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2024年12月04日
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【ツンデレと豆まきをしたら】
2011年02月05日
今日は節分です。誰がどう言おうとそうなんです。信じれば夢は叶うんです!
そんなわけで節分なのだが、高校生ともなるとそういった行事にも疎くなり、結果俺の家の前で待ち構えていた知り合いの中学生、ふみの襲撃に遭う羽目になる。
「鬼は外。鬼は外」
呪文のように繰り返しながら、ふみは俺の鼻に豆を一粒ずつ詰めた。
「やめてください。すごく迷惑です」
「福は内、福は内」
「文言の問題ではなくて!」
あまりに詰められると取れなくなるので、ふみの頭に手を置いて攻撃を防ぎつつ、空いてる手で鼻をふんってする。ぱひゃーっと豆が飛んでいった。
「道端に捨てるなんて、おにーさん極悪です。後でおにーさんが美味しくいただいてください」
「俺はTVスタッフではないので美味しく食べない」
「やっぱりおにーさんは極悪です」
「いきなり人の鼻に豆を詰める奴は極悪ではないのか?」
「おにーさん、今日は節分です」
都合の悪い話を完全無視し、ふみは話を改めた。
「ああ、そうみたいだな。豆の攻撃力をひしひしと感じたところだ」
「どうせおにーさんのことです、節分にかこつけ中学生の豆をいただきだぜーとか言いながら私の家に押しかけ、私の豆をいただくつもりだったろうから、私から来てあげました」
とても人聞きの悪い台詞を玄関先で吐かれたので、ふみを小脇に抱え、ものすごく急いで家の中に入り、そのままの勢いで自室へゴー。
「はぁはぁ……あのなあ! 世の中には近所づきあいってのがありまして! ていうかさっき隣の爺さんが庭で盆栽いじりしてまして!」
「ここで私の豆を?」
しつこいので、ふみのどたみにチョップの刑。
「むぅ。痛いです、おにーさん」
「当然の罰だ」
「まあ冗談は置いといて、おにーさん。豆をまきたいです」
「どうぞ自宅で行ってください」
「……一人でしてもつまんないです」
「あ……」
そうだった。こいつの両親は帰ってくるのがいつも夜遅いので、いつも一人で過ごしてるんだった。
「あ、あのな、ふみ。折角だから俺と一緒に豆まきしよっか?」
「嫌です」
「…………」
人が折角歩み寄ってやったというのに、何この天邪鬼。
「土下座するなら考えてやらないでもないです」
「えい」
とりあえず両手でほっぺを引っ張る。……ええい、引っ張られても無表情とはどういうことだ!
「がっきゅううんこ」
「女の子が言う台詞じゃありません!!!」
最終兵器を持ち出されたため、ほっぺ引っ張りを中止。くそぅ。
「学級文庫の何が問題なんですが、おにーさん?」
「ええい、分かってて言ってやがるな」
「ふふん。おにーさん如きが私に歯向かうなんて10年早いです」
「はぁ……なんか疲れた。ちょっと休む」
「根性なしです、おにーさん」
ベッドに腰掛けると、俺のすぐ隣にふみも座ってきた。
「あの、ふみさんや。少し近くないですかね?」
「至近距離から確実におにーさんを仕留めるためです。致し方ないのです」
「あれ、殺されるの?」
「最近の豆の殺傷能力を侮ってはいけません。おにーさん如き低能力者、豆の一つでダウンです」
「それもう食料の範疇を超えてるよね。ていうか低能力者言うな」
「……しかし、おにーさんが帰ってくるのが遅かったため、待ちぼうけの私は暇つぶしに豆をぽりぽり食べており、結果おにーさんの鼻に詰める分しか確保できませんでした」
「鼻に詰めず撒けばよかったのに。ていうか、別に家の前で待たなくても俺の家に入ってりゃいいのに。いつでも来ていいんだぞ?」
ふみの頭をうにうにとなでる。
「なでないでください。子供じゃないです」
やや不機嫌そうにふみは俺を睨んだ。
「中学生は子供だろ?」
「……分かりました。私はまだ子供なので、次から勝手におにーさんの部屋に入り、子供らしく部屋を探検したいと思います」
ふみをなでていた手が止まる。妙な汗が出てきた。
「い、いや、あの、前言撤回というか、その、居間で待つと言うのも手だと思うぞ? 母さんがおやつ出してくれるだろうし」
母さんは専業主婦で、かつ可愛いもの好きなので、ふみを大歓迎している。だからと言って可愛くないからと俺を虐待するのは勘弁してください。
「じゃあ、おやつを食べてからおにーさんの部屋を探検します。子供なので好奇心旺盛なんです」
「……すいません俺が悪かったです。ふみは大人ですので探検しないでください」
俺の負け。首を折ってふみに敗北を伝える。
「最初からそう言えばいいんです。これだからおにーさんは馬鹿なんです」
「はいはい、すいませんでした」
謝りながらふみの頭をなでる。俺の謝罪に気を良くしたのか、ふみはばふーと鼻息を漏らした。
「それにしても、どうしましょうか、節分」
「もう全然豆残ってないのか?」
「ええと……あ、一個だけ残ってました」
ふみがポケットを探ると、一粒だけ転がり出てきた。
「一個かぁ……それじゃ撒いても仕方ないなあ」
「……あ、ないすあいであ。まず、おにーさんにこの豆を渡します。鬼は外」
ぺそっと豆を手渡された。そのついでだか知らないが、握手もされた。
「この握手は?」
「節分により外へ追いやられた鬼たちをおにーさんの手に封じてます」
「今すぐ手を離して! 嘘でも今日という日にやられたらなんか本当に入ってきそう!」
「これで鬼の手が完成です。おにーさんの中二病も満足で、おにーさんにっこり」
「勘弁してください!」
「おにーさんは、そんなに、私と手を繋ぎたくないんですか……?」(うるうる)
「一生繋いでいたいです!」
今日も俺は女性の涙に弱い模様。
「やめてください。迷惑です」
「…………」
「憮然とした顔のおにーさん、素敵です」
とても不愉快です。思った通り嘘泣きだったし。
「はぁ……んで、この豆はどうしたらいいんだ?」
「次に、おにーさんが福は内と言いながら私に豆を渡すんです」
「……福は内?」
豆を返す。一体これのどこがないすあいであと言うのだ。
「このやり取り一回で、鬼は外、福は内というやりとりが完成です。豆の量は、回数でカバーです」
「一応聞いておくが、何回やればいいんだ?」
「最低でも100回はこなす必要があります」
「帰ってください」
「いつでも家に来ていいって言ったのに……おにーさん、酷いです。悪魔です」
「ふみは将来悪女になって男を手玉にとりそうだな。今から怖いよ」
「だいじょぶです。大きくなっても、おにーさんだけを騙します。私を独り占めできて、おにーさんにっこり」
「光栄すぎて涙が出そうだ」
「そんなことより、豆まき再開です。ほら、おにーさん。鬼は外です」
再び豆が俺の手に乗せられた。それと一緒に、ふみが俺の手を両手でにぎにぎする。
「あ、いま鬼がおにーさんの中に入りました。節分ということで、外には鬼が溢れているようです」
「だから、嘘でもなんか怖いからそういうこと言わないで!」
「……えへへ。おにーさん」
「ん?」
「おかしな豆まきですね?」
「おまいが始めたんだろーが……」
「こんな豆まき、変です。……でも、なんだか、楽しいです」
「……そか。楽しいのが一番だな」
「あとはおにーさんが鬼に完全に侵食されたら完璧です」
「節分って鬼を追い出す行事じゃなかったっけ?」
「私とおにーさんの節分だと、こんな感じになっちゃうのです。ご愁傷様です、おにーさん」
「しょうがない。俺に鬼が入る代わりに、ふみに福を入れて中和してもらおう。つーわけで、福は内」
ふみと手を繋いだまま、福は内。
「じゃあ、中和してあげますので中和料として一億円ください」
「酷いマッチポンプを見た」
「ご愁傷様です、おにーさん」
そんな感じで、本来の節分とは程遠い豆まき握手合戦を行う俺達だった。
そんなわけで節分なのだが、高校生ともなるとそういった行事にも疎くなり、結果俺の家の前で待ち構えていた知り合いの中学生、ふみの襲撃に遭う羽目になる。
「鬼は外。鬼は外」
呪文のように繰り返しながら、ふみは俺の鼻に豆を一粒ずつ詰めた。
「やめてください。すごく迷惑です」
「福は内、福は内」
「文言の問題ではなくて!」
あまりに詰められると取れなくなるので、ふみの頭に手を置いて攻撃を防ぎつつ、空いてる手で鼻をふんってする。ぱひゃーっと豆が飛んでいった。
「道端に捨てるなんて、おにーさん極悪です。後でおにーさんが美味しくいただいてください」
「俺はTVスタッフではないので美味しく食べない」
「やっぱりおにーさんは極悪です」
「いきなり人の鼻に豆を詰める奴は極悪ではないのか?」
「おにーさん、今日は節分です」
都合の悪い話を完全無視し、ふみは話を改めた。
「ああ、そうみたいだな。豆の攻撃力をひしひしと感じたところだ」
「どうせおにーさんのことです、節分にかこつけ中学生の豆をいただきだぜーとか言いながら私の家に押しかけ、私の豆をいただくつもりだったろうから、私から来てあげました」
とても人聞きの悪い台詞を玄関先で吐かれたので、ふみを小脇に抱え、ものすごく急いで家の中に入り、そのままの勢いで自室へゴー。
「はぁはぁ……あのなあ! 世の中には近所づきあいってのがありまして! ていうかさっき隣の爺さんが庭で盆栽いじりしてまして!」
「ここで私の豆を?」
しつこいので、ふみのどたみにチョップの刑。
「むぅ。痛いです、おにーさん」
「当然の罰だ」
「まあ冗談は置いといて、おにーさん。豆をまきたいです」
「どうぞ自宅で行ってください」
「……一人でしてもつまんないです」
「あ……」
そうだった。こいつの両親は帰ってくるのがいつも夜遅いので、いつも一人で過ごしてるんだった。
「あ、あのな、ふみ。折角だから俺と一緒に豆まきしよっか?」
「嫌です」
「…………」
人が折角歩み寄ってやったというのに、何この天邪鬼。
「土下座するなら考えてやらないでもないです」
「えい」
とりあえず両手でほっぺを引っ張る。……ええい、引っ張られても無表情とはどういうことだ!
「がっきゅううんこ」
「女の子が言う台詞じゃありません!!!」
最終兵器を持ち出されたため、ほっぺ引っ張りを中止。くそぅ。
「学級文庫の何が問題なんですが、おにーさん?」
「ええい、分かってて言ってやがるな」
「ふふん。おにーさん如きが私に歯向かうなんて10年早いです」
「はぁ……なんか疲れた。ちょっと休む」
「根性なしです、おにーさん」
ベッドに腰掛けると、俺のすぐ隣にふみも座ってきた。
「あの、ふみさんや。少し近くないですかね?」
「至近距離から確実におにーさんを仕留めるためです。致し方ないのです」
「あれ、殺されるの?」
「最近の豆の殺傷能力を侮ってはいけません。おにーさん如き低能力者、豆の一つでダウンです」
「それもう食料の範疇を超えてるよね。ていうか低能力者言うな」
「……しかし、おにーさんが帰ってくるのが遅かったため、待ちぼうけの私は暇つぶしに豆をぽりぽり食べており、結果おにーさんの鼻に詰める分しか確保できませんでした」
「鼻に詰めず撒けばよかったのに。ていうか、別に家の前で待たなくても俺の家に入ってりゃいいのに。いつでも来ていいんだぞ?」
ふみの頭をうにうにとなでる。
「なでないでください。子供じゃないです」
やや不機嫌そうにふみは俺を睨んだ。
「中学生は子供だろ?」
「……分かりました。私はまだ子供なので、次から勝手におにーさんの部屋に入り、子供らしく部屋を探検したいと思います」
ふみをなでていた手が止まる。妙な汗が出てきた。
「い、いや、あの、前言撤回というか、その、居間で待つと言うのも手だと思うぞ? 母さんがおやつ出してくれるだろうし」
母さんは専業主婦で、かつ可愛いもの好きなので、ふみを大歓迎している。だからと言って可愛くないからと俺を虐待するのは勘弁してください。
「じゃあ、おやつを食べてからおにーさんの部屋を探検します。子供なので好奇心旺盛なんです」
「……すいません俺が悪かったです。ふみは大人ですので探検しないでください」
俺の負け。首を折ってふみに敗北を伝える。
「最初からそう言えばいいんです。これだからおにーさんは馬鹿なんです」
「はいはい、すいませんでした」
謝りながらふみの頭をなでる。俺の謝罪に気を良くしたのか、ふみはばふーと鼻息を漏らした。
「それにしても、どうしましょうか、節分」
「もう全然豆残ってないのか?」
「ええと……あ、一個だけ残ってました」
ふみがポケットを探ると、一粒だけ転がり出てきた。
「一個かぁ……それじゃ撒いても仕方ないなあ」
「……あ、ないすあいであ。まず、おにーさんにこの豆を渡します。鬼は外」
ぺそっと豆を手渡された。そのついでだか知らないが、握手もされた。
「この握手は?」
「節分により外へ追いやられた鬼たちをおにーさんの手に封じてます」
「今すぐ手を離して! 嘘でも今日という日にやられたらなんか本当に入ってきそう!」
「これで鬼の手が完成です。おにーさんの中二病も満足で、おにーさんにっこり」
「勘弁してください!」
「おにーさんは、そんなに、私と手を繋ぎたくないんですか……?」(うるうる)
「一生繋いでいたいです!」
今日も俺は女性の涙に弱い模様。
「やめてください。迷惑です」
「…………」
「憮然とした顔のおにーさん、素敵です」
とても不愉快です。思った通り嘘泣きだったし。
「はぁ……んで、この豆はどうしたらいいんだ?」
「次に、おにーさんが福は内と言いながら私に豆を渡すんです」
「……福は内?」
豆を返す。一体これのどこがないすあいであと言うのだ。
「このやり取り一回で、鬼は外、福は内というやりとりが完成です。豆の量は、回数でカバーです」
「一応聞いておくが、何回やればいいんだ?」
「最低でも100回はこなす必要があります」
「帰ってください」
「いつでも家に来ていいって言ったのに……おにーさん、酷いです。悪魔です」
「ふみは将来悪女になって男を手玉にとりそうだな。今から怖いよ」
「だいじょぶです。大きくなっても、おにーさんだけを騙します。私を独り占めできて、おにーさんにっこり」
「光栄すぎて涙が出そうだ」
「そんなことより、豆まき再開です。ほら、おにーさん。鬼は外です」
再び豆が俺の手に乗せられた。それと一緒に、ふみが俺の手を両手でにぎにぎする。
「あ、いま鬼がおにーさんの中に入りました。節分ということで、外には鬼が溢れているようです」
「だから、嘘でもなんか怖いからそういうこと言わないで!」
「……えへへ。おにーさん」
「ん?」
「おかしな豆まきですね?」
「おまいが始めたんだろーが……」
「こんな豆まき、変です。……でも、なんだか、楽しいです」
「……そか。楽しいのが一番だな」
「あとはおにーさんが鬼に完全に侵食されたら完璧です」
「節分って鬼を追い出す行事じゃなかったっけ?」
「私とおにーさんの節分だと、こんな感じになっちゃうのです。ご愁傷様です、おにーさん」
「しょうがない。俺に鬼が入る代わりに、ふみに福を入れて中和してもらおう。つーわけで、福は内」
ふみと手を繋いだまま、福は内。
「じゃあ、中和してあげますので中和料として一億円ください」
「酷いマッチポンプを見た」
「ご愁傷様です、おにーさん」
そんな感じで、本来の節分とは程遠い豆まき握手合戦を行う俺達だった。
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ふみさんがヤンデレだと思うのは俺だけかな