関係ないのだろうか」
「ない。一切ない。これはただの浮き輪代わりにタカシを利用してるだけ。まったく、すぐ勘違いをする。これだから童貞は困る」
「妄想の中では億を超えるほど女性と交わってますが!?」
「……それで、一体どういう反応を期待しているというのか」
「『超すごい。抱いて』という反応」
「…………。超すごい。抱いて」
一瞬ものすごい蔑みの視線を受けたが、それでも言ってくれるちなみの優しさに感激するが、それ以上のむなしさに襲われたのでどうにもできない。
「……期待通りの反応なのに、どうして悲しそうなのか」
「よく考えたら全然すごくない上に、こんなので抱いてと言う人間なんて存在しないと気づいたから」
「……当然だ、ばーかばーかばーか。どざえもんになって死ね」
「今この瞬間に僕土左衛門になったら、もれなくお前もぼくドラえもんの妹になるがよろしいか?」
「……脅迫された。……水中でえっちなことをされるに違いない」
「してねぇ」
などと益体もないことをのたのた言い合いながら、ちなみにしがみつかれたり背中に乗られたりされました。色々柔らかかったです。
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【ツンデレの頭を執拗になでたら】
2013年07月14日
どうにもかなみが可愛いので隙を見てはなでてしまい、その度に殴られるので辛い。
「痛いよ……身体も心も痛いよ……」(落涙しつつ)
「あにが痛いよー、よっ! こっちはアンタなんかに毎日毎日なでられて頭が腐りそうよッ!」
「うわ、汚え」シッシ
「例えよっ! 手で払うなっ!」
頬をつねられた。やめてください。
「しっかし、なんで毎回毎回殴られてんのにめげないかねー……。アホは厄介ね」
「関西人にとってアホという呼称は一種の親愛表現だとか。世界という大きな括りで見れば、日本も関西もほぼ同じ。なら、かなみも関西人と言っても過言ではないだろう。つまり、関西人のかなみにとって、先の発言は俺への親愛表現、即ちプロポーズと見た。謹んで応諾させていただきます」
「にゃー」(目潰し)
「うっぷす」
無茶が過ぎたようだ。
「今日も無駄に屁理屈こねくり回して……。その労力を別のことに使えないの?」
「使える。具体的には、これに」ナデナデ
「あっ、なでるな、ばかっ!」
一瞬の隙をついてかなみの頭をなでる。幸せ。
「このっ、離せっ、ばかーっ!」
「はっはっは。かーわぅーい」ナデナデ
すばやさのたねを過剰摂取した気がする俺なので、素早くかなみの背後に回って抱きつき、動きを抑制することも容易い。ただ、あとで殴られるのでほどほどにしないといけない。その辺りに見極めが難しいが、数々の修羅場をくぐり抜けた俺には問題ない。
「だーっ! もうっ、なでるなーっ!」ベコボコ
「ふべべ」
失敗。振りほどかれて殴られた。危険なのは見抜けるのだが、どうにもいい匂いがするし柔らかいし幸せだし、という様々な理由で危険域を超えてもなで続けてしまうので、毎度殴られます。
「ったく……なんなのよ、その私に抱きつく時だけ発揮される無駄な素早さは」
「突出した痴漢の才能があるんじゃないか?」
「……まさかとは思うけど、他の子とかにしてるんじゃないわよね?」
ジローッとした目で睨まれる。いわゆるジト目だ。かわいい。
「まさかまさか。かなみ以外に興味あるわけないだろ」
「んな……っ!」
なんかかなみが赤くなった。かわいい。
「そっ、なっ、あ、アンタみたいなのに、そんなこと言われても、その、あの、えと……う、うぅー」
「ロリコンだからつるぺたにしか興味ないんだ」
「…………」
「ロリコンだからつるぺたにしか興味ないんだ」
「二回言うなッ!」
「聞こえてないんじゃないかと思ったんです。善意なんです」
「絶対嘘だ……」
またジト目が出ました。かわいいです。
「……あのさぁ、怒ってる人を相手に、なんで平然となでられるの?」
「ん? おお、言われてみれば確かに俺の手がかなみの頭をなでていますね。可愛かったので、つい」
かなみのムスーっとした表情はそのままに、頬だけが赤くなっていく。
「うるさい。可愛いとか言うな。ばか。しね」
「嫌です」
「言うな。なでるな。こっちをじーっと見るな」
「いいえいいえいいえ」
「うー」
かなみが困った顔をした。困らせるのは本意ではないので、かなみから手を離す。
「あっ……」
「えっ」
「何も言ってない!!!」
無茶が過ぎるが、追求するのも色々とアレなので、やめておく。
「そ、そうな。何も言ってないな」
「うん、言ってない。別に寂しくない」
「…………」
「?」
「あー……うん。何も問題ない」
「うん? ……!」
気づいたようだ。目に見えてかなみが朱に染まっていくので困る。
「あー……えっと。どうすればいいのだ?」
「うるさい。口を開くな。何か言ったら殺す」
文言だけならただの殺し屋の台詞だが、現実は顔を真っ赤にした女の子なので、俺が喜ぶだけです。
「分かった、死ぬのは嫌なので何も言わない」
「ん。物分かりのいい奴でよかった。…………」
「?」
「……だ、だから、特別に、もっかいだけ、なでなでを許可する」
一呼吸おいて、ゆっくりとかなみがそう言った。
「あ、大丈夫です」(NOという感じの手を突きつけながら)
なので、悪逆無道を実行する。
「…………」
かなみの顔が驚愕を貼りつけたまま、時間を止めた。
「…………」ウルウル
と思ったら、ゆっくりと目に涙が溜まりだしたではないですか!!!
「モチロン冗談ですがね! 悪質な嘘ですがね! すいません言いたかっただけなんです泣かないでください!!!」ナデナデナデ
「な、泣いてない、泣いてないわよ! こんなので泣くわけないじゃない!」(目をこすりながら)
「あーはいはい」ナデナデ
「馬鹿にしてる。絶対馬鹿にしてる……」
なんかブチブチ言っては俺を睨む子供みたいなのを、しばらくなでてました。
【素直ヒート 試作】
2013年07月04日
「おい、そこのテメェ! 私と合体しろォォォォォッッッ!」
「ひぃ、痴女!?」
学校から帰ってる最中、とんでもないのに出くわした。
「痴女じゃねえ! これは! この叫びは! お前への溢れんばかりの愛が! 私に叫ばせているだけだ! さあ、脱げ! 今すぐ全部脱げェェェェェッッッ!!!」
「通報していい?」(スマホ片手に震えながら)
「やめて」
詳しく話を聞くと、俺に一目惚れしたとか何とか。
「はぁはぁ、成る程。眼科を受診することをオススメします」
「私の視力は左右ともに6.0だ!」
「お前それサバンナでも同じ事言えんの?」
「とにかく! 私がお前に惚れていることは、嘘偽りのない真実だァァァァァ!」
「超うるさい」
「これは! 私の溢れるパッションが! 魂の律動が! お前への愛が! 言葉となり世界を震わせているだけだ!」
「ふむー。花のように愛らしい少女に好かれるのは大変喜ばしいことなんだが、精神疾患を患ってる奴が相手となると、話は別だなァ」
「は、花みたいとか言うな///」
「なんか急にモジモジしだした! これは可愛い! 直喩した甲斐があった!」
「う、うー///」
「ただ、精神疾患のことに対して何の言及もないのは、気づかなかったのか、それともガチなのであえて無視したのか、そのどちらか判明しないとこれ以上踏み込めません」
「前者に決まっているだろう! 私は正常だ!」
「しかし、頭がオカシイ奴は決まってそう言うぞ? しかしその場合俺も頭がおかしい奴にカテゴライズされ、更に言うなら世界はそのカテゴリでいっぱいとなり地球滅亡へまっしぐらなので、その説はお断りさせて頂きます」ペコリ
「お前は面白いな!」
「…………」
「ん? どうした?」
「大抵の奴は、俺がこういう言動をすれば引きつった笑いをして去っていくものだが、お前は変わらないんだな」
「私には私の信念があり、お前にはお前の信念がある! その信念を、どうして笑い飛ばせようか!」
「い、いや、そんな御大層なものではないんですが……。ただの趣味というか、クセというか、脊髄反射というかその」
「たとえ他者がどう思おうとも諦めないその気骨……気に入った! さらに気に入ったぞ! 脱げ! さあ、私に種を仕込めッッ!!!」
「通報していい?」(二回目)
「やめて」(二回目)
このお嬢さんはすぐに人を裸にしようとするので、それはいけないということをこんこんと説明する。
「そ、それくらい私にだって分かっている! ただ、私の情熱が、理性を放逐するのだ! 仕方がないのだ! あと、正座もうやめていい?」
「ダメ」
「うぐー……」ションボリ
「はぁ……。しかし、すごい奴と知り合っちゃったなー。タイムマシン使って数十分前に戻ってなかったことにしたいよ」
「案ずるな! ずっとずっと前からお前の観察は続けていた! 今更多少戻ろうとも、結果は変わらないぞ!」
「アッパー方向のストーカーかぁー。うあー」
「観察は完璧、対策も完全! お前好みの女性になっているハズだ!」
「いや、確かに見た目はどストライクですが、性格がその、ええと、あのー」
「花丸合格か! 即お嫁さんか! 努力の甲斐があったというものだ! ふふ……ふははははッ!!」
嬉しそうに高笑いしているので、どうにも言い辛い。
「そのくらい頑張ったし、正座やめていい?」
「ダメ」
ちょこんと小首を傾げる所作は鼻血が出そうなほど可愛いが、それはそれ。
「足が、足がぁ……」(半泣き)
「まあ、話は分かった」
「じゃあ嫁か!? 子作りか!? ここでか!?」
「とりあえず、知り合いからで」
「普通、こういう時は友達だろう!?」
「じゃあ、友達で」
「うんっ! ……む?」
何か思案顔だったが、これからヨロシクという名目で握手したら、ニマニマしだしたので、よしとしよう。
【素直クール 醤油】
2013年07月04日
クーが遊びに来たいと言うのでyes! come on! と流暢な英語で受け入れた結果、俺の部屋の人口が二人になりました。
「来たぞ」
「そうですね」
「どうだ? クーがお前の家にいて嬉しいか?」
「そりゃ可愛い女の子が家に来たら、誰しもが嬉しいだろ」
「クーはお前が嬉しいかどうか聞いているのだ。凡百が好ましく思おうとも、お前が好まなければ何の意味もない」
「ああ……成る程。うん、嬉しいぞ」
「そうか!」
クーは全力で喜んだ。こういう感情にまっすぐなところは俺にはないので、非常に好感が持てる。が。
「じゃあ、嫁にしろ」
「断る」
あまりにまっすぐすぎるのも難点だなあ、と思いながら今日もNOな感じの手を出して拒否する。
「……?」
「いや、そこで不思議そうな顔をされても」
「……ああ、聞こえなかったのか。うむ、なら仕方ないな。なら、もう一度だけ言おう。クーを嫁にしろ」
「断る」
「…………」
クーが悲しそうな顔をした。かわいい。
「どうして断る。何が不満だと言うのか。胸か。胸なんだな。どうして男というのはあんな脂肪の塊に固執する。私に言わせてもらえば、あんなもの重いだけで何の得もないぞ」
「無き者が言っても僻みにしか聞こえないぞ」
「無ではない! 少しはある! ……あるぞ? たぶんある。心眼を用いれば今にも成長せしめん息吹を感じ取れるはずだ」
「気をつけ」
「はっ」キヲツケー
「…………。完全に平らですが」
「気にするな」(半泣き)
「お前が気にしてるだろーが! 泣くほどじゃないだろ!」ナデナデ
「泣いてない。泣いたとしても、少ししか泣いてない。涙もあまり出てないし」コシコシ
「ああもう。ああもう」ナデナデ
「ん。よし。なでなでされたので、少し楽しくなってきた。この調子で嫁にしろ」
「あ、大丈夫です」
「…………」(半泣き)
「だーかーらっ! 泣くなっ!」ナデナデ
「泣いてない。まだ泣いてない。ちょこっとしか涙出てない」グシグシ
「はぁ……なんでこんなのが学年主席かねー。神様の野郎、こいつのパラメーター配分間違えたな」
不快になったのでクーの頬を押す。
「む。何をする」
「いやがらせ」プニプニ
「しかし、私は楽しいぞ?」
「Mか。俺はSなので、好都合です」プニプニ
「む。……むう。……むむむ」
「嫌な予感しかしねえが、一応聞いておこう。何を悩んでいる」プニプニ
「いや、お前に嬲られるのは覚悟の上だから構わないのだが、器具を用いられるのは少し躊躇があるな、と。これでも女なもので、身体に傷がつくのは少し嫌だな、と。まあ、些末事だ。気にするな」
「色々と突っ込みどころがありますが、とりあえず。なんかとんでもないハードSMを想像しているようですが、そんなことしませんよ? こんなふうに軽い嫌がらせをする程度ですよ? 女性を叩くとか無理です」プニプニ
「なんだ。それは幸いだ。それで、いつまでクーの頬を押しているのだ」
「お、嫌になりましたか?」ワクワク
「いや、永遠にしてもらいたいが?」キョトン
「…………。満足しました」ションボリ
「そうか……」ションボリ
Wションボリが誕生。クーといると、どうにもペースを崩される。それが嫌というわけじゃないけれど。
「はぁ。なんか疲れたし、何か飲み物でも取ってくるよ。クーは何がいい?」
「口移しをしてくれるなら何でもいい」
「分かった。んじゃ醤油な」
「…………。…………。…………っ! ……わ、分かった」
「熟考したうえで受け入れるなッ! 断れ!」
苦渋の表情を浮かべるクーのおでこをデコピンする。
「あうっ。何をする」
「馬鹿にはデコピンしていいハウスルールなんだ」
「むぅ。これでも才媛で通ってるのだが、まだお前のお眼鏡には適わないか。引き続き努力を続けねばな」
「いや、クーは頭の出来はいいんだが、馬鹿なんだ」
「……? よく分からん。どういうことだ?」
「俺と関わらなけりゃ普通、いや、かなりの天才なのに、なんで俺といるとこんな残念な感じになるかねェ……?」ナデナデ
「残念とはどういう意味だ? あと、もっといっぱいなでろ」ギュー
「抱っこは許可してません」デコピン
「にゃっ。……? ……ああ! え、えーと、……あ、あててんのよ?」
「古い。あと、あててなかった」
「あてていたぞ?」
「胸骨はあてられた」
「胸の話だ!」
「じゃあオレンヂジュースでも持ってくるよ」
「また胸を馬鹿にするだけして去るのか! ずるいぞ!」
プンスカしながらも律儀にちょこんと正座して待ってるクーは可愛いなあと思ったので、早めに戻ろうとひそかに思った。
「来たぞ」
「そうですね」
「どうだ? クーがお前の家にいて嬉しいか?」
「そりゃ可愛い女の子が家に来たら、誰しもが嬉しいだろ」
「クーはお前が嬉しいかどうか聞いているのだ。凡百が好ましく思おうとも、お前が好まなければ何の意味もない」
「ああ……成る程。うん、嬉しいぞ」
「そうか!」
クーは全力で喜んだ。こういう感情にまっすぐなところは俺にはないので、非常に好感が持てる。が。
「じゃあ、嫁にしろ」
「断る」
あまりにまっすぐすぎるのも難点だなあ、と思いながら今日もNOな感じの手を出して拒否する。
「……?」
「いや、そこで不思議そうな顔をされても」
「……ああ、聞こえなかったのか。うむ、なら仕方ないな。なら、もう一度だけ言おう。クーを嫁にしろ」
「断る」
「…………」
クーが悲しそうな顔をした。かわいい。
「どうして断る。何が不満だと言うのか。胸か。胸なんだな。どうして男というのはあんな脂肪の塊に固執する。私に言わせてもらえば、あんなもの重いだけで何の得もないぞ」
「無き者が言っても僻みにしか聞こえないぞ」
「無ではない! 少しはある! ……あるぞ? たぶんある。心眼を用いれば今にも成長せしめん息吹を感じ取れるはずだ」
「気をつけ」
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「気にするな」(半泣き)
「お前が気にしてるだろーが! 泣くほどじゃないだろ!」ナデナデ
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「ん。よし。なでなでされたので、少し楽しくなってきた。この調子で嫁にしろ」
「あ、大丈夫です」
「…………」(半泣き)
「だーかーらっ! 泣くなっ!」ナデナデ
「泣いてない。まだ泣いてない。ちょこっとしか涙出てない」グシグシ
「はぁ……なんでこんなのが学年主席かねー。神様の野郎、こいつのパラメーター配分間違えたな」
不快になったのでクーの頬を押す。
「む。何をする」
「いやがらせ」プニプニ
「しかし、私は楽しいぞ?」
「Mか。俺はSなので、好都合です」プニプニ
「む。……むう。……むむむ」
「嫌な予感しかしねえが、一応聞いておこう。何を悩んでいる」プニプニ
「いや、お前に嬲られるのは覚悟の上だから構わないのだが、器具を用いられるのは少し躊躇があるな、と。これでも女なもので、身体に傷がつくのは少し嫌だな、と。まあ、些末事だ。気にするな」
「色々と突っ込みどころがありますが、とりあえず。なんかとんでもないハードSMを想像しているようですが、そんなことしませんよ? こんなふうに軽い嫌がらせをする程度ですよ? 女性を叩くとか無理です」プニプニ
「なんだ。それは幸いだ。それで、いつまでクーの頬を押しているのだ」
「お、嫌になりましたか?」ワクワク
「いや、永遠にしてもらいたいが?」キョトン
「…………。満足しました」ションボリ
「そうか……」ションボリ
Wションボリが誕生。クーといると、どうにもペースを崩される。それが嫌というわけじゃないけれど。
「はぁ。なんか疲れたし、何か飲み物でも取ってくるよ。クーは何がいい?」
「口移しをしてくれるなら何でもいい」
「分かった。んじゃ醤油な」
「…………。…………。…………っ! ……わ、分かった」
「熟考したうえで受け入れるなッ! 断れ!」
苦渋の表情を浮かべるクーのおでこをデコピンする。
「あうっ。何をする」
「馬鹿にはデコピンしていいハウスルールなんだ」
「むぅ。これでも才媛で通ってるのだが、まだお前のお眼鏡には適わないか。引き続き努力を続けねばな」
「いや、クーは頭の出来はいいんだが、馬鹿なんだ」
「……? よく分からん。どういうことだ?」
「俺と関わらなけりゃ普通、いや、かなりの天才なのに、なんで俺といるとこんな残念な感じになるかねェ……?」ナデナデ
「残念とはどういう意味だ? あと、もっといっぱいなでろ」ギュー
「抱っこは許可してません」デコピン
「にゃっ。……? ……ああ! え、えーと、……あ、あててんのよ?」
「古い。あと、あててなかった」
「あてていたぞ?」
「胸骨はあてられた」
「胸の話だ!」
「じゃあオレンヂジュースでも持ってくるよ」
「また胸を馬鹿にするだけして去るのか! ずるいぞ!」
プンスカしながらも律儀にちょこんと正座して待ってるクーは可愛いなあと思ったので、早めに戻ろうとひそかに思った。
【雪ねえ 朝の時間】
2013年06月17日
朝起きると妙に布団が温かい心地で、ああ春なんだなァと思ったが、実際のところは雪ねえが俺の布団に潜り込んでおり、さらに俺を至近距離でじーっと見つめていたので、朝から心臓が止まります。
「お姉ちゃんを残して死ぬなッ!」ビビビビビ
ねずみ男ばりのビンタで生還。助かった。
「あ~……朝から死んだ」
「ううううう~……驚かすな、馬鹿彰人ぉ……っ!」
黄泉路から戻ってくると、姉が涙と鼻水まみれで一寸怖い。
「体液過剰ですね、雪ねえ」
「誰のせいだと思っている!」
軽いボケを返そうと思ったが、泣きながら俺を思い切り抱きしめる姉の想いに、しばし自分を忘れて抱きしめ返す。
「……はぁっ。落ち着いた」
ややあって、雪ねえは俺を抱きしめるのをやめると、袖で自分の顔を拭いた。どうにも女らしさが欠けているように思えるが、言うと折檻されるので言わない。
「なんというか、その、ごめんな、雪ねえ。次からは朝起きたら死なないようにするよ」
「そうしてくれると非常に助かる」
我ながらなんて台詞だと思ったが、悲しいことに事実なので素直に伝える。
「そのためにも、布団に忍びこむのはやめてください」
「断る」
今日も雪ねえは男らしかった。
「さて。じゃあ抱っこしろ」カムカム
「さっきしましたが」
「何を言っている。さっきのは再開の抱擁だろう。今度はおはようの抱っこだ。なでなでも忘れるな」
「おはよう、雪ねえ」(なでなで)
「それは枕だッ!」
「急に小さくなったから、おかしいと思ったんだ」
「妄言はいいから抱っこしろ。なでなでしろ。ちゅーもしろ」
「増えた」
「増えてない」
言い切りやがった。
「はぁ……さて! 朝食を作るか!」ツヤツヤ
「解せぬ」
朝から雪ねえに抱っこしてなでなでしてほっぺにちゅーして疲れた。いや、別に嫌という訳ではないんですが、主導権って何って感じなので、男として色々ウウムというか、眠い。
「zzz」
「こら彰人、机の上に頭を載せるな。寝るならちゃんとお姉ちゃんの膝枕で寝ろ」
「あっ、雪ねえ頭おかしい」
またしてもビビビのねずみ男が現れたので、素直に膝枕される。
「ふふ……本当に彰人は甘えん坊だなぁ。もう高校生なのだから、いつまでもお姉ちゃんっ子だったらダメだぞ?」(なでなで)
朝食を作るのを中断し、雪ねえは俺に膝枕をしかけた。今日も遅刻の予感。
「うーん、それは確かにそうだね。よし、今日から自立しよう。雪ねえ、今日から俺に構うな」
「偉いぞ、彰人! 大人っぽくて素敵だぞ!」(なでなで)
にっこり笑って俺の頭をなでているが、それは雪ねえにとって構うには入らないようだ。
「さて、それじゃ朝ごはんを作ろう。お姉ちゃんが料理するから、彰人はお姉ちゃんを後ろから抱っこしろ」
「構うなって言ったのに。そして、それは邪魔にしかなってないと思うのだが」
「何を言うか! これは構うとかではなく、お手伝いだからいいのだ! そして、彰人がお姉ちゃんにくっつくことにより外部エネルギーが補給され、お姉ちゃん力が5倍に膨れ上がるんだぞ!」
「全体的に頭悪いね、雪ねえ」
頬をつねられたので、雪ねえを後ろから抱っこする。
「ん~♪」スリスリ
つもりだったのだが、どういうことか雪ねえが180度回転しており、姉弟で抱き合う不思議な謎展開が披露されております。
「雪ねえ、それでは料理ができないと思うのだが」
「もう料理とかどうでもいい。このまま一生過ごしてたい」スリスリ
「いかん、このままでは雪ねえがダメ人間に! 俺の専売特許を奪われてなるものか!」
という固い決意の元、頑張って雪ねえから離れる。
「ああっ、彰人、彰人が! 彰人の体温がぁーっ!」
「いいから。いいから朝飯食って学校行くぞ。遅刻しますよ旦那」
「お姉ちゃんは彰人と抱っこしてたいのに……酷いぞ、彰人!」プンプン
「はいはい。いいから準備する」(なでなで)
「うぅー」
不満がる雪ねえをどうにかなだめすかし、朝飯の準備にかかる。
「玉子焼きでいいか、彰人?」
「うん」
雪ねえが玉子焼きを作るなら、俺は味噌汁でも作るか。
「さて、何か具あったかなァ……」
「おい彰人、何をしている」
「冷蔵庫に頭を突っ込んで味噌汁の具を探している最中ですが、何か逆鱗に触れましたか」ビクビク
「お姉ちゃんの背中を守らないとは何事だ!」ドカーン
「え、それまだ続いてたの?」
「やらないなら今日学校に行った際、休憩時間の度に彰人の教室へ行って彰人に抱きつく」
「雪ねえは俺が守る!!!」
本気の目だったので、雪ねえの背中に抱きつく。この姉は以前宣言通りの事件を起こしたことがあり、それ以前でも結構なシスコンと周知されていたのだが、今では病的なシスコンと認知される始末。
「違うんだ……シスコンなのは否定しないが、病的なそれはむしろ雪ねえの方なんだ……」ブツブツ
「後ろから彰人の念仏が聞こえるなんて、なんて素敵な朝なんだ!」キラキラ
この姉ちょお強い。勝てる気がしない。
雪ねえを抱っこしたりされたりなでなでしたりされたりほっぺにちゅーしたりされたりご飯を食べたり食べさせられたりしたら、今日も遅刻寸前。
「毎日早起きしてるのになァ……」
「何をぶつぶつ言っている。ほら、そろそろ家を出るぞ」ペロペロ
「あ、うん」
一見まともなことを言ってるが、実は俺の頬をぺろぺろ舐めながらの発言なので、俺の姉はもうダメかもしれない。
「ほら、シャツが出てるぞ。もう、お姉ちゃんがいないと本当に彰人はダメだなあ」
言葉とは裏腹に、雪ねえはニコニコしながら俺の服装を整えた。
「ほら、できたぞ。整えてやったから、お姉ちゃんの頭をなでろ」ワクワク
「偉いぞっっっ!」ナデナデ
「それは枕だっ! どこから持ってきた!?」
「こんなこともあろうかと、秘密の隠し場所に枕を置いておいたんだ。天丼が大好きなんだ」
「その労力を他に回せばいいものを……それより、そんな天丼が好きなら、今日の晩御飯は天丼にするか。彰人のことは全部知ってるつもりだったが、まだまだ知らないことがあるな」
繰り返しの意味での天丼ではなく、パクパク食べる方の天丼と採られてしまった。でも、そっちの天丼も好きだし、いっか。
「それより、お姉ちゃんへのなでなでがまだだぞ。早くしろ」ワクワク
「もうしました」
「枕をなでただけだろうっ! お姉ちゃんをなでろっ!」
「そういえば今日体育があったなー。運動苦手だなー」
「なでないと彰人の体育の時間に乱入してちゅーする」
「雪ねえは俺の服を整えるので偉いなあ」(なでなで)
この姉はすぐに脅迫するので怖い。
「えへ、えへへ……彰人の世話はお姉ちゃんの仕事だから、当然のことなんだぞ?」
ただ、まあ、やたら嬉しそうなので、俺も満更でもない。
「お姉ちゃんを残して死ぬなッ!」ビビビビビ
ねずみ男ばりのビンタで生還。助かった。
「あ~……朝から死んだ」
「ううううう~……驚かすな、馬鹿彰人ぉ……っ!」
黄泉路から戻ってくると、姉が涙と鼻水まみれで一寸怖い。
「体液過剰ですね、雪ねえ」
「誰のせいだと思っている!」
軽いボケを返そうと思ったが、泣きながら俺を思い切り抱きしめる姉の想いに、しばし自分を忘れて抱きしめ返す。
「……はぁっ。落ち着いた」
ややあって、雪ねえは俺を抱きしめるのをやめると、袖で自分の顔を拭いた。どうにも女らしさが欠けているように思えるが、言うと折檻されるので言わない。
「なんというか、その、ごめんな、雪ねえ。次からは朝起きたら死なないようにするよ」
「そうしてくれると非常に助かる」
我ながらなんて台詞だと思ったが、悲しいことに事実なので素直に伝える。
「そのためにも、布団に忍びこむのはやめてください」
「断る」
今日も雪ねえは男らしかった。
「さて。じゃあ抱っこしろ」カムカム
「さっきしましたが」
「何を言っている。さっきのは再開の抱擁だろう。今度はおはようの抱っこだ。なでなでも忘れるな」
「おはよう、雪ねえ」(なでなで)
「それは枕だッ!」
「急に小さくなったから、おかしいと思ったんだ」
「妄言はいいから抱っこしろ。なでなでしろ。ちゅーもしろ」
「増えた」
「増えてない」
言い切りやがった。
「はぁ……さて! 朝食を作るか!」ツヤツヤ
「解せぬ」
朝から雪ねえに抱っこしてなでなでしてほっぺにちゅーして疲れた。いや、別に嫌という訳ではないんですが、主導権って何って感じなので、男として色々ウウムというか、眠い。
「zzz」
「こら彰人、机の上に頭を載せるな。寝るならちゃんとお姉ちゃんの膝枕で寝ろ」
「あっ、雪ねえ頭おかしい」
またしてもビビビのねずみ男が現れたので、素直に膝枕される。
「ふふ……本当に彰人は甘えん坊だなぁ。もう高校生なのだから、いつまでもお姉ちゃんっ子だったらダメだぞ?」(なでなで)
朝食を作るのを中断し、雪ねえは俺に膝枕をしかけた。今日も遅刻の予感。
「うーん、それは確かにそうだね。よし、今日から自立しよう。雪ねえ、今日から俺に構うな」
「偉いぞ、彰人! 大人っぽくて素敵だぞ!」(なでなで)
にっこり笑って俺の頭をなでているが、それは雪ねえにとって構うには入らないようだ。
「さて、それじゃ朝ごはんを作ろう。お姉ちゃんが料理するから、彰人はお姉ちゃんを後ろから抱っこしろ」
「構うなって言ったのに。そして、それは邪魔にしかなってないと思うのだが」
「何を言うか! これは構うとかではなく、お手伝いだからいいのだ! そして、彰人がお姉ちゃんにくっつくことにより外部エネルギーが補給され、お姉ちゃん力が5倍に膨れ上がるんだぞ!」
「全体的に頭悪いね、雪ねえ」
頬をつねられたので、雪ねえを後ろから抱っこする。
「ん~♪」スリスリ
つもりだったのだが、どういうことか雪ねえが180度回転しており、姉弟で抱き合う不思議な謎展開が披露されております。
「雪ねえ、それでは料理ができないと思うのだが」
「もう料理とかどうでもいい。このまま一生過ごしてたい」スリスリ
「いかん、このままでは雪ねえがダメ人間に! 俺の専売特許を奪われてなるものか!」
という固い決意の元、頑張って雪ねえから離れる。
「ああっ、彰人、彰人が! 彰人の体温がぁーっ!」
「いいから。いいから朝飯食って学校行くぞ。遅刻しますよ旦那」
「お姉ちゃんは彰人と抱っこしてたいのに……酷いぞ、彰人!」プンプン
「はいはい。いいから準備する」(なでなで)
「うぅー」
不満がる雪ねえをどうにかなだめすかし、朝飯の準備にかかる。
「玉子焼きでいいか、彰人?」
「うん」
雪ねえが玉子焼きを作るなら、俺は味噌汁でも作るか。
「さて、何か具あったかなァ……」
「おい彰人、何をしている」
「冷蔵庫に頭を突っ込んで味噌汁の具を探している最中ですが、何か逆鱗に触れましたか」ビクビク
「お姉ちゃんの背中を守らないとは何事だ!」ドカーン
「え、それまだ続いてたの?」
「やらないなら今日学校に行った際、休憩時間の度に彰人の教室へ行って彰人に抱きつく」
「雪ねえは俺が守る!!!」
本気の目だったので、雪ねえの背中に抱きつく。この姉は以前宣言通りの事件を起こしたことがあり、それ以前でも結構なシスコンと周知されていたのだが、今では病的なシスコンと認知される始末。
「違うんだ……シスコンなのは否定しないが、病的なそれはむしろ雪ねえの方なんだ……」ブツブツ
「後ろから彰人の念仏が聞こえるなんて、なんて素敵な朝なんだ!」キラキラ
この姉ちょお強い。勝てる気がしない。
雪ねえを抱っこしたりされたりなでなでしたりされたりほっぺにちゅーしたりされたりご飯を食べたり食べさせられたりしたら、今日も遅刻寸前。
「毎日早起きしてるのになァ……」
「何をぶつぶつ言っている。ほら、そろそろ家を出るぞ」ペロペロ
「あ、うん」
一見まともなことを言ってるが、実は俺の頬をぺろぺろ舐めながらの発言なので、俺の姉はもうダメかもしれない。
「ほら、シャツが出てるぞ。もう、お姉ちゃんがいないと本当に彰人はダメだなあ」
言葉とは裏腹に、雪ねえはニコニコしながら俺の服装を整えた。
「ほら、できたぞ。整えてやったから、お姉ちゃんの頭をなでろ」ワクワク
「偉いぞっっっ!」ナデナデ
「それは枕だっ! どこから持ってきた!?」
「こんなこともあろうかと、秘密の隠し場所に枕を置いておいたんだ。天丼が大好きなんだ」
「その労力を他に回せばいいものを……それより、そんな天丼が好きなら、今日の晩御飯は天丼にするか。彰人のことは全部知ってるつもりだったが、まだまだ知らないことがあるな」
繰り返しの意味での天丼ではなく、パクパク食べる方の天丼と採られてしまった。でも、そっちの天丼も好きだし、いっか。
「それより、お姉ちゃんへのなでなでがまだだぞ。早くしろ」ワクワク
「もうしました」
「枕をなでただけだろうっ! お姉ちゃんをなでろっ!」
「そういえば今日体育があったなー。運動苦手だなー」
「なでないと彰人の体育の時間に乱入してちゅーする」
「雪ねえは俺の服を整えるので偉いなあ」(なでなで)
この姉はすぐに脅迫するので怖い。
「えへ、えへへ……彰人の世話はお姉ちゃんの仕事だから、当然のことなんだぞ?」
ただ、まあ、やたら嬉しそうなので、俺も満更でもない。