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2024年11月23日
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【ツンデレときつねうどん】

2010年02月13日
 たまには食堂で昼食を。適当な定食を買い、どこに座ろうかと席を探してると、うどんをすすっているいずみを見つけた。
「ずずーっ、ずっ、ずずーっ……ぷはぁ」
 顔を上げ、一息ついてるところで目が合った。
「なんでうどん食うだけで死にそうになってんだ?」
「死にそうになんてなってへん! おいしいなあ思いながら食べてるだけや!」
 丁度いずみの正面の席が空いてたので、そこに座る。
「勝手に座るしい……」
「ん、ここ誰か予約入ってたか? 問題あるなら他の所に行くが」
「別にええねんけど……食べてるとこタカちゃんに見られんの、恥ずかしいやん」
 後半に行くに従ってぼしょぼしょとした声になっていったので、非常に聞き取りにくい。
「俺といずみの仲だ、気にするな」
「聞こえへんように言ってるのに、なんで聞こえてんねん!」
 いずみは顔を真っ赤にして怒った。耳のよさだけが自慢です。
「もー……タカちゃんはデリカシーなさすぎや。そんなんやと、女の子にもてへんで?」
「大丈夫。昨日だけで3人に告白された」
「ななななななんやて!? 誰や、誰に告白されたんや!?」
 テーブルに身を乗り出し、いずみは俺の胸倉を掴んでがっくんがっくん揺らした。
「いやあのその冗談冗談だから揺するな」
「3人て、まさか、全員とつきあうつもりやないやろな! そんなんウチ許さへんで!」
 俺の言葉なんて聞こえてないのか、いずみはなおも俺を揺すり続けた。
「タカちゃんは綺麗で可愛くて優しい子と一対一でお付き合いせなアカンねん! そんな爛れた恋愛、ウチ許さへん!」
「いやあの待て揺するな酔う酔うゼうぇっっっっっぷ」
「ん……? あーっ、タカちゃん顔真っ青やないの! どないしたん?」
 お前のせいだばかやろう、とも言えずにぐったり。脳を激しくシェイクされて疲労困憊です。
「大丈夫? 保健室行く?」
 首を横に振り、そのまましばらく体力回復。
「ふー。回復。まさか冗談でこんなことになるとは思いもしなかった」
「え、冗談? ……えっと、人数が?」
「告白自体」
「…………。た、タカちゃんのあほ、あほー!」
 いずみは俺の胸をぽかぽか叩いた。
「お前も俺と付き合い長いんだから気づけ。俺が告白されるわけなかろーが」
「なんで自慢げやねん。……でも、そんなことないで? タカちゃん、優しいから女の子に人気あるもん」
「いずみのくせに世辞を言うとは生意気な」
「せ、世辞とかやなくて! もー、やめてーや」
 ぐりぐりと多少乱暴になでると、いずみは迷惑そうにしながらも少し嬉しそうに目を細めた。
「さて。なんだか分からないが無駄に時間を浪費した。次の授業まで時間もないし、とっとと食っちまおう」
「タカちゃんが冗談言わへんかったら済む話やのに……」
「お前は俺に死ねと言うのか」
「死ぬんや……」
 どこか驚いた様子で俺を見つめるいずみだった。その隙をつき、いずみのうどんから油揚げをかっさらう。
「あー! ウチのあげさん取った! 返せー!」
「返して欲しくば『お兄ちゃん大好き♪』って言いながら俺に微笑みかけろ」
 箸で油揚げを弄びながら、不敵で素敵な感じに微笑む。いずみは平均的な高校生から逸脱してる身長なので、妹っぽく振舞ってくれると嬉しい。俺が。
「だっ、誰が言うか! タカちゃんのあほー! 病気、病気ー!」
「違う、罵声を浴びせるのではない。まあそれも悪くないですが!」
「本格的にタカちゃんがあかん!」
 本格的にとか言うな。
「言わないと油揚げ食う」
「あかん! それ食ったらウチのきつねうどんがすうどんになるやないの! 一大事や!」
 そこまで大事とは思わないが、好都合。
「それが嫌ならとっとと言うことだな」
「……ど、どないしても?」
「どないしても」
「……わ、分かったわ。で、でもな、ウチの本心ちゃうで? ウチはあげさんを返して欲しいから言うだけやで?」
「わーったから早く言え」
「そ、そんな急かさんでもええやん」
 いずみは2、3度深呼吸し、鋭い目つきで俺を見た。
「……た、タカちゃん。大好きやで」
 精一杯、といった様子でいずみは一言ずつ区切って言った。
「…………」
「い、言うたで! 言うたから返して!」
「……あー、いや、まあ、言ったけど、その」
 どう言ったものか思案しながら、照れ隠しに頭をガジガジかく。
「な、なんやねんな。ケチつけるん?」
「その、まさか俺を名指しで大好き言うとは。いやはや、お兄さんちょっと照れますよ」
「……? ……ッッッ!!!」
 最初は何のことか分かっていなかった様子だったが、すぐに見当がついたようで、いずみの顔がタコみたいに真っ赤になった。
「ちゃちゃちゃちゃうねん、ちゃうねん! ちょっと間違っただけやねん! 別にタカちゃんが好きとか、そーゆーのとはちゃうねんて!」
「いやはや、なんか得した気分。もぐもぐ」
「あーッ!!! な、何食うてんねん! 何ウチのあげさん食うてんねん!」
「ん? あ」
 無意識にいずみの油揚げを摂取していた。もぐもぐしていた。
「むしゃむしゃごめん。味がしみてておいしい」
「ちっともごめん思てない! あー……折角頑張って言うたのに……思てもないこと言うたのに……あほー。タカちゃんのあほー」
「そう落ち込むな。ほら、俺の飯やるから」
「……ウチはあげさんが食べたかったんや。……タカちゃんのあほー」
 あまりにあほーあほー言うので、いなり寿司を買ってやった。
「むしゃむしゃ……こんなんじゃウチの傷ついたハートは癒やせへんで。むしゃむしゃ……も一個ええ?」
「いくらでもどうぞ」
「やたっ♪ ……そ、それはそれとして、恨んでるからな! ほ、ホンマやで?」
 両手でいなり寿司を抱えたまま、いずみは付け足すように言った。
「大好きな俺に免じて許せ」
「だっ、だからそれは間違って言うただけや! もーっ、タカちゃんのあほー!」
 顔を真っ赤にしていなり寿司にかぶりつくいずみだった。

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【男のベッドでもだえるツンデレ】

2010年02月11日
 タカちゃんが暇だというので遊びに来てあげたのに、当の本人がおらへん。どないしたんかと部屋を調べたら、書置きがあった。
「ええっと……『いずみへ。腹が減ったので飯食ってくる。俺が帰ったときにいなかったら地球の裏まで探してでも犯す』。……怖ッ、怖あッ!」
 そんなことをされては敵わないので、部屋で大人しく待つ。さて、何しよ。漫画でも読もっかな。
 本棚から適当な本を探そうとして、手が止まる。
「『ひよこのたまご』『ちぃさな恋ゴコロ』『ぷらいまり』……なんで堂々とエロ本置いてんねん。相変わらずの変態っぷりやな、タカちゃん」
 ため息を一つ吐いて、整理してやる。きっとびっくりするに違いない。ざまみろ。
「さて、っと。……ちょい横なろ」
 ベッドにぽふりと飛び込む。……あ、しもた。ここ、タカちゃんが普段寝てる所や。
 ……ど、どないしょ。なんや、意識してまうわ。
「……誰も、いーひんよな? ……お、おらへんのがあかんのやで。タカちゃんのあほー」
 一応きょろきょろしてから、枕に顔をつっこむ。
「ふにゅー♪ ふにふに、ふー♪」
 胸いっぱいに枕の香りを吸い込む。あー。タカちゃんの匂いや。あー。
「んぐー、んー、んうー♪」
 思わず枕をはむはむしてしまう。あー、あかんなー。しゃーわせやなー。
 そのままベッドの上をころころ転がり、幸せを満喫。するあまりベッドから落ちた。
「あいたたた……ん?」
「あ」
 顔を上げたら、タカちゃんと目が合った。ていうか。
「なななななんでおんねん! なんでタカちゃんがおんねん! ここに!」
「怨念がおんねん、なんちて。はっはっは」
「はっはっはやあらへん! おるんやったらおるって早よ言え、あほー! タカちゃんのあほー!」
「そう怒るな。いや、ついさっき来たところだから、なんでお前がそんな怒ってるか皆目理解できないのだが」
「ほ、ホンマに? 見てへんかったん?」
「ああ。ふにゅーふにふにふーとか知らん」
「メチャメチャ見てるやないの! あほー! タカちゃんのあほー!」
「あれ、どういう意味? いずみ語? 俺も使えるようになるかな?」
「知らんッ!」

「ぬー……」
 あれから色々問い質したら、ウチがベッドに飛び込んだあたりで部屋に戻ってきたらしい。ドアが開いた音に気づかへんかったとは……一生の不覚や。
「なんで入ってきた時になんも言わへんねん。タカちゃんのあほー」
「分かった、次からは部屋入るときに『いずみの幼い肢体を舐めまくりてえ』とか叫ぶ」
「ものごっつい迷惑や!」
「しかし、俺の枕は既に涎でべったべたにされているので、これで五分五分かと」
 タカちゃんが枕を取ろうとするので、神速で枕を死守する。
「ウチが洗うから触んなっ!」
「いや、その前に堪能しようかな、と。いずみ液を堪能しようかな、と思った次第で」
「へ、変態やー!!!」
「いやあ」
「何を照れてんねん!」
「ええと……ああ! こういう時に使うのだな、いずみ語を! ええと、ふにゅーふにふにふー?」
「あ、あ、あ、あほー! タカちゃんのあほー!」
「んぐーんーんうーの方がよかったのか? それとも、転げまわりながらでないとダメなのか?」
「あほー! あほー! タカちゃんのどあほー!」
 全力でタカちゃんのお腹を叩くウチだった。

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【タカシとツンデレの精神が頭をぶつけた拍子に入れ替わってしまったら】

2010年02月11日
 エドモンド本田に憧れる日々。長年の努力の結果、スーパー頭突きを会得してしまった。(注:身体を水平にしてそのまま水平飛行し、相手に体当たりする技。wikipediaより引用)
 早速技を試すべく、テイクオフ。地面と水平に体が飛んでいくその先に、見慣れたちっこいの。
「危ねえっ! よけろ、いずみ!」
「た、タカちゃんが水平に飛んできたあああああ!?」
 叫びも空しく、俺の頭部がいずみの頭に超激突。
「うおおおおお……痛え。この技はダメだ」
「はうはうはう……何するねん、タカちゃん! ごっつ痛いやんか!」
「いやはや、失敬。ちょっとした失敗……うん?」
 おかしい。目の前にいるはずのちっこいのはちっこくなく、かなりの巨体になっている。それどころか、性別までおかしいような。というか。
「……俺?」
「……なんでウチが目の前におるん?」
 二人揃ってしばし沈黙。
「おれがあいつであいつがおれで!?」
「転校生!?」
 異口同音とはならなかった。

「アレだ、よくある漫画のパターンだ。頭と頭がぶつかって中身が入れ替わるってアレ」
「なんでそんな落ち着いてるねんな……どないすんねん! タカちゃんがスーパー頭突きなんかするからやで!」
 古今転校生ネタがあっても、スーパー頭突きにより入れ替わったのは俺たちくらいだろう。
「じゃ、とりあえず風呂入ってくる」
「あかーん! ウチの身体見る気やろ!」
「見るだけでなく、まさぐる」
「絶対あかん!」
 鼻息も荒く俺を止める俺。じゃない、いずみ。……しっかし、なんというか、俺の姿をしたモノがこうも感情を露にしているのを見るのは、妙な気分だな。
「……なんか、ウチが淡々と喋ってるん見るの、変やわ」
 いずみも自身の姿に違和感を感じたのか、頬をかきながら妙な笑みを浮かべた。
「さて、冗談はともかく、どうしたものか。映画だとどうやって戻ったっけ?」
「えーと……なんやったっけ。忘れてもーた」
「俺のくせに使えねえなあ」
「そ、そっちこそウチやねんから、もっとしっかりせなあかんやん!」
 妙な責任の擦り付け合いが始まった。
「はぁ。しっかし、自分の顔見ててもつまらんな」
「んなこと言われても、しゃあないやん……」
 俺の顔をしたいずみが口をとがらせ、非難がましい視線をぶつける。
「やめろ! その所作はいずみのパーツが揃ってこそ萌えるのであり、俺がやっても非常に気持ち悪い!」
「知らんやん、そんなん。ほな、タカちゃんがそーゆーのしたらええやん」
「……なるほど。いずみ、ちょっと携帯で撮影してくれ」
「ええけど……あんま変なことせんといてや。一応、ウチの身体やねんから」
 ポケットから携帯を取り出し、いずみは不安そうに構えた。
「よし、いくぞ。……うにゃーん♪」
 地面に仰向けになり、満面の笑みを浮かべながら手を猫手にして頬をこしこしする。
「うひゃあああああ!? あかんあかんあかん! やめっ、はよやめーっ!」
「どうだ、実に可愛いであろう。はっはっは。にゃーん」
「はっはっは、やない! もー、みっともないやんか!」
「大サービス。うりゃ」
 スカートをまくりあげ、携帯に見せ付ける。
「なな、ななななな!? 何すんねん、あほー!」
 思い切り殴られた。信じられないくらい痛え。
「ぐおおおお……お、お前、男の力なんだから、ちょっとは手加減しろ、阿呆」
「えっ、あっ……ご、ごめんなタカちゃん。いっつも思い切り叩いてたから、つい」
 心配そうな顔で駆け寄り、俺の頭をなでなでするいずみ。ただし、見た目は俺。
「あー……まるで萌えねえ。これが見た目いずみなら……チクショウ!」
「何を言うてんねん。……でも、確かに自分を慰めるって、変な気分やわ」
「百合に目覚めそうと」
「目覚めへんわ! あほー、タカちゃんのあほー!」
 野太い声でタカちゃんの阿呆、と言われても、ちっとも嬉しくねえ。
「身体をまさぐれなかったのが心残りだが、自分の姿を眺めててもちっとも面白くないし、そろそろ戻るか」
「へ? どうやって?」
「どすこい!」
「う、ウチが水平に飛んできた!?」
 封印された禁断の技、スーパー頭突きを発射。再び俺の頭をいずみの頭がぶつかる。
「ぐふっ! ……や、やっぱ超痛え」
「はうはうはう……痛い、めっちゃ痛いぃぃ……」
「まるで破瓜した際の台詞のようで興奮しますねウヒヒヒヒ」
「タカちゃんが本性を見せた!」
「失礼なことを言うな。あ、戻ってる」
「え? あー! タカちゃんがウチやのーてタカちゃんに戻てる!」
 ややこしいが、その通り。スーパー頭突きにより入れ替わっていた精神が再び入れ替わり、元に戻ったようだ。便利な技だ、スーパー頭突き。一家に一台、スーパー頭突き。
「やっぱアレだな、お前は鑑賞するに限る。うんうん」
 見慣れたいずみの顔を見て、心底そう思いながら頭を撫でる。
「まったくもー……タカちゃんが水平に飛んでこーへんかったら、こんなことにならへんかったのに」
「悪かった。もう水平には飛ばない」
 どんな約束やねん、と思いながらいずみと指きり。
「あー、しかし、こんなすぐ戻れるのであれば、もうちょっといずみを堪能すればよかったかな。全然身体調べられなかったし」
「まだ言うてるしぃ……そんなウチの身体見たかったん?」
「無論」
「なんでそんな恥ずかしいこと堂々と言うかなぁ……ホンマえっちやなあ、タカちゃん」
「性欲がなければ人類は子孫を残すことは出来ない。故に、性欲はこの世界に自身の欠片を残すために必要なことなんだ。何一つ恥じることなどない」
「口先ばっか達者になってぇ……」
「そんな性欲が俺に訴えるのです、『目の前のつるぺたをじっくり鑑賞しろ』と。てなわけで、一緒に風呂入ろう」
「誰が入るか、あほー! えっち! タカちゃんのえっち!」
「どうしても嫌?」
「当たり前や! まったくもー、えっちすぎて困るで……」
「しょうがない。さっき録画してもらったいずみの痴態でも見て、無聊を慰めるか」
「へ? ……あー! さっきの携帯! そういや消してへんかった! 見るなあほー!」
「『うにゃーん♪ どうだ、実に可愛いであろう。はっはっは。にゃーん』……いずみさん、かーわいい。うにゃーんだって、うにゃーん」
「消せ、あほー!」
 俺から携帯を奪おうと、必死でぴょんぴょん跳ねるいずみだった。

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【ツンデレと恋人ごっこをしたら】

2010年02月08日
 久しぶりの休日だというのにすることがない。あまりに暇なので友人のいずみを呼び出したが、それでも暇だ。
「なーなー、タカちゃん、なんかせーへんの? なーなー、なーなーて」
 こいつを使って何か面白げなことを思いつきたいのだが、なーなー言いながら俺の腕をゆさゆさ揺するちっこい物体のせいで思いつかない。
「全部お前のせいだッ!」
「何が!?」
「む、驚き顔のいずみを見て思いついた。恋人ごっこしよう」
「何で!?」
「よく驚く人だなあ」
「いや、そやなくて! ……な、なんでウチと恋人ごっこするん? あ、アレなん、ウチのこと、その、タカちゃん、す、す、す……」
「暇だから」(断言)
 赤らんでいたいずみの顔がはぅーって感じになった。
「暇やからって……」
「あと、身近な女の子でエロい欲求を手軽に満たしたい」
「絶対せーへん!」
 どういうことか、へそを曲げられた。
「というのは冗談で、本当はいずみのことが大好きなんじゃないカナ」
「え……ほ、ホンマに?」
「いや、どうだろう」
「どないやねんっ! タカちゃんのテキトー星人!」
「いや、人間です。厳密に言えば地球人です。地球星人?」
「うっさい! タカちゃんのあほー!」

 まあその後も紆余曲折あったが、適当にだまくらかして恋人ごっこ契約成立。
「えっちなんは絶対なし! ええな!」
「任せろ」
「……めっちゃ信用できひん」
「大丈夫、いきなり挿れたりしない」
「ウチ帰る!」
「待て待て、冗談だ。まったく、いずみたんったらー♪」
「うわっ、キモ!」
 恋人っぽく振舞ってみたら気持ち悪がられ悲しい。
「あっ、ウソウソ、嘘やで。ホンマはキモ可愛いから可愛いを抜いた感じや」
 一瞬喜んだが、よく考えると感想が変わってないので依然変わらず悲しい感じだ。
「あははー。……酷いことせーへんかったら、えーよ?」
 ふんわりした笑顔を浮かべ、いずみは俺に体を預けた。
「よし、縄、縄……あと、ムチ」
「早速酷いことされる!?」
「よく考えたらそんな趣味はないのでSMはしない」
「や、やんね。もー、驚かすんナシやで」
「浣腸と、洗面器と、それから……」
「帰るー! ウチおうち帰るー!」
「いやいや、冗談に決まっとろーが」
 幼児化してまで逃げようとするいずみを背中から抱きしめる。
「……ホンマに? 酷いことしたら嫌やで?」
「しないしない。俺が神と崇めるスポポビッチ様に誓ってもいい」
「額にMの刺青がある変態を神と拝める奴の言う事なんか信じられへん!」
 詳しいな。スポポビッチマニア? スポマニ?
「じゃあ自身に誓って、しない」
「……それやったら、まあ、信じたってもええケド」
 いずみは俺の膝の上でくるりと向きを反転させた。俺の胸を指でくりくりしつつ、少しうるんだ瞳を向ける。
「納得したようなので、とりあえずキス」
「そんな『とりあえずビール』みたいな感じではウチのファーストキスはやれへん!」
「む。なれば、とりあえず抱っことしゃれ込もうではないか」
「ええけど……タカちゃん、ムードとかもうちょっと気にした方がええで」
 言いながらも、いずみは俺にぎゅっと抱きついてくれた。
「極めてささやかな膨らみ……膨らみ?が俺の胸を優しく刺激しているような、気のせいのような……気のせいだな」
「失礼なモノローグは口に出すな、あほー! 気のせいちゃうわ! めっちゃあててるっちゅーねん!」
「確かに、肋骨はごりごりあたってる」
「おっぱいや! あててんのよ、や!」
「よく分からんな。どれ、直接あててみてはどうだろう」
「それは名案! ……やないわ、あほー! するわけないやんか!」
「どれどれ……ほほう」
「するわけない言うてんのに何でウチの服まくりあげてんのこの人!?」
 一瞬だけ桜色の突起物が見えたが、やたらめったら頭をぺこぽこ叩かれたので、すぐに服を戻さざるを得なかった。
「うー……おっぱい見られたぁぁ……。なんでブラまで一緒にまくりあげんねん。タカちゃんのあほー……」
「おっぱいって平面でしたっけ。俺の記憶だと立体だと思いましたが」
 鬼気迫る顔で睨まれた。超怖え。
「これから成長するんや!」
「乳首が?」
「おっぱい全体が! ぼかーんってなんねん! すっごいことになるねんで!」
「爆発するの?」
「うがー!」
 貧乳が怒った。どんな獣(近所の人懐こい犬に限る)をも恍惚とさせる魔技、なでなでをもって落ち着かせる。
「……タカちゃん、ウチのこと馬鹿にしてばっかや。ウチのこと、嫌い?」
 しばらくすると落ち着いたのか、俺に抱っこされたままでいずみはぽつりと呟いた。
「嫌いな奴とこんなことするわけねーだろ」
 ぽんぽんと背中を優しく叩く。ほふー、といずみから鼻息が漏れた。
「ほな、なんで? なんでいぢわるするん?」
「……えーと。照れ隠し、という噂がまことしやかに囁かれている、という噂」
 いずみの顔を見ないよう、そっぽを向きながらぼそぼそと。
「噂の噂なん? 変なのー」
「いやまったく。変だな」
 いずみの笑う気配に、知らずこちらも破顔。
 なんだか和んでしまったので、結局抱っこしたりほっぺをすりすりしたり名前を呼び合ったりしただけだった。気がついたら夜だった。
「超早え」
「はむはむ……ほむ?」
 俺のほっぺをはむはむしながら、いずみは器用に小首を傾げるのだった。

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【関西にたこ焼きっておいしくないよなっていったら】

2010年01月31日
 いずみが腹が減ったと言うので、学校帰りに屋台のたこ焼きを食うことになった。公園のベンチに座り、いずみと並んでたこ焼きをほうばる。
「はふはふ……はふ。あふひはー、タカひゃん」
「そうだな、断然後者の方がタイプだ」
「何の話やねん!」
「何言ってんだか全く分からなかったので、ボンキュッボンとつるぺたーんどちらが好み? と聞かれたと思い込んだ」
「そんな長いこと喋ってへんし、そんなこと聞かへん! タカちゃんのあほー!」
「ふふん」
「なんで嬉しそうやねん……あんな、熱いなあって言うてん」
「なんだ、たこ焼きの話か。……これ、うまいか?」
 そう言った途端、いずみの目が妖しく光った。いかん、と思ったが後の祭り。
「あったり前やんか! こんなおいしいもん、世界中探してもないで! ええか、小麦粉っちゅうんは何にでもあうねん。それを丸めて、しかもタコ! タコやで、タコ入れて焼いてんで、おいしいに決まってるやんか!」
「あ、ハト。くるっくー」
「ウチの話聞けっ!」
 いずみがどでででーと駆けてハトを蹴散らす。
「負けるか!」
「ひゃああああ!?」
 負けん気を刺激されたので、ハトを蹴散らしたいずみを蹴散らす。
「ウチを蹴散らすな!」
「いや、つい」
「ついやない! タカちゃんのあほー!」
 申し訳なく思ったので、いずみの頭をなでて労わる。
「こ、こんなんで誤魔化されるほど、ウチ子供やないもん」
「悪かった。金輪際なでない」
 いずみが物凄く恨みがましい目で僕を見ます。
「……タカちゃんのあほー」
「たこ焼きなんておいしくないって宣言したら、なでなでを再開する」
「…………。だっ、誰がそんなこと言うか、あほー!」
「その間は何ですか」
「なんでもあらへん! なでなでなんてしてほしないわ、あほー! タカちゃんのあほー!」
「阿呆ではないむしゃむしゃ」
「むしゃむしゃて……たこ焼き食うてるやないの! しかも、ウチの! 食うな!」
「うまひ」
「まずい言うてたやんか! どういうこっちゃ!」
「いや、前にいずみが作ってくれたのに比べたらおいしくないな、って話。これ単品だとそこそこ美味いよ?」
「……そ、そないか。そーゆーことやったらええわ」
「いずみさん、いずみさん」
「な、なんやねんな」
「顔赤いぞ」
「あっ、赤ないわっ! あほー! タカちゃんのあほー!」
「湯気が出そうな勢いで赤いのは俺の気のせいなのか」
「き、気のせいに決まってるやろ! 性格に加えて、目まで悪なったんちゃう?」
「成長の悪い奴は言うことが違うな。いつ第二次性徴が来るんだ?」
「うっさい!」
「もがもがもが」
 口の中に次々たこ焼きが詰められる。とても熱い。
「ふー……あああああ! 全部詰めてもーたやんか! もー、何すんねんな! タカちゃんのあほー!」
 俺は悪くない、と思いながら口の中のたこ焼きを必死で咀嚼する。もぐもぐごくん。
「げふー」
「うー……ウチのたこ焼きやのにぃ……。ウチがげふー言いたかった……」
「俺のことは気にせず言えばいい。さんはい」
「げふー。……たこ焼きでお腹一杯なってから言いたいんや!」
「ふむ。じゃ、自分で作ればいいじゃない。そして俺にも食べさせればいいじゃない」
「……タカちゃん、ウチの作るたこ焼き、食べたいん?」
「食べたい」
「しゃ、しゃーないなあ。そこまで言うんやったら作ったるわ。あーめんどくさ♪」
「じゃあいい」
「作るから食え! 食べへんかったら殺す!」
 知り合いに脅迫される放課後だった。

拍手[5回]

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