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2024年11月21日
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【雪ねえ 日常風景】

2013年11月29日
 近頃の冬めき具合と来たら、朝起こしに来た雪ねえがそのまま俺の布団の中に潜り込んでくる程度には寒いらしい。
「だから、彰人が起きた時にお姉ちゃんが布団の中にいても、全然変なことじゃないんだぞ?」
「いいえ」
「彰人が騙されない……」
 今日も朝から雪ねえが人の布団に潜り込んでくるので、それはダメだと説教をしています。
「むぅ。しかしだな、彰人。毎日お前はお姉ちゃんに起こされているのだし、お姉ちゃんに少しくらいサービスしてくれてもいいと思うのだが!」
「もうちょっと別の何かでお願いします」
「むぅ。仕方ない、お風呂で身体の流しっこをすることで、今日のところは我慢してやろう。あーあ、残念残念」チラッチラッ
「ダメだ」
「ええっ!?」
「この姉は学年首位常連のくせに頭が悪いなあ」
「真顔!? ううっ……ひどいぞ彰人!」
「へーへー」
 適当に姉をあしらいつつ、パジャマを着替える。
「…………」ジーッ
 だが、ものすごい顔でこちらを凝視している姉が非常に気がかりなので、ご退室願う。
「あ、大丈夫だ。お姉ちゃんはお姉ちゃんだから、気にしなくていい。それとも手伝うか? 手伝ってもいいか? 脱がしっこするか?」
「NONONO」
「オラオラですかー……」
 肩を落として雪ねえが部屋を出て行った。手早く着替えてリビングへ向かう。
「むー」
 すると、ちょっとご立腹な感じの雪ねえがチョコンと椅子に腰掛けていた。その前のテーブルには、朝の用意がしてある。俺が着替えている間に温め直してくれたのだろう。
「毎日ありがとうな、雪ねえ」ナデナデ
「あっ、こ、こら、お姉ちゃんをなでるとはなにごとかー」ニコニコニコ
 超満面の笑みで不満を口にする雪ねえは今日も可愛い。
「分かった、二度となでない」
「その場合、今日からご飯を作ってあげない」
「すいませんでした」
 胃の管理を任せている以上、勝てるわけもない。最初から勝負は決まっていた。壊れたオモチャのようにペコペコ謝り、雪ねえの隣の席に座り飯を食う。
「どうだ? おいしいか?」
「おいしい」モグモグ
「ふふ、そうか。お代わりもあるから沢山食べるんだぞ? あ、こぼれてるぞ。まったく、仕方がないなあ」フキフキ
 幸せそうに微笑みながら、ハンカチで俺の口元を拭う雪ねえ。完全に幼児扱いだ。
「あの、雪ねえ。言ってくれれば自分で拭うから」
「お姉ちゃんの仕事を取るな」
「俺の口を拭うことは、雪ねえの仕事に含まれません」
「横暴だ! そんなこと言う彰人なんて、直接舐めて汚れを取ってやる!」
「雪ねえが妖怪化した」
「してない!」
 いつものように楽しく食事を終え、家を出る。
「お弁当はいつものように鞄に入れておいたからな?」
 てろてろと学校へ向かっていると、隣から雪ねえが声をかけてきた。
「ん、サンキュ。雪ねえの弁当は毎日楽しみだよ」
「お、お姉ちゃんをおだててどうするつもりだ! この、このー!」
 普通に感謝しただけなのに、ものすごくニコニコしながら抱っこされたうえ、全力で頭をなでられた。
「幼児扱いからペット扱いに位が下がった気がする」
「ふふーうふふー彰人は人に感謝ができるいい子だなー」ナデナデ
「普通です」
「ふふ……ふう。なあ彰人。これは提案なんだが、今日はもう学校サボってお姉ちゃんと一緒に一日中イチャイチャしないか?」キリッ
 このように、時折ではあるが雪ねえは頭がおかしくなるので、俺がチョップして直してあげないといけない。というわけで、てい。
「あうっ。うー、ひどいぞ彰人ぉ!」
「いや、雪ねえの頭の中身に比べたら、俺なんて全然」テレテレ
「本当にひどいぞ彰人……」
 恨めしげな目で睨まれているので、頭をなでてご機嫌を回復させる。
「ふん。こんなものでお姉ちゃんの機嫌が直るとでも思ったか。今日は一緒にお弁当食べないと許さないからな!」
「え」
 雪ねえと一緒に昼飯。それはつまり雪ねえの教室(当然周りは上級生ばかり)で、雪ねえ謹製のお弁当を雪ねえに食べさせられる……。
「いかん、震えてきた」
「風邪!? いかん、このままだと彰人が死ぬ!」
「死にません」
「いいや、死ぬ!」
 姉が酷いことを断言した。
「そう言われると、死ぬかも」
 流されやすいことで評判のある俺なので、急に死ぬ気が増してきた。このままでは死ぬ。
「ほら! やっぱり今日は学校を休んでお姉ちゃんとイチャイチャイチャイチャしよう! 決定だ! やったあ!」
「看病は?」
「さて、何からしようかなあ……とりあえず一緒に布団で寝るだろ、抱っこだろ、ちゅーだろ、それからそれから……」
 雪ねえが夢の世界へ旅立った姿を見ている内に、俺の死ぬ気が失せてきた。
「じゃあそろそろ学校へ行きましょうか」
「え、あれ? え、休んでイチャイチャするんじゃないの……?」
「学校をサボるなんていけないことだぞ?」
「う、そ、そうだけど、わかってるけど……お姉ちゃん、たまには弟とイチャイチャしたいんだもん!」
「だもんじゃねえ」
「うう……なんて冷たい弟だ。お姉ちゃんは悲しいぞ」
「冬だから冷たいのは仕方がないよ」ピトッ
「わひゃっ!? そういうことじゃ……本当に冷たいじゃないか」
 雪ねえの頬に手を当てたら、その手を掴まれ、ジローっと睨まれた。
「え、あ、はぁ。冬ですから」
「暖かくしないと風邪をひくといつもいつも口を酸っぱくして言っているだろっ! まったく、これだから彰人は……」
 ブツクサ言いながら、雪ねえは俺の手を両手で包み込み、優しくスリスリとこすった。
「どうだ? 少しはマシか?」
「あ、うん。そだね」
「……むぅ。だが、手はあまり暖かくなってないぞ。そもそも私自身の手も暖かくないし……そうだ!」
 次の瞬間、雪ねえは普通に俺の手を自分の豊満な胸に押し当てた。
「…………。え?」
「ほら、こうしたら温かいだろう。後で反対の手もしてやるからな?」
 そう言いながらも、俺の手を自分の胸に埋めることは忘れない。気がつけば俺の手は雪ねえの谷間に挟まれている!
「…………。ああ。夢か。そりゃそうだ。流石にないよな」
「何を言っているのだ?」
「夢ならえっちなことをしてやれ」ムニムニ
「あっ! こ、こら、手を動かすな! うう……お姉ちゃんのおっぱいで遊ぶな、ばかもの」
「…………」
 どうにも手触りが生々しい。どうしても夢とは思えない。手に伝わる温かみも、柔らかさも、指が胸に埋まる感覚も、その全てが現実と告げている。
「ははぁ。つまり俺のしていることは、ただのどえらいセクハラだな?」
「つ、次は反対の手だが……もうお姉ちゃんのおっぱいを揉んだらダメだぞ? そーゆーのは家でしないとダメだからな?」
 雪ねえは顔を赤くしながら俺の右手を自分の胸からどけると、今度は俺の左手を取り、先ほどと同じように自分の胸に挟んだ。
「……いやいや、いやいやいや! いい、しなくていい! いいって、雪ねえ!」ワタワタ
「あうっ! も、揉むなと言ったのにぃ!」
 雪ねえの狼狽した顔に、思わず視線を下にずらすと、成る程俺の手が雪ねえの胸の形を制服の上からでもはっきり分かるほど大きく歪めていることが分かる。
「ああ、動揺した時に思わず手が動いておっぱいを揉む動作になったんだろうね。ははは」
「うう~。お姉ちゃんは温めているだけなのに……どうして彰人はそんなにえっちなんだ?」
 突然乳に手を挟まれたら誰だって似たような行動をとると思います。
「そ、そーゆーのは、外でしたらダメなんだぞ? 分かったか、彰人?」
 外だけでなく家でもしてはダメだと思います。
「わ、分かったなら大人しくしているんだぞ」
 そしてどうして再び温め直そうとしますかこの姉は!!!
「だー! もういいっての!」
 これ以上は理性が持たない。柔らか地獄から勢い良く手を引き抜く。さよなら天国。
「ひゃっ! もう、いきなり手を抜いたら危ないじゃないか!」
「ええい! どれだけ危ないことをしているのか自覚ないのか、この無防備美人め!」
「お、怒りながら褒めるな、ばかもの!」
 雪ねえは照れながら怒った。かわいい。
「いくら寒そうだからって、誰かれ構わず胸に挟んで温めるってのは年頃の乙女として正直どうかと思いますよ! 痴女としては大正解ですが!」
「痴女!? ば、馬鹿にするな! ここは彰人専用に決まっているだろう!」
 雪ねえが胸を張って言った。その手は自分のボインとした感じのところを指している。
「……と、というか、お姉ちゃんの身体は全部彰人専用だし」
 何か下向いてゴニョゴニョ言ってる。そして全部聞こえてる。
「じゃあ雪ねえはシャア専用ザクとズゴックのどっちが好きなんだよ!?」
「何が!?」
「というか、なんだ。それなら無防備美人と言ったのは誤りだ。悪かった。雪ねえはただの美人です。拍手」パチパチ
「褒め殺しか!?」
「ああ、将来の夢ははめ殺しだ」
「……窓?」
 適当なことばかり言っていたら将来の夢が窓になってしまった。
「窓なのに展望が見えないとはこれいかに」
「今日も彰人は意味不明だな」
「んなことより雪ねえ、そろそろ急いだほうがよろしいかと」
「ん? 家を出た時はまだまだ余裕があったと……」
 ケータイを取り出した雪ねえの顔色が変わった。
「雪ねえが第二形態に」
「一時間目までもう10分しかないぞ!? 30分以上余裕があったのに!」
「慌てるな、雪ねえ! 逆に考えるんだ、『遅刻してもいいや』と考えるんだ」
「お姉ちゃんも好きだけど、お前は本当にジョジョが好きだな……」
 雪ねえはちょっとウンザリした顔をした。
「というわけで、気にせず行こう。大丈夫、運がよけりゃギリギリで着くさ」
「……そう、だな。うん、お姉ちゃんの皆勤賞なんかより彰人と一緒にゆっくり歩くほうが大事だ! よし、のんびり行こうか、彰人」
「走るぞ雪ねえ!」
「のんびりはどこへ行った!?」
 なんか半泣きの姉の手をとって必死に走りました。

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Comment
No title
なぜひんぬーじゃないんですか?(憤怒)

最近寒くなってきたからなんか丸くて温かいものに手を挟みたくなるな
No title
素晴らしい。
PCの無い環境に送り込まれる前に読めて良かった。
無題
こういう姉が欲しいです
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