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2025年02月05日
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【ツンデレに最近太ったんじゃないの?って言われたら】
2011年07月20日
本屋をうろうろしてたら、ちなみがいたので頭をなでてみた。
「……これはびっくり。豚が私の頭をなでている」
豚。てっきり人間だと思っていたのだけど、俺は豚だったのか。これは新事実だ。
「初めまして、人間改め豚です。……ところで、俺の豚語は通じているのでしょうか?」
「……普通の人間には通じないが、私は天才なのでだいじょぶ」
「それは幸い。ところで、俺の将来はどうなるのでしょうか? やはり出荷?」
「……どなどなどーなーどーなー」
なんということだ。未来が何も見えない。
「……ていうか、太ったよね、タカシ」
「むぅ」
豚ごっこは終わりのようで、ちなみは俺の腹を指でぷにぷにと押した。
「そんな一見して分かるほど太ってるか?」
「……一見しては分からないけど、タカシ研究家の私には分かる。……2kgは太ってるに違いない」
「人を勝手に研究するない」
ちなみのほっぺをむいむい引っ張って抗議するが、まるで堪えた様子がない。
「……それで、実際はどのくらい太ったの?」
「知らん。体重計に乗る習慣がないもので」
「……全世界の女子に謝れ」
「ごめんなさい」
とりあえず代表してちなみに謝ってみる。
「……あと、ジュースもおごれ」
「なんでやねん」
ぺしんとちなみのおでこに軽くつっこむ。とはいえ、俺もノドは乾いている。……よし。
おでこを押さえて不満げにしてるちなみに来い来いと手招きすると、何の疑いもない顔でふらふら寄ってきたので一緒に本屋を出る。そしてそのまま近くの喫茶店へ移動。
「……なんでやねんからのおごり。……やはりタカシは侮れない」
「俺もノド乾いたからね」
「……なるほど、こうしてブクブクと肥え太るのか」
「非常に不愉快です」
「……不愉快の人、パフェも頼んでいい?」
「ダメです」
「……タカシの好きな気持ち悪い萌え動作をしてやるから」
「そんな前置きをされて、どうして俺が喜ぶと思うのだ」
「……お兄ちゃん、大好き」
「よぅし、全メニューおごってやろう!」(なでなで)
「……やはりタカシは今日もダメだ。というか、ダメじゃない日がない」
反論する材料が全くない。
「……まあ、全部おごられても食べきれないので、パフェだけにする」
というわけで、俺はアイスコーヒー、ちなみはチョコパフェを注文する。待ってる間何するかなと思ってると、ちなみが俺のすぐ隣に移動してきた。
「どしました」
「……実測」
「お?」
横合いからもふっと抱きつかれた。
「……ふぅむ。やはりいつもより肉付きがあるように思える」
「こ、これはさしもの俺も勘違いをしそうだ!」
「……かんちがいしないでよね贅肉の量を測っただけなんだからね?」
テンプレ通りなのにちっとも萌えない。チクショウ。
「……悲しそう。やーいばーかばーか」
「悲しさのあまり亜脱臼しそうだ」
「……亜人間だから?」
「普通の人間です! 亜じゃねえ!」
コイツは俺のボケにさらにボケを被せてくるから油断ならない。
「……タカシはゴブリンの間なら人気ありそう」
「亜から脱却したいです」
「……来世に期待?」
「そこまでのインターバルが長すぎるゼ……!」
などとちなみにいじめられていると、注文の品が運ばれてきた。俺の前にアイスコーヒー、そしてちなみの前に、
「おおおおお……」
パフェがででんと置かれる。あまりのオーラにちなみも思わず声が出ている。それにしても……美味そう感が半端ではない!
「な、なあちなみ。俺にも一口」
「絶対にあげない」
「…………」
「はぐはぐ。……おお、おおおおお」
美味さに打ち震えている。一方こちらは悔しさに打ち震えています。
「タカシ、タカシ」
「な、なんだ? くれるのか?」
「……はぐっ。……ああ、おいしい」
これみよがしに食べてるところを見せ付けられるだけでした。
「あの、ちなみさん。覚えてないかもしれないけれど、これ、俺のおごりなんだよ? なのに、俺には一口も食べさせてくれないの?」
「むぐむぐ。……あー」
口を開けてアイスを見せるだけとか……!
「もむもむ。タカシのおごりのパフェはとてもおいしい」
「……ずずず」
悔しさを紛らわすため、アイスコーヒーを飲む。うまい。……うまいけど! うまいけどさ!
「……食べたい?」
「いいのかっ!?」
「聞いただけ」
「…………」
「タカシの悔しそうな顔を肴に食べるパフェは格別だ。もぐもぐ」
仮に怨念が質量を持ったら、俺は即それに潰され死ぬことだろう。
「……どしても食べたい?」
「今度こそ本当かっ!?」
「……しょがない。じゃあ」
「やったあ! さっすがちなみ、世界が誇る貧乳とはまさにこのことだ」
「…………。タカシの口にパフェが入ることはないと思え」
「しまった! なんたるチア! 俺って奴はいつもこうだ! 貧乳が褒め言葉ではないと何故学習しない!」
「……今日もタカシは通常運行だ」
「はぁ……しょうがない。潔く諦めよう」
しょんぼりしたままアイスコーヒーを飲んでると、つんつんと服を引っ張られた。
「ん、なんだ?」
「……名案が浮かんだ」
「たぶんきっと絶対に名案じゃない」
俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみは話を続けた。
「……まず、タカシが私を抱っこする。次に、私がパフェを食べる。その際、パフェが冷たいので私の体温が若干下がる。タカシは私を抱っこしているので、それを感じることができる」
「はぁ」
「……結果として、タカシもパフェを食べたのと同じ現象を味わうことができる」
「えええええ!? なんて無茶な理論だ! だがちなみを抱っこすることに異論はないので是非やろう」
「……明らかに別目的で私を抱っこしようとしている。これだからえろやろうは」
「なななんのことか俺にはさっぱり! ていうか言い出したのお前だろ」
「……なんのことか私にはさっぱり。……いーから早く抱っこしろ」
「なんていい台詞なんだ。録音したいのでもう一度お願いします」
「……一回百万円」
そんなお金はないので、諦めてちなみを後ろから抱きしめる。
「ん、お前痩せたか?」
「……ちょこっと。暑いから。……でも、よく分かったね」
「お前が俺に抱きついて太ったかどうか分かるように、俺もお前を抱っこすりゃ分かるんだ」
「……頻繁に抱かれている」
「……いや、そうなんだけど。もうちょっと別の言い方だと人聞きも悪くないのでありがたいのですが」
「……頻繁に中に出され」
「明らかに別の方ですよね、それっ!?」
「……ふふん?」
「はぁ……いーから早くパフェを食え」
「……これだから早漏は」
「せっかち! せっかちって話ですよね!?」
「……やれやれ、そういう話になるとすぐあわあわする。……これだから童貞は」
悔しいのでちなみのつむじをむぎゅーっと押してやる。
「……やめろ。背が縮みそうだ」
「中学生や小学生どころか、幼稚園児に間違われてしまえ!」
「……幼稚園児に性的いたづらをする性犯罪者として捕まってしまえ」
「ままならないなあ」
「……まったくだ。……もぐもぐ」
そのような感じで、ぱくぱくとパフェを食べるちなみを後ろから抱っこしてました。
「……これはびっくり。豚が私の頭をなでている」
豚。てっきり人間だと思っていたのだけど、俺は豚だったのか。これは新事実だ。
「初めまして、人間改め豚です。……ところで、俺の豚語は通じているのでしょうか?」
「……普通の人間には通じないが、私は天才なのでだいじょぶ」
「それは幸い。ところで、俺の将来はどうなるのでしょうか? やはり出荷?」
「……どなどなどーなーどーなー」
なんということだ。未来が何も見えない。
「……ていうか、太ったよね、タカシ」
「むぅ」
豚ごっこは終わりのようで、ちなみは俺の腹を指でぷにぷにと押した。
「そんな一見して分かるほど太ってるか?」
「……一見しては分からないけど、タカシ研究家の私には分かる。……2kgは太ってるに違いない」
「人を勝手に研究するない」
ちなみのほっぺをむいむい引っ張って抗議するが、まるで堪えた様子がない。
「……それで、実際はどのくらい太ったの?」
「知らん。体重計に乗る習慣がないもので」
「……全世界の女子に謝れ」
「ごめんなさい」
とりあえず代表してちなみに謝ってみる。
「……あと、ジュースもおごれ」
「なんでやねん」
ぺしんとちなみのおでこに軽くつっこむ。とはいえ、俺もノドは乾いている。……よし。
おでこを押さえて不満げにしてるちなみに来い来いと手招きすると、何の疑いもない顔でふらふら寄ってきたので一緒に本屋を出る。そしてそのまま近くの喫茶店へ移動。
「……なんでやねんからのおごり。……やはりタカシは侮れない」
「俺もノド乾いたからね」
「……なるほど、こうしてブクブクと肥え太るのか」
「非常に不愉快です」
「……不愉快の人、パフェも頼んでいい?」
「ダメです」
「……タカシの好きな気持ち悪い萌え動作をしてやるから」
「そんな前置きをされて、どうして俺が喜ぶと思うのだ」
「……お兄ちゃん、大好き」
「よぅし、全メニューおごってやろう!」(なでなで)
「……やはりタカシは今日もダメだ。というか、ダメじゃない日がない」
反論する材料が全くない。
「……まあ、全部おごられても食べきれないので、パフェだけにする」
というわけで、俺はアイスコーヒー、ちなみはチョコパフェを注文する。待ってる間何するかなと思ってると、ちなみが俺のすぐ隣に移動してきた。
「どしました」
「……実測」
「お?」
横合いからもふっと抱きつかれた。
「……ふぅむ。やはりいつもより肉付きがあるように思える」
「こ、これはさしもの俺も勘違いをしそうだ!」
「……かんちがいしないでよね贅肉の量を測っただけなんだからね?」
テンプレ通りなのにちっとも萌えない。チクショウ。
「……悲しそう。やーいばーかばーか」
「悲しさのあまり亜脱臼しそうだ」
「……亜人間だから?」
「普通の人間です! 亜じゃねえ!」
コイツは俺のボケにさらにボケを被せてくるから油断ならない。
「……タカシはゴブリンの間なら人気ありそう」
「亜から脱却したいです」
「……来世に期待?」
「そこまでのインターバルが長すぎるゼ……!」
などとちなみにいじめられていると、注文の品が運ばれてきた。俺の前にアイスコーヒー、そしてちなみの前に、
「おおおおお……」
パフェがででんと置かれる。あまりのオーラにちなみも思わず声が出ている。それにしても……美味そう感が半端ではない!
「な、なあちなみ。俺にも一口」
「絶対にあげない」
「…………」
「はぐはぐ。……おお、おおおおお」
美味さに打ち震えている。一方こちらは悔しさに打ち震えています。
「タカシ、タカシ」
「な、なんだ? くれるのか?」
「……はぐっ。……ああ、おいしい」
これみよがしに食べてるところを見せ付けられるだけでした。
「あの、ちなみさん。覚えてないかもしれないけれど、これ、俺のおごりなんだよ? なのに、俺には一口も食べさせてくれないの?」
「むぐむぐ。……あー」
口を開けてアイスを見せるだけとか……!
「もむもむ。タカシのおごりのパフェはとてもおいしい」
「……ずずず」
悔しさを紛らわすため、アイスコーヒーを飲む。うまい。……うまいけど! うまいけどさ!
「……食べたい?」
「いいのかっ!?」
「聞いただけ」
「…………」
「タカシの悔しそうな顔を肴に食べるパフェは格別だ。もぐもぐ」
仮に怨念が質量を持ったら、俺は即それに潰され死ぬことだろう。
「……どしても食べたい?」
「今度こそ本当かっ!?」
「……しょがない。じゃあ」
「やったあ! さっすがちなみ、世界が誇る貧乳とはまさにこのことだ」
「…………。タカシの口にパフェが入ることはないと思え」
「しまった! なんたるチア! 俺って奴はいつもこうだ! 貧乳が褒め言葉ではないと何故学習しない!」
「……今日もタカシは通常運行だ」
「はぁ……しょうがない。潔く諦めよう」
しょんぼりしたままアイスコーヒーを飲んでると、つんつんと服を引っ張られた。
「ん、なんだ?」
「……名案が浮かんだ」
「たぶんきっと絶対に名案じゃない」
俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみは話を続けた。
「……まず、タカシが私を抱っこする。次に、私がパフェを食べる。その際、パフェが冷たいので私の体温が若干下がる。タカシは私を抱っこしているので、それを感じることができる」
「はぁ」
「……結果として、タカシもパフェを食べたのと同じ現象を味わうことができる」
「えええええ!? なんて無茶な理論だ! だがちなみを抱っこすることに異論はないので是非やろう」
「……明らかに別目的で私を抱っこしようとしている。これだからえろやろうは」
「なななんのことか俺にはさっぱり! ていうか言い出したのお前だろ」
「……なんのことか私にはさっぱり。……いーから早く抱っこしろ」
「なんていい台詞なんだ。録音したいのでもう一度お願いします」
「……一回百万円」
そんなお金はないので、諦めてちなみを後ろから抱きしめる。
「ん、お前痩せたか?」
「……ちょこっと。暑いから。……でも、よく分かったね」
「お前が俺に抱きついて太ったかどうか分かるように、俺もお前を抱っこすりゃ分かるんだ」
「……頻繁に抱かれている」
「……いや、そうなんだけど。もうちょっと別の言い方だと人聞きも悪くないのでありがたいのですが」
「……頻繁に中に出され」
「明らかに別の方ですよね、それっ!?」
「……ふふん?」
「はぁ……いーから早くパフェを食え」
「……これだから早漏は」
「せっかち! せっかちって話ですよね!?」
「……やれやれ、そういう話になるとすぐあわあわする。……これだから童貞は」
悔しいのでちなみのつむじをむぎゅーっと押してやる。
「……やめろ。背が縮みそうだ」
「中学生や小学生どころか、幼稚園児に間違われてしまえ!」
「……幼稚園児に性的いたづらをする性犯罪者として捕まってしまえ」
「ままならないなあ」
「……まったくだ。……もぐもぐ」
そのような感じで、ぱくぱくとパフェを食べるちなみを後ろから抱っこしてました。
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【三連休、一度も男と会えずじまいで終わりそうなツンデレ】
2011年07月19日
なんか急に欠員が出たとかで、この連休はずーっとバイトしてた。超疲れた。
そんな連休の最終日。その日は珍しく早めに上がれた。疲れたおっぱい! 疲れたおっぱい! と心の中で回復呪文を唱えながら家まで歩いてると、うなだれた様子のかなみが前から歩いてきた。
どうしたんだろう、と少し心配になっていると、かなみが顔をあげた。目が合った。なんかこっちに走ってきた。逃げる。
「逃げるなあああああ!!!」
「すいませんバイトのお金が入るのはまだ先なんです今はないんです助けてぇ!」
「人聞きの悪いこと叫ぶな、馬鹿!!!」
とりあえず公園があったので逃げ込む。しかし、バイトの疲れもあり、足がよろけて超無様に転んだところを捕まえられた。
「ぜーっ、ぜーっ……な、なんで逃げるのよ、馬鹿」
かなみは俺に馬乗りになり、襟を掴んだ。このまま絞め殺すのか!?
「いや、追いかけられると逃げる習性が俺の遺伝子には備わっていましてね」
「もー……無駄に疲れたじゃないの、馬鹿」
「いやはや、すいません」
「……それで、さ。なんで、ずーっとあたしを避けてたのよ」
「……はい?」
「だ、だから! ……この連休中さ。ずーっとあたしを無視してさ。携帯に連絡しても返事くんないし。メールしても無視するし」
「へ?」
「へ、じゃないわよ! わざとでしょ! わざと無視してたんでしょ! アンタなんかに無視されても平気だけど! 平気だけど! なんかムカつくじゃない!」
「いやいや痛い痛い」
襟を掴まれたまま激しく揺さぶられたため、頭が地面にがっつんがっつん当たって超痛い。しかし、ここが公園でよかった。地面が芝生だからまだ大丈夫だが、コンクリなら今頃脳がでろりと出ているに違いない。
「わははは」
「あに笑ってんのよ!」
自分の死体を想像し思わず笑ってしまったが、そんなタイミングではなかったために叱られた。
「や、失敬。ええとだな、ここ数日ずーっとバイトで家に帰ると疲れてバタンQという生活を繰り返していたのだ。結果、携帯の確認を怠っていたがために起こった悲劇ではなかろうか」
「え? ……そなの?」
「そうなの。毎日朝から晩までバイト漬けでな。いや、疲れた疲れた」
「……今までいっぱい悪口言われた腹いせに、無視してたんじゃないの?」
「するわけねーだろ馬鹿」
「あいたっ!」
かなみにデコピンしてやる。全く、変な勘違いをしおって。
「う~……痛いじゃないのよ」
「それくらい我慢しろ馬鹿。つーかだな、悪口を言ってたって自覚はあるのだな」
「う……そ、それは、まあ。……怒ってる?」
「怒りのあまり変身をあと一回残してるのに頭がエクレアみたいな状態のまま死んでしまいそうだ」
「どこのフリーザよっ! ていうか最後死んでるし!」
「しまった」
「しまったじゃないわよ……それで、結局のところ怒ってるの?」
「怒ってない」
「ホントに?」
「本当に。というか、お前と一緒にいて悪口言われるたびに怒ってたら身がもたねーよ」
「……なによ。それって、あたしがずーっとアンタの悪口言ってるみたいじゃないのよ」
「違わないのか?」
「ちが……わないけどさ。ふん。馬鹿。意地悪」
かなみは俺の顔に何度もチョップした。軽くだからいいが、結構痛い。
「割れます。顔が割れます」
「知らないわよ。あのさ、それでさ。今日もバイトだったの?」
「だったの。や、疲れた疲れた」
「そなんだ。……あ、あのさ、そのさ。ひっ、膝枕、したげよっか?」
…………。え?
「ちっ、違うのよ!? 勘違いしないでよね! なんか誤解して追いかけちゃったこととか今までいっぱい悪口言っちゃったとかそーゆーのの罪滅ぼしのためだけで!?」
かなみは顔を真っ赤にして、あわあわしながら言葉を並べた。
「あ、うん。まあ、その、なんちうか、してくれると嬉しいです」
「う、うん、うん。……じゃ、じゃあ、そこのベンチいこ」
そんなわけで、近くのベンチに二人して腰掛ける。時刻は宵闇迫る夕刻、人気はない。しかも、公園の木々がうまい具合に俺たちを道路から隠してくれている。
「じゃ、じゃあ、どぞ」
「う、うむ」
かなみの太ももに頭をのっける。ふにょっとして超気持ちいいのでこのまま寝てしまいそうです。
「ど、どう? 気持ちいー?」
「気持ちー。乳の脂肪が全部太ももにきているがための気持ちよさなのでしょうね」
「…………」
無言で頬を超つねられた。割と本気で取れるかと思った。
「嘘ですごめんなさい頬を取らないで!」
「ふんだ。ばか」
「でも、いつだって言ってるけど、俺はお前の貧乳具合が大好きですよ?」
「そんなの言われて喜ぶ女の子なんていないっ!」
「でも、お前は喜んでるよな」
「よっ、喜ぶわけないじゃない! な、なに言ってるのよ、ばかっ!」
「表情と口調は怒ってるけど、その頬の赤さを俺の目から隠せまい!」
「えっ!? ちっ、ちちちっ、違うわよ、これは夕日に照らされて赤く見えるだけなのっ! アンタに好きとか言われて喜ぶわけないじゃない!」
そう言ってる最中に、どんどん頬が赤くなっているのは指摘しない方がいいのだろうな。
「かなみは可愛いなあ」
なので、感想だけ言うことにした。
「かっ、可愛いとか言うなっ、ばかっ! えっち!」
「いていていて」
すると、沢山殴られたので言うんじゃなかった。
「はぁ……まったく、なんで殴られるって分かっててそーゆーコト言うかなあ」
「我慢できなかったんだろうね、きっと」
「自分のことなのに他人事みたいに……ほんっと、アンタって変な奴よね。ばーかばーか♪」
かなみは楽しそうに笑いながら俺の頬をうにうにと押した。
「かなみ」
「んー、なに?」
いつまでもその笑顔を見ていたいが、これだけは言っておかなければならない。
「また今度さ、一緒に遊びに行こうな」
「……ど、どしてもって言うなら、行ってやらないでもない」
かなみはまたしても顔を赤くして、明後日の方向を見ながらぽしょぽしょと呟くのだった。
そんな連休の最終日。その日は珍しく早めに上がれた。疲れたおっぱい! 疲れたおっぱい! と心の中で回復呪文を唱えながら家まで歩いてると、うなだれた様子のかなみが前から歩いてきた。
どうしたんだろう、と少し心配になっていると、かなみが顔をあげた。目が合った。なんかこっちに走ってきた。逃げる。
「逃げるなあああああ!!!」
「すいませんバイトのお金が入るのはまだ先なんです今はないんです助けてぇ!」
「人聞きの悪いこと叫ぶな、馬鹿!!!」
とりあえず公園があったので逃げ込む。しかし、バイトの疲れもあり、足がよろけて超無様に転んだところを捕まえられた。
「ぜーっ、ぜーっ……な、なんで逃げるのよ、馬鹿」
かなみは俺に馬乗りになり、襟を掴んだ。このまま絞め殺すのか!?
「いや、追いかけられると逃げる習性が俺の遺伝子には備わっていましてね」
「もー……無駄に疲れたじゃないの、馬鹿」
「いやはや、すいません」
「……それで、さ。なんで、ずーっとあたしを避けてたのよ」
「……はい?」
「だ、だから! ……この連休中さ。ずーっとあたしを無視してさ。携帯に連絡しても返事くんないし。メールしても無視するし」
「へ?」
「へ、じゃないわよ! わざとでしょ! わざと無視してたんでしょ! アンタなんかに無視されても平気だけど! 平気だけど! なんかムカつくじゃない!」
「いやいや痛い痛い」
襟を掴まれたまま激しく揺さぶられたため、頭が地面にがっつんがっつん当たって超痛い。しかし、ここが公園でよかった。地面が芝生だからまだ大丈夫だが、コンクリなら今頃脳がでろりと出ているに違いない。
「わははは」
「あに笑ってんのよ!」
自分の死体を想像し思わず笑ってしまったが、そんなタイミングではなかったために叱られた。
「や、失敬。ええとだな、ここ数日ずーっとバイトで家に帰ると疲れてバタンQという生活を繰り返していたのだ。結果、携帯の確認を怠っていたがために起こった悲劇ではなかろうか」
「え? ……そなの?」
「そうなの。毎日朝から晩までバイト漬けでな。いや、疲れた疲れた」
「……今までいっぱい悪口言われた腹いせに、無視してたんじゃないの?」
「するわけねーだろ馬鹿」
「あいたっ!」
かなみにデコピンしてやる。全く、変な勘違いをしおって。
「う~……痛いじゃないのよ」
「それくらい我慢しろ馬鹿。つーかだな、悪口を言ってたって自覚はあるのだな」
「う……そ、それは、まあ。……怒ってる?」
「怒りのあまり変身をあと一回残してるのに頭がエクレアみたいな状態のまま死んでしまいそうだ」
「どこのフリーザよっ! ていうか最後死んでるし!」
「しまった」
「しまったじゃないわよ……それで、結局のところ怒ってるの?」
「怒ってない」
「ホントに?」
「本当に。というか、お前と一緒にいて悪口言われるたびに怒ってたら身がもたねーよ」
「……なによ。それって、あたしがずーっとアンタの悪口言ってるみたいじゃないのよ」
「違わないのか?」
「ちが……わないけどさ。ふん。馬鹿。意地悪」
かなみは俺の顔に何度もチョップした。軽くだからいいが、結構痛い。
「割れます。顔が割れます」
「知らないわよ。あのさ、それでさ。今日もバイトだったの?」
「だったの。や、疲れた疲れた」
「そなんだ。……あ、あのさ、そのさ。ひっ、膝枕、したげよっか?」
…………。え?
「ちっ、違うのよ!? 勘違いしないでよね! なんか誤解して追いかけちゃったこととか今までいっぱい悪口言っちゃったとかそーゆーのの罪滅ぼしのためだけで!?」
かなみは顔を真っ赤にして、あわあわしながら言葉を並べた。
「あ、うん。まあ、その、なんちうか、してくれると嬉しいです」
「う、うん、うん。……じゃ、じゃあ、そこのベンチいこ」
そんなわけで、近くのベンチに二人して腰掛ける。時刻は宵闇迫る夕刻、人気はない。しかも、公園の木々がうまい具合に俺たちを道路から隠してくれている。
「じゃ、じゃあ、どぞ」
「う、うむ」
かなみの太ももに頭をのっける。ふにょっとして超気持ちいいのでこのまま寝てしまいそうです。
「ど、どう? 気持ちいー?」
「気持ちー。乳の脂肪が全部太ももにきているがための気持ちよさなのでしょうね」
「…………」
無言で頬を超つねられた。割と本気で取れるかと思った。
「嘘ですごめんなさい頬を取らないで!」
「ふんだ。ばか」
「でも、いつだって言ってるけど、俺はお前の貧乳具合が大好きですよ?」
「そんなの言われて喜ぶ女の子なんていないっ!」
「でも、お前は喜んでるよな」
「よっ、喜ぶわけないじゃない! な、なに言ってるのよ、ばかっ!」
「表情と口調は怒ってるけど、その頬の赤さを俺の目から隠せまい!」
「えっ!? ちっ、ちちちっ、違うわよ、これは夕日に照らされて赤く見えるだけなのっ! アンタに好きとか言われて喜ぶわけないじゃない!」
そう言ってる最中に、どんどん頬が赤くなっているのは指摘しない方がいいのだろうな。
「かなみは可愛いなあ」
なので、感想だけ言うことにした。
「かっ、可愛いとか言うなっ、ばかっ! えっち!」
「いていていて」
すると、沢山殴られたので言うんじゃなかった。
「はぁ……まったく、なんで殴られるって分かっててそーゆーコト言うかなあ」
「我慢できなかったんだろうね、きっと」
「自分のことなのに他人事みたいに……ほんっと、アンタって変な奴よね。ばーかばーか♪」
かなみは楽しそうに笑いながら俺の頬をうにうにと押した。
「かなみ」
「んー、なに?」
いつまでもその笑顔を見ていたいが、これだけは言っておかなければならない。
「また今度さ、一緒に遊びに行こうな」
「……ど、どしてもって言うなら、行ってやらないでもない」
かなみはまたしても顔を赤くして、明後日の方向を見ながらぽしょぽしょと呟くのだった。
【ツンデレ悪魔っ子 追加補足】
2011年07月17日
※前の話はこちら
「ところで、契約がどうとか言ってましたが、それはどうなりましたか」
家への道すがら、悪魔っ子に訊ねる。……べっ、別にその辺りのを全部後で書くつもりが忘れてたんじゃないからねっ! 推敲したのに見落としたんじゃないんだからっ!
「あっ、そうそう。簡単な話よ。アンタの魂をあたしにちょうだいって話」
「もう盗られてますが」
「人聞き悪いわねー……ちゃんと返したわよ。魂がないと動けないでしょ?」
「いや、知らない。そういうものなのか?」
「自分の体のことなのに分かんないの? ちゃんと魔法具の中で動いてるでしょ。人間って何も知らないのね。ばーかばーか」
悪魔っ子は俺の眉間に指をちょいんと押しあて、にひひと笑った。
「うわ、超可愛い。魂あげますから結婚してください」
「すっ、するかっ、ばかっ! 悪魔に結婚を申し込むな、ばかっ! ていうかそんな簡単に魂渡すなっ!」
素気無く断られた。悲しい。
「え、えと、なんだっけ……そ、そだ。え、えっと、返したけど、改めてあたしに魂を捧げてほしいの」
悪魔っ子は顔を赤くしながらおろおろしつつも、頑張って俺に話しかけた。
「なるほど話は分かった。だが断る」
「さっき魂やろうとした奴が何言ってんのよ……」
「そうだった。しょうがない、やるから結婚してください」
「だ、だからするわけないって言ってるでしょうが、ばかっ!」
この悪魔っ子はなかなかうんと言ってくれないので困る。ただ、まあ、その度に恥ずかしげに頬を染めるのでお兄さん大満足です。
「何をニヤニヤしてんのよ。気持ち悪いわねぇ……」
俺の満足顔は気持ち悪いらしいです。
「しかし、魂を渡したりなんかしたら、死んでしまうのではなかろうか」
「別に今すぐどうこうしようって話じゃないわよ。アンタが死ぬ時……つまり、アンタの魔法具が動かなくなった時に魂を貰うって話よ」
「なるほどそれなら構わない感じがするのでいいよって言いそうだがそう言った瞬間に殺されそうだなあ。……しまった、もう既にいいよって言ってしまったつまり殺される助けてぇ!」
「長い叫ぶな踊るなあッ!」
怒られたうえに殴られた。
「俺の名誉のために一応言っておくが、別に踊っていたのではなく、逃げようとしたが身体が恐怖でうまく動かず、結果的に奇怪なダンスを披露してしまっただけです」
「どっちにしろ、アンタの名誉なんて元から地に落ちてるわよ……」
それは考えもしなかった。残念。
「無理矢理奪ったりなんてしないわよ。アンタが能動的にあたしに捧げないと意味ないの」
「どう違うの? てか、魂とか普通に言ってるけど、具体的にどういうものなの?」
「んー……」
悪魔っ子はあごに手をあて、しばし思案に耽った。
「悪魔にとって、ごちそうかな。人間の魂を食べるとね、悪魔は力が増すの」
「ほう。マッスリャーになるのだな」
「……いや、別に筋力が増すわけじゃないから。魔力が増すの。無理矢理刈り取った魂でもいいんだけど、捧げられた魂ならその価値はさらに上がるの」
「ふーん。なんで?」
「捧げられた者は地獄行き確定になるから、その苦痛が悪魔の力になるからじゃない? ……あっ」
たたたたいへんなことをきいてしまった。
「ぼく、たましいをささげません」
「う、嘘よ、嘘! 魂を捧げたら天国行きって噂よ?」
「やめておきます」
「魂捧げないと殺す」
どこからか現れた超鋭い感じの巨大な鎌がどうして僕の首元で鈍く光っているのですか。
「どっ、どど、恫喝ってアリなの?」
「……ナシよ。ああもうっ!」
悪魔っ子が悔しげに歯噛みすると、鎌はぽふりと煙をあげて消えた。
「あっ、そうだ! あたしに魂捧げないと、魔力補充してやんないわよ? そしたら魔力尽きて死んじゃうわよ?」
「な、なんて酷いことを! この悪魔! 悪魔め!」
「……いや、悪魔だし」
「そういやそうだったな。しっぽとか羽とか八重歯とかあるし。あと貧乳でもあるし」
「後半悪魔関係ないっ! 今すぐブチ殺すわよっ!?」
貧乳が怒った。超怖え。
「と、とにかく。契約をして後で地獄に行くか、契約しないで魔力切れで死ぬか、好きな方を選びなさい」
「酷い話だ。しかし、こういう時って願い事を聞いたりしないか? ただ奪われるだけなの? なんという搾取対象なのだ俺は」
「既に命をあげてるでしょ。それ以上求めるのは贅沢よ」
「でもなあ。地獄とか怖いしなあ。針の山とか痛そうだしなあ。ハートはどこにつけよかなあ」
「知らんッ!」
この悪魔っ子は時々超怖い。
「しょうがないわねぇ……それじゃ、普通に契約してあげるわよ。ええと、なんでも願い事をみっつ……いや、一つはもう叶えたから、残り二つね。二つ、願い事を叶えてあげる」
「何も叶えてもらってねえのになんか願い事一個消えた! どういうことだコンチクショウ!」
「イチイチ叫ぶな、ばかっ! 生き返り……は失敗しちゃったから、そじゃなくて、魔法具をつけてあげたでしょ。それが一つ目の願い事よ」
「頼んでもいないものを勝手に願い事にされるとは……なんて悪辣な奴なんだ!」
「今すぐ魔力の供給を止めてあげよっか?」
「すいません全面的に俺が悪かったです」
命を人質に取られている以上、コイツには全く頭が上がらない。チクショウ。
「で? あと二つ願い事あるけど、どうする?」
「んーと……えろいことでも可?」
「不可!」
悪魔っ子は顔を赤くしながら自分の身体を覆い隠した。
「いや、大丈夫。俺は丁度そういう貧乳……いや、無乳が大好きだから気にしませんよ? ていうか好都合かと」
「不可ッ!」
拒絶の色合いが強くなった。なぜだ。
「別に乳首にピアスつけるとかそんな非道なことはしませんよ? せいぜい一日中お前の全身(主に乳首付近)をぺろぺろ舐め続けるくらいで」
「次そういうこと言ったら魔力の供給止める!」
悪魔っ子は超顔を赤くしながら最後通達を言い放った。えろいことはダメらしい。チクショウ。
「そ、それで、どーすんの?」
「うーむむむむ……えろいことを禁止されると、願い事が何も思いつかない」
「アンタって奴は……」
「仕方ない。保留だ」
「はぁ!?」
「願い事が浮かぶまで保留。いいよね?」
「それが願い事ね。じゃ、願い事はあと一つね」
「馬鹿な!? ありえない……ありえないよ……こんなの詐欺だよ……」
「泣くなッ! 冗談に決まってるじゃない!」
「こんなことなら一緒にお風呂入れって願い事すればよかったよ……」
「人の話を聞けっ! 嘘って言ってるでしょうがっ! 変なこと泣きながら言うな!」
「……否! 今からでも遅くない! そうだ、願い事はまだ残っている! よし、こうなったらそれを使って一緒にお風呂に」
「だから、そういうことは禁止って言ってるでしょうがッ! 何度言えば分かるのよこの鳥頭!」
「じゃあ願い事とか関係なしに一緒にお風呂に」
「入るわけないでしょうが! なんでそれでOKが出ると思うのよ!?」
なんかずーっと怒られてる。悲しい。
「ったく……こんな馬鹿な人間、初めてだわ。それとも、人間ってのはどいつもこいつもみんなこんななのかしら? ……だとしたら、こんな恐ろしい世界ないわね」
悪魔たんはぶるりと身震いした。俺のような人畜無害な奴を捕まえて、失礼な話だ。
「あー……なんかアンタがお風呂お風呂言ってたから、あたしまで入りたくなっちゃったわ。ほら、とっととアンタの家に行くわよ」
「それはつまり一緒にお風呂に入るフラグが今まさに立ったと見てよろしいか!?」
「よろしくないっ! 一人で入るに決まってるでしょ、ばかっ!」
尻を蹴り上げられた。悲しみに暮れながら、家路に着く俺と悪魔たんだった。
「ところで、契約がどうとか言ってましたが、それはどうなりましたか」
家への道すがら、悪魔っ子に訊ねる。……べっ、別にその辺りのを全部後で書くつもりが忘れてたんじゃないからねっ! 推敲したのに見落としたんじゃないんだからっ!
「あっ、そうそう。簡単な話よ。アンタの魂をあたしにちょうだいって話」
「もう盗られてますが」
「人聞き悪いわねー……ちゃんと返したわよ。魂がないと動けないでしょ?」
「いや、知らない。そういうものなのか?」
「自分の体のことなのに分かんないの? ちゃんと魔法具の中で動いてるでしょ。人間って何も知らないのね。ばーかばーか」
悪魔っ子は俺の眉間に指をちょいんと押しあて、にひひと笑った。
「うわ、超可愛い。魂あげますから結婚してください」
「すっ、するかっ、ばかっ! 悪魔に結婚を申し込むな、ばかっ! ていうかそんな簡単に魂渡すなっ!」
素気無く断られた。悲しい。
「え、えと、なんだっけ……そ、そだ。え、えっと、返したけど、改めてあたしに魂を捧げてほしいの」
悪魔っ子は顔を赤くしながらおろおろしつつも、頑張って俺に話しかけた。
「なるほど話は分かった。だが断る」
「さっき魂やろうとした奴が何言ってんのよ……」
「そうだった。しょうがない、やるから結婚してください」
「だ、だからするわけないって言ってるでしょうが、ばかっ!」
この悪魔っ子はなかなかうんと言ってくれないので困る。ただ、まあ、その度に恥ずかしげに頬を染めるのでお兄さん大満足です。
「何をニヤニヤしてんのよ。気持ち悪いわねぇ……」
俺の満足顔は気持ち悪いらしいです。
「しかし、魂を渡したりなんかしたら、死んでしまうのではなかろうか」
「別に今すぐどうこうしようって話じゃないわよ。アンタが死ぬ時……つまり、アンタの魔法具が動かなくなった時に魂を貰うって話よ」
「なるほどそれなら構わない感じがするのでいいよって言いそうだがそう言った瞬間に殺されそうだなあ。……しまった、もう既にいいよって言ってしまったつまり殺される助けてぇ!」
「長い叫ぶな踊るなあッ!」
怒られたうえに殴られた。
「俺の名誉のために一応言っておくが、別に踊っていたのではなく、逃げようとしたが身体が恐怖でうまく動かず、結果的に奇怪なダンスを披露してしまっただけです」
「どっちにしろ、アンタの名誉なんて元から地に落ちてるわよ……」
それは考えもしなかった。残念。
「無理矢理奪ったりなんてしないわよ。アンタが能動的にあたしに捧げないと意味ないの」
「どう違うの? てか、魂とか普通に言ってるけど、具体的にどういうものなの?」
「んー……」
悪魔っ子はあごに手をあて、しばし思案に耽った。
「悪魔にとって、ごちそうかな。人間の魂を食べるとね、悪魔は力が増すの」
「ほう。マッスリャーになるのだな」
「……いや、別に筋力が増すわけじゃないから。魔力が増すの。無理矢理刈り取った魂でもいいんだけど、捧げられた魂ならその価値はさらに上がるの」
「ふーん。なんで?」
「捧げられた者は地獄行き確定になるから、その苦痛が悪魔の力になるからじゃない? ……あっ」
たたたたいへんなことをきいてしまった。
「ぼく、たましいをささげません」
「う、嘘よ、嘘! 魂を捧げたら天国行きって噂よ?」
「やめておきます」
「魂捧げないと殺す」
どこからか現れた超鋭い感じの巨大な鎌がどうして僕の首元で鈍く光っているのですか。
「どっ、どど、恫喝ってアリなの?」
「……ナシよ。ああもうっ!」
悪魔っ子が悔しげに歯噛みすると、鎌はぽふりと煙をあげて消えた。
「あっ、そうだ! あたしに魂捧げないと、魔力補充してやんないわよ? そしたら魔力尽きて死んじゃうわよ?」
「な、なんて酷いことを! この悪魔! 悪魔め!」
「……いや、悪魔だし」
「そういやそうだったな。しっぽとか羽とか八重歯とかあるし。あと貧乳でもあるし」
「後半悪魔関係ないっ! 今すぐブチ殺すわよっ!?」
貧乳が怒った。超怖え。
「と、とにかく。契約をして後で地獄に行くか、契約しないで魔力切れで死ぬか、好きな方を選びなさい」
「酷い話だ。しかし、こういう時って願い事を聞いたりしないか? ただ奪われるだけなの? なんという搾取対象なのだ俺は」
「既に命をあげてるでしょ。それ以上求めるのは贅沢よ」
「でもなあ。地獄とか怖いしなあ。針の山とか痛そうだしなあ。ハートはどこにつけよかなあ」
「知らんッ!」
この悪魔っ子は時々超怖い。
「しょうがないわねぇ……それじゃ、普通に契約してあげるわよ。ええと、なんでも願い事をみっつ……いや、一つはもう叶えたから、残り二つね。二つ、願い事を叶えてあげる」
「何も叶えてもらってねえのになんか願い事一個消えた! どういうことだコンチクショウ!」
「イチイチ叫ぶな、ばかっ! 生き返り……は失敗しちゃったから、そじゃなくて、魔法具をつけてあげたでしょ。それが一つ目の願い事よ」
「頼んでもいないものを勝手に願い事にされるとは……なんて悪辣な奴なんだ!」
「今すぐ魔力の供給を止めてあげよっか?」
「すいません全面的に俺が悪かったです」
命を人質に取られている以上、コイツには全く頭が上がらない。チクショウ。
「で? あと二つ願い事あるけど、どうする?」
「んーと……えろいことでも可?」
「不可!」
悪魔っ子は顔を赤くしながら自分の身体を覆い隠した。
「いや、大丈夫。俺は丁度そういう貧乳……いや、無乳が大好きだから気にしませんよ? ていうか好都合かと」
「不可ッ!」
拒絶の色合いが強くなった。なぜだ。
「別に乳首にピアスつけるとかそんな非道なことはしませんよ? せいぜい一日中お前の全身(主に乳首付近)をぺろぺろ舐め続けるくらいで」
「次そういうこと言ったら魔力の供給止める!」
悪魔っ子は超顔を赤くしながら最後通達を言い放った。えろいことはダメらしい。チクショウ。
「そ、それで、どーすんの?」
「うーむむむむ……えろいことを禁止されると、願い事が何も思いつかない」
「アンタって奴は……」
「仕方ない。保留だ」
「はぁ!?」
「願い事が浮かぶまで保留。いいよね?」
「それが願い事ね。じゃ、願い事はあと一つね」
「馬鹿な!? ありえない……ありえないよ……こんなの詐欺だよ……」
「泣くなッ! 冗談に決まってるじゃない!」
「こんなことなら一緒にお風呂入れって願い事すればよかったよ……」
「人の話を聞けっ! 嘘って言ってるでしょうがっ! 変なこと泣きながら言うな!」
「……否! 今からでも遅くない! そうだ、願い事はまだ残っている! よし、こうなったらそれを使って一緒にお風呂に」
「だから、そういうことは禁止って言ってるでしょうがッ! 何度言えば分かるのよこの鳥頭!」
「じゃあ願い事とか関係なしに一緒にお風呂に」
「入るわけないでしょうが! なんでそれでOKが出ると思うのよ!?」
なんかずーっと怒られてる。悲しい。
「ったく……こんな馬鹿な人間、初めてだわ。それとも、人間ってのはどいつもこいつもみんなこんななのかしら? ……だとしたら、こんな恐ろしい世界ないわね」
悪魔たんはぶるりと身震いした。俺のような人畜無害な奴を捕まえて、失礼な話だ。
「あー……なんかアンタがお風呂お風呂言ってたから、あたしまで入りたくなっちゃったわ。ほら、とっととアンタの家に行くわよ」
「それはつまり一緒にお風呂に入るフラグが今まさに立ったと見てよろしいか!?」
「よろしくないっ! 一人で入るに決まってるでしょ、ばかっ!」
尻を蹴り上げられた。悲しみに暮れながら、家路に着く俺と悪魔たんだった。
【沙夜 鼻遊び】
2011年07月16日
これだけ暑いと寝るのも難しい。
「…………」
それも、一人でなくもう一人寝床にいると、難易度は格段に上昇する。
「あー……あのな、沙夜。あちいので家に帰っては如何かな?」
「……?」
「いや、?じゃなくて。帰れと言っているのですよ、俺は」
「…………」(ぷるぷる)
「……はぁ。あのな、沙夜。俺の部屋暑いだろ?」
「…………」(コクコク)
「クーラーがないからそれも道理だよな。ほら、お前んち隣だし、お前の部屋にはクーラーついてるし、帰ると快適だぞー?」
「…………」
沙夜はしばし虚空を眺めて何かを考えると、こちらにぽてぽてと歩み寄り、俺の腕を引っ張った。
「ん、なんだ?」
「…………」
「あー……ええと。俺も一緒に来い、と?」
「…………」(コクコク)
「いやいや。俺はここで寝るよ。暑いのは慣れてるし」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。一人で寝なさい」
「…………」(ぷるぷる&半泣き)
「ええいっ、んなことで泣くなッ! わーったよ、行くよ!」
「……♪」
「やっぱ嘘泣きか」
沙夜のほっぺを軽く引っ張ってお仕置きしてから、一緒に部屋を出る。何が嬉しいんだか知らないが、先ほどから沙夜は俺の腕にくっついて……というよりも、しがみついている。
母さんに今日は隣に泊まると言ってから、家を出る。そのまま隣の沙夜の家に入り、おじさんとおばさんに挨拶する。……っつーか、まあ、もうほぼ毎日顔を合わせてるので家族みたいなもんなので、挨拶も何もないが。
「んじゃ、お前の部屋に行くか」
「…………」(コクコク)
階段を上ろうとすると、なんか知らんが沙夜が背中に乗ってきた。乗せたまま階段を上り、沙夜の部屋に入る。
「…………」(くいくい)
「へーへー」
操縦アンテナのように沙夜が俺の髪を掴み、クーラーのリモコンがある方へ誘導する。スイッチを押すと、クーラーは冷風を吐き出し始めた。ようやっと一心地ついた。
「ふぃー……あー、暑かった」
「…………」(コクコク)
ソファに座り、息を吐く。沙夜は俺の背中から膝に移動し、今度は自分の背中を俺に預けた。
「…………」(じぃーっ)
そして、何か意味ありげな視線を自分の肩越しに俺にぶつけ始めるのだった。
「とうっ」
視線の意味が分からなかったので、沙夜のほっぺを押してみる。大変ぷにぷにで柔らかい。
「…………」
どうやら違ったようだが、それはそれで問題ないのか、沙夜は俺にぷにぷにされたまま、こちらをじぃーっと見ていた。
「…………」
いや、違う。俺じゃなくて、もっと奥……つまり、俺の後ろを見ている。くるりと振り返ると、そこにはブラシがあった。
「ああ、そゆことか」
ブラシをとり、元の位置に戻る。沙夜はもうこちらを見ていなかった。正解のようだ。沙夜の髪にブラシをあて、優しくとかす。
「…………♪」(ご機嫌)
「沙夜、もうちょっと前行け。狭い」
「…………」(ぎうぎう)
「前だ、前! なんで後ろに寄ってくる!」
「…………」(ふにふに)
「いやいや、いやいやいや! どうして抱きついてきますか! 今は髪をとかす時間だろ!」
「…………」(ぶすーっ)
「なんで不満げやねん」
沙夜のデコに軽くチョップしてつっこむ。沙夜は両手でおでこを押さえると、わざとらしく痛そうに顔をしかめた。
「んな強くしてねーよ。いーからほら、そっち向け。髪とかせねーだろ」
沙夜の髪は無駄に(失礼)量があるので、とかすのも一苦労だ。とはいえ、沙夜の髪は絹のような手触りのため、苦労はするが全然嫌ではない。むしろこの時間を俺は好ましく思っている。
「…………」
沙夜はどう思っているのだろう。任せるということは、多少は俺と同じ感情を抱いてくれているのだろうか。
「……?」
「ん、ああ。悪い」
俺の手が止まったことを不思議に思ったのか、沙夜がこちらを見ていた。慌てて沙夜の髪にブラシをあてる。
「…………」
何かを感じ取ったのか、沙夜はブラシを持つ俺の手を優しく握り、コクコクと頷いた。
「……ん、ああ。そっか。サンキュな……ってのもおかしいが」
それだけで、なんとなく沙夜の言いたいことが伝わってきた。
「…………」(むふー)
満足げに鼻息を漏らす沙夜。その鼻息が全部俺にかかった。いや、別にいいんだケド。
「なんか軽く甘いのな、お前の鼻息」
「……!!!」(がぶがぶ)
いくら幼なじみとはいえ鼻息を嗅がれるのは恥ずかしいのか、沙夜は顔を赤くしながら俺の肩を噛んだ。
「……! ……!」
「へーへー。分かったよ。嗅ぐの禁止な。了解了解」
「…………」(むふー)
またしても満足げに鼻息を漏らす沙夜。そしてやっぱり全部こっちにかかった。
「やっぱちょっと甘いのな」
「……! ……!」(がぶがぶがぶ)
肩がとても痛いです。そして学習しろ俺&沙夜。
「ていうかいうかていうかだな、そもそもお前が鼻息を漏らさなけりゃ済む話だろ」
「…………」
「え、俺が嗅がなきゃ済む話って? 俺の顔全体をお前の鼻息が覆うから、嗅がないわけにはいかんのだよ」
「…………」
「息をしなければいい? 人は呼吸をしなければ死ぬのですが」
「…………」
「いやいや、気にしないじゃなくて。気にしてくれ」
会話してるうちに、沙夜は身体ごと回転させてこちらを向いていた。俺の膝に乗り、相対している形だ。
「…………」(つんつん)
「や、葬式は盛大にしてやるじゃなくて。それより、あの、沙夜さん。議論を交わしている最中に何をしているのですか」
「…………」(コクコク)
「いや、こくこくじゃなくて。何をしているか聞いているのです」
「…………」(つんつん)
さっきから沙夜は自分の鼻と俺の鼻をつんつんと合わせていた。意味が分からん。ただ、まあ、なんか超楽しいですが。いや、表面には出しませんよ! 沙夜が調子乗るので!
「……?」
「え、うそ、笑ってるか、俺!?」
「…………」(コクコク)
思ったよりも俺はポーカーフェイスができない模様。くそぅ。
「……?」(つんつん)
「あーはいはい。そうだよ、俺も楽しいよコンチクショウ」
「……♪」
ご機嫌体質になってしまった沙夜が飽きるまで、この遊びは繰り返されたという噂。
「…………」
それも、一人でなくもう一人寝床にいると、難易度は格段に上昇する。
「あー……あのな、沙夜。あちいので家に帰っては如何かな?」
「……?」
「いや、?じゃなくて。帰れと言っているのですよ、俺は」
「…………」(ぷるぷる)
「……はぁ。あのな、沙夜。俺の部屋暑いだろ?」
「…………」(コクコク)
「クーラーがないからそれも道理だよな。ほら、お前んち隣だし、お前の部屋にはクーラーついてるし、帰ると快適だぞー?」
「…………」
沙夜はしばし虚空を眺めて何かを考えると、こちらにぽてぽてと歩み寄り、俺の腕を引っ張った。
「ん、なんだ?」
「…………」
「あー……ええと。俺も一緒に来い、と?」
「…………」(コクコク)
「いやいや。俺はここで寝るよ。暑いのは慣れてるし」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。一人で寝なさい」
「…………」(ぷるぷる&半泣き)
「ええいっ、んなことで泣くなッ! わーったよ、行くよ!」
「……♪」
「やっぱ嘘泣きか」
沙夜のほっぺを軽く引っ張ってお仕置きしてから、一緒に部屋を出る。何が嬉しいんだか知らないが、先ほどから沙夜は俺の腕にくっついて……というよりも、しがみついている。
母さんに今日は隣に泊まると言ってから、家を出る。そのまま隣の沙夜の家に入り、おじさんとおばさんに挨拶する。……っつーか、まあ、もうほぼ毎日顔を合わせてるので家族みたいなもんなので、挨拶も何もないが。
「んじゃ、お前の部屋に行くか」
「…………」(コクコク)
階段を上ろうとすると、なんか知らんが沙夜が背中に乗ってきた。乗せたまま階段を上り、沙夜の部屋に入る。
「…………」(くいくい)
「へーへー」
操縦アンテナのように沙夜が俺の髪を掴み、クーラーのリモコンがある方へ誘導する。スイッチを押すと、クーラーは冷風を吐き出し始めた。ようやっと一心地ついた。
「ふぃー……あー、暑かった」
「…………」(コクコク)
ソファに座り、息を吐く。沙夜は俺の背中から膝に移動し、今度は自分の背中を俺に預けた。
「…………」(じぃーっ)
そして、何か意味ありげな視線を自分の肩越しに俺にぶつけ始めるのだった。
「とうっ」
視線の意味が分からなかったので、沙夜のほっぺを押してみる。大変ぷにぷにで柔らかい。
「…………」
どうやら違ったようだが、それはそれで問題ないのか、沙夜は俺にぷにぷにされたまま、こちらをじぃーっと見ていた。
「…………」
いや、違う。俺じゃなくて、もっと奥……つまり、俺の後ろを見ている。くるりと振り返ると、そこにはブラシがあった。
「ああ、そゆことか」
ブラシをとり、元の位置に戻る。沙夜はもうこちらを見ていなかった。正解のようだ。沙夜の髪にブラシをあて、優しくとかす。
「…………♪」(ご機嫌)
「沙夜、もうちょっと前行け。狭い」
「…………」(ぎうぎう)
「前だ、前! なんで後ろに寄ってくる!」
「…………」(ふにふに)
「いやいや、いやいやいや! どうして抱きついてきますか! 今は髪をとかす時間だろ!」
「…………」(ぶすーっ)
「なんで不満げやねん」
沙夜のデコに軽くチョップしてつっこむ。沙夜は両手でおでこを押さえると、わざとらしく痛そうに顔をしかめた。
「んな強くしてねーよ。いーからほら、そっち向け。髪とかせねーだろ」
沙夜の髪は無駄に(失礼)量があるので、とかすのも一苦労だ。とはいえ、沙夜の髪は絹のような手触りのため、苦労はするが全然嫌ではない。むしろこの時間を俺は好ましく思っている。
「…………」
沙夜はどう思っているのだろう。任せるということは、多少は俺と同じ感情を抱いてくれているのだろうか。
「……?」
「ん、ああ。悪い」
俺の手が止まったことを不思議に思ったのか、沙夜がこちらを見ていた。慌てて沙夜の髪にブラシをあてる。
「…………」
何かを感じ取ったのか、沙夜はブラシを持つ俺の手を優しく握り、コクコクと頷いた。
「……ん、ああ。そっか。サンキュな……ってのもおかしいが」
それだけで、なんとなく沙夜の言いたいことが伝わってきた。
「…………」(むふー)
満足げに鼻息を漏らす沙夜。その鼻息が全部俺にかかった。いや、別にいいんだケド。
「なんか軽く甘いのな、お前の鼻息」
「……!!!」(がぶがぶ)
いくら幼なじみとはいえ鼻息を嗅がれるのは恥ずかしいのか、沙夜は顔を赤くしながら俺の肩を噛んだ。
「……! ……!」
「へーへー。分かったよ。嗅ぐの禁止な。了解了解」
「…………」(むふー)
またしても満足げに鼻息を漏らす沙夜。そしてやっぱり全部こっちにかかった。
「やっぱちょっと甘いのな」
「……! ……!」(がぶがぶがぶ)
肩がとても痛いです。そして学習しろ俺&沙夜。
「ていうかいうかていうかだな、そもそもお前が鼻息を漏らさなけりゃ済む話だろ」
「…………」
「え、俺が嗅がなきゃ済む話って? 俺の顔全体をお前の鼻息が覆うから、嗅がないわけにはいかんのだよ」
「…………」
「息をしなければいい? 人は呼吸をしなければ死ぬのですが」
「…………」
「いやいや、気にしないじゃなくて。気にしてくれ」
会話してるうちに、沙夜は身体ごと回転させてこちらを向いていた。俺の膝に乗り、相対している形だ。
「…………」(つんつん)
「や、葬式は盛大にしてやるじゃなくて。それより、あの、沙夜さん。議論を交わしている最中に何をしているのですか」
「…………」(コクコク)
「いや、こくこくじゃなくて。何をしているか聞いているのです」
「…………」(つんつん)
さっきから沙夜は自分の鼻と俺の鼻をつんつんと合わせていた。意味が分からん。ただ、まあ、なんか超楽しいですが。いや、表面には出しませんよ! 沙夜が調子乗るので!
「……?」
「え、うそ、笑ってるか、俺!?」
「…………」(コクコク)
思ったよりも俺はポーカーフェイスができない模様。くそぅ。
「……?」(つんつん)
「あーはいはい。そうだよ、俺も楽しいよコンチクショウ」
「……♪」
ご機嫌体質になってしまった沙夜が飽きるまで、この遊びは繰り返されたという噂。
【笹を担いでるところをツンデレに見られたら】
2011年07月05日
もうすぐ七夕らしいので、笹買ってきた。その帰宅中、ばったりかなみに会った。
「ばったりとバタリアンて似てますよね。ははは。じゃ俺はこれにて」
「あからさまに避けてるのがばれてるわよっ、ばかっ!」
最大限のさりげなさでエンカウントから逃れたかったのだが、失敗したようだ。
「ったく……なによ、ばか」
「ああ、いや、避けているのではなくて。ただ、この植物について言及されたくなかっただけで」
「え? ……ふぅ~ん。で、なに? なんなの? その笹」
触れて欲しくないと聞いた途端、かなみは嬉しそうな笑みで早口に問いかけた。
「うちのパンダの食欲が旺盛で、供給が追いつかないんだ」
「嘘つけっ!」
「いや、本当に。最近うちの親父がとある泉で溺れたらパンダになりまして」
「どこのらんまよっ!」
「そんなわけで、七夕用の笹なんだ」
「どこがそんなわけよっ! 初耳よっ!」
「ちなみに、触れて欲しくないと言ったのは罠です。この一連のボケが笹を担いでる時に浮かんでしまい、誰かに言いたくて言いたくて」
「途中からそんな気がしたわよ、ばかっ!」
「よく叫ぶ人だなあ」
「誰が叫ばさせてんのよっ! ……ぜーぜー」
「辛そうですね。短冊に『かなみのノドがうるおいますように』って書いておくよ」
「素直にジュースの一本くらいおごりなさいっ!」
そんなわけで、無理矢理財布を強奪され、自販機でジュースを奢る羽目になってしまった。なんという不幸。
「んーと……どれにしよっかな」
「俺のオススメはこのドクロマークがついてる『極楽一直線』というジュースだな。メーカーの客を舐めてる感が半端ではない」
「アンタが飲め」
「ばか、俺みたいな性格破綻者が極楽なんかに行けるわけないだろ」
「どこを指摘してんのよ! ……ったく、これにしよ」
かなみが白魚のような指でむんぎゅと押したのは、オレンヂジュースだった。
「うわ、地味」
「ジュースに地味も何もないでしょ! ……そういうアンタは、どんなのを選ぶのかしら?」
「ぽち」
俺もかなみと一緒のジュースを買う。
「どういうことよっ!」
「かなみと一緒のジュースを飲みたかったんだ」
「う……へっ、変態! なっ、なによっ、擬似間接キスとでも言うつもり!? ばっかじゃないの!?」
かなみの顔がみるみる赤くなっていく。自分で言って照れてどうする。
「でも本当は普通にオレンヂジュースが飲みたかったんだ」
「死ねっ!」
「大変痛い!」
缶を投げつけられた。常人なら一撃で顔が吹き飛んでいるであろうが、俺は我慢強いので鼻血を出す程度で済んだ。
「あのですね、かなみさん。投げるな。危ないから」
「うるさいっ! ばかっ!」
「馬鹿でも何でも。危ないから」
かなみの手を握り、投げつけられた缶を渡す。まだ開いてないので飲めるハズ。
「……う、うるさい。ばか」
「まあ、俺に投げるのであればまだいいが、他人にすると死者が出るから」
「……アンタくらいにしかやんないわよ、こんな危ないこと」
「じゃあいいや。ただ、手加減していただけると何かと助かります」
「……う、う~~~~~っ!」
「踏むな」
げしげし何度も足を踏まれた。我慢できるとは言え、痛いものは痛い。
「何をほげーっとした顔してんのよ! 怒りなさいよ! 酷いことされてんだから!」
「ほげー顔は生まれつきだから諦めてくれ。そして、怒るのは好きじゃないから嫌なんだ」
「怒れーっ!」
何やら頬を引っ張られた。仕返しに頭をなでてやる。
「頭なでんなっ!」
「おはへはおほっへほうふふ(訳:お前が怒ってどうする)」
「ぐう……もー、決めた! 今日はアンタを怒らせる! つーわけで、今からアンタの家行くから!」
俺から手を離し、ずびしっと指を突きつけるかなみ嬢。なんの宣言してんだ。
「そりゃ構わんが、笹の取り付け手伝えよ。あ、ついでに短冊に願い事も書いてけ」
「ふんっ! アンタが死にますようにって願い事書いてやるんだから!」
「およそ90年後には叶うことだろう」
「遅い、おーそーいっ! ていうかアンタ長生きしすぎっ!」
「かなみを看取ってから死ぬつもりなんだ」
「な、何を勝手に夫婦にしてんのよっ! 妄想でも禁止よ、禁止!」
「しょうがない。現実で夫婦になるので我慢しとくか。ああこんな貧乳と結婚か。ついてない」
「なんでそっちはおっけーって思うのよ、ばかっ! ていうか貧乳言うなっ! こっちこそアンタみたいな変態お断りよ!」
「でも本当は貧乳大好きだから満更でもないんですよ?」
「知らんっ!」
「だから教えてるんじゃないか。ははっ、かなみって結構ばーかー。でも馬鹿な子ほど可愛いって言うかー」
「絶対、殺すっ!」
などと殺気を振り撒く娘っ子と一緒に帰宅しました。いっぱい殴られた。
「ばったりとバタリアンて似てますよね。ははは。じゃ俺はこれにて」
「あからさまに避けてるのがばれてるわよっ、ばかっ!」
最大限のさりげなさでエンカウントから逃れたかったのだが、失敗したようだ。
「ったく……なによ、ばか」
「ああ、いや、避けているのではなくて。ただ、この植物について言及されたくなかっただけで」
「え? ……ふぅ~ん。で、なに? なんなの? その笹」
触れて欲しくないと聞いた途端、かなみは嬉しそうな笑みで早口に問いかけた。
「うちのパンダの食欲が旺盛で、供給が追いつかないんだ」
「嘘つけっ!」
「いや、本当に。最近うちの親父がとある泉で溺れたらパンダになりまして」
「どこのらんまよっ!」
「そんなわけで、七夕用の笹なんだ」
「どこがそんなわけよっ! 初耳よっ!」
「ちなみに、触れて欲しくないと言ったのは罠です。この一連のボケが笹を担いでる時に浮かんでしまい、誰かに言いたくて言いたくて」
「途中からそんな気がしたわよ、ばかっ!」
「よく叫ぶ人だなあ」
「誰が叫ばさせてんのよっ! ……ぜーぜー」
「辛そうですね。短冊に『かなみのノドがうるおいますように』って書いておくよ」
「素直にジュースの一本くらいおごりなさいっ!」
そんなわけで、無理矢理財布を強奪され、自販機でジュースを奢る羽目になってしまった。なんという不幸。
「んーと……どれにしよっかな」
「俺のオススメはこのドクロマークがついてる『極楽一直線』というジュースだな。メーカーの客を舐めてる感が半端ではない」
「アンタが飲め」
「ばか、俺みたいな性格破綻者が極楽なんかに行けるわけないだろ」
「どこを指摘してんのよ! ……ったく、これにしよ」
かなみが白魚のような指でむんぎゅと押したのは、オレンヂジュースだった。
「うわ、地味」
「ジュースに地味も何もないでしょ! ……そういうアンタは、どんなのを選ぶのかしら?」
「ぽち」
俺もかなみと一緒のジュースを買う。
「どういうことよっ!」
「かなみと一緒のジュースを飲みたかったんだ」
「う……へっ、変態! なっ、なによっ、擬似間接キスとでも言うつもり!? ばっかじゃないの!?」
かなみの顔がみるみる赤くなっていく。自分で言って照れてどうする。
「でも本当は普通にオレンヂジュースが飲みたかったんだ」
「死ねっ!」
「大変痛い!」
缶を投げつけられた。常人なら一撃で顔が吹き飛んでいるであろうが、俺は我慢強いので鼻血を出す程度で済んだ。
「あのですね、かなみさん。投げるな。危ないから」
「うるさいっ! ばかっ!」
「馬鹿でも何でも。危ないから」
かなみの手を握り、投げつけられた缶を渡す。まだ開いてないので飲めるハズ。
「……う、うるさい。ばか」
「まあ、俺に投げるのであればまだいいが、他人にすると死者が出るから」
「……アンタくらいにしかやんないわよ、こんな危ないこと」
「じゃあいいや。ただ、手加減していただけると何かと助かります」
「……う、う~~~~~っ!」
「踏むな」
げしげし何度も足を踏まれた。我慢できるとは言え、痛いものは痛い。
「何をほげーっとした顔してんのよ! 怒りなさいよ! 酷いことされてんだから!」
「ほげー顔は生まれつきだから諦めてくれ。そして、怒るのは好きじゃないから嫌なんだ」
「怒れーっ!」
何やら頬を引っ張られた。仕返しに頭をなでてやる。
「頭なでんなっ!」
「おはへはおほっへほうふふ(訳:お前が怒ってどうする)」
「ぐう……もー、決めた! 今日はアンタを怒らせる! つーわけで、今からアンタの家行くから!」
俺から手を離し、ずびしっと指を突きつけるかなみ嬢。なんの宣言してんだ。
「そりゃ構わんが、笹の取り付け手伝えよ。あ、ついでに短冊に願い事も書いてけ」
「ふんっ! アンタが死にますようにって願い事書いてやるんだから!」
「およそ90年後には叶うことだろう」
「遅い、おーそーいっ! ていうかアンタ長生きしすぎっ!」
「かなみを看取ってから死ぬつもりなんだ」
「な、何を勝手に夫婦にしてんのよっ! 妄想でも禁止よ、禁止!」
「しょうがない。現実で夫婦になるので我慢しとくか。ああこんな貧乳と結婚か。ついてない」
「なんでそっちはおっけーって思うのよ、ばかっ! ていうか貧乳言うなっ! こっちこそアンタみたいな変態お断りよ!」
「でも本当は貧乳大好きだから満更でもないんですよ?」
「知らんっ!」
「だから教えてるんじゃないか。ははっ、かなみって結構ばーかー。でも馬鹿な子ほど可愛いって言うかー」
「絶対、殺すっ!」
などと殺気を振り撒く娘っ子と一緒に帰宅しました。いっぱい殴られた。