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2024年11月23日
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【ひよこちなみん】
2010年05月12日
目覚めると、人が入れる位どでかい卵が部屋の隅に鎮座してた。
超嫌な予感がしたので、そっと制服に着替え部屋を出ようとしたら、卵にひびが入った。ひびは徐々に大きくなり、殻が割れた。
嫌な予感ほどよく当たるもので。出てきたのはヒヨコの格好をし、殻を頭に載せたちなみだった。
「……ひよこです。ぴよぴよ」
「カリメロか」
「……よく分かりません。……タカシさんは、インプリティングというものをご存知ですか?」
「いんぷ……ああ、あれな、あれ。肉まんと将棋を一緒に煮て三日三晩寝かせたものがこちらです」
ポケットの中にある紙くずをそっとちなみに渡す。
「全然違います。当てずっぽうするにも、もう少し頑張ってください」
なんか怒られた。紙くずも捨てられた。
「……インプリティング、刷り込みです。ひよこは、最初に見たものを親と認識します」
「ははぁ」
汗が背中を伝う。もう、分かった。
「……というわけで、インプリティング成立です」
ちなみは卵から出て、俺の手をぎゅっと握った。
「……よろしくお願いしますね、ぱぱ」
気がつけば子持ちに。童貞なのに。
そういうわけで、学校へ行くのにひよこがついてくる羽目に。
「……なんか、めちゃめちゃ見られてるんだが」
「微笑ましい光景に、みんなの視線は釘付けですね、ぱぱ」
まぁ、本当のひよこなら微笑ましくもあるだろうが、生憎俺について来てるのは人間大のひよこなので。
「ぴよぴよ、ぴよ♪」
「…………」
校門をくぐっても、ひよこは楽しげについてくる。通行人のいぶかしげな視線にも慣れてしまった。
「ぴよぴよ音頭でぴっぴっぴっ♪」
やめてぴよぴよ音頭やめて。踊りながらついてこないで。道行く人に指差されてる。
「おはよう、タカシ。……その、後ろにいるちなみは」
教室に入り自分の席で絶望に浸っていると、みことがやってきた。
「……いつものアレだ」
「う、うむ、そうか」
俺の様子になにかを察したのか、みことは申し訳なさそうに自分の席に戻っていった。
「よいしょ、と」
ちなみは当然のように俺の膝の上に座った。
「……そこはちなみの席ではないと思ったが」
「今日からここが席です。やったね、ぱぱ♪」
やってない。あと、学校でまでぱぱとか言うな。ほら、なんか憤怒の表情でかなみがやってきたじゃん。
「どういうことよっ!」
「……怖いです、ぱぱ」
「ぱぱって何よ、ぱぱって!」
「父親のことだ。そんなことも知らないのか? 馬鹿だなぁ、かなみは」
無言で首を絞めるのはやめて頂きたい。
「ええと、簡単に説明します。朝起きると部屋に卵があって、インプリティングの末このざまです」
俺の胸に頭をこすり付けるちなみをあごで指し、軽く嘆息する。
「なんでやめさせないのよ」
「インプリティングしちまったからな」
「……そう、分かった」
そう言って、かなみは席に戻った。いやにあっさり食い下がったことに軽い引っ掛かりを覚えたが、それより今は顔を真っ赤にしてる教師をどうにかするのが先だな。
翌日。目覚めると、人が入れる位どでかい卵が部屋の隅に鎮座してた。二つ。……二つ?
「……ひよこです。ぴよぴよ」
「ひ、ひよこよ。ぴよぴよ」
昨日に引き続きちなみがぴよぴよと、そして新顔のかなみがぴよぴよと。
「……わはははは」
朝日が差し込む部屋に、俺の乾いた笑い声がいつまでも響いていた。
超嫌な予感がしたので、そっと制服に着替え部屋を出ようとしたら、卵にひびが入った。ひびは徐々に大きくなり、殻が割れた。
嫌な予感ほどよく当たるもので。出てきたのはヒヨコの格好をし、殻を頭に載せたちなみだった。
「……ひよこです。ぴよぴよ」
「カリメロか」
「……よく分かりません。……タカシさんは、インプリティングというものをご存知ですか?」
「いんぷ……ああ、あれな、あれ。肉まんと将棋を一緒に煮て三日三晩寝かせたものがこちらです」
ポケットの中にある紙くずをそっとちなみに渡す。
「全然違います。当てずっぽうするにも、もう少し頑張ってください」
なんか怒られた。紙くずも捨てられた。
「……インプリティング、刷り込みです。ひよこは、最初に見たものを親と認識します」
「ははぁ」
汗が背中を伝う。もう、分かった。
「……というわけで、インプリティング成立です」
ちなみは卵から出て、俺の手をぎゅっと握った。
「……よろしくお願いしますね、ぱぱ」
気がつけば子持ちに。童貞なのに。
そういうわけで、学校へ行くのにひよこがついてくる羽目に。
「……なんか、めちゃめちゃ見られてるんだが」
「微笑ましい光景に、みんなの視線は釘付けですね、ぱぱ」
まぁ、本当のひよこなら微笑ましくもあるだろうが、生憎俺について来てるのは人間大のひよこなので。
「ぴよぴよ、ぴよ♪」
「…………」
校門をくぐっても、ひよこは楽しげについてくる。通行人のいぶかしげな視線にも慣れてしまった。
「ぴよぴよ音頭でぴっぴっぴっ♪」
やめてぴよぴよ音頭やめて。踊りながらついてこないで。道行く人に指差されてる。
「おはよう、タカシ。……その、後ろにいるちなみは」
教室に入り自分の席で絶望に浸っていると、みことがやってきた。
「……いつものアレだ」
「う、うむ、そうか」
俺の様子になにかを察したのか、みことは申し訳なさそうに自分の席に戻っていった。
「よいしょ、と」
ちなみは当然のように俺の膝の上に座った。
「……そこはちなみの席ではないと思ったが」
「今日からここが席です。やったね、ぱぱ♪」
やってない。あと、学校でまでぱぱとか言うな。ほら、なんか憤怒の表情でかなみがやってきたじゃん。
「どういうことよっ!」
「……怖いです、ぱぱ」
「ぱぱって何よ、ぱぱって!」
「父親のことだ。そんなことも知らないのか? 馬鹿だなぁ、かなみは」
無言で首を絞めるのはやめて頂きたい。
「ええと、簡単に説明します。朝起きると部屋に卵があって、インプリティングの末このざまです」
俺の胸に頭をこすり付けるちなみをあごで指し、軽く嘆息する。
「なんでやめさせないのよ」
「インプリティングしちまったからな」
「……そう、分かった」
そう言って、かなみは席に戻った。いやにあっさり食い下がったことに軽い引っ掛かりを覚えたが、それより今は顔を真っ赤にしてる教師をどうにかするのが先だな。
翌日。目覚めると、人が入れる位どでかい卵が部屋の隅に鎮座してた。二つ。……二つ?
「……ひよこです。ぴよぴよ」
「ひ、ひよこよ。ぴよぴよ」
昨日に引き続きちなみがぴよぴよと、そして新顔のかなみがぴよぴよと。
「……わはははは」
朝日が差し込む部屋に、俺の乾いた笑い声がいつまでも響いていた。
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