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2024年11月21日
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【沙夜 カップ麺】
2010年02月06日
ここ数日金欠なので、昼は体にあまりよくないと知りつつ庶民に優しいカップ麺ばかり食べてる。ぺりぺりと包装を破いてたら、カップ麺に影が差した。顔を上げると、知り合い。沙夜だ。
「どした?」
「…………」
沙夜は何も言わず、じぃぃぃぃっと俺のカップ麺を見てる。
「欲しいのか? やらんぞ」
蓋を取り、職員室から拝借してきたヤカンでカップにお湯を入れ蓋をする。
「…………」
その様子をじーっと見てる沙夜。
「なんだ? ひょっとして、弁当忘れたのか?」
そう尋ねると、沙夜はぷるぷると首を横に振って自分の席に戻った。そして鞄から弁当箱を取り出し、また戻ってきた。
「…………」
そして見せ付けるようにぐいぐい俺に押し付けてくる。俺の顔に。
「お前が弁当持ってることは分かった。分かったから押すな」
満足そうに鼻息を漏らすと、沙夜は再びじぃぃぃぃっとカップ麺を見つめた。
「……繰り返すが、やらんぞ」
沙夜は弁当箱で俺の顔をぺしぺし叩いた。痛え。
「お前は弁当持ってるんだから、それ食え。これは俺の」
俺の話なんてちっとも聞かず、沙夜はなおも俺の顔を弁当箱でべしべし叩いた。痛いっての。
「……ん、3分経ったか」
蓋を取り除くと、ふわりと湯気が舞い上がった。うまそう。
「さて、いただきます」
両手を合わせていただきますを言ってたら、横から手が伸びてきてカップ麺と箸を奪われた。
「…………。いやいや、いやいやいや! 俺の飯だから! 返せ沙夜!」
沙夜はカップ麺を持ったまま走って逃げた。ていうかアイツ食いながら逃げてやがる!
「てめえ、何しやがる! てめえ!」
もう半泣きで沙夜を追いかける。あれを食われると本日の摂取カロリーが足らなくなる。
「…………♪」
あんにゃろう、ちらりとこっちを振り向いては満足そうに麺をすすってやがる! チクショウ、俺のカップ麺!
「唸れ俺の脚、輝け俺の肺、瞬け俺の生命!」
いらんこと言ってる間に距離を空けられた。ぜいぜい言いながら米粒みたいに小さくなってる沙夜を追いかける。
「ひー……たまには、運動、しねぇとな……はひー」
沙夜を追いかけ、見失い、道行く人々に尋ね、たくさん階段を上る。きしむドアを開け、屋上へ。
「はぁはぁはぁ……お、追い詰めたぞ、沙夜!」
「…………」
沙夜はカップ麺の最後の汁を飲み干してた。
「遅かったぁぁぁぁぁ……」
力なく膝から崩れ落ちる。無駄にカロリー使っちまったし、もうこのまま朽ちてしまいそう。
「…………」
沙夜は俺の肩に手を置き、ぷるぷると首を横に振った。まだまだ甘いらしい。
「おまえなあ……冗談にしては悪質だぞ。俺の飯……」
泣きそうになってる俺の視界に、布に包まれた四角い箱が。つい、と顔を上げる。
「弁当……? え、くれるの?」
沙夜はコクコクとうなずいた。
「なんで?」
尋ねると、沙夜はげふーとゲップした。
「腹いっぱいスか……」
じゃあ最初から取るな、と思ったが、そこではたと気づく。
まさか、最近カップ麺ばっか食ってたから、それじゃ栄養が偏ると思って、わざと……?
じっ、と沙夜の顔を見る。何かを察したのか、沙夜は顔を逸らした。ほんのり頬が赤い。
「……ありがとな、沙夜」
何のことか分からない、とでも言いたげにぷるぷる首を振る沙夜だったが、頬の赤みは強くなってた。
「言いたいから言っただけだ、気にするな。さってと、食うか!」
弁当箱を開ける。なんか緑まみれ。ていうかおかずが野菜。超野菜。
「……超ヘルシーですね、この弁当」
コクコク、と嬉しそうな沙夜のこめかみをぐりぐり。
「肉を入れろ、肉を! 力が出ねえよ!」
俺の手を取り、沙夜は半泣きになりながらも負けじと俺の指をがじがじかじった。
「痛い痛い痛い! いやちょっと肉が食いたかっただけで別に嫌とかそんなじゃなくてそのごめんなさい俺が悪かったです!」
あまりの痛みに許しを請うと、沙夜はぴたりと俺の指をかじるのをやめ、ちゅーちゅー吸い始めた。
「あー……許してくれる、と」
俺の指をちゅーちゅーしながら沙夜はコクコクうなずいた。
「そか。サンクス。じゃ、飯食うんで手を解放してくれると助かる」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「……いやいや。片手じゃ飯食えないし」
ぷるぷるぷる。食えと。片手で食えと。
「……分かったよ。食うよ、食いますよ」
左手に箸、右手に沙夜の舌。どんな二刀流だ。
「でも、せめて手を交換してくれると助かります」
ぷるぷるぷる。ダメらしい。
「あははー、思いがけず両利きの訓練できてラッキー」
やけくそ気味にそう言い、震える手で飯を食う。超食いにくい。
「…………♪」
そんな俺を楽しげに眺めつつ、人の指をちうちうれろれろする沙夜だった。
「どした?」
「…………」
沙夜は何も言わず、じぃぃぃぃっと俺のカップ麺を見てる。
「欲しいのか? やらんぞ」
蓋を取り、職員室から拝借してきたヤカンでカップにお湯を入れ蓋をする。
「…………」
その様子をじーっと見てる沙夜。
「なんだ? ひょっとして、弁当忘れたのか?」
そう尋ねると、沙夜はぷるぷると首を横に振って自分の席に戻った。そして鞄から弁当箱を取り出し、また戻ってきた。
「…………」
そして見せ付けるようにぐいぐい俺に押し付けてくる。俺の顔に。
「お前が弁当持ってることは分かった。分かったから押すな」
満足そうに鼻息を漏らすと、沙夜は再びじぃぃぃぃっとカップ麺を見つめた。
「……繰り返すが、やらんぞ」
沙夜は弁当箱で俺の顔をぺしぺし叩いた。痛え。
「お前は弁当持ってるんだから、それ食え。これは俺の」
俺の話なんてちっとも聞かず、沙夜はなおも俺の顔を弁当箱でべしべし叩いた。痛いっての。
「……ん、3分経ったか」
蓋を取り除くと、ふわりと湯気が舞い上がった。うまそう。
「さて、いただきます」
両手を合わせていただきますを言ってたら、横から手が伸びてきてカップ麺と箸を奪われた。
「…………。いやいや、いやいやいや! 俺の飯だから! 返せ沙夜!」
沙夜はカップ麺を持ったまま走って逃げた。ていうかアイツ食いながら逃げてやがる!
「てめえ、何しやがる! てめえ!」
もう半泣きで沙夜を追いかける。あれを食われると本日の摂取カロリーが足らなくなる。
「…………♪」
あんにゃろう、ちらりとこっちを振り向いては満足そうに麺をすすってやがる! チクショウ、俺のカップ麺!
「唸れ俺の脚、輝け俺の肺、瞬け俺の生命!」
いらんこと言ってる間に距離を空けられた。ぜいぜい言いながら米粒みたいに小さくなってる沙夜を追いかける。
「ひー……たまには、運動、しねぇとな……はひー」
沙夜を追いかけ、見失い、道行く人々に尋ね、たくさん階段を上る。きしむドアを開け、屋上へ。
「はぁはぁはぁ……お、追い詰めたぞ、沙夜!」
「…………」
沙夜はカップ麺の最後の汁を飲み干してた。
「遅かったぁぁぁぁぁ……」
力なく膝から崩れ落ちる。無駄にカロリー使っちまったし、もうこのまま朽ちてしまいそう。
「…………」
沙夜は俺の肩に手を置き、ぷるぷると首を横に振った。まだまだ甘いらしい。
「おまえなあ……冗談にしては悪質だぞ。俺の飯……」
泣きそうになってる俺の視界に、布に包まれた四角い箱が。つい、と顔を上げる。
「弁当……? え、くれるの?」
沙夜はコクコクとうなずいた。
「なんで?」
尋ねると、沙夜はげふーとゲップした。
「腹いっぱいスか……」
じゃあ最初から取るな、と思ったが、そこではたと気づく。
まさか、最近カップ麺ばっか食ってたから、それじゃ栄養が偏ると思って、わざと……?
じっ、と沙夜の顔を見る。何かを察したのか、沙夜は顔を逸らした。ほんのり頬が赤い。
「……ありがとな、沙夜」
何のことか分からない、とでも言いたげにぷるぷる首を振る沙夜だったが、頬の赤みは強くなってた。
「言いたいから言っただけだ、気にするな。さってと、食うか!」
弁当箱を開ける。なんか緑まみれ。ていうかおかずが野菜。超野菜。
「……超ヘルシーですね、この弁当」
コクコク、と嬉しそうな沙夜のこめかみをぐりぐり。
「肉を入れろ、肉を! 力が出ねえよ!」
俺の手を取り、沙夜は半泣きになりながらも負けじと俺の指をがじがじかじった。
「痛い痛い痛い! いやちょっと肉が食いたかっただけで別に嫌とかそんなじゃなくてそのごめんなさい俺が悪かったです!」
あまりの痛みに許しを請うと、沙夜はぴたりと俺の指をかじるのをやめ、ちゅーちゅー吸い始めた。
「あー……許してくれる、と」
俺の指をちゅーちゅーしながら沙夜はコクコクうなずいた。
「そか。サンクス。じゃ、飯食うんで手を解放してくれると助かる」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「……いやいや。片手じゃ飯食えないし」
ぷるぷるぷる。食えと。片手で食えと。
「……分かったよ。食うよ、食いますよ」
左手に箸、右手に沙夜の舌。どんな二刀流だ。
「でも、せめて手を交換してくれると助かります」
ぷるぷるぷる。ダメらしい。
「あははー、思いがけず両利きの訓練できてラッキー」
やけくそ気味にそう言い、震える手で飯を食う。超食いにくい。
「…………♪」
そんな俺を楽しげに眺めつつ、人の指をちうちうれろれろする沙夜だった。
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