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2024年12月04日
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【ゆら姉と七瀬 鍵】

2012年06月06日
 今日は休日なので寝まくりだ。
「すひゃー……すひゃひゃー……」
 そして当然のようにゆら姉が俺のすぐ隣で間抜け顔を晒したまま寝ている。
「いくら姉とはいえ、気を許しすぎだろ……」
 などと一人ごちていると、突如悪戯心がムクムクと鎌首をもたげ始めた。もたげるなら仕方ないので、ゆら姉の鼻をきゅっとつまんでみる。
「……ん、んん……」
 ゆら姉の顔が苦悶に歪む。そして続けざまにゆら姉の口の前に指を持っていく。
「……ぷはっ。……はむ」
 理想の展開だ。苦しくなったゆら姉は口を開き、そして無意識にだろうが、目の前の俺の指を口に含んだではないか。ゆら姉の口腔内は熱くぬらぬらしている。……快い、快いぞ!
「ふふふ……ふわーっははははっ!」
「ちゅぷ……ん? ふぁ!?」
 思わず高笑いしたらゆら姉が起きてしまった。我ながら馬鹿すぎる。
「え、えと、アキくん、お、おはよ」
「おはようございます」
「……はむ。どしてお姉ちゃん、アキくんの指を咥えてるの?」
「まあ、その、なんというか、想像通りです」
「!? ち、違うんだよアキくん!? そりゃ無意識にアキくんの指をちゅぱちゅぱしちゃったのは悪いとは思うけど、でもアキくんも嫌がらないと!」
「いや、俺がゆら姉の前に持っていったから、嫌がるも何もない」
「……お姉ちゃんがアキくんの指を無理やりしゃぶったんじゃなくて?」
「うぃ」
「……そ、そっか。……も、もー。アキくんは、そんなにお姉ちゃんにぺろぺろされたかったの? もー、もー♪」
「いや、別にそうではなくて」
「もー、もー、もー♪」
 単にイタズラでやったのだけど、と言いたかったのだけど、ゆら姉がもーもー言いながら俺の鼻をふにふに押しまくる超ご機嫌体質になったので黙っておこう。
「さて、それじゃゆら姉も起きたことだし、そろそろ飯でも──」
「…………」
 いる。窓の外、庭。誰かが、じーっと、こっちを見ている。
「…………」ニコリ
 その何かと、目が、合った。
「ん? どしたの、アキく……ふべっ」
 素早くゆら姉をベッドから叩き落とし、暴漢から遠ざける。何かないか……武器になるものは!
「……どしたの、きょろきょろして?」
「武器、武器は!」
「……これなんかお薦め。七瀬印の懐中電灯。大きめなので、棍棒代わりになる?」
「なるほど、こんだけ大きけりゃ暴漢も一撃ってうわあ」
「?」
 暴漢と思ってた人物にマグライトを渡されていた。ていうか暴漢じゃなくて、七瀬だった。窓をどっこいしょとくぐり、部屋の中に入ってきてる。
「七瀬かよ……なんでこんな朝早くに、しかも庭にいるんだ? そして庭には二羽七瀬がいるのか?」
「にわにわにわななせがいる。……これじゃ早口言葉にならない?」
「残念だね」ナデナデ
「…………」(ちょっと嬉しそう)
「んで、どったんだ、こんな朝早くに」
「新参とはいえ姉なので、一秒でも早く弟に会いたかった?」
「なるほど、姉の鑑だな。天晴!」ナデナデ
「…………」(ちょっと嬉しい)
「でも次からは普通に玄関から入って来てください。心臓が止まるかと思ったよ」
「鍵がかかってたから。七瀬に合鍵をくれる?」
「ん、んー……俺だけなら別に構わないんだけど、ゆら姉がなんて言うかなあ。あとで相談してみるよ」
「じゃあ、それまでこうして窓から来るね? ……通い姉?」
 俺の知らない単語だ。
「ところで、ゆら姉どしたんだ? さっきから黙ってるけど……」
「きゅう……」
 ベッドから落ちて目を回してた。

「もー! なんでアキくんはお姉ちゃんを気絶させるの!」
「ごめんなさい」
 ゆら姉が目を覚ました現在、がっつり怒られています。正座して反省してる感を出すが、一向にゆら姉の勢いは治まらない。
「彰人だけが悪いんじゃない。七瀬も少し悪いから一緒に怒られるべき?」
「ていうか主に貴方が悪いんですっ! 七瀬ちゃんが来なきゃアキくんと一緒にお布団の中でちゅっちゅちゅっちゅできたのにーっ!」
 別に七瀬が来なくてもそんな未来は訪れなかったように思える。
「……!」
 衝撃を受けるな、七瀬。大丈夫、そんなことはありえないから。
「……七瀬も姉だし、ちゅーしていい?」
「しまった、七瀬も馬鹿だったか」
「…………」ムーッ
 機嫌を損ねてしまったようだ。七瀬の頬が膨らんでいく。
「七瀬じゃなくて、七瀬、お姉ちゃん?」
「呼び方で怒ったのか」
「七瀬、お姉ちゃん?」
「……七瀬お姉ちゃん」
「えへへ。彰人は甘えん坊だね?」ナデナデ
 弟扱いというより、どうにもペット扱いされてる気がしてならない。
「こらっ! 先住姉を差し置いて弟を甘やかすなんて許しませんよっ!」ナデナデ
「怒ってる最中じゃなかったっけ?」
 ダブルなでなでを受けながら、一応ゆら姉に訊ねておく。
「だ、だって、お姉ちゃんもアキくんなでたいし……」
 怒りよりなで欲が勝ったか。
「あ、そだ。ゆら姉、またこういうことがあってもなんだし、七瀬に合鍵やっていい?」
「絶対ダメですっっっっっ!!!!!」
 耳元で超絶でかい声出されたので、もう何も聞こえません。
「うぉぉ……なんという音波兵器……」
「こっ、これっ、お姉ちゃんの! お姉ちゃんのだから、彼女とかダメなのっ!」
 ゆら姉は俺をかき抱き、何か叫んだ。だが、耳がキーンとなってるので何を言ってるのか分からない。
「彼女ではなくて、姉だから大丈夫な予感?」
「……うー、じゃ、そういう感情はないんだね?」
「ない。なでたり抱っこしたりぺろぺろしたり一緒に寝たりお風呂入ったりして、一生一緒にいたいだけ?」
「……普通の姉の思考ね。分かった、そういうことなら鍵をあげてもいいわ」
 なんとなくだが、何か頭の悪い会話が交わされている気がする。……っと、ようやく耳が元に戻ってきた。
「ほら、彰人。鍵、もらったよ?」
「おお、ゆら姉に認められたか。よかったな」ナデナデ
 七瀬は軽く頬を染めたまま、小さくコクコク頷いた。なんか可愛い。
「じゃあ次はお姉ちゃんがなでられる番!」
 七瀬の隣に座り、ゆら姉がキラキラしたおめめでこちらを見ている。
「スク水ランドセルで『おなかくるしいからもう出さないでぇ』って辛そうに言ってくれたらなでる」
「アキくんッ!!!」
「はいすいません」
 調子に乗るとすぐ怒られる。それ以前の問題な気がしないでもないが。
「……七瀬がしてあげようか?」
「マジかっ!?」
 思わぬところで俺の夢が叶おうとしている。持つべきものは姉だな!
「七瀬ちゃんっ!!!」
「怒られたから、しない」
 持つべきものは姉だったが、別の姉の介入により夢は夢のままで終わってしまった。チクショウ。

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