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2024年11月21日
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【ツンデレ悪魔っ子】

2010年11月24日
 友人が悪魔を召喚したらしい。一切の疑問を抱かず、ホイホイ様子を見に行く。
「おー、来たか……」
 俺を出迎えた友人は、何やら憔悴しきった様子だった。
「一体全体どうしたというのだ、友人B」
「友人Bってのにつっこみする気力すりゃねーよ……ほら、あれ見ろよ」
 指差した先には、何やらぶすーっとした顔のおにゃのこが座り込んでいた。ただ、頭からツノが、お尻からはしっぽが生えてます。
「悪魔っ子だ! 可愛いなあはふン!」
 突発的に始まった俺の歓喜のダンスを見て、悪魔っ子が明らかに怯えた。申し訳ないと思う。
「……召喚した俺が言うのもなんだけど、ちょっとは現実に疑問を持てよ」
「いやあ、はっは。んで、どしたの? 自慢するのか? 任せろ、羨ましがることにかけてはちょっとしたもんだぞ! ただ、羨ましすぎるあまり後で呪うのでそこは我慢してください」
 俺が発言すると、どうしたことかどんどん友人の顔がうんざりしたものになっていきます。
「いや……あのな、ちょっとあの子、俺の手に負えねーんだ」
「ほう?」
「いやらしいことしようと必死に魔術を独学で勉強して呼び出したはいいけど、いきなり襲い掛かってきて。結界を張ってたからなんとかなったけど、俺はもう怖くて怖くて」
「はぁ。んじゃ、もったいないけど元の世界に帰したら?」
「そうしたいんだけど……」
 そう言いながら、友人はちらりと悪魔っ子を見た。
「アンタを殺すまでは還らないからね」
 ニヤリ、と底冷えのする笑みを浮かべる悪魔っ子。なかなかどうして、悪魔的ではないか。俺が召喚したんじゃなくてよかったぁ。
「還そうにも、抵抗されて還せないんだ」
「大変だね。俺は他人事なので問題ないけど」
「で、お前を呼び出したわけだ、親友」
 そう言って、友人Bはにこやかな笑みを浮かべた。
「お前を生け贄にして、この悪魔を強制的に“召還”する」
「はい? ……はい?」
 たすっ、と小さな衝撃。胸元に、ほんの小さな、俺の人差し指くらいの棒が突き刺さっていた。……ナイフ?
「え?」
「悪いな、親友。俺はまだ死にたくないんでな」
 いかん。これはマジにいかん奴だ。身体に力が入らない。倒れた。倒れたのか。何か甲高い声が聞こえる。悪魔っ子の声か。死ぬのか。なんでかなあ。嫌だなあ。

 ………………。
 …………。
 ……。

「……ねぇ。ねぇ!」
「うーんむにゃむにゃもう食べられないよ」
「絶対起きてる! ねぇ、起きなさいよ!」
「痛い!?」
 なんか殴られた。人がいい気になって寝てるというのになんという仕打ち! よし、一言いってやる!
「てめえ、ふざけるなよ! てめ……」
「はぁ、やっと起きた。遅いわよ、馬鹿」
「…………」
「ん? なによ、馬鹿面下げて」
 どうして悪魔っ子が目の前にいますか。あいつは、友人Bは……ってぇ!
「超思い出した! なんかアイツに刺されたんだ! あの野郎! 友人Cに降格だ!」
「降格って……」
「ん? てゆうか、刺されたよね、俺」
 悪魔っ子に確認を取ると、こっくりうなずかれた。
「うん。アンタは一回死んだの」
「なるほど。……えええっ!?」
「うわあっ!?」
「え、え!? 俺死んだの!? どうしよう困ったまだ見たいアニメも読みたい漫画もやりたいゲームも死ぬほどあるのに! ていうか死ぬほどっつーか実際に死んだんだよなわはははは!」
「不謹慎ッ!」
「自分が死んだんだし、笑ってもいいと思ったんだ」
「はぁ……なんか思ったより馬鹿みたいね。助けない方がよかったかなー」
「ん?」
 何やら俺にとって大事な台詞が飛び出した予感。
「ええと……助けてくれたの、俺を? 悪魔な君が?」
「そうよ。悪魔が人を助けちゃ悪い?」
「うーん……どうなんだろう、分からん。人間の作った勝手な悪魔像しか俺は知らないので」
「…………」
「ん? どうしました悪魔っ子。呆けた顔も可愛いですよ?」
「し、知らないわよッ! ……でも、うん。アンタは馬鹿みたいだけど、ちゃんと自分で考えてるみたいね」
「はい?」
「よし、決めた! アンタ、あたしと契約しなさい」
「分かった」
「早いッ! 契約内容を聞きなさいよね! あたしだったから良かったものの、もっと狡猾な悪魔だったら今頃尻の毛までむしりとられてるわよ!」
「最近の悪魔は除毛サービスもするんですね」
「そういうことじゃないッ!」
 悪魔との会話は難しい。
「何よこの人間……今の人間ってみんなこうなの?」
 どうやら向こうもこちらと同じような感想を抱いたようだ。
「ま、まあいいわ。ええとね、アンタはあの魔術師に一度殺されたの。で、たぶんだけど、その魂を触媒にして、あたしを無理矢理“召還”……ええと、元の世界に戻そうとしたの」
「触媒?」
「アンタの魂を使って魔術を発動しようとしたの」
「なんと! 俺の魂にそんな特別な力が! 隠れた素質なのか!?」
「誰の魂でも発動すんのよ。悪魔の魔法にも似たようなのあるから分かるの」
「…………」
「でも、魔術が発動する前に、あたしがアンタの魂を奪っちゃったの。当然魂はなくなっちゃったから魔術は失敗、あの魔術師はどっか逃げちゃったわ」
 なんて勝手な野郎だ、あいつ……。
「で、こっからが大変だったのよ。一度消えた命をもう一度蘇らせるのよ? もー超大変だったわよ」
「お世話になりました」
「失敗しちゃってもしょうがないわよね」
「……え?」
 なんか変な言葉が聞こえた気がする。
「だから、まあ、なんていうか……ご、ごめんね?」
「詳細が分からないから怒れないけど、とんでもなく嫌な予感がします」
「命の再生は失敗しちゃったから、とりあえず魔法具で動かしてるけど……定期的に魔力を注がないと死んじゃうの。でも……まあいいわよね?」
「よくねー! 魔力ってゲームくらいでしかお目にかかりませんよそんなの! そんなレアな燃料困る! あ、灯油とかで動くようになりません?」
「ならないッ! アンタ魔法具をストーブか何かと勘違いしてない!?」
「か、勘違いしないでよね! 灯油飲んだら死んじゃうんだからね!」
「どやかましいッ!」
 超怒られた。ていうか人間界に詳しいな、悪魔っ子。
「ところで、そもそも魔法具ってなんですか。いや、言葉の雰囲気でなんとなくは分かるんですが」
「そのまま、魔法の道具の総称よ。本来は死体や人形を自分の意のままに動かせる道具なんだけど……今回は魂があったし、アンタ自身の意思で動かせるみたいね」
「死体て……つまり、今の俺はゾンビみたいなものなのですか」
「ま、そうね」
「……別段腐ってないようですが」
 自分の身体をまさぐる。服が真っ赤に染まってて一度死んだんだなあと思えて嫌だが、身体は特に腐ってるとかそういうことはないようだ。
「死んでからすぐ再生したからね。新鮮そのものよ」
「人を鮮魚みたいに……!」
「あははっ。で、ここから相談、っていうか、アンタのその装置のことなんだけど」
「あー。魔力な。どうしたらいいの? 今ある魔力が尽きたら諦めるしかないの? それでも今ある命を精一杯に輝かせたらいいの? うわ自分で言ってて嘘くせえ。あまりのうそ臭さに生を諦めそうだ。あ、もう死んでたか。はっはっは!」
「……アンタ、たぶん魔界に行っても違和感ないと思うわよ」
 悪魔に太鼓判押された。
「じゃなくて! あーもーなんでこうも脱線するかなあ! あのね、アンタの魔法具は、あたしの魔力で動くの。だから、一日に一度は魔力を注がないといけないの!」
「魔力充填……いかん、えろいことしか浮かばねえ! いや、そういうことなのでしょうか!? そうだといいな、嬉しいな!」
「そ、そんなわけないでしょ、馬鹿! このえっちえっちえっち!」
 違ったらしい。罵声と落ちてた石を受けながら反省する。血が出るので辛い。
「……ふう。だ、だから、アンタと一緒にいなきゃいけないの!」
「え」
「な、何よ。嫌でもいなきゃアンタ死んじゃうのよ! それでもいいの!?」
「いや、そうじゃなくて、俺は全く問題ないけど、そちらが色々と問題あると思うのですが」
「い、いいわよ。一応、あたしのせいでアンタ死んじゃったんだし。それくらいは責任取らないと」
「ほー……。今時珍しいくらい偉い悪魔ですね。いや、悪魔の価値観的にはどうだか知らないけど」
「とっ、とにかく! どっちにしろ、あたしはしばらくこの世界にいるつもりなの。あの逃げた魔術師をとっ捕まえて嬲り殺しにして魂の一つでも貰わないと割に合わないわ……」
 訂正。やっぱり悪魔です。
「と、ゆーわけで。しばらく世話になるわよ」
「はい。……はい? え、俺の世話に?」
「当たり前じゃない。アンタの家に住まわせてもらうわよ。それとも、どっかに別荘でも持ってるの?」
「そんなブルジョワに見えるか? もし見えるなら今日からお前はメガネっ子属性も保持しなければならないので大変ですよ?」
「知らないわよッ! とにかくっ、そーゆーことだから! ……も、もちろん言っとくけど、変なことしたらぶち殺すからねっ!?」
「もう死んでます」
「あ、そうだったわね。あははははっ!」
「ウヒッ、ウヒヒヒヒッ」
「怖っ、怖あっ! 何その笑い声!? え、アンタも悪魔なの?」
「違います」
「紛らわしい笑い声あげるなっ!」
 どうしてだか俺が怒られる羽目に。不思議だねと思いつつ、今日から悪魔っ子と一緒だ!
「よし、事故と称して風呂覗いたり着替え覗いたり朝のドキドキハプニングを起こしたりしてやる……!」
「覗いたらミンチね」
 笑顔が超怖かったので覗きは控えます。なるべく。できるだけ。でもまあ覚悟だけはしとけよ。

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