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2024年12月05日
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【瑠璃 観測】
2011年10月10日
近頃体育祭の練習だとかで毎日放課後に居残りさせられる。とてもしんどいので何かと理由をつけてサボっていたのだけど、とうとう理由も底を突いてしまったので委員長に睨まれる前に屋上に退避。
「お」
「……やあ、彰人。久しいね」
しかし、そこには先客がいた。瑠璃色の長い髪を風に遊ばせ、金網越しに虚空をぼーっと眺める変人。友人の瑠璃だ。
「久しくねえ。さっきぶりだ」
瑠璃の隣に並び、金網に軽く背中を預ける。キィ、と金網が小さくきしんだ。
「彰人もサボりかい?」
「も、ってコトは……お前もか。ダメだぞ、ちゃんと練習しないと?」
「彰人はすごいね。サボりにきた当人が恥ずかしげもなくそんなこと言えるんだから」
「ちょお馬鹿にされてる」
「いや、純粋に尊敬しているんだよ?」
俺の手を握り、にっこり微笑む瑠璃。
「俺に尊敬できるところなんてねーよー」
瑠璃から視線を逸らし、遠い稜線を眺める。生徒達の声の隙間から、鳥の声が聞こえてくる。今日も世界は平和だ。どこかで世界を守ってる偉い人ありがとう。
「……ん?」
ふと隣に視線を向けると、瑠璃がじーっとこちらを見ていた。
「どした?」
「彰人といるとね、なんだか自分がとてもちっぽけな人間に感じる時があるよ」
「いやいや、いやいやいや。逆ならともかく、お前がそんなの感じる必要ねーだろ」
性格は浮世離れしているものの、成績優秀眉目秀麗才色兼備といくつ四文字熟語を連ねればいいんだ的なスペックを誇ってるくせに、何を言ってるのだコイツは。
「うーん……彰人は素直に世界を愛しているよね。私には到底無理な芸当を平気な顔でするところに、私はとても惹かれているんだよ?」
「はい?」
「……いや、そんな彰人だからこそ、世界から祝福されているのか?」
瑠璃は何事かぶつぶつと呟きだした。俺には分からない世界に生きているようだ。賢すぎるってのも大変だな。
「何を言ってんだ?」
「ん、ああ。簡単に言うと、平行世界を信じるかい、ってことさ」
「唐突だな……パラレルワールドか。面白いけど、信じるかと言われると、うーん」
「なるほど。理想の答えなのかもしれないね?」
「何がだ」
「うーん……やめておくよ。記録はともかく、記憶から消えてしまうのはとても悲しいからね?」
「…………。あの、何の話をしているのだ?」
「ふふ、いいんだよ。彰人はそれで」
瑠璃はいつものように薄く微笑むだけで、それ以上説明しようとしなかった。
「……ふぅ。たくさん喋ったら疲れてしまったよ」
何か言いたげに甘い視線を俺に向ける瑠璃。それに気づかないフリをする俺。はい、根性ナシです。
「……彰人は根性ナシだ」
むぅ、と瑠璃の口が尖っていく。このように、瑠璃にはすぐに看破されてしまうので悲しい。
「もう一度だけ言うよ? ……ふぅ。たくさん喋ったら疲れてしまったよ」
「あーと。よろしければそちらのベンチに座ってはいかが?」
「……20点、かな」
瑠璃さんは中々に辛口だ。
「疲れたらベンチに座る。人類の共通認識だと思いますが」
「そこに個人の嗜好というノイズが入るから、人間というのは面白い。そんな発言をする人もいるよ?」
「えーと。つまり?」
「よければ一緒にベンチに座らないかい? とスマートに誘ってほしいものだよ」
少しだけ頬を膨らませ、瑠璃はいつもよりちょっとだけ感情を込めて言った。
「なるほど。じゃあそれをさらに進歩させて……ええと、瑠璃。よければ俺と踊りませんか?」
間違った方向へ進歩させてしまったため、ベンチに座るはずが夢の中へ行く感じになってしまった。
「……喜んで」
一瞬目を見開いて驚いた様子を見せた瑠璃だったが、すぐにいつもの薄い空気のベールを纏いなおし、たおやかに自分の手を俺の手に乗せた。
「えーと。自分で言っておいて何だが、踊れません」
「…………」
瑠璃の頬が膨らむのと比例して、彼女の目に涙がどんどんたまっていく。
「ああごめんごめんなさい俺の知ってる踊りでいいなら踊りますから泣かないで!」
必死で慰める俺だった。
「……ここかっ!? あーっ、いたっ! ……けど、あの、何やってるの?」
「遅い夏祭りを実施中だ」
「……夏祭り?」
目を輝かせて俺と一緒に盆踊りをする瑠璃を、怪訝な目で見る委員長だった。
「お」
「……やあ、彰人。久しいね」
しかし、そこには先客がいた。瑠璃色の長い髪を風に遊ばせ、金網越しに虚空をぼーっと眺める変人。友人の瑠璃だ。
「久しくねえ。さっきぶりだ」
瑠璃の隣に並び、金網に軽く背中を預ける。キィ、と金網が小さくきしんだ。
「彰人もサボりかい?」
「も、ってコトは……お前もか。ダメだぞ、ちゃんと練習しないと?」
「彰人はすごいね。サボりにきた当人が恥ずかしげもなくそんなこと言えるんだから」
「ちょお馬鹿にされてる」
「いや、純粋に尊敬しているんだよ?」
俺の手を握り、にっこり微笑む瑠璃。
「俺に尊敬できるところなんてねーよー」
瑠璃から視線を逸らし、遠い稜線を眺める。生徒達の声の隙間から、鳥の声が聞こえてくる。今日も世界は平和だ。どこかで世界を守ってる偉い人ありがとう。
「……ん?」
ふと隣に視線を向けると、瑠璃がじーっとこちらを見ていた。
「どした?」
「彰人といるとね、なんだか自分がとてもちっぽけな人間に感じる時があるよ」
「いやいや、いやいやいや。逆ならともかく、お前がそんなの感じる必要ねーだろ」
性格は浮世離れしているものの、成績優秀眉目秀麗才色兼備といくつ四文字熟語を連ねればいいんだ的なスペックを誇ってるくせに、何を言ってるのだコイツは。
「うーん……彰人は素直に世界を愛しているよね。私には到底無理な芸当を平気な顔でするところに、私はとても惹かれているんだよ?」
「はい?」
「……いや、そんな彰人だからこそ、世界から祝福されているのか?」
瑠璃は何事かぶつぶつと呟きだした。俺には分からない世界に生きているようだ。賢すぎるってのも大変だな。
「何を言ってんだ?」
「ん、ああ。簡単に言うと、平行世界を信じるかい、ってことさ」
「唐突だな……パラレルワールドか。面白いけど、信じるかと言われると、うーん」
「なるほど。理想の答えなのかもしれないね?」
「何がだ」
「うーん……やめておくよ。記録はともかく、記憶から消えてしまうのはとても悲しいからね?」
「…………。あの、何の話をしているのだ?」
「ふふ、いいんだよ。彰人はそれで」
瑠璃はいつものように薄く微笑むだけで、それ以上説明しようとしなかった。
「……ふぅ。たくさん喋ったら疲れてしまったよ」
何か言いたげに甘い視線を俺に向ける瑠璃。それに気づかないフリをする俺。はい、根性ナシです。
「……彰人は根性ナシだ」
むぅ、と瑠璃の口が尖っていく。このように、瑠璃にはすぐに看破されてしまうので悲しい。
「もう一度だけ言うよ? ……ふぅ。たくさん喋ったら疲れてしまったよ」
「あーと。よろしければそちらのベンチに座ってはいかが?」
「……20点、かな」
瑠璃さんは中々に辛口だ。
「疲れたらベンチに座る。人類の共通認識だと思いますが」
「そこに個人の嗜好というノイズが入るから、人間というのは面白い。そんな発言をする人もいるよ?」
「えーと。つまり?」
「よければ一緒にベンチに座らないかい? とスマートに誘ってほしいものだよ」
少しだけ頬を膨らませ、瑠璃はいつもよりちょっとだけ感情を込めて言った。
「なるほど。じゃあそれをさらに進歩させて……ええと、瑠璃。よければ俺と踊りませんか?」
間違った方向へ進歩させてしまったため、ベンチに座るはずが夢の中へ行く感じになってしまった。
「……喜んで」
一瞬目を見開いて驚いた様子を見せた瑠璃だったが、すぐにいつもの薄い空気のベールを纏いなおし、たおやかに自分の手を俺の手に乗せた。
「えーと。自分で言っておいて何だが、踊れません」
「…………」
瑠璃の頬が膨らむのと比例して、彼女の目に涙がどんどんたまっていく。
「ああごめんごめんなさい俺の知ってる踊りでいいなら踊りますから泣かないで!」
必死で慰める俺だった。
「……ここかっ!? あーっ、いたっ! ……けど、あの、何やってるの?」
「遅い夏祭りを実施中だ」
「……夏祭り?」
目を輝かせて俺と一緒に盆踊りをする瑠璃を、怪訝な目で見る委員長だった。
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