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2024年11月21日
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【シア 朝食】
2012年05月05日
※ちょいグロ注意
【シア 朝食】
朝起きたら何やらシアがピンク色のぬめぬめしたものをもぐもぐしてました。
「あ、おはよ彰人」
「ん、おはよシア。で、何食ってんだ?」
「もぐもぐ。敵さん」
「うわぁ」
シアの傍らに、赤黒い塊が転がっていた。何かと思ったが、よく見ると手足のない人間だ。ぴくぴくと痙攣している。哀れなことに、まだ生きているようだ。
並の精神ならガッツリSAN値をもっていかれているところだろうが、俺も並の精神なのでガッツリ持っていかれる。
「朝からなんつーもんを見せてんだよ……あー気持ち悪」
胃からこみ上げるものをこらえつつ、それだけどうにか絞り出す。危険がないとはいえ、気持ち悪いものは気持ち悪い。
「例の悪魔崇拝者が彰人を殺そうと忍び込んでたから、死角から近寄って、まず手をもいだの。そのついでに足ももいだら、恐慌状態に陥っちゃって。うるさいから、声帯って言うのかな? 口から侵入してノドにあるなんか弁みたいなのを千切っちゃった」
「いい、いい。説明するな。ぐろい」
しかし、なるほど。だから声も出さずに痙攣しているのか。いっそ死ねたら楽だろうに。まあ、俺を殺そうとした奴だからどうでもいいが。
「小腹が空いてたからお腹割いて内臓をちょこっとつまんだけど、声帯がないからうるさくなかったでしょ?」
「分かった分かった。ああもう、ちょっと出てるからその間に全部食っちゃえよ」
「それよりさー。あのね、あのね? シア、ちゃんと敵を撃退したよ? 偉い? 偉い?」
「ああ偉い偉い」ナデナデ
とっとと血溜まりの地から脱出したかったが、シアからなでてオーラが出ていたので、期待に応える。
「きゃーきゃー♪」
やたら嬉しそうなシアだった。
「うわ、血ついた」フキフキ
「ふがふが……シアの顔で拭かないで!」
そして悲しそうなシアだった。
「もー……」ペロペロ
もったいないのかどうか知らないが、シアは俺の指を丁寧に舐めだした。
「これは気持ちいい。これだけでもシアが来てくれてよかったと断言できる」
「彰人のえっち」ハムハム
「噛むな。甘噛みとはいえ、お前の場合マジで噛み千切られそうで怖いんだよ」
「彰人は食べないよ?」
「へーへー。……ん、そろそろ綺麗になったみたいだな。サンキュな」ナデナデ
「うああ、シアの涎が髪に!」
「可哀想に」
「彰人のせいなのに!」
「さて、シアをからかって眠気も覚めた。んじゃ俺は外出してくるから、キチンと全部食べておくように」
「あっ待って待って、一人で外出したら殺されるよ? シアも行くからちょっと待ってて」
そう言うと、シアの腹がバツンッと左右に裂けた。その隙間には、サメを想起させる鋭い歯が幾本も並んでいる。巨大な口だ。シアの腹に巨大な口が現れた。
「すぐ食べちゃうから、ちょっと待っててね、彰人?」
悪魔崇拝者を掴み上げると、シアは隙間にあてがった。ガリガリガリ、と聞くも無残な音が響く。哀れな犠牲者の口に泡が浮かぶ。まだ生きている。目が合った。
「あー……まあ、諦めろ」
バイバイと手を振ってやる。もう動いてなかった。
「……もぐもぐごっくん。はー、おいしかったー♪」
「まだ少し残ってるぞ?」
もう人の形をしてはいないが、それでも3分の1ほど肉が残っていた。ここまでグチャグチャだと、スーパーで並ぶ肉とあまり変わらず、恐怖心も湧かない。……というか、俺の感覚が麻痺してしまったのか?
「いつでも人が食べられるわけじゃないし、これは冷蔵庫に入れて保存しておくの。シアの非常食だよ」
「開けたくない冷蔵庫だな。やはり偉大なる先人に倣ってチルド室に入れておくのか?」
「ん? そうだけど……先人って?」
「気にするな。ほれ、台所へ持って行け」
「分かったから急かさないでよう。……わ!」
シアの背中を押したら、肉塊から細長いホースのようなものがこぼれた。……ああもう。腸だ。
「あーあー。彰人も腸を戻すの手伝って?」
「超絶対に断る」
「むーっ。……あ、腸、だけに?」ウププ
「すげぇ、冒涜的なまでにつまらない!」
「ちょ、ちょっと言っただけだもん! 普段のシアはもっと面白いもん! お腹いっぱいだから頭回らないだけだもんっ!」
「もんもんうるせえ! お前はだよもん星人か!?」
「前にも言われたけど違うもんっ!」
プンスカ怒りながら、シアは床に落ちた腸を拾って肉塊に戻した。ああもう、説明したくない。
「……ん、おっけー。それじゃこれ冷蔵庫入れておくから食べないでね? シアのだからね?」
「頼まれても食わねーよ。ああもう、朝から食欲なくなる光景だな……」
「あーっ。ご飯は大事だよ? 朝ごはんはとっても大事なんだよ? 食べないとダメなんだからね?」
「食欲をなくす原因が、よくもまあいけしゃあしゃあと……」
「だ、だって襲ってきたし、シアのご飯だし……」
「む。まあ食文化の違いは仕方ないか。文化で片付けるのもどうかと思うが」
「……彰人も食べる?」ソッ
「食わんっ! 肉を持つな、渡そうとするな、血が垂れてるッ!」
「生の方がおいしいけど、焼く?」
「食わんッ!」
「うー。じゃあじゃあ、おさかなとか焼くから、それなら食べてくれる?」
「……まあ、それなら。あ、でも掃除してからだぞ?」
「やった! んじゃこれ冷蔵庫入れてくるね!」ピュー
言うが早いか、シアは肉塊を抱えて台所へ走っていった。
「はぁ……。まあ、こんな光景もいずれ慣れるか」
それはそれで何か人として大事なものをなくしてしまいそうだが、間接的とはいえ既に何人も殺しているのだ。今更そんなものを後生大事に持っていても仕方あるまい。
好む好まないに関わらず、もう俺は逃れられないのだ。なら、とっとと慣れてしまうに限る。なに、最初から大事なものなど俺自身だけ。──なら、この死への嫌悪感さえ消えれば、俺は無敵ではないか?
「何やってるの、あきとーっ! 早くしないとご飯できちゃうよー!?」
「分かった分かった」
廊下から聞こえてくる声に、暗い笑みで答える。
「わっ、黒焦げになっちゃった。わわっ、わわわっ! 火が、火が!?」
「テメェ何やってんだ人の家を燃やすなコンチクショウ!」
暗い笑みとかやって楽しんでる暇もない。急いで鎮火に向かう俺だった。
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カニバリズムやクトゥルフって人を選ぶよね…