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2024年11月24日
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【クー 勉強】

2010年06月20日
 クーが勉強を教えろと言う。
「いや、全然構わないけど、お前の方が成績良くなかったか?」
 確か、前のテストで学年一位だったような。つか、学校でも飛び抜けて頭が良かったような。天才と称される人物だったような。
「大丈夫。問題ない」
「いや、何が」
「いいから教えろ。クーに教えろ」
「は、はい」
 ずずずいっと押しきられる形で、クーに勉強を教えることになった。
「えーっと、じゃあ英語でも。不定詞の用法とか」
 ぺらぺらと英語の教科書をめくってると、クーが口を開いた。
「to+動詞の原型だな。名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法がある。それぞれ~すること、~するための、~するために、といった意味になるのだな?」
「…………」
「どうした? もっとクーに教えるがいい」
「……あー。えっと、じゃあ、現在完了とか」
「完了、結果、継続、経験を表すときに使うのだな。have(has)+過去分詞で表される。少々理解し難いが、よくテストに出るので頑張って覚えた方がいいのだな?」
「……あの、クー」
「なんだ? いっぱい勉強を頑張ったクーを褒めるか? いいこいいこするのか?」
「しません」
「馬鹿な!? 不可解だ……」
「そんな力いっぱい驚くことか。ていうかだな、クー。これのどこが勉強だ?」
「クーがオマエにいっぱい教わっている。どこをどう見ても勉強だ」
「俺が教えようとした事柄を、全て即座に説明されることのどこが勉強だ」
「違うのか?」
「違います」
「むぅ。まぁいい、続けろ。クーはもっとオマエに勉強を教わりたい」
「いや、だからこれは勉強でも何でもなくてだな」
「ああ、そうだ。思い出した。勉学の際は、こうした方が能率が上がるというのを以前論文で見たことがあるような気がするということにする」
 クーは突然立ち上がると、てってここちらまで歩み寄り、俺の膝の上に座った。
「うむ。これで能率は格段に向上するに違いない」
「酷すぎる言い訳はともかく、あの。クー?」
「なんだ? ……ああ、そうか。クーも同じ気持ちだ」
 何も言ってないのに、クーは俺にべそっと抱きつき、すりすりとほお擦りした。
「いやいや。いやいやいや。俺が言いたいのはだな」
「……むぅ。クーはちゅーがしたくなってしまった。するぞ?」
「ダメだ」
「不可解だ!?」
「イチイチ叫ぶな。ていうか、なんで俺の方を向いてんだ」
 勉強をするのなら、机の方を向いてなくちゃ当然できない。だというのに、クーは何を血迷ったのか俺の方を向いている。つまり、お互い抱き合った形で収まっている。
「クーはいつだってオマエを見ていたいんだ」
「それは大変にありがたい話ですが、勉強教えろって話じゃなかったっけ?」
「ああ、それはもういい。そもそもクーには不要だ。クーの成績を知らないのか?」
「俺が最初に言いましたよ」
「忘れた」
 しれっと抜かしやがりましたよ、コイツ。でこぴんしてやれ。
「にゃっ。……女の子に暴力を振るうだなんて、オマエは酷い奴だ」
 クーはおでこを押さえ、ちょっぴりうるうるしながら俺を責めた。
「クーだけの特別扱いだ」
「……むう。酷い特別だが、それでも特別という響きが、なんだかちょっぴり嬉しいぞ」
「そいつぁよござんした」
 乱暴にクーの頭をわしゃわしゃなでる。
「おお、おおお。クーはそれ好きだ。オマエになでられると、心がぽわぽわする」
「奇遇だな、俺もクーをなでるとぽわぽわする」
「うむ。一緒で嬉しい限りだ。……クーは嬉しいが、オマエも嬉しいか?」
「そうでもないよ?」
「不可解だ!?」
「だから、叫ぶなっての」
 適当言ったらまた驚かれたので、むにむにとほっぺをこねて叫ぶのを防ぐ。
「うに、うにー。……オマエはクーが理解できない初の生物だ。だから、今日も勉強と銘打ち、オマエを観察しようとしたのだが……どうしてこうなっている?」
 俺にほっぺをむにむにされながら、クーはどこか残念そうな口調で言った。
「俺に抱っこされた時点で狂ったのではないかと思います」
「やはりか。やはりオマエがキーか。うぬぬ、もっともっと観察する必要がある。だから、今日泊めろ。一緒にお風呂も入れ。寝るときも一緒だ。朝もちゅーで起こせ」
「全部お断りします」
「不可解だぞ!?」
 とてもうるさいクーだった。

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こんにちは 
すごいね 
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