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2024年11月22日
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【ツンデレと母の日】
2010年04月07日
今日は母の日だ。たまには日頃の感謝の気持ちを込め、贈り物をするのもいいかもしれない。
「つーわけで、選べ」
「いきなり人を拉致して言うことはそれか?」
みことがにっこり笑いながら俺の首を絞めるので、通行人が何事かとざわめきだした。
「ぐええ……あ、あの、母の日のプレゼントを選んでもらおうと、その……ぐええええ」
「なんだ、それなら最初からそう言え」
そう言うと、みことは口から泡を吐く俺を解放してくれた。
「泡を吐くな。カニか、貴様は」
いい旅カニ気分。いや、そんなことはどうでもいい。
「そ、それでだな、何を贈ったら喜ばれるのか俺にはちぃとも分からんのだ」
「母君に贈るのだ、真剣に選べば何を贈ったところで喜ばれるだろう」
「そう思って去年は赤子用おしゃぶりを1ダース贈ったところ、俺の誕生日に老人用オムツ1ダース贈り返された」
「……楽しい家族だな」
「使い切るのに難儀しました」
「使うな!」
健康な青年がオムツを使うのは、非常に屈辱的でした。
「そんな悲しい誕生日を迎えたくはないので、今年は真面目にすることにしたのですよ」
「なら、自分で考えるがいい。私に頼らなくても、真面目にするなら大丈夫だろう?」
「いや、途中で“あ、これ贈られたら嫌だろうな”と思った瞬間にそれを買ってる可能性が高いので、お目付け役が必要かと」
「お前は……いや、いい。分かった、付き合ってやる」
なぜか疲れた様子のみことと一緒に、色々な店を回る。
「みことみこと、これどうだ?」
「だから、なぜおしゃぶりを選ぶ!?」
紆余曲折の果て、どうにか適当な品を見繕うことができた。
「結局花か」
手元にあるカーネーションの花束を持ち直す。結構高かった。
「無難だが、これなら喜んでくれるだろう」
「……やっぱ食虫植物にしない? 母さんの人柄と合ってて喜んでくれるかと」
「どこの世界に食虫植物を贈られて喜ぶ親がいる!」
うちの親は喜びそうだけどな。俺の誕生日に何を贈り返すか考えると。
「ところで、お前は買わなくていいのか?」
「朝のうちに贈った後だ、抜かりない」
「少し誇らしげに、みことは小さな胸を反らした」
「小さい、は余計だ! いちいち口にするな!」
首を絞めようとする手を花束でガードする。
「く……花を盾にするとは卑怯な」
「みこともこれで一応女なのか、花を攻撃するのは躊躇われたようだ」
「だから、口にするな! 誰が一応だ、私は立派な女だ!」
わき腹を思い切りつねられた。
「いてててて、超痛え!」
「しるか、ばか!」
なぜか機嫌を損ねてしまったみことと一緒に帰路をゆく。なんか気まずい。
「え、えーと、みこちん、俺ノド渇いちゃった。喫茶店寄っていい?」
「変な愛称をつけるな!」
「いい? いいよな? よし、行こう」
「わっ、待て、私は行くなど一言も……」
みことの手をひっ掴み、喫茶店に入る。適当な席に座り、やってきた店員さんに注文を頼む。
「……むー」
だと言うのに、目の前でむーと唸る娘さんからは一向に機嫌が直る気配はない。
「だからあれほどパフェを頼めと言ったのに……店員さん呼ぼうか?」
「誰もそんなことで怒ってない!」
運ばれてきたコーヒーをひったくり、みことは一気にカップを傾けた。
「あふっ! ……ううっ、ふーふー」
みことは猫舌だった。必死で息を吹いて冷ますその様子が滑稽で、それ以上に可愛い。
「……何を笑ってる」
「え?」
「……ふん。そんなに私が猫舌なのが面白いのか」
「や、その、……まぁそんな感じ」
素直に可愛いからと言うのは少し照れくさかったのでそう言ったら、みことはますます不愉快そうなオーラを醸し出した。
「好きで猫舌じゃない。……ふん」
そう言って、みことは再びふーふーし始めた。……ああもう、だから可愛いってば!
「……なにをしている」
「え?」
「……なぜ、私の頭をなでている」
そう言われてみことの頭を見ると、なるほど俺の手が忙しそうにみことの頭をなでていた。
「え、ええと、これはその、違うんですよ?」
「なにが違う。いいから手をどけろ」
俺の手がみことの頭の上を往復するたび、みことの怒りが蓄積されていくような。
「手が、俺の手が勝手に! まったくとんでもない右手ですよね! ほとほと嫌気がさした、もう右手なんて知らん!」
「お前の手だろう! 早くどけろ!」
責任を右手になすりつけたのに、俺が怒られた。名残惜しいが、手をみことからどける。
「まったく……なんでお前はすぐ私の頭をなでるんだ?」
「可愛いから」
しまった、ついするりと本音がこぼれた。怒られる。
「…………」
──と思ったのだけど、みことはなんだか恥ずかしそうにコーヒーをくるくるかき混ぜていた。
「や、その、こ、コーヒーが! コーヒーが可愛いのですよ! 愛してると言っていいかと!」
「……随分変わった嗜好だな」
「よく言われます! 家の中はコーヒーグッズでいっぱいなのですよ!」
もちろん嘘だ。
「じゃあ、なんでお前はオレンヂジュースを飲んでるのだ?」
「あ」
みことは小さく嘆息し、俺を見た。
「本当に嘘が下手だな、お前は」
そう言って、優しい笑みを見せた。機嫌が直ったようで何よりだが、その笑顔は反則だ。
「や、その、……わはははは!」
精一杯の照れ笑いをして、俺はオレンヂジュースを一気にあおるのだった。
「つーわけで、選べ」
「いきなり人を拉致して言うことはそれか?」
みことがにっこり笑いながら俺の首を絞めるので、通行人が何事かとざわめきだした。
「ぐええ……あ、あの、母の日のプレゼントを選んでもらおうと、その……ぐええええ」
「なんだ、それなら最初からそう言え」
そう言うと、みことは口から泡を吐く俺を解放してくれた。
「泡を吐くな。カニか、貴様は」
いい旅カニ気分。いや、そんなことはどうでもいい。
「そ、それでだな、何を贈ったら喜ばれるのか俺にはちぃとも分からんのだ」
「母君に贈るのだ、真剣に選べば何を贈ったところで喜ばれるだろう」
「そう思って去年は赤子用おしゃぶりを1ダース贈ったところ、俺の誕生日に老人用オムツ1ダース贈り返された」
「……楽しい家族だな」
「使い切るのに難儀しました」
「使うな!」
健康な青年がオムツを使うのは、非常に屈辱的でした。
「そんな悲しい誕生日を迎えたくはないので、今年は真面目にすることにしたのですよ」
「なら、自分で考えるがいい。私に頼らなくても、真面目にするなら大丈夫だろう?」
「いや、途中で“あ、これ贈られたら嫌だろうな”と思った瞬間にそれを買ってる可能性が高いので、お目付け役が必要かと」
「お前は……いや、いい。分かった、付き合ってやる」
なぜか疲れた様子のみことと一緒に、色々な店を回る。
「みことみこと、これどうだ?」
「だから、なぜおしゃぶりを選ぶ!?」
紆余曲折の果て、どうにか適当な品を見繕うことができた。
「結局花か」
手元にあるカーネーションの花束を持ち直す。結構高かった。
「無難だが、これなら喜んでくれるだろう」
「……やっぱ食虫植物にしない? 母さんの人柄と合ってて喜んでくれるかと」
「どこの世界に食虫植物を贈られて喜ぶ親がいる!」
うちの親は喜びそうだけどな。俺の誕生日に何を贈り返すか考えると。
「ところで、お前は買わなくていいのか?」
「朝のうちに贈った後だ、抜かりない」
「少し誇らしげに、みことは小さな胸を反らした」
「小さい、は余計だ! いちいち口にするな!」
首を絞めようとする手を花束でガードする。
「く……花を盾にするとは卑怯な」
「みこともこれで一応女なのか、花を攻撃するのは躊躇われたようだ」
「だから、口にするな! 誰が一応だ、私は立派な女だ!」
わき腹を思い切りつねられた。
「いてててて、超痛え!」
「しるか、ばか!」
なぜか機嫌を損ねてしまったみことと一緒に帰路をゆく。なんか気まずい。
「え、えーと、みこちん、俺ノド渇いちゃった。喫茶店寄っていい?」
「変な愛称をつけるな!」
「いい? いいよな? よし、行こう」
「わっ、待て、私は行くなど一言も……」
みことの手をひっ掴み、喫茶店に入る。適当な席に座り、やってきた店員さんに注文を頼む。
「……むー」
だと言うのに、目の前でむーと唸る娘さんからは一向に機嫌が直る気配はない。
「だからあれほどパフェを頼めと言ったのに……店員さん呼ぼうか?」
「誰もそんなことで怒ってない!」
運ばれてきたコーヒーをひったくり、みことは一気にカップを傾けた。
「あふっ! ……ううっ、ふーふー」
みことは猫舌だった。必死で息を吹いて冷ますその様子が滑稽で、それ以上に可愛い。
「……何を笑ってる」
「え?」
「……ふん。そんなに私が猫舌なのが面白いのか」
「や、その、……まぁそんな感じ」
素直に可愛いからと言うのは少し照れくさかったのでそう言ったら、みことはますます不愉快そうなオーラを醸し出した。
「好きで猫舌じゃない。……ふん」
そう言って、みことは再びふーふーし始めた。……ああもう、だから可愛いってば!
「……なにをしている」
「え?」
「……なぜ、私の頭をなでている」
そう言われてみことの頭を見ると、なるほど俺の手が忙しそうにみことの頭をなでていた。
「え、ええと、これはその、違うんですよ?」
「なにが違う。いいから手をどけろ」
俺の手がみことの頭の上を往復するたび、みことの怒りが蓄積されていくような。
「手が、俺の手が勝手に! まったくとんでもない右手ですよね! ほとほと嫌気がさした、もう右手なんて知らん!」
「お前の手だろう! 早くどけろ!」
責任を右手になすりつけたのに、俺が怒られた。名残惜しいが、手をみことからどける。
「まったく……なんでお前はすぐ私の頭をなでるんだ?」
「可愛いから」
しまった、ついするりと本音がこぼれた。怒られる。
「…………」
──と思ったのだけど、みことはなんだか恥ずかしそうにコーヒーをくるくるかき混ぜていた。
「や、その、こ、コーヒーが! コーヒーが可愛いのですよ! 愛してると言っていいかと!」
「……随分変わった嗜好だな」
「よく言われます! 家の中はコーヒーグッズでいっぱいなのですよ!」
もちろん嘘だ。
「じゃあ、なんでお前はオレンヂジュースを飲んでるのだ?」
「あ」
みことは小さく嘆息し、俺を見た。
「本当に嘘が下手だな、お前は」
そう言って、優しい笑みを見せた。機嫌が直ったようで何よりだが、その笑顔は反則だ。
「や、その、……わはははは!」
精一杯の照れ笑いをして、俺はオレンヂジュースを一気にあおるのだった。
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