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2024年11月24日
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【ツンデレな妹VSデレデレな姉9】

2010年03月21日
 髪が伸びてきたので、妹のカナに髪を切ってもらうことにした。
「兄貴、たまには美容院とか行ったらどうなの?」
「あんな恐怖の館に行けるわけないだろ。三秒で発狂する自信がある」
 庭に出て、ナイロン製のケープをつけながら椅子に座る。準備完了。
「じゃ、よろしく。カナ」
「面倒だなぁ……」
「そう言うな、おまえしか頼める相手がいないんだ。何より、カナに切ってもらうの好きだし」
「……そ、それじゃ仕方ないわね。あーあ、面倒」
 ぶつくさ言いながらも、カナは俺の頭を霧吹きで濡らした。
「で? お客さん、どんな風にします?」
「逆モヒカン」
「……いいけど、あたしの半径1km圏内に入ってこないでよね」
 それでは家に住めないので、いつも通りの注文をする。
「あたしに任せる、ね。……たまには違う髪型にしよっかな」
「逆モヒカンか?」
「それから離れろ! こんなのでも一応あたしの兄貴なんだから、あんまり変なのだとあたしが恥ずかしいじゃない」
「そういうもんか?」
「そーいうもんよ。じゃ、始めるね」
 シャキシャキとハサミが髪を切る音がする。後ろの髪から切り始めたようだ。
「ほら、首動かさないの。じっとして」
「じーっ」
「口で“じーっ”って言って、首動かしまくってたら意味ないじゃない! 動くな!」
「天邪鬼なんだ」
「……耳削ぐわよ」
 とても怖いので小動物のように小さく震えながら大人しくする。そのまましばらくシャキシャキという音を聞いていると、ふいにカナが口を開いた。
「……しっかし、こうやって兄貴の髪切るのも結構長いよね。いつからだっけ?」
「確か、俺が小学生くらいの頃から、かな。散髪代にもらったお金が菓子代に化けたのをきっかけに、カナが切ることになった気がする」
「……兄貴って、昔っから馬鹿だったのね」
「昔は、だ。今は聡明な青年ともっぱらの噂だぞ」
「はいはい」
 髪を切るシャキシャキという軽い音と、自動車の走る音。そして子供のはしゃぐ声が、俺を眠りに誘う。
「……兄貴、眠くなっちゃった? 舟漕いでるよ」
「……む、むー……」
「いーよ、寝ちゃっても」
「……し、しかし、寝てしまうとカナが俺を逆モヒカンに……」
「しないわよッ! もうっ、ちょっとは信用してよ」
「信用してるに、決まっとろうが……可愛い妹を、信用しない、わけ、が……」
「え……? あ、兄貴、今なんて?」
「……すぴー、すぴー……」
「……寝ちゃってる。……ずるいよ、兄貴」
「あっ、タカくんの髪切ってるの?」
「ね、姉ちゃん!?」
「私にも切らせてー♪」
「えっ、そ、その……」(どっ、どうしよ? 姉ちゃん、すっごい不器用だし……)
「いいでしょ、カナちゃん?」
「う、うん……」(ごめん、兄貴。……姉ちゃんには、逆らえないんだ)
「やった! 一緒に切ろうね、カナちゃん♪」
「あ、あはは……そだね」

 目覚めると坊主になっているのは、一体どういうことなのか。
「タカくん、お坊さんみたい♪ なむなむ~」
 俺を拝んでるお姉ちゃんを見て、全て悟る。恐らく、どうしようもなくなった髪型をカナが坊主頭にしたのだろう。
「あはは……ごめん、兄貴。でも、坊主頭も高校球児みたいで悪くないよ?」
「悪いに決まっとろーが! ……ううっ、こんな頭じゃ恥ずかしすぎる」
「だいじょーぶだよ。タカくん、お坊さんでもかっこいーから♪」
「そ、そうか? かっこいいか? ……言われてみれば、これも悪くないかも」
「……簡単すぎるよ、兄貴」
 手鏡を覗き込んでる俺を見て、カナは呆れたように息を吐くのだった。

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