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2024年11月21日
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【ツンデレ妖狐2】

2011年05月02日
 前回、妖狐を騙くらかして使役することになった俺。すごいぞ俺。そんな俺が今妖狐と一緒にゆっくりと空から地面に落下中です。
「ところでご主人さま、どうやってワシの封印された土地まで来たのかや? さっき言ってた、わ、わーぷとかいう装置かや?」
「だからそれは嘘だって言ってるだろうが駄狐。一回で覚えろ駄狐。胸が小さいぞ駄狐」
「駄狐じゃないのじゃ! ……あ、あと、最後のは余計なのじゃ!」
「人間形態になれるなら体つきなんて思いのままだろうに、ダ・フォックス」
「言い方を変えても一緒なのじゃ! ……体つきは、その、何回変身しても胸の大きさが変わらんのじゃ。呪われとるのかの?」
「安心しろ、俺の好みは貧乳だ。もし嫌なら、あとで死ぬほど揉んで大きくしてやる」
「未来は地獄しかないのじゃあー……」
 俺のフィンガーテクを想像し、絶望に顔を伏せる駄狐だった。
「で、さっきの質問に答えるが、なんか地面が突然ぴきぴきどかーんって割れて落ちたんだ。その結果頭の悪い狐に見つかり、空中散歩する羽目になってるんだ」
「契約してなかったら絶対に噛み殺してるのじゃ!」
「そいつぁ剣呑」(なでなで)
「ちっとも思ってないのじゃあ! なぜならニコニコ笑いながらワシの頭をなでてるから!」
「頭の悪さはともかくとして、何やら妙に可愛いので頭をなでたくてしょうがないんだ」
「迷惑なことこの上ないのじゃ!」
 そんな無限のフロンティアな感じでふわふわ落下してると、駄狐が下を見て何かに気づいたようだ。
「ぬ? ご主人さま、下で何か騒動が起きとるのじゃ」
「あー……突然巨大な狐が地下から飛んできたと思ったら、空中で人間になって落ちてくるんだもんな。そりゃ騒ぐわな」
 どうやって言い訳しようか考えてたら、妖狐はぷるぷると首を横に振った。
「違うのじゃ、この周辺に結界を張っておったのでそれは大丈夫なのじゃが、そういうのじゃなくて……これは、何かと戦っておる声じゃ」
「うん?」
 下に視線を向ける。地面はまだ遠く、俺の目では未だ何も見えない。
「見えん。騙したな。後で死ぬほど犯す」
「ちがっ、違うのじゃ!? 騙してなんかないのじゃ! ワシの耳はしっかと剣戟の音を捉えているのじゃ!」
「剣戟ぃ? この現代日本で? 何を言ってるのだ、この駄狐は」
「だから、駄狐ではないのじゃあ! 本当なのじゃ、人間が剣を振るい、……ぬ?」
 ぴょこ、と妖狐の頭から狐耳が飛び出した。慌ててその耳をさわさわする。
「ふひゃあっ!? 違う、違うのじゃ! ご主人さまに触らせるために出したんじゃないのじゃあ!」
「柔らかくて暖かくていいなあ!」(ふにふに)
「ううううう……あ、後で、後でじゃ。後でなら特別に触らせてあげるのじゃ」
「いや、気にしないでいいから」
「気にしないとかじゃなくて今は触っちゃいかんと言っとるのじゃ! ご主人さまじゃから我慢するが、これがただの人間なら今頃ワシの滋養になってるのじゃよ?」
「耳から消化液を出すのか。妖怪というより植物じみてるな」
「そーゆー意味じゃないのじゃ! ぱくって食べちゃうぞっていうのを怖く言ったのじゃ! がおー!」
 妖狐は両手をあげ、威嚇(?)した。
「怖くないです。むしろ愛らしいです」(なでなで)
「ううううう……妖怪の威厳台無しなのじゃあ……」
「で、がっかり狐。剣戟がどうとか言ってたけど、どうなってんだ?」
「あっ、そう、そうなのじゃ! 下で戦ってるのは、人間と……妖怪なのじゃ!」
「はぁ? この現代日本で妖怪とか何言ってんだ」
「いやいや、いやいやいや。ワシ、妖怪じゃし」
「そういや駄狐属のダ・フォックスだったな。コンゴトモヨロシク」
「妖狐なのじゃっ! 駄狐属とかじゃないのじゃッ! 歳経た狐の偉い偉ーい変化なのじゃあッ!」
「そう興奮するな。落ち着け」(なでなで)
「誰のせいじゃと……と、とにかくなのじゃ。下で妖怪と人間が戦っておるのじゃ。どうするのじゃ、ご主人さま?」
「どう、って?」
「見なかったことにするか、どちらかに加勢するか、じゃ」
 すっ、と妖狐の目が細まる。まるで俺の全てを見透かすかのような視線に、尻の据わりが悪くなる。
「でもよく考えたらコイツ割と馬鹿だから大丈夫か」
「なんか悪口言われた!?」
 泣きそうになってる妖狐を横目に見つつ、考える。……つか、まあ、考えるまでもないか。
「知ってしまった以上、見なかったことにはしない。状況を把握してからどちらかに加勢する」
「……人間に加勢せんのかえ?」
 すごく意外そうに妖狐は訊ねた。
「人間全てが善で、妖怪全てが悪だなんて分かりやすい設定ならいいが、そんな簡単な話はないだろうしな。ひょっとしたらお前みたいに話ができる妖怪かもしれないし、話せるなら機会を持ちたい」
「…………」
「ん? どうしたダ・フォックス」
「べっ、別になんでもないのじゃ。びっくりなんてしてないのじゃ。感心なんてしてないのじゃ!」
「いや、知らん」
「うう~……と、とにかく急いで下まで行くのじゃ」
 そう言った途端、俺達の落下スピードが増した。ぐんぐん地面が近づいてきて、気分はヒモなしバンジー。
「いや気分どころかこの駄妖怪の駄妖術がなければ実際ヒモなしバンジーになるんだよな」
「……妖術、解いちゃろか」
「ダメです。命令」
「ううううう……いつか絶対に契約を白紙にしてやるのじゃーっ!」
 妖狐の叫びと同時に、落下速度が一気に減速した。どうやら地面に到着したようだ。地面に降り立つ。
「おー……地面がある。地面を踏めるって素敵」
「それよりご主人さま、早くあそこへ!」
 人が小粋なタップダンスを披露しているというのに、妖狐が俺の服の裾を引っ張って屋内へ引っ張り込もうとする。さっき見た幽霊屋敷じゃないか。
「ここで戦ってるのか?」
 俺にはいくら耳をすましても剣戟どころか人の声ひとつしないが。
「結界が張ってあるから普通の人間には聞こえないのじゃ。ワシくらいすごい妖怪じゃと聞こえるがの」
「ふーん。じゃ、ま、とりあえず入ってみるか」
「それがいいのじゃ。ご主人さまが一番、ワシが二番なのじゃ」
 俺の後ろに回りこみ、ぐいぐいと人を押す妖狐。
「分かった、俺に任せろ。それはそうと、もしここで俺が死んだらお前は余生をアカ舐めとして過ごせ。命令」
「ご主人さまはワシが絶対に守るのじゃっ!」
 ヤケクソ気味に叫びながら妖狐はズンドコ屋敷の中へ入っていった。俺も後に続く。
 屋内は薄暗く、奥の方がどうなっているかよく分からなかった。というか、それ以前にしめ縄がそこらじゅうに張り巡らせられており、部外者を立ち入らせないようにしてあった。
「ご主人さま、これは結界じゃ。これで妖怪を閉じ込めておるんじゃろうな。まあ、ワシくらいの大妖じゃと、この程度の結界なぞ存在せぬも同義じゃがの」
「ふーん」
 特に気にせず中に入ろうとしめ縄を潜ろうと縄を掴んだら、バビっときた!
「おおおうっ!?」
「ごっ、ご主人さまっ!? ダメじゃ、いま死んではワシがアカ舐めになってしまう! 死ぬなら後でーっ!」
「死んでねぇよ……」
 心配顔で寄ってきた妖狐のほっぺをぐにーっと引っ張る。
「ふひゃーっ!?」
「あー……ビリビリきた。これが結界か」
 身体からちょっと煙出たぞ。怖。
「ふひゃひゃ……ふにっ。そう、これが結界なのじゃ。ご主人さま程度では到底破ることなぞできんのじゃ」
「後で乳首もげるくらい吸ってやる」
「べっ、別にご主人さまだけがダメダメなのではなく、普通の人間には無理って話なのじゃよ!? じゃ、じゃから、そのお仕置きはする必要ないのじゃよ?」
「じゃあ、もげない程度に吸う」
「吸ってはダメなのじゃあーっ!」
 真っ赤な顔でぺちぺち叩かれた。そこまで嫌がられては断念するしかないだろう。無念。
「ううう……ご主人さまはえっちなのじゃ。えっちなのじゃ」
「ごめんね。切り取ってから吸うね」
「ご主人さまは猟奇殺人者!?」
 奥様は魔女ではなく、ご主人様は猟奇殺人者か。……どうあがいてもホラー。
「どうでもいい。ていうか、冗談だ。だからそんな震えるな駄狐。着信でもしたのか」
「そんなの冗談かどうかワシには分かんないのじゃっ! そりゃ怖くて震えもするわっ! ちゃくしんってなんなのじゃ!? また怖い話かや!?」
 なんかふがふがうるさかったので、頭をなでて大人しくさせてみる。
「ううう……うふー」
 大人しくなった。この狐思ったよりも簡単で素敵。
「うう……ご主人さまはすぐにワシの頭をなでるのじゃ」
「女の子の頭をなでると興奮するんだ」
「真顔で何を言っとるんじゃご主人さま!?」
「んなことより、この結界を破ってくれ。とっとと奥に行くぞ」
「わ、分かったのじゃ。あまり焦らすでない」
 妖狐は縄を掴むと、いとも容易く引き千切った。
「結構ぶっとい縄だったが……すげぇな。さすが妖怪」
「ふふん。すごいじゃろ、すごいじゃろ? もっと褒めたたえてもよいぞよふがー!?」
 偉そうだったのでほっぺを引っ張ってると、突如屋敷の奥から轟音が響き、それと同時に爆風が俺達を襲う。
「うぉぉぉ!? 何、何!?」
「わきゅあ!?」
 吹き飛ばされまいと夢中で目の前の物体にしがみつく。むぅ、この物体は柔らかいな。
「ご、ご主人さま!? な、なんで抱きついてるかや?」
「ん、おお」
 目の前の物体と言ったら、俺がついさっきまでほっぺ引っ張ってた妖狐しかいないわけで。その物体に抱きつくということは、つまりそういうことで。
「いやはや、柔らかい」(ふにふに)
「な、何を改めて抱っこしなおしておるかや!? こら、背中をさすさすするな、頭をなでるでない! 頬擦りするなあーっ!」
 叱られたので、渋々妖狐から離れる。
「はあ、残念無念。んーで、妖狐さんや。さっきの爆風はなんだったんだ?」
「正しい手順を踏まずに結界を力技で破ったため、中に溜まっていた霊気が一気に解放されたようじゃな」
「全体的に胡散臭ぇ。なんだ、霊気って」
「そ、そんなこと言われても本当なんじゃからしょうがないのじゃ! 存在するものは存在するとしか言えないのじゃ!」
「んー……まあ、目の前の胡散臭い生物がわにゃわにゃ喋ってる時点で“そういうものは存在する”とするしかないか」
「酷い言い草なのじゃあー……ワシ、すっごく偉い妖怪なのに……なんでこんなことになってるのじゃあー……」
 悲しそうだったので、頭をなでてあげる。
「うぅー……そ、それでご主人さま、結界を破ったが、どうするのじゃ?」
「そりゃ、行くしかないだろ」
 つーわけで、一人と一匹が屋敷の奥へ突き進む。奥へ進むにつれ、先ほど妖狐の言っていた剣戟とやらの音も聞こえてきた。
「カキーンとかコキーンとか言ってるな。かっくいいな!」
「なんと暢気な……恐らく、この先では命のやりとりをしておる。当然、その覚悟はしておるんじゃろうな?」
「してない! 死ぬの怖い!」
「全力で胸を張っておる!?」
「だから全力で俺を守れ」
「なんと情けないご主人さまなのじゃあ……」
「あ、だけど、優先順位は自分自身な。俺とお前が同時に命の危機にさらされてるなら、自分の身の安全を優先しろ」
「……何を言っとるかや? 突然善人でも気取りたくなったかや?」
 さも馬鹿にした様子で、妖狐は俺を見た。
「そうなんだ。善人気取るの超好き」
「うっ……そ、そうかや。それならワシも好都合じゃ!」
 自分で言っておいて、申し訳なさそうな顔をするな。
 そうこうしているうちに、大広間に出た。そこに、長剣を持った学生服の男性と、小さな紙を持ったこれまた学生服の女性、それに、身の丈10mもありそうな巨大なムカデがいた。
「怖っ! えっ、ムカデ!? 長っ!」
 俺のあんまりな叫びでこちらに気づいたのか、ムカデの巨大な二つの目がこちらを向いた。
「えっ、なんで人が!?」
 そして、その巨大ムカデと戦っていたらしき男性と、その傍らにいる女性もこちらに振り向いた。
「ああ、いや、その、こんばんは?」
「何を暢気にこんばんはって言ってるかや!? 来たぞよ!」
「お?」
 妖狐の声と巨大ムカデが涎を撒き散らしながらこちらに踊りかかってくるのは、ほぼ同時だった。いかん、食われる。
「……まったく、なんと手のかかるご主人さまじゃ」
 諦めかけたその時、俺の目の前に立ちふさがる小さな影。妖狐がその手の平に小さな結界のようなものを張り、巨大ムカデから守ってくれたようだ。
「おおおおおっ! 偉いぞ妖狐! 凄いぞ妖狐! ようこそようこ!」
「イマイチ褒められてる気がしないのじゃあ! ……それはともかく、そこな虫。ワシに手を出すとは、それなりの覚悟があってのことじゃろうな?」
 妖狐から凄味が立ち昇る。背中がぞわぞわする。毛穴が開く。怖い。俺の目の前にいるこいつは、本当にさっき俺にほっぺつねられて半泣きになってた奴か?
「ふんっ」
 軽く気を込める。ただそれだけで、巨大ムカデがゴムマリのように何度も弾みながら奥へ吹き飛んでいった。
「まったく……体力だけはあるのぉ。面倒な話じゃ」
 その程度じゃ堪えないのか、巨大ムカデは頭を振ってこちらを威嚇している。
「な、何なの、あなたたち?」
「ここは結界で封じていたはずなのに……」
 先にムカデと戦っていた男女が、当然の疑問を口にした。
「いや、なんつーか、普通の高校生と異常な駄狐(奴隷)のコンビです」
「異常じゃないし、駄狐でもないし、奴隷では絶対にないのじゃあっ! 偉い偉ーい妖狐なのじゃあっ!」
「ああ、こいつぁ失礼。奴隷じゃなくてメイドだったな。はっはっは」
「なんか分かんないけど、たぶんえっちな肩書きなのじゃあ!」
 先ほどの恐怖を紛らわすように、軽口を叩く。……いや、うん。大丈夫。可愛い可愛い。そう思いながら、妖狐の頭をぐじぐじとなでる。
「ぬぅー……」
 ちょっと不満げな妖狐だった。
「よ、よく分からないけど……ここは危険だ。僕たちに任せて、君達は外へ避難して!」
 男性の言葉に、隣の女性もうなずく。
「危険? あの程度の変化を相手に危険などとぬかす貴様らに任せる方が、よっぽど危なそうじゃがのう?」
 傲岸不遜を顔に浮かべ、妖狐が口を歪める。助けてくれたのはありがたいが、その口ぶりはどうかなあ。
「あんまり偉そうなこと言ってると、この二人の前で犯すという羞恥プレイを実行する」
「っ!? あ、あの、あののの? ワシが貴様らの代わりにあの虫を倒してやるのじゃって言いたかっただけなのじゃよ?」
 こちらをちらちら見ながら、妖狐はあわあわしながら言った。あまりの変わりように、男女は俺の顔を不思議そうに見た。
「ああ、ええと。なんというか、こいつは俺の従者みたいなもんだから、俺の目の黒い内は悪いことさせないから大丈夫だ。代わりに俺が悪いことする」
「なんでご主人さまが悪いことするかや!? ていうか今まさにしておる! やめぬか、たわけ!」
 妖狐のお尻をさわさわしたら手をがぶがぶ噛まれた。痛い。
「もういいからワシがあの変化を始末するまでじっとしておるのじゃ!」
「任せろ、得意だ」
 何やら胡散臭げに俺を見た後、妖狐は巨大ムカデに向き直った。
「うぅー……このイライラは全部貴様にぶつけてやるわ。ワシの近くで暴れた己を恨むがいいわっ!」
 妖狐の叫びと共に、お尻から尾が複数生えた。
「えっ!? まさか……伝説の九尾!?」
 それを見て、先に戦ってた女性が驚きの声をあげる。……有名なのか、コイツ?
「死ねいッ!」
 妖狐の身体が青白い光に包まれる。片手をムカデに向け、そう叫ぶと同時に妖狐を覆っていた光は一筋の雷となってムカデを貫いた。
 耳をつんざくムカデの声。たった一撃で、ムカデは全身を焼かれてムカデだったものになった。
「ふん。今の変化は脆弱じゃの」
 そう吐き捨てると、妖狐のしっぽは小さくなって元の場所に収納された。
「ふーむ、収納機能つきか。便利な物件だなあ」
「なんで戦い終わったワシをねぎらいもせず、お尻を触っとるかや!?」
 不思議だったので妖狐の尻をさわさわして調べたら、びっくりされた。
「ああ、気にするな」
「無茶を言ってはいけないのじゃあ! すごく気にするのじゃ! ワシのお尻じゃよ!?」
「大丈夫、えろい意味で触っているのではないから安心しろ。ただ、女性経験のなさが響き、こうして喋ってる間に既にえろい気分になってしまったから気をつけろ」
「がぶー!!!」
 頭をかじられたので尻を触るのはやめる。
「あ、あの……」
「はい?」
 背中によじ登られてがじがじ噛まれてると、横合いから話しかけられた。先ほどの男女が俺たちを見ている。
「ちょっと、僕たちと一緒に来てくれないかな?」
 そう俺に言いながらも、視線はやや上方、俺をかじってる妖狐の方を向いている。
「その……君の使役してるその妖怪についても話を聞きたいし」
 これは面倒なことになった。そういうの超苦手なんだけど。
「君達がここにいるってことは、結界が破れちゃったんだろう。騒ぎを聞きつけて人が集まってくるかもしれないから、僕たちと一緒に来た方がいいと思うよ?」
 人のよさそうな笑みを浮かべる男性。俺とは正反対に、なんとも人が良さそうな雰囲気がにじみ出ていた。
「あぐあぐ……どうするかや、ご主人さま? この人間どもと一緒に行くかや?」
 俺を噛みながら訊ねる妖狐。
「んー……うん。分かった、行く」
 ここに残ってたら警察に見つかり、面倒なことになるのは想像に難くない。だったらまだコイツらについていく方がマシだろう。
「あ、それはいいけど、あのムカデはどうするんだ? 放って置いたらマズくないか?」
「それなら、私達の仲間が処理してくれるから大丈夫よ」
 女性が俺の疑問に答えてくれた。仲間、ね。何らかの組織に属してるのだろう。
 家の裏口からそっと抜け出し、向かった先は近所の学園だった。
「……って、ここ俺の通ってる学校じゃねえか!」
「あら、そうなの? 奇遇ね」
 女性の笑みに、嫌な予感しか浮かばなかった。学校に入り、部活棟へ向かう。その奥の一室に、明らかに雰囲気が違う場所がある。
「ここが私たちの部室よ」
 ドアの上にかかったプレートには、『妖滅部』と書いてあった。
「妖狐滅殺部か。ピンポイントで狙われてるな、妖狐」
「んなこと書いてないのじゃ! ……ぴんぽいんとってなんじゃの?」
「そのネタ飽きた」
「また分かんない言葉が出たのじゃ! ワシに分かる言葉で言うのじゃあ!」
「はいはい」
「適当にあしらってはダメなのじゃ、ご主人さま!」
 わきゃわきゃ言ってる妖狐と一緒に室内に入る俺たち一行だった。

 続く

拍手[31回]

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無題
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ダ!フォックス!

無題
なでなでってやっぱりいいですなぁ…

続き、待ってます…はい。
無題
続き…気になって眠れません‼

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