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2024年11月23日
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【バナナの皮で滑ったツンデレ 】

2010年05月01日
 いずみが次の文化祭で漫才をするらしい。それはいいが、なんで俺を相方に選ぶのだろう。
「タカシって、変やもん。ボケにちょうどええ」
 失礼な答えが返ってきた。
「ほな、基本教えたるわ。客から笑いを取るには、どないしたらええと思う?」
「ワライタケのエキスを茶に含ませ、見に来た客に振舞えばいいと思う」
「……いや、もちっと正攻法でいこうや。基本はボケて、それに相方が突っ込む」
「ははぁ、なるほど」
「ほなやってみよか。このバナナ使てボケて」
 いずみからバナナを渡される。ちょうど腹が減っていたので皮を剥いて食う。
「むぐむぐ……甘い」
「食うなッ! ……ま、まぁ、ボケやな。ボケっちゅうか、アホって感じやけど」
 失礼なことを言う娘さんだ。それにしてもこのバナナはうまい。もぐもぐもぐ。
「あ~あ~、全部食うてもた。……ま、ええか。バナナの皮ちうたら、何思いつく?」
「苦い」
「なんで味やねん! そうやなくて、コケやろ? バナナでコケる。基本中の基本や」
「……それ、俺がやるの?」
「当たり前やん。今時バナナでコケる。……大受けやで、絶対!」
 目をキラキラさせてるいずみには悪いが、今更バナナでこけたところで受けるとは到底思えない。
「いや、やめとこう。死んだ爺さんに、バナナでこけることだけはやめろと遺言を」
「……ウチ、こないだアンタの爺ちゃんと会ったで」
「実は死体なんだ。後ろから俺が操ってた」
「怖いわっ! ……はぁ、もーえぇわ。明日また練習やるさかい、ちゃんとやってや」
 勝手にそう言って、いずみは教室から出て行こうとした。悔しいのでバナナの皮投げてやれ。
 バナナは放物線を描き、いずみの前に落ちた。そして、いずみはものの見事なコケを見せてくれた。
「わはははは! さすがはいずみ、見事なコケだ!」
 いずみは無言で立ち上がり、服の汚れをはたいて落とすと、俺に向き直った。……怖いくらい笑顔だった。
「……もちろん、覚悟完了やな?」
 いまいち納得できないのだけど、つっこみの打撃に耐えるのもボケの役目らしい。
 ただ、動けなくなるまで殴るのは、つっこみとしても人としてもどうかと思う。

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