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2024年11月24日
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【ツンデレな妹VSデレデレな姉15】

2010年03月09日
「お姉ちゃん、タカくんに対しちょっと甘すぎました。お姉ちゃんはこれから厳しくなろうと思います」
 家族みんなで朝食を食べてると、お姉ちゃんが突然立ち上がりおかしなことを言い出した。
「それはつまり、今日から一緒に寝ないってこと?」
「それはまた別の話です。一緒には寝ます。お姉ちゃんと弟は一蓮托生、呉越同舟です」
 お姉ちゃんは四文字熟語が好きだけど、意味はよく知らないらしい。
「はー……厳しくって、あたしは無理だと思うけどねー」
 さっきまで黙ってパンを食べてた妹のカナが、ちょっと呆れたように言った。
「そんなことないです。お姉ちゃんにかかれば、タカくんを厳しくしつけるのも容易いのです」
 しつけって……獣か何かか、俺は。なんて思いながら、パンをぱくつく。
「あっあっ、タカくんパンくずがこぼれてるよ。ほらほら」
 お姉ちゃんがこぼれたパンくずを拾い、食べた。
「……どこが厳しいのよ、どこが」
「むぐむぐ……い、家を出てからです。家の中はセーフゾーンです」
 なんの気まぐれでこんなことを言い出したか知らないけど、お姉ちゃんが弟離れするいい機会だ。
「あ、今はセーフゾーンなので、タカくんはお姉ちゃんにあーんしてください」
 ……本当に厳しく出来るのかな、と思いながら雛鳥のように大きく口を開けてるお姉ちゃんの口にパンを千切って入れた。

 用意を終え、玄関に集結。
「じゃー行こっか、姉ちゃ……」
 靴を履き終えたカナがこっちを見て止まった。
「ううー、ここを出たらタカくんにすりすりできないぃ……。ね、ね、今日は学校お休みしない?」
「はいはい、いーから行く」
 俺に抱きついてるお姉ちゃんに靴を履かせ、カナはお姉ちゃんを引きずって家を出た。俺もついていく。
「ううー……カナちゃんいじわるだよ」
「そうだな。学校を休むという案は非常に魅力的だと言うのに……さてはカナ、お姉ちゃんの豊乳に嫉妬してこんないじわるをかはっ」
 語尾がおかしくなったのは、カナの鋭いボディーブローが腹に突き刺さったからです。
「はいはい、いーから行く」
 腹をさすりながら、お姉ちゃんに甘えるべくそちらを見る。……あれ?
「どうしたの、タカシ?」
 いつものお姉ちゃんなら、ここで優しく腹をさすさすしてくれるのに……。呼び名もタカくんから、タカシになってるし。
「うーん、厳しい」
「どこがよ……ほら、行くわよ兄貴」
 三人並んでぽてぽて歩く。
「しっかし、アレだな。お姉ちゃんって黙ってたらかなり美人だよな。いっつもデレンデレンの顔しか見てないからよく分かんなかったけど」
 お姉ちゃんの顔がちょっとにやけた。
「……ふーん」
 そして、それに呼応するかのようにカナの顔がちょっと怖い感じに。
「や、その、カナは美人ってより、可愛いって感じだし。あ、俺は美人よりカナみたいな可愛い系の方が好きだよ?」
「ちょ、ちょっと、何言ってんのよ、もー」
 カナは少し頬を染め、俺の背中をばんばん叩いた。満更でもない様子に安心したが、なんで俺は家族相手にこんな会話をしてるんでしょうか。
「特に頭の両端からでろーんと伸びてる昆布……いやいや、髪……いや、昆布? が可愛い」
「髪よっ! ツインテールっつーのよっ! なんで昆布に着地してんのよっ!」
「ほらほら。二人とも、道端で喧嘩したらダメでしょ。全く、恥ずかしいんだから……」
「「…………」」
 カナと二人、思わず顔を見合わせる。普段のお姉ちゃんなら、俺と一緒に騒ぐはずなのに……。
「流石はお姉ちゃん! 欲望を完全に律しているとは……見事にゃり!」
「いや、にゃりってアンタ……それはともかく、すごいね姉ちゃん。ちょっと尊敬したわ」
 けど、ちょっと寂しいかなーなんて思いながら路地の横を通りかかった時。
「ん?」
 風のような何かが俺を路地に連れ去ったかと思うと、俺にぴたーっとくっついてきた。
「うううううー……」
 地の底から響くような声……な、なに? 妖怪の一種?
「だーめーだーぁ……もう我慢無理。お姉ちゃん、タカくんと手繋ぎたいよぅ……」
 妖怪の一種と思われたものは、よくよく見るとお姉ちゃんだった。
「いや、あの、お姉ちゃん? まだ家出てから5分も経ってないけど……」
「タカくんはお姉ちゃんと手繋がなくても平気だって言うの!?」
「わりと」
 ショックのあまり、お姉ちゃんが世界の終わりみたいな顔になった。かと思ったら、ひんひん泣きだした。
「あー、あーあー。もー、泣くなよお姉ちゃん」
「ううー……タカくんがいじめるぅ……ひーん」
「いじめたわけじゃ……ま、とにかくほら、行こう?」
 適当に慰めて、手をきゅっと握ってあげるとようやく泣き止んでくれた。
「ひんひん……ごめんね、情けないお姉ちゃんで」
「そればっかりは否定する要素がまるで見当たらない」
 またひんひん泣き出したので、適当に慰めてから路地を出る。
「あっ、兄貴! 姉ちゃんは……そこね」
 俺に手を繋がれひんひん泣いてるお姉ちゃんを見て、カナがため息をついた。
「無理矢理したら泣かれた」
「兄貴ぃッ!」
 軽い冗談で朝からすごい殴られた。

「やっぱお姉ちゃんが厳しくするのは無理、っつーことで」
「む、無理じゃないよ? 毎日少しずつ頑張ればいいとお姉ちゃん思うの。継続は力なり、って言うし。ね? ね?」
「……や、無理でしょ」
 俺の腕に自分の腕をからませ、ニッコニコの笑顔をふりまくお姉ちゃんをげっそりした顔で見るカナだった。

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