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2024年12月04日
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幼馴染「…………」クイクイ 前編
2012年04月06日
男「ん? ああ。おはよう、幼馴染」
幼馴染「おはよう、男」
男「それはいいが、せめて声をかけてくれ。無言で服の裾を引っ張られると、ちょっと驚く」
幼馴染「……ごめんなさい」シュン
男「ああいやいや、怒ってるわけじゃなくて。次から気をつけれくれればいいし、無理なら無理で別に構わないし」
幼馴染「分かった。頑張る」フンス
男「いや、別に頑張ることではない」
幼馴染「…………」シュン
男「そんなんで悲しそうにするな」ムニムニ
幼馴染「ほっへひっはははひへ(ほっぺ引っ張らないで)」
幼馴染「おはよう、男」
男「それはいいが、せめて声をかけてくれ。無言で服の裾を引っ張られると、ちょっと驚く」
幼馴染「……ごめんなさい」シュン
男「ああいやいや、怒ってるわけじゃなくて。次から気をつけれくれればいいし、無理なら無理で別に構わないし」
幼馴染「分かった。頑張る」フンス
男「いや、別に頑張ることではない」
幼馴染「…………」シュン
男「そんなんで悲しそうにするな」ムニムニ
幼馴染「ほっへひっはははひへ(ほっぺ引っ張らないで)」
男「や、ついね、つい。にしても、最近は暖かいな。こうも暖かいと……ふああ。どうにも眠気が」
幼馴染「あくび。……寝不足?」
男「んー。なんとなくネットをぷらぷらとね」
幼馴染「テストも近いし、あんまり夜更かししたらダメだよ?」
男「そだな。お前と違ってそんな頭よくないからな、俺は。ちっとは勉強しないとなあ」
幼馴染「別に、私は頭がよくないよ? 普通に授業を受けて、毎日ちょこっと復習してるだけ」
男「それができる奴を頭がいいっていうんだ」ナデナデ
幼馴染「……じゃ、私、頭いいんだ」
男「そゆこと」
幼馴染「…………」キラキラ
男「心なしか目が輝いてますね」
幼馴染「……頭がいいので」
男「なるほど」
幼馴染「じゃ、頭のいい私が、出来の悪い友人のため、勉強を教えてあげようか?」
男「あ、それはいいな。どうかこの頭の悪い子羊をお助けください」
幼馴染「ん。じゃあ、学校が終わったら私の部屋に集合。ね?」
男「了解。よろしくお願いします」
幼馴染「あ、ついでにご飯食べていく? おばさん、今日も遅いんでしょ?」
男「ん、まあ、そうなんだけど……いつもいつも世話になるのも悪いし、いいよ」
幼馴染「いいよ、気にしなくて。お父さんも男が来るの待ってるし」
男「嘘つけ。いっつもすげぇ威圧してくるじゃねえか、お前の親父さん」
幼馴染「……そかな? でも、言われてみれば、男がいる時は普段よりむーってしてるかも」
男「ほらな。あんま歓迎されてねーんだよ、俺は」
幼馴染「そんなことないよ? 男が来ない時、お父さんよく聞いてくるもん、男のこと」
男「ふーん。ま、いっか。じゃあ、今日は晩飯世話になるかな」
幼馴染「ん。……じゃ、頑張る」フンス
男「そんな気合を入れなくてもいいのに」
幼馴染「食べる人が増えると、料理人の血が騒ぐ」
男「誰が料理人だ、誰が」ムニムニ
幼馴染「ほっへひっはははひへ(ほっぺ引っ張らないで)」
──校門前──
男「着いた」
幼馴染「着いたね」
男「さて、今日も一日頑張るか」
幼馴染「……授業中に寝たらダメだよ?」
男「分かった、寝そうになってたら起こしてくれ」
幼馴染「席が離れてるから無理だよ」
男「残念だな」
幼馴染「うん」
──教室──
男「ふああ……んー。やっぱりというか当然というか、今日も授業中に寝てしまった。どうして歴史の授業というのはああも眠くなるのだろうか」
幼馴染「おはよ。お昼だよ?」
男「ああ、そだな」
幼馴染「はい、お弁当」
男「いつもサンキュな」
幼馴染「んんん。料理好きだし」
男「それでも、サンキュな」ナデナデ
幼馴染「……ん」
男「で、どこで食う?」
幼馴染「いつもの中庭でいいと思う」
男「そだな。今日は暖かいし、丁度いいな」
幼馴染「花粉がわんさか、だけど」
男「お互い花粉症じゃなくて助かったな」
幼馴染「くしゃみしてる人、いっぱいいるもんね」
男「そだな」
──中庭──
男「おお。桜がすごいな」
幼馴染「一面桜の花びらだね」
男「うちの学校の唯一といっていいアピールポイントだな」
幼馴染「そんなことないよ。他にもいいところあるよ?」
男「例えば?」
幼馴染「……授業中に寝てても叱られない?」
男「以後気をつけます」
幼馴染「じゃ、食べよっか?」
男「そだな。いただきます」
幼馴染「おあがりなさい」
男「ん、今日もうまそうだ」
幼馴染「…………」ドキドキ
男「んなじーっと見なくてもいいだろうに。どうせ今日もうまいに決まってるっての。味見したんだろ?」
幼馴染「したけど、絶対なんてことはないから。それに、もしまずくても男はおいしいって言うから。その嘘を暴くためにも、わずかな違和感も感じ取らないとダメだから」
男「どんだけ善人扱いされてんだ、俺は。まずけりゃまずいって言うぞ?」
幼馴染「はいはい」
男「コイツは……」
男「じゃ、とりあえずこの玉子焼きをば」
幼馴染「…………」ジーッ
男「あの、あまりじーっと見ないでいただけますか。緊張で箸が震える」
幼馴染「気にしないで」
男「無茶を言う。だが、幼馴染の願いだ、頑張って聞き入れよう」
幼馴染「…………」ジィーッ
男「……はぁ。あっ、あれはなんだ」ユビサシ
幼馴染「?」ユビノサキ キニナル
男「むしゃむしゃ」
幼馴染「あっ」
男「だいじょぶ。おいしい」
幼馴染「……騙された」シュン
男「やーいばーかばーか」ナデナデ
幼馴染「言動不一致」
幼馴染「反応をしっかり見たかったのに。どして見せてくれないの?」
男「あんまりじーっと見られると恥ずかしいんだよ」
幼馴染「そういうもの?」
男「そういうもの」
幼馴染「ふーん。それで、おいしい?」
男「おいしい」
幼馴染「……よかった」
男「そんな不安がることないのに。頭脳戦艦ガルなのに」
幼馴染「……がる?」
男「気にするな」
幼馴染「長年一緒にいるけど、いまだに男はよく分からないね」
男「ミステリアスで素敵だろう?」
幼馴染「……うん、今日もお弁当おいしい」
男「幼馴染のスルースキルが冴え渡る」
幼馴染「ふぅ。ごちそうさまでした」
男「今日も食い終わるの遅いな。俺より弁当箱小さいのに」
幼馴染「しょうがないよ。女の子だもん」
男「涙が出ちゃう?」
幼馴染「これは分かった。アタックナンバーワンだ」エッヘン
男「当たり」ナデナデ
幼馴染「……えへへ」
男「ふああ……あー、腹が膨れたら眠くなった」
幼馴染「授業中も寝てたのに」
男「社会の時間だけな。他の時間は起きてたぞ。偉かろう」
幼馴染「それが普通だよ。……あのね?」
男「ん?」
幼馴染「眠いならね、……膝枕、する?」
男「いいか? じゃあ頼む」
幼馴染「ん。じゃあ、ここに頭のっけて?」
男「ほい、っと」
幼馴染「ん。……どう? 硬くない?」
男「大丈夫、柔らかい」スリスリ
幼馴染「えっちだ」
男「そうなんだ」
幼馴染「えっちだえっちだ。……じゃ、チャイム鳴ったら起こすから、寝てていいよ」ナデナデ
男「分かった。んじゃ、ちょっと寝るわ。お休み、幼馴染」
幼馴染「お休み、男」ナデナデ
男「──……ん、ふあああああ……んあー」
幼馴染「あ、起きた。……おはよ?」スリスリ
男「あー。おはよ、幼馴染」
幼馴染「まだ寝ぼけてる。まだチャイム鳴ってないけど、もうちょっとしたら鳴るから、早めに目を覚ました方がいいよ?」スリスリ
男「そだな、あとで顔洗ってくるよ。ところで」
幼馴染「ん?」スリスリ
男「なんでさっきから俺の顔を両手で包み込んですりすりしてんだ」
幼馴染「……? ……ああ。目、覚めるかな、って」スリスリ
男「なるほど」
幼馴染「覚めた?」スリスリ
男「まだ」
幼馴染「寝ぼすけさんだね」スリスリ
男「そうなんだ」
男「さて、っと」ガバッ
幼馴染「わわっ」
男「顔洗ってくるよ。ついでに弁当箱も洗ってくるから、幼馴染は先に教室戻っててくれ」
幼馴染「いいよ、待ってるよ」
男「いーってば」
幼馴染「むぅ」
男「顔を洗いーの……弁当箱も洗いーの、トツギー……いや、やめとこう。とにかく、終わり! 目も覚めた!」
男「急いで教室に戻ろう、と思ったのに。なんでまだ中庭にいる」
幼馴染「戻る、とは言ってないから」チョコン
男「なるほど」
幼馴染「あ。弁当箱洗ってくれて、ありがとう」ペコリ
男「作ってもらってるし、これくらいはな。こんなので感謝されても困る」
幼馴染「ご飯作るくらいで、感謝されても困る」
男「卑怯な」
幼馴染「だから、毎日ご飯食べに来てもいいよ?」
男「いや、流石にそれはね。気を使う」
幼馴染「気にしないでいいのに」
男「じゃ、戻るか」
幼馴染「ん」
男「ところで、次に時間なんだっけ?」
幼馴染「英語」
男「うわぁ」
幼馴染「苦手だよね、英語」
男「どうもね。なんかね。理解が及ばないね」
幼馴染「じゃ、今日の勉強会は英語にする?」
男「今から頭が痛くなってきた」
幼馴染「がんばれ、がんばれ」ナデナデ
男「頑張ります」
──教室──
男「無理でした」プシュー
幼馴染「頭から湯気出てる」
男「疲れた。よもや俺に当たろうとは。酷いもんだったよ」
幼馴染「そだね。でも、男は苦手なりに頑張った。私には分かるよ?」ナデナデ
男「ありがたい話だ。慰めてもらったことだし、今日はテスト勉強頑張るか!」
幼馴染「ん。じゃあ、私も張り切って教える」フンス
男「いや、そんな張り切らなくていいです」
幼馴染「…………」ションボリ
男「や、もうさっきの授業で俺の体力は0なんですよ」
幼馴染「ちぇ」
男「さっきのダメージが残っていたのか、気がつくと授業が終わっていた」
幼馴染「男、帰ろ?」
男「ああ、そだな」
──通学路──
幼馴染「あ、そだ。スーパーに寄ってっていい?」
男「ああ。晩飯の材料か?」
幼馴染「うん。それと、他にも色々」
男「おっけ。荷物持ちは任せろ」
幼馴染「ん。期待してる。……あ」
男「ん?」
幼馴染「ねこ」
男「へ? ……あ、本当だ」
幼馴染「ねこーねこー」トコトコ
男「おい」
幼馴染「ねこーねこー」コイコイ
猫「ふしゃー」
男「すげー威嚇してるぞ」
幼馴染「かわいい」
男「……そうか?」
猫「ふしゃー」
幼馴染「おいでおいで」
猫「ふしゃー」
男「全然だな……ふむ。猫、ちょっと来い」
猫「ふしゃ……にゃ? にゃー」トコトコ
男「来た」ナデナデ
幼馴染「なんで。ずるい」
猫「にゃー」
幼馴染「私もなでたい」
男「よしよし」ナデナデ
幼馴染「なでられたい、じゃなくて」
男「なんだ」
猫「にゃー」
男「じゃあ、押さえとくからなでてみ」ガシッ
猫「にゃっ!?」
幼馴染「ん」ワキワキ
猫「にゃーっ、にゃーっ!」
幼馴染「……はぁ。はぁ。はぁ」ドキドキ
猫「にゃっ、にゃっ!? にゃー! にゃー!」ジタバタ
男「…………」パッ
幼馴染「あ」
猫「にゃーっ!」
幼馴染「……逃げた」
男「逃げたな」
幼馴染「……わざと逃がした」ジワーッ
男「ちょ、ま、待て! 泣くな! 違う、あんまりにも嫌がってたから、つい!」
幼馴染「……なでたかった」プルプル
男「次! 次があったら絶対になでさせてやるから! だから泣かないでお願い!」
幼馴染「……本当?」
男「本当、本当!」ナデナデ
幼馴染「……じゃ、約束」ユビキリゲンマン
男「あ、ああ。約束だ」ハリセンボンノマス
幼馴染「ん。……でも、なでたかった」
男「代わりに俺でもなでとけ」
幼馴染「ん」ナデナデ
男「どうだ?」
幼馴染「……それほど悪くない」ナデナデ
男「その感想は予想外だ」
幼馴染「じゃ、スーパー、行こ?」
男「おお、切り替え早いな」
幼馴染「約束したから。次はなでる。ねこなでる」フンス
男「そんな猫が好きなら、家で飼えばいいのに」
幼馴染「……お父さん、猫アレルギー」
男「あー。ままならないなあ」
幼馴染「ままならない」ションボリ
男「ま、元気出せ。次はちゃんとするから」ナデナデ
幼馴染「ん。ところで」
男「ん?」ナデナデ
幼馴染「……ねこの毛、私の頭になすりつけてない?」
男「……シテナイヨ?」
幼馴染「もしねこの毛が私の頭についてたら、今日の勉強時間を倍にする」
男「つけましたごめんなさい勘弁してください」
幼馴染「……はぁ。男はしょうがないね?」
男「そうなんだ。しょうがないから許してくれ」
幼馴染「ん。しょうがないから許してあげる」
男「しょうがなくてよかった」
幼馴染「……しょうが、という言葉がゲシュタルト崩壊を」
男「しょうがないね」
幼馴染「ん、しょうがない。……そうだ、今日はしょうが焼きにしよう」
男「おお。あれおいしいよな」
幼馴染「ん。簡単だし、おいしいし。言うことなし」
男「今日の献立も決まったことだし、とっととスーパーに向かいますか」
幼馴染「ん」
──スーパー──
幼馴染「かご」
男「俺が持つよ」
幼馴染「んんん」プルプル
男「いや、んんんじゃなくて」
幼馴染「これくらいへーき」
男「いや、俺が持つ。性別:雄としてここは譲れない」
幼馴染「めんどくさい……じゃ、こういうのは?」
男「なるほど、二人で持つ、と」
幼馴染「重さも分散されるし、ちょうどいい」
男「しかし……なんというか」
幼馴染「?」
男(新婚さんみたい、とは言えないな。恥ずかしくて)
男「や、なんでもない」
幼馴染「ん。じゃ、野菜買お、野菜」
男「最近高いんじゃねえのか? よく知らないけど」
幼馴染「高い。キャベツが一玉248円。ありえない」プルプル
男「そんな震えるほど高いのか?」
幼馴染「例年より50円くらい高い。主婦には辛い」
男「学生だろ、お前は」フニフニ
幼馴染「台所を預かってるから。……ところで」
男「ん?」フニフニ
幼馴染「なんでまだ私のほっぺをふにふにしてるの?」
男「ん、ああ。なんか気持ちよくて」フニフニ
幼馴染「男はえっちだ」
男「そうなんだ」
幼馴染「えっちだえっちだ」
男「で、野菜はどうすんだ? 買わないのか?」
幼馴染「買う。……でも、少なめに」ヒョイヒョイ
男「高いもんな。あ、ピーマンは買わなくていいぞ? ほ、ほら、高いし?」
幼馴染「……子供?」
男「や、食べられるんだよ? ただ、あまりおいしくないなー……って、その、ね?」
幼馴染「…………」ヒョイヒョイ
男「あああああ」
幼馴染「男、ふぁいと」
男「ええい。くそ、頑張るさ」
幼馴染「ん、頑張れ。……んと、キャベツと、レタスと、それから……」
男「もやしだ。もやしパーティーをすべきだ。うっうー」
幼馴染「高い。もっと安い時があるから、今日はいい」
男「え、30円って高いのか?」
幼馴染「安い時は9円」
男「なるほど。あ、ニンジン」
幼馴染「」ビクッ
男「にんじん あります よ?」
幼馴染「にんじん いらない よ」
男「はいはい。幼馴染、ふぁいと」ヒョイヒョイ
幼馴染「…………」ムスー
男「無理なら俺が食うから。な?」
幼馴染「……んじゃ最初から買わなきゃいいのに」ムスー
男「はいはい。怒るない」フニフニ
幼馴染「怒ってないもん」ムスー
男「分かりやすいな、おまいは」フニフニ
幼馴染「分かりやすくないもん。怒ってないもん」ムスー
男「さて、次は何を買うかな」
幼馴染「…………」ソーッ
男「そこ。黙ってニンジンを戻すな」
幼馴染「戻してない」モドシモドシ
男「いや、せめて見つかったのなら手を止めろ」ソレヲモドシモドシ
幼馴染「…………」ムスー
男「はぁ……本当におまいはニンジン苦手な」
幼馴染「男だって、ピーマン苦手じゃん。子供みたい」
男「子供みたいな奴に子供と言われても痛くもかゆくもない」
幼馴染「今日の男のおかずはピーマン炒めにピーマンの肉詰め、それにピーマン汁だ」
男「ごめんなさい俺が悪かったですからどうか普通のご飯でお願いします」
幼馴染「男が私に勝てるわけがないんだよ」フンス
男「胃袋を人質に取られていると辛いゼ」
幼馴染「じゃあ、勝者の権利としてニンジンを破棄」モドシモドシ
男「しません」ソレヲモドシモドシ
幼馴染「……おいしくないのに」ムスー
男「んと、次は……肉か」
幼馴染「…………」ペタペタ
男「いや、胸の肉の話はしてない」
幼馴染「……一向に大きくならない。呪い?」
男「知らん」
幼馴染「まあ、いっか」
男「いいのか」
幼馴染「ん。使うあてもないし」
男「使おうか?」
幼馴染「小さいよ?」
男「それくらいの大きさが好きなんだ」
幼馴染「そなんだ」
男「ああ」
幼馴染「……そなんだ」
男「じゃない。どうして胸の話になった。晩飯の話だ」
幼馴染「豚肉、豚肉……あった。あ、半額。らっきー」ヒョイヒョイ
男「えらく大量に買うのな」
幼馴染「男がたくさん食べるだろうし。余れば冷凍すればいいし」
男「……ん、まあ、そうだな。……あのさ、食費」
幼馴染「いらない」キッパリ
男「せめて最後まで言わせてくれよ……」
幼馴染「ダメ。いらない。次言ったら怒る」
男「もう怒ってるじゃねえか」
幼馴染「だって、男は家族みたいなものなのに、食費入れるとか他人行儀なこと言うんだもん」ムスー
男「いや、でも厳密には違うのだから、金関係はしっかりしとかないといけないのでは」
幼馴染「…………」ムスー
男「……はい。そういうの気にせず飯を食らうぜ」
幼馴染「ん」
男「はぁ……変に頑固だよな、お前」ナデナデ
幼馴染「普通だよ」
男「さて。野菜買った、肉買った。とりあえず、今日買うのはこれくらいか?」
幼馴染「そだね。……あ」
男「ん?」
幼馴染「んんん」プルプル
男「何がだ。……ああ、なるほど」
幼馴染「んんん」プルプル
男「お菓子か。やっぱりお前も女の子なのな。どれ買うんだ?」ナデナデ
幼馴染「……いい?」
男「いいも何も、お前の財布だからな」
幼馴染「ん、んー……でもなあ。どうしてもってわけじゃないし、いらないよ」
男「……はぁ。で、どれが欲しかったんだ?」
幼馴染「買わないから、いい」
男「どれだ」
幼馴染「……ましまろ」
男「ん」ヒョイ
幼馴染「あ」
男「俺も偶然食いたくなったの」
幼馴染「……うそつき」
男「そうなんだ」
幼馴染「……それで、男が本当にほしいお菓子はどれ?」
男「や、俺は別に」
幼馴染「ダメ。私が食べたいの買ったんだから、男のも買わないと」
男「……えーと、じゃあ、……えっと、幼馴染が好きな菓子って」
幼馴染「今は男が食べたいお菓子を選ぶ番」
男「はぁ……。んじゃ、このせんべいを」
幼馴染「……特価品から選んでない?」
男「え、選んでない」
幼馴染「…………」ジーッ
男「ああもう、選んだけどそこそこ好きだからいいの!」
幼馴染「やれやれ」
店員<マイドアリガトウサギ!
男「……うさぎ?」
幼馴染「いっぱい買えた。……じゃ、男はこっち持って」
男「待て。一回両方寄こせ」
幼馴染「断る」
男「断るな。ほれ、貸せ」
幼馴染「…………」ムー
男「んーと……やっぱ軽い方持たせようとしたか。野郎には重いの持たせておけばいいんだよ」ヒョイ
幼馴染「……私の買い物に付きあわせたんだし」
男「知るか。ほれ、軽い方」
幼馴染「…………」ムー
男「ほら、怒ってないで帰るぞ」
幼馴染「……勉強、たくさんいじめてやる」
男「勘弁して」
男「さて、幼馴染の家に着いたわけだが」
幼馴染「冷蔵庫に入れたいから、一回うちに来て」
男「だよね」
──幼馴染宅──
親父「ん、帰ったか幼馴染……なんだ、隣のドラ息子も一緒か」
男「いや、そうでもない」
親父「いやいやいや、いるだろ! いま本人が返事したろ!」
幼馴染「んじゃ男、こっち来て?」
男「ん」
親父「ふん……幼馴染、気をつけろ。二人っきりになった途端、そこの馬鹿に襲われるかもしれないぞ」
男「父親の許可を得た」
親父「違うッ! ええい腹立つ、貴様には一生許可などやらんからなッ!」
幼馴染「お父さん、うるさいです」
親父「」
男「落ち込むなよ、親父さん」
親父「お、落ち込んでなどおらんわッ! そもそも貴様に親父呼ばわりされる覚えはないッ!」
男「パパと呼べと? うわこのおっさん超気持ち悪い」
親父「んなこと頼んどらんッ! ああこの小僧本気で腹立つ! 死ねばいいのに!」
幼馴染「お父さん、冗談でも死ねとか言ったらダメです」
親父「え、あ、はい、ごめんなさい……」シュン
男「……ぷっ、くくっ」
親父「な、何を吹き出しているか! 言いたいことがあるならはっきり言え!」
男「娘に叱られてシュンとなってるいい年したおっさんが愉快で仕方がない。動画で保存して繰り返し見て笑いたい」
親父「はっきり言えとは言ったが多少はオブラートに包めッ! ええい、貴様など出ていけッ!」
幼馴染「お父さん」
親父「え、でもだって、こいつが……」
幼馴染「お父さん」ズイッ
親父「……わ、わし、ちょっと仕事があるの思い出したから仕事部屋にいるな! 怖くて逃げたとかじゃないからな!」ピュー
男「すげぇ、いい大人が娘の迫力に負けて逃げた」
幼馴染「まったく、お父さんは……」
男「いつもあんな感じだな、親父さん」
幼馴染「男がいない時は、普通なんだけどね。じゃ、野菜とか冷蔵庫に入れちゃおうか」
男「そだな」
男「完了ー」
幼馴染「ん。それじゃ、晩ご飯の下ごしらえしてるから、先に私の部屋に行ってて?」
男「いや、手伝うよ」
幼馴染「簡単だからいいよ。先、行ってて?」
男「んー、そか。分かった」
──幼馴染部屋──
男「というわけで、やって来たわけだが……相変わらず色気のない部屋だな。もっと部屋全体ショッキングピンクで染めりゃいいのに」
男「……いや、落ち着かなすぎだな。部屋を漁るのもなんだし、漫画でも読んでるか」
男「んーと……あった、ドロヘドロ。何巻まで読んだっけ?」
幼馴染「お待たせ。……あれ?」
男「くー……ぐー……」
幼馴染「寝てる」
男「zzz……」
幼馴染「勉強しないと、って言ったのに」
男「ぐー……ぐー……」
幼馴染「……ぐっすり寝てる」
男「zzz」
幼馴染「……ふああ。んー。なんか私まで眠くなってきちゃった」
幼馴染「でも、ベッド占領されちゃってるし」
幼馴染「……んー。ま、いっか。男だし」
男(さて、目を覚ました俺なのだが)
幼馴染「くー……くー……」
男(なんで隣で幼馴染が寝てる)
幼馴染「ん……んや、んー……」
男(いや、それだけならまだいい。よくないが、まあいい。なんで俺に抱きついてんだ)
幼馴染「ん? んぅ? ……んー」
男(そのせいで一切身動きが取れない。あとなんかいい匂いがする。すげぇいい匂いがする)
幼馴染「ん……はふ。……ん♪」スリスリ
男「なんかすりすりしてきた!」
幼馴染「んぅ? ……んー。……ふああ。おはよ、男」
男「あ、ああ、おはよう」
幼馴染「んー。寝ちゃった」
男「いや、寝ちゃったじゃなくて。なんで俺に抱きついて寝てんだ」
幼馴染「ん? んー……男だし、いいかな、って」
男「いいかな、って……よくないだろ」
幼馴染「なんで?」
男「な、なんでって、そりゃその、男女七歳にして席を同じゅうせずというかなんというか、その」
幼馴染「男とだったら、別にいいと思うよ?」
男「え、ええと……そうなのか?」
幼馴染「男は、私と一緒に寝るの、嫌?」
男「まさか!」
幼馴染「ん。じゃ、別にいいじゃない」
男「……いいのか? いかん、なんかよく分からなくなってきた」
幼馴染「ふああ……。まだちょっと眠いな。もちょっと寝ていい?」
男「あ、いや、その……そうだ! ほら、勉強しないと」
幼馴染「んー……もちょっと寝てから。だめ?」コクビカシゲ
男「い……いいぃよ?」
幼馴染「ん」ダキツキ
男「な、なんで抱きつくのかな?」
幼馴染「二人で寝ると、ベッドが狭いから」スリスリ
男「そ、そっか。それなら仕方ないのか?」
幼馴染「ん。……なんでカクカクしてるの?」
男「そ、その、初期型のPSだから処理が遅いんだ」
幼馴染「人間だと思ってた」
男「俺もだ」
幼馴染「んふふ。……男にくっついてると、落ち着くね?」
男「俺は真逆だ」
幼馴染「一緒じゃない……」ムスー
男「そんなんで怒るな」ムニムニ
幼馴染「むー」
男「むーじゃねえ。ほら、寝るならさっさと寝ろ」ナデナデ
幼馴染「ん。……じゃ、私が寝るまで、なでていてね?」
男「ずっとですか」ナデナデ
幼馴染「なんか落ち着くの。なんでだろ」
男「俺の手から落ち着けビームが出てるからだ」
幼馴染「そっか。じゃ、そのビーム出しながらなでてね?」
男「しまった、選択肢を誤ったせいで幼馴染が寝るまでなでる羽目に」
幼馴染「がんばれ、がんばれ」スリスリ
男(なんかまた頬ずりされた。幼馴染の頬ずりマジヤバイ。超柔らかくって温かい。何これ死ぬる)
幼馴染「……ん。ん。……ね、男」
男「な、なんだ?」
幼馴染「……呼んだだけー」ニコッ
男(死ぬる。このままでは確実に死ぬる)
男「と、とにかく、お前が寝るまでなでてるから、もう寝れ」ナデナデ
幼馴染「ん。ね、男」
男「ん?」
幼馴染「お休み」
男「……ああ、お休み」
男(幼馴染のお休みマジ可愛い。いかん、幸せすぎて顔がにやける)
男(そして気がつくと俺まで寝てる罠)
男(時計を見ると時刻は8時を少し過ぎてる。腹も空いた。そろそろ幼馴染を起こさないと)
男(と思いつつなんとはなしに視線をドアの方に向けると、なんか鬼みたいな顔がドアの隙間からこっちを覗いてる)
男(一瞬叫びそうになったが、よく見たら幼馴染の親父だった。よかった)
男(いやよくない)
男(今の状況を確認してみよう。幼馴染と抱き合って寝てるところを、親父さんに見つかった。いかん、殺される)
幼馴染「……ん、んぅ」チュッ
親父「!!?」
男(そしてこの状況でさらに幼馴染が、無意識で、だろうが、俺の頬にキスをするというサプライズ油を火に投下。嬉しいけれど、こいつはマズイ)
親父「…………」ゴゴゴゴゴゴ
男(なんかドアの隙間の鬼が泣いてる気がする。そしてものすごい殺気も感じる。これは非常にヤクイ)
幼馴染「……ん。……ん、ふああああ。……あ、男だ」ギュー
親父「!!?」
男「あ、お、おはよう、幼馴染」
幼馴染「おはよ、男。……目が覚めてすぐ男がいるって、いいね」ギュー
男「そ、そか。そ、それより、その、抱きつくのはどうかと思いますよ?」
男(見てるからドアの隙間から鬼が見てるから気づいて幼馴染!)
幼馴染「んー。もちょっとしたら完全に目覚ますから、もちょっと抱っこ」ギュギュー
男「そ、そうか。もう少ししたら離れるなら大丈夫だな」
男(ということだ親父さん、もう少しだけ我慢してください!)
幼馴染「……あと2時間くらい」
親父「長ぇよッ!」
男「あ」
幼馴染「……お父さん?」
親父「あ、いや……こほん。男くん、嫁入り前の幼馴染に、なんてことをしてくれたんだ」
男「あ、いや、これは、その」
親父「言い訳か? 情けないな」
男「覗いてた奴の台詞とは思えないけど……確かに情けないですね」
親父「お前は一言多いッ! ……こほん。とにかく、貴様はこの家に立ち入り禁止だ。早く出ていけ!」
幼馴染「! お父さん、そんなの嫌です」
親父「お前は黙ってろ!」
幼馴染「お父さん」ズイッ
親父「ひっ! で、でも、コイツがお前に酷いことしたし! そんなの許せないし!」
幼馴染「……男、私に何かしたの?」
男「へ? いや、何かと言われても、頭なでて抱っこしたくらい……か?」
親父「ほら! ほーら! 超エッチなことしてんじゃん! ばーかばーか! 死ね!」
男「親父さんを見てると、人間どんなにアレでも運が良ければ人の親になれると自信をもらえますね」
親父「人をアレとか言うなッ! 運だけじゃないし! ……と、とにかく、早く出ていけ!」
幼馴染「お父さん、それらの行為は私が男に頼みました。男は酷いことなんて何をしてません。それでも男に出て行けと言うなら、私も出ていきます」
男・親父「「えええええっ!?」」
男「いやちょっと待て幼馴染悪いのは俺なんだし何もお前まで出ていく必要ないだろ」
親父「そうだぞ幼馴染? 悪いのはそこの馬鹿だけなんだから、お前は今まで通りこの家にいたらいいんだよ?」
男「そうそう! それに、出ていくってどこへ行くつもりなんだよ」
幼馴染「当然、男の家」
男・親父「「ダメェェェェェェェ!!!」」
親父「絶対ダメ! ダメのダメダメ! こんなのの家にいたら、一発でわしの大事な幼馴染ちゃんが妊娠しちゃう!」
男「うわ、このおっさん超きめぇ」
親父「てめぇ! ちゃんと援護射撃しろや!」
男「ああすいません、あまりに気持ち悪くて。じゃあ我慢して援護します」
親父「だから、お前はイチイチ一言多いんだよッ!」
男「こほん。……えっとな、幼馴染? ほら、年頃の男女が、その、一緒に住むとなると……ほら、色々問題があるから。な?」
親父「ほら! ほーら! こいつこんなエロい! こんなエロい奴と一緒に住むなんて馬鹿な考え捨てて、今まで通りパパと一緒にいよ? な?」
男「あ、親父さんちょっと耳塞いで超きめぇ上に馬鹿丸出し。そして一人称がパパ」
親父「早いッ! 塞ぐ時間を寄越せ! いいじゃん、パパ!」
男「まあいいんですけど、人には分相応というものがありますから」
親父「お前、『このおっさんまるで似合ってないのにパパとか言ってる(笑)』って暗に言ってるだろ!?」
男「直接言わないだけ偉いと思いませんか?」
親父「否定しろッ!」
親父「ああもうこの野郎マジ腹立つ! いいか、お前が幼馴染と結婚したらわしがお前の親になんだぞ! なのにそんな態度でいいのか!?」
男「う」
親父「あ?」
幼馴染「…………」
親父「ああいや違う今のナシ今のナシ! ノーカン! ノーカンだから!」
幼馴染「…………///」
親父「イヤァァァァァァァ!!! わしの幼馴染がこの馬鹿との新婚生活を想像して赤くなってるゥゥゥゥゥ!!!」
男「本来なら幼馴染の愛らしさに目が行く場面だが、親父さんの馬鹿さ加減がそれを邪魔している。親父さん、ちょっとだけ部屋から出ていってくれません?」
親父「酷ッ! 幼馴染、ちょっとコイツになんとか言ってやってくれ!」
幼馴染「……子供は何人くらい欲しい?///」
親父「イヤァァァァァァァァァ!!!!! わしの言葉で意識しちゃうどころかさらに先いって子作りの算段をするとこまでいってるゥゥゥゥゥ!!!!?」
幼馴染「……一緒に住んだら、たくさんできちゃいそうだね///」
親父「そっ、そんなのパパ絶対に許さんからね! そもそも一緒に暮らすことも許してないし! 結婚とか絶対の絶対に許さんし!」
幼馴染「……男の出禁を解除するなら、出て行きませんよ?」
親父「ぐ、む……し、しかし」
幼馴染「……朝から晩まで、だね、男?///」
親父「分かった、分かったからこれ以上精神攻撃はやめてくれ! わしのHPはもう0よ!」
男「いい年なのに嬉々としてアニメの引用とかするんですね」
親父「もうこれ以上わしを責めるなあああああ!!! あと、お腹空いたからご飯作ってくれ娘! 本当はそれ言いに来たの!」
男「逃げた」
幼馴染「逃げたね」
男「やれやれ。いじめすぎだぞ、幼馴染」
幼馴染「……やっぱ男は見抜いてた?」
男「なんとなくな。親父さんと交渉するために、わざと子作りの話したろ?」
幼馴染「ん。ああすれば、お父さんは折れると思ったから」
男「折れるっつーか、へし折った感じだったな。しかし、世話をかけたな」ナデナデ
幼馴染「男とご飯食べられなくなるの、嫌だから」
男「そか。奇特な奴だな、お前は」ナデナデ
幼馴染「……それに」
男「?」
幼馴染「んんん。なんでもない」
男「そか。ま、いいや。じゃ、飯作るか」
幼馴染「ん。手伝ってくれる、男?」
男「任せろ」
──居間──
幼馴染「今日のご飯はしょうが焼き」
親父「おお、美味そうだ。ただ、この食卓に異分子がいなけりゃもっと美味いに違いないのになあ」ジロリ
男「そう卑下しないでください、親父さん。誰も親父さんを邪魔者扱いなんてしてませんよ」
親父「なに都合よく解釈してんだよ! お前だよお前! 異分子さんはO・MA・E!」
幼馴染「いっぱい食べてね、男? 遠慮しておかわりしないとか、怒るからね?」
男「へーへー」
親父「あるェ? 何いい雰囲気作ってんの? 今はわしのターンじゃないの?」
幼馴染「食事の時に騒がないでください、お父さん」
親父「ご、ごめんなさい」
男「無様」
親父「てめェ! そういうことを言う時は普通聞こえないように言わね!? なんで真っ直ぐわしの目を見てはっきり言えるの!? 逆になんか嬉しいよ!」
男「いや、そんなM宣言されても困ります」
親父「してねーし! 野郎にそんな宣言しねーし! 幼馴染がわしを叩くとかならアリだけど!」
男「幼馴染、金槌ってこの家にあったっけ?」
親父「なにさらっと致命傷を与える鈍器を想起させてんの!? いやいやいや、そんなので叩かれたらさしものわしも死ぬし!」
幼馴染「お父さん、食事の時に騒がないでください」
親父「ご、ごめんなさい」
男「虫以下の学習能力」
親父「だから、なんでそういうことを人の目を見て言えんだよ!? ていうかさっきのは明らかにお前のせいだろーが!」
幼馴染「お父さん」
親父「す、すいません……」
男「虫未満の学習能力」
親父「とうとう虫に負けちゃったよ! どうしてくれんだよ! ていうかなんだよこの一連の流れ! 明らかにわしいじめだろ! 年長者は大事にしろよ!」
男「さくせん:おっさんだいじに」
幼馴染「ん。分かった」
親父「分からないで! いや大事にしてもらえるのは嬉しいけどトルネコと同じカテゴリに入れられるのはなんか辛い!」
男「大丈夫。一般兵は普通の鎧なのに、どういうことか一人だけピンク色の鎧に身を包んでるおっさんも同じカテゴリです」
親父「ピンクおっさん……? ライアンのことか……ライアンのことかーーーっ!!!」
幼馴染「しょうが焼きおいしい、男?」
男「ああ。幼馴染は料理上手だな」
幼馴染「普通だよ。……でも、嬉しいな?」
親父「あるェ? わしがスーパーおっさんになるところなのに見なくていいの? ていうか何いい雰囲気作ってるの? ここわしの家だよ? わしがせっせとお金稼いで建てた家だよ?」
幼馴染「お父さんも、しょうが焼き美味しいですか?」
親父「あ、おいしいおいしいー☆ミ」
男「…………」
親父「悲しそうな目でこっち見てないで、なんか言えよッ!」
男「道化」
親父「もうちょっと優しく! おっさんをもっとだいじに!」
親父「げふー。腹一杯だ。あ、男、そこのリモコン取って」
男「はい、どうぞ」
親父「さんくす。……あー、ドラマとニュースばっかだ。つまんね。ニコニコでも覗くか」
幼馴染「お父さん、締め切りが近いってこの前言ってたような」
親父「あっお腹痛い! だから部屋に戻るな! あと男、もう来んな!」
男「嫌です」
親父「ちょっとは躊躇しろよ! 早く帰ればか! お前ばーか!」
幼馴染「お父さん」
親父「ひぃ」ピュー
幼馴染「まったく……お父さんは」
男「面白いな、親父さんは」
幼馴染「普段は冗談なんて全然言わないんだけど、男が来るとあんな感じになっちゃうの。はしゃいでるのかな?」
男「全力で嫌われてるようだし、それはないだろ」
幼馴染「そんなことないよ? お父さん、本当に嫌いな人は相手にしないもん」
男「そなのか。そうだとしたら嬉しいけどな。俺は親父さん、結構好きだから」
幼馴染「んふふ、あんなに悪く言ってるのに。でも、それ聞いたらきっと喜ぶよ、お父さん。悪態つきながら、だろうけど」
男「あー、なんか想像できるな」
幼馴染「んふふ。ね?」
男「しかし、寝ちゃったせいでまるで勉強出来なかったな」
幼馴染「そだね。……ごめんね、寝ちゃって?」
男「最初に寝てた俺のせいだろ。まあ、なんでお前まで一緒に寝ちゃうか理解に苦しむが」
幼馴染「だって、気持ちよさそうだったし」
男「だからって、普通一緒には寝ないだろ。俺はお前の将来が不安だよ」
幼馴染「どゆこと?」
男「いや、だから、普通どんなに親しくても野郎と一緒には寝ないだろ、って話」
幼馴染「ああ。男は特別だから、へーきなの」
男「」
男「そ、そ、そなのか。ま、まあ、それなら、その、いいけど」
幼馴染「? またカクカクしてるよ?」
男「そ、その、cpuが熱暴走してて」
幼馴染「古いPSは大変だね」ナデナデ
男「そ、そうなんだ」
親父「死ね! 死ーね!」(小声)
幼馴染「お父さん」
親父「うわ見つかった」ピュー
幼馴染「もう、お父さんは……」
男「一回自室に行ったけど、寂しくなってこっちに戻ってきてたんだな。ドアの隙間から覗いてたみたいだ」
幼馴染「ごめんね?」
男「お前が謝ることでもないだろうに」ナデナデ
幼馴染「えへへ……」
男「今日はもう遅いから、勉強はまた明日だな」
幼馴染「あ、そだね。……ごめんね?」
男「だから、何度も何度も謝るな」グニー
幼馴染「ほっへ、ほっへひっはははひへ(ほっぺ、ほっぺ引っ張らないで)」
男「まったく。じゃ、俺帰るな。親父さんによろしく言っといて」
幼馴染「あ、帰っちゃうんだ」ションボリ
男「あ、う、うん。いや、その、どうせまた明日会うだろ」
幼馴染「……うん、そだね。……えへへ。また明日ね、男」バイバイ
──幼馴染宅 玄関前──
男「さっきバイバイってしてませんでしたっけ」
幼馴染「ん。でも、見送りたかったから」
男「見送るも何も、すぐ隣だろうに……」
幼馴染「そなんだけど。ダメ?」ションボリ
男「いや、ダメってことはないが……つか、そんなんで落ち込むな」ナデナデ
幼馴染「ん。それじゃ男、また明日ね?」バイバイ
男「んー。また明日」バイバイ
幼馴染「…………」バイバイ
男「……あの」
幼馴染「ん?」バイバイ
男「いつまで手を振っているのですか」
幼馴染「……男が家の中に入って、見えなくなるまで?」バイバイ
男「いいから。一回バイバイってしたら振らなくていいから」
幼馴染「……分かった」ションボリ
男「だーっ! 別に怒ってるとかじゃないから! してもいいから! だからんなことで悲しそうにするな!」
幼馴染「……えへへ。男は優しいね?」
男「勘弁しろよ……」
幼馴染「えへへへ。じゃあね、男」バイバイ
男「はいはい。じゃあな」バイバイ
幼馴染「あくび。……寝不足?」
男「んー。なんとなくネットをぷらぷらとね」
幼馴染「テストも近いし、あんまり夜更かししたらダメだよ?」
男「そだな。お前と違ってそんな頭よくないからな、俺は。ちっとは勉強しないとなあ」
幼馴染「別に、私は頭がよくないよ? 普通に授業を受けて、毎日ちょこっと復習してるだけ」
男「それができる奴を頭がいいっていうんだ」ナデナデ
幼馴染「……じゃ、私、頭いいんだ」
男「そゆこと」
幼馴染「…………」キラキラ
男「心なしか目が輝いてますね」
幼馴染「……頭がいいので」
男「なるほど」
幼馴染「じゃ、頭のいい私が、出来の悪い友人のため、勉強を教えてあげようか?」
男「あ、それはいいな。どうかこの頭の悪い子羊をお助けください」
幼馴染「ん。じゃあ、学校が終わったら私の部屋に集合。ね?」
男「了解。よろしくお願いします」
幼馴染「あ、ついでにご飯食べていく? おばさん、今日も遅いんでしょ?」
男「ん、まあ、そうなんだけど……いつもいつも世話になるのも悪いし、いいよ」
幼馴染「いいよ、気にしなくて。お父さんも男が来るの待ってるし」
男「嘘つけ。いっつもすげぇ威圧してくるじゃねえか、お前の親父さん」
幼馴染「……そかな? でも、言われてみれば、男がいる時は普段よりむーってしてるかも」
男「ほらな。あんま歓迎されてねーんだよ、俺は」
幼馴染「そんなことないよ? 男が来ない時、お父さんよく聞いてくるもん、男のこと」
男「ふーん。ま、いっか。じゃあ、今日は晩飯世話になるかな」
幼馴染「ん。……じゃ、頑張る」フンス
男「そんな気合を入れなくてもいいのに」
幼馴染「食べる人が増えると、料理人の血が騒ぐ」
男「誰が料理人だ、誰が」ムニムニ
幼馴染「ほっへひっはははひへ(ほっぺ引っ張らないで)」
──校門前──
男「着いた」
幼馴染「着いたね」
男「さて、今日も一日頑張るか」
幼馴染「……授業中に寝たらダメだよ?」
男「分かった、寝そうになってたら起こしてくれ」
幼馴染「席が離れてるから無理だよ」
男「残念だな」
幼馴染「うん」
──教室──
男「ふああ……んー。やっぱりというか当然というか、今日も授業中に寝てしまった。どうして歴史の授業というのはああも眠くなるのだろうか」
幼馴染「おはよ。お昼だよ?」
男「ああ、そだな」
幼馴染「はい、お弁当」
男「いつもサンキュな」
幼馴染「んんん。料理好きだし」
男「それでも、サンキュな」ナデナデ
幼馴染「……ん」
男「で、どこで食う?」
幼馴染「いつもの中庭でいいと思う」
男「そだな。今日は暖かいし、丁度いいな」
幼馴染「花粉がわんさか、だけど」
男「お互い花粉症じゃなくて助かったな」
幼馴染「くしゃみしてる人、いっぱいいるもんね」
男「そだな」
──中庭──
男「おお。桜がすごいな」
幼馴染「一面桜の花びらだね」
男「うちの学校の唯一といっていいアピールポイントだな」
幼馴染「そんなことないよ。他にもいいところあるよ?」
男「例えば?」
幼馴染「……授業中に寝てても叱られない?」
男「以後気をつけます」
幼馴染「じゃ、食べよっか?」
男「そだな。いただきます」
幼馴染「おあがりなさい」
男「ん、今日もうまそうだ」
幼馴染「…………」ドキドキ
男「んなじーっと見なくてもいいだろうに。どうせ今日もうまいに決まってるっての。味見したんだろ?」
幼馴染「したけど、絶対なんてことはないから。それに、もしまずくても男はおいしいって言うから。その嘘を暴くためにも、わずかな違和感も感じ取らないとダメだから」
男「どんだけ善人扱いされてんだ、俺は。まずけりゃまずいって言うぞ?」
幼馴染「はいはい」
男「コイツは……」
男「じゃ、とりあえずこの玉子焼きをば」
幼馴染「…………」ジーッ
男「あの、あまりじーっと見ないでいただけますか。緊張で箸が震える」
幼馴染「気にしないで」
男「無茶を言う。だが、幼馴染の願いだ、頑張って聞き入れよう」
幼馴染「…………」ジィーッ
男「……はぁ。あっ、あれはなんだ」ユビサシ
幼馴染「?」ユビノサキ キニナル
男「むしゃむしゃ」
幼馴染「あっ」
男「だいじょぶ。おいしい」
幼馴染「……騙された」シュン
男「やーいばーかばーか」ナデナデ
幼馴染「言動不一致」
幼馴染「反応をしっかり見たかったのに。どして見せてくれないの?」
男「あんまりじーっと見られると恥ずかしいんだよ」
幼馴染「そういうもの?」
男「そういうもの」
幼馴染「ふーん。それで、おいしい?」
男「おいしい」
幼馴染「……よかった」
男「そんな不安がることないのに。頭脳戦艦ガルなのに」
幼馴染「……がる?」
男「気にするな」
幼馴染「長年一緒にいるけど、いまだに男はよく分からないね」
男「ミステリアスで素敵だろう?」
幼馴染「……うん、今日もお弁当おいしい」
男「幼馴染のスルースキルが冴え渡る」
幼馴染「ふぅ。ごちそうさまでした」
男「今日も食い終わるの遅いな。俺より弁当箱小さいのに」
幼馴染「しょうがないよ。女の子だもん」
男「涙が出ちゃう?」
幼馴染「これは分かった。アタックナンバーワンだ」エッヘン
男「当たり」ナデナデ
幼馴染「……えへへ」
男「ふああ……あー、腹が膨れたら眠くなった」
幼馴染「授業中も寝てたのに」
男「社会の時間だけな。他の時間は起きてたぞ。偉かろう」
幼馴染「それが普通だよ。……あのね?」
男「ん?」
幼馴染「眠いならね、……膝枕、する?」
男「いいか? じゃあ頼む」
幼馴染「ん。じゃあ、ここに頭のっけて?」
男「ほい、っと」
幼馴染「ん。……どう? 硬くない?」
男「大丈夫、柔らかい」スリスリ
幼馴染「えっちだ」
男「そうなんだ」
幼馴染「えっちだえっちだ。……じゃ、チャイム鳴ったら起こすから、寝てていいよ」ナデナデ
男「分かった。んじゃ、ちょっと寝るわ。お休み、幼馴染」
幼馴染「お休み、男」ナデナデ
男「──……ん、ふあああああ……んあー」
幼馴染「あ、起きた。……おはよ?」スリスリ
男「あー。おはよ、幼馴染」
幼馴染「まだ寝ぼけてる。まだチャイム鳴ってないけど、もうちょっとしたら鳴るから、早めに目を覚ました方がいいよ?」スリスリ
男「そだな、あとで顔洗ってくるよ。ところで」
幼馴染「ん?」スリスリ
男「なんでさっきから俺の顔を両手で包み込んですりすりしてんだ」
幼馴染「……? ……ああ。目、覚めるかな、って」スリスリ
男「なるほど」
幼馴染「覚めた?」スリスリ
男「まだ」
幼馴染「寝ぼすけさんだね」スリスリ
男「そうなんだ」
男「さて、っと」ガバッ
幼馴染「わわっ」
男「顔洗ってくるよ。ついでに弁当箱も洗ってくるから、幼馴染は先に教室戻っててくれ」
幼馴染「いいよ、待ってるよ」
男「いーってば」
幼馴染「むぅ」
男「顔を洗いーの……弁当箱も洗いーの、トツギー……いや、やめとこう。とにかく、終わり! 目も覚めた!」
男「急いで教室に戻ろう、と思ったのに。なんでまだ中庭にいる」
幼馴染「戻る、とは言ってないから」チョコン
男「なるほど」
幼馴染「あ。弁当箱洗ってくれて、ありがとう」ペコリ
男「作ってもらってるし、これくらいはな。こんなので感謝されても困る」
幼馴染「ご飯作るくらいで、感謝されても困る」
男「卑怯な」
幼馴染「だから、毎日ご飯食べに来てもいいよ?」
男「いや、流石にそれはね。気を使う」
幼馴染「気にしないでいいのに」
男「じゃ、戻るか」
幼馴染「ん」
男「ところで、次に時間なんだっけ?」
幼馴染「英語」
男「うわぁ」
幼馴染「苦手だよね、英語」
男「どうもね。なんかね。理解が及ばないね」
幼馴染「じゃ、今日の勉強会は英語にする?」
男「今から頭が痛くなってきた」
幼馴染「がんばれ、がんばれ」ナデナデ
男「頑張ります」
──教室──
男「無理でした」プシュー
幼馴染「頭から湯気出てる」
男「疲れた。よもや俺に当たろうとは。酷いもんだったよ」
幼馴染「そだね。でも、男は苦手なりに頑張った。私には分かるよ?」ナデナデ
男「ありがたい話だ。慰めてもらったことだし、今日はテスト勉強頑張るか!」
幼馴染「ん。じゃあ、私も張り切って教える」フンス
男「いや、そんな張り切らなくていいです」
幼馴染「…………」ションボリ
男「や、もうさっきの授業で俺の体力は0なんですよ」
幼馴染「ちぇ」
男「さっきのダメージが残っていたのか、気がつくと授業が終わっていた」
幼馴染「男、帰ろ?」
男「ああ、そだな」
──通学路──
幼馴染「あ、そだ。スーパーに寄ってっていい?」
男「ああ。晩飯の材料か?」
幼馴染「うん。それと、他にも色々」
男「おっけ。荷物持ちは任せろ」
幼馴染「ん。期待してる。……あ」
男「ん?」
幼馴染「ねこ」
男「へ? ……あ、本当だ」
幼馴染「ねこーねこー」トコトコ
男「おい」
幼馴染「ねこーねこー」コイコイ
猫「ふしゃー」
男「すげー威嚇してるぞ」
幼馴染「かわいい」
男「……そうか?」
猫「ふしゃー」
幼馴染「おいでおいで」
猫「ふしゃー」
男「全然だな……ふむ。猫、ちょっと来い」
猫「ふしゃ……にゃ? にゃー」トコトコ
男「来た」ナデナデ
幼馴染「なんで。ずるい」
猫「にゃー」
幼馴染「私もなでたい」
男「よしよし」ナデナデ
幼馴染「なでられたい、じゃなくて」
男「なんだ」
猫「にゃー」
男「じゃあ、押さえとくからなでてみ」ガシッ
猫「にゃっ!?」
幼馴染「ん」ワキワキ
猫「にゃーっ、にゃーっ!」
幼馴染「……はぁ。はぁ。はぁ」ドキドキ
猫「にゃっ、にゃっ!? にゃー! にゃー!」ジタバタ
男「…………」パッ
幼馴染「あ」
猫「にゃーっ!」
幼馴染「……逃げた」
男「逃げたな」
幼馴染「……わざと逃がした」ジワーッ
男「ちょ、ま、待て! 泣くな! 違う、あんまりにも嫌がってたから、つい!」
幼馴染「……なでたかった」プルプル
男「次! 次があったら絶対になでさせてやるから! だから泣かないでお願い!」
幼馴染「……本当?」
男「本当、本当!」ナデナデ
幼馴染「……じゃ、約束」ユビキリゲンマン
男「あ、ああ。約束だ」ハリセンボンノマス
幼馴染「ん。……でも、なでたかった」
男「代わりに俺でもなでとけ」
幼馴染「ん」ナデナデ
男「どうだ?」
幼馴染「……それほど悪くない」ナデナデ
男「その感想は予想外だ」
幼馴染「じゃ、スーパー、行こ?」
男「おお、切り替え早いな」
幼馴染「約束したから。次はなでる。ねこなでる」フンス
男「そんな猫が好きなら、家で飼えばいいのに」
幼馴染「……お父さん、猫アレルギー」
男「あー。ままならないなあ」
幼馴染「ままならない」ションボリ
男「ま、元気出せ。次はちゃんとするから」ナデナデ
幼馴染「ん。ところで」
男「ん?」ナデナデ
幼馴染「……ねこの毛、私の頭になすりつけてない?」
男「……シテナイヨ?」
幼馴染「もしねこの毛が私の頭についてたら、今日の勉強時間を倍にする」
男「つけましたごめんなさい勘弁してください」
幼馴染「……はぁ。男はしょうがないね?」
男「そうなんだ。しょうがないから許してくれ」
幼馴染「ん。しょうがないから許してあげる」
男「しょうがなくてよかった」
幼馴染「……しょうが、という言葉がゲシュタルト崩壊を」
男「しょうがないね」
幼馴染「ん、しょうがない。……そうだ、今日はしょうが焼きにしよう」
男「おお。あれおいしいよな」
幼馴染「ん。簡単だし、おいしいし。言うことなし」
男「今日の献立も決まったことだし、とっととスーパーに向かいますか」
幼馴染「ん」
──スーパー──
幼馴染「かご」
男「俺が持つよ」
幼馴染「んんん」プルプル
男「いや、んんんじゃなくて」
幼馴染「これくらいへーき」
男「いや、俺が持つ。性別:雄としてここは譲れない」
幼馴染「めんどくさい……じゃ、こういうのは?」
男「なるほど、二人で持つ、と」
幼馴染「重さも分散されるし、ちょうどいい」
男「しかし……なんというか」
幼馴染「?」
男(新婚さんみたい、とは言えないな。恥ずかしくて)
男「や、なんでもない」
幼馴染「ん。じゃ、野菜買お、野菜」
男「最近高いんじゃねえのか? よく知らないけど」
幼馴染「高い。キャベツが一玉248円。ありえない」プルプル
男「そんな震えるほど高いのか?」
幼馴染「例年より50円くらい高い。主婦には辛い」
男「学生だろ、お前は」フニフニ
幼馴染「台所を預かってるから。……ところで」
男「ん?」フニフニ
幼馴染「なんでまだ私のほっぺをふにふにしてるの?」
男「ん、ああ。なんか気持ちよくて」フニフニ
幼馴染「男はえっちだ」
男「そうなんだ」
幼馴染「えっちだえっちだ」
男「で、野菜はどうすんだ? 買わないのか?」
幼馴染「買う。……でも、少なめに」ヒョイヒョイ
男「高いもんな。あ、ピーマンは買わなくていいぞ? ほ、ほら、高いし?」
幼馴染「……子供?」
男「や、食べられるんだよ? ただ、あまりおいしくないなー……って、その、ね?」
幼馴染「…………」ヒョイヒョイ
男「あああああ」
幼馴染「男、ふぁいと」
男「ええい。くそ、頑張るさ」
幼馴染「ん、頑張れ。……んと、キャベツと、レタスと、それから……」
男「もやしだ。もやしパーティーをすべきだ。うっうー」
幼馴染「高い。もっと安い時があるから、今日はいい」
男「え、30円って高いのか?」
幼馴染「安い時は9円」
男「なるほど。あ、ニンジン」
幼馴染「」ビクッ
男「にんじん あります よ?」
幼馴染「にんじん いらない よ」
男「はいはい。幼馴染、ふぁいと」ヒョイヒョイ
幼馴染「…………」ムスー
男「無理なら俺が食うから。な?」
幼馴染「……んじゃ最初から買わなきゃいいのに」ムスー
男「はいはい。怒るない」フニフニ
幼馴染「怒ってないもん」ムスー
男「分かりやすいな、おまいは」フニフニ
幼馴染「分かりやすくないもん。怒ってないもん」ムスー
男「さて、次は何を買うかな」
幼馴染「…………」ソーッ
男「そこ。黙ってニンジンを戻すな」
幼馴染「戻してない」モドシモドシ
男「いや、せめて見つかったのなら手を止めろ」ソレヲモドシモドシ
幼馴染「…………」ムスー
男「はぁ……本当におまいはニンジン苦手な」
幼馴染「男だって、ピーマン苦手じゃん。子供みたい」
男「子供みたいな奴に子供と言われても痛くもかゆくもない」
幼馴染「今日の男のおかずはピーマン炒めにピーマンの肉詰め、それにピーマン汁だ」
男「ごめんなさい俺が悪かったですからどうか普通のご飯でお願いします」
幼馴染「男が私に勝てるわけがないんだよ」フンス
男「胃袋を人質に取られていると辛いゼ」
幼馴染「じゃあ、勝者の権利としてニンジンを破棄」モドシモドシ
男「しません」ソレヲモドシモドシ
幼馴染「……おいしくないのに」ムスー
男「んと、次は……肉か」
幼馴染「…………」ペタペタ
男「いや、胸の肉の話はしてない」
幼馴染「……一向に大きくならない。呪い?」
男「知らん」
幼馴染「まあ、いっか」
男「いいのか」
幼馴染「ん。使うあてもないし」
男「使おうか?」
幼馴染「小さいよ?」
男「それくらいの大きさが好きなんだ」
幼馴染「そなんだ」
男「ああ」
幼馴染「……そなんだ」
男「じゃない。どうして胸の話になった。晩飯の話だ」
幼馴染「豚肉、豚肉……あった。あ、半額。らっきー」ヒョイヒョイ
男「えらく大量に買うのな」
幼馴染「男がたくさん食べるだろうし。余れば冷凍すればいいし」
男「……ん、まあ、そうだな。……あのさ、食費」
幼馴染「いらない」キッパリ
男「せめて最後まで言わせてくれよ……」
幼馴染「ダメ。いらない。次言ったら怒る」
男「もう怒ってるじゃねえか」
幼馴染「だって、男は家族みたいなものなのに、食費入れるとか他人行儀なこと言うんだもん」ムスー
男「いや、でも厳密には違うのだから、金関係はしっかりしとかないといけないのでは」
幼馴染「…………」ムスー
男「……はい。そういうの気にせず飯を食らうぜ」
幼馴染「ん」
男「はぁ……変に頑固だよな、お前」ナデナデ
幼馴染「普通だよ」
男「さて。野菜買った、肉買った。とりあえず、今日買うのはこれくらいか?」
幼馴染「そだね。……あ」
男「ん?」
幼馴染「んんん」プルプル
男「何がだ。……ああ、なるほど」
幼馴染「んんん」プルプル
男「お菓子か。やっぱりお前も女の子なのな。どれ買うんだ?」ナデナデ
幼馴染「……いい?」
男「いいも何も、お前の財布だからな」
幼馴染「ん、んー……でもなあ。どうしてもってわけじゃないし、いらないよ」
男「……はぁ。で、どれが欲しかったんだ?」
幼馴染「買わないから、いい」
男「どれだ」
幼馴染「……ましまろ」
男「ん」ヒョイ
幼馴染「あ」
男「俺も偶然食いたくなったの」
幼馴染「……うそつき」
男「そうなんだ」
幼馴染「……それで、男が本当にほしいお菓子はどれ?」
男「や、俺は別に」
幼馴染「ダメ。私が食べたいの買ったんだから、男のも買わないと」
男「……えーと、じゃあ、……えっと、幼馴染が好きな菓子って」
幼馴染「今は男が食べたいお菓子を選ぶ番」
男「はぁ……。んじゃ、このせんべいを」
幼馴染「……特価品から選んでない?」
男「え、選んでない」
幼馴染「…………」ジーッ
男「ああもう、選んだけどそこそこ好きだからいいの!」
幼馴染「やれやれ」
店員<マイドアリガトウサギ!
男「……うさぎ?」
幼馴染「いっぱい買えた。……じゃ、男はこっち持って」
男「待て。一回両方寄こせ」
幼馴染「断る」
男「断るな。ほれ、貸せ」
幼馴染「…………」ムー
男「んーと……やっぱ軽い方持たせようとしたか。野郎には重いの持たせておけばいいんだよ」ヒョイ
幼馴染「……私の買い物に付きあわせたんだし」
男「知るか。ほれ、軽い方」
幼馴染「…………」ムー
男「ほら、怒ってないで帰るぞ」
幼馴染「……勉強、たくさんいじめてやる」
男「勘弁して」
男「さて、幼馴染の家に着いたわけだが」
幼馴染「冷蔵庫に入れたいから、一回うちに来て」
男「だよね」
──幼馴染宅──
親父「ん、帰ったか幼馴染……なんだ、隣のドラ息子も一緒か」
男「いや、そうでもない」
親父「いやいやいや、いるだろ! いま本人が返事したろ!」
幼馴染「んじゃ男、こっち来て?」
男「ん」
親父「ふん……幼馴染、気をつけろ。二人っきりになった途端、そこの馬鹿に襲われるかもしれないぞ」
男「父親の許可を得た」
親父「違うッ! ええい腹立つ、貴様には一生許可などやらんからなッ!」
幼馴染「お父さん、うるさいです」
親父「」
男「落ち込むなよ、親父さん」
親父「お、落ち込んでなどおらんわッ! そもそも貴様に親父呼ばわりされる覚えはないッ!」
男「パパと呼べと? うわこのおっさん超気持ち悪い」
親父「んなこと頼んどらんッ! ああこの小僧本気で腹立つ! 死ねばいいのに!」
幼馴染「お父さん、冗談でも死ねとか言ったらダメです」
親父「え、あ、はい、ごめんなさい……」シュン
男「……ぷっ、くくっ」
親父「な、何を吹き出しているか! 言いたいことがあるならはっきり言え!」
男「娘に叱られてシュンとなってるいい年したおっさんが愉快で仕方がない。動画で保存して繰り返し見て笑いたい」
親父「はっきり言えとは言ったが多少はオブラートに包めッ! ええい、貴様など出ていけッ!」
幼馴染「お父さん」
親父「え、でもだって、こいつが……」
幼馴染「お父さん」ズイッ
親父「……わ、わし、ちょっと仕事があるの思い出したから仕事部屋にいるな! 怖くて逃げたとかじゃないからな!」ピュー
男「すげぇ、いい大人が娘の迫力に負けて逃げた」
幼馴染「まったく、お父さんは……」
男「いつもあんな感じだな、親父さん」
幼馴染「男がいない時は、普通なんだけどね。じゃ、野菜とか冷蔵庫に入れちゃおうか」
男「そだな」
男「完了ー」
幼馴染「ん。それじゃ、晩ご飯の下ごしらえしてるから、先に私の部屋に行ってて?」
男「いや、手伝うよ」
幼馴染「簡単だからいいよ。先、行ってて?」
男「んー、そか。分かった」
──幼馴染部屋──
男「というわけで、やって来たわけだが……相変わらず色気のない部屋だな。もっと部屋全体ショッキングピンクで染めりゃいいのに」
男「……いや、落ち着かなすぎだな。部屋を漁るのもなんだし、漫画でも読んでるか」
男「んーと……あった、ドロヘドロ。何巻まで読んだっけ?」
幼馴染「お待たせ。……あれ?」
男「くー……ぐー……」
幼馴染「寝てる」
男「zzz……」
幼馴染「勉強しないと、って言ったのに」
男「ぐー……ぐー……」
幼馴染「……ぐっすり寝てる」
男「zzz」
幼馴染「……ふああ。んー。なんか私まで眠くなってきちゃった」
幼馴染「でも、ベッド占領されちゃってるし」
幼馴染「……んー。ま、いっか。男だし」
男(さて、目を覚ました俺なのだが)
幼馴染「くー……くー……」
男(なんで隣で幼馴染が寝てる)
幼馴染「ん……んや、んー……」
男(いや、それだけならまだいい。よくないが、まあいい。なんで俺に抱きついてんだ)
幼馴染「ん? んぅ? ……んー」
男(そのせいで一切身動きが取れない。あとなんかいい匂いがする。すげぇいい匂いがする)
幼馴染「ん……はふ。……ん♪」スリスリ
男「なんかすりすりしてきた!」
幼馴染「んぅ? ……んー。……ふああ。おはよ、男」
男「あ、ああ、おはよう」
幼馴染「んー。寝ちゃった」
男「いや、寝ちゃったじゃなくて。なんで俺に抱きついて寝てんだ」
幼馴染「ん? んー……男だし、いいかな、って」
男「いいかな、って……よくないだろ」
幼馴染「なんで?」
男「な、なんでって、そりゃその、男女七歳にして席を同じゅうせずというかなんというか、その」
幼馴染「男とだったら、別にいいと思うよ?」
男「え、ええと……そうなのか?」
幼馴染「男は、私と一緒に寝るの、嫌?」
男「まさか!」
幼馴染「ん。じゃ、別にいいじゃない」
男「……いいのか? いかん、なんかよく分からなくなってきた」
幼馴染「ふああ……。まだちょっと眠いな。もちょっと寝ていい?」
男「あ、いや、その……そうだ! ほら、勉強しないと」
幼馴染「んー……もちょっと寝てから。だめ?」コクビカシゲ
男「い……いいぃよ?」
幼馴染「ん」ダキツキ
男「な、なんで抱きつくのかな?」
幼馴染「二人で寝ると、ベッドが狭いから」スリスリ
男「そ、そっか。それなら仕方ないのか?」
幼馴染「ん。……なんでカクカクしてるの?」
男「そ、その、初期型のPSだから処理が遅いんだ」
幼馴染「人間だと思ってた」
男「俺もだ」
幼馴染「んふふ。……男にくっついてると、落ち着くね?」
男「俺は真逆だ」
幼馴染「一緒じゃない……」ムスー
男「そんなんで怒るな」ムニムニ
幼馴染「むー」
男「むーじゃねえ。ほら、寝るならさっさと寝ろ」ナデナデ
幼馴染「ん。……じゃ、私が寝るまで、なでていてね?」
男「ずっとですか」ナデナデ
幼馴染「なんか落ち着くの。なんでだろ」
男「俺の手から落ち着けビームが出てるからだ」
幼馴染「そっか。じゃ、そのビーム出しながらなでてね?」
男「しまった、選択肢を誤ったせいで幼馴染が寝るまでなでる羽目に」
幼馴染「がんばれ、がんばれ」スリスリ
男(なんかまた頬ずりされた。幼馴染の頬ずりマジヤバイ。超柔らかくって温かい。何これ死ぬる)
幼馴染「……ん。ん。……ね、男」
男「な、なんだ?」
幼馴染「……呼んだだけー」ニコッ
男(死ぬる。このままでは確実に死ぬる)
男「と、とにかく、お前が寝るまでなでてるから、もう寝れ」ナデナデ
幼馴染「ん。ね、男」
男「ん?」
幼馴染「お休み」
男「……ああ、お休み」
男(幼馴染のお休みマジ可愛い。いかん、幸せすぎて顔がにやける)
男(そして気がつくと俺まで寝てる罠)
男(時計を見ると時刻は8時を少し過ぎてる。腹も空いた。そろそろ幼馴染を起こさないと)
男(と思いつつなんとはなしに視線をドアの方に向けると、なんか鬼みたいな顔がドアの隙間からこっちを覗いてる)
男(一瞬叫びそうになったが、よく見たら幼馴染の親父だった。よかった)
男(いやよくない)
男(今の状況を確認してみよう。幼馴染と抱き合って寝てるところを、親父さんに見つかった。いかん、殺される)
幼馴染「……ん、んぅ」チュッ
親父「!!?」
男(そしてこの状況でさらに幼馴染が、無意識で、だろうが、俺の頬にキスをするというサプライズ油を火に投下。嬉しいけれど、こいつはマズイ)
親父「…………」ゴゴゴゴゴゴ
男(なんかドアの隙間の鬼が泣いてる気がする。そしてものすごい殺気も感じる。これは非常にヤクイ)
幼馴染「……ん。……ん、ふああああ。……あ、男だ」ギュー
親父「!!?」
男「あ、お、おはよう、幼馴染」
幼馴染「おはよ、男。……目が覚めてすぐ男がいるって、いいね」ギュー
男「そ、そか。そ、それより、その、抱きつくのはどうかと思いますよ?」
男(見てるからドアの隙間から鬼が見てるから気づいて幼馴染!)
幼馴染「んー。もちょっとしたら完全に目覚ますから、もちょっと抱っこ」ギュギュー
男「そ、そうか。もう少ししたら離れるなら大丈夫だな」
男(ということだ親父さん、もう少しだけ我慢してください!)
幼馴染「……あと2時間くらい」
親父「長ぇよッ!」
男「あ」
幼馴染「……お父さん?」
親父「あ、いや……こほん。男くん、嫁入り前の幼馴染に、なんてことをしてくれたんだ」
男「あ、いや、これは、その」
親父「言い訳か? 情けないな」
男「覗いてた奴の台詞とは思えないけど……確かに情けないですね」
親父「お前は一言多いッ! ……こほん。とにかく、貴様はこの家に立ち入り禁止だ。早く出ていけ!」
幼馴染「! お父さん、そんなの嫌です」
親父「お前は黙ってろ!」
幼馴染「お父さん」ズイッ
親父「ひっ! で、でも、コイツがお前に酷いことしたし! そんなの許せないし!」
幼馴染「……男、私に何かしたの?」
男「へ? いや、何かと言われても、頭なでて抱っこしたくらい……か?」
親父「ほら! ほーら! 超エッチなことしてんじゃん! ばーかばーか! 死ね!」
男「親父さんを見てると、人間どんなにアレでも運が良ければ人の親になれると自信をもらえますね」
親父「人をアレとか言うなッ! 運だけじゃないし! ……と、とにかく、早く出ていけ!」
幼馴染「お父さん、それらの行為は私が男に頼みました。男は酷いことなんて何をしてません。それでも男に出て行けと言うなら、私も出ていきます」
男・親父「「えええええっ!?」」
男「いやちょっと待て幼馴染悪いのは俺なんだし何もお前まで出ていく必要ないだろ」
親父「そうだぞ幼馴染? 悪いのはそこの馬鹿だけなんだから、お前は今まで通りこの家にいたらいいんだよ?」
男「そうそう! それに、出ていくってどこへ行くつもりなんだよ」
幼馴染「当然、男の家」
男・親父「「ダメェェェェェェェ!!!」」
親父「絶対ダメ! ダメのダメダメ! こんなのの家にいたら、一発でわしの大事な幼馴染ちゃんが妊娠しちゃう!」
男「うわ、このおっさん超きめぇ」
親父「てめぇ! ちゃんと援護射撃しろや!」
男「ああすいません、あまりに気持ち悪くて。じゃあ我慢して援護します」
親父「だから、お前はイチイチ一言多いんだよッ!」
男「こほん。……えっとな、幼馴染? ほら、年頃の男女が、その、一緒に住むとなると……ほら、色々問題があるから。な?」
親父「ほら! ほーら! こいつこんなエロい! こんなエロい奴と一緒に住むなんて馬鹿な考え捨てて、今まで通りパパと一緒にいよ? な?」
男「あ、親父さんちょっと耳塞いで超きめぇ上に馬鹿丸出し。そして一人称がパパ」
親父「早いッ! 塞ぐ時間を寄越せ! いいじゃん、パパ!」
男「まあいいんですけど、人には分相応というものがありますから」
親父「お前、『このおっさんまるで似合ってないのにパパとか言ってる(笑)』って暗に言ってるだろ!?」
男「直接言わないだけ偉いと思いませんか?」
親父「否定しろッ!」
親父「ああもうこの野郎マジ腹立つ! いいか、お前が幼馴染と結婚したらわしがお前の親になんだぞ! なのにそんな態度でいいのか!?」
男「う」
親父「あ?」
幼馴染「…………」
親父「ああいや違う今のナシ今のナシ! ノーカン! ノーカンだから!」
幼馴染「…………///」
親父「イヤァァァァァァァ!!! わしの幼馴染がこの馬鹿との新婚生活を想像して赤くなってるゥゥゥゥゥ!!!」
男「本来なら幼馴染の愛らしさに目が行く場面だが、親父さんの馬鹿さ加減がそれを邪魔している。親父さん、ちょっとだけ部屋から出ていってくれません?」
親父「酷ッ! 幼馴染、ちょっとコイツになんとか言ってやってくれ!」
幼馴染「……子供は何人くらい欲しい?///」
親父「イヤァァァァァァァァァ!!!!! わしの言葉で意識しちゃうどころかさらに先いって子作りの算段をするとこまでいってるゥゥゥゥゥ!!!!?」
幼馴染「……一緒に住んだら、たくさんできちゃいそうだね///」
親父「そっ、そんなのパパ絶対に許さんからね! そもそも一緒に暮らすことも許してないし! 結婚とか絶対の絶対に許さんし!」
幼馴染「……男の出禁を解除するなら、出て行きませんよ?」
親父「ぐ、む……し、しかし」
幼馴染「……朝から晩まで、だね、男?///」
親父「分かった、分かったからこれ以上精神攻撃はやめてくれ! わしのHPはもう0よ!」
男「いい年なのに嬉々としてアニメの引用とかするんですね」
親父「もうこれ以上わしを責めるなあああああ!!! あと、お腹空いたからご飯作ってくれ娘! 本当はそれ言いに来たの!」
男「逃げた」
幼馴染「逃げたね」
男「やれやれ。いじめすぎだぞ、幼馴染」
幼馴染「……やっぱ男は見抜いてた?」
男「なんとなくな。親父さんと交渉するために、わざと子作りの話したろ?」
幼馴染「ん。ああすれば、お父さんは折れると思ったから」
男「折れるっつーか、へし折った感じだったな。しかし、世話をかけたな」ナデナデ
幼馴染「男とご飯食べられなくなるの、嫌だから」
男「そか。奇特な奴だな、お前は」ナデナデ
幼馴染「……それに」
男「?」
幼馴染「んんん。なんでもない」
男「そか。ま、いいや。じゃ、飯作るか」
幼馴染「ん。手伝ってくれる、男?」
男「任せろ」
──居間──
幼馴染「今日のご飯はしょうが焼き」
親父「おお、美味そうだ。ただ、この食卓に異分子がいなけりゃもっと美味いに違いないのになあ」ジロリ
男「そう卑下しないでください、親父さん。誰も親父さんを邪魔者扱いなんてしてませんよ」
親父「なに都合よく解釈してんだよ! お前だよお前! 異分子さんはO・MA・E!」
幼馴染「いっぱい食べてね、男? 遠慮しておかわりしないとか、怒るからね?」
男「へーへー」
親父「あるェ? 何いい雰囲気作ってんの? 今はわしのターンじゃないの?」
幼馴染「食事の時に騒がないでください、お父さん」
親父「ご、ごめんなさい」
男「無様」
親父「てめェ! そういうことを言う時は普通聞こえないように言わね!? なんで真っ直ぐわしの目を見てはっきり言えるの!? 逆になんか嬉しいよ!」
男「いや、そんなM宣言されても困ります」
親父「してねーし! 野郎にそんな宣言しねーし! 幼馴染がわしを叩くとかならアリだけど!」
男「幼馴染、金槌ってこの家にあったっけ?」
親父「なにさらっと致命傷を与える鈍器を想起させてんの!? いやいやいや、そんなので叩かれたらさしものわしも死ぬし!」
幼馴染「お父さん、食事の時に騒がないでください」
親父「ご、ごめんなさい」
男「虫以下の学習能力」
親父「だから、なんでそういうことを人の目を見て言えんだよ!? ていうかさっきのは明らかにお前のせいだろーが!」
幼馴染「お父さん」
親父「す、すいません……」
男「虫未満の学習能力」
親父「とうとう虫に負けちゃったよ! どうしてくれんだよ! ていうかなんだよこの一連の流れ! 明らかにわしいじめだろ! 年長者は大事にしろよ!」
男「さくせん:おっさんだいじに」
幼馴染「ん。分かった」
親父「分からないで! いや大事にしてもらえるのは嬉しいけどトルネコと同じカテゴリに入れられるのはなんか辛い!」
男「大丈夫。一般兵は普通の鎧なのに、どういうことか一人だけピンク色の鎧に身を包んでるおっさんも同じカテゴリです」
親父「ピンクおっさん……? ライアンのことか……ライアンのことかーーーっ!!!」
幼馴染「しょうが焼きおいしい、男?」
男「ああ。幼馴染は料理上手だな」
幼馴染「普通だよ。……でも、嬉しいな?」
親父「あるェ? わしがスーパーおっさんになるところなのに見なくていいの? ていうか何いい雰囲気作ってるの? ここわしの家だよ? わしがせっせとお金稼いで建てた家だよ?」
幼馴染「お父さんも、しょうが焼き美味しいですか?」
親父「あ、おいしいおいしいー☆ミ」
男「…………」
親父「悲しそうな目でこっち見てないで、なんか言えよッ!」
男「道化」
親父「もうちょっと優しく! おっさんをもっとだいじに!」
親父「げふー。腹一杯だ。あ、男、そこのリモコン取って」
男「はい、どうぞ」
親父「さんくす。……あー、ドラマとニュースばっかだ。つまんね。ニコニコでも覗くか」
幼馴染「お父さん、締め切りが近いってこの前言ってたような」
親父「あっお腹痛い! だから部屋に戻るな! あと男、もう来んな!」
男「嫌です」
親父「ちょっとは躊躇しろよ! 早く帰ればか! お前ばーか!」
幼馴染「お父さん」
親父「ひぃ」ピュー
幼馴染「まったく……お父さんは」
男「面白いな、親父さんは」
幼馴染「普段は冗談なんて全然言わないんだけど、男が来るとあんな感じになっちゃうの。はしゃいでるのかな?」
男「全力で嫌われてるようだし、それはないだろ」
幼馴染「そんなことないよ? お父さん、本当に嫌いな人は相手にしないもん」
男「そなのか。そうだとしたら嬉しいけどな。俺は親父さん、結構好きだから」
幼馴染「んふふ、あんなに悪く言ってるのに。でも、それ聞いたらきっと喜ぶよ、お父さん。悪態つきながら、だろうけど」
男「あー、なんか想像できるな」
幼馴染「んふふ。ね?」
男「しかし、寝ちゃったせいでまるで勉強出来なかったな」
幼馴染「そだね。……ごめんね、寝ちゃって?」
男「最初に寝てた俺のせいだろ。まあ、なんでお前まで一緒に寝ちゃうか理解に苦しむが」
幼馴染「だって、気持ちよさそうだったし」
男「だからって、普通一緒には寝ないだろ。俺はお前の将来が不安だよ」
幼馴染「どゆこと?」
男「いや、だから、普通どんなに親しくても野郎と一緒には寝ないだろ、って話」
幼馴染「ああ。男は特別だから、へーきなの」
男「」
男「そ、そ、そなのか。ま、まあ、それなら、その、いいけど」
幼馴染「? またカクカクしてるよ?」
男「そ、その、cpuが熱暴走してて」
幼馴染「古いPSは大変だね」ナデナデ
男「そ、そうなんだ」
親父「死ね! 死ーね!」(小声)
幼馴染「お父さん」
親父「うわ見つかった」ピュー
幼馴染「もう、お父さんは……」
男「一回自室に行ったけど、寂しくなってこっちに戻ってきてたんだな。ドアの隙間から覗いてたみたいだ」
幼馴染「ごめんね?」
男「お前が謝ることでもないだろうに」ナデナデ
幼馴染「えへへ……」
男「今日はもう遅いから、勉強はまた明日だな」
幼馴染「あ、そだね。……ごめんね?」
男「だから、何度も何度も謝るな」グニー
幼馴染「ほっへ、ほっへひっはははひへ(ほっぺ、ほっぺ引っ張らないで)」
男「まったく。じゃ、俺帰るな。親父さんによろしく言っといて」
幼馴染「あ、帰っちゃうんだ」ションボリ
男「あ、う、うん。いや、その、どうせまた明日会うだろ」
幼馴染「……うん、そだね。……えへへ。また明日ね、男」バイバイ
──幼馴染宅 玄関前──
男「さっきバイバイってしてませんでしたっけ」
幼馴染「ん。でも、見送りたかったから」
男「見送るも何も、すぐ隣だろうに……」
幼馴染「そなんだけど。ダメ?」ションボリ
男「いや、ダメってことはないが……つか、そんなんで落ち込むな」ナデナデ
幼馴染「ん。それじゃ男、また明日ね?」バイバイ
男「んー。また明日」バイバイ
幼馴染「…………」バイバイ
男「……あの」
幼馴染「ん?」バイバイ
男「いつまで手を振っているのですか」
幼馴染「……男が家の中に入って、見えなくなるまで?」バイバイ
男「いいから。一回バイバイってしたら振らなくていいから」
幼馴染「……分かった」ションボリ
男「だーっ! 別に怒ってるとかじゃないから! してもいいから! だからんなことで悲しそうにするな!」
幼馴染「……えへへ。男は優しいね?」
男「勘弁しろよ……」
幼馴染「えへへへ。じゃあね、男」バイバイ
男「はいはい。じゃあな」バイバイ
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1番槍WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!111111
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