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2024年11月21日
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【あーん製造機になってるみゆ】

2010年02月03日
 兄は食事をしないと死ぬタイプの人間なので、ご飯を食べます。
「今日も妹製作の飯、いわゆるみゆ飯が美味え」
「嬉しいことを言うお兄ちゃんめ! 褒美として一生食べさせてあげるよ! 檻とかに入れて」
「フォアグラですか。兄の肝臓が大ピンチ」
「ふぉあぐらー」
 響きが気に入ったのか、ふぉあぐらーと言いながらサラダをぱりぱり食べる妹のみゆ。
「むぐむぐ……ね、お兄ちゃんはふぉあぐら食べたことある?」
 そんな高級食品、食ったことねえ。だがしかし、そんなことを言っては兄として鼎の軽重を問われかねない。
「ももももももちろんあるともさ! あれはうまいぞ、何せガチョウの肝臓だからな!」
「どんな味なの?」
 さて困った、まるで想像がつかない。
「えーと……ガチョウっぽい味?」
「……全然分かんないんだけど」
「鶏肉の倍の味」
「より一層分からないよ、お兄ちゃん! なに、倍の味って!」
「さらに倍。役満」
 ごまかすため、箸をパイに見立てて両手で持ち、こんなことを言ってみる。いや、麻雀とか全然知らないので適当です。
「満漢全席!」
 なんか対抗された。よく分からないが、漢字数が多いので負けたっぽい。
「みゆの勝ちー♪ ていうかお兄ちゃん、ホントはふぉあぐらなんてお高いもの、食べたことないでしょ?」
「はい」
「素直なので許してあげようと思ったけど、やっぱ嘘つきなお兄ちゃんには罰ゲームを受けてもらいます」
「いかん、殺される!」
「そこまで酷いことはしないよ! んと、罰は……そだね、今日はみゆがあーんしないとお兄ちゃんはご飯食べれない刑に処すー!」
「なるほど、そのあーんの際に使う箸に毒を塗るのだな? 死にたくないなあ」
「見当違いも甚だしいよ、お兄ちゃん! ……んじゃ、罰ゲーム開始! 早速あーんだよ、お兄ちゃん!」
 みゆは箸でご飯をつまみ、兄の方に向けた。
「あー」
「はい♪ おいしい、お兄ちゃん?」
「むしゃむしゃ。飯だ」
「おいしいかどうか聞いてるの!」
「おいしい」
「にゃー♪ んじゃんじゃ、どんどん行くよ、お兄ちゃん!」
 続いてみゆは何故かまたしてもご飯をつまみ、兄の方に向けた。
「はい、あーん、だよ♪」
「おかず求む」
「好き嫌いはダメだよ、お兄ちゃん?」
「いや、好き嫌いとかではなくて」
「はい、あーん♪」
「あー」
 口内に飯が投入される。うむ、先ほどと同じ飯の味。
「おいしいかにゃ、お兄ちゃん?」
「あー、うん、うまいけど、兄はおかずとか食べたいような」
「ふにゅー♪ みゆがあーんすると、お兄ちゃんは喜びMAXだね♪」
「いやあの」
「んじゃ次ね♪ はいお兄ちゃん、あーん」
 またしても! またしても飯がみゆの箸に!
「だから! 兄は! おかずが!」
「お兄ちゃん、あーん♪」
「あー!」
 最早慣れてしまった味が口内を占める。刺激が、別の味が欲しい!
「どうかにゃどうかにゃ、お兄ちゃん?」
「おかずを! どうかおかずを!」
「みゆの愛情いっぱいのおかずを食べたくて仕方がないようだね、お兄ちゃん? まったくもー、困ったお兄ちゃんだよ♪」
 言葉とは裏腹に、みゆは笑顔でハンバーグをつまんだ。
「ふっふっふー。これ、食べたいかにゃ、お兄ちゃん?」
「いい加減にしないと兄の堪忍袋の緒がかんぴょうになるぞ!」
「全く意味の分からない脅し文句だよ!」
「ほら、恵方巻とか食う季節だし」
「あー……とはならないよ、お兄ちゃん!」
 ままならぬ。
「もー……ほら、食べたかったらみゆの言うことを繰り返すんだよ?」
「嫌な予感しかしないが、ハンバーグのためなら背に腹は変えられぬ」
「こほん。……『みゆの手作りハンバーグが食べられるなんて、俺はなんて幸せ者なんだろう』」
「みゆの手掴みマングースを食べさせられるなんて、俺はなんて可哀想なんだろう」
「信じられない改変を!? 怖いよ、怖すぎるよ!」
「ハンバーグをマングースと間違えたために起こった悲劇と言えよう」
「ありえない間違いだよ、お兄ちゃん!」
「同じカタカナだし、しょうがないよね。それはともかく、そのハンバーグを兄の口に」
「むー……まぁいいよ、なんかこれ以上焦らすとジラースになりそうだし。はい、あーん」
 ジラースにはならないと思いながら、口を開けると、ハンバーグの欠片が放り込まれた。肉の味、タレの味、そして肉汁が口内を駆け巡る。
「うめぇ! 肉うめぇ!」
「みゆの手作りハンバーグ、おいしい?」
「ああ。みゆの手掴みマングース超うめえ」
「だから、これハンバーグ!」
 ハンバーグかマングースか分からない肉片を飲み込む。いやはや、普段普通に食ってるものがこれほど美味いとは……やるなあ、焦らし。
「んじゃ次ね、お兄ちゃん」
 そう言ってみゆが掴んだもの……ってえ、それトマト! 兄はトマトが大の苦手なのに!
「はい、お兄ちゃん。あーん、だよ♪」
「無理無理無理! それだけは絶対無理!」
「みゆのあーんがあれば、お兄ちゃんの好き嫌いも克服できるよ! ふぁいとだよ、お兄ちゃん!」
「口に入れた瞬間マングースが逆流するが、よろしいか」
「だから、ハンバーグなの! そして逆流はノーなの!」
「贅沢だなあ」
「いーから! はい、あーん!」
「だから、無理だって……むぐぅッ!?」
 無理やり口の中にトマトを突っ込まれた。
「ほーら食べれた♪ やったね、お兄ちゃん!」
 全くちっともやっていない! 無理なものは無理! お口の中がトマトでトマトで大変危険!
「ややっ、お兄ちゃんの顔色が青い感じに! ……えーと、やっぱ無理だったかにゃ?」
 すごい勢いでコクコクする。その勢いで口の中のトマト風味がさらに!
「しょーがない。えいやっ!」
 えいやっの掛け声と共に、みゆが飛来した。隼の反射神経を持ってこれを避ける。
「ひぎゃっ!」
 すると、後ろの壁にぶち当たり愉快な声が聞こえた。
「うぬぬ……お兄ちゃん! なんでよけるの!」
 つい、と言いたかったが、口の中がトマトなので喋れない。
「つい、じゃないよ! まったくもー!」
 普通に心を読むな。
「ふんじゃ、そろそろお兄ちゃんのお口のトマトを救出するね。むちゅー」
 むちゅーと言いながら、みゆが兄に口付けし、口内のトマトを吸い出した。ずずずずずっと移動する半液体のトマトが、トマトが!
「……ぷはー! お兄ちゃん印のトマトはおいしいよ!」
「まじい! 口の中が大変まじい!」
「ぬー! みゆにちゅーされてまじいとは何事か!」
「いやだってトマトが兄の大嫌いなトマトが口の中に縦横無尽に!」
「うるにゃー! えい!」
 みゆは再び兄に口づけすると、今度は口の中を舌で舐めまわし始めた。トマトの欠片を舐めとるのが目的と思われるが、それよりちっちゃな舌が兄の口内を駆けずり回って嗚呼!
「ちゅ……ちゅちゅ、ちゅ。どう? まじいのなくなった、お兄ちゃん?」
「まだ! 恐らく一生なくならない予定!」
「……え、えと、それじゃ、もっともっとちゅーしないとダメかにゃ、お兄ちゃん?」
 恥ずかしげに頬を染めるみゆにコクコクうなずきまくる兄です。

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みゆキター!
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