忍者ブログ

[PR]

2025年02月05日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【布団代えを嫌がるまる】

2011年04月30日
 最近暖かいので布団を冬用から春用へと変更してると、がぶりという異音が。
「ていうか痛い痛い尻が痛い! これはもう超自然的現象により尻が爆発粉砕四散したとみてよろしいか!?」
「ふがふがー!」
 しかし実際はそのような現象は起こっておらず、うちのまる(元猫で現人。理由不明)が飼い主である俺の尻をがぶがぶ噛んでいるだけだった。
「噛むな。まる、噛むな」
「ふがふがー!」
 俺の叱責なんてちっとも聞かずに、いやそれどころかより一層噛む力を強める始末。このままでは俺の尻が本当に爆発粉砕四散しかねない。
「噛むのをやめないと今日の飯抜き」
「ぬが!? ご主人はすぐにあちしのご飯を人質にする! ずるい!」
「お、やめたな。偉いぞ」(なでなで)
「むぬー♪ ……む?」
 さっきまで怒っていたはずだが、なでられて一瞬にしてご機嫌になる我が家の猫は頭が悪い。ただ、それに疑問を抱く程度の頭脳はあるようだけど。
「で、なんで俺の尻を噛んだ」
「あ、そう! それ! それなのな! なんであちしの布団をどっかにしまっちゃう! ご主人はしまっちゃうおじさんなのな!?」
「そうなんだ」
「しまわれるのなー!?」
 まるはしっぽをパンパンに膨らませながら驚くと、押入れに突っ込んだ。尻を丸出しにしたままガタガタ震えている。
「ていうか何をそんな怯えてるか。そもそも嘘だし」
「ぬ……? 嘘なのな? ご主人はしまっちゃうおじさんじゃないのな?」
「当たり前じゃないか」
 まるの元まで行き、不安げなまるの頭をなでながら優しく微笑む。ネコミミがふにふにしてて気持ちいい。
「俺はまだおじさんって歳じゃないから、しまっちゃうお兄さんだな」
「やっぱりしまわれるのなー!」
 再び押入れに突っ込み、尻を丸出しにしてガタガタ震えるまる。とても面白いから一生見ていたいけど、一向に話が進まないからそろそろ本当のことを教えてやる。
「嘘、嘘だっての。本当はただの学生だ」
「……本当なのな? 嘘だったら針千本飲むのな?」
「分かった、俺も男だ。嘘だったらちゃんとまるに針千本飲ませる」
「あちしじゃなくてご主人が飲むのな! あちしが飲んだらノドがうべーってなっちゃうのなー!」
「はいはい、分かった分かった」
「分かったならいいのな。あとは、布団を元に戻せば言うことないのな」
「それは、断ります」
「なんでなのなー! やっぱご主人はしまっちゃうおじさん……じゃない、しまっちゃうお兄さんなのな!? 針を千本飲むのな!」
「ちげーよ。暖かくなってきたから、春用の布団にするだけだ。お前も最近寝る時に暑いーって布団をげしげし蹴って、朝に寒いーって震えながら俺にしがみついてるじゃねえか」
「……そだったかにゃ?」
「そだったの。つーわけで、ちょい薄地の布団にするので、今日からは布団を蹴る必要がなくなります」
「むぬー……」
 しかし、まるは不満げな表情。一体何が気に食わないというのだろうか。
「……暑くなくても寒くなくても、ご主人にひっついて怒らない?」
「…………」
 何を心配しているのかと思ったら、こいつは。
「当然だろ。いくらでもひっつけ。飼い猫の特権だ」
「……なんかおっきくなっちゃったけど、それでもその特権は使えるのな?」
「そういう契約になっております」
「……じゃ、いいのな。言うことないのな。くっついてやるのな! はっはー!」
 なんか偉そうなこと言いながら満面の笑みで飛びついてきたので、さらりとかわす。
「ふぎゃっ!?」
 後ろを見ると、うちの猫が壁と一体化せんばかりにぺたりとくっついていた。
「……うぐぐ。なんでかわすのな!?」
「不思議だね」
「許しがたいのなー! ふかーっ!」
 しっぽを膨らませて怒りながら人の腕をがぶがぶ噛むまるだった。痛い。

拍手[10回]

PR

【ツンデレに昼は大体コンビニかなって言ったら】

2011年04月27日
 今日は休日だが、特に用もないのでぷらぷら街を歩いてたら、腹が減った。近くのコンビニで何か買おうと入ると、何やら見知った後ろ姿が。回れ右する前にその後ろ姿が振り向いた。
「……これはこれは、おにーさんじゃないですか。身体が横向きで、そのうえ顔が引きつってるのは気のせいですか?」
「い、いやぁ、ふみに会えたのに引き返そうとか顔が引きつったりとかするはずなんてないじゃないか」
 本を元の場所に戻し、とてとてとこちらに歩み寄ってきた知り合いであるところの中学生、ふみに笑顔を作りながら答える。まあ、その笑顔が完璧とはとてもじゃないが自信をもって言えやしないが。
「とう」
「へぶっ」
 嘘笑いを看破され、ふみに腹を突かれる。
「痛たた……お前なあ、いきなり殴るな」
「嫌そうな顔をするのが悪いんです。おにーさんのばか」
「いや、別に嫌という訳じゃないんだぞ? ただ、すげー厄介な奴だとは常々思っているが」
「とう」
「へぶっ」
 先ほどのやりとりをもう一度繰り返す。
「それで、おにーさん。私に何か用ですか」
「別にお前に用なんかねーよ。小腹が空いたから何か買いにきただけだ」
「むっ。私に用がないとはおにーさんのくせに生意気です。いつもいつも人の中に出すだけ出して、スッキリしてる時は用なしですか」
 ふみを抱え、慌ててコンビニの隅に逃げる。
「人聞きが超悪ぃッ! ていうかいつお前に手出したッ! 日夜我慢してるってのになんたる言い草か!」
「私の夢にいつも出てくるおにーさんが毎夜毎夜私にします」
「……いや、夢までは面倒見れねぇよ」
「おかげで毎日睡眠不足です。慰謝料ください。いちおくえんでいいです」
「あーまた今度な」
 ふみの頭をくしゃくしゃとなでてやりすごす。まったく、こいつにはほとほと困る。
「まあ、面白い情報が手に入ったので今回はいいです。……我慢してるんですか」
 ふみの頭をなでる手がピタリと止まる。これは分かりやすい失言をしたような。
「流石はおにーさん、いつだって中学生の肢体に興味津々なんですね?」
「い、いや、何の話だか俺には皆目」
「今度一緒にお風呂入りましょうね。あ、見たり触ったりしたら通報しますから」
「すげー楽しそうですね、ふみさん」
「気のせいです」
 と言いながらも、いつもの無表情の中に小さな笑顔を含ませている。まあ、付き合いの長い俺くらいでなければ見逃してしまうほど些細なものだけど。
「はぁ……ともかく、飯買うべ。ふみ、お前飯は?」
「まだです」
「んじゃ来い。安いのでよけりゃおごってやるよ」
「嫌です。高いのがいいです」
「安いのな」
「おにーさん、甲斐性ナシです」
「ただの学生に無茶を言うない。ていうか、コンビニにそんな高い飯なんてないだろ」
「そこは量でカバーです」
「絶対食いきれねえだろ。ヘタすりゃ一個でも多いんじゃないか?」
「そんなことないです。……小さめのお弁当なら食べ切れます」
 こいつは普通の奴より小さいだけあって、食う量も相応だ。別にそんなこと気にする必要もないと思うのだけど、こいつはそうでもないようで。
「大人なのに沢山食べられないなあ、ふみ?」
 つーわけで、早速大人げなく攻める。
「沢山食べるロリコンよりマシです」
 思わぬところで反撃を喰らう。もう立ち上がる気力なんて残ってません。
「もうお前にはおごってやらん」
「些細なことですぐに腹を立てるロリコ……おにーさん、素敵です」
「もうちょっと褒める箇所を推敲して! ていうか明らかにロリコンって言おうとしただろ!」
「ところでおにーさん、おにーさんはどうして生きてるんですか?」
「おおぉう。なんというシンプルかつ鋭利な攻撃だ。立て続けの攻撃に膝が笑ってるぜ」
「あ。ちょっと言葉が足りませんでした。おにーさんはお休みの時、お昼はどうしてるんですか、と聞きたかったんです」
「言葉が足りないどころか丸々違うぞ」
「てへ、しっぱいしっぱい」
 くっ……わざとに違いないが、可愛らしいので指摘できない!
「今日もおにーさんは私の手の平の上で転げまわっていて、大変愉快です」
 そして全部分かっててやってるふみに大変腹が立ちます。ほっぺ引っ張ってやれ。
「むにょー」
 今日もふみには全く通用しない模様。胸に去来する敗北感を噛み締めながら、手を離す。
「おにーさんはすぐに女性に手をあげますね」
「相手によりけりだ」
「つまり、興味のある女性にのみ手をあげるのですね。非常に迷惑です。やめてください」
「なんて勝手な娘だろうか」
「そんなことないです。それで、さっき質問の答えは?」
「ん、ああ。昼な。大体コンビニかなあ。休みの時はなんだかんだと親が家あけてること多いから」
「その調子です。身体に悪い物質をたくさん取り込んで早死にしてください」
「そういうことをコンビニで言うなッ! ええいっ、帰るぞ!」
 話を聞いていた周りの客や店員の悲しそうな顔を尻目に、ふみを小脇に抱えて慌ててコンビニを飛び出す。
「まったく……ああもう、あのコンビニ行けやしねえ」
「おにーさんは何かあるとすぐに私を抱えますね」
 俺に抱えられているふみが、ジト目で俺を睨みながら責めた口調で話しかけてきた。
「その何かってのは大体お前によって引き起こされるものだがな」
「酷い責任転嫁を見ました」
「ちっとも転嫁してねぇ! 全てお前の責任だっ!」
「不思議な話もあったものです」
「こいつは……」
「とりあえず、離してください。私に触りたいのも分かりますが、このままでは妊娠しかねません」
「しねぇよッ! どういう身体の構造してんだ!」
 とはいえ、ふみの言う通り長々と触っているのも色々問題があるので、とっとと解放してやる。
「んしょっと。さて、おにーさん。お昼はどうするつもりですか?」
「コンビニで適当に買うというプランが何者かの手により妨害されたので、どっか適当なファミレスで食うことにする」
「しょうがない、そこまで言うならおごられてやります」
「おごると言ったのはコンビニでの話で、ファミレスはまた別の話なのだよ?」
「パフェも食べます、パフェ。あの甘いと噂の憎い奴を食べます」
「だから、あの。話を聞け」
「ほら、早く行きますよ、おにーさん。早く行かないと閉まってしまいます」
 俺の話を今日も聞かずに、ふみは俺の手を取って急かすのだった。

拍手[13回]

【うっかりしてドブにはまったツンデレ】

2011年04月24日
 最近雨が多くて鬱陶しいよね。鬱陶しいなんて漢字、百回書いても覚えられないよ。
「とー」
 とか考えながら傘を差してゆっくり学校から帰ってると、何やら横合いからそんな気の抜けた声が。そして、それと同時に何やら衝撃が。バランスを崩し、その結果俺の足は側溝に突っ込んでいます。
「ああっ! 足が! 水に! ドブに! 冷たい!」
「これほど醜態が似合うのは世界広しと言えど、おにーさんくらいです」
「なんとなくそうではないかと思ったがやっぱりテメェか、ふみ! ……お?」
 そこにいたのは知り合いであるところの中学生、ふみだった。ただ、普段と違うところが少々。
「……なんですか。私の外見について言及するのはマナー違反だと思います」
「いや、外見っつーかなんつーか」
 ふみの足は俺と同様、水というかドブでずぶ濡れずぶ汚れ(ずぶ汚れ……?)だった。
「……よもや蓋が外れていようとは。そして、増水でそれに気づかなかったとは。天才である私の人生において、唯一と言っていい汚点です」
 憎々しげに口を歪ませるふみ。うん、それはいい。それはいいです。
「で、なんで俺までドブにはまらせた」
「私だけビショビショなんて不愉快です」
「なんて勝手な娘だ。脳改造してやる」
「むしろおにーさんが脳改造されるべきです。おにーさんの性的被害に常に遭っている私は疲労困憊です」
「人聞きが悪すぎる! 何もしてません!」
「おにーさんに遭遇すると、高確率でなでなでとか抱っことかされます」
「え、それも性的被害の範疇入るの?」
「当然です」
「じゃあもう何も言えません。自首するから一緒に警察来てくれない?」
「嫌です。おにーさんはそこのドブで無様に水死するのがお似合いです」
「え、死ぬほどの罪を犯してたの?」
「とはいえ、知り合いがぶくぶく膨れた水死体になるのを見るのも御免です。そんなのを見せられてPTSDになったらどうするつもりですか。慰謝料ください。一億円」
 人を殺そうとするばかりか金まで請求しだした守銭奴のほっぺをぐにーっと引っ張る。
「めそめそ」
「ちっとも効いてねぇ! なぜなら真顔でめそめそ言ってるから!」
「抵抗しない中学生をニヤニヤしながら虐待するおにーさん、素敵です」
「ええい!」
 諦めて手を離す。ふみは片手でほっぺをすりすりしていた。
「顔に出にくいだけで、痛いは痛いんですよ?」
「知らん!」
 とは言いつつも、一応ほっぺをすりすりしてやる。
「どんな時でも女性の肌に触れようとするおにーさんの欲望には正直脱帽です」
「ちげー! 痛いの痛いの飛んでけー的な! そういうの!」
「呪いですね?」
「……いや、まあそうなんだけど、漢字はちょっと。まじない、な。のろい、じゃなくて」
 空中に呪いという文字を書かれたので、一応訂正しておく。
「おにーさんが私を呪います」
「この故意犯め」
「これ以上大きくなるな、俺のロリ魂が萌えるこの丁度いい大きさのまま成長止まれ、というおにーさんの呪いが私を蝕みます」
「そろそろ黙らないと周囲が引くくらい恥も外聞もなく泣く、という俺の必殺技を見せつけるぞ」
「おにーさんに恥や外聞という概念があったとは驚きです。……はくちゅっ」
「くしゃみ?」
「くしゃみません。……くちゅっ」
「くしゃみだな。まあこんだけ濡れてたらな。……こっからだと俺の家の方が近いか。よし、俺の家来い。たぶん風呂沸いてるから」
「あまりに大胆な誘いに、さしもの私もドキドキです」
「ドキドキ土器王紀」
「……その返しは想定外です。おにーさんは小癪にも私の想像の外を行くから嫌いです」
「嫌いでもなんでもいいから行くぞ」
「むぅ」
 頬を膨らませるちっこいのの手を引いて、家に帰りつく。幸いにも風呂は沸いていたので、ふみを脱衣場に追いやる。
「着てた服は洗濯機に突っ込んでくれていいから。入ってる間に着替え用意しとくよ」
「裸ワイのチャンスですよ、おにーさん」
 5、6発チョップしてふみの目をぐるぐるにさせてから、脱衣場のドアを閉める。さて、着替え着替え。

「あがりましたよ、おにーさん」
「ん、そか。じゃ俺も……どういうことだ!!!?」
 風呂からあがったふみは、裸ワイシャツ姿でした。
「萌え萌え?」
 とりあえず頭をはたく。
「むぅ」
「むぅじゃねえ。ていうかどういうことだ。俺は普通のスウェットを置いといたんだけど」
「こんなこともあろうかと、以前おにーさんの家に来た時に仕込んでおきました」
「なんて無意味な用意周到さだ」
 とはいえ驚いたので、賞賛を称えるべくふみの頭をなでる。
「…………」(少し嬉しそう)
「じゃあ、驚いたので普段着に着替えなさい」
「洗濯機に入れちゃいました」
「いや、意味が分からない」
「もうゴーゴー言いながら回ってます。取り出し不可です」
「……ええと。わざと?」
「意味が分かりません」
「……はぁ。まあいいや、とりあえず俺も風呂入ってくるから、部屋で待っててくれ」
「裸ワイシャツの女性を部屋に待たせるだなんて、おにーさんの妄想が現実に侵食してきてますね」
「ははははは。ふみは愉快だなあ」
 ふみの鼻をぐにぐにーっとして溜飲を下げてから、風呂に入る。暖まった後、部屋に戻る。
「遅いです。あんまりにも遅いんで身体が冷えちゃいました」
 ふみはベッドの上にぺたりと座りこみ、頬を膨らませていた。どうやらご機嫌ななめの様子。いや、コイツは基本ずっとご機嫌ななめなんだけど。
「10分も経ってないと思うんだが」
「おにーさんの10分が私の10分と同価値と思っていただなんて驚きです。私の1分は、おにーさんの時間に換算すると80年くらいの価値があります」
「お前の一分と俺の一生は同価値なのか」
「驚きの事実ですね、おにーさん」
 とても悔しいので、ふみのほっぺを引っ張る。
「……って、お前本当に身体冷えてるじゃねえか!」
 俺が風呂上りというのを差し引いても、ふみのほっぺは冷たかった。慌てて布団を広げ、ふみにかぶせる。
「むぅ。大げさです、おにーさん」
「うるせえ。ったく、お前は頭はいいけど、身体はそんな強い方じゃないんだからちっとは自衛しろ、馬鹿」
「むっ。馬鹿とはなんですか。さっき頭はいいと言ったのに馬鹿とは矛盾してるじゃないですか。おにーさんのばか」
「馬鹿のいうことにイチイチ腹を立てるな、馬鹿」
「むぅ! 私に馬鹿なんて言うの、おにーさんくらいです! おにーさんのばか!」
 手が出た。すかさずふみの頭に手を置き、攻撃を防ぐ。
「むー! 射程範囲外に追いやるとは卑怯です! むー!」
「悔しければ腕の関節を外し、ズームパンチを俺の顎にブチ込むことだな。はっはっは」
「めめたぁ! めめたぁ!」
 残念ながら擬音だけしかブチ込めなかったようで、ふみの手はついぞ俺に触れることはなかった。
「はぁはぁ……うう、おにーさんは今日も卑怯者です」
「リーチの差を活かした技です」
「むー。……はぷしゅ」
「お前のくしゃみはバリエーションに富んでるな」
「くしゃみじゃないです。くしゃみません」
「まあ、この調子で暖まってりゃ風邪ひかないだろ」
「風邪なんて引いたことないです。……ちゃぷちぇ」
「いや、流石にそのくしゃみは嘘だろ!」
「たまには焼肉食べたいです」
「知らん! いや、まあ俺も食べたいけど。食べたの何ヶ月前かなあ」
「ちゃぷちぇが飛び出すほどの寒さです。このままでは死にます」
「待って。まず前提条件であるところのちゃぷちぇが飛び出す寒さってのが理解できない」
「と、いうわけで。緊急避難行動です」
 布団に包まった存在がもそもそ寄ってきたかと思ったら、同化された。
「……ええと」
 流石に正面から抱きつかれると、恥ずかしい。
「……め、めめたぁ」
 こつん、と顎に何か当たった。見ると、ふみの拳が俺の顎に触れていた。
「ず、ずーむぱんちです。波紋が流れたので、おにーさんは血ヘド吐いて死にます」
「お前はすぐに俺を殺そうとするのな」
「憎い相手を殺そうとするのは当然というものです」
「超怖いですね」
 わっしわっしとふみの頭をなでる。
「……私の頭をなでる時、おにーさんはいっつも優しい顔してます」
「菩薩如来の再来か、と言われるほどの俺だからな。優しいのも当然さ」
「……いつだって嘘くさいです」
「ルパン三世の再来か、と言われるほどの俺だからな。嘘くさいのも当然さ」
「びっくりするくらい適当です。おにーさんのばか」
「いやはや。で、寒いのはマシになりましたかな、お嬢さん?」
「……春の雨は身体の奥底まで冷やしてしまうので、ちょっとやそっとじゃダメです」
「じゃあしょうがないな」
「しょがないのです」
 ということらしいので、もうしばらく抱っこ続行。
「あ。そういえば折角の裸ワイシャツなのに、専用イベントが起きてません。起こしますか?」
「前々から思ってたが、お前の台詞はイチイチおかしい」
「おにーさんに侵食されたんですね。それで、どうしますか?」
「……まあ、一応、起こしておこうか」
「流石はおにーさん、どんな些細なイベントも消化するその貪欲な性欲には脱帽です」
「やっぱ起こさない!!!」
「もう遅いです。……えい」
「ん?」
「えい、えい」
「えーと。何をしているのでしょうか」
 ふみは肩を寄せたり広げたりしている。何の運動だろうか。
「……失敗です。谷間を作っておにーさんを誘惑大作戦が、一切谷間が出来ません」
「あー……」
 まあ、そりゃ、ねえ。一般的な中学生と比較しても、明らかに小さいし。……せせせ背の話ですよ!?
「……何かとても失礼なことを想像されてる気がします」
「お前、エスパーか」
「エスパーふみ。趣味はテレポーテーションです」
 こいつは暇さえあれば俺の部屋に入り浸っているため、俺の蔵書に影響されやすい模様。
「将来の夢は、おにーさんをテレポートしてかべのなかにいさせることです」
「勝手に人をロストさせるな」
「まろーる、まろーる」
 呪文を唱えながら人の顔を遠慮なくぺしぺし叩くふみだった。

拍手[18回]

【顔文字 湖畔 メタセコイア】

2011年04月18日
 休みの日は大体家にいるのだけど、たまにはどっか行きたいなあ。海とか山とか。
「むにゃー」
 などと思いながら、人の上でぬべーっとしてる恋人を眺める。油断しきってやがる。このざまでは暗殺者に狙われでもたらひとたまりもないだろう。
「んー……ごろごろごろ」
 人の上を転がりながら、近くにある雑誌を手に取る恋人の人。
「む、人がかぶった」
「ん? 何の話?」
 俺の独り言に反応し、恋人であるところの凛が顔をこちらに向けた。
「俺の脳内の話」
 話しながら凛の頭をなでる。サラサラして気持ちいい。
「今日も彰人はよく分かんない」
 言葉とは裏腹に、凛は気持ちよさそうに目を細めている。どうにも猫っぽい。
「そんな奴を恋人にした苦悩は計り知れないな」
「彰人がどーしても凛と一緒にいたいよーって懇願するから一緒にいてあげてるだけだもーん」
「逆じゃなかったっけ?」
「ち、違うもん。彰人が言ったんだもん」
「そうだったか? 俺の記憶では、なんかステージの上で凛が」
「わ、わーっ! それ言うのナシ! 反則!」
 凛は人の顔を遠慮なくびしばし叩くと、ごろごろ転がって、俺の腕に収まった。
「まったくもー。……ふぅ。やっぱここが一番落ち着くね」
「超顔が痛え」
「それくらい我慢するの!」
「口封じに叩きまくるってどうかと思うぞ」
「うるさいの! それより凛のために腕枕しなさい!」
「へーへー。腕枕はいいんだけど、俺の腕がしびれるのが難点ですよね」
「凛のためだから我慢できるよね?」
「勝手な話だ」
「えへへー♪」
 腕枕をした状態で、一緒に雑誌を眺める。
「……あ、ねーねー彰人、ここ行きたい!」
 凛が指し示したのは、雑誌の中に載ってるちょっとした記事だった。
「えーと……へえ、湖か。綺麗だな」
 記事には湖畔の周りに立ち並ぶメタセコイアとかいう木々の特集が組んであった。生ける化石植物として有名、らしい。そういったものには疎いので初めて見るが。
「こゆとこをさ、一緒に歩いたりしたらさ、なんかさ、なんかさ、恋人っぽくない?」
 しかし、凛の興味を引いたのは化石植物ではなく、湖畔の方のようだ。
「メタセコイアはいいのか」
「何それ? 知らないし、興味ないもん」
「花や木に詳しい女性って女らしくて素敵だよね」
「そんなの思ってもないくせに」
「まぁね。しかし、湖畔か……そだな、いいかもな。こういうとこなら人も少ないだろうから、お前のファンに囲まれる心配もないだろうし」
 こいつは前まで歌って踊ってランラランな仕事をしており、辞めた今でも結構な数のファンがいる、らしい。未だに事務所にファンレターが届くとか。
「ファンで思い出したけどさ、事務所に届くファンレターの中身、半分以上は彰人への呪いらしいよ?」
「\(^o^)/」
「はぁ? 何してんのよ」
「や、動揺を隠し切れないだけだ」
 ひょっとして、俺は今超やばい状態にあるのではないだろうか。こいつと一緒にいたら遠からず死ぬやも。
「…………」
 俺の思考が顔に出たのか、凛は不安げに俺の腕を掴んだ。
「……あ、いや、うん。大丈夫。ずっと一緒だ、一緒」
 まあ、そういうの全部ひっくるめて一緒にいることを誓ったんだ。大丈夫さ。
 そんなことを思いながら、凛の頭を優しくなでる。
「と、当然よ。ずーっと一緒だもん。……も、もちろん凛はどーでもいいけど! 彰人がどーしてもって言うから一緒にいたげてるだけ!」
「へーへー」
「なんか感動が薄いー! ……あ、そだ。あのさ、もっかいさ、改めてどーしても一緒にいたいよーって言って?」
「もーしても一緒にいたいもー」
「なんか牛が混じってる!」
「実は牛人間なんだ」
「もー、超適当! もー! もー!」
 そしてどういうわけだか凛が牛になった。不思議なので頭をなでてみた。
「もにゃー!」
 牛と猫が混じった新生物がここに爆誕した。

拍手[23回]

【雨天中止 カモ デート】

2011年04月15日
 今日はふみと遊びに行く予定だったのだけど、朝から生憎と雨模様。これはもう出るのが超めんどくせえから中止と電話でふみに告げたら、
『おにーさんとのデート、楽しみだったのに、残念です……』
 なんて寂しげに言われたもんだから、もう転がるように家を出て雨に濡れるのも構わずそのままふみの家へ直行。インターホン連打。
『はい』
「はぁはぁはぁ……お、俺。俺だ。中止は取りやめ。一緒に行こう、デートに!」
『おにーさん相手にデートとか片腹痛いです』
「え……? あれ、さっきデート楽しみとか言われて超浮かれてやってきた俺の立場は? あれぇ?」
『おにーさんのことです、どーせ私とのおでかけを楽しみにするあまり、それがデートだと思い込んだに違いありません。気持ち悪いことこの上ないです。慰謝料を請求します。一億円ください』
「いや、金はともかく、あれ? なんかついさっき電話でデート楽しみとかお前の口から聞いたんだけど?」
『おにーさんの思い込みです』
「うぅむ……」
 極めて納得がいかないが、ふみがそう言うのであれば、そうなのだろう。
『だいたい、こんな雨の中デートに行くとかありえないし、そもそもおにーさんとデートとか地球が割れてもありえないです』
「そこまで俺は嫌われているのですか」
『秘密ですよ?』
「俺以外にのみ、その頼み事は通用すると思うのですが」
『まあともかく、うちにあがってください。雨に打たれて風邪でもひかれたら困ります』
「おお。ふみの心遣いに感謝する」
『おにーさんのことです、私のせいで風邪ひいたー慰謝料よこせーいちおくえんーとか馬鹿みたいなことを言うに違いないからです。他意はないです』
「その慰謝料のくだりはお前の口からよく聞くのですが」
『ぐだぐだ言うなら、このまま帰ってもらってもいいです』
「すいません入れてください俺が悪かったです!」
『まったく……情けないおにーさんです』
 ちうわけで、ふみに入れてもらった。玄関先にタオルを持ったふみがちょこんと立っている。
「はい、おにーさん。タオルです」
「おお、サンキュ」
 受け取ったタオルで頭をガシガシ拭く。そんな長時間外にいたわけではないのに、結構濡れていた。
「ところで、親御さんは?」
「休みだというのに、今日も仕事です。……分かってて聞きましたね?」
「いやいや、いやいやいや! 分からないから聞いたの!」
「分かってるのにあえて聞き、改めて私に寂しい思いをさせるおにーさんの技術、感服します」
「この娘は本当に厄介だなあ」
「……なら、放っておいてください」
 気に障ったのか、ふみは俺に背を向けてしまった。
「それができたら苦労しないんだよなあ」
 ふみの頭に、さっき俺の身体を拭いたタオルを置く。我ながら無駄な苦労をしょいこんでる気がする。まあ、性分だから仕方ないか。
「むぅ。私の頭はタオル置き場じゃないです」
「気のせいだろ」
「気のせいじゃないです、おにーさんのばか」
「馬鹿で申し訳ない」
 タオルの上からふみの頭をなでる。
「……なでなでが遠いです」
「タオルが俺のなで力を緩和させているんだね」
「説明なんて不要です。おにーさんのばか」
「いやはや。さて、おでかけはなくなってしまったが、どういうわけだかふみの家にいる。つーわけで、今日はここで一緒に遊びましょうか」
「嫌です。遊びません。身体を拭いたのなら、おにーさんはとっとと帰ってください」
「うーん……」
 依然ご機嫌ななめモードなようで。
「困ったなあ」(なでなで)
「全然そんなこと思ってないです。ずっと私の頭をなでてばかりです。さらに言うならまたしてもタオルの上からなでてます。もうずっとなでなでが遠いです」
「やっぱ直接の方がいい?」
「……ぜ、全然。今ならなでなでが遠くて、おにーさんの体温を感じることができないので、大変心地よいです。ありがたいことこの上ないです」
「じゃあ今後はずっとこのなでなでにしようね」
「……おにーさんのばか」(半泣き)
 ええ。なんだかんだ言ったって、こちとらロリコンですから、そんなの勝てるわけないですよ。
「ああごめんなごめんなふみ。ちょっと調子乗りました。直接が一番に決まってるよね」
 タオルをぶっ飛ばし、直接ふみの頭をなでる。
「お、お、お、おにーさんっ!?」
「うん? ……あ、あー」
 それどころかふみに抱きついてる俺は、本当いつ通報されてもおかしくないよね。
「うぅ……おにーさんが興奮のあまり私に抱きついてます。これはもうこのまま犯されるに違いないです」
「犯しません」
 一瞬で冷静になったので、素直に拘束を解く。
「むぅ」
「なんで膨れてんだ」
「おにーさんの弱みを握れると思ったのに、残念です」
「そんなんで身体を許すな。ふみの貞操観念が緩くて、お兄さんは不安だよ」
「こんなことおにーさんにしかしませんから、大丈夫です」
「なんて恥ずかしいことを真顔で言いやがる、この娘は!」
「おにーさんみたいな面白いカモ、他にいません」
「…………」
 心配して損した。
「そもそも、ここまで私の心にずけずけと土足で踏み込むようなデリカシーなし人間はおにーさんだけなので、その心配は不要です」
「なんて言い様だ」
「……まあ、言い方によっては、私にここまで親身になってくれるのは、おにーさんだけ、とも取れます」
「……そ、そっか」
 ええい。無駄に恥ずかしい。ていうかふみも冷静なフリしてるが顔真っ赤だし。
「……て、てい」
「痛い」
 なんか突然ふみが俺の手を叩いてきた。
「お、おにーさんのくせに照れるとか生意気です。おにーさんはいつもみたく年上っぽく余裕しゃくしゃくな感じで振舞えばいいんです」
「そうありたいんだけど、なかなかなぁ。修行が足りないようで」
「おにーさんは異性との接触の機会が私といる時しかないので、修行のしようがないんです」
「あまり悲しい事実を突きつけるな。泣くぞ」
「……本当にそうなんですか?」
「何を意外そうな顔をしている。そんなモテそうに見えるか?」
 ものすげー首を横に振られた。畜生。
「……そっか、そうなんですか。おにーさんは、私しか異性の友人がいないんですね?」
「だから、殊更言うない。本当に泣くぞ」
「……えへへ。おにーさん、モテません♪」
「よし、もう決めた。恥も外聞もなく泣く」
「あんまりにもおにーさんが可哀想……いえ、哀れなので、今日は一緒に遊んであげます。感謝してくださいね、おにーさん?」
「本当に酷い話だ。本当に」
 ふみの不機嫌が吹き飛び上機嫌になったのはいいが、俺が悲しい休日だった。ただ、まあ、ふみはずっと楽しそうだったし、いいか。

拍手[16回]