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2024年11月24日
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【バレンタインなのにイス扱いしてくるツンデレ】
2012年02月18日
今日はバレンタインということで、ちょっとは期待していたのだけど、何やら俺の予想と違う。
「あのー。かなみさん? 一体これはどういうことなのでしょうか」
「うるさい。イスのくせに話しかけるな、ばか」
かなみと一緒に帰ったんだけどね。俺の家まで来て、なんか知らないけど、俺の膝の上にちょこんと座ってるの。今現在も。
「時に四つ足にトランスフォーム~コンボイの謎~するので誤解されるのも仕方が無いと思いますが、実は人間なんですよ?」
「そのくらい知ってるわよ! イス扱いしてるってだけよ! アンタはあたし専用のイスなんだから、黙ってあたしに座られてたらいいのよ!」
「いやそりゃ無茶な話でゴンスよ。俺の膝が大変ですよ? 主に感触的な意味で」
「変態!」
「ありがとうございます!」(満面の笑み)
「うー……ホンモノめ。死んじゃえ、ばか」
などと悪態をつきながらも、決して俺から離れようとしない。どうすればいいの。(ナディアのED風)
「…………」
脳内で突如繰り広げられたナディアコンサートに出席してたら、かなみが自分の肩越しにこちらをじーっとみていることに気づいた。何やら不満気な様子だ。
「むー……」
口でも不満を表現している。これはかなりの不満度に違いない。ただ、いったい何が不満なのか、その一点だけが分からないのだけれど。
「……よし。こうなったら運否天賦だ、俺の選択はこれだッ!」
「ひゃっ!?」
かなみの頭に手をのせ、なでなで開始。俺にはこれくらいしか。
「いかがですか、姫?」
「……ご、50点。もっと頑張りなさいよ、ばか」
「分かった、火が出るまで頑張る」
「なでる速度を頑張れって言ってるんじゃないわよ!」
「そう言われても」
しかし、50点という低評価の割には、かなみの顔はご機嫌っぽいのだが。ふぅむ。
「まったく……今日もバカね、アンタは」
「そんなことはないと思うのだけど」
「何言ってるのよ。馬鹿よ馬鹿、それも大馬鹿」
「あまり馬鹿馬鹿言うない」
「せ、折角このかなみちゃんが哀れなアンタにチョコをあげるチャンスをやろうってのに、それをふいにしようって言うんだもの。馬鹿以外の何者でもないわよ」
「ほう。……む? いま素敵な言葉を聞きましたが!!!」
「ん、あ、ああ。チョコ? ぐーぜん持っててね。自分で食べてもいいんだけど、ほ、ほら、なんか今日バレンタインらしいし。そ、その、……あ、アンタ欲しいでしょ?」
「そりゃ当然!」
「そ、そだよね。……よかった、用意しといて」(ぼそり)
「用意していたのであれば、偶然持っていたという発言はおかしいのではないでしょうか」
「思わず言っちゃった言葉を聞き逃す努力くらいしなさいッ!」
なんか超怒られた。
「うー……と、とにかく。このチョコが欲しいのなら、あたしをもてなすことね」
「つまり、そのチョコが欲しいのなら、かなみをもてなすのだな?」
「そ、そうだけど……なんで繰り返したの?」
「よし。そのチョコが欲しいので、かなみをもてなしてやる!」
「また繰り返した! なんで!?」
「さて、そのチョコが欲しいでのかなみをもてなしたいが、何をしたらかなみは喜ぶのだろう」
「なんかもう言うこと自体が楽しくなっちゃってるみたいだし……。あのね、あたしは抱っ……」
ぴたりとかなみの動きが止まった。
「だ? 脱穀?」
「そ、そう! 脱穀! 脱穀が大好きなの!」
何やら真っ赤になりながら、かなみはあわあわと慌てて言った。
「なるほど。脱穀マニアなのか。変な奴」
「そ、そうなの! あたし変な奴なの! えへへ、えへえへ!」
「だが、生憎とここには稲穂などないので、抱っこで手を打ってはどうだろうか」
「ぅあーっ! もーっ! やっぱ気づいてるしい! アンタなんて大っ嫌い!!!」
「いやははは。つーわけで、むぎゅー……と、したいのですが、その。いい?」
「へ、へっ!?」
「だから、抱っこ。その、していい?」
「……………………い、いい」
かなりの時間逡巡したようだが、許可は出してもらった。まあ、視線は明後日の方向に向いたままだったが。
「べっ、別に抱っこが好きとかアンタだから許したとか勘違いしないでよねっ!?」
「じゃあどう考えればいいのだ」
「…………。い、いーから早く抱っこしろっ!」
「はいはい」(むぎゅっ)
「むきゅっ。こ、こら! もーちょっと緩く抱っこしなさい!」
「頭のネジを?」
「それ以上緩くするとネジが取れちゃうわよ?」
「随分自虐的だなあ」
「あたしじゃなくてアンタの頭のネジよッ!」
「ロボットじゃあるまいし、頭にネジなんてないぞ。頭大丈夫か?」
「うがー!」
からかったら暴れだしたので、背中をぽんぽん叩いて落ち着かせる。
「うぅー……やっぱアンタなんて嫌いよ」
「なんと。そして今気づいたが、この態勢は大丈夫か?」
「へ? ……へ、へぇっ!?」
最初は俺に背を預けた態勢で座っていたはずなのだが、先程暴れたせいで姿勢がくるりと180度回転、向き合った状態で抱き合ったモノがこちらになります。む、どういうわけか料理番組風味に。
「……だ、だいじょーぶだ、問題ない」
「ならその全力で顔が赤いのをどうにかしろ」
「だいじょーぶだ、問題ないの!」
「頑ななイーノックめ。しかし、この態勢で抱っことなると、その」
「い、いーじゃん。抱っこしやすいだろーし。……こ、こゆこともできるし」
「う」
鼻と鼻をチョンと合わされた。こんなことされると、とても嬉しいので何も抵抗できなくなります。
「…………」
そしてやった本人の方が恥ずかしがってるのはどういうことだ。
「あー……うん。とりあえず、抱っこな、抱っこ」
「う、うん」
軽く抱っこしてかなみの後頭部をぽんぽん。この態勢ならばお互いに顔を見ないですむので、恥ずかしさは軽減されるハズだ。
「……その、頭ぽんぽんっての、ネットで見たの?」
「ん? あー、なんか女性に気に入られるらしいな」
「※だけどね」
「しまった、俺に扱える代物ではなかったか! 人類には過ぎた代物だったんだ!」
「……まー、でも、その。……あたしは、そんな嫌じゃないよ? アンタにぽんぽんされるの」
「そうなのか? 実を言うと無意識にしていたのでどうしよう状態だったので、結果として助かった」
「……天然?」
「いや、俺は常に意図的にボケてるぞ。そして今回は特にボケていないのだけれど」
「うー……注意しとかないとね」
「何が」
「いーの。アンタって、そーゆーことは察しが悪いよね」
「まったく何の話か分からないのだけれども」
「だから、いーんだってば。あんまりしつこいと嫌いになっちゃうぞ」
「む。じゃあ今は好きなのか」
「すっ……なっ、なわけないじゃん! ばーかばーかばーか!」
べりりと俺を引き剥がすと、かなみは顔を赤くしながら馬鹿馬鹿と連呼した。
「冗談に決まっとろーが」(むぎゅっ)
「むきゅっ。……ふん、知ってるわよ。ばか」
「なるほど。ところで、そろそろチョコをもらえないでしょうか」
「……ヤだ」
「えっ」
「ヤだ! こんなもてなしじゃ全然足りない! もっといっぱい抱っこしたりなでなでしたりちゅーしたりしなさいよっ!」
再びべりりと俺を引き剥がし、かなみは何やら妙なことを言い出した。
「えっ」
「あっ、ちっ、違うっ! ちゅーはナシ、ちゅーはまだ!」
「えっ」
「だ、だからあ! ……も、もー! ナシ! 今のナシ! 全部ナシなの!」
「言葉は放たれる矢の如く。こぼれたミルクは戻らないですよ?」
「う……うっさい! ミルクがこぼれたなら舐めとればいいじゃないの!」
「ほう。面白い、そういう無茶は嫌いじゃない。じゃあ今から私が舐めとりますので、おっぱいから母乳を出してください」
「出ないわよッ! 屏風から虎を出せみたいに言うなッ!」
「坊主が屏風に上手にニャルラトホテプの絵を描いた」
「あたしの知ってる早口言葉と違うっ! 坊主が人外のもの描いてる!」
「想像すると、なかなかにシュールな光景ですね。そんな坊主に葬式あげられた日には、成仏できそうにないですね」
「成仏どころか、魂を何か変なものに捧げられそうよ……」
「閑話休題、やはりちゅーをしないとチョコはもらえないのでしょうか?」
「今の話題引っ張ってなかったことにしたかったのに! したかったのに! 今日もアンタはヤなやつ!!!」
「いやははは」
全力で頬をつねられた。痛え。
「これ以上ちゅーのことを言ったら殺すからねっ!?」
「了解、とても怖いので言いません。じゃあ、その。抱っこの続きをしてもよろしいか?」
「……よ、よろしい。じゃあ、はい」
かなみは両手を前に出し、抱っこのポーズをした。
「うーん可愛い。写真撮っていい?」
「だ、ダメに決まってるでしょ!」
「ネットにあげる時は目線入れるから」
「絶対ダメ!!!」
真顔だ。説得ロールに失敗した。
「うー……アンタと一緒だと、ムードも何もあったもんじゃないわね……」
「ギクシャクするの苦手なんですよ。つーわけで、ぎゅー」(むぎゅっ)
「ふきゅっ。……たまには、甘い囁きとかあってもいーかなーって思うけどなー」
「ふむ。……お前の鉄拳で、何度血反吐を吐いたか分からないゼ……」
「甘くない! ちっとも甘くない!」
「奇遇だな。俺も甘いどころか、口の中に鉄の味が蘇りました」
「もっと色々あるでしょ? ……や、優しいトコロが素敵だとか」
「いいえ」(即答)
「…………」
「いてててっ! 無言で耳を引っ張るな!」
「うるさいっ! アンタなんか嫌い嫌いっ! ばかっ!」
「むう。でも、俺以外には優しいよな。というか、俺にだけ厳しいというか」
「そ、それは……」
「?」
「あっ、アンタが馬鹿だからしょーがないの! あたしは悪くないの!」
「酷い話だ」(なでなで)
「うっ……理不尽なこと言われてるのに、優しく頭なんかなでるな、ばか」
「うーん。なんかね。言ってるお前の方が辛そうな気がしてね」
「……気のせいだもん。そゆとこ、嫌い。大嫌い」
「いやはや」
「……嫌いだから、ずっとアンタに嫌がらせしてやる。これから先ずっと」
「え」
「そ、その最初の嫌がらせが、……んしょ、これ」
かなみは近くに落ちてた自分のバッグを漁り、中から小奇麗な箱を取り出した。そしてそれを俺に渡してきた。
「えーっと。これは、その、チョコ?」
「中身は毒。相手はしぬ」
「嫌がらせの範疇を超えてますね」
「食べて」
「はい」
パワーオブパワーで包装を破り、蓋を開ける。中に入ってるチョコが明らかにハート型で顔がほてりんぐ。
「し、心臓を模したからハート型なの。……手作りでハート型だからって、本命と勘違いしないでよね。義理なんだからね」
「そこまで手間暇かけたなら、もう本命でいいだろ」
「愛情じゃなくて毒を入れてるから義理なの!」
「義理チョコならぬ義理毒物か。義理で死ぬのは嫌だなあ。モチロン本命毒物でも嫌なものは嫌だが」
「いーから早く食べろ!」
「へーへー」
そんなわけで、一口かじる。
「ど、どう? おいしい?」
「もぐもぐ……うん、甘くておいしい」
「ほっ。……ほっとか言ってない!」
「もうちょっと言い訳頑張れ」
「う、うるさいの! ……それで、どう? しぬ?」
「たぶんだけど、毒は入ってないから死なない」
「は、入ってるもん。砂糖も食べ過ぎたら毒だもん。……偶然、レシピ通りの量しかなかったからだいじょぶだけど」
「それ普通のチョコだよね」
「そ、そんなのより、どだった? おいしかった? おいしいから好きになった?」
「なんか最後おかしい」
「いーから! どーなのよ!」
「おいしいと好きになるなら、俺は全国のコックさんへ告白行脚に出かけなければならないので、おいしかったが特に感情の変化はないようだ」
「バレンタインのチョコレートに限るから大丈夫なの!」
「しかし、仮に俺がお前を好きになったとして、お前は俺が嫌いなんだよな?」
「えっ? う、うん。……いちおー」
「じゃあ、失恋しか道はないのか。それは嫌だなあ」
「もー! いーから素直に好きだって言え! そしたら断ってやるから!」
「あんまりだ」
「うるさいうるさいうるさいっ! アンタみたいなのは、あたしに100回くらい告白して初めてOKもらえるんだからねっ!」
「ほう。言い換えると、100回告白したら付き合えるということなのだな?」
「えっ? ……ま、まあ、そうなる……かな?」
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」
「早い早い早い! そして怖い! なんで無表情で連呼してるのよっ!?」
「こうも続けて言うと作業感でいっぱいだが、しょうがないよね」
「しょうがなくないっ! もっと一回一回心を込めて言いなさいよっ!」
「早く100回言ってつるぺたおっぱいを舐めたいなあ。さて、好き好き好きっ好き一休さ」
「そんな心は込めるなッ! あと最後一休さんの歌になってた!」
「ままならないなあ。ところで何回言ったかな?」
「こんなのノーカンよ、ノーカン! 一回一回心を込めなきゃカウントには入れないに決まってるじゃない!」
「超めんどくせえ」
「アンタ本当にあたしと付き合う気あるの!?」
「めんどくさいから、今まで通りかなみの頭なでたり膝に座られたり抱っこしたりの関係でいいや」
「…………。……な、なんか客観的に聞くともう既に付き合ってるみたいじゃない。全然付き合ってなんてないけど!」
「ふむ。じゃあ今後はそういうの全部やめようか」
「今日もヤな奴でいじわるで最悪!」(がじがじ)
「噛まないで」
「じゃあそういういじわるなこと言うな、ばかっ! がうがうっ!」
「あら可愛い。これはなでるしかない」(なでなで)
「お、怒ってる最中なのになでるな、ばかっ」
「困った顔もたまりませんね」(なでなで)
「う、うー……」
「……ハァハァ」
「こっそり興奮してるっ! やっぱ変態だコイツ!」
「しまった、ばれてた。しょうがない、堂々と興奮しよう。ハァハァ、ハァハァ!」
「怖いわよっ!」
「ままならないなあ」(なんとなくほっぺふにふに)
「全力でこっちの台詞よっ!」
自分のほっぺをふにふにされながらも、俺の頬をぐにーっと引っ張るかなみだった。
「あのー。かなみさん? 一体これはどういうことなのでしょうか」
「うるさい。イスのくせに話しかけるな、ばか」
かなみと一緒に帰ったんだけどね。俺の家まで来て、なんか知らないけど、俺の膝の上にちょこんと座ってるの。今現在も。
「時に四つ足にトランスフォーム~コンボイの謎~するので誤解されるのも仕方が無いと思いますが、実は人間なんですよ?」
「そのくらい知ってるわよ! イス扱いしてるってだけよ! アンタはあたし専用のイスなんだから、黙ってあたしに座られてたらいいのよ!」
「いやそりゃ無茶な話でゴンスよ。俺の膝が大変ですよ? 主に感触的な意味で」
「変態!」
「ありがとうございます!」(満面の笑み)
「うー……ホンモノめ。死んじゃえ、ばか」
などと悪態をつきながらも、決して俺から離れようとしない。どうすればいいの。(ナディアのED風)
「…………」
脳内で突如繰り広げられたナディアコンサートに出席してたら、かなみが自分の肩越しにこちらをじーっとみていることに気づいた。何やら不満気な様子だ。
「むー……」
口でも不満を表現している。これはかなりの不満度に違いない。ただ、いったい何が不満なのか、その一点だけが分からないのだけれど。
「……よし。こうなったら運否天賦だ、俺の選択はこれだッ!」
「ひゃっ!?」
かなみの頭に手をのせ、なでなで開始。俺にはこれくらいしか。
「いかがですか、姫?」
「……ご、50点。もっと頑張りなさいよ、ばか」
「分かった、火が出るまで頑張る」
「なでる速度を頑張れって言ってるんじゃないわよ!」
「そう言われても」
しかし、50点という低評価の割には、かなみの顔はご機嫌っぽいのだが。ふぅむ。
「まったく……今日もバカね、アンタは」
「そんなことはないと思うのだけど」
「何言ってるのよ。馬鹿よ馬鹿、それも大馬鹿」
「あまり馬鹿馬鹿言うない」
「せ、折角このかなみちゃんが哀れなアンタにチョコをあげるチャンスをやろうってのに、それをふいにしようって言うんだもの。馬鹿以外の何者でもないわよ」
「ほう。……む? いま素敵な言葉を聞きましたが!!!」
「ん、あ、ああ。チョコ? ぐーぜん持っててね。自分で食べてもいいんだけど、ほ、ほら、なんか今日バレンタインらしいし。そ、その、……あ、アンタ欲しいでしょ?」
「そりゃ当然!」
「そ、そだよね。……よかった、用意しといて」(ぼそり)
「用意していたのであれば、偶然持っていたという発言はおかしいのではないでしょうか」
「思わず言っちゃった言葉を聞き逃す努力くらいしなさいッ!」
なんか超怒られた。
「うー……と、とにかく。このチョコが欲しいのなら、あたしをもてなすことね」
「つまり、そのチョコが欲しいのなら、かなみをもてなすのだな?」
「そ、そうだけど……なんで繰り返したの?」
「よし。そのチョコが欲しいので、かなみをもてなしてやる!」
「また繰り返した! なんで!?」
「さて、そのチョコが欲しいでのかなみをもてなしたいが、何をしたらかなみは喜ぶのだろう」
「なんかもう言うこと自体が楽しくなっちゃってるみたいだし……。あのね、あたしは抱っ……」
ぴたりとかなみの動きが止まった。
「だ? 脱穀?」
「そ、そう! 脱穀! 脱穀が大好きなの!」
何やら真っ赤になりながら、かなみはあわあわと慌てて言った。
「なるほど。脱穀マニアなのか。変な奴」
「そ、そうなの! あたし変な奴なの! えへへ、えへえへ!」
「だが、生憎とここには稲穂などないので、抱っこで手を打ってはどうだろうか」
「ぅあーっ! もーっ! やっぱ気づいてるしい! アンタなんて大っ嫌い!!!」
「いやははは。つーわけで、むぎゅー……と、したいのですが、その。いい?」
「へ、へっ!?」
「だから、抱っこ。その、していい?」
「……………………い、いい」
かなりの時間逡巡したようだが、許可は出してもらった。まあ、視線は明後日の方向に向いたままだったが。
「べっ、別に抱っこが好きとかアンタだから許したとか勘違いしないでよねっ!?」
「じゃあどう考えればいいのだ」
「…………。い、いーから早く抱っこしろっ!」
「はいはい」(むぎゅっ)
「むきゅっ。こ、こら! もーちょっと緩く抱っこしなさい!」
「頭のネジを?」
「それ以上緩くするとネジが取れちゃうわよ?」
「随分自虐的だなあ」
「あたしじゃなくてアンタの頭のネジよッ!」
「ロボットじゃあるまいし、頭にネジなんてないぞ。頭大丈夫か?」
「うがー!」
からかったら暴れだしたので、背中をぽんぽん叩いて落ち着かせる。
「うぅー……やっぱアンタなんて嫌いよ」
「なんと。そして今気づいたが、この態勢は大丈夫か?」
「へ? ……へ、へぇっ!?」
最初は俺に背を預けた態勢で座っていたはずなのだが、先程暴れたせいで姿勢がくるりと180度回転、向き合った状態で抱き合ったモノがこちらになります。む、どういうわけか料理番組風味に。
「……だ、だいじょーぶだ、問題ない」
「ならその全力で顔が赤いのをどうにかしろ」
「だいじょーぶだ、問題ないの!」
「頑ななイーノックめ。しかし、この態勢で抱っことなると、その」
「い、いーじゃん。抱っこしやすいだろーし。……こ、こゆこともできるし」
「う」
鼻と鼻をチョンと合わされた。こんなことされると、とても嬉しいので何も抵抗できなくなります。
「…………」
そしてやった本人の方が恥ずかしがってるのはどういうことだ。
「あー……うん。とりあえず、抱っこな、抱っこ」
「う、うん」
軽く抱っこしてかなみの後頭部をぽんぽん。この態勢ならばお互いに顔を見ないですむので、恥ずかしさは軽減されるハズだ。
「……その、頭ぽんぽんっての、ネットで見たの?」
「ん? あー、なんか女性に気に入られるらしいな」
「※だけどね」
「しまった、俺に扱える代物ではなかったか! 人類には過ぎた代物だったんだ!」
「……まー、でも、その。……あたしは、そんな嫌じゃないよ? アンタにぽんぽんされるの」
「そうなのか? 実を言うと無意識にしていたのでどうしよう状態だったので、結果として助かった」
「……天然?」
「いや、俺は常に意図的にボケてるぞ。そして今回は特にボケていないのだけれど」
「うー……注意しとかないとね」
「何が」
「いーの。アンタって、そーゆーことは察しが悪いよね」
「まったく何の話か分からないのだけれども」
「だから、いーんだってば。あんまりしつこいと嫌いになっちゃうぞ」
「む。じゃあ今は好きなのか」
「すっ……なっ、なわけないじゃん! ばーかばーかばーか!」
べりりと俺を引き剥がすと、かなみは顔を赤くしながら馬鹿馬鹿と連呼した。
「冗談に決まっとろーが」(むぎゅっ)
「むきゅっ。……ふん、知ってるわよ。ばか」
「なるほど。ところで、そろそろチョコをもらえないでしょうか」
「……ヤだ」
「えっ」
「ヤだ! こんなもてなしじゃ全然足りない! もっといっぱい抱っこしたりなでなでしたりちゅーしたりしなさいよっ!」
再びべりりと俺を引き剥がし、かなみは何やら妙なことを言い出した。
「えっ」
「あっ、ちっ、違うっ! ちゅーはナシ、ちゅーはまだ!」
「えっ」
「だ、だからあ! ……も、もー! ナシ! 今のナシ! 全部ナシなの!」
「言葉は放たれる矢の如く。こぼれたミルクは戻らないですよ?」
「う……うっさい! ミルクがこぼれたなら舐めとればいいじゃないの!」
「ほう。面白い、そういう無茶は嫌いじゃない。じゃあ今から私が舐めとりますので、おっぱいから母乳を出してください」
「出ないわよッ! 屏風から虎を出せみたいに言うなッ!」
「坊主が屏風に上手にニャルラトホテプの絵を描いた」
「あたしの知ってる早口言葉と違うっ! 坊主が人外のもの描いてる!」
「想像すると、なかなかにシュールな光景ですね。そんな坊主に葬式あげられた日には、成仏できそうにないですね」
「成仏どころか、魂を何か変なものに捧げられそうよ……」
「閑話休題、やはりちゅーをしないとチョコはもらえないのでしょうか?」
「今の話題引っ張ってなかったことにしたかったのに! したかったのに! 今日もアンタはヤなやつ!!!」
「いやははは」
全力で頬をつねられた。痛え。
「これ以上ちゅーのことを言ったら殺すからねっ!?」
「了解、とても怖いので言いません。じゃあ、その。抱っこの続きをしてもよろしいか?」
「……よ、よろしい。じゃあ、はい」
かなみは両手を前に出し、抱っこのポーズをした。
「うーん可愛い。写真撮っていい?」
「だ、ダメに決まってるでしょ!」
「ネットにあげる時は目線入れるから」
「絶対ダメ!!!」
真顔だ。説得ロールに失敗した。
「うー……アンタと一緒だと、ムードも何もあったもんじゃないわね……」
「ギクシャクするの苦手なんですよ。つーわけで、ぎゅー」(むぎゅっ)
「ふきゅっ。……たまには、甘い囁きとかあってもいーかなーって思うけどなー」
「ふむ。……お前の鉄拳で、何度血反吐を吐いたか分からないゼ……」
「甘くない! ちっとも甘くない!」
「奇遇だな。俺も甘いどころか、口の中に鉄の味が蘇りました」
「もっと色々あるでしょ? ……や、優しいトコロが素敵だとか」
「いいえ」(即答)
「…………」
「いてててっ! 無言で耳を引っ張るな!」
「うるさいっ! アンタなんか嫌い嫌いっ! ばかっ!」
「むう。でも、俺以外には優しいよな。というか、俺にだけ厳しいというか」
「そ、それは……」
「?」
「あっ、アンタが馬鹿だからしょーがないの! あたしは悪くないの!」
「酷い話だ」(なでなで)
「うっ……理不尽なこと言われてるのに、優しく頭なんかなでるな、ばか」
「うーん。なんかね。言ってるお前の方が辛そうな気がしてね」
「……気のせいだもん。そゆとこ、嫌い。大嫌い」
「いやはや」
「……嫌いだから、ずっとアンタに嫌がらせしてやる。これから先ずっと」
「え」
「そ、その最初の嫌がらせが、……んしょ、これ」
かなみは近くに落ちてた自分のバッグを漁り、中から小奇麗な箱を取り出した。そしてそれを俺に渡してきた。
「えーっと。これは、その、チョコ?」
「中身は毒。相手はしぬ」
「嫌がらせの範疇を超えてますね」
「食べて」
「はい」
パワーオブパワーで包装を破り、蓋を開ける。中に入ってるチョコが明らかにハート型で顔がほてりんぐ。
「し、心臓を模したからハート型なの。……手作りでハート型だからって、本命と勘違いしないでよね。義理なんだからね」
「そこまで手間暇かけたなら、もう本命でいいだろ」
「愛情じゃなくて毒を入れてるから義理なの!」
「義理チョコならぬ義理毒物か。義理で死ぬのは嫌だなあ。モチロン本命毒物でも嫌なものは嫌だが」
「いーから早く食べろ!」
「へーへー」
そんなわけで、一口かじる。
「ど、どう? おいしい?」
「もぐもぐ……うん、甘くておいしい」
「ほっ。……ほっとか言ってない!」
「もうちょっと言い訳頑張れ」
「う、うるさいの! ……それで、どう? しぬ?」
「たぶんだけど、毒は入ってないから死なない」
「は、入ってるもん。砂糖も食べ過ぎたら毒だもん。……偶然、レシピ通りの量しかなかったからだいじょぶだけど」
「それ普通のチョコだよね」
「そ、そんなのより、どだった? おいしかった? おいしいから好きになった?」
「なんか最後おかしい」
「いーから! どーなのよ!」
「おいしいと好きになるなら、俺は全国のコックさんへ告白行脚に出かけなければならないので、おいしかったが特に感情の変化はないようだ」
「バレンタインのチョコレートに限るから大丈夫なの!」
「しかし、仮に俺がお前を好きになったとして、お前は俺が嫌いなんだよな?」
「えっ? う、うん。……いちおー」
「じゃあ、失恋しか道はないのか。それは嫌だなあ」
「もー! いーから素直に好きだって言え! そしたら断ってやるから!」
「あんまりだ」
「うるさいうるさいうるさいっ! アンタみたいなのは、あたしに100回くらい告白して初めてOKもらえるんだからねっ!」
「ほう。言い換えると、100回告白したら付き合えるということなのだな?」
「えっ? ……ま、まあ、そうなる……かな?」
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」
「早い早い早い! そして怖い! なんで無表情で連呼してるのよっ!?」
「こうも続けて言うと作業感でいっぱいだが、しょうがないよね」
「しょうがなくないっ! もっと一回一回心を込めて言いなさいよっ!」
「早く100回言ってつるぺたおっぱいを舐めたいなあ。さて、好き好き好きっ好き一休さ」
「そんな心は込めるなッ! あと最後一休さんの歌になってた!」
「ままならないなあ。ところで何回言ったかな?」
「こんなのノーカンよ、ノーカン! 一回一回心を込めなきゃカウントには入れないに決まってるじゃない!」
「超めんどくせえ」
「アンタ本当にあたしと付き合う気あるの!?」
「めんどくさいから、今まで通りかなみの頭なでたり膝に座られたり抱っこしたりの関係でいいや」
「…………。……な、なんか客観的に聞くともう既に付き合ってるみたいじゃない。全然付き合ってなんてないけど!」
「ふむ。じゃあ今後はそういうの全部やめようか」
「今日もヤな奴でいじわるで最悪!」(がじがじ)
「噛まないで」
「じゃあそういういじわるなこと言うな、ばかっ! がうがうっ!」
「あら可愛い。これはなでるしかない」(なでなで)
「お、怒ってる最中なのになでるな、ばかっ」
「困った顔もたまりませんね」(なでなで)
「う、うー……」
「……ハァハァ」
「こっそり興奮してるっ! やっぱ変態だコイツ!」
「しまった、ばれてた。しょうがない、堂々と興奮しよう。ハァハァ、ハァハァ!」
「怖いわよっ!」
「ままならないなあ」(なんとなくほっぺふにふに)
「全力でこっちの台詞よっ!」
自分のほっぺをふにふにされながらも、俺の頬をぐにーっと引っ張るかなみだった。
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やったー\(^0^)/かなみ、だぁ♪待ってましたー、可愛い♪♪キスまたできなかった残念です(^_^;)次には出来るといいなーってつぎはホワイトデー…楽しみにしてますっ
無題
ヤバい何このデレデレ可愛い