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2024年11月22日
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【ツンデレととんど焼きに行ったら】

2010年02月03日
 今日の夜、近所でとんど焼きがあるらしい。暇なので行くことにした。
「お」
「……ん」
 向かう最中に、見知った顔と出会った。ちなみだ。なんとなく、一緒に向かう。
「……タカシは何を焼くの? 自分? ……なむー」
「拝むな。夏の虫じゃねーんだから焼かねーよ」
「……ちっ」
 舌打ちする娘っ子のほっぺを引っ張ってると、とんど焼きが行われる田んぼについた。既に炎は上がっていたが、人影はまばらだ。
「もうちょっといるかと思ったが、少ないな」
「……やれやれ、これだからおつむが足りない人間は。……とんど焼きが行われるのは7時。そして、今は8時。……もうみんな焼いた後に違いない」
「なるほど」
 ちなみのほっぺを引っ張って溜飲を下げつつ、ぼーっと炎を眺める。真っ暗な空に赤い炎がうねる様は、どこか非現実的で、何より美しかった。
「……あ、そだ」
 そう言って、ちなみは胸元をごそごそと探り始めた。
「こんなところでいきなり自慰するな」
「……今日はしてない」
「今日は!?」
「……ただの冗談にそんな過剰に反応するな。……これ、焼くようにお母さんに頼まれてた」
 ちなみは胸元から小さなしめ飾りを取り出すと、炎の中に投げ入れた。そして、ぱんぱんと手を叩くと、目を瞑って口の中で何かつぶやき始めた。さり気なく耳を寄せる。
「……もうちょっと大きくなりますように。……背とか胸とか色々」
「無理だ。てか、これは別に願い事を言う行事ではないと思う」
「……聞くな」
 ちなみは嫌そうな顔をして俺を睨んだ。
「あと、俺は現在のちなみの大きさが大変好ましいので大きくなられると悲しいです」
「……背? 胸?」
「両方! つるぺたはにゃあん最高ですよねウヒヒヒヒ」
「……変態め」
 どういうことか、本音を言うと変態扱い。
「ま、いーや。用事も済んだようだし、帰るか」
「……タカシは焼かないの?」
「焼くも何も、暇つぶしに来ただけだし。焼くもの持ってきてない」
「……火だるまにジョブチェンジできるちゃんす到来やも。……ごー?」
「行かねーよ」
 期待に満ちた視線を送られるが、ノリで焼死体になるのはとても嫌なので辞退する。
「……ぶー」
「ぶーじゃない。ほら、帰るぞ」
「……ん」
 最後にもう一度だけ燃え盛る炎を見た後、ちなみと一緒に元来た道を辿る。
「……うう」
 しばらく黙って歩いてたら、不意にちなみが声を漏らした。先ほどまで炎の前にいたので、より一層寒さが堪えるのか、小さな体を震わせていた。
「えーと。需要と供給の一致、ということで」
「……わ」
 ちなみを捕まえ、俺のコートの中に入れる。これで俺も暖か、ちなみも暖か、のハズ。
「……タカシ大胆。大胆すりー」
「日輪の力を借りて、今、必殺の、サンアタック!」
「……夜中におっきな声出すな。……迷惑」
 最初にネタ振ったの誰だ。
「……まあ、暖かくてよい。……タカシにしてはよい判断。……余は満足じゃ」
「んむ。俺も暖かいは柔らかいはで幸福の絶頂だ」
「……タカシの棒が私のお尻をつんつくと」
「勃ってねぇ!」
「……あ、出た。……お尻にねばねばで熱いのが」
「出てねぇ! こいつ最悪だ!」
「……むふー」
 無駄に嬉しそうな娘をコートに入れ、家まで送り届ける。
「……送迎ごくろー」
「はいはい。んじゃな、また学校で」
「……ばいばい」
 ちなみと別れ、家路に就く。ふと振り返ると、ちなみがこっちを見てた。手を振って、また進む。もう一度振り返ってみる。まだこっちを見てた。
 一瞬考えたあと、ちなみに携帯で電話をかける。
『……どしたの?』
「いや、なんとなく。暇だし、帰るまで話し相手になってもらおうかな、と」
『……別に、いいケド』
「つーわけで、家に入れ。長くなるとアレだし」
『…………』
「ど、どした?」
『……優しいね、タカシ』
「なな何のことだか俺には皆目!」
『……ふふ。……じゃ、何の話しよっか?』
 心持ち優しい声のちなみと電話越しに会話しながら、ゆっくりと帰宅するのだった。

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