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2024年11月22日
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【犬子 正月】

2010年02月04日
 お正月なので人間なのか身体がコタツの亀なのか分からない生物になってる符長彰人ですこんにちは。
 暖けえと思ってたら、インターホンが鳴った。しかし、今の俺は亀なので移動に時間がかかるので移動せずにぬくぬくモードを持続する。
 すると、今度は連続してインターホンが鳴った。うるせえ。しかし、今の俺は強情な亀なのでやっぱり移動せずにコタツに篭る。
「符長くん符長くん符長くーん!」
 無視を決め込んでいたら、表から頓狂な叫びが聞こえてきた。正月から俺の名前を見知らぬ人々に知らしめても恥ずかしいだけなので、急いで表へ向かう。
「ミラクルうるせえ!」
「あ、符長くん。あけましておめでとうございます。今年もよろしくね?」
 表でニコニコしてる友人の犬子の頭をはたく。
「ぶった!? 符長くん、わたし女の子、女の子!」
「俺は男の子だ」
「知ってるよ?」
「じゃあいいや。それじゃまた学校で」
「待って待って閉めないで遊びに来たんだよ!」
 玄関のドアを閉めようとしたら、犬子は慌てて用件を伝えた。
「なんだ。最初からそう言えばいいのに。寒かったろう、早くあがれ」
「言う暇も与えられずドア閉められそうになったのにぃ……」
 ぶちぶち言いながら犬子は家に入った。ドアを閉め、外から鍵を閉める。さらにノブを押さえて開かないようにする。
「えへへ。あのね、符長くん。……符長くん? あれ、いない!? 符長くん外!? ……あっ、開かない! 閉じ込められた!?」
 混乱する様が面白かったので、しばらく様子をみることにする。
「出して符長くん出して! あっ、そだ、中から鍵開けたら……あれ、開けたのにドア開かない!? 符長くんドア押さえてる?」
 黙ったまま事の成り行きを眺める。
「む、無視しないでよ符長くん! そ、それともいないの? ……ふ、符長くん?」
 声が不安そうになってきた。よし、いい感じだ。
「ふ、ふえぇ……」
 あ、いかん。慌ててドアを開けると、涙目の犬子が迷子の子供みたいな表情でそこにいた。
「い、いるなら返事してよぉ! うー……」
 怒ったようなほっとしたような表情で、犬子は俺を見た。
「すまん。一人で混乱するお前が面白くて面白くて」
「符長くん、悪趣味だよぉ……」
「確かにちょっとやりすぎた。ごめん」
 詫びの意味も込めて犬子の頭をなでる。
「わふー……」
 変な声で不満を訴える犬子。鳴き声?
「お詫びと言ってはなんだが、姫初めしよう」
「しっ、しないよっ! 符長くんのえっち!」
「思春期の男子なんてこんなもんだ。さて、どうする? どっか遊び行くか? それとも家で遊ぶか?」
「んー……とね、家で遊ぼ? 外はどこも人多いし。ね?」
「そうすっか」
 犬子と一緒に家に入り、そのまま滑らかにコタツへ侵入。もう動けねえ。
「あ゛ー……寝間着で外にいたから、コタツのありがたみが普段より150%増しだ」
「猫みたいだね、符長くん」
「お前は犬だからコタツ苦手だろ」
「いっ、犬じゃないよ、犬じゃないよ!?」
「犬子という頓狂な名を持つくせに犬じゃないとな。解せぬ」
「犬子って符長くんがつけたあだ名だよ!? 解せぬ、じゃないよ!」
 変なことを言う犬だなあ。
「うー、分かってないフリするしぃ……」
「何のことやら。さて、何する? ゲームでもするか?」
「んー……どしよっかな」
 俺のすぐ隣に座り、犬子は軽く宙を眺めた。何をするか考えを巡らせているようだ。
 なんとなく、無言で犬子の犬耳をいじる。
「ん? なぁに?」
「体温を感じないが、この犬耳は血が通ってないのか?」
「こっ、これは犬耳じゃなくて髪型だよう!? マクロスのランカちゃんの髪型といーっしょ!」
 変な犬耳だなあ。
「うー、ちっとも聞いてないしぃ……」
 変ではあるが、さらさらで気持ちいいなあ。
「……あの、符長くん。なんで私の髪ずーっと触ってるの?」
「あ、すまん」
 慌てて手を離す。いくら親しい仲とはいえ、馴れ馴れしかったか。
「あ、嫌とかじゃなくて! なんでなのかなーって」
「いや、深い理由はない。さらさらして気持ちよかったから触っただけだ」
「え、そう? えへ、ちょーっとだけ自信あるんだ。もっと触りたい?」
「大胆な犬だな。よし、乳をまろびだせ。揉みしだいてやる」
「髪の話だよう!?」
「知ってたけど、話の展開によってはむにむにできるかなーと思ったんだ」
「できないよっ! 符長くんのえっちえっちえっち!」
 犬子はぺけぺけ俺の胸を叩いた。犬子はよわよわなのでちっとも痛くないが、鬱陶しいことこの上ない。
「さてと、何するかな」
「うー、叩いてるのにちっとも堪えてない……」
「……そうだ! 飼い主と犬ごっこをしよう! 説明しよう、飼い主と犬ごっことは」
「全部言ってるよ! どーせ私が犬なんでしょ? わんわん!」
「早速犬になりきっている……なんという犬ぢからか!」
「ばかにされてるよぉ……」
「というわけで、この遊びをしましょう。やったことない上にさっき思いついただけの底の浅い遊びだけど、きっと楽しいよ?」
「楽しそうな要素ぜろだけど、いいよ。することないし、やるよ。でも、あんまり酷いことしたらヤだよ?」
「…………。うん、酷いことしない」
「不安しか感じないよぉ……」
 俺はあまり犬子に信頼されていないようだった。
「じゃ、今から犬子は犬。あまり変化がないな。わはは」
「ありまくりなのに……それで、どんな犬なの? 室内犬?」
「ちっこいの。飼い主が好きだぜ好きだぜ好きすぎて死ぬぜってくらいの犬」
「え……そ、そーゆーのを私がするの?」
「じゃあ、飼い主が嫌いで嫌いで隙あらば喉笛を噛み千切ろうと画策している犬にするか」
「物騒だよ! そ、それなら最初の、……えと、符長くんのことが好きな犬でいいよ」
「よし、それなら開始。可愛いなあ、犬子は可愛いなあ」
 今の俺は飼い主なので、飼い犬の犬子の頭をなでて可愛がる。
「わ、わわ……は、はぅ」
「はぅ、じゃねえ。犬だろう、今は」
「あ、そだった。えと……わ、わんわん♪」
「いやはや、まったく犬子は可愛いなあ。特に小便を所構わず垂れ流すのが頭足りない感じでたまらないな」
「酷い設定だよう!?」
「喋るなっての」
「うー……不満がたっぷりだよ」
 その不満を消すように、犬子の頭をなでる。
「くふ。……わふ?」
 上目遣いで俺を見る犬子の頭を、さらになでなで。
「……わふわふ。わふ♪」
 嫌いではないようだ。さらに犬子の頭をなでる。
「くぅ~ん……ふゅん」
 犬子は自分の鼻を俺の胸に押し付け、胸いっぱいに息を吸い込んだ。
「……きゅー♪」
 よく分からんが、楽しそうで何よりだ。
「わんわん、わんわん♪」
 満面の笑みでわんわん言う犬子を見てると、こう、胸の内側がきゅーっとしてくる。
「むう。心筋梗塞か?」
「符長くんが死にかけてる!?」
「あ、喋った。アウト」
「アウト!? え、そーゆールールなの?」
「そう。なので、罰ゲーム」
「は、はぅぅ……何するの? 痛いのなしだよ?」
「丸刈り」
「女の子に対してあんまりな仕打ちだよう!?」
「それが嫌なら、今年も俺と仲良くすること。それが罰ゲーム」
「? それ、罰ゲームでもなんでもないよ? だって、私と符長くんは仲良しさんだもんね?」
 犬子は俺の手を取り、にっこり笑った。まっすぐな笑顔を向けられると、俺みたいな根性ひん曲がった人間は照れて身動きができなくなる。
「あっ、符長くん顔真っ赤! あは、かわいー♪」
 調子に乗ってる犬子のほっぺをぎうーっと引っ張る。
「ひゃ、ひゃふー……」
 困った顔をする犬子だった。

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