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2024年11月21日
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【犬子 リハビリ】
2015年05月16日
「りはびり!」
「わぁ、四文字系萌え漫画!」
朝っぱらから犬子の野郎が失礼なので失礼なだなあと思ってみる。
「うわ……この顔は、失礼だなあって思ってる顔だよ……」
「エスパーか。エスパー犬か」
「なんで犬って付け足すの!? 折角人になれたのに!」
「という具合に久々の登場で誰か分からない人もいるだろうと思うので一応説明をば。目の前のキャンキャン吠え猛ってるのは犬子という一見可愛い女の子に見えるが、実際は犬だ。マクロスFのランカっぽい髪型っぽい犬耳が特徴だが、もうマクロスFと言われても通じないかもしれないね」
「う、うー……びみょーに怒りにくいラインを付いて来るから符長くんはずるいよ。そしてこれは犬耳じゃなくて髪型なのにね」
「ずるさに定評のある符長彰人です」
「知ってるよ? あ、ずるさに定評はないよ? いじわるさに定評はあるけどね」
「うむ。ちょっとしたいじわるで黒死病を蔓延させたりする」
「極悪人!?」
「無論冗談だ。で、だ。なんか気づいたら四ヶ月くらい放置してたうえに犬子に至っては二年放置しているというZAMA。白骨化しててもおかしくない」
「うわ、意味がわかんないこと言い出した」
「メタ発言はあまりしたくないけど、正直死ぬほど久々で勘がつかめないので習作のつもりで書いてます」
「またしても意味が分かんない……熱でもあるの?」
「愚か者! 俺が意味不明なのはいつものことだろうが!」
「いや、そうだけど……自覚してんだ」
「つーわけでリハビリだ、リハビリ。リハビリって何やんの?」
「何のリハビリ?」
「……ほね?」(適当)
「また漠然としてるなあ……んーと、運動がいいみたい」
「運動……体操服、つまりブルマかッ!」カッ
「カッじゃないよっ! もー! 今日も符長くんはえっちえっちえっち!」ペチペチ
「ぶべらはべら。いや待て、慌てるな。俺は単にブルマ姿の犬子の尻に頬ずりしたいだけだ」
「えっちえっちえっちえっち!」ペチペチペチ
「正直に話したのに。解せぬ」
「うー……いつでもいつだって符長くんはえっちだよ。へんたいさーん、だよ」ツンツン
「ふがふが。うーん、どうしよう。変態ってお巡りさんに捕まるかな?」
「内容によってはね」
「そうか。知り合いの女性を体操着に着替えさせて尻に顔をこすりつける行為はセーフなのか」
「どアウトだよっ! 勝手に判定しないでっ!」
「しかし、初対面の女性に頬ずりするのはウブな俺にはハードルが高いのだが」
「知り合いかどうかはどうでも……ウブ!? 言うに事欠いて!? 符長くんが!?」
「シャイな俺ですよ」
「うーわー、明らかな嘘だよ……」シラーッ
「いやいや、こう見えて引っ込み思案ですよ? 超奥手っスよ。テディっス!」(かないみか声)
「余計なことは言わなくていいのっ!」
「っスというとどうしてもあの悠久幻想曲の毛玉野郎が脳裏をよぎる。いやどうでもいい。ええと、なんだっけ。おむすびの好きな具の話だっけ」
「明らかに違うよっ! 符長くんがシャイっていう嘘話だよ」
「俺はタマゴサンドが好き」
「まさかのサンドイッチ話!? せめておむすびの話にしてよ、符長くん!」
「うーん、犬子はそう言うけど、俺はシャイな俺の話がしたいのだけど」
「出た! 符長くんのいじわるが出たよ! もー! 最初から私がそう言ってるのに!」ポカポカ
「えーと、実はシャイで知り合いとしか楽しいおしゃべりできません。おわり」
「しかも短い! そしてどーでもいーよ!」
「という感じであまり間を空けずにボチボチ頑張ろうと思いました。分かんないけど。おわり」
「うー……いつにも増して意味が分かんなかったよ……」
不満そうだったので鼻をつまんでおいた。
「ふきゅー」
するとふきゅーって鳴いた。愉快。
「わぁ、四文字系萌え漫画!」
朝っぱらから犬子の野郎が失礼なので失礼なだなあと思ってみる。
「うわ……この顔は、失礼だなあって思ってる顔だよ……」
「エスパーか。エスパー犬か」
「なんで犬って付け足すの!? 折角人になれたのに!」
「という具合に久々の登場で誰か分からない人もいるだろうと思うので一応説明をば。目の前のキャンキャン吠え猛ってるのは犬子という一見可愛い女の子に見えるが、実際は犬だ。マクロスFのランカっぽい髪型っぽい犬耳が特徴だが、もうマクロスFと言われても通じないかもしれないね」
「う、うー……びみょーに怒りにくいラインを付いて来るから符長くんはずるいよ。そしてこれは犬耳じゃなくて髪型なのにね」
「ずるさに定評のある符長彰人です」
「知ってるよ? あ、ずるさに定評はないよ? いじわるさに定評はあるけどね」
「うむ。ちょっとしたいじわるで黒死病を蔓延させたりする」
「極悪人!?」
「無論冗談だ。で、だ。なんか気づいたら四ヶ月くらい放置してたうえに犬子に至っては二年放置しているというZAMA。白骨化しててもおかしくない」
「うわ、意味がわかんないこと言い出した」
「メタ発言はあまりしたくないけど、正直死ぬほど久々で勘がつかめないので習作のつもりで書いてます」
「またしても意味が分かんない……熱でもあるの?」
「愚か者! 俺が意味不明なのはいつものことだろうが!」
「いや、そうだけど……自覚してんだ」
「つーわけでリハビリだ、リハビリ。リハビリって何やんの?」
「何のリハビリ?」
「……ほね?」(適当)
「また漠然としてるなあ……んーと、運動がいいみたい」
「運動……体操服、つまりブルマかッ!」カッ
「カッじゃないよっ! もー! 今日も符長くんはえっちえっちえっち!」ペチペチ
「ぶべらはべら。いや待て、慌てるな。俺は単にブルマ姿の犬子の尻に頬ずりしたいだけだ」
「えっちえっちえっちえっち!」ペチペチペチ
「正直に話したのに。解せぬ」
「うー……いつでもいつだって符長くんはえっちだよ。へんたいさーん、だよ」ツンツン
「ふがふが。うーん、どうしよう。変態ってお巡りさんに捕まるかな?」
「内容によってはね」
「そうか。知り合いの女性を体操着に着替えさせて尻に顔をこすりつける行為はセーフなのか」
「どアウトだよっ! 勝手に判定しないでっ!」
「しかし、初対面の女性に頬ずりするのはウブな俺にはハードルが高いのだが」
「知り合いかどうかはどうでも……ウブ!? 言うに事欠いて!? 符長くんが!?」
「シャイな俺ですよ」
「うーわー、明らかな嘘だよ……」シラーッ
「いやいや、こう見えて引っ込み思案ですよ? 超奥手っスよ。テディっス!」(かないみか声)
「余計なことは言わなくていいのっ!」
「っスというとどうしてもあの悠久幻想曲の毛玉野郎が脳裏をよぎる。いやどうでもいい。ええと、なんだっけ。おむすびの好きな具の話だっけ」
「明らかに違うよっ! 符長くんがシャイっていう嘘話だよ」
「俺はタマゴサンドが好き」
「まさかのサンドイッチ話!? せめておむすびの話にしてよ、符長くん!」
「うーん、犬子はそう言うけど、俺はシャイな俺の話がしたいのだけど」
「出た! 符長くんのいじわるが出たよ! もー! 最初から私がそう言ってるのに!」ポカポカ
「えーと、実はシャイで知り合いとしか楽しいおしゃべりできません。おわり」
「しかも短い! そしてどーでもいーよ!」
「という感じであまり間を空けずにボチボチ頑張ろうと思いました。分かんないけど。おわり」
「うー……いつにも増して意味が分かんなかったよ……」
不満そうだったので鼻をつまんでおいた。
「ふきゅー」
するとふきゅーって鳴いた。愉快。
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【犬子 ランカ扱い】
2012年11月04日
「マクロスFの歌を聴いてたらランカが可愛く思えてきたので、代わりにお前を可愛がっていいですか?」
「私に対してものすっごい侮辱だよ、符長くんっ!」
冒頭から何やら怒ってる犬子だ。カルシウムが足りないのだろうか。
「骨食べる?」
「怒ってる人を相手に犬扱いをやめないの!? 逆にすごいよ!」
「いやあ。でへへへ」
「褒めてないよっ!」
「薄々だが感じ取ってはいたんだが、その感覚を無視して全力で照れた俺だった。だが、その選択は過ちだったようだな」
「はぅー……」
今日も犬子は俺にはぅーって感じの顔を見せる。
「って、はぅーじゃないよ! ランカちゃんの代わりってことは、やっと私を普通の人間って認識してくれたの?」
「いや、いつもお前が『犬耳じゃないわん! ランカちゃんの髪型と一緒だわん! わふわふ、ご主人さま。なでなでしてくださいですわん!』と言ってるのを思い出し、飼い主としてたまには飼い犬の言うことを聞いてみるかと思ったのです」
「酷い捏造だよ! 最初のランカちゃんの髪型のくだりしかあってないよ! 私は語尾にわんなんてつけてないもん!」
「可愛いのに」
「可愛くても! ……あ、あと、別に符長くんはご主人さまじゃないもん」
「いや、ご主人さまだ。お手」
「違うのにぃ……」
それでも律儀に俺の手に自分の手を重ねてくれる犬子は優しい奴だと思う。
「それじゃあランカの代わりに可愛がるので、服を脱いで股を開け」
「超お断るよっ! それに、可愛がるなら何かの代用品じゃなくて、ちゃんと私として可愛がってよ!」
「なんてえろい台詞だ。これは興奮する」
「え? ……ち、ちちちちち違う違うよっ!? そ、そーゆー意味じゃないんだよっ!」
「なんだ。頭なでまくったり抱っこしたりほっぺにちゅーしたりしたがったが、そういう意味じゃなかったのか。いや、俺の早とちりでいらぬ恥をかくところだった。はっはっは」
「…………」
何やら犬子方面から熱い視線を感じる。
「あー……あのね、符長くん?」
「いいえ」
「そこは否定しちゃダメだよっ! 符長くんでしょ!?」
「ふははは、ばーれーたーかー」ガオー
「……今更だけど、符長くんって変だよね」
「はい。お前は善人だから言い難いだろうが、嫌になったらいつでも友達やめてくれていいぞ。迷惑をかけてまで犬子の善意に甘えるつもりはないから」
「ちょーっぷ!」
「なんか弱々ちょっぷが俺の頭部に振り下ろされたかと思ったが、それは弱々ではなく銀河を引き裂くほどの威力を有したチョップであった。俺の身体は真中から綺麗に左右に別れてしまった。今日から俺はシンメトリー人間です」
「嘘説明はいーのっ! ……そーゆー自虐的なこと言うの、禁止」
「う。い、いや、しかしだな、自虐とかでなく客観的な事実として、俺の学校での評判はあまり」
「禁止なのっ!」
「はいっ」
半泣きで言われては断れない。
「うー……符長くんのそーゆーとこ、ダメだよ。自分で自分を嫌いになっちゃ、誰も符長くんのこと好きになってくんないよ?」
「いやはや」
「いやはやじゃないのっ! ……ま、まあ、私は、その。……アレだけど」
「本当は誰よりも俺を毛嫌いしていると。つまり、今の俺に対する友好的な態度はあとで裏切るための布石か。なんて酷い奴だ!」
「違うよっ! ものすっごく好きだよっ! ……あ」
「…………」
「む、無言で赤面するの禁止禁止禁止っ! い、今のは違うのっ! ち、ちょっとした間違いっていうか! そーゆーのっ!」
「そ、そうだよな。は、ははは」
「……ま、まあ。その、そーゆーワケだから、はい」
「?」
犬子は両手をこちらに投げ出した。意味が分からんので握手する。
「えへへへー♪ ……じ、じゃなくて」
「すごい笑顔でしたね」
「説明しなくていーのっ! ……そ、そじゃなくて、抱っこ」
「…………」
「だ、だから、無言で赤面しなくていーのっ! あ、アレだもん、毛嫌いなんてしてないって証明するための証拠を見せるためだもん。だ、だから抱っことかしてもらってもいいんだもん」
「あ、信じてるので大丈夫です」(NOという感じの手を突きつけながら)
「こんな時に限って物分かりがいい!? 今日も悪辣だよ、符長くん!」
「わはは。……じゃあ、その。抱っこして、いい?」
「……え、えと。……や、優しく、ね?」
「精神的にノーブルであろうとしている俺なので、女性にはいつも優しく接する努力は怠っていないとの噂だから安心しろ」
「素直にうん、って言えばいいのにぃ……」
「緊張すると口数って増えません?」
「あ、符長くんも緊張してるんだ。……えへへ、一緒だね♪」
「いや、数多の女性と床を共にしたことがあるので特に緊張してません」
「……そ、そなんだ。……符長くん素敵だし、しょがないよね。……そだよね」
犬子の精神が暗黒へ落ちていくのを感じる。ものすごい落ち込みようだ。
「なんで信じるか。人を信じる心は尊いが、犬子のそれは少々危ういな」(なでなで)
「嘘なの!? ……も、もー♪ 符長くんの嘘つきー♪」
「急に犬子がご機嫌体質になった。嘘をつかれると喜ぶ特殊性癖なのだろうか。よし、ひとつ喜ばせてやろう。饅頭怖い」
「別にそーゆーわけじゃないよ! ……符長くん、落語好きなの?」
「いや、玉子焼きが好きだ」
「そーじゃないよ! そしてそれは知ってるよ! お弁当作ったら、いっつも嬉しそうに食べてるもんね」
「お前の作る玉子焼きは砂糖が入ってて甘くて好き」
「えへへへー。お母さん直伝なんだよ?」
「そっか。そのうち挨拶行かないとなあ」
「へ? ……え、えええええっ!? き、気が早いよっ! さすがに学生でそーゆーのはちょっと! まだちゅーもしてないし! ……で、でも、どしてもっていうなら、私は別に、その……いいよ?」
「お宅の娘さんがいつも俺に脅迫されて弁当作らされてますよって教えないとな」
「超違うよっ! 純然たる善意だよっ! そして勘違いが恥ずかしいよっ!」
「キミは大変愉快だな」
「好きで愉快なんじゃないよっ! 今日も符長くんはいぢわるだよっ!」
「わはは。……落ち着いたか?」
「えっ、あっ。……えへへ、さすがはノーブルだね?」
「存分に憧れ俺のファングッズを買いあさって俺を肥え太らせろ」
「えへ、ノーブルが裸足で逃げちゃったよ。……じゃ、いい?」
「うむ」
鷹揚にうなずき、ドッキンばぐばぐアニマルな心臓をごまかしつつ、犬子を抱っこする。
「は、はぅ……」
「あ、うすぺたい!」
「言わなくていいの!」
「しまった、こんなところで正直者の心が邪魔をするとは! あ、でもつるぺた大好きですから大丈夫ですよ?」
「……うぅー。……怒りにくいじゃない、ばか」スリスリ
「なんかスリスリされた!?」
「イチイチ言わなくていいのっ! 折角どさくさでやったのにっ!」
「や、失敬。びっくりした模様」
「……まあ、符長くんのドキドキしてる心臓に免じて許しちゃうよ」
「びっくりしたからね。ドキドキも仕方ないね。びっくりしたからね」
「抱っこの最初からドキドキしてたよ?」
ごまかせてなかった様子。くそぅ、恥ずかしい。
「えへへ。いっぱい抱っこしたらそのうち慣れるから、そしたらだいじょぶだよ?」
「え、そんなにするの」
「……べ、別に符長くんがしたくないならいいけど」(半泣き)
「か、勘違いしないでよねっ! したくないわけじゃないんだからねっ! ただの確認なんだからねっ!」
「わ、ツンデレだ!」
「時折ツンデレ語を喋りたくなる病気なんだ」
「……やっぱ符長くんって、変わってるよね」
「そう言う人もいるよね」
「あ、自虐やめた。えへへ、偉い偉い」ナデナデ
「偉かろう偉かろう。存分になでるがいい」
「なんか可愛くない……」
「……かっ、代わりに犬子が可愛いからいいじゃないか」
「え、あ、う……」
「なぜまっすぐに照れる」
「ふ、符長くんこそ顔真っ赤だよ! 普段ならそーゆー軽口もへーきなくせに、今日に限ってどもったりしてるし!」
「体温と触感と嗅覚を同時に攻められては、童貞には抵抗の術はないよ」
「あ、まだしたことないんだ。……よかったぁ」
「ほう?」
「い、一般論でね!? 簡単に誰とでもするような人って信用出来ないなーって、それだけだよ!? ……ほ、ホントに」
「なるほど、よく分かる話だ。犬子の信頼に応えられるよう、これから10年は誰ともそういうことはしないでいよう」
「べ、別にそこまでする必要はないと思うよ? ほ、ほら、よく知ってる好きな人との間なら、別にだいじょぶだと思うし」
「なんだ。じゃあそこらの女性と親しくなって経験しよう」
「う~~~~~!」
「と思ったが、犬子が情けない顔で睨むのでやめておこう」
「ほっ。……あと、情けなくなんてないもん。怒った顔だもん」
「お前の怒り顔は迫力がないんだよな。ちょっとそういう顔をしてみてくれ」
「こ、こう? ……うー」
犬子は自分なりの怒り顔を見せた。ただ、俺には眉を寄せて困ってるようにしか見えない。
「可愛い」(なでなで)
「お、怒った顔なのに……も、もー♪」
といった感じでイチャらイチャらできたが、途中からランカを可愛がりたいという感情は頭の中から消えていた。
「恐るべきは犬ぢからか……!」
「こんな甘々空間なのにまだ犬扱いだったの!?」
なんか驚いてる犬子だった。
「私に対してものすっごい侮辱だよ、符長くんっ!」
冒頭から何やら怒ってる犬子だ。カルシウムが足りないのだろうか。
「骨食べる?」
「怒ってる人を相手に犬扱いをやめないの!? 逆にすごいよ!」
「いやあ。でへへへ」
「褒めてないよっ!」
「薄々だが感じ取ってはいたんだが、その感覚を無視して全力で照れた俺だった。だが、その選択は過ちだったようだな」
「はぅー……」
今日も犬子は俺にはぅーって感じの顔を見せる。
「って、はぅーじゃないよ! ランカちゃんの代わりってことは、やっと私を普通の人間って認識してくれたの?」
「いや、いつもお前が『犬耳じゃないわん! ランカちゃんの髪型と一緒だわん! わふわふ、ご主人さま。なでなでしてくださいですわん!』と言ってるのを思い出し、飼い主としてたまには飼い犬の言うことを聞いてみるかと思ったのです」
「酷い捏造だよ! 最初のランカちゃんの髪型のくだりしかあってないよ! 私は語尾にわんなんてつけてないもん!」
「可愛いのに」
「可愛くても! ……あ、あと、別に符長くんはご主人さまじゃないもん」
「いや、ご主人さまだ。お手」
「違うのにぃ……」
それでも律儀に俺の手に自分の手を重ねてくれる犬子は優しい奴だと思う。
「それじゃあランカの代わりに可愛がるので、服を脱いで股を開け」
「超お断るよっ! それに、可愛がるなら何かの代用品じゃなくて、ちゃんと私として可愛がってよ!」
「なんてえろい台詞だ。これは興奮する」
「え? ……ち、ちちちちち違う違うよっ!? そ、そーゆー意味じゃないんだよっ!」
「なんだ。頭なでまくったり抱っこしたりほっぺにちゅーしたりしたがったが、そういう意味じゃなかったのか。いや、俺の早とちりでいらぬ恥をかくところだった。はっはっは」
「…………」
何やら犬子方面から熱い視線を感じる。
「あー……あのね、符長くん?」
「いいえ」
「そこは否定しちゃダメだよっ! 符長くんでしょ!?」
「ふははは、ばーれーたーかー」ガオー
「……今更だけど、符長くんって変だよね」
「はい。お前は善人だから言い難いだろうが、嫌になったらいつでも友達やめてくれていいぞ。迷惑をかけてまで犬子の善意に甘えるつもりはないから」
「ちょーっぷ!」
「なんか弱々ちょっぷが俺の頭部に振り下ろされたかと思ったが、それは弱々ではなく銀河を引き裂くほどの威力を有したチョップであった。俺の身体は真中から綺麗に左右に別れてしまった。今日から俺はシンメトリー人間です」
「嘘説明はいーのっ! ……そーゆー自虐的なこと言うの、禁止」
「う。い、いや、しかしだな、自虐とかでなく客観的な事実として、俺の学校での評判はあまり」
「禁止なのっ!」
「はいっ」
半泣きで言われては断れない。
「うー……符長くんのそーゆーとこ、ダメだよ。自分で自分を嫌いになっちゃ、誰も符長くんのこと好きになってくんないよ?」
「いやはや」
「いやはやじゃないのっ! ……ま、まあ、私は、その。……アレだけど」
「本当は誰よりも俺を毛嫌いしていると。つまり、今の俺に対する友好的な態度はあとで裏切るための布石か。なんて酷い奴だ!」
「違うよっ! ものすっごく好きだよっ! ……あ」
「…………」
「む、無言で赤面するの禁止禁止禁止っ! い、今のは違うのっ! ち、ちょっとした間違いっていうか! そーゆーのっ!」
「そ、そうだよな。は、ははは」
「……ま、まあ。その、そーゆーワケだから、はい」
「?」
犬子は両手をこちらに投げ出した。意味が分からんので握手する。
「えへへへー♪ ……じ、じゃなくて」
「すごい笑顔でしたね」
「説明しなくていーのっ! ……そ、そじゃなくて、抱っこ」
「…………」
「だ、だから、無言で赤面しなくていーのっ! あ、アレだもん、毛嫌いなんてしてないって証明するための証拠を見せるためだもん。だ、だから抱っことかしてもらってもいいんだもん」
「あ、信じてるので大丈夫です」(NOという感じの手を突きつけながら)
「こんな時に限って物分かりがいい!? 今日も悪辣だよ、符長くん!」
「わはは。……じゃあ、その。抱っこして、いい?」
「……え、えと。……や、優しく、ね?」
「精神的にノーブルであろうとしている俺なので、女性にはいつも優しく接する努力は怠っていないとの噂だから安心しろ」
「素直にうん、って言えばいいのにぃ……」
「緊張すると口数って増えません?」
「あ、符長くんも緊張してるんだ。……えへへ、一緒だね♪」
「いや、数多の女性と床を共にしたことがあるので特に緊張してません」
「……そ、そなんだ。……符長くん素敵だし、しょがないよね。……そだよね」
犬子の精神が暗黒へ落ちていくのを感じる。ものすごい落ち込みようだ。
「なんで信じるか。人を信じる心は尊いが、犬子のそれは少々危ういな」(なでなで)
「嘘なの!? ……も、もー♪ 符長くんの嘘つきー♪」
「急に犬子がご機嫌体質になった。嘘をつかれると喜ぶ特殊性癖なのだろうか。よし、ひとつ喜ばせてやろう。饅頭怖い」
「別にそーゆーわけじゃないよ! ……符長くん、落語好きなの?」
「いや、玉子焼きが好きだ」
「そーじゃないよ! そしてそれは知ってるよ! お弁当作ったら、いっつも嬉しそうに食べてるもんね」
「お前の作る玉子焼きは砂糖が入ってて甘くて好き」
「えへへへー。お母さん直伝なんだよ?」
「そっか。そのうち挨拶行かないとなあ」
「へ? ……え、えええええっ!? き、気が早いよっ! さすがに学生でそーゆーのはちょっと! まだちゅーもしてないし! ……で、でも、どしてもっていうなら、私は別に、その……いいよ?」
「お宅の娘さんがいつも俺に脅迫されて弁当作らされてますよって教えないとな」
「超違うよっ! 純然たる善意だよっ! そして勘違いが恥ずかしいよっ!」
「キミは大変愉快だな」
「好きで愉快なんじゃないよっ! 今日も符長くんはいぢわるだよっ!」
「わはは。……落ち着いたか?」
「えっ、あっ。……えへへ、さすがはノーブルだね?」
「存分に憧れ俺のファングッズを買いあさって俺を肥え太らせろ」
「えへ、ノーブルが裸足で逃げちゃったよ。……じゃ、いい?」
「うむ」
鷹揚にうなずき、ドッキンばぐばぐアニマルな心臓をごまかしつつ、犬子を抱っこする。
「は、はぅ……」
「あ、うすぺたい!」
「言わなくていいの!」
「しまった、こんなところで正直者の心が邪魔をするとは! あ、でもつるぺた大好きですから大丈夫ですよ?」
「……うぅー。……怒りにくいじゃない、ばか」スリスリ
「なんかスリスリされた!?」
「イチイチ言わなくていいのっ! 折角どさくさでやったのにっ!」
「や、失敬。びっくりした模様」
「……まあ、符長くんのドキドキしてる心臓に免じて許しちゃうよ」
「びっくりしたからね。ドキドキも仕方ないね。びっくりしたからね」
「抱っこの最初からドキドキしてたよ?」
ごまかせてなかった様子。くそぅ、恥ずかしい。
「えへへ。いっぱい抱っこしたらそのうち慣れるから、そしたらだいじょぶだよ?」
「え、そんなにするの」
「……べ、別に符長くんがしたくないならいいけど」(半泣き)
「か、勘違いしないでよねっ! したくないわけじゃないんだからねっ! ただの確認なんだからねっ!」
「わ、ツンデレだ!」
「時折ツンデレ語を喋りたくなる病気なんだ」
「……やっぱ符長くんって、変わってるよね」
「そう言う人もいるよね」
「あ、自虐やめた。えへへ、偉い偉い」ナデナデ
「偉かろう偉かろう。存分になでるがいい」
「なんか可愛くない……」
「……かっ、代わりに犬子が可愛いからいいじゃないか」
「え、あ、う……」
「なぜまっすぐに照れる」
「ふ、符長くんこそ顔真っ赤だよ! 普段ならそーゆー軽口もへーきなくせに、今日に限ってどもったりしてるし!」
「体温と触感と嗅覚を同時に攻められては、童貞には抵抗の術はないよ」
「あ、まだしたことないんだ。……よかったぁ」
「ほう?」
「い、一般論でね!? 簡単に誰とでもするような人って信用出来ないなーって、それだけだよ!? ……ほ、ホントに」
「なるほど、よく分かる話だ。犬子の信頼に応えられるよう、これから10年は誰ともそういうことはしないでいよう」
「べ、別にそこまでする必要はないと思うよ? ほ、ほら、よく知ってる好きな人との間なら、別にだいじょぶだと思うし」
「なんだ。じゃあそこらの女性と親しくなって経験しよう」
「う~~~~~!」
「と思ったが、犬子が情けない顔で睨むのでやめておこう」
「ほっ。……あと、情けなくなんてないもん。怒った顔だもん」
「お前の怒り顔は迫力がないんだよな。ちょっとそういう顔をしてみてくれ」
「こ、こう? ……うー」
犬子は自分なりの怒り顔を見せた。ただ、俺には眉を寄せて困ってるようにしか見えない。
「可愛い」(なでなで)
「お、怒った顔なのに……も、もー♪」
といった感じでイチャらイチャらできたが、途中からランカを可愛がりたいという感情は頭の中から消えていた。
「恐るべきは犬ぢからか……!」
「こんな甘々空間なのにまだ犬扱いだったの!?」
なんか驚いてる犬子だった。
【犬子 ハロウィン2】
2012年11月02日
「ううう……ハロウィンだかなんだか知らんが、寒い。寒すぎて死ぬる」
「あ、符長くんだ。えへへ、おはよ?」
ポケットに手をつっこんで震えるかっこいい俺を目ざとくみつけた犬子が、ぽてぽてと走り寄って来て笑顔で挨拶してきた。
「ん、おはよ」(なでなで)
「あ……え、えへへ♪」
忠義ある犬には礼節を持って応えると話題の俺なので、頭をなでて労ると嬉しそうになったのでよかったと思った。(小学生の作文風)
「なんか最近急に寒くなったと思わんか? そしてトリックオアトリートだと思わんか?」
「さ、寒いのは思うけど……なんでハロウィンをついでに言ったの?」
「お菓子ください」
「持ってないよ」
「じゃあいたづらをするのでおっぱいを揉まれても騒がないように」
「今日も朝からえっちだよ、符長くん!」
「はい」
「はいじゃないよぉ……」
何やらはぅーって感じの顔をされた。よくされます。
「あとね、あとね。今日はハロウィンじゃないよ?」
「何を言ってるのだろう、この犬は。やはり犬程度の知能ではイベントの理解などできないのだろうか」
「まだ私のこと犬扱いしてるの!? ひょっとしてずっとなの!?」
「お手」
「しないもんっ! なぜなら私は犬じゃないから!」
「今日の犬子は頑なだな。お手とか言って犬子と触れ合いたかったが、まあ諦めるか」
「……え、えーっとねえ。な、なんだかお手がしたくなったよ。わ、わんわん?」
「ほう、やはり犬だったか。お手」
「わんわん♪ ……って! すっごく手が冷たいよ! どしたの?」
「手が冷たい奴は心まで冷たいと言うのか。なんて奴だ!」
「言ってないよ、言ってないよ!? むしろ符長くんはとっても心が暖かい人だよ?」
「今日も犬子は俺に弱みを握られているようだな」
「今日も符長くんは照れ屋さんだね?」
にっこり笑いおって。ええい。
「ま、まあいい。ところで、今日はハロウィンではないと言っていたが、どういうことだ?」
「だって、今日は11月の2日だもん。ハロウィンはちょっと前だよ?」
「俺はタイムマシンに乗ってちょっと前から来たから大丈夫なんだ」
「仮にそうだとしても、この世界は11月2日だから意味ないよ?」
「……すまない。本当はタイムマシンになんて乗ってないんだ。許してくれ、犬子!」
「知ってるよ」
「なんという慧眼……!」
「朝から元気だね、符長くん」
「朝から犬子に会えて、嬉しさで元気が体中に満ち満ちているんだ」
「ひゃうわっ!?」
何やら犬子が面白い感じになった。
「……え、えーとねぇ。……わ、私も、符長くんにね? あ、朝から会えて、その。……う、嬉しいんだよ?」
顔中真っ赤にして、犬子はゆっくりと、だけどはっきりそう言った。
「流石は犬子、忠犬の名は伊達ではないな。俺も一日ぶりに会えて嬉しいよ」
「分かってたけど、分かってたけど! 分かってたけど、やっぱり犬扱い! ぬわー!」
「パパスだ」
「違うよっ!」
「わはは。……はぁ」
「……どしたの? 元気ないよ? 私に会えて元気が満ちてるんじゃないの?」
「ものすごいうぬぼれだな」
「うー! うー!」
涙目でぽかぽか叩かれた。
「いたた、ごめんごめん」
「うぅー……酷いよ符長くん。符長くんが言ったことなのに」
「頭がおかしいから前後のことを考えず、思ったことをそのまま言うからね」
「もー、すぐ自分のこと悪く言ってぇ……悪いクセだよ?」
「わはは。それはともかく、お腹が空いたんだ」
「なんだか符長くんはいっつもお腹が空いてるね。朝ごはん食べてないの?」
「この時期の布団は心安らいでなぁ……」
「ご飯食べたら遅刻しちゃうくらいの時間に起きてるんだね……」
何やら呆れられてる気配がする。
「あ! だからハロウィンとか言ってたんだね。それでお菓子をもらおうと」
「そうなんだ。よく分かったな」
「伊達に付き合い長くないもんね♪」
「なるほど。これほどのツーカーの仲であるなら、このまま嫁にするのが得策だな」
「よっ、嫁!? はわっ、はわわわわっ!?」
「あ、これは面白い! 写真を撮ろう」
「やめて」
「はい」
「まったくもぉ……冗談ばっかり」
「わはは」
「そいえば、前にもあったよね、こーゆーハロウィンがどーとかって」
「あー、そだな。まるで進歩がないな!」
「何を胸張ってるのこの人!?」
「それどころか、以前はお菓子が食べたいという明確な理由があったのに対し、今回はお腹が空いたという本能に突き動かされている始末。進歩どころか退化と言っていいだろう」
「また適当なこと言ってぇ……。あのね、お弁当のデザートに果物持ってきたから、それなら食べてもいーよ?」
「マジか。でも、ドリアンを教室なんかで食ってみんなに迷惑かけないかなあ? まあ犬子のせいにすればいいか」
「そんなの持ってきてないし、私のせいにしないでよ、符長くんっ!」
「匂いはキツイが、ドリアンおいしいらしいよ? 食ったことないから知らないが」
「私もないもん」
「じゃあ新婚旅行先で一緒に食べましょうね」
「やっぱり結婚するの!? はわっ、はわわわわ!?」
なんか赤い顔であわあわしてる犬が大変に愉快だったので写真を撮ろうとしたら、やっぱり怒られた。
「あ、符長くんだ。えへへ、おはよ?」
ポケットに手をつっこんで震えるかっこいい俺を目ざとくみつけた犬子が、ぽてぽてと走り寄って来て笑顔で挨拶してきた。
「ん、おはよ」(なでなで)
「あ……え、えへへ♪」
忠義ある犬には礼節を持って応えると話題の俺なので、頭をなでて労ると嬉しそうになったのでよかったと思った。(小学生の作文風)
「なんか最近急に寒くなったと思わんか? そしてトリックオアトリートだと思わんか?」
「さ、寒いのは思うけど……なんでハロウィンをついでに言ったの?」
「お菓子ください」
「持ってないよ」
「じゃあいたづらをするのでおっぱいを揉まれても騒がないように」
「今日も朝からえっちだよ、符長くん!」
「はい」
「はいじゃないよぉ……」
何やらはぅーって感じの顔をされた。よくされます。
「あとね、あとね。今日はハロウィンじゃないよ?」
「何を言ってるのだろう、この犬は。やはり犬程度の知能ではイベントの理解などできないのだろうか」
「まだ私のこと犬扱いしてるの!? ひょっとしてずっとなの!?」
「お手」
「しないもんっ! なぜなら私は犬じゃないから!」
「今日の犬子は頑なだな。お手とか言って犬子と触れ合いたかったが、まあ諦めるか」
「……え、えーっとねえ。な、なんだかお手がしたくなったよ。わ、わんわん?」
「ほう、やはり犬だったか。お手」
「わんわん♪ ……って! すっごく手が冷たいよ! どしたの?」
「手が冷たい奴は心まで冷たいと言うのか。なんて奴だ!」
「言ってないよ、言ってないよ!? むしろ符長くんはとっても心が暖かい人だよ?」
「今日も犬子は俺に弱みを握られているようだな」
「今日も符長くんは照れ屋さんだね?」
にっこり笑いおって。ええい。
「ま、まあいい。ところで、今日はハロウィンではないと言っていたが、どういうことだ?」
「だって、今日は11月の2日だもん。ハロウィンはちょっと前だよ?」
「俺はタイムマシンに乗ってちょっと前から来たから大丈夫なんだ」
「仮にそうだとしても、この世界は11月2日だから意味ないよ?」
「……すまない。本当はタイムマシンになんて乗ってないんだ。許してくれ、犬子!」
「知ってるよ」
「なんという慧眼……!」
「朝から元気だね、符長くん」
「朝から犬子に会えて、嬉しさで元気が体中に満ち満ちているんだ」
「ひゃうわっ!?」
何やら犬子が面白い感じになった。
「……え、えーとねぇ。……わ、私も、符長くんにね? あ、朝から会えて、その。……う、嬉しいんだよ?」
顔中真っ赤にして、犬子はゆっくりと、だけどはっきりそう言った。
「流石は犬子、忠犬の名は伊達ではないな。俺も一日ぶりに会えて嬉しいよ」
「分かってたけど、分かってたけど! 分かってたけど、やっぱり犬扱い! ぬわー!」
「パパスだ」
「違うよっ!」
「わはは。……はぁ」
「……どしたの? 元気ないよ? 私に会えて元気が満ちてるんじゃないの?」
「ものすごいうぬぼれだな」
「うー! うー!」
涙目でぽかぽか叩かれた。
「いたた、ごめんごめん」
「うぅー……酷いよ符長くん。符長くんが言ったことなのに」
「頭がおかしいから前後のことを考えず、思ったことをそのまま言うからね」
「もー、すぐ自分のこと悪く言ってぇ……悪いクセだよ?」
「わはは。それはともかく、お腹が空いたんだ」
「なんだか符長くんはいっつもお腹が空いてるね。朝ごはん食べてないの?」
「この時期の布団は心安らいでなぁ……」
「ご飯食べたら遅刻しちゃうくらいの時間に起きてるんだね……」
何やら呆れられてる気配がする。
「あ! だからハロウィンとか言ってたんだね。それでお菓子をもらおうと」
「そうなんだ。よく分かったな」
「伊達に付き合い長くないもんね♪」
「なるほど。これほどのツーカーの仲であるなら、このまま嫁にするのが得策だな」
「よっ、嫁!? はわっ、はわわわわっ!?」
「あ、これは面白い! 写真を撮ろう」
「やめて」
「はい」
「まったくもぉ……冗談ばっかり」
「わはは」
「そいえば、前にもあったよね、こーゆーハロウィンがどーとかって」
「あー、そだな。まるで進歩がないな!」
「何を胸張ってるのこの人!?」
「それどころか、以前はお菓子が食べたいという明確な理由があったのに対し、今回はお腹が空いたという本能に突き動かされている始末。進歩どころか退化と言っていいだろう」
「また適当なこと言ってぇ……。あのね、お弁当のデザートに果物持ってきたから、それなら食べてもいーよ?」
「マジか。でも、ドリアンを教室なんかで食ってみんなに迷惑かけないかなあ? まあ犬子のせいにすればいいか」
「そんなの持ってきてないし、私のせいにしないでよ、符長くんっ!」
「匂いはキツイが、ドリアンおいしいらしいよ? 食ったことないから知らないが」
「私もないもん」
「じゃあ新婚旅行先で一緒に食べましょうね」
「やっぱり結婚するの!? はわっ、はわわわわ!?」
なんか赤い顔であわあわしてる犬が大変に愉快だったので写真を撮ろうとしたら、やっぱり怒られた。
【犬子 もうすぐ夏休みが終わる】
2012年08月20日
「もうすぐ夏休みが終わるという噂があるが、嘘だよな?」
「本当だよ?」
折角人が勇気を振り絞って聞いたというのに、目の前の犬っぽいのはなんでもないことのようにあっさりとそうのたまった。
「てめェ、この怠惰な毎日を終わらせるとはどういうつもりだ!?」
「わ、私のせいじゃないよ、符長くん!」
「じゃあ俺のせいだというのか! なんという責任転嫁だ! そんなヤツとはもう結婚してやらん! ぷいっ!」
「無茶苦茶だよぅ……って、えええええっ!? けっ、けっこ!?」
なんか犬子がびっくりしてる顔が面白かったので、指差して笑ったら怒られた。
「人がびっくりしてるのに笑わないの!」
「はい、すいません」
「まったく……じゃないよっ! け、結婚ってどういうこと!?」
「あー、あと二週間くらいしかないのかー。もっと長かったらいいのになー」
「今は夏休みの残りに思いを馳せる時じゃないよっ! 私と符長くんの結婚についてだよ!」
「子供は何人くらいほしい?」
「……さ、三人くらい」
何から顔を真っ赤にさせてぽしょぽしょと言われてしまった。ちらちらとこちらを見ている犬子を相手に、俺は一体どうすればいいのか。
「もちろん冗談なんですがね」
「わ、分かってるよ! ……分かってるけど、分かってたけど、……はぅぅ」
「そう言うと、犬子は自らのイヌミミを抱えてイヤイヤと頭を振った。恥ずかしさが許容量を超えたようだ」
「概ね合ってるけど、イヌミミのくだりだけが間違ってるよっ! これはイヌミミじゃなくて、そーゆー髪形なのっ! マクロスのランカちゃん髪形なのっ!」
何か言ってるが、今日も聞き流す。
「ううう……今日も聞き流されてるよ……」
「で、結婚の話ですが」
「はうっ!? ……つ、続くの?」
「嫌ですか」
「とんでもないことざますよっ!?」
「いや、原型がないくらい口調がおかしい」
「ど、どーでもいいのっ! ……あ、あの、符長くん?」
「うん?」
「符長くんって、そ、その、私のこと、……すっ、好き、なの?」
「ああ、大好きだ」
「~~~~~~!!!」
「おお、これが声にならない声という奴なのだな。初めて見た。写真でも撮ろうか」
「とっ、撮ってもしょーがないよ! そっ、そっ、そっ、それより、さっき!」
「はいはい、落ち着け」
落ち着けぱぅわーを犬子に送るべく、ぽんぽんと優しく犬子の頭を叩く。
「はぅぅ……」
「うむ、落ち着いた。流石は俺の落ち着けぱぅわー」
「はぅはぅ」
「じゃ、また学校で」
「はぅぅ。……はぅ? わーっ! まだまだ、まだ帰っちゃダメだよ符長くん!」
はぅーってなってたのでこれ幸いとバイバイしようとしたら、すごい勢いで腕を掴まれた。悔しいので反対の手で犬子の腕を掴む。
「? えーっと……なにかな、符長くん」
「俺と犬子の間でサークルが完成しました。これにより、俺の好意が犬子の腕を通じ、俺自身へと返ってくる循環機能を発動できます」
「こ、好意……」
また犬子が赤くなった。
「あ、あのね、符長くん。……わ、私もね、符長くんがね、……す、好き、だよ?」
なんだか泣きそうになりながらも、犬子は笑ってそう言った。
「犬は馬鹿みたいに飼い主が好きだからそれも当然だな」
「犬の話!? え、ひょっとしてさっきの私が好きってのも、犬に関してのこと!?」
「何を驚いているのだろう、この犬は」(なでなで)
「犬じゃないのに、犬じゃないのに! 酷いよ符長くん!」
「そう怒るな、犬子。お詫びに今度結婚しよう」
「お詫びにすることじゃないよっ! もーっ! 符長くんのばかっ!」
「わはは」
ぽかぽか叩いてくる犬子の攻撃をかい潜り、なでなでをけしかける俺だった。
「本当だよ?」
折角人が勇気を振り絞って聞いたというのに、目の前の犬っぽいのはなんでもないことのようにあっさりとそうのたまった。
「てめェ、この怠惰な毎日を終わらせるとはどういうつもりだ!?」
「わ、私のせいじゃないよ、符長くん!」
「じゃあ俺のせいだというのか! なんという責任転嫁だ! そんなヤツとはもう結婚してやらん! ぷいっ!」
「無茶苦茶だよぅ……って、えええええっ!? けっ、けっこ!?」
なんか犬子がびっくりしてる顔が面白かったので、指差して笑ったら怒られた。
「人がびっくりしてるのに笑わないの!」
「はい、すいません」
「まったく……じゃないよっ! け、結婚ってどういうこと!?」
「あー、あと二週間くらいしかないのかー。もっと長かったらいいのになー」
「今は夏休みの残りに思いを馳せる時じゃないよっ! 私と符長くんの結婚についてだよ!」
「子供は何人くらいほしい?」
「……さ、三人くらい」
何から顔を真っ赤にさせてぽしょぽしょと言われてしまった。ちらちらとこちらを見ている犬子を相手に、俺は一体どうすればいいのか。
「もちろん冗談なんですがね」
「わ、分かってるよ! ……分かってるけど、分かってたけど、……はぅぅ」
「そう言うと、犬子は自らのイヌミミを抱えてイヤイヤと頭を振った。恥ずかしさが許容量を超えたようだ」
「概ね合ってるけど、イヌミミのくだりだけが間違ってるよっ! これはイヌミミじゃなくて、そーゆー髪形なのっ! マクロスのランカちゃん髪形なのっ!」
何か言ってるが、今日も聞き流す。
「ううう……今日も聞き流されてるよ……」
「で、結婚の話ですが」
「はうっ!? ……つ、続くの?」
「嫌ですか」
「とんでもないことざますよっ!?」
「いや、原型がないくらい口調がおかしい」
「ど、どーでもいいのっ! ……あ、あの、符長くん?」
「うん?」
「符長くんって、そ、その、私のこと、……すっ、好き、なの?」
「ああ、大好きだ」
「~~~~~~!!!」
「おお、これが声にならない声という奴なのだな。初めて見た。写真でも撮ろうか」
「とっ、撮ってもしょーがないよ! そっ、そっ、そっ、それより、さっき!」
「はいはい、落ち着け」
落ち着けぱぅわーを犬子に送るべく、ぽんぽんと優しく犬子の頭を叩く。
「はぅぅ……」
「うむ、落ち着いた。流石は俺の落ち着けぱぅわー」
「はぅはぅ」
「じゃ、また学校で」
「はぅぅ。……はぅ? わーっ! まだまだ、まだ帰っちゃダメだよ符長くん!」
はぅーってなってたのでこれ幸いとバイバイしようとしたら、すごい勢いで腕を掴まれた。悔しいので反対の手で犬子の腕を掴む。
「? えーっと……なにかな、符長くん」
「俺と犬子の間でサークルが完成しました。これにより、俺の好意が犬子の腕を通じ、俺自身へと返ってくる循環機能を発動できます」
「こ、好意……」
また犬子が赤くなった。
「あ、あのね、符長くん。……わ、私もね、符長くんがね、……す、好き、だよ?」
なんだか泣きそうになりながらも、犬子は笑ってそう言った。
「犬は馬鹿みたいに飼い主が好きだからそれも当然だな」
「犬の話!? え、ひょっとしてさっきの私が好きってのも、犬に関してのこと!?」
「何を驚いているのだろう、この犬は」(なでなで)
「犬じゃないのに、犬じゃないのに! 酷いよ符長くん!」
「そう怒るな、犬子。お詫びに今度結婚しよう」
「お詫びにすることじゃないよっ! もーっ! 符長くんのばかっ!」
「わはは」
ぽかぽか叩いてくる犬子の攻撃をかい潜り、なでなでをけしかける俺だった。
【犬子 はわわ】
2012年08月01日
「なんか萌え言語に飢えてるのではわわとか言え」
「いきなり酷すぎるよ、符長くん!」
今日もどうやら酷いと噂の符長彰人ですこんにちは。そして今日も俺の脳内こんにちはが冴えている。素敵ね。
「大体ね、ふつーの女の子はね、はわわとか言わないんだよ? そーゆーのはゲームとかでしか言わないんだよ?」
何やら偉そうに講釈を垂れてる犬子がむかちゅく。ここはひとつビシッと言ってやらねば!
「それくらいギリギリで分かってるに決まってるであろうが、たわけ!」
「ギリギリなんだ……」
「でもほら、目の前にいるのは女の子とかじゃなくて巧妙に人間に擬態してる犬だから気づかないよ。犬って頭悪いし」
「酷い!? ていうかまだ犬扱いなの!? そんなこと言ってるの符長くんだけだよ!」
「大丈夫、俺は、俺だけはずっと、お前にそう言う。言い続ける。……信じてくれ、犬子」
なんとなく犬子の手を握り、じーっと目を見つめながら囁いてみる。
「ふ、符長くん……ってえ! なんか素敵な雰囲気だけど、言ってることはちっとも素敵じゃないよ!」
「いけると思ったが、無理だったか。流石に力押しに過ぎるな。わはは」
「わははじゃないよぉ……。はぅー」
「お、その調子だ。どんどん萌え言語を言って俺をニタニタさせるように」
「別に好きで言ったわけじゃないもん。疲れてはぅーって感じになっちゃったから、言っちゃっただけだもん。はぅー」
「ふふふ。ふふふふ」(にまにま)
「……は、はぅー」
「あ、急に作為的になった。もういいです」(NOという感じの手を突きつけながら)
「なんで!? なんでもいいんじゃないの!?」
「人工物に興味はねえ。俺は天然物が好きなんだ」
「無茶だよぉ! そもそも最初が人工物なのに!」
「無茶とかヤムチャとか最初に言い出したのは誰なのかしら」
「たぶん鳥山明だよ」
「天津飯!」(太陽拳のポーズで)
「ポーズと言う台詞が合ってないよ?」
「たぶん間違えたんだろうね」
「はぁ……」
「む、ヤムチャとか言ってたら飲茶(ヤムチャ)したくなった。犬子、コンビニ行って肉まんでも買い食いしようぜ。おごるから来い」
「今日も適当だよぉ……。でも、おごりなら行くよ♪」
「ん、よし。じゃあちょっと財布を置き忘れるから、コンビニで代わりに払ってくれな」
「酷い故意犯を見たよ! 今日は符長くんのおごりなの!」
「やれやれ、わがままだなあ」
「符長くんがそれを言うかなあ……」
「まあいいや。じゃ、買ってあげるから代わりに『はわわ』って言ってくれ」
「うー……まあ、おごってくれるし、いっか。んじゃ言うよ?」
「はい」
「は……はわわ! はわわわ!」
「うーん、0点。やっぱおごらん」
「なんとなくそうなるんじゃないかと思ったけど、それでも酷いよ符長くん!」
犬子は怒ったような顔で俺をぺこぽこと叩いた。痛み0。なんて弱々なんだ。
「いじめて満足したのでやっぱ買ってあげます」(なでなで)
「ううう……今日もいじわる王だよ」
そんなわけで、クソ暑いなか近所のコンビニへ。
「あっ、ほらほら符長くん、肉まんがあったよ! どれにしよっか?」
犬子が嬉しそうに俺の腕を引っ張りながらレジ前へと連れて行く。
「肉まんとか誰が買うんだ。馬鹿じゃねえの」
「ええっ!?」
「アイス買おうアイス。犬子は何がいい?」
「や、やむちゃは? 一緒にやむちゃしないの?」
「そうしたいのは山々なんだが、サイバイマンがいないから自爆で死ねないんだ」
「そっちのヤムチャじゃない! ぱくぱく食べるほーのやむちゃ!」
「アイスでいーじゃん」
「うー……」
どうにも納得してない様子で、犬子は唸っていた。
「ふむ。どしてそんなに肉まんがいいんだ?」
「……あのね? 冬みたいにね? 久しぶりにぺたーってくっついて食べたいかなー、って……」
言ってるうちに自分が何を言ってるのか気づいたのか、ゆっくりと犬子の顔に朱が差していく。
「な、なし! うそ! 違うの! べ、別に符長くんとくっつきたいとかじゃなくて!」
「か、勘違いしないでよね! くっつきたいんじゃないんだからね!?」
「なんで言い直したの!?」
「自動ツンデレ語翻訳機能付きなんだ」
犬子がはぅーって感じの顔になった。
「はぅー……」
実際に言いもした。
「じゃあ、そういうことなら分かった。すいません、肉まん二個ください」
「わわっ!? べ、別にいいよ、買わなくてもいいよ!」
「うるさい黙れ死ね」
「酷い!?」
なんか知らんが半泣きになってる犬子の隙を狙い、肉まんを買う。
「や、よい買い物をした」
「死ねって言われたー……」
コンビニから出ても犬子は泣きそうな顔をしている。
「一方俺は俺で空からの熱光線+地面からの輻射熱+肉まんのホカホカ熱で早くも死にそうだ」
「うー……。よく分かんないけど、熱いなら私が肉まん持つよ?」
「そう言うなり、犬子は俺から肉まんを素早く奪うと自分の肉まんを口に詰め、俺の分を道路に放り投げた。次の瞬間、無残にも俺の肉まんが車に轢かれ、轢死体に変わっていた。酷すぎる」
「符長くんの方が明らかに酷いよ! 嘘ばっか言って! ふん! 嫌いだもん!」
ぷいってされた。ぷいって。
「ごめんね? お詫びに死ぬね」
「重すぎるっ! もーちょっと軽いお詫びをご所望だよっ!」
「じゃあ、身体にくくりつける重りを100kgから80kgにするよ」
「そーゆーことじゃないっ! あと水死なの!?」
「ニューヨークで入水自殺する。む、ダジャレになってないな。しょうがない、入浴してから入水自殺だな。わはは」
「ちっともわははじゃないよぉ! そーゆー冗談一切禁止!」
「は、はい」
何やら涙目で訴えられたので、勢いに押される形でうなずいてしまった。
「うぅー……符長くんはすぐそーゆーこと言うから、嫌いだよ」
「頭がおかしいからね」
「自分のことだよ!?」
「間違えた。犬子の頭がおかしいからね」
「そっちにしても酷いよ!」
「どうしろと言うのだ」
「普通にしたらいいんだよ」
「任せろ、得意だ」
「…………」
「犬子の信頼を感じる」
「ジト目だよ!?」
「じゃあとっとと帰って一緒に肉まんを食おうな」(なでなで)
「うぅー……こ、こんなので誤魔化されないからね。いじわるの分の謝罪を要求するからね!」
「ほう。何をすればいいんだ?」
「……だ、抱っこ?」
何かを期待した目で、犬子がこちらを見ている。
「分かった、任せろ。だが、いきなり見知らぬ奴が抱きついたりしても、お巡りさんに通報されないかな?」
「符長くんは知ってる人だよ?」
何か嬉しいのか知らないが、嬉しそうにニコニコ笑いながら犬子が俺の頬をさする。
「いや、帰ってから鈍器のようなもので殴って記憶喪失にさせてから優しく抱っこするつもりなので。そのバヤイは知らない人になってるだろ?」
「いい人か悪い人か分からないよ、符長くん!」
混乱してる様子だったので、頭をなでて落ち着かせてみた。
「はぅー」
「はわわではないが、これはこれで!」(なでなで)
「はぅー」
そんな休日。
「いきなり酷すぎるよ、符長くん!」
今日もどうやら酷いと噂の符長彰人ですこんにちは。そして今日も俺の脳内こんにちはが冴えている。素敵ね。
「大体ね、ふつーの女の子はね、はわわとか言わないんだよ? そーゆーのはゲームとかでしか言わないんだよ?」
何やら偉そうに講釈を垂れてる犬子がむかちゅく。ここはひとつビシッと言ってやらねば!
「それくらいギリギリで分かってるに決まってるであろうが、たわけ!」
「ギリギリなんだ……」
「でもほら、目の前にいるのは女の子とかじゃなくて巧妙に人間に擬態してる犬だから気づかないよ。犬って頭悪いし」
「酷い!? ていうかまだ犬扱いなの!? そんなこと言ってるの符長くんだけだよ!」
「大丈夫、俺は、俺だけはずっと、お前にそう言う。言い続ける。……信じてくれ、犬子」
なんとなく犬子の手を握り、じーっと目を見つめながら囁いてみる。
「ふ、符長くん……ってえ! なんか素敵な雰囲気だけど、言ってることはちっとも素敵じゃないよ!」
「いけると思ったが、無理だったか。流石に力押しに過ぎるな。わはは」
「わははじゃないよぉ……。はぅー」
「お、その調子だ。どんどん萌え言語を言って俺をニタニタさせるように」
「別に好きで言ったわけじゃないもん。疲れてはぅーって感じになっちゃったから、言っちゃっただけだもん。はぅー」
「ふふふ。ふふふふ」(にまにま)
「……は、はぅー」
「あ、急に作為的になった。もういいです」(NOという感じの手を突きつけながら)
「なんで!? なんでもいいんじゃないの!?」
「人工物に興味はねえ。俺は天然物が好きなんだ」
「無茶だよぉ! そもそも最初が人工物なのに!」
「無茶とかヤムチャとか最初に言い出したのは誰なのかしら」
「たぶん鳥山明だよ」
「天津飯!」(太陽拳のポーズで)
「ポーズと言う台詞が合ってないよ?」
「たぶん間違えたんだろうね」
「はぁ……」
「む、ヤムチャとか言ってたら飲茶(ヤムチャ)したくなった。犬子、コンビニ行って肉まんでも買い食いしようぜ。おごるから来い」
「今日も適当だよぉ……。でも、おごりなら行くよ♪」
「ん、よし。じゃあちょっと財布を置き忘れるから、コンビニで代わりに払ってくれな」
「酷い故意犯を見たよ! 今日は符長くんのおごりなの!」
「やれやれ、わがままだなあ」
「符長くんがそれを言うかなあ……」
「まあいいや。じゃ、買ってあげるから代わりに『はわわ』って言ってくれ」
「うー……まあ、おごってくれるし、いっか。んじゃ言うよ?」
「はい」
「は……はわわ! はわわわ!」
「うーん、0点。やっぱおごらん」
「なんとなくそうなるんじゃないかと思ったけど、それでも酷いよ符長くん!」
犬子は怒ったような顔で俺をぺこぽこと叩いた。痛み0。なんて弱々なんだ。
「いじめて満足したのでやっぱ買ってあげます」(なでなで)
「ううう……今日もいじわる王だよ」
そんなわけで、クソ暑いなか近所のコンビニへ。
「あっ、ほらほら符長くん、肉まんがあったよ! どれにしよっか?」
犬子が嬉しそうに俺の腕を引っ張りながらレジ前へと連れて行く。
「肉まんとか誰が買うんだ。馬鹿じゃねえの」
「ええっ!?」
「アイス買おうアイス。犬子は何がいい?」
「や、やむちゃは? 一緒にやむちゃしないの?」
「そうしたいのは山々なんだが、サイバイマンがいないから自爆で死ねないんだ」
「そっちのヤムチャじゃない! ぱくぱく食べるほーのやむちゃ!」
「アイスでいーじゃん」
「うー……」
どうにも納得してない様子で、犬子は唸っていた。
「ふむ。どしてそんなに肉まんがいいんだ?」
「……あのね? 冬みたいにね? 久しぶりにぺたーってくっついて食べたいかなー、って……」
言ってるうちに自分が何を言ってるのか気づいたのか、ゆっくりと犬子の顔に朱が差していく。
「な、なし! うそ! 違うの! べ、別に符長くんとくっつきたいとかじゃなくて!」
「か、勘違いしないでよね! くっつきたいんじゃないんだからね!?」
「なんで言い直したの!?」
「自動ツンデレ語翻訳機能付きなんだ」
犬子がはぅーって感じの顔になった。
「はぅー……」
実際に言いもした。
「じゃあ、そういうことなら分かった。すいません、肉まん二個ください」
「わわっ!? べ、別にいいよ、買わなくてもいいよ!」
「うるさい黙れ死ね」
「酷い!?」
なんか知らんが半泣きになってる犬子の隙を狙い、肉まんを買う。
「や、よい買い物をした」
「死ねって言われたー……」
コンビニから出ても犬子は泣きそうな顔をしている。
「一方俺は俺で空からの熱光線+地面からの輻射熱+肉まんのホカホカ熱で早くも死にそうだ」
「うー……。よく分かんないけど、熱いなら私が肉まん持つよ?」
「そう言うなり、犬子は俺から肉まんを素早く奪うと自分の肉まんを口に詰め、俺の分を道路に放り投げた。次の瞬間、無残にも俺の肉まんが車に轢かれ、轢死体に変わっていた。酷すぎる」
「符長くんの方が明らかに酷いよ! 嘘ばっか言って! ふん! 嫌いだもん!」
ぷいってされた。ぷいって。
「ごめんね? お詫びに死ぬね」
「重すぎるっ! もーちょっと軽いお詫びをご所望だよっ!」
「じゃあ、身体にくくりつける重りを100kgから80kgにするよ」
「そーゆーことじゃないっ! あと水死なの!?」
「ニューヨークで入水自殺する。む、ダジャレになってないな。しょうがない、入浴してから入水自殺だな。わはは」
「ちっともわははじゃないよぉ! そーゆー冗談一切禁止!」
「は、はい」
何やら涙目で訴えられたので、勢いに押される形でうなずいてしまった。
「うぅー……符長くんはすぐそーゆーこと言うから、嫌いだよ」
「頭がおかしいからね」
「自分のことだよ!?」
「間違えた。犬子の頭がおかしいからね」
「そっちにしても酷いよ!」
「どうしろと言うのだ」
「普通にしたらいいんだよ」
「任せろ、得意だ」
「…………」
「犬子の信頼を感じる」
「ジト目だよ!?」
「じゃあとっとと帰って一緒に肉まんを食おうな」(なでなで)
「うぅー……こ、こんなので誤魔化されないからね。いじわるの分の謝罪を要求するからね!」
「ほう。何をすればいいんだ?」
「……だ、抱っこ?」
何かを期待した目で、犬子がこちらを見ている。
「分かった、任せろ。だが、いきなり見知らぬ奴が抱きついたりしても、お巡りさんに通報されないかな?」
「符長くんは知ってる人だよ?」
何か嬉しいのか知らないが、嬉しそうにニコニコ笑いながら犬子が俺の頬をさする。
「いや、帰ってから鈍器のようなもので殴って記憶喪失にさせてから優しく抱っこするつもりなので。そのバヤイは知らない人になってるだろ?」
「いい人か悪い人か分からないよ、符長くん!」
混乱してる様子だったので、頭をなでて落ち着かせてみた。
「はぅー」
「はわわではないが、これはこれで!」(なでなで)
「はぅー」
そんな休日。