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2025年02月03日
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【魔女とタンク2】
2012年06月14日
「……魔法?」
「だから、そう言ってる」
学校への道すがら、事情を聞く。
少女(ラピスとかいったか)が言うには、自分は魔女の見習い、らしい。本来はこことは違う世界にいるのだが、昨日のような化け物がこちらの世界に現れる時、退治するためにこちらにやってくるとか。
「なるほど。でも、なんで退治なんかすんだ? お前からすりゃ、よその世界のことだろ? 放っときゃいいじゃん」
「……私はタンクと違い、善人なので放っておくとかできない」
「人を勝手に悪人に認定するな」
ぺちりとラピスのでこを叩く。ラピスはむっとしたような顔をしながらおでこをさすった。
「……それと、経験を積むため、という理由もある」
「あー」
なるほど、下積みか。単純かつ明確な理由だ。
「あと、お金にもなる」
「え? でも、昨日の化け物を見る限り、別に何も落としてなかったように思ったが」
「倒したことを申請したら、国からお金もらえる。モノによっては、がっぽり。大もうけ」
「化け物退治で金儲けか……いいなあ、なんかいいなあ! RPGみたいでいいなあ!」
「……やる?」
「俺にもできるのかっ!?」
「昨日みたいな魔物を倒せる技術があるなら」
「……参考までに聞くが、あの魔物はどのくらい強いんだ? こっちの世界の動物で例えてくれ」
「……くま?」
「分かった。無理です」
「ちなみに、昨日の魔物はかなり弱いほう。ドラクエで言うとおおありくい級」
「もういい、分かった。俺みたいなただの人間には無理だ」
「……特別。私、特別」
とても褒めてほしそうだったので、ほっぺを引っ張ってやる。
「……おかしい。想定外」
ラピスは両手で自分のほっぺをさすさすしつつ、何やら呟いていた。
「あー、そだ。なんで俺の親とお前が顔見知りになってんだ? 薬でも使ったか?」
「……魔法。ちょこっと記憶をいじくった」
「とても怖いですね!」
「……そんなことない。私のことを昔から知ってるって風に、少しいじっただけ」
「それでも充分怖えーよ。あ、それから、なんで朝うちにいたんだ?」
「住んでるから」
「……はい?」
「だから、住んでるからいたの。何度も言わせないで」
ラピスの頬がぷくーっと膨らむ。ホント怒りっぽいなこいつ。……いやそうじゃなくて!
「え、知らない間に一つ屋根の下に住んでるの!? お前普段は向こうの世界にいるって言ってたじゃんか!」
「タンクと一緒の方が何かと都合がいいから。今日から私も一緒に学校行く」
「学校まで!? 編入とかどうなってんだ?」
「魔法」
「魔法万能すぎだろ……」
「──でタンクの親に願書とか色んな証明書を出してもらった」
「普通だ!」
「だから、今日試験と面接。らしい」
「はぁ、なるほど。何の試験か知らんがとにかく、頑張れ」(なでなで)
「…………」
ラピスは黙って俺のなでなでを受けていた。心持ち嬉しそうな表情をしているような、そうでないような。
「あ、そうだ。昨日も聞いたが、そもそもタンクって何を指してんだ?」
「……昨日も聞かれた。また今日も聞かれた」(ほっぺぷくー)
「昨日の説明じゃ分かんねーから改めて聞いてんの!」
「……このタンク馬鹿だ。死んだ方がいい」
「お前が女じゃなければ殴ってる」
「女でよかった」
ああ腹が立つ。
「このタンクは馬鹿だから、特別にこの私が講義してあげる。感謝せよ」
「講義は受け入れるが、感謝は断る」
「…………」
ラピスはじろーっと俺を睨んだ。どうにも恨めしげだ。
「いーから早く教えれ」
「……むぅ。……んと、タンクというのは、魔力を貯められる許容量が大きい人間の通称。魔女は魔法を使えるんだけど、基本的に魔力の容量がとても小さいので、常にタンクを従えている」
「はー、なるほど。……ん? てことは、タンクがいなけりゃ魔女は魔法を使えないってコトか?」
「……使えないことはないけど、すぐ魔力が切れる。簡単な魔法を一つか二つ使ったらそれで終わり」
「ふーん。なんつーか、面倒なことだな」
「面倒だけど、大事なこと。魔女だけなら、すぐに魔力が切れる。タンクだけなら、そもそも魔法が発動できない。だから、魔女とタンクは二人でひとつ。一蓮托生」
「ふーん……」
「だから、優秀なタンクを手に入れるため、魔女は普段から人間界を各々調査してる」
「ふーん。お前も調査してるのか?」
「ん。してた」
「大変なのな。どんくらいの期間してたんだ?」
「……5年?」
「5年っ!? ロリババア系か、お前っ!?」
「……失礼」
ロリババアのほっぺが膨れだした。
「え、お前いま何歳なんだ?」
「……女性に年齢を聞くのは、大変に失礼」
「とても大事なことなんです!」
「……はぁ。……んと、ひのふの……たぶん、14歳」
全然ロリババアじゃなかった。ていうか2個年下だ。
「びっくりさせるなよ……。まあ、俺はババア結婚してくれ派だから実年齢はどっちでもいいけど」
「このタンクは変な派閥に所属している。……早まっただろうか」
「ん? 今14で、5年調査してたってことは……お前、9歳の頃からこの世界を調査してたのか? 向こうにゃ小学校とかないのか?」
「常に調査してた訳じゃない。放課後とか、休みの時とか、そういう時に調査に来てた」
「なるほど。部活みたいな感じなのか」
「ん。魔女の世界とこっちの世界をちょくちょく行き来してた」
「へぇ、そんな簡単に行き来できるんだ。どこでもドア的な道具があるのか?」
「んんん。魔法」
そう言って、ラピスは何事かつぶやいた。空間が歪み、青いうねうねした輪郭の穴が開いた。
「……こんな感じ。ポータル。こっちと私の世界を繋ぐ門。……これができないとこの世界には来てはいけないという、すごい魔法。……弱冠9歳で取得した私はすごい」
「ふーん」
うねうねしてる周辺に手をやると、俺の手までうねうねして見える。空間が歪んでいるのか。
「あまり近づくと、向こうの世界に行っちゃうから注意」
「そか。ちなみに、俺みたいな普通の人間が向こうに行くとどうなるんだ?」
「……体中の内臓が裏返って2、3日苦しんだ後、死ぬ?」
ものすごい勢いでポータルから遠ざかる。
「今すぐ消してください!」
「……まだほめてもらってないから嫌だ」(ほっぺぷくー)
「ええい! なんて厄介な奴だ! ええい!」
「はやくほめろ。天才の私をほめろ」(うずうず)
「ああもう! ああもう! 弱冠9歳というロリ歳でポータルという魔法を習得したラピスはすごいなあ!」(なでなで)
「…………」(嬉しい)
「褒めたので! 早くあの処刑装置を消してください!」
「もっとなでろ」
「ええい! ええぇい!」(なでなでなで)
「…………」(嬉しい)
「もういいですか!?」
「ん」
ラピスが手を軽く上げると、ポータルは音もなく消えた。
「はふぅ……なんだってこんなうららかな日に突然死に瀕さなけりゃいけないんだよ……」
「まあ、別に人間が私の世界に来ても死にはしないけど」
「なんだとぉ!?」
「騙した。……すごい?」
「あーすごいすごい」(頬をぎりぎりとつねりながら)
「……つねられている。あまり褒められている気がしない」
「まったく……この魔法使いは厄介だ」
つねって気が晴れたので手を離してやる。あと、一応頬をさすさすしてあげる。
「それと、普通に町中で魔法を使うな。今は偶然誰もいないからいいけど、もし誰かいたら騒ぎになってるぞ?」
「…………」(ほっぺぷくー)
ラピスは不満げに頬を膨らませつつ、俺の手を取ったあああああ!?
「な、なんでしょうか、いきなり」
「……魔力の補充。くっつかないと補充できない」
「ああなるほどこれがタンクとやらの役目なんですね」
などと冷静を装っているが、やはり女子との接触に慣れていないので挙動が不審になったのだろう、ラピスがじとーっとした目でこちらを見ているではないか!
「……どきどき?」
「はい!」
力いっぱい答えたら、目を見開かれた。
「……びっくり。予想に反する行動。変な奴。……うん、やっぱ私のタンクに最適」
「別に好きで変な訳ではない」
「……ツンデレだ」
この魔女は妙に人間界に精通していて困る。
「か、勘違いしないでよね! 別に好きで変な訳じゃないんだからねっ!」
「……ツンデレ度が増した」
そしてのってしまう俺もどうかと思う。
「……このタンクは楽しい。容量もいっぱいだし、やっぱりこのタンクは大当たりだ」
「人を物扱いするない」
「……ただ、頭が悪いのが難点」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「ずっと、観察してた」
あー、そういや5年ほど調査してたって言ってたな。……え? ずっと?
「あの。まさかとは思いますが、5年ずっと俺を監視してたんじゃない……よね?」
「……流石にそんなにはしてない」
「だよねー。あー安心した」
「4年と少しくらい」
「俺の安心を返してください!」
「最初、色んな人間を観察したけど、どの人間もあんまり面白くなかった。……でも、このタンクは面白かった。容量もすごくいっぱいあるみたいだから、マークしてた」
「勘弁してください。本当に」
「……だから、このタンクがどういう人間か、よく分かってるつもり」
ぼくはいまとんでもないすとーかーとてをつないでいます。
「……私のことをストーカーって思ってる」(ほっぺぷくー)
「いや、そりゃ思いますよ! そう思わない奴は信じられないくらいのお人好しか、途方もない馬鹿ですよ!」
「……このタンクは後者だよ?」
「お前の考えはよく分かった」
とりあえず、空いてる手でラピスのほっぺを引っ張ってやる。
「……痛い」
まるで堪えた様子がないよコンチクショウ。
「……私のタンクになるの、嫌?」
きゅっ、と手が強く握られる。ラピスの顔が不安で曇る。この状態で嫌だと言える奴がいたら、俺はある意味尊敬するが、それ以上に軽蔑する。
「あー。その、困惑してるだけで、嫌というわけではなくてだな」
「……まあ、タンクの考えなんて知ったことじゃないんだけど」
「人が必死こいてモテ台詞をはいたのになんつー言い草だ!」
「……うーん、やっぱり変なタンク」
などと呟きながら説明回を終えるラピスだった。
「だから、そう言ってる」
学校への道すがら、事情を聞く。
少女(ラピスとかいったか)が言うには、自分は魔女の見習い、らしい。本来はこことは違う世界にいるのだが、昨日のような化け物がこちらの世界に現れる時、退治するためにこちらにやってくるとか。
「なるほど。でも、なんで退治なんかすんだ? お前からすりゃ、よその世界のことだろ? 放っときゃいいじゃん」
「……私はタンクと違い、善人なので放っておくとかできない」
「人を勝手に悪人に認定するな」
ぺちりとラピスのでこを叩く。ラピスはむっとしたような顔をしながらおでこをさすった。
「……それと、経験を積むため、という理由もある」
「あー」
なるほど、下積みか。単純かつ明確な理由だ。
「あと、お金にもなる」
「え? でも、昨日の化け物を見る限り、別に何も落としてなかったように思ったが」
「倒したことを申請したら、国からお金もらえる。モノによっては、がっぽり。大もうけ」
「化け物退治で金儲けか……いいなあ、なんかいいなあ! RPGみたいでいいなあ!」
「……やる?」
「俺にもできるのかっ!?」
「昨日みたいな魔物を倒せる技術があるなら」
「……参考までに聞くが、あの魔物はどのくらい強いんだ? こっちの世界の動物で例えてくれ」
「……くま?」
「分かった。無理です」
「ちなみに、昨日の魔物はかなり弱いほう。ドラクエで言うとおおありくい級」
「もういい、分かった。俺みたいなただの人間には無理だ」
「……特別。私、特別」
とても褒めてほしそうだったので、ほっぺを引っ張ってやる。
「……おかしい。想定外」
ラピスは両手で自分のほっぺをさすさすしつつ、何やら呟いていた。
「あー、そだ。なんで俺の親とお前が顔見知りになってんだ? 薬でも使ったか?」
「……魔法。ちょこっと記憶をいじくった」
「とても怖いですね!」
「……そんなことない。私のことを昔から知ってるって風に、少しいじっただけ」
「それでも充分怖えーよ。あ、それから、なんで朝うちにいたんだ?」
「住んでるから」
「……はい?」
「だから、住んでるからいたの。何度も言わせないで」
ラピスの頬がぷくーっと膨らむ。ホント怒りっぽいなこいつ。……いやそうじゃなくて!
「え、知らない間に一つ屋根の下に住んでるの!? お前普段は向こうの世界にいるって言ってたじゃんか!」
「タンクと一緒の方が何かと都合がいいから。今日から私も一緒に学校行く」
「学校まで!? 編入とかどうなってんだ?」
「魔法」
「魔法万能すぎだろ……」
「──でタンクの親に願書とか色んな証明書を出してもらった」
「普通だ!」
「だから、今日試験と面接。らしい」
「はぁ、なるほど。何の試験か知らんがとにかく、頑張れ」(なでなで)
「…………」
ラピスは黙って俺のなでなでを受けていた。心持ち嬉しそうな表情をしているような、そうでないような。
「あ、そうだ。昨日も聞いたが、そもそもタンクって何を指してんだ?」
「……昨日も聞かれた。また今日も聞かれた」(ほっぺぷくー)
「昨日の説明じゃ分かんねーから改めて聞いてんの!」
「……このタンク馬鹿だ。死んだ方がいい」
「お前が女じゃなければ殴ってる」
「女でよかった」
ああ腹が立つ。
「このタンクは馬鹿だから、特別にこの私が講義してあげる。感謝せよ」
「講義は受け入れるが、感謝は断る」
「…………」
ラピスはじろーっと俺を睨んだ。どうにも恨めしげだ。
「いーから早く教えれ」
「……むぅ。……んと、タンクというのは、魔力を貯められる許容量が大きい人間の通称。魔女は魔法を使えるんだけど、基本的に魔力の容量がとても小さいので、常にタンクを従えている」
「はー、なるほど。……ん? てことは、タンクがいなけりゃ魔女は魔法を使えないってコトか?」
「……使えないことはないけど、すぐ魔力が切れる。簡単な魔法を一つか二つ使ったらそれで終わり」
「ふーん。なんつーか、面倒なことだな」
「面倒だけど、大事なこと。魔女だけなら、すぐに魔力が切れる。タンクだけなら、そもそも魔法が発動できない。だから、魔女とタンクは二人でひとつ。一蓮托生」
「ふーん……」
「だから、優秀なタンクを手に入れるため、魔女は普段から人間界を各々調査してる」
「ふーん。お前も調査してるのか?」
「ん。してた」
「大変なのな。どんくらいの期間してたんだ?」
「……5年?」
「5年っ!? ロリババア系か、お前っ!?」
「……失礼」
ロリババアのほっぺが膨れだした。
「え、お前いま何歳なんだ?」
「……女性に年齢を聞くのは、大変に失礼」
「とても大事なことなんです!」
「……はぁ。……んと、ひのふの……たぶん、14歳」
全然ロリババアじゃなかった。ていうか2個年下だ。
「びっくりさせるなよ……。まあ、俺はババア結婚してくれ派だから実年齢はどっちでもいいけど」
「このタンクは変な派閥に所属している。……早まっただろうか」
「ん? 今14で、5年調査してたってことは……お前、9歳の頃からこの世界を調査してたのか? 向こうにゃ小学校とかないのか?」
「常に調査してた訳じゃない。放課後とか、休みの時とか、そういう時に調査に来てた」
「なるほど。部活みたいな感じなのか」
「ん。魔女の世界とこっちの世界をちょくちょく行き来してた」
「へぇ、そんな簡単に行き来できるんだ。どこでもドア的な道具があるのか?」
「んんん。魔法」
そう言って、ラピスは何事かつぶやいた。空間が歪み、青いうねうねした輪郭の穴が開いた。
「……こんな感じ。ポータル。こっちと私の世界を繋ぐ門。……これができないとこの世界には来てはいけないという、すごい魔法。……弱冠9歳で取得した私はすごい」
「ふーん」
うねうねしてる周辺に手をやると、俺の手までうねうねして見える。空間が歪んでいるのか。
「あまり近づくと、向こうの世界に行っちゃうから注意」
「そか。ちなみに、俺みたいな普通の人間が向こうに行くとどうなるんだ?」
「……体中の内臓が裏返って2、3日苦しんだ後、死ぬ?」
ものすごい勢いでポータルから遠ざかる。
「今すぐ消してください!」
「……まだほめてもらってないから嫌だ」(ほっぺぷくー)
「ええい! なんて厄介な奴だ! ええい!」
「はやくほめろ。天才の私をほめろ」(うずうず)
「ああもう! ああもう! 弱冠9歳というロリ歳でポータルという魔法を習得したラピスはすごいなあ!」(なでなで)
「…………」(嬉しい)
「褒めたので! 早くあの処刑装置を消してください!」
「もっとなでろ」
「ええい! ええぇい!」(なでなでなで)
「…………」(嬉しい)
「もういいですか!?」
「ん」
ラピスが手を軽く上げると、ポータルは音もなく消えた。
「はふぅ……なんだってこんなうららかな日に突然死に瀕さなけりゃいけないんだよ……」
「まあ、別に人間が私の世界に来ても死にはしないけど」
「なんだとぉ!?」
「騙した。……すごい?」
「あーすごいすごい」(頬をぎりぎりとつねりながら)
「……つねられている。あまり褒められている気がしない」
「まったく……この魔法使いは厄介だ」
つねって気が晴れたので手を離してやる。あと、一応頬をさすさすしてあげる。
「それと、普通に町中で魔法を使うな。今は偶然誰もいないからいいけど、もし誰かいたら騒ぎになってるぞ?」
「…………」(ほっぺぷくー)
ラピスは不満げに頬を膨らませつつ、俺の手を取ったあああああ!?
「な、なんでしょうか、いきなり」
「……魔力の補充。くっつかないと補充できない」
「ああなるほどこれがタンクとやらの役目なんですね」
などと冷静を装っているが、やはり女子との接触に慣れていないので挙動が不審になったのだろう、ラピスがじとーっとした目でこちらを見ているではないか!
「……どきどき?」
「はい!」
力いっぱい答えたら、目を見開かれた。
「……びっくり。予想に反する行動。変な奴。……うん、やっぱ私のタンクに最適」
「別に好きで変な訳ではない」
「……ツンデレだ」
この魔女は妙に人間界に精通していて困る。
「か、勘違いしないでよね! 別に好きで変な訳じゃないんだからねっ!」
「……ツンデレ度が増した」
そしてのってしまう俺もどうかと思う。
「……このタンクは楽しい。容量もいっぱいだし、やっぱりこのタンクは大当たりだ」
「人を物扱いするない」
「……ただ、頭が悪いのが難点」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「ずっと、観察してた」
あー、そういや5年ほど調査してたって言ってたな。……え? ずっと?
「あの。まさかとは思いますが、5年ずっと俺を監視してたんじゃない……よね?」
「……流石にそんなにはしてない」
「だよねー。あー安心した」
「4年と少しくらい」
「俺の安心を返してください!」
「最初、色んな人間を観察したけど、どの人間もあんまり面白くなかった。……でも、このタンクは面白かった。容量もすごくいっぱいあるみたいだから、マークしてた」
「勘弁してください。本当に」
「……だから、このタンクがどういう人間か、よく分かってるつもり」
ぼくはいまとんでもないすとーかーとてをつないでいます。
「……私のことをストーカーって思ってる」(ほっぺぷくー)
「いや、そりゃ思いますよ! そう思わない奴は信じられないくらいのお人好しか、途方もない馬鹿ですよ!」
「……このタンクは後者だよ?」
「お前の考えはよく分かった」
とりあえず、空いてる手でラピスのほっぺを引っ張ってやる。
「……痛い」
まるで堪えた様子がないよコンチクショウ。
「……私のタンクになるの、嫌?」
きゅっ、と手が強く握られる。ラピスの顔が不安で曇る。この状態で嫌だと言える奴がいたら、俺はある意味尊敬するが、それ以上に軽蔑する。
「あー。その、困惑してるだけで、嫌というわけではなくてだな」
「……まあ、タンクの考えなんて知ったことじゃないんだけど」
「人が必死こいてモテ台詞をはいたのになんつー言い草だ!」
「……うーん、やっぱり変なタンク」
などと呟きながら説明回を終えるラピスだった。
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【ゆら姉と七瀬 鍵】
2012年06月06日
今日は休日なので寝まくりだ。
「すひゃー……すひゃひゃー……」
そして当然のようにゆら姉が俺のすぐ隣で間抜け顔を晒したまま寝ている。
「いくら姉とはいえ、気を許しすぎだろ……」
などと一人ごちていると、突如悪戯心がムクムクと鎌首をもたげ始めた。もたげるなら仕方ないので、ゆら姉の鼻をきゅっとつまんでみる。
「……ん、んん……」
ゆら姉の顔が苦悶に歪む。そして続けざまにゆら姉の口の前に指を持っていく。
「……ぷはっ。……はむ」
理想の展開だ。苦しくなったゆら姉は口を開き、そして無意識にだろうが、目の前の俺の指を口に含んだではないか。ゆら姉の口腔内は熱くぬらぬらしている。……快い、快いぞ!
「ふふふ……ふわーっははははっ!」
「ちゅぷ……ん? ふぁ!?」
思わず高笑いしたらゆら姉が起きてしまった。我ながら馬鹿すぎる。
「え、えと、アキくん、お、おはよ」
「おはようございます」
「……はむ。どしてお姉ちゃん、アキくんの指を咥えてるの?」
「まあ、その、なんというか、想像通りです」
「!? ち、違うんだよアキくん!? そりゃ無意識にアキくんの指をちゅぱちゅぱしちゃったのは悪いとは思うけど、でもアキくんも嫌がらないと!」
「いや、俺がゆら姉の前に持っていったから、嫌がるも何もない」
「……お姉ちゃんがアキくんの指を無理やりしゃぶったんじゃなくて?」
「うぃ」
「……そ、そっか。……も、もー。アキくんは、そんなにお姉ちゃんにぺろぺろされたかったの? もー、もー♪」
「いや、別にそうではなくて」
「もー、もー、もー♪」
単にイタズラでやったのだけど、と言いたかったのだけど、ゆら姉がもーもー言いながら俺の鼻をふにふに押しまくる超ご機嫌体質になったので黙っておこう。
「さて、それじゃゆら姉も起きたことだし、そろそろ飯でも──」
「…………」
いる。窓の外、庭。誰かが、じーっと、こっちを見ている。
「…………」ニコリ
その何かと、目が、合った。
「ん? どしたの、アキく……ふべっ」
素早くゆら姉をベッドから叩き落とし、暴漢から遠ざける。何かないか……武器になるものは!
「……どしたの、きょろきょろして?」
「武器、武器は!」
「……これなんかお薦め。七瀬印の懐中電灯。大きめなので、棍棒代わりになる?」
「なるほど、こんだけ大きけりゃ暴漢も一撃ってうわあ」
「?」
暴漢と思ってた人物にマグライトを渡されていた。ていうか暴漢じゃなくて、七瀬だった。窓をどっこいしょとくぐり、部屋の中に入ってきてる。
「七瀬かよ……なんでこんな朝早くに、しかも庭にいるんだ? そして庭には二羽七瀬がいるのか?」
「にわにわにわななせがいる。……これじゃ早口言葉にならない?」
「残念だね」ナデナデ
「…………」(ちょっと嬉しそう)
「んで、どったんだ、こんな朝早くに」
「新参とはいえ姉なので、一秒でも早く弟に会いたかった?」
「なるほど、姉の鑑だな。天晴!」ナデナデ
「…………」(ちょっと嬉しい)
「でも次からは普通に玄関から入って来てください。心臓が止まるかと思ったよ」
「鍵がかかってたから。七瀬に合鍵をくれる?」
「ん、んー……俺だけなら別に構わないんだけど、ゆら姉がなんて言うかなあ。あとで相談してみるよ」
「じゃあ、それまでこうして窓から来るね? ……通い姉?」
俺の知らない単語だ。
「ところで、ゆら姉どしたんだ? さっきから黙ってるけど……」
「きゅう……」
ベッドから落ちて目を回してた。
「もー! なんでアキくんはお姉ちゃんを気絶させるの!」
「ごめんなさい」
ゆら姉が目を覚ました現在、がっつり怒られています。正座して反省してる感を出すが、一向にゆら姉の勢いは治まらない。
「彰人だけが悪いんじゃない。七瀬も少し悪いから一緒に怒られるべき?」
「ていうか主に貴方が悪いんですっ! 七瀬ちゃんが来なきゃアキくんと一緒にお布団の中でちゅっちゅちゅっちゅできたのにーっ!」
別に七瀬が来なくてもそんな未来は訪れなかったように思える。
「……!」
衝撃を受けるな、七瀬。大丈夫、そんなことはありえないから。
「……七瀬も姉だし、ちゅーしていい?」
「しまった、七瀬も馬鹿だったか」
「…………」ムーッ
機嫌を損ねてしまったようだ。七瀬の頬が膨らんでいく。
「七瀬じゃなくて、七瀬、お姉ちゃん?」
「呼び方で怒ったのか」
「七瀬、お姉ちゃん?」
「……七瀬お姉ちゃん」
「えへへ。彰人は甘えん坊だね?」ナデナデ
弟扱いというより、どうにもペット扱いされてる気がしてならない。
「こらっ! 先住姉を差し置いて弟を甘やかすなんて許しませんよっ!」ナデナデ
「怒ってる最中じゃなかったっけ?」
ダブルなでなでを受けながら、一応ゆら姉に訊ねておく。
「だ、だって、お姉ちゃんもアキくんなでたいし……」
怒りよりなで欲が勝ったか。
「あ、そだ。ゆら姉、またこういうことがあってもなんだし、七瀬に合鍵やっていい?」
「絶対ダメですっっっっっ!!!!!」
耳元で超絶でかい声出されたので、もう何も聞こえません。
「うぉぉ……なんという音波兵器……」
「こっ、これっ、お姉ちゃんの! お姉ちゃんのだから、彼女とかダメなのっ!」
ゆら姉は俺をかき抱き、何か叫んだ。だが、耳がキーンとなってるので何を言ってるのか分からない。
「彼女ではなくて、姉だから大丈夫な予感?」
「……うー、じゃ、そういう感情はないんだね?」
「ない。なでたり抱っこしたりぺろぺろしたり一緒に寝たりお風呂入ったりして、一生一緒にいたいだけ?」
「……普通の姉の思考ね。分かった、そういうことなら鍵をあげてもいいわ」
なんとなくだが、何か頭の悪い会話が交わされている気がする。……っと、ようやく耳が元に戻ってきた。
「ほら、彰人。鍵、もらったよ?」
「おお、ゆら姉に認められたか。よかったな」ナデナデ
七瀬は軽く頬を染めたまま、小さくコクコク頷いた。なんか可愛い。
「じゃあ次はお姉ちゃんがなでられる番!」
七瀬の隣に座り、ゆら姉がキラキラしたおめめでこちらを見ている。
「スク水ランドセルで『おなかくるしいからもう出さないでぇ』って辛そうに言ってくれたらなでる」
「アキくんッ!!!」
「はいすいません」
調子に乗るとすぐ怒られる。それ以前の問題な気がしないでもないが。
「……七瀬がしてあげようか?」
「マジかっ!?」
思わぬところで俺の夢が叶おうとしている。持つべきものは姉だな!
「七瀬ちゃんっ!!!」
「怒られたから、しない」
持つべきものは姉だったが、別の姉の介入により夢は夢のままで終わってしまった。チクショウ。
「すひゃー……すひゃひゃー……」
そして当然のようにゆら姉が俺のすぐ隣で間抜け顔を晒したまま寝ている。
「いくら姉とはいえ、気を許しすぎだろ……」
などと一人ごちていると、突如悪戯心がムクムクと鎌首をもたげ始めた。もたげるなら仕方ないので、ゆら姉の鼻をきゅっとつまんでみる。
「……ん、んん……」
ゆら姉の顔が苦悶に歪む。そして続けざまにゆら姉の口の前に指を持っていく。
「……ぷはっ。……はむ」
理想の展開だ。苦しくなったゆら姉は口を開き、そして無意識にだろうが、目の前の俺の指を口に含んだではないか。ゆら姉の口腔内は熱くぬらぬらしている。……快い、快いぞ!
「ふふふ……ふわーっははははっ!」
「ちゅぷ……ん? ふぁ!?」
思わず高笑いしたらゆら姉が起きてしまった。我ながら馬鹿すぎる。
「え、えと、アキくん、お、おはよ」
「おはようございます」
「……はむ。どしてお姉ちゃん、アキくんの指を咥えてるの?」
「まあ、その、なんというか、想像通りです」
「!? ち、違うんだよアキくん!? そりゃ無意識にアキくんの指をちゅぱちゅぱしちゃったのは悪いとは思うけど、でもアキくんも嫌がらないと!」
「いや、俺がゆら姉の前に持っていったから、嫌がるも何もない」
「……お姉ちゃんがアキくんの指を無理やりしゃぶったんじゃなくて?」
「うぃ」
「……そ、そっか。……も、もー。アキくんは、そんなにお姉ちゃんにぺろぺろされたかったの? もー、もー♪」
「いや、別にそうではなくて」
「もー、もー、もー♪」
単にイタズラでやったのだけど、と言いたかったのだけど、ゆら姉がもーもー言いながら俺の鼻をふにふに押しまくる超ご機嫌体質になったので黙っておこう。
「さて、それじゃゆら姉も起きたことだし、そろそろ飯でも──」
「…………」
いる。窓の外、庭。誰かが、じーっと、こっちを見ている。
「…………」ニコリ
その何かと、目が、合った。
「ん? どしたの、アキく……ふべっ」
素早くゆら姉をベッドから叩き落とし、暴漢から遠ざける。何かないか……武器になるものは!
「……どしたの、きょろきょろして?」
「武器、武器は!」
「……これなんかお薦め。七瀬印の懐中電灯。大きめなので、棍棒代わりになる?」
「なるほど、こんだけ大きけりゃ暴漢も一撃ってうわあ」
「?」
暴漢と思ってた人物にマグライトを渡されていた。ていうか暴漢じゃなくて、七瀬だった。窓をどっこいしょとくぐり、部屋の中に入ってきてる。
「七瀬かよ……なんでこんな朝早くに、しかも庭にいるんだ? そして庭には二羽七瀬がいるのか?」
「にわにわにわななせがいる。……これじゃ早口言葉にならない?」
「残念だね」ナデナデ
「…………」(ちょっと嬉しそう)
「んで、どったんだ、こんな朝早くに」
「新参とはいえ姉なので、一秒でも早く弟に会いたかった?」
「なるほど、姉の鑑だな。天晴!」ナデナデ
「…………」(ちょっと嬉しい)
「でも次からは普通に玄関から入って来てください。心臓が止まるかと思ったよ」
「鍵がかかってたから。七瀬に合鍵をくれる?」
「ん、んー……俺だけなら別に構わないんだけど、ゆら姉がなんて言うかなあ。あとで相談してみるよ」
「じゃあ、それまでこうして窓から来るね? ……通い姉?」
俺の知らない単語だ。
「ところで、ゆら姉どしたんだ? さっきから黙ってるけど……」
「きゅう……」
ベッドから落ちて目を回してた。
「もー! なんでアキくんはお姉ちゃんを気絶させるの!」
「ごめんなさい」
ゆら姉が目を覚ました現在、がっつり怒られています。正座して反省してる感を出すが、一向にゆら姉の勢いは治まらない。
「彰人だけが悪いんじゃない。七瀬も少し悪いから一緒に怒られるべき?」
「ていうか主に貴方が悪いんですっ! 七瀬ちゃんが来なきゃアキくんと一緒にお布団の中でちゅっちゅちゅっちゅできたのにーっ!」
別に七瀬が来なくてもそんな未来は訪れなかったように思える。
「……!」
衝撃を受けるな、七瀬。大丈夫、そんなことはありえないから。
「……七瀬も姉だし、ちゅーしていい?」
「しまった、七瀬も馬鹿だったか」
「…………」ムーッ
機嫌を損ねてしまったようだ。七瀬の頬が膨らんでいく。
「七瀬じゃなくて、七瀬、お姉ちゃん?」
「呼び方で怒ったのか」
「七瀬、お姉ちゃん?」
「……七瀬お姉ちゃん」
「えへへ。彰人は甘えん坊だね?」ナデナデ
弟扱いというより、どうにもペット扱いされてる気がしてならない。
「こらっ! 先住姉を差し置いて弟を甘やかすなんて許しませんよっ!」ナデナデ
「怒ってる最中じゃなかったっけ?」
ダブルなでなでを受けながら、一応ゆら姉に訊ねておく。
「だ、だって、お姉ちゃんもアキくんなでたいし……」
怒りよりなで欲が勝ったか。
「あ、そだ。ゆら姉、またこういうことがあってもなんだし、七瀬に合鍵やっていい?」
「絶対ダメですっっっっっ!!!!!」
耳元で超絶でかい声出されたので、もう何も聞こえません。
「うぉぉ……なんという音波兵器……」
「こっ、これっ、お姉ちゃんの! お姉ちゃんのだから、彼女とかダメなのっ!」
ゆら姉は俺をかき抱き、何か叫んだ。だが、耳がキーンとなってるので何を言ってるのか分からない。
「彼女ではなくて、姉だから大丈夫な予感?」
「……うー、じゃ、そういう感情はないんだね?」
「ない。なでたり抱っこしたりぺろぺろしたり一緒に寝たりお風呂入ったりして、一生一緒にいたいだけ?」
「……普通の姉の思考ね。分かった、そういうことなら鍵をあげてもいいわ」
なんとなくだが、何か頭の悪い会話が交わされている気がする。……っと、ようやく耳が元に戻ってきた。
「ほら、彰人。鍵、もらったよ?」
「おお、ゆら姉に認められたか。よかったな」ナデナデ
七瀬は軽く頬を染めたまま、小さくコクコク頷いた。なんか可愛い。
「じゃあ次はお姉ちゃんがなでられる番!」
七瀬の隣に座り、ゆら姉がキラキラしたおめめでこちらを見ている。
「スク水ランドセルで『おなかくるしいからもう出さないでぇ』って辛そうに言ってくれたらなでる」
「アキくんッ!!!」
「はいすいません」
調子に乗るとすぐ怒られる。それ以前の問題な気がしないでもないが。
「……七瀬がしてあげようか?」
「マジかっ!?」
思わぬところで俺の夢が叶おうとしている。持つべきものは姉だな!
「七瀬ちゃんっ!!!」
「怒られたから、しない」
持つべきものは姉だったが、別の姉の介入により夢は夢のままで終わってしまった。チクショウ。
【ツンデレの頭にキノコを植えたら】
2012年06月04日
近頃の湿度ときたら菌類しか喜ばねえぜと思うくらいなので、まつりの頭にそーっとなめこを植えたらばれた。
「なんでわらわにキノコを植えるかや!?」
頭に乗ったなめこをそのままに、まつりがわななく。
「いや、これから梅雨まっしぐらだし、丁度いいかなと思って。んふんふ」
「まるで丁度よくないのじゃ! わらわは人間なのじゃ! こんなキノコ植えられてはかなわんのじゃ!」
「いや、まつりは人間じゃなくて猫だ」(断言)
「勝手に断言されてはとっても困るのじゃっ! わらわは人なのじゃ! 猫要素なぞどこにあろうと言うのじゃ?」
「頭になめこがのってるところ」
「それは猫要素ではないし、そもこれは貴様が植えたのじゃっ!」
「頭にキノコって馬鹿みてえだな」
「だから、貴様が、植えたのじゃッ!」
なんか半泣きになってて可哀想になったので、なめこを取ってやった。
「あっ、取れた! えへへっ、やったのじゃ、やったのじゃ♪」
嬉しそうだったので、また植えた。
「なんでなのなのじゃーっ!!?」
愕然としていたが、気を取り直すとまつりは自分でなめこを取ろうとした。
「あいたた! 痛い、取ろうとしたら痛いのじゃ! どやったら取れるのじゃ?」
「大丈夫、無理に引き抜けば取れる。ただ、我が家に伝わる秘術で脳と直結してるので、ちょっと脳も一緒にアレになるけど、まあ大丈夫だろ」
「どこに大丈夫な要素があるのじゃ!? 貴様他人事じゃと思って適当じゃろ!?」
「ばか、俺はいつだってまつりのことを大事に思ってるんだぞ?」
「……ぬ、ぬし様……ってえ、そもこれは貴様が植えたんじゃろうがっ!」
「大事に思ってはいるが、同時に殺意も抱いているがために怒った悲劇と言えよう」
「わらわ殺されるの!?」
「いや、一日や二日ではそう成長しないから大丈夫さ。ただ、時が経つにつれキノコが成長し、脳……あ、いや、大丈夫大丈夫」
「脳!!? 死ぬ、絶対にわらわ死んじゃう!」
「『わらわトんじゃう!』って淫らに言って」
「言うわけないのじゃ!」
「なんか語感が似てたし、どさくさに紛れれば大丈夫と思ったんだが、無理だった」
「びっくりするくらい阿呆じゃな、貴様」
「いや全く。はっはっは。んじゃ俺はこれで」
「んむっ。……ってえ! 帰ってはダメなのじゃ!」
颯爽と去ろうとしたら、すごい勢いで引き止められた。
「別れがたいのは分かるが、いつかはお互いの家に帰らなければならないだろう? 聞き分けてくれよ」
「なんでわらわが貴様を大好きってなってるかや!? いーからわらわのキノコを取るのじゃ!」
「脳ごとね。俺のゴリラパワーを魅せる時が来たか」
「キノコだけ! キノコだけを取るのじゃ! のっとごりらぱわー!」
「ちぇ」
しょうがないので、普通にキノコを取る。
「ふぅ、助かったのじゃ……ん? なんじゃ、そのキノコについとる小さいクリップは」
「このクリップでキノコとまつりの髪を繋ぎました」
「……秘術とかは?」
「いや、そんなの無理だし」
「騙したかや!? どーしてわらわを騙すかや!」
「そう怒るな。ほら見ろ、超魔術。おっきくなっちゃった」
「それ古いし大きくなるの耳なのにキノコが出てきちゃ訳が分からないのじゃ!」
「ところで猫もキノコ食えるの? まつり、試しに食ってみて」
「だから、わらわは人なのじゃあ!」
「ほう。では試してみよう」(ノドの下さわさわ)
「え、ええと……ご、ごろごろ?」
「よく分からんな。よし、明日ネコミミを持ってくるのでそれを一日中装着しておくように。それで判定しよう」
「それ貴様がわらわの痴態を見たいだけじゃろうがっ! 絶対につけんのじゃ!」
「じゃあ今日つけて」
懐に常備してあるネコミミをまつりの頭に素早く装着する。
「あっ、何するのじゃ!」
「……うむ! やっぱ可愛い!」(なでなで)
「……ま、まあ、あまり怒るのも大人気ないので、今回はよしとしてやるのじゃ」
なんかうにゃうにゃ口の中で言ってたが、なでさせてくれたので、いいや。
「なんでわらわにキノコを植えるかや!?」
頭に乗ったなめこをそのままに、まつりがわななく。
「いや、これから梅雨まっしぐらだし、丁度いいかなと思って。んふんふ」
「まるで丁度よくないのじゃ! わらわは人間なのじゃ! こんなキノコ植えられてはかなわんのじゃ!」
「いや、まつりは人間じゃなくて猫だ」(断言)
「勝手に断言されてはとっても困るのじゃっ! わらわは人なのじゃ! 猫要素なぞどこにあろうと言うのじゃ?」
「頭になめこがのってるところ」
「それは猫要素ではないし、そもこれは貴様が植えたのじゃっ!」
「頭にキノコって馬鹿みてえだな」
「だから、貴様が、植えたのじゃッ!」
なんか半泣きになってて可哀想になったので、なめこを取ってやった。
「あっ、取れた! えへへっ、やったのじゃ、やったのじゃ♪」
嬉しそうだったので、また植えた。
「なんでなのなのじゃーっ!!?」
愕然としていたが、気を取り直すとまつりは自分でなめこを取ろうとした。
「あいたた! 痛い、取ろうとしたら痛いのじゃ! どやったら取れるのじゃ?」
「大丈夫、無理に引き抜けば取れる。ただ、我が家に伝わる秘術で脳と直結してるので、ちょっと脳も一緒にアレになるけど、まあ大丈夫だろ」
「どこに大丈夫な要素があるのじゃ!? 貴様他人事じゃと思って適当じゃろ!?」
「ばか、俺はいつだってまつりのことを大事に思ってるんだぞ?」
「……ぬ、ぬし様……ってえ、そもこれは貴様が植えたんじゃろうがっ!」
「大事に思ってはいるが、同時に殺意も抱いているがために怒った悲劇と言えよう」
「わらわ殺されるの!?」
「いや、一日や二日ではそう成長しないから大丈夫さ。ただ、時が経つにつれキノコが成長し、脳……あ、いや、大丈夫大丈夫」
「脳!!? 死ぬ、絶対にわらわ死んじゃう!」
「『わらわトんじゃう!』って淫らに言って」
「言うわけないのじゃ!」
「なんか語感が似てたし、どさくさに紛れれば大丈夫と思ったんだが、無理だった」
「びっくりするくらい阿呆じゃな、貴様」
「いや全く。はっはっは。んじゃ俺はこれで」
「んむっ。……ってえ! 帰ってはダメなのじゃ!」
颯爽と去ろうとしたら、すごい勢いで引き止められた。
「別れがたいのは分かるが、いつかはお互いの家に帰らなければならないだろう? 聞き分けてくれよ」
「なんでわらわが貴様を大好きってなってるかや!? いーからわらわのキノコを取るのじゃ!」
「脳ごとね。俺のゴリラパワーを魅せる時が来たか」
「キノコだけ! キノコだけを取るのじゃ! のっとごりらぱわー!」
「ちぇ」
しょうがないので、普通にキノコを取る。
「ふぅ、助かったのじゃ……ん? なんじゃ、そのキノコについとる小さいクリップは」
「このクリップでキノコとまつりの髪を繋ぎました」
「……秘術とかは?」
「いや、そんなの無理だし」
「騙したかや!? どーしてわらわを騙すかや!」
「そう怒るな。ほら見ろ、超魔術。おっきくなっちゃった」
「それ古いし大きくなるの耳なのにキノコが出てきちゃ訳が分からないのじゃ!」
「ところで猫もキノコ食えるの? まつり、試しに食ってみて」
「だから、わらわは人なのじゃあ!」
「ほう。では試してみよう」(ノドの下さわさわ)
「え、ええと……ご、ごろごろ?」
「よく分からんな。よし、明日ネコミミを持ってくるのでそれを一日中装着しておくように。それで判定しよう」
「それ貴様がわらわの痴態を見たいだけじゃろうがっ! 絶対につけんのじゃ!」
「じゃあ今日つけて」
懐に常備してあるネコミミをまつりの頭に素早く装着する。
「あっ、何するのじゃ!」
「……うむ! やっぱ可愛い!」(なでなで)
「……ま、まあ、あまり怒るのも大人気ないので、今回はよしとしてやるのじゃ」
なんかうにゃうにゃ口の中で言ってたが、なでさせてくれたので、いいや。
【ツンデレを後ろからなでたら】
2012年05月31日
だらりだらりと登校してると、見覚えのある頭がゆらゆらしてたので、後ろからなでてみた。
「……この手の動き、そしてこの放射される波動。タカシとみた」
「当たり」
頭がくるりと振り返る。見慣れたちなみの顔が現れた。そのままなでり続行。
「つーか、なんだ波動って」
「……タカシの手から放たれる殺人光線?」
「知らぬ間に殺人鬼に成り果てていようとは。ちなみ、俺がこれ以上罪を重ねないよう、その手で俺を止めてくれ……!」
「分かった。殺す」
「少しくらいためらいがほしいですよね」
「……うーん。よし、殺す」
「葛藤が軽い! 愛しの人を殺すのだから、もうちょっと悩んで!」
「……別に愛しくない。むしろ、タカシがいない方が世界のためだ」
「酷い言われようだ」
「……タカシがいないと、世界中のようじょがのびのび出来て幸せだ」
「別に今でものびのびすればいいのに。さんはい」
「……私はようじょではない」
「小さいのに?」
「……小さいのに」
そう言いながら、さりげに俺の足をグリグリと踏んでくる。気にしていないようで気にしているようだ。
「……中学生に間違われるのはともかく、小学生に間違われるのはありえない」グリグリ
「その怒りをここで発散しないで」
「……背か? 胸か?」
「どっちもです」
「…………」グリグリグリ
「そろそろ足の甲に穴が空きそうな具合です」
「……ヒモを通して携帯するのに便利」
「非常食扱いするのやめてください」
「……なら、いい加減私の頭をなでるのを止めるべき」
「ん? おお、そういえばずっとなでてたね」ナデナデ
「……無意識の領域か。今日もタカシは私が好き過ぎる。その想いが届くことなど未来永劫ありえないというのに」
「いや、別に好きではないです」
「…………」グリグリグリグリッ
「痛い痛い痛いっ! 踏むな! 百歩譲って踏んでいいとしても、踵で踏むな!」
「……私のことを好きなくせに好きじゃないフリをする。……ツンデレとでも呼んで欲しいのか」
「いや、だから別に」
「……やーいツンデレ。ばればれだっちゅーの」
「いや、古すぎるうえ、胸をよせてもお前には無理だ。0はいくらかけても0のままなんだ」
「……貧乳が好きなくせに、貧乳を貶める。……こんなところにまでツンデレの弊害が」
「お前もうツンデレって言いたいだけだろ」
「……少し」
なんでちょっと恥ずかしそうなんだ。
「まあいいや。ほれ、一緒に行こうぜ」
「……でも、一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし」
「ときメモるな。そして今は下校ではなく登校中だ」
「……じゃあ安心だ」ギュッ
「ええっ!?」
「……うるさい」
迷惑そうな顔でじろりと睨まれた。いやしかしそれどころではなくて!
「な、なんで手を握るのでせうか」
「……一緒に学校に行く場合は、友達に噂とかされないので恥ずかしくないから」
「いや、手を握ったりなんてしたら噂はされると思うのですが」
「……それは盲点だった」
「しまった、こいつ思ったより馬鹿だ!」
「……そういうこと言うと、手を離す」
「なるほど、じゃあ言わない」
「……ん」
そんなわけで、なんか知らんがおててつないで学校へ行くことになった。でもちなみの手がやわこいからいいや!
「……この手の動き、そしてこの放射される波動。タカシとみた」
「当たり」
頭がくるりと振り返る。見慣れたちなみの顔が現れた。そのままなでり続行。
「つーか、なんだ波動って」
「……タカシの手から放たれる殺人光線?」
「知らぬ間に殺人鬼に成り果てていようとは。ちなみ、俺がこれ以上罪を重ねないよう、その手で俺を止めてくれ……!」
「分かった。殺す」
「少しくらいためらいがほしいですよね」
「……うーん。よし、殺す」
「葛藤が軽い! 愛しの人を殺すのだから、もうちょっと悩んで!」
「……別に愛しくない。むしろ、タカシがいない方が世界のためだ」
「酷い言われようだ」
「……タカシがいないと、世界中のようじょがのびのび出来て幸せだ」
「別に今でものびのびすればいいのに。さんはい」
「……私はようじょではない」
「小さいのに?」
「……小さいのに」
そう言いながら、さりげに俺の足をグリグリと踏んでくる。気にしていないようで気にしているようだ。
「……中学生に間違われるのはともかく、小学生に間違われるのはありえない」グリグリ
「その怒りをここで発散しないで」
「……背か? 胸か?」
「どっちもです」
「…………」グリグリグリ
「そろそろ足の甲に穴が空きそうな具合です」
「……ヒモを通して携帯するのに便利」
「非常食扱いするのやめてください」
「……なら、いい加減私の頭をなでるのを止めるべき」
「ん? おお、そういえばずっとなでてたね」ナデナデ
「……無意識の領域か。今日もタカシは私が好き過ぎる。その想いが届くことなど未来永劫ありえないというのに」
「いや、別に好きではないです」
「…………」グリグリグリグリッ
「痛い痛い痛いっ! 踏むな! 百歩譲って踏んでいいとしても、踵で踏むな!」
「……私のことを好きなくせに好きじゃないフリをする。……ツンデレとでも呼んで欲しいのか」
「いや、だから別に」
「……やーいツンデレ。ばればれだっちゅーの」
「いや、古すぎるうえ、胸をよせてもお前には無理だ。0はいくらかけても0のままなんだ」
「……貧乳が好きなくせに、貧乳を貶める。……こんなところにまでツンデレの弊害が」
「お前もうツンデレって言いたいだけだろ」
「……少し」
なんでちょっと恥ずかしそうなんだ。
「まあいいや。ほれ、一緒に行こうぜ」
「……でも、一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし」
「ときメモるな。そして今は下校ではなく登校中だ」
「……じゃあ安心だ」ギュッ
「ええっ!?」
「……うるさい」
迷惑そうな顔でじろりと睨まれた。いやしかしそれどころではなくて!
「な、なんで手を握るのでせうか」
「……一緒に学校に行く場合は、友達に噂とかされないので恥ずかしくないから」
「いや、手を握ったりなんてしたら噂はされると思うのですが」
「……それは盲点だった」
「しまった、こいつ思ったより馬鹿だ!」
「……そういうこと言うと、手を離す」
「なるほど、じゃあ言わない」
「……ん」
そんなわけで、なんか知らんがおててつないで学校へ行くことになった。でもちなみの手がやわこいからいいや!
【ツンデレがイタズラで放つ曼陀羅ふにゅー】
2012年05月28日
ちなみがちょこちょこ寄ってきて、俺の服をクイクイと引っ張る。
「……技を覚えたので喰らってはどうか」
もう嫌な予感しかしねえ。
「あの、嫌です」
「……流石はタカシ、何の憂いもなく受け入れるとは。あっぱれ」
「いや断ったよ俺!? 聞いてる!?」
「……いでよ、必殺」
「必殺!?」
「……曼荼羅ふにゅー」
ちなみの全面の空間に曼荼羅模様が現れ、ふにゅーと鳴いた。
『ふにゅー』
「……ふにゅー」
曼荼羅とちなみがステレオでふにゅーと言ってる。どう収拾をつければいいのか。
「ええと。個人的にはこっちのが好きです」
ちなみの頭をなでながらそう言ってみる。
「……やれやれ、また告白された。タカシは私が好き過ぎる」
「してねぇ」
「……ふにゅー」
「これは可愛い」ナデナデ
「……ほら見たことか」
心なしか誇らしげな表情でちなみが呟く。
「んで、なんでこんなことをしますか」
「……イタズラ」
「いたずら、かなぁ……?」
俺の知ってるイタズラとはかけ離れているような気がする。まず、曼荼羅を放つという事態が分からない。
「それより、あの曼荼羅いい加減うるさいのだが」
さっきからずっとふにゅーふにゅー言っててうるさい。
「……ふにゅーふにゅー」
「なんで対抗するか」ナデナデ
「……負けん気が刺激された」
俺もよっぽどだが、コイツも結構な変人だと思った。あと、やっぱり曼荼羅のふにゅーがうるさい。
「……技を覚えたので喰らってはどうか」
もう嫌な予感しかしねえ。
「あの、嫌です」
「……流石はタカシ、何の憂いもなく受け入れるとは。あっぱれ」
「いや断ったよ俺!? 聞いてる!?」
「……いでよ、必殺」
「必殺!?」
「……曼荼羅ふにゅー」
ちなみの全面の空間に曼荼羅模様が現れ、ふにゅーと鳴いた。
『ふにゅー』
「……ふにゅー」
曼荼羅とちなみがステレオでふにゅーと言ってる。どう収拾をつければいいのか。
「ええと。個人的にはこっちのが好きです」
ちなみの頭をなでながらそう言ってみる。
「……やれやれ、また告白された。タカシは私が好き過ぎる」
「してねぇ」
「……ふにゅー」
「これは可愛い」ナデナデ
「……ほら見たことか」
心なしか誇らしげな表情でちなみが呟く。
「んで、なんでこんなことをしますか」
「……イタズラ」
「いたずら、かなぁ……?」
俺の知ってるイタズラとはかけ離れているような気がする。まず、曼荼羅を放つという事態が分からない。
「それより、あの曼荼羅いい加減うるさいのだが」
さっきからずっとふにゅーふにゅー言っててうるさい。
「……ふにゅーふにゅー」
「なんで対抗するか」ナデナデ
「……負けん気が刺激された」
俺もよっぽどだが、コイツも結構な変人だと思った。あと、やっぱり曼荼羅のふにゅーがうるさい。