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2024年11月23日
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【犬と握手しているところをツンデレに目撃されたら】

2010年04月10日
「……何やってるの、タカシ」
 近所の犬と握手してると、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「梓と握手してるんだ」
「わんわんと握手してるじゃん! ボクはここだよ!」
 振り返ると、思った通りボクっ娘が腰に手を当てて怒っていた。
「梓が二人!? ドッペルゲンガーを目の当たりにする非常事態に、どうしていいか分からない別府タカシであった」
「どこまでボクを馬鹿にしたら気がすむんだよぉ!」
「ここまで。満足した」
 最後に犬を一撫でし、立ち上がる。
「こんにちは、梓」
「こんにちは! もー、変なことばっかり言って……」
 怒りながらもちゃんと挨拶する梓は偉いと思う。
「で、休日のうららかな昼下がりに何やってんだ?」
「それはこっちが聞きたいよ。なんでわんわんと握手なんかしてたの?」
「たまに犬と握手したくなるんだ」
 別に言い方をすれば、肉球を触りたくなる。
「……タカシって、普通に頭おかしいよね」
 そう言って梓は苦笑いを浮かべた。
「なんだと!? 犬をわんわんと呼ぶ奴に変人呼ばわりされたくない!」
「わ、わんわんはわんわんじゃん! わんわん、わんわん、わんわんわん!」
 自分でも恥ずかしいと思っているのだろうか、梓は少し顔を赤らめながらわんわんと連呼した。恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。
「じゃ、猫は?」
「? 猫は猫だよ」
「……つまり犬を自分と同類の特別な生き物と認め、親しみを込めてわんわんと呼んでいるのか。さすがは犬属性」
「違うよッ! 犬属性とか言うなッ!」
 犬属性が怒った。
「まぁこんなところで会ったのも何かの縁だ、暇つぶしに付き合え」
「なんでそんなに偉そうなのかなぁ……」
「どうかこのクソ虫の暇つぶしに付き合ってくださいませ、犬属性様」
「へりくだっているようで馬鹿にされてる!?」
「さて、ぼちぼちどっか行くか。梓、イヌミミってどこ売ってたっけ」
「知らないし、知ってても教えないよ!」
「アナルに入れるしっぽの方がいいのか……チャレンジャーだな、梓」
「そんなこと一言も言ってないよ! 天下の往来でエッチなこと言うな、ばかっ!」
「ごめんなさい」
「なんで犬に謝ってるんだよぉ!?」
 頭を下げる俺を、近所の犬が不思議そうに見ていた。
「しまった、梓と間違えた。でも、似てるから仕方ないよね?」
「仕方なくないよ! 明らかに違うよ! ボクは鼻濡れてないよ!」
 そこで見分けるのか。
「さて、ぼちぼち梓をからかうのも飽きたし、どっか行くか。どこ行きたい?」
「いじわるなタカシと一緒に遊ぶの嫌だよ!」
「未熟な恋愛経験ゆえ、いじめることでしか愛情を伝えることが出来ないんだ」
「自分で言ったら意味ないよ! どう見ても嘘っぱちだよ! ウソツキさんだよ!」
「そんなウソツキさんと遊びませんか? 噂によると、からかったお詫びに今日は奢りらしいぞ」
「えっ、ホント!? ……う、でもウソツキさんが言ってるから嘘かも……」
「大丈夫だ。今日のウソツキさんは自身のアイデンティティが崩壊しかねないほど嘘をつかないぞ」
「なんで普通に『嘘はつかない』って言えないのかなぁ……」
 それは持って回った話し方が好きだからです。
「ともかく、行こうぜ」
 話を打ち切るように梓の頭に手を乗せる。うーん、何度触ってもほこほこして気持ちいい。まるでなでられるために存在しているかのようだ。
「……タカシって、暇さえあればボクの頭なでるよね」
 少し不満そうに俺を見ながら梓が言った。なんでそんな目で見てるんだと思ったら、手が勝手に梓の頭をなでていた。
「いや、その、……まぁ気にするな。わはははは!」
 笑って誤魔化しつつ、わしわし梓の頭を撫でる。
「……ボクが大きくならないのって、いっつもタカシに頭なでられてるからじゃないのかなぁ」
「責任転嫁はよくないぞ。第一、頭をなでるのをやめても胸は大きくならないと思うが」
「身長の話だよ、ばかっ!」
 顔を赤くしながら叫ぶ梓だった。

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