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2024年11月21日
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【沙夜 鼻遊び】
2011年07月16日
これだけ暑いと寝るのも難しい。
「…………」
それも、一人でなくもう一人寝床にいると、難易度は格段に上昇する。
「あー……あのな、沙夜。あちいので家に帰っては如何かな?」
「……?」
「いや、?じゃなくて。帰れと言っているのですよ、俺は」
「…………」(ぷるぷる)
「……はぁ。あのな、沙夜。俺の部屋暑いだろ?」
「…………」(コクコク)
「クーラーがないからそれも道理だよな。ほら、お前んち隣だし、お前の部屋にはクーラーついてるし、帰ると快適だぞー?」
「…………」
沙夜はしばし虚空を眺めて何かを考えると、こちらにぽてぽてと歩み寄り、俺の腕を引っ張った。
「ん、なんだ?」
「…………」
「あー……ええと。俺も一緒に来い、と?」
「…………」(コクコク)
「いやいや。俺はここで寝るよ。暑いのは慣れてるし」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。一人で寝なさい」
「…………」(ぷるぷる&半泣き)
「ええいっ、んなことで泣くなッ! わーったよ、行くよ!」
「……♪」
「やっぱ嘘泣きか」
沙夜のほっぺを軽く引っ張ってお仕置きしてから、一緒に部屋を出る。何が嬉しいんだか知らないが、先ほどから沙夜は俺の腕にくっついて……というよりも、しがみついている。
母さんに今日は隣に泊まると言ってから、家を出る。そのまま隣の沙夜の家に入り、おじさんとおばさんに挨拶する。……っつーか、まあ、もうほぼ毎日顔を合わせてるので家族みたいなもんなので、挨拶も何もないが。
「んじゃ、お前の部屋に行くか」
「…………」(コクコク)
階段を上ろうとすると、なんか知らんが沙夜が背中に乗ってきた。乗せたまま階段を上り、沙夜の部屋に入る。
「…………」(くいくい)
「へーへー」
操縦アンテナのように沙夜が俺の髪を掴み、クーラーのリモコンがある方へ誘導する。スイッチを押すと、クーラーは冷風を吐き出し始めた。ようやっと一心地ついた。
「ふぃー……あー、暑かった」
「…………」(コクコク)
ソファに座り、息を吐く。沙夜は俺の背中から膝に移動し、今度は自分の背中を俺に預けた。
「…………」(じぃーっ)
そして、何か意味ありげな視線を自分の肩越しに俺にぶつけ始めるのだった。
「とうっ」
視線の意味が分からなかったので、沙夜のほっぺを押してみる。大変ぷにぷにで柔らかい。
「…………」
どうやら違ったようだが、それはそれで問題ないのか、沙夜は俺にぷにぷにされたまま、こちらをじぃーっと見ていた。
「…………」
いや、違う。俺じゃなくて、もっと奥……つまり、俺の後ろを見ている。くるりと振り返ると、そこにはブラシがあった。
「ああ、そゆことか」
ブラシをとり、元の位置に戻る。沙夜はもうこちらを見ていなかった。正解のようだ。沙夜の髪にブラシをあて、優しくとかす。
「…………♪」(ご機嫌)
「沙夜、もうちょっと前行け。狭い」
「…………」(ぎうぎう)
「前だ、前! なんで後ろに寄ってくる!」
「…………」(ふにふに)
「いやいや、いやいやいや! どうして抱きついてきますか! 今は髪をとかす時間だろ!」
「…………」(ぶすーっ)
「なんで不満げやねん」
沙夜のデコに軽くチョップしてつっこむ。沙夜は両手でおでこを押さえると、わざとらしく痛そうに顔をしかめた。
「んな強くしてねーよ。いーからほら、そっち向け。髪とかせねーだろ」
沙夜の髪は無駄に(失礼)量があるので、とかすのも一苦労だ。とはいえ、沙夜の髪は絹のような手触りのため、苦労はするが全然嫌ではない。むしろこの時間を俺は好ましく思っている。
「…………」
沙夜はどう思っているのだろう。任せるということは、多少は俺と同じ感情を抱いてくれているのだろうか。
「……?」
「ん、ああ。悪い」
俺の手が止まったことを不思議に思ったのか、沙夜がこちらを見ていた。慌てて沙夜の髪にブラシをあてる。
「…………」
何かを感じ取ったのか、沙夜はブラシを持つ俺の手を優しく握り、コクコクと頷いた。
「……ん、ああ。そっか。サンキュな……ってのもおかしいが」
それだけで、なんとなく沙夜の言いたいことが伝わってきた。
「…………」(むふー)
満足げに鼻息を漏らす沙夜。その鼻息が全部俺にかかった。いや、別にいいんだケド。
「なんか軽く甘いのな、お前の鼻息」
「……!!!」(がぶがぶ)
いくら幼なじみとはいえ鼻息を嗅がれるのは恥ずかしいのか、沙夜は顔を赤くしながら俺の肩を噛んだ。
「……! ……!」
「へーへー。分かったよ。嗅ぐの禁止な。了解了解」
「…………」(むふー)
またしても満足げに鼻息を漏らす沙夜。そしてやっぱり全部こっちにかかった。
「やっぱちょっと甘いのな」
「……! ……!」(がぶがぶがぶ)
肩がとても痛いです。そして学習しろ俺&沙夜。
「ていうかいうかていうかだな、そもそもお前が鼻息を漏らさなけりゃ済む話だろ」
「…………」
「え、俺が嗅がなきゃ済む話って? 俺の顔全体をお前の鼻息が覆うから、嗅がないわけにはいかんのだよ」
「…………」
「息をしなければいい? 人は呼吸をしなければ死ぬのですが」
「…………」
「いやいや、気にしないじゃなくて。気にしてくれ」
会話してるうちに、沙夜は身体ごと回転させてこちらを向いていた。俺の膝に乗り、相対している形だ。
「…………」(つんつん)
「や、葬式は盛大にしてやるじゃなくて。それより、あの、沙夜さん。議論を交わしている最中に何をしているのですか」
「…………」(コクコク)
「いや、こくこくじゃなくて。何をしているか聞いているのです」
「…………」(つんつん)
さっきから沙夜は自分の鼻と俺の鼻をつんつんと合わせていた。意味が分からん。ただ、まあ、なんか超楽しいですが。いや、表面には出しませんよ! 沙夜が調子乗るので!
「……?」
「え、うそ、笑ってるか、俺!?」
「…………」(コクコク)
思ったよりも俺はポーカーフェイスができない模様。くそぅ。
「……?」(つんつん)
「あーはいはい。そうだよ、俺も楽しいよコンチクショウ」
「……♪」
ご機嫌体質になってしまった沙夜が飽きるまで、この遊びは繰り返されたという噂。
「…………」
それも、一人でなくもう一人寝床にいると、難易度は格段に上昇する。
「あー……あのな、沙夜。あちいので家に帰っては如何かな?」
「……?」
「いや、?じゃなくて。帰れと言っているのですよ、俺は」
「…………」(ぷるぷる)
「……はぁ。あのな、沙夜。俺の部屋暑いだろ?」
「…………」(コクコク)
「クーラーがないからそれも道理だよな。ほら、お前んち隣だし、お前の部屋にはクーラーついてるし、帰ると快適だぞー?」
「…………」
沙夜はしばし虚空を眺めて何かを考えると、こちらにぽてぽてと歩み寄り、俺の腕を引っ張った。
「ん、なんだ?」
「…………」
「あー……ええと。俺も一緒に来い、と?」
「…………」(コクコク)
「いやいや。俺はここで寝るよ。暑いのは慣れてるし」
「…………」(ぷるぷる)
「いや、ぷるぷるじゃなくて。一人で寝なさい」
「…………」(ぷるぷる&半泣き)
「ええいっ、んなことで泣くなッ! わーったよ、行くよ!」
「……♪」
「やっぱ嘘泣きか」
沙夜のほっぺを軽く引っ張ってお仕置きしてから、一緒に部屋を出る。何が嬉しいんだか知らないが、先ほどから沙夜は俺の腕にくっついて……というよりも、しがみついている。
母さんに今日は隣に泊まると言ってから、家を出る。そのまま隣の沙夜の家に入り、おじさんとおばさんに挨拶する。……っつーか、まあ、もうほぼ毎日顔を合わせてるので家族みたいなもんなので、挨拶も何もないが。
「んじゃ、お前の部屋に行くか」
「…………」(コクコク)
階段を上ろうとすると、なんか知らんが沙夜が背中に乗ってきた。乗せたまま階段を上り、沙夜の部屋に入る。
「…………」(くいくい)
「へーへー」
操縦アンテナのように沙夜が俺の髪を掴み、クーラーのリモコンがある方へ誘導する。スイッチを押すと、クーラーは冷風を吐き出し始めた。ようやっと一心地ついた。
「ふぃー……あー、暑かった」
「…………」(コクコク)
ソファに座り、息を吐く。沙夜は俺の背中から膝に移動し、今度は自分の背中を俺に預けた。
「…………」(じぃーっ)
そして、何か意味ありげな視線を自分の肩越しに俺にぶつけ始めるのだった。
「とうっ」
視線の意味が分からなかったので、沙夜のほっぺを押してみる。大変ぷにぷにで柔らかい。
「…………」
どうやら違ったようだが、それはそれで問題ないのか、沙夜は俺にぷにぷにされたまま、こちらをじぃーっと見ていた。
「…………」
いや、違う。俺じゃなくて、もっと奥……つまり、俺の後ろを見ている。くるりと振り返ると、そこにはブラシがあった。
「ああ、そゆことか」
ブラシをとり、元の位置に戻る。沙夜はもうこちらを見ていなかった。正解のようだ。沙夜の髪にブラシをあて、優しくとかす。
「…………♪」(ご機嫌)
「沙夜、もうちょっと前行け。狭い」
「…………」(ぎうぎう)
「前だ、前! なんで後ろに寄ってくる!」
「…………」(ふにふに)
「いやいや、いやいやいや! どうして抱きついてきますか! 今は髪をとかす時間だろ!」
「…………」(ぶすーっ)
「なんで不満げやねん」
沙夜のデコに軽くチョップしてつっこむ。沙夜は両手でおでこを押さえると、わざとらしく痛そうに顔をしかめた。
「んな強くしてねーよ。いーからほら、そっち向け。髪とかせねーだろ」
沙夜の髪は無駄に(失礼)量があるので、とかすのも一苦労だ。とはいえ、沙夜の髪は絹のような手触りのため、苦労はするが全然嫌ではない。むしろこの時間を俺は好ましく思っている。
「…………」
沙夜はどう思っているのだろう。任せるということは、多少は俺と同じ感情を抱いてくれているのだろうか。
「……?」
「ん、ああ。悪い」
俺の手が止まったことを不思議に思ったのか、沙夜がこちらを見ていた。慌てて沙夜の髪にブラシをあてる。
「…………」
何かを感じ取ったのか、沙夜はブラシを持つ俺の手を優しく握り、コクコクと頷いた。
「……ん、ああ。そっか。サンキュな……ってのもおかしいが」
それだけで、なんとなく沙夜の言いたいことが伝わってきた。
「…………」(むふー)
満足げに鼻息を漏らす沙夜。その鼻息が全部俺にかかった。いや、別にいいんだケド。
「なんか軽く甘いのな、お前の鼻息」
「……!!!」(がぶがぶ)
いくら幼なじみとはいえ鼻息を嗅がれるのは恥ずかしいのか、沙夜は顔を赤くしながら俺の肩を噛んだ。
「……! ……!」
「へーへー。分かったよ。嗅ぐの禁止な。了解了解」
「…………」(むふー)
またしても満足げに鼻息を漏らす沙夜。そしてやっぱり全部こっちにかかった。
「やっぱちょっと甘いのな」
「……! ……!」(がぶがぶがぶ)
肩がとても痛いです。そして学習しろ俺&沙夜。
「ていうかいうかていうかだな、そもそもお前が鼻息を漏らさなけりゃ済む話だろ」
「…………」
「え、俺が嗅がなきゃ済む話って? 俺の顔全体をお前の鼻息が覆うから、嗅がないわけにはいかんのだよ」
「…………」
「息をしなければいい? 人は呼吸をしなければ死ぬのですが」
「…………」
「いやいや、気にしないじゃなくて。気にしてくれ」
会話してるうちに、沙夜は身体ごと回転させてこちらを向いていた。俺の膝に乗り、相対している形だ。
「…………」(つんつん)
「や、葬式は盛大にしてやるじゃなくて。それより、あの、沙夜さん。議論を交わしている最中に何をしているのですか」
「…………」(コクコク)
「いや、こくこくじゃなくて。何をしているか聞いているのです」
「…………」(つんつん)
さっきから沙夜は自分の鼻と俺の鼻をつんつんと合わせていた。意味が分からん。ただ、まあ、なんか超楽しいですが。いや、表面には出しませんよ! 沙夜が調子乗るので!
「……?」
「え、うそ、笑ってるか、俺!?」
「…………」(コクコク)
思ったよりも俺はポーカーフェイスができない模様。くそぅ。
「……?」(つんつん)
「あーはいはい。そうだよ、俺も楽しいよコンチクショウ」
「……♪」
ご機嫌体質になってしまった沙夜が飽きるまで、この遊びは繰り返されたという噂。
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