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2024年11月21日
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【ツンデレと節分】

2013年02月03日
 今日は節分だ。
「コッチヲミロ……コッチヲミロォ!」
「お化けっ!?」
 というわけで、シアーハートアタックのモノマネをしながらみことの家に突撃したら大変に怯えられた。
「いや、お化けじゃない。こんにちは、俺です」
「驚かすな、愚か者めっ! うう……どうして貴様はみことにそういうことをする?」
「節分なので、一緒に豆でもまきませんか旦那、という提案をしに来ただけなのに半泣きになられるとは」
「なっ、泣いてない、みことは泣いてなどないぞ!」
 慌てた様子でみことは目元をゴシゴシと拭った。
「な? な? 泣いてないだろ?」
「本当だ」ナデナデ
「なでるなっ!」
「いいえ」ナデナデ
「いいえー……」ウンザリ
 今日もみことは俺になでられて悲しそうです。
「で、だ。節分だし、豆まきをしようよ。豆も持ってきたよ」
「嫌だ。どうしてみことが貴様なんかと豆まきなどをしなければならない。一人で勝手に豆をまき、さらに知らず鼻に詰めてしまい、その豆が発芽して鼻から大豆を実らせてしまえばいい」
「なんて罵り文句だ」
「すごいだろう?」エッヘン
「やだこの娘馬鹿丸出し」キュン
「…………」
「よしよし」ナデナデ
 悲しそうな目で見られたので、頭をなでてあげる。
「よしよしではないっ! みことは頭をなでることを許可した覚えはないぞっ!」プンスカ
「そうなの?」ナデナデ
「そうなのだっ! だから、一刻も早くその手を止めろ! これは命令だ!」
「うーん。命令かぁ。どうしようかなあ」ナデナデ
「ええい、いいから手を止めろ! どうして貴様は毎日毎日みことの頭をなでる!?」
「子供とか悪い意味で大好きなんです」ナデナデ
「悪い意味!? というか、みことは子供じゃないっ!」
「いいえ」ナデナデ
「またいいえー……」ションボリ
「と、いうわけで。一緒に豆まきしましょう。しないと節分で追いやられたこの世界の鬼という鬼がみことの家に寄り集まるが、よろしいか」
「どうして貴様はそういう嫌なことをさらっと言う……?」
 泣きそうになりながらも、みことは俺から豆を受け取ってくれた。
「さて、節分だが。鬼は外福は内という呪を唱えながら鬼を模した人物に思う存分豆をぶつける悪逆無道な行事だ。豆をぶつけられて涙目のみことが見たいので、みことが鬼の役ね」
「断る。無様な役は貴様の方がお似合いに決まっているだろう?」
「どうして突然『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』の略称を言ったのか分からないが、俺がしましまのビキニ着てもちっとも楽しくないだろ」
「そんな略称を言った覚えはないっ! そしてビキニ!?」
「ほら、だっちゃの娘が着てるようなアレですよ、アレ。ラム酒だっちゃ!」(酩酊)
「貴様は常に酔っているようだな」
「言い間違えただけですよ。そんなのはいい。さあ、虎縞ビキニを着て俺を興奮させてくれ」
「嫌だ」
「大丈夫、そういう(無乳)方が興奮しますから」
「絶対に嫌だ!」
 今日も俺は説得ロールに失敗します。成功した試しがないよ。
「じゃあもう今のうちからみことの裸を想像して興奮しますから、着てください」
「貴様はもうみことを見るなっ!」(半泣き)
「……なんと見事なつるぺたかッ!」カッ
「見るなー! 見るなと言ってるだろうっ! えすぱぁめ!」ポカスカ
「ぶべらはべら」

「想像しただけなのに、あんなに叩かれるとは思いもしなかった」
「うー……全部貴様が悪いのだ。みことをえっちな目で見るな、愚か者め」ムスー
「いやはや。可愛い子を見るとどうしてもね」
「う……か、可愛いとか言うなっ!」ポカスカ
 何やら赤い顔をしたみことが、可愛らしい擬音と共に殴ってきた。
「解せぬ」
「はー、はー……そ、それで。その、豆まきだが」
「虎ジマビキニを着てくれると!?」
「……ど、どうしても、というのなら、その……き、着てやらなくはないぞ?」
「そりゃ、モチロン! 怪獣モチロンさパパ! ……モチロン? 誰?」
「知るか!」
 そんなわけで、みことがだっちゃになってくれる様子。どういう心境の変化か知らないが、嬉しいなったら嬉しいな!

「……き、着替えたぞ」
「そっか! 俺は部屋から追い出されてるからね! 寒い廊下で待機してるから分かんなかったよ!」
「は、入ってもいいが、その……見ても笑うなよ?」
「前フリですか」
「今すぐ元の服に着替えるっ!」
「ウソ、ウソですよ! 絶対に笑いませんから、どうかこの天の岩戸を開いてください!」
「……全く貴様は……。……いいな、絶対だぞ?」
 ドアが開く。そこにタイガーがいた。
「ど、どうだ? 変じゃないか? ……というか、変に決まってる」
「がおー!」
「貴様の方が変!?」
 驚愕に染まるみことをよそに、俺は彼女の視姦に忙しかった。
 うすぺたい乳を守る、トラジマの薄布。そして魅惑のとらいあんぐるハートを守護する、黄色と黒のパンツ。ぺたんこでも……否、ぺたんこだからこそ、彼女はこれほどに美しい。もしみことが鬼なら、今すぐにでも奴隷になるね!
「超可愛いですね!」ナデナデナデ
「な、なでるなぁ! みことはそんなこと許可してない!」
「うーん。そうだっけ。……でも、まあ、いいや!」ナデナデ
「よくない! そ、そんなことより、豆まきをするのだろう? 早く準備をしろ」
「いや、そんなのより今日はみことをなでたり抱っこしたりちゅーしたりする予定なので」
「そんな予定はないっ!」
「ああ、そうだそうだ。その虎縞ブラとぺたんこの隙間に手を入れて楽しむのを忘れてた。思い出させてくれてありがとう、みこと」ナデナデ
「もう着替えるーっ!」
「しまった、やりすぎた。ええと、冗談ですよー。ほんとにもー」
「ものすごく嘘っぽいぞ!」
「嘘ですから」
「やっぱ着替えるっ!」
「しまった、正直者の性(SAGA)がこんなところで! ええい、正直者は馬鹿を見るとはまさに至言だな!」スリスリ
「とか言いながら、なでなでからスリスリへ移行しているぞっ!? みことのほっぺにすりすりするなぁ!」(涙目)
「うひゃひゃ」
「ひーんっ!」

「堪能しました」ツヤツヤ
「陵辱された……」ゲッソリ
「言い過ぎです。ちょっとなでたりスリスリしたりしただけです」
「どこがちょっとだ!? ほら、もう30分以上過ぎてるぞ!」
「楽しい時間は過ぎ去るのが本当に早いねえ。みことと一緒にいると、俺はあっという間にお爺さんになりそうだよ」
「うっ。……そ、そんなこと言われても、みことは機嫌なんて直さないからな!」
「?」
「……うー、うるさいっ!」
「何も言ってません」
 なんか頬をつねられた。不可解成。
「そっ、それより、豆まきをするのだろう? ほら、早くしないか」
「それもそうだな。よし、豆をまくぞ!」
 はい、と手渡された豆を握り、みことに向け軽く投げる。
「鬼は外ー!」パラパラ
「がおー!」
 一応とはいえ鬼のフリをするみことが可愛い。
「福は内ー!」パラパラ
「がおー!」
「みことは俺のー!」ナデナデ
「違うっ!」
 最大限のさりげなさで頭をなでたら否定された。
「同じような文句だったし、ばれないと思ったのに」
「そんなわけあるか! どうして貴様はいつもいつもみことをなでる!」
「投げた豆がみことの胸に当たり、谷間などないのでまっすぐ下に落ちる様子を見てると、どうしてもなでたくなりまして」
「うー! うぅー!」
 涙目で俺の頬をつねってくる鬼が現れた。なかなかに強敵だ。
「さて続き続き」
「ちょっとは堪えろ、馬鹿者め!」
「鬼は外ー」パラパラ
「うー……がおー!」
「可愛い」ナデナデ
「なでるなぁ!」(半泣き)
 結局、夜までつるぺた鬼と豆まきしたりなでたりしました。

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【ツンデレと久しぶりに会ったら】

2012年09月03日
 なんか超なんか。なんか。なんかー! 夏休みが終わったとか。なんか!
「今日は登校日なんだ。今日は登校日なんだ……」
 そんなわけであずまんがの智ちゃんよろしく自分に言い聞かせながら教室に入ると、何やら寂しそうな顔をした奴が視界に映った。どうしたのだろうと見ていると、その生物が顔を上げた。瞬間、目が合った。
 途端、目をきらきらさせ、にっこりと幸せそうな笑みを浮かべるではないか。だがその生き物はその表情をぱっと改め、急にしかめっ面になった。そして、何か言いたげにじーっとこちらを見ている。
 見られたからには仕方がない、自分の席へ移動して鞄を置き、そのまま寝る。
「違うだろっ! そこはみことのところへ来るところだろうっ!」
 なんか席の前がやかましくなったので顔を上げると、件の生き物が何やら半泣きで俺の席の前に立っていた。
「おはよう、みこと」
「う、うむ。お、おはよう」
 ので、とりあえず挨拶をかわしてみると、腕を組みながら鷹揚に返事をくれた。ただ、なんか頬がひくひくとひくついている。なんだろう。
「久々の登校日に俺は早起きして眠いので寝る。お休み」
「む? 何を言っている。登校日ではなく、今日から学校だぞ?」
「みことは子供だから知らないかもしれないが、登校日なんだ」
「子供じゃないっ! それに、登校日ではないぞ。もう9月に入っているし」
「冗談は背だけにしろ」
「また馬鹿にしたな!? ううう~……やっぱ貴様なんか嫌いだっ! ふんっ!」
「それは残念。ところでみこと」
「なんだっ! みことは今、ヒジョーに不機嫌なのだっ! くだらん用事だと張り倒すからなっ!」
「久々に会ったことだし、帰りにどっか寄っていこうか?」
「うんうんっ、行く行くっ!」
 なんか満面の笑みでうなずかれた。
「…………」
 そしてみことが止まった。
「……と、とでも言うと思ったか、た、たわけめ」
 何やら顔を赤くしながら、しどろもどろになりながら、みことは途切れ途切れに言った。
「ええと。どうすりゃいい」
「……貴様に武士の情けがあるのなら、流せ。頼む」
 うつむきながら、絞りだすようにみことがつぶやく。良く見たら身体が震えてる。
「ふむ、分かった。で、最初の満面の笑みの『うんうん行く行く』はどういうことだ?」
「武士の情けーっ!」
 みことは顔を真っ赤にして、半泣きになりながら俺をぺこぽこ叩いた。
「生憎ただの学生なので、武士の情けは存在しないなあ。学生の情けがあるなら、と言っていたら流していたのだけど」
「やはり貴様は大大、だーい嫌いだーっ!」
「わはは」
 ぺけぽけしてくるのが楽しくて、みことの頭をわしわしとなでる。
「うぅー……」
「どうした」
「なんでもないっ! がるるる!」
 がるるる言うこのみことは怖いなあ、となでながら思った。

 今日は初日ということで、あっという間に放課後になった。さて、どうするかと思ってたら、何やら視線を感じる。けど、まあ、気のせいだ!
「さあ帰ろう帰ろう!」
「ええっ!?」
 何か怪訝な声が聞こえたのでぐるりと教室を見回すが、特に異変は見つからない。ただ、強いて言うなら、みことが何もない壁の方を向いて、口でぴょーぴょー言ってるだけだ。口笛のつもりか。
「……気のせいか。さあ、帰ろうか!」
「ぴょーぴょー!」
 妙に口笛風のぴょーがうるさくなった。一体なんだというのだ。そちらを見るが、やはり壁の方を見てぴょーぴょー言ってるばかり。
「……ああ! そういえば!」
「ぴ、ぴょ? ぴょー?」
「腹が減った。早く帰って飯を食おう」
「みことと遊びに行く約束だろうっ!?」
 どでででとこちらに走りより、みことは俺をがっくんがっくん揺さぶった。
「なのに貴様は帰ろうとか腹減ったとか! どういうことなのだ!? みこととどっかへ行く約束はどうなったのだ!?」
「いや、覚えていたのだけど、忘れたフリをしたらどうなるかなあと思い実験したら、こうなった」
「…………」
 ややあって、みことから湯気が出た。
「みっ、みことは貴様なんかと一緒に遊びに行くのなんて、ちっとも楽しみになんてしてないからなっ!?」
「いやお嬢さん、それは少々無理があるかと」(なでなで)
「無理などないっ! みことはそんなの全然楽しみになどしてないからなっ! あと頭なでるなっ!」
「いいえ」
「いいえ!?」
「で、どうする? 行くか、行かないのか」
「…………い、行く」
「──えーと」
「色々言うなっ、たわけっ!」
 なんか半泣きだったので、いじめるのはここまでにしようと思った。

 そんなわけで。
「えへへー♪」
 みことと一緒に街をぶらぶらしたりしているわけなんですが。
「あの、みことさん」
「ん、なんだ? あっ、このアイスはやらんぞ! みことをいじめた罰なんだから、それくらい当然だぞ!」
 俺から守るようにみことはアイスを急いでぺろぺろ舐めた。だが、急ぐあまりクリームが口の周りにつきまくりだ。
「あーあー、クリームがついてるぞ。ハンカチ持ってるか?」
「持ってるわけないだろう」
「はぁ……。ほれ、こっち向け」
 みことと一緒にいるとこういう事態が多々起きるので、俺はハンカチを持ち歩くのが習慣づいている。そんなわけで、ポケットからそれを取り出し、みことの口元を拭う。
「んー、んぅー」
「ほれ、動くな。……ん、よし。終わりっと」
「綺麗になったか?」
「perfectでございます、お嬢様」
「うむ、褒めてつかわす!」
 二人してわははと笑う。
「……えへへー」
 笑い終わると、みことは何やら嬉しそうにこちらに寄ってきた。
「どした」
「んー? いや、なんでもないぞ。ほら、学校が始まったなー、って思っただけだ」
「あー……そうな。ああ、夏休みが一年あればいいのに」
「それじゃ毎日が夏休みじゃないか」
「なんて夢のある生活なんだ。そうなればいいのになあ」
「……みことはそんなの御免だ」
「なんと。学校が楽しいとかリア充か。ちくしょう、こんなところまで来て非リアの俺を攻めるか」
「みことという美しい女性と一緒にいて、何を言うか」
「ああそういやそうだった。みことという可愛い子供と一緒にいるし、俺もリア充なのか」
「じょせい!」
「子供」(なでなで)
「じょーせーい! れでぃ扱いしろっ!」
「任せろ!」(なでなで)
「言動不一致だぞ! まったく……」
 ぷんぷん怒りながらも、みことは俺になでられるがままだった。
「──で、家の方は?」
 ベンチに座り、ぼやーっと人の流れを眺めながら切り出す。
「相変わらずだ。歌に舞に茶にと、大忙しだ。下手に家がでかいと、苦労が絶えん」
「そか。ま、学校にいる間くらいは息抜きしろよ。ぶっ壊れちゃ、元も子もないからな」(なでなで)
「……ん」
 金持ちには金持ちの苦労があるよな。せめて学校にいる間くらいは、笑っていてほしいものだ。
「……何より、休みの間は貴様に会えんからな」(ぼそり)
「ん?」
「なっ、ななな、なんでもない! 何も言っとらんっ!」
「なんでそんな顔赤いの?」
「あ、赤くなどないっ!」
「俺も本当は休みの時にも会いたいんだけど、いつも門前払いされちゃうんだ」
「聞こえているではないかーっ!?」
「わはは」
「忘れろ! 全部忘れるのだ!」
「や、俺もみことに会えなくてずっと寂しかったよ」
「も、ではない! みことはちっとも寂しくなどなかったぞ! 学校が始まるのを指折り数えなどしなかったらからな!」
「……はは、なるほど。じゃあその分を埋めるべく、しばらく一緒にいましょうね」
 カレンダーを見ながら指折り数えてるみことを想像すると、思わず笑みがこぼれる。それを隠すため、という名目のもと、みことを膝にのっけて頭をなでる。
「寂しくないと言っているだろう! ……だ、だが、人の厚意を無碍にするのもなんなので、我慢してやる。と、特別だぞ?」
 こちらに振り返り、上目遣いでそんなこと言われた日には、そりゃもう。
「ああもうみことは可愛いなあ!」(すりすりすり)
「ひゃああああ!?」
「今すぐにでも一緒にお風呂入って洗いっことかしてえ!」(すりすりすり)
「は、犯罪だ、馬鹿者! そ、それより、すりすりするなあ!」
「ふっにふにでモチみてえ。ああもう一生こうしていたいなあ!」(すりすりすり)
「ふにゃー!」
 うららかな街角でみことの悲痛な声が響くのだった。

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【お昼買いに購買に来たら財布がないのに気付いたツンデレ】

2011年05月26日
 今日はママンが寝坊したとかで、購買でパンでも買えと500円硬貨を握らされました。
 まあたまにはいいかと思ったので、昼休み、だらだら購買へ行くと、尋常ならざる人の群れ。そうだった。購買って場所はこうだった。ずっと弁当だったから忘れてた。
 しかしここで躊躇していても仕方がない。えいやっと人の波にダイブしようとしたら何者かが人の首を後ろからむンずとわしづかみするんですの。
「ぐえええ」
 昼食時に似つかわしくない声だったのか、俺を中心に蜘蛛の子を散らすように人がいなくなった。そんな人を汚物かのような目で見ないで。誰でも突然首を絞められたらそうなるんです。
「いきなり人の首を絞めるとは何事だ! なんというマナー違反!」
 なんとか首の拘束を解き、人を殺そうとした犯人に詰め寄る。
「気にするな」
 涼しい顔で俺の抗議を聞き流すこいつは、誰あろうみことだった。
「いや、する! しまくる! なぜならここで注意しないとまたいつ何時このように首を絞められ死に瀕するか分からないから!」
「うるさい黙れ」
 全く間違ったことを言ってないのだけれども、とても怖かったので簡単に黙る。
「そして金を出せ」
「はい」
 依然怖かったので財布をそのまま渡す。犯罪の現場が今ここに。誰か助けて。
「……なんだ、これっぽっちしかないのか。まあいい」
「すいません」
 俺の昼飯代を奪い、みことは涼しい顔のままパンを売るおばちゃんの元へ向かうと、数種類のパンを購入したようだった。俺の昼飯代で。
「来い」
 お腹が空いたなあ、と悲しんでいると、みことが人の首をぐいっと握りながら来いと言うのでぐえええと返事をしたら怒られた。

 購買を出て、中庭に向かう。今日はお日さまが照っていて丁度気持ちいい塩梅だ。……昼飯があるなら。
「ふむ、そこのベンチがいいな」
 などと考えていると、とあるベンチの前でみことが立ち止まった。
「ここに座れ」
「はい」
 ベンチに座り戦々恐々してると、みことは俺の隣に座り、先ほど買ったパンを袋から取り出した。
「おいしそうですね」
「とはいえ所詮は購買だ、過度な期待は酷だろう」
 それでも食べられない身としては美味しそうだなあ、と思っていたら、何やら俺の方にパンを差し出したままみことが動かなくなった。
「?」
「……ん」
「ん?」
「ん!」
 何が“ん”なのだろう。よく分からない子だなあ、という思いを込めてみことをじっと見てると、何かみこと内部で論争があったのだろう、みことの顔が何やら赤くなってきた。
「……あ、あーん」
 それは想定外だ。
 みことはパンの包装を解くと、あろうことかあーんを仕掛けてきた。それは男女仲がむつまじい関係のみにおける技だと聞いたが、友人間でもいいのだろうか。
「は、早くしろ、ばか。……あ、あーん」
「え、ええと。あ、あーん」
 もちろん俺内部でも様々な議論が繰り広げられたが、この返事がベストと判断した次第でございますハイ。だってほら、女の子にあーんとかされたいし!
 とか思ってたらパンを半分以上一気に口に詰められ呼吸困難に陥るサプライズを仕掛けられる。
「もがもがもが、ごくんっ! ……ふぅ。あのな、みこと。死ぬから。人は呼吸をしないと死ぬから」
 どうにか咀嚼→嚥下の高難度のコンボを決め、みことに説教する。
「そ、それくらい私だって知っている! ちょっと入れる量を誤っただけだ」
「次は普通の量でお願いします」
「え、ええっ!? まだこの私にあーんをさせるつもりなのか!?」
「そもそもお前から始めた事じゃねえか。ていうか、そもそもで言うなら俺の金で買った飯だし」
「借りただけだ!」
「ええっ!? 俺はてっきり強奪したのだとばかり」
「……お前は私をなんだと思っているのだ」
「蛮族」
 頬をつねられ痛い痛い。
「誰が蛮族だ、誰が! ……ちょっと財布を家に忘れただけだ。誰にでもあるだろう!?」
「それは誰にでもあるけど、購買で知り合いの首を絞めて財布を強奪することは誰にでもないぐえええ」
 先ほどの再現フィルムを見ているかのような状況に陥る。
「ふん。ばか。ふん」
「拗ねるのは大変可愛らしいのでありがたいですが、首を絞めるのはやめていただきたい。死にますので」
「だっ、誰が可愛いかっ、誰がっ!」
「痛い痛い」
 照れ隠しに殴ってくるのもまた可愛いですが、女性とは思えない膂力なので言うんじゃなかった。なんだその腰の入り方。
「うぅー……」
「人を殴ったうえに睨むな」
 鼻血が出たのでティッシュを鼻に詰めながらみことをなだめる。
「と、とにかくだ。お金は借りただけだ。また後日ちゃんと返す」
「はぁ。それはいいが、今日の俺の飯はどうなるんでしょうか」
「だ、だから、最初にお前に渡そうとしたのに、お前はちっとも受け取らないから、あんなことする羽目に……!」
 先ほどのあーんを思い出したのか、みことは赤くなりながら俺を睨んだ。
「あ、あー。あの時の“ん”はそういう意味だったのか。言ってくれないと」
「それくらい察しろ、馬鹿!」
「結果から言えば、馬鹿だったばかりにあーんしてもらって大満足です。ていうか、素朴な疑問なんだが、なんであーんを?」
「……そ、そうしないとお前の分のパンを受け取ってくれないと思ったんだ。お前は意地悪だから!」
「これはいいことを聞いた。そう、俺は超意地悪なので、あーんをしないとパンを食べないぞ」
「お前は悪魔か!?」
「人です」
「ううぅ……ど、どうしてもあーんをしないとダメか?」
「ダメではないが、一時間後に俺の席で即身仏が発見されると思う」
「一時間で餓死だと!? ……お前の消化器系はどうなっているのだ?」
 信じるな。
「……わ、分かった。分かった! やってやる!」
「いや、やっぱいいや」
「なんだと!? この私が折角やる気になったというのに、どういうことだ!?」
「いや、ほら」
 そう言うとほぼ同時に、チャイムが鳴った。
「というわけで、飯の時間は終了。教室に戻るぞ」
「……ダメだ」
「はい?」
「ダメだ! まだあーんしてない! やるぞ!」
 何か妙なスイッチが入ったのか、みことは急にやる気を出して俺にあーんを強要した。
「え、いや、あの」
「ぱっぱとしたらすぐ終わる! やるぞ、ほら!」
「え、え、え?」
「……は、はい、あーん」
「え、あ。あーん」
 訳も分からず口を開けてると、口の中にパンが入れられる。
「ど、どうだ? うまいか?」
「もぐもぐ……うまい」
「そ、そうか! うまいか!」
「じゃ、そういうわけなんで教室に」
「えと……はい。あーん」
「え」
「え、じゃなくて、あーんだ。ほら、あーん」
「いや、あの、みことさん。教室に戻らないと遅刻して」
「あーん、だ」
「……あーん」
 またしてもパンが口の中にあーんな感じで入れられる。
「どうだ? うまいか? うまいだろう?」
「もぐもぐ……うまい。じゃあ教室に」
「はい、あーん」
 どうして次弾が既に装填されているのだろうか。
「どうした? 早く口を開けないか」
「あの、あのな、みこと。早く教室へ行かないと遅刻して」
「ほら、あーん?」
「……あーん」
 どうして小首を傾げる悪魔の誘いを断れようか。
 まあ、そのような感じでパンを全部平らげていたら、そりゃ遅刻しますよ。それは分かるが、一緒に教室に入ってどうして俺だけ怒られるの。なんだよ普段の素行って。
「ちょっと女子の着替えを覗く程度ですよ!?」
 そりゃ放課後に改めて教師集団に説教されますよ。

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【牛 安楽椅子 ブラウザ】

2011年02月06日
 いつも通りの朝だってのに、突然みことが牛に乗って教室に入ってきて、そのうえ牛がぶもーぶもーと超興奮して跳ね回ってるもんだから、教室内ちょっとした阿鼻叫喚を呈しています。
「ええい、落ち着け! 大人しくしろ!」
 馬上ならぬ牛上のみことが必死にしがみ付きながらそんなことを叫んでいるので、何らかの事情でこうなったと把握。
 とはいえ巻き込まれると大変そうだし面倒だから混乱に乗じてそーっと後ろのドアから逃げようとしたら、ばっつりみことと目が合った。
「貴様っ、私を置いて一人で逃げるつもりか! 見損なったぞ!」
「いやいや、何を言いますか。図書室まで行ってパソコンを立ち上げ、ブラウザで『牛 暴走 教室』と検索し、解決策を探ろうとしていたんだ」
「インターネットは万能ではないッ! そんなことより、早くどうにかしろ!」
「まあ落ち着け。よっこいしょっと」
 安楽椅子ではないのが残念だが、近くに落ちてた椅子に腰掛け一服。どんな時でも冷静であれ、という自身のポリシーに則って行動する俺かっこいい。
「こっ、こら、何を落ち着いている!? ああっ、あああああっ!?」
 自分に酔ってたら牛に突撃され、ぱひゅーんってすっ飛びながら気絶。

「……むーん。……む?」
 目が覚めた。鼻につく薬品の匂い……保健室か?
「やっと起きたか。いつまで気絶してたら気が済むんだ。全く、男のくせにだらしない奴だ」
「お?」
 声に視線を向けると、さっきまで牛の上にいた変な人が今度はベッドの横のパイプ椅子に座ってます。しかし、牛の姿はもうない。
「牛は? どうなったんだ?」
「どうにか処理した」
 腰元にある刀を小さく揺らし、みことは何でもないように言った。
「超怖いですね。ていうか普通に持ってるが、学生が帯刀なんかしていいの?」
「ぐだぐだ抜かすな。下ろすぞ」
「卸さないで!」
「漢字が違うぞ! どこの酔狂な者が貴様なんぞを買い取ると言うのだ!」
 なぜ分かる。
「ていうかだな、みことよ。あの牛はなんだったんだ? なんだって牛にまたがり登校なんてエキセントリックなマネを?」
「そっ、それはその、だな……」
 俺の質問に、突然みことはもじもじしだした。
「そっ、そんなことより腹は空かんか? 貴様は気絶していたので知らんだろうが、もう昼だぞ?」
「む」
 言われてみると確かに少し腹が減っているような。そして時計を見るに、昼休みも半ばを過ぎている。
「そうな。んじゃ、ちょっと購買行ってくる。とはいえ、この時間だと大したものは残ってないだろうけどな」
「そっ、そうか! それは災難だったな!」
「なんか知らんが超嬉しそうだな。しかし甘いぞ、みこと! 俺は既に牛に突撃されて昼まで気絶する、という災難を受けている! この程度の災難、物の数ではない!」
「何をいばっている……?」
 それは俺にも分からない。
「そ、それより、購買には大したものがないのだろう?」
「ん、ああ。俺の経験上、この時間だとほぼ売り切れて不人気しか残ってないからな」
「そ、そうか。そ、その、なんだ。貴様がだらしなくも気絶してしまい昼食を摂り損ねてしまった理由の数%は私のせいだからな」
「数%!? え、100%じゃなくて?」
 なんか刀を鳴らされたので押し黙る。
「だ、だから、詫びというのもなんだが……こっ、これをやる!」
「ふがっ」
 勢いよく差し出された箱が俺の鼻を直撃して超痛え。
「あいたた……えーと、なんだ? ……む、これは、俺の勘違いでなければ」
「い、いいから黙って食え!」
「爆弾?」
「勘違いだった!?」
 いいリアクションするなあ。
「嘘だよ。弁当か。でもいいのか? 俺が食っちゃって」
「構わん。私の分は既に平らげた。それは、貴様の分だ」
「俺の? え、わざわざ?」
「かっ、勘違いするなっ! わざわざ作ったのではない! ぐ、偶然いつもより早く目が覚めてしまい、暇だったからついでに作っただけだ!」
「ん~……ん。よし。分かった。ありがとう、みこと」
「だっ、だからわざわざ作ったのではないと言っているだろう!? 感謝するなっ、ばかっ!」
「ではでは、いただきまーす」
 包みを解いて蓋を取る。閉める。
「おい。何をしている」
「……ええとね。なんかね。全体的に赤かったんですが」
「ん、ああ。今日の料理は少々赤かったな」
「湯気が立ってたんですよ。ほかほかって」
「下ろしたてだからな」
「もう嫌な予感しかしませんが、今日のおかずは何ですか?」
「牛刺しだ。新鮮だぞ?」
 ほらね。やっぱりね。思ったとおりだね。
「もうたぶん絶対そうだと思うんですが、さっきの牛さんがここに?」
「そうに決まってるだろ。家の者には新鮮なものを、とだけ伝えたのだが……よもやそのまま来るとは」
「どうなってんだ、おまえん家」
「しかも、そのうえ家では仕留めきれず、学校まで運ばれてしまう始末。いや、私もまだまだ修行不足だな。もっと精進せねば」
 気合を入れ直さなきゃいけないのは、みことではなく俺だろう。だって、食わなきゃいけないんだよ? さっきまでぶもーぶもー言ってたアレを。
「ほら、いいから早く食え。……そ、それとも、あれか? 貴様は私に食べさせてもらわないと食わん、と言うのか?」
「すげぇ道に迷い込んだ」
「よ、よし。私も女だ。やってやる!」
「どこで決心がついた!? いいです、やらないで!」
 俺から弁当箱を奪い、みことは蓋を開けた。……すげぇ。弁当というくらいなんだからご飯があるんだろうけど、肉と血で全く見えねえ。
「ほ、ほら。あーんだ」
 肉を一つつまむと、みことは俺に箸を向けた。肉から血がぼたぼたこぼれているのがお前には見えないのか。
「もしこの場面がアニメ化されたらカットされると思う」
「うん? よく分からんことを言う奴だな……。ほら、あーんだ」
 女子のあーん力はかなりのものを誇っていることは知っている。だが、その対象物が血まみれの場合、その力はどうなるのだろう。
「むーん」
「あーんだ! むーんではない! どうして口を閉じる!」
 ごめんなさい無理です。せめて血抜きしてほしかったです。
「どうして口を開けない。……ま、まさか、口移しをしてほしいのか!?」
 いやもう本当勘弁してください。
「う、うう……どこまでえっちなのだ、貴様は。……よ、養護教諭がいないのも、貴様の手なのか?」
 知りません。起きたらすでにいませんでした。偶然の二人きりなんです。
「……あ、あむ。んー」
 咥えないで! 牛肉を咥えないで!
「んー。ん?」
 “ほら?”って顔しないで! ……ええい、えええい、ええええい!
「あむぐあっ!」
「ひゃっ! ……も、もう。乱暴だぞ、ばか」
 みことの口に触れないよう細心の注意を払いながら、ひったくる様に肉を奪う。もぐもぐもぐ。あーもう。想像通り血の味しかしねえ。
「もぐもぐごくんっ! ……はぁ。あのな、みこと」
「ど、どうだ? おいしかったか? もうひとつ食べるか?」
「あ、いや、あのな」
「あむっ。んー」
「いや、あの、だからさ」
「ん?」
「……がうっ!」
「んー♪」
 ご褒美なのか罰なのか分からない状態に陥りながら、昼休み全部使ってひたすら生肉を食べました。

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【スナック菓子を食べていたらツンデレが物欲しそうな顔でこっちを見ていたので、ほれ、と差し出してみたら】

2010年10月28日
 部室に菓子を持ち込んでめりもり食っていたのだけど、どうも視線を感じる。
「はぅー……」
 探る必要もないくらい欲しいオーラ(&よられ)を出してる小動物が一匹。みことの人だ。
「……欲しいか?」
「くれるのかっ!?」
「聞いただけもしゃもしゃ」
「……っ! ふ、ふん、そういう風にするって、私にはお見通しだ! ちっとも悔しくなんてない!」
 言葉だけでもアレだが、目の端に涙とか溜めて言われたらより一層説得力がなくなる。
「…………」
 無言でみことの前でひらひらスナック菓子を動かす。
「はぅー……」
 それに釣られてみことの顔も動く。菓子を右に動かせばみことの顔も右に、左に動かせば左に。
「面白かったので一つやる」
「ホントかっ!? なんだ、お前って実はいい奴じゃないか!」
「こんな愉快な見世物を、たかが菓子ひとつで見せてくれるみことほど善人ではない」
 物凄く不愉快そうな顔をしながらも、みことは菓子を受け取る手を引っ込めようとはしなかった。
「はい」
「さっさと渡せ、阿呆!」
 ひったくるように菓子を奪うと、みことは素早く自分の口に放り込んだ。
「……はぅ~」
 まぐまぐした途端、みことは心底幸せそうに顔を蕩けさせた。
「菓子ひとつでそこまで幸せそうな顔されたら、もう一個やりたくなる」
「いいのかっ!? お前はすごく嫌な奴だけど、お菓子をくれるならいい奴だな!」
「……お兄さん、時々お前が誘拐されないか心配だよ」
「?」
 不思議そうな顔をしてるみことだったが、袋から菓子を取り出すとパッと表情を明るくさせた。
「はい、あーん」
「あーん!」
 ものすごく素直にあーんされて、こちらが面食らう。
「? どうした、早くよこせ。……それとも、またいじわるするのか?」
「い、いや、そうじゃない。はい、あーん」
「あーん!」
 みことの口中に菓子を放り込む。
「まぐまぐ……うぅ~♪ すごくおいしいぞ!」
「そいつぁ何よりだ」
「褒美だ、稽古つけてやる!」
「う」
 みことは見た目こそ子供そのものだが、実は剣道有段者だ。ええと……確か、参段? 一方こちらは、入部して間もない身。
「あの、結構です」
「か、勘違いするなよ、単なる厚意だぞ?」
「超迷惑だと言っている!」
「むぅ~! 私の稽古が嫌なのか!」
「はい!」
「……お前の気持ちはよく分かった。今日はマンツーマンで指導してやる!」
「ふふ、おかしな話だ」
 ずるりずるりと剣道場に引っ張られる俺だった。

 んで。
「……弱いなあ、お前」
「てめぇ! 初心者相手に全力ってどういうことだ! てめぇ!」
 足腰立たなくなるまで練習という名のいじめを受けたので、床に倒れたままお送りしております。
「ぜんぜん全力じゃないぞ?」
 なんという。
「……ええい! もっと全力で手加減をしろ!」
 最後の力を振り絞り、ぐばーっと起き上がってすかさずみことのほっぺをむにーっと引っ張る。
「あぅーっ!?」
「こちとらつい先日まで帰宅部だったへっぽこ学生なんだ! お前みたいに鬼強い奴は、分からないよう超手加減しろ!」
「すごい……別府くん、全く男らしくないことを全力で言い切ってる……」
 近くの部員が何か言ってるような気がするが気のせいだ。
「うーっ! ううーっ!」
「そしてほっぺが柔らかくて気持ちいいなあチクショウ!」
 むにーんむにーんみことのほっぺの感触を堪能する。したので手を離す。
「あうっ! ……うう、貴様、よくも私のほっぺをむにむにしたな!」
「されたくなかったら、練習でもっともっと手加減し、俺をいい気持ちにさせることだな! はーっはっはっはっは!」
「お前がもっと上達するよう真面目に練習しろっ!」
「めんどい」
「……まだ余力があるようだな。もっと稽古をつけてやろう」
「おやおや」
 大変なルートに入ったので逃げる。が、よく考えるともう全然体力残ってなかったのですぐ力尽きて捕まった。
「んじゃ、とりあえず素振り100まん回!」
「馬鹿の数字だ!」
「……100おくまん回!」
 今日は帰れないらしい。

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