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2024年11月21日
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【寝癖が直らない沙夜】
2010年09月04日
寝てると神が降臨。
「…………」(くいくい、くいくい)
ではなく、幼なじみの沙夜が降臨。くいくいと布団を引っ張っているところから察するに、起こしにきたらしい。
「……んん、んあ。……ああ、もう朝か。早いなあ。眠いなあ。よし、今日は学校休もう」
そうと決まればもう一度布団を被りなおし寝なおそうと思ったら、再び布団をくいくい引っ張る感覚。
「…………」(くいくい、くいくい)
薄く目を開けると、沙夜が少し困った顔をしながら布団をくいくい引っ張っていた。
「うーん。起きなきゃダメか?」
「…………」(こくこく)
「沙夜がちゅーしてくれたら起きる」
沙夜は少し困った顔をした。
「しないなら寝る」
そう言って目をつむるが、少し薄目を開けておく。
沙夜はほんの少し逡巡した後、薄く頬を染め、ゆっくり顔をこちらに近づけた。充分引き付けてから、おでこに頭突きをかます。
「…………」
沙夜は片手でおでこを押さえ、不満げに俺をにらんだ。
「こんな簡単な罠にはまる己の無能さを恨むがいい。ふわーっはっはっは!」
朝から大声で笑ったせいで目が覚めてしまった。しょうがない、起きるか。
「…………」(がぶがぶ)
沙夜に左手を噛まれたまま居間へ。母さんが俺と沙夜を見て呆れたように息を吐いた。
「アンタまた沙夜ちゃん怒らせたの?」
「沙夜が馬鹿だからしょうがないんだ」
「…………」(がぶがぶがぶ)
俺の手が受ける痛みが増加した。
「沙夜、そろそろ血が出るのでやめてくれると大変嬉しい」
「…………」(じーっ)
何か言いたげに、沙夜は俺の手を咥えたままこちらをじっと見た。
「……ええと。馬鹿呼ばわりしてごめんなさい」
一応は謝ったのだが、未だ俺の手は沙夜の歯が食い込んだままだ。はて。
「……ああ! それと、沙夜。毎日起こしてくれてありがとうな。感謝してる」
これで満足したのか、ようやっと沙夜は俺の手を離してくれた。涎やら歯形やらで大変なことになっているが、とにかく痛みからは解放された。やれやれだ。
沙夜は俺の手をぺろぺろ舐めて治すと、隣の椅子に座り、食卓に置かれた焼きたてのパンに手を伸ばした。俺もいただく。
「うん。今日もうちのパンはうまい」
「…………」(こくこく)
「特売で買ってきたパンなのに……安上がりな息子と嫁で大助かりよ」
「結婚した覚えはないのですが」
「…………」(こくこく)
俺と沙夜の抗議を全く気にせず、母さんはテレビを見るばかり。
「まあいいか。しょうがないので結婚しようか、沙夜」
母さんの間違いを正解にすべく、沙夜の手を取ってプロポーズしてみる。
「…………」(こくこく)
「受け入れるな。冗談だ」
沙夜の顔が残念そうなものへと変化していった。
そんなこんなで飯も食い終わり、沙夜と一緒に登校。
「……ん?」
いつものようにだらだら歩いてると、沙夜の髪がはねてることに気づいた。
「沙夜、頭」
そう言うと、沙夜は何の躊躇もなく俺に頭突きをしてきた。鎖骨折れるかと思った。
「違う、誰もいきなり頭突きをしろなんて言ってない。髪がはねてるぞ」
そう言われて初めて沙夜は自分の頭を触った。頭の丁度真ん中、つむじあたりの髪が一本重力に逆らうように天にそびえ立っていた。
「アホ毛みたいで素敵ですね」
沙夜は不満げに俺を睨んだあと、両手でぎゅーっと髪を押さえつけた。しかし、そんなもので寝癖が直るはずもなく、手を離すとすぐにまたぴょこんと髪が立ち上がった。
「…………」
直ってないと知り、沙夜は少し悲しそうな顔をした。
「大丈夫だ、沙夜。俺に任せろ」
沙夜の頭に手を置き、むぎゅーっと押さえる。
「!!?」
力が強すぎたのか、沙夜がゆっくりと沈んでいった。
「あ、すまん」
「…………」(がぶがぶ)
「不可抗力なので、噛まないでいただけると何かと助かります」
しかし、沙夜は噛むのをやめない。しょうがないので左手を噛まれたまま、今度はそれなりに力を調整して沙夜の頭をぎゅっと押さえる。
しばらく押さえた後、そっと手を離す。やはり髪がぴょこんと立ち上がった。
「うーん。一度帰って濡れタオルか何かで直すか? でも今から戻ったら遅刻確定だしなあ……」
「……!」
何か閃いたのか、沙夜は俺の手を取って自分の頭へ誘った。そして、ぽふりと頭に手を置いた。
「ほう。それで?」
沙夜は俺の手を左右に動かした。そして、小さくうなずいた。
「ええと、頭をなでる運動により寝癖を粉砕する、ってことか?」
「…………」(こくこく)
「俺の気のせいでなければ、なでられたいだけでは」
「…………」(こくこく)
肯定されるとは思わなかった。しょうがないので沙夜の頭をなでる。
「よしよし」(なでなで)
「…………」(こくこく)
「よしよし」(なでなで)
「…………」(こくこく)
何そのうなずき。そして何この一連の動作。
「でもまあ楽しいからいいか!」
「…………」(こくこくこく)
そんな感じで道端で足を止めて沙夜の頭をなで続けてたので、遅刻した。
「…………」(がぶがぶ)
「俺のせいじゃないのに」
沙夜に手を噛まれながら校門をくぐる俺たちだった。
「…………」(くいくい、くいくい)
ではなく、幼なじみの沙夜が降臨。くいくいと布団を引っ張っているところから察するに、起こしにきたらしい。
「……んん、んあ。……ああ、もう朝か。早いなあ。眠いなあ。よし、今日は学校休もう」
そうと決まればもう一度布団を被りなおし寝なおそうと思ったら、再び布団をくいくい引っ張る感覚。
「…………」(くいくい、くいくい)
薄く目を開けると、沙夜が少し困った顔をしながら布団をくいくい引っ張っていた。
「うーん。起きなきゃダメか?」
「…………」(こくこく)
「沙夜がちゅーしてくれたら起きる」
沙夜は少し困った顔をした。
「しないなら寝る」
そう言って目をつむるが、少し薄目を開けておく。
沙夜はほんの少し逡巡した後、薄く頬を染め、ゆっくり顔をこちらに近づけた。充分引き付けてから、おでこに頭突きをかます。
「…………」
沙夜は片手でおでこを押さえ、不満げに俺をにらんだ。
「こんな簡単な罠にはまる己の無能さを恨むがいい。ふわーっはっはっは!」
朝から大声で笑ったせいで目が覚めてしまった。しょうがない、起きるか。
「…………」(がぶがぶ)
沙夜に左手を噛まれたまま居間へ。母さんが俺と沙夜を見て呆れたように息を吐いた。
「アンタまた沙夜ちゃん怒らせたの?」
「沙夜が馬鹿だからしょうがないんだ」
「…………」(がぶがぶがぶ)
俺の手が受ける痛みが増加した。
「沙夜、そろそろ血が出るのでやめてくれると大変嬉しい」
「…………」(じーっ)
何か言いたげに、沙夜は俺の手を咥えたままこちらをじっと見た。
「……ええと。馬鹿呼ばわりしてごめんなさい」
一応は謝ったのだが、未だ俺の手は沙夜の歯が食い込んだままだ。はて。
「……ああ! それと、沙夜。毎日起こしてくれてありがとうな。感謝してる」
これで満足したのか、ようやっと沙夜は俺の手を離してくれた。涎やら歯形やらで大変なことになっているが、とにかく痛みからは解放された。やれやれだ。
沙夜は俺の手をぺろぺろ舐めて治すと、隣の椅子に座り、食卓に置かれた焼きたてのパンに手を伸ばした。俺もいただく。
「うん。今日もうちのパンはうまい」
「…………」(こくこく)
「特売で買ってきたパンなのに……安上がりな息子と嫁で大助かりよ」
「結婚した覚えはないのですが」
「…………」(こくこく)
俺と沙夜の抗議を全く気にせず、母さんはテレビを見るばかり。
「まあいいか。しょうがないので結婚しようか、沙夜」
母さんの間違いを正解にすべく、沙夜の手を取ってプロポーズしてみる。
「…………」(こくこく)
「受け入れるな。冗談だ」
沙夜の顔が残念そうなものへと変化していった。
そんなこんなで飯も食い終わり、沙夜と一緒に登校。
「……ん?」
いつものようにだらだら歩いてると、沙夜の髪がはねてることに気づいた。
「沙夜、頭」
そう言うと、沙夜は何の躊躇もなく俺に頭突きをしてきた。鎖骨折れるかと思った。
「違う、誰もいきなり頭突きをしろなんて言ってない。髪がはねてるぞ」
そう言われて初めて沙夜は自分の頭を触った。頭の丁度真ん中、つむじあたりの髪が一本重力に逆らうように天にそびえ立っていた。
「アホ毛みたいで素敵ですね」
沙夜は不満げに俺を睨んだあと、両手でぎゅーっと髪を押さえつけた。しかし、そんなもので寝癖が直るはずもなく、手を離すとすぐにまたぴょこんと髪が立ち上がった。
「…………」
直ってないと知り、沙夜は少し悲しそうな顔をした。
「大丈夫だ、沙夜。俺に任せろ」
沙夜の頭に手を置き、むぎゅーっと押さえる。
「!!?」
力が強すぎたのか、沙夜がゆっくりと沈んでいった。
「あ、すまん」
「…………」(がぶがぶ)
「不可抗力なので、噛まないでいただけると何かと助かります」
しかし、沙夜は噛むのをやめない。しょうがないので左手を噛まれたまま、今度はそれなりに力を調整して沙夜の頭をぎゅっと押さえる。
しばらく押さえた後、そっと手を離す。やはり髪がぴょこんと立ち上がった。
「うーん。一度帰って濡れタオルか何かで直すか? でも今から戻ったら遅刻確定だしなあ……」
「……!」
何か閃いたのか、沙夜は俺の手を取って自分の頭へ誘った。そして、ぽふりと頭に手を置いた。
「ほう。それで?」
沙夜は俺の手を左右に動かした。そして、小さくうなずいた。
「ええと、頭をなでる運動により寝癖を粉砕する、ってことか?」
「…………」(こくこく)
「俺の気のせいでなければ、なでられたいだけでは」
「…………」(こくこく)
肯定されるとは思わなかった。しょうがないので沙夜の頭をなでる。
「よしよし」(なでなで)
「…………」(こくこく)
「よしよし」(なでなで)
「…………」(こくこく)
何そのうなずき。そして何この一連の動作。
「でもまあ楽しいからいいか!」
「…………」(こくこくこく)
そんな感じで道端で足を止めて沙夜の頭をなで続けてたので、遅刻した。
「…………」(がぶがぶ)
「俺のせいじゃないのに」
沙夜に手を噛まれながら校門をくぐる俺たちだった。
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