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2024年11月23日
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【素直クールと一緒にホラー映画】

2010年04月01日
 部屋でぼんやり涼んでると、いきなりクーが乱入してきた。
「ノックは無用!?」
「映画に行かないか? タダ券を貰ったんだ」
「あ、行く行くー」
 突然の乱入者に驚いてるにも関わらず、タダという響きに弱い俺はコクコク頷いていた。
「いや、それよりあの、クー? 部屋に入る時はノックくらいしてほしいな、と……」
「では行こう。さ、早く」
「え、あのでも俺まだパジャマで、その」
「キミの魅力はたとえパジャマだとしても、まるで陰らないから大丈夫だ。私が太鼓判を押そう」
 仮にそうだとしても、パジャマで外に飛び出すのは勇気が必要です。
「とにかく、着替えるから待っててくれ」
「分かった」(すごい熱視線を俺の股間付近に向けながら)
「……少しの間、部屋から出てくれていると非常に助かります」
「残念だ……」
 心底残念そうに眉尻を下げながら、クーは部屋から出て行った。ぱっぱと着替え、クーと一緒に映画館へ。
「そういや聞いてなかったけど、映画ってどんなのだ? アニメ? アニメか? アニメいいよね」
「期待に応えられなくて残念なのだが、ホラーだ」
 俺の足が止まった。
「ホラー……って、あの、血がぴゅーって出たりするやつ?」
「ああ、出るな。血どころか、内臓も出るだろう」
「帰る」
「待て、いきなり帰るな。……ひょっとして、ホラー苦手なのか?」
「にに、苦手ではないデスよ? た、ただ、爺さんの遺言でホラー映画だけは婦女子と一緒に見るなと」
「キミの祖父はまだ鬼籍に入ってないだろう。先日、コロッケ屋の前で会ったぞ」
「時々生き返るんだ。ウチの家系は黄泉返りがちなんだ」
「なるほど……ということは、キミも死んだら生き返るのか? それなら、キミが死んでも安心だな」
「嘘です信じないで死ぬともう生き返りません!」
 クーは俺の言葉を疑わないので、うっかりボケると大変なことになる。
「……また騙された。注意しているのだが、どうしてもキミの言葉はつい信じてしまう」
 具体的には、こうしてクーが落ち込む。
「あーごめんごめん。ほれ、落ち込むない」
 クーの頭をなでてご機嫌を取る。ボケる→落ち込む→なでる、はセットになっております。
「……♪」(ご満悦)
 機嫌の直ったクーと一緒に映画館へ。
「……何か忘れているような」
「忘れているということは、どうでもいいことなのだろう」
「それもそうな」
 クーと一緒に映画館に入る。うん、どうでもいいことじゃなかったよ。

「……うぇっぷ」
 近くの喫茶店で休憩する。もう赤色は嫌です。
「大丈夫か? 酷い顔だが……」
「生まれつきなので罵倒しないでください!」
「ああ、違う違う。造詣ではなく、顔色のことだ。キミの顔は……私はすごく好きだぞ?」
「あー、どーもー」
 なんだかこそばゆくなるようなことを言われているようだが、気分が悪くてそれどころではない。
「お待ちどうさま、こちらトマトジュースになります」
 しかも、何の恨みがあるのか知らないがクーの奴真っ赤な野菜汁を頼みやがるし。
「こちらコーラになります」
 俺の注文した品をテーブルに置き、店員さんは下がった。じとーっとした目つきでクーを見る。
「……ああ、一緒に飲みたいのか? 大賛成だ」
 いそいそと俺のストローを血汁の中に入れるクー。
「さあ、いつでもいいぞ」
「違うっ! そうじゃなくて、ホラー映画見た後にトマトジュース飲むってどうなんだよ!」
「……ああ、キミはトマトジュースが嫌いなのか。じゃあ、コーラを一緒に飲もう」
「そうじゃなくて、そうじゃなくてぇ! 分かれよバカ!」
「……ああ、バナナジュースの追加注文だな? キミはバナナが好きだからな」
 したり顔のクーに、デコピンしてやった。

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