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2024年11月23日
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【あんまんが好きなツンデレ】

2010年04月25日
 学校から帰り道、ボクっ娘が幸せそうな顔してあんまんを食っていたので、背後から忍び寄りあんまんを横からかじった。
「あああああ! ボクのあんまんが! ……やっぱりタカシだ! 何すんだよぉ!」
 振り返った梓が俺を見て声を荒げた。
「むぐむぐ……寒い屋外で食うあんまんは美味いな」
「悪びれもせず『うまいにゃー』って! タカシのばかばかばか! ばか饅頭!」
 にゃーとは言ってないし、饅頭の意味も分からない。
「何を怒ってるんだ? ははっ、可愛い顔が台無しだぞ♪」
「そんな心にもないこと言われても誤魔化されないもん! べんしょーしてよ!」
「ちょっと今日は財布の紐が固く結びすぎて開かないから、また後日な」
「タカシの財布、紐なんてついてないだろ! いーから早くコンビニ行く!」
「ちょっと今日は脳の調子が悪くて日本語が理解できないから、また後日な」
「タカシすっごく日本語しゃべってるよ! ぺらぺらだよ! バイリンガルだよ!」
 バイリンガルではないです。
「いーから行く! んで、ボクにあんまんおごる! 最後にタカシが謝る!」
 ほっぺを膨らませた梓に引っ張られ、コンビニへ。
「申し訳ありませんでした」
「いきなり謝ってどうすんだよぉ! しかも謝ってるの店員さんにだし!」
 店員さんは困惑した笑顔を見せた。
「相変わらずタカシは馬鹿で困るよぉ……ええっと、あんまんとにくまんとカレーまんください」
「随分食うな。冬眠に備え肉を蓄えてるのか?」
「タカシ女の子に対して失礼すぎるよぉ! おごりだから沢山食べないともったいないでしょ!」
「なるほど、納得……ええっ!? 俺、弁償するのあんまんだけって聞いたよ?」
「罰だよ、罰! これくらい当然だよ!」
「罰って、そんな酷いことしたか?」
「ボクの大切なもの奪っておいて、よくそんなこと言えるね!」
 梓の言葉に、店内にいる客の視線が俺に集中した。
「あ、梓、その言い方はちょっと……」
「……ボク、すっごく大事にしてたのに。無理やりだなんて、酷すぎるよ」
 客たちが俺を犯罪者を見る目で見ている。何事かヒソヒソ話されてる内容を知りたいような知りたくないような。
「さー梓いくらでもおごってあげるからとっとと出て行こうな。可愛い可愛い梓のためなら、いくら散財しても平気さ」
 これ以上梓に喋らせては、冗談抜きで警察を呼ばれてしまう。
「か、可愛いとか言うなよ! ……で、でもホントにいいの?」
「いいに決まってるだろ。俺は梓が何より大事なのさ」(なでなで)
「……え、えっと、ホントに?」
「……う」
 何を勘違いしたか知らないが、梓がうるむ目で俺をじっと見つめた。
「……ほ、ホントにボクのことが何より大事なの?」
「あ、う、と、その……だな」
「……お客さん、買うなら早くしてくれます?」
 こめかみを震わす店員さんの声に、俺と梓は慌てて合わせていた目を逸らすのだった。

「あー……疲れた」
 どうにか注文の品を買って外に出る。なんであんまんを買うだけでこれほど苦労しなけりゃいけないのだろう。
「タカシが変なことばっか言うからだよぉ」
 梓は紙袋からあんまんを取り出し、大きく口を開けてかぶりついた。
「むぐむぐ……おいひい。奢りだと尚更おいしく感じるね」
 梓は幸せそうにむぐむぐと口を上下させた。
「そいつぁーよござんした。俺にも一個くれ」
 紙袋を開き、饅頭を取り出してかぶりつく。これはカレーまんだな。
「あっ、全部ボクのなのに……タカシはひどいね」
「俺の金で買ったんだからいいだろ、別に」
「まぁいいけど。……ところで、その、さっき言ったのって」
「さっきって?」
「だ、だから、その、……ボクのことが何より大事って」
「最近寒いな。早く帰らないと凍死する恐れがあるので早く帰ろうばびゅーん」
「あっ、ばびゅーんって言って走って行った! 待ってよー!」
 俺は追いかけてくる梓からカレーまんを咥えたまま走って逃げるのだった。
 ……本当のこと言うのは、恥ずかしいしな。

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