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2025年02月05日
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【ツンデレが寒さのあまり火を起こしたら】

2011年01月26日
 寒いので火でも起こそうと思ったがそれでは未開文明の人だなあと思ったので泣く泣く諦めながら登校している俺がここに存在しているというのに、教室の中でキャンプファイアーとはどういうことだ。
「ふにゃー! ふにゃー!」
「そしてやはりお前の仕業か、ナコ!」
「ぷぎゃッ!」
 ファイアーの前で四足になり、嬉しそうに奇声をあげてる転校生、ナコのどたまを思い切りどつく。
「いきなり何するンだ! あッ、やっぱりオマエか! ナコの敵!」
 ずびし、と俺に指をつきつけるナコ。この娘はなんか知らんが俺を毛嫌いしているが、俺はナコが猫っぽいので大変好きです。
「勝手に敵にするな。ていうかだな、屋内で火を焚くな」
 遠巻きに見ていたクラスメイトたちが力強く頷いていた。
「だッて、寒いもン! 寒いから火焚いただけ! ナコは悪くない!」
「文明の力を借りろ、馬鹿」
「ふにゃー!」
 威嚇された。威嚇?
「ったく……ほれ、これ使え」
「ふにゃ? ……なンだ、これ? あッたかいゾ? ポカポカするゾ?」
「カイロだ。しばらくは暖かいから、それで寒さを凌げ」
 とかなんとか言いながら、教室のど真ん中でごうごうと燃えてる火を消火器でばぶわぁーっ鎮火する。
「ああッ! なにすンだバカ! せッかく火が大きくなってたのに!」
「馬鹿はそっちだ馬鹿。火事になったらどうすんだ馬鹿。でもにゃーとか言ってるので馬鹿も悪くないと思ったぞ馬鹿」
「にゃーなんて言ッてないゾ! ふにゃー!」
「今まさに言ってますが」
「ふにゃ!? ふにに……ナコがこーふんしたらつい出ちゃう口癖なだけだゾ! 馬鹿にすンな!」
「馬鹿にはしてません。ただ俺の大好物な雰囲気で喜びが満ち溢れているだけですウヒヒヒヒ」
「ひにゃー! 今日も気持ち悪いー!」
 何一つ嘘をついてないのに半泣きで気持ち悪がられた。悲しい。
「でも、にゃふにゃふ言ってる猫娘が大変に可愛らしいし、いいか!」(なでなで)
「ちッともよくないッ! ナコの頭なでるなッ! ちょー迷惑だッ!」
「分かった、もうなでない」(なでなで)
「お尻をなでたらもッと迷惑に決まッてるだろッ!」
 いっぱい叩かれた。その一撃一撃が格闘家を思わせる重さであり、結果息も絶え絶えの俺がここにいます。
「いやはや。どんな些細なことでもエロに結びつける俺を偉いと思わないか?」
「思わないーッ!」
 血まみれで床に寝転がる俺になんという辛辣な言葉を投げかけるのだろう。
「はぁ……よし、回復。んで、なんだっけ?」
「回復早いーッ! もッと長時間寝転ンで、それから死ね!」
「酷いことを言う。そんな酷いことを言う奴はこうだ!」(なでなで)
「だから、毎回毎回ナコの頭をなでるなッ! ふにゃー!」(威嚇)
「ウヒヒヒ、ウヒヒヒヒ!」(威嚇が嬉しかった様子)
「ふにゃーッ!?」(怖くて半泣き)
 そんな俺たちを迷惑そうに横目で見つつ、粉塗れの教室を掃除するクラスメイトたちだった。

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【ツンデレに妹欲を見咎められたら】

2011年01月22日
 なんかもう超妹が欲しい。超。どうしよう。
「……近頃のタカシは目つきが尋常ではない。簡単に言うと、鼻息が荒い。ふがーふがーって。迷惑だ」
 などと、クラスメイトのちなみに頭をぺしぺし叩かれる程度には俺のダメさが周囲に伝播しているようだ。
「電波が伝播している。なんちて。うひゃひゃ」
「……ぴっぴっぴっ」
「手馴れた様子で119って押さないで!」
「……ぴっぴっぴっ?」
「違う、9を0にしろという話ではない! 何を『これでいい?』って顔をしてるか!」
 つむじをぐりぐりぐりーっと指で押したら、不満げな顔をされた。
「……折角タカシのために電話してやろうとしたのに。なんて酷い奴なんだ。タカシは地獄行きに違いない」
「仮にそうなったとしても、地獄の鬼(幼女)にいたづらするから平気さ」
「おおお。……タカシの性欲は次元を超越している」
 なんか賞賛された。
「……でも、そうしたら地獄で働いている人たちが可哀想なので、タカシが死ぬと魂まで消滅することにする。決定」
「人の運命を勝手に決めるねい。閻魔か」
「……魂まで消滅していい?」(小首をこてりと傾げながら)
「はい! ……ああっ、しまった! 思わず自ら肯定を! チクショウ、この娘自分の武器を知ってやがる!」
「……どうしてタカシはそんなに簡単なのか」
「いやね、聞いてくださいよちなみさん。いま俺はとても妹が欲しくて、その最中であったがために妹的雰囲気を配合しているちなみにそのような可愛らしい所作をされるとお兄さん矢も盾もたまらず首肯しちゃいますよ?」
「……全体的に頭が悪い」
 なかなか的を射ている。チクショウ。
「……でも、どうしてそんなに妹を?」
「なんかちっちゃい子が好きなんです」
「……これは困った。タカシの頭の悪さがとどまるところを知らない」
 口を開けば開くだけ俺のダメさが広がっていく。
「……はっ。そういえば私は小さかった。このままではタカシに妹にされそうだ」
「なんて台詞だ」
「……でもまあ、長い人生妹になるのも経験かもしれない。条件次第でタカシの妹になってやってもいい」
「すげぇ! 何もしてないのにトントン拍子で俺の都合どおりに! で、その条件ってのは?」
「……とりあえず、死んで」
「無理です」
「……ダメだ、この兄使えねえ」
「この妹は俺の想像する妹と違う! 妹ってのは『お兄ちゃん♪』って甘ったるいバカみたいな台詞を吐く生物なんだ!」
「……馬鹿にしているように聞こえる。タカシは本当に妹に恋焦がれているのか」
「当たり前だろ。よし、ちなみ。お前が本当に妹という責務に耐え得るか実験だ。一度俺にお兄ちゃんと言ってみろ」
「……お兄ちゃん」(デスボイス)
 膝から崩れ落ちる。そりゃねえよ神様。
「……お兄ちゃん大好き」(デスボイス)
「勘弁してください! いつもの萌え声でどうかひとつ!」
「……タカシは死んだ方がいい」
 声は戻ったが台詞も戻った。
「ああもう! 何一つ俺の思い通りになりやしねえ! 俺はただ妹にお兄ちゃん大好きって言ってもらって頭なでたりなでられたりそりゃもううへへへへ」
「……これはいけない。タカシの気持ち悪さが危険域を突破している」
 想像の中の妹の頭をなでていたら、ちなみが虫か何かを見ているような目でこちらを見ていることに気づいた。
「おほん。……で、結局妹になってくれるのか?」
 できるだけ冷静さを装いながら居住まいを正す。
「……あんな醜態をさらす生物の妹とか絶対無理」
 ぐぅの音も出やしねえ。
「はぁ……ま、しょうがない。妹ではないが、これで妹分を補給しよう」(なでなで)
「……無理だと言っているのにタカシは人の頭をなでて愉悦に浸っている。タカシは人の嫌がることを喜ぶ悪魔に違いない」
「と言いながら満更でもない顔をするちなみだった」
「……などと勝手なことを言うタカシは死んだ方がいいと思う」
 なんて酷いことを言いながらも、ちなみは俺の手を振り払うことなく、ただなでられていた。
「なんだかんだ言って、ちなみって超いい奴だな」
「……ひとなで100円」
 罠だった。

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【ハナ 移動式簡易暖房器具】

2011年01月20日
 ここ最近超寒いので、学校の行き帰りが億劫だ。
「でもまあ、俺には移動式簡易暖房器具があるから平気さ」
「……もしかして、それは私のことなんでしょうか?」
「その通りだよ」
 俺の隣でちょっとだけ不満そうにしてるハナの鼻をふにっと押す。
「あ、でもそれじゃ、私で暖まるんですか……?」
 俺に鼻をふにふにされながら、ハナは疑問を口にした。
「そういうことだな。ちうわけで、お手を拝借」
 ハナの小さな手をとる。いつもながら俺の手と比較すると物凄く小さい。女の子ってのは本当、すごいな。
「あ……。えへへ、おててつないで、です」
「ハナが見た目相応の発言を!?」
「……違います。彰人くんと同じ高校生です。子供扱いしないでください」
 途端にハナはぶすーっと口を尖らせた。
「不満げでも可愛いとはどういうことだ」
「お、怒ってるのに喜ばせるの禁止です! ……うぅ。ほら、もう怒ってるのがどっかに行っちゃったじゃないですか」
 複雑な表情でハナは俺の腕を軽くつねった。
「いやはや。けど、寒いといいな。夏と違い、ハナとくっつくのに理由が必要なくて」
「……べ、別にいいですよ? 夏でも冬でも、何の理由もなく私にくっついてくれたら」
 ハナにしては珍しい大胆発言にそちらを見ると、想像通り顔真っ赤。
「ハナは痴女痴女しいなあ」
 そこで、いじめてみると早速泣きそうになっていた。
「ううう……。折角勇気を振り絞ったのに、酷い話です」
「ごめんな。好きな子に意地悪をする心理が未だに抜け切れていないんだ。そんな少年の心を宿す俺を許してくれ」
「嫌です。許しません」
 珍しいことは続くもので、いつもなら即許してくれるのに、今日のハナは顔を逸らして怒ったままだった。
「ぬ。これは死ぬほど困った。どうしよう。死のうか」
「ダメですっ! ……そ、そじゃなくて。え、えと」
 ハナはきょろきょろと周囲を見回し、小さく息を吸い込んだ。
「だ、抱っこ。抱っこしてください」
「おおぉう。超大胆じゃないですか、ハナさん」
「い、今なら人がいません。大ちゃんすです。おうちの中では数え切れないほど抱っこされましたが、一度くらい外で抱っこされたかったんです」
「ハナに青姦欲望が」
「……よく分かりませんが、たぶんいやらしいことを言ってます」
 ハナの口がとがりだした。この娘、俺と付き合うようになってからカンが鋭くなってやがる。
「と、とにかく抱っこです。可及的速やかに抱っこしてください。そしたら許します。ダメなら死にます」
「自殺という俺の常套手段を使われては仕方ない。はい、おいで」
 両手を広げてカムカムする。自分から言い出したくせに、ハナはためらいを見せた。
「い、いませんよね、誰も? 平気ですよね?」
「早くしないと広げた腕が閉じる罠。ごーよんさんにーいち」
「ぜろっ!」
 の掛け声と同時に、ハナがすっぽり俺の腕に納まった。すかさず抱きしめ、そのまま頭もなでる。
「はふぅぅぅ……。相変わらず彰人くんの腕の中は夢心地です。一生ここにいたいです」
「嬉しいことを言ってくれる。気をよくしたので、この勢いのままお姫様抱っこして家まで送ろうか?」
「恥ずかしさのあまり途中で悶死すること間違いなしですっ!」
 死なれるのは嫌なのでこのまま帰ろうとしてハタと気づく。この状態では歩けねえ。
「あのー、ハナさん。動けないので一度離れてもいいかな?」
「嫌です。ずっと一緒なんです」
「なんて無茶を言いやがる。このままじゃ帰れないぞ?」
「うー……じゃ、とりあえず離れます。でも、それじゃ、家に帰ったらまた抱っこしてくれますか?」
「ということは、今日はハナの家に集まるということでよろしいか?」
「よろしいです」
 よろしいらしいので、両腕部解放。最後にもう一度俺にすりすりしてから、ハナは名残惜しげに離れた。
「……ふぅ。えへへー、お外で抱き合うだなんて、なんだか熱々の恋人さんみたいで素敵でしたね?」
「実際は冷め切ってるけどな」
「私だけが一方的に彰人くんを好きという悲しい図式になってました!?」
 半泣きになってしまい可哀想だったので、帰りにクレープ買ってあげた。
「まぐまぐまぐ。いちごがおいしいです」
「ハナは食事の時リスみたいになるな。リスなのか?」
「人間です」
 しかし、試しに指を目の前でひらひらさせたら口に含んで軽く噛みだしたので、ハナげっ歯類説はかなり有力な説だと言えよう。

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【突然うさぎ耳を装着させられるツンデレ】

2011年01月05日
 今年は兎年だ。年賀状なんて出さないからすっかり忘れてた。
「ふわわわ!? ふわ、わわわっ!?」
 そんなわけで大谷先生の家に突入し、闖入者に驚いてる隙をついてうさぎ耳を先生に装着する。
「ふむ。イマイチ」
「イキナリ飛び込んできて変な格好させられたうえ、イマイチ!? 言うことがいっぱいありますよっ、別府くん!」
 ウサギ耳をつけた中学生みたいな人が何やら半泣きで喚いていた。なんて半泣きが似合う人なんだ。
「聞いてますか、別府くんっ!?」
「ああ、はいはい。ええと、あけましておめでとう、先生。今年もよろしくな」
「はいー、おめでとうございます。こちらこそお願いしますです!」
 深々と礼し合う。先生は礼をする時、手をぴこっと後ろに伸ばすクセがあるので、馬鹿っぽくて素敵。
「……って違いますっ! なんでここで新年の挨拶なんですかっ! そんなの後々、後回しです!」
「挨拶は大事だぞ? 聖職者がそんな大事なものを後に回していいのか?」
「うっ……でっ、でも、それどころじゃないんですっ! だってだって、先生家でごろんごろんしてたんですっ! そしたら別府くんが飛び込んできてびっくり仰天なんですもんっ!」
「先生に会いたくて会いたくて、冬休みが終わるのを待ちきれなかったんだ」
「う……そ、そんなので誤魔化されません。ええ、先生そりゃ大人ですから憧れるのも分かりますが、先生と別府くんとじゃ全然釣り合いませんもん。……でででも、別府くんが卒業したら話は別の可能性もなきにしもあらずと言うかですね? ……あれ?」
「ぐーぐー」
「なんかコタツ入ってぐーぐー寝てるーっ!?」
 話が長かったので勝手にコタツに潜り込んで寝てたら、何やらうるさい声がして目覚めてしまった。
「ううむ……先生、うるさい。人が寝てるんだから静かにしなさい」
「しかも怒られた!? ここは世界の常識が通用しない場所なんですか!?」
「正月からテンション高いなあ。しかもウサギ耳なんてつけてるから、馬鹿っぽさが普段の二割り増しだぞ。もっと頑張れ」
「ぜーんぶ別府くんのせいですっ! テンション高いのは別府くんが突然隣の朝ごはんばりに突撃してきて気が立ってるからで、ウサギ耳はこれまた別府くんが無理矢理に先生につけてそのうえイマイチなんて評したからですっ!」
「長い。3文字で」
「うさーっ!」
 珍奇極まる鳴き声をあげつつ、先生は両手を上げた。
「惜しい。4文字だ。次回の応募をお待ちしています」
「何の話ですかっ!?」
「あと、うさぎはうさーって鳴き声じゃないと思う」
「うるさいですっ! うさぎの鳴き声なんて知らないですっ!」
「先生は先生なのに馬鹿なんだなあ」
「ものすっごく馬鹿にされてます! そりゃ雑学なんて知りませんよ! 昔そーゆー番組いっぱいやってましたが、ほぼ全部忘れましたもん!」
「まあそんなのどうでもいいや。先生、バニー服着て」
「またしても意味不明ですっ! どうして先生がそんなの着なきゃいけないんですかっ! 先生の魅惑のせくしーぼでーにくらくらになりたいんですかっ!?」
「無茶言うな」
「無茶!?」
 何やらショックを受けてる御様子。
「とは言え、別の意味合いでのせくしーぼでーではあるかな。改めて見ると、俺のような特殊な性癖を持つ異常者にはたまらない体つきだからなあ。この無乳はたまらないなあ。押し倒したいなあ!」
「言ってはならないことを全部言ってます!」
「わざとなんだ」
「たまらなく怖いですっ!」
 先生が震えだした。
「大丈夫だよ、先生。俺、警察にばれないであろう手段を持ってるんだ!」
 震えが強くなった。
「冗談だ。そう震えるな」
「ふっ、震えてなんてませんっ! ちっとも怯えてませんっ!」
「じゃあやっていいのか? やったぁ!」
「冗談という話がどこかへ行きましたよ!? 何をいい笑顔で近寄って来てますか!? 手をわきわきさせてはいけないですっ!」
 しっしと追いやられたので、諦める。無念。
「まあ先生を調教するのは今後の課題にするとして、今日はまあ年始の挨拶と言うか、暇つぶしに来たんだ」
「全く聞き逃せないことをさらりと言いましたねっ!?」
「いやぁ、やっぱ暇つぶしに教師の家に来るのはまずかったか?」
「そんなのはどーでもいいんですっ! 調教です、調教のくだりを先生は言っているのです!」
「今されたいのか? 実経験はないが……まあ、やってみるか」
「とんでもない誤解が先生の人生を狂わそうとしていますっ!」
「普通に断れ。なんだその台詞」
 先生の頭をぺしぺしと叩く。そのついでに、うにうにと頭をなでる。先生はちっこいので俺が手を置くのに丁度よい位置に頭があり、よく俺の手置き場になっている。
「調教されるかされないかの瀬戸際に立たされているゆえ、いっぱいいっぱいなんですっ! それより、頭なでないでくだたいっ!」
「くだたい?」
「ちょこっとだけ噛んだだけですっ、別府くんのばかっ! まったく、先生のこと馬鹿にしっぱなしで! 先生、今日という今日は許しませんよ!」
「いや、今日に関してはあまり馬鹿にしてないぞ? 単純に性の対象として見ただけだ」
「それはそれで問題大アリですっ! オオアリクイですっ! もばーっ!」
「いや、オオアリクイの鳴き声はそうじゃないと思う」
「冷静に批評しないでくださいっ!」
 先生は顔を赤くして叫んだ。
「ううう……なんとか言ってください」
「やっぱウサ耳だけよりバニースーツを着たほうがより興奮すると思う」
「何を言ってるんですか!?」
「自分の担任教師に性的欲求を喚起させる服を着るよう要求した」
「全部分かっててなお言えるって、別府くんはどういう精神構造してるんですかっ!?」
「でもまあ、そういう付属品がなくても先生は可愛いよね」
「うが。……そ、そんな分かりやすいゴマすりに引っかかるほど先生は子供じゃないです。ちっとも嬉しくないです。ほにゃほにゃになんてならないです!」
「ニコニコしてる先生可愛いー」
「褒めないでくださいっ、褒めないでくださいっ!」
 顔を真っ赤にする先生の周りをくるくる回りながら、先生を褒め称える。なんの儀式だ。
「可愛いー、先生可愛ー……はぁはぁ。ええい、テンションあがりすぎた。全く意味が分からん」
「ううう……別府くんのばか。ばかばか」
 その場に座り込み肩で息をしてると、先生が力なくぺこぽこ叩いてきた。
「だー、疲れた……もう帰る気力もない。テレビでも見て、少し体力を回復させよう」
 コタツに入ってテレビの方を向く。と、どういうわけか先生が一緒にコタツに入ってきた。
「ば、罰です。先生にいっぱい酷いこと言った罰です」
 そう言って、先生は自ら俺の膝の上に乗った!?
「い、いいいや、先生?」
「こっちを見てはなりませぬっ!」
「いや、なりませぬって……あ」
 髪から耳が覗けた。超真っ赤。つまり、顔も相応だろう。
「あのー……先生」
「罰です、罰なんです! それ以外の理由など、この銀河系には存在しないんですっ!」
「えーと。その、なんちうか、抱っこしていい?」
「……罰だからダメです。でも、別府くんは超問題児だから、先生の言うことなんて聞かずに抱っこしちゃうに決まってるんです」
 ちらり、と先生は肩越しにこちらを窺った。ツバを飲み込み、一度深呼吸。それから、ニコリと微笑で返す。
「新年からいい子になるから抱っこしないよ」
「この流れなら絶対に抱っこするって選択肢しかないのにぃーっ!? 悪魔がここに召喚されましたよ皆さんッ!」
「誰に言ってんだよ」
「うるさいですっ! 別府くんの馬鹿、鈍感、雰囲気ブレイカー!」
「はいはい、叫ぶな」
「う……」
 今度こそ後ろから先生をむぎゅっと抱きしめる。先生の小さな身体は、少し熱かった。
「べ、別府くんは意地悪です。意地悪の鬼です」
「来月は豆まきだから鬼役に丁度いいな」
「すっごくテキトーです。変なことばっかです、別府くんは」
「む。いかん、えろいことをするつもりが、何やら先生を抱っこしていたら和みの方が強くなってきた! 頑張れ俺のえろ欲求! 和みに負けるな!」
「う……ど、どっちを応援したらいいのか先生分かりませんっ!」
「えろい方を応援したら先生のおっぱいを舐めるという素敵な結末が待ってるから、そっちを応援したらいいんじゃないかな?」
「頑張れーっ、和み超頑張れーッ!」
 必死の応援のせいで、和みwin。くそぅ。
「……でもまあ、これはこれで幸せだからいいか」
 俺の膝の上に座り、ミカンの筋を取ってる先生の真剣な顔を見て、そう思った。
「……取れたっ! ほらほら、別府くん! すっごくきれーになりました!」
「あむんっ」
「先生の努力の結晶が一瞬でなくなりましたよ!?」
 そして、筋のなくなったミカンを俺に一口で食われ、半泣きの先生を見るのは楽しいとも思った。

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【ツンデレと年越し】

2010年12月31日
 家でコタツ入ってテレビ見てたのに、かなみに呼び出された。超めんどくさいので嫌だと言ったが、来たらおっぱい見せてやると言うのでワープ9の速度でかなみ宅へ。
「はぁはぁ……きっ、来たぞ! おっぱいを!」
「嘘に決まってるじゃない、ばーか」
 玄関先ということも忘れ、膝から全力で崩れ落ちる。
「ちょ、そこまで落ち込まなくても……」
「なんて酷い奴だ! こんな手で何回も俺を騙しやがって! もう二度とひっかからねえからな!」
「このやりとり、今年だけで100回越すんだけど」
「先ほどの台詞により、俺には学習能力がないことが判明しました」
「そんなの最初っから知ってるわよ、ばーか」
「馬鹿馬鹿言うない。ていうかだな、用事ないなら呼ぶな。テレビ見てたんだよ」
「あるわよ。あるから呼んだに決まってるじゃない。ほら、行くわよ」
 かなみに引っ張られ、かなみの部屋に通される。
「ほら、入って」
「あい」
「はい、コタツ」
「もい」
 指し示されたコタツにもそもそ入る。
「うぉぉ、超寒ぃ! 畜生、罠だったか! 俺もここまでか!」
「スイッチ入ってないだけよ! イチイチ叫ぶな、ばか!」
 俺の頭をはたいてから、かなみはコタツのスイッチを入れ、自身もコタツに入った。しばらくすると、徐々に暖かくなってきた。
「ふぃぃ……死ぬかと思った」
「そのまま死んじゃえば良かったのに」
「なんて言い草だ。んで、用事ってのは?」
「あ、そだ。ミカン食べる?」
「食べる」
「んと……はい」
 手渡されたミカンの皮を剥き、実を食う。
「ん、甘い」
「でしょ」
 かなみと一緒に、点いてるテレビをぼんやり見る。
「……いやいやいや! 思わずまったりしてしまったが、用事はどうした?」
「うるさいなあ。今いいとこなんだからちょっと黙っててよ」
「あ、はい」
 しょうがないので、そのままかなみと一緒にぼーっとテレビ見てたら、なにやら足元がもぞもぞと。
「ちょっと。足触んないでよ、ヘンタイ」
「いやいや、お前が触ってきてるんだろ。もしくは、コタツに潜んでる空き巣がお前の足に偶然触れたんだろ」
「変な怖い嘘つくなっ! まったく……」
 と言いながらも、依然俺の足のもぞもぞ感は取れていない。
「あのさ、やっぱお前が触ってねえか?」
「してないわよ。ていっ、必殺の足四の字固め」
「全然なってねえ。ていうか語るに落ちてないか?」
「気のせいよ」
 何やらニヤニヤしながら、かなみは器用に足の指で俺の足をつねった。
「痛い痛い。何だその技」
「へへー。すごい? 将来はもっと改良してアンタの皮膚を引き千切れるようになるまで頑張るからね」
「将来の職業は拷問官がぴったりですね」
「最初の罪人はアンタに決定ね」
「たぶん冤罪で入れられるんだろうなあ」
「アンタのことだから下着ドロとか覗きとかで捕まるに決まってるじゃない。ばーかばーか」
「人の将来を勝手に決めおって……」
「私を拷問官なんかにして、人のこと言えないじゃない。……そ、それにしても寒いわね」
「コタツの温度上げたらどうだ?」
「もう最高まで上げてるわよ。……さ、寒いし、しょがないわよね」
「はい?」
 突然かなみがコタツの中にもぐった。これは大変かなみはヤドカリの亜種だったのかと思っていなかったら、俺のすぐ隣からかなみが顔を出した。
「あー暖かかった。う、うわ、アンタの横だったの。戻る場所間違えた」
「なんスか、その超棒読みは」
「で、でも、戻るのも面倒だし、ここからテレビ見よ」
「いや、意味が分からん。そして依然続くその棒読みは何なのだ」
「もうっ、うるさいっ! 集中できないでしょ!」
「なんで俺が怒られてるの?」
 そんなわけで、かなみと肩を寄せ合いながらテレビを見る。
「ちょっと、何触ってんのよ。いやらしいわね」
「狭いから肩があたるんだよ。冤罪だ。……はっ、いかん!」
「ふっふー。拷問官の出番かしらね?」
「やめて皮膚を取らないで!」
「えい、えい♪」
 かなみは楽しげに笑いながら俺の頬をふにふにと引っ張った。しかし、それは決して痛くはなく、優しいタッチでむしろ心地よいものだった。
「あははっ。あー楽し……くないっ!」
 さっきまで超笑ってたのに、突然かなみは怒った表情を見せた。
「なんだいきなり」
「う、うるさいっ! 調子乗るな、ばかっ!」
「繰り返すが、意味が分からん。いつ調子に乗った」
「その顔がなんか超調子乗ってる!」
「言いにくい。チョウチョウシ、チョウチョウシ。……いかん、俺の毛嫌いする日本語ラップが俺の口から! ええい、年末にかなみと過ごせる俺をやっかむ奴からの呪いかっ!?」
「知らんっ! ……て、ていうか、ボケの中に変なの入れるな、ばか」
「どれですか」
「うー……わ、分かってるくせに分からないフリとかするし」
「さてはて」
「うぅ……うぅーっ!」
「人の鼻をつまむな」
「さ……寒いっ!」
「は?」
「寒いからひっつくの! 他意はないのっ!」
 とかなんとか言いながら、かなみが俺にむぎゅーっと引っ付いてきた。
「いや、あの。先手を打たれたので何も言えない俺はどうすればいいのでしょうか」
「なるほど寒いからしょうがないねとか思ってもないこと思ってればいいじゃない、ばかっ!」
「無茶苦茶言ってることに気づいてますか?」
「ついでに私の頭とかなでたらいいじゃないのっ!」
「やっぱり意味が分からないのですが」
「私はそんなのされたらすっごく嫌だけど、どーせアンタは変態だから嫌がる私を見て喜ぶんでしょ!」
「変態ですが、紳士たれと思っている俺なので、嫌がる女性を見るのは趣味じゃないです」
「いーからなでろッ!」
「はい、すいません」
 おしっこちびるくらい怖かったので、すぐにかなみの頭をなでる。
「ううううぅ……」
「すいませんもうしないので殺さないでください」
「怒ってないッ! 恥ずかしーのっ!」
「なんだ。真っ赤な顔ですげぇ形相でこっち睨んでるんで、俺は今日死ぬんだと覚悟を決めるところだったぞ」
「馬鹿ばっか言って。ばか、ばーか!」
「はい、すいません」
「謝ってないで、そっちからもちゃんと抱っこしろ!」
「はい」
 もふっとかなみを抱っこしてから気づく。なんで俺かなみを抱っこしてるの?
「……い、言っとくけどね。アンタなんか嫌いなんだからねっ! ホントなんだから!」
「いや、聞いてないから」
「寒いからくっついてるの! ホントに! それ以外の理由皆無っ!」
「繰り返すが、聞いてないから。……あ、そだ」
「な、なに? 抱っこ嫌になった?」
「いや、それは全然」
「そ、そなんだ……。よかった──ってないッ! よくないの! あーホント抱っこされて嫌よねっ!」
「厄介な性質ですね」
「う、うるさい。ばか」
 ちょっと思うところがあったのか、かなみはほんのり頬を染めながら呟いた。
「そ、それで、何?」
「ああ、そうそう。何か用事があったんだろ? そのためにわざわざ俺を呼び出したみたいだし」
「そっ! ……そ、その、えっと。……アンタが一人で寂しいだろうから、わざわざ私が呼んであげたの! 感謝しなさいよねっ!」
「なるほど、かなみが寂しくなっちゃったのか。じゃあ仕方ないな」
「アンタ! アンタが寂しくなったの! 私はちっとも寂しくないの!」
「大丈夫、寂しくない。用事が済んだようなので俺はこれで」
「そうでもないッ!」
 コタツから出るフリをしたら、全体重をかけてかなみが阻止にかかった。
「かなみ、重い」
「うるさいっ! テレビ見終わって、一緒に年越しそば食べて、一緒に初詣行って、一緒に帰ったら解放してやるから、それまで我慢しなさいっ!」
「かなみと一緒にいるのに、我慢とか意味が分からないのですが」
「ず……頭突きっ!」
「痛いっ!?」
 宣言どおりの技をされて超痛え。
「いたた……あのな、かなみ。痛いから。痛すぎるから」
「あ、アンタが恥ずかしいこと言うからっ! ……恥ずかしくて死にそうじゃない、ばか」
「おおぅ。それは大変申し訳ありませんでした」
 全力で顔を赤くするかなみに、深々と礼をする。
「うぅー……ばか。ばかばか。死んじゃえ、ばか」
「さっきかなみが言ったことを全部やるので、許してはもらえませんでしょうか」
「……本年は色々お世話になりました。来年もよろしくお願いします」
「はいこちらこそお願いします。いやそうじゃなくて。え、なんでこのタイミングで挨拶?」
「今逃したら言えそうな気がしなかったの! あと抱っこが緩んでる!」
「あ、はい」
 かなみを抱っこしなおす。そのついでだかなんだか知らないが、かなみが小さい声でふにゅふにゅ言いながら俺にすりすりしてきたので頭がやヴぁくなってきた。
「う……に、ニヤニヤするな、ばかっ! アンタがすりすりしてきた時に苦しくてちょっと声が漏れちゃっただけよっ! 私からしたんじゃないんだからっ!」
「ああもう、いい匂いがするし柔らかいし素敵すぎるぞこの娘!」
「やっぱ変態! 年末年始ずーっと変態!」
 ぎゃうぎゃう言いながらも、結局かなみは俺にむぎゅーっと抱きついたままでした。
「勃たないようにするの超大変でした」
「本領発揮して下ネタ言うなっ、このド変態のサイテー男っ!」
 ぺちぺち叩かれながらも、かなみと一緒に初詣に向かう俺なのだった。

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