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2024年11月22日
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【沙夜 学校で寝起き】

2010年01月22日
 昼食後の授業というのは眠いものだ。それが古文なら尚更だ。だから、授業が終わったというのに未だ眠っている幼なじみを責めるのは酷だろう。
 とはいえ、このまま放置して次の授業まで寝続けさせるわけにもいくまい。
「沙夜、起きろ。沙夜」
 軽く肩をゆすって沙夜を起こす。多少なりとも効果があったのか、薄く沙夜のまぶたが開いた。
「お、起きたか。顔でも洗って目を覚ま……」
「♪」
 沙夜は俺の顔を見るなり、薄目のままにぱーっと笑って俺の首元に抱きついた。
「え、あ、い、いや、沙夜……そう、沙夜。あの、あのですね?」
「♪♪」
 沙夜はきゅんきゅん鼻を鳴らながら俺のほっぺをあむあむと甘噛みしている。……さてはこいつ、ここを自宅と勘違いしているな?
「沙夜、落ち着いて聞け」
「?」
 俺の鼻をめろりと一舐めしつつ、沙夜は一応は聞く姿勢を見せた。
「ここは、学校だ」
「…………。……っ!」
 ほんのすこし間を置いて、沙夜は顔を真っ赤にした。そして、どでででと勢いよく教室を出て行った。残された俺は、周囲の生暖かい視線に晒されているので大変居心地が悪いです。
 ややあって、未だ顔の赤い沙夜が教室に戻ってきた。そして俺の席までやってくると、まるで文句を言うかのように俺の頬を引っ張った。
「勘違いしたお前が悪いんだろ」
 沙夜はほっぺをぷくーっと膨らませ抗議を続けている。何が何でも俺のせいにしたいようだ。
「何でもいいが頬をつねるな。痛い」
 すると、俺の頬をつまんでいた手が俺の鼻へ移動して摘まみだした。場所を変更すればいい話ではない。
「違う、沙夜。そういうことじゃない」
 俺の鼻声が面白かったのか、沙夜はにこーっと笑った。機嫌が直ったのは何よりだが、周囲の生暖か視線に気づいて。

「だから、あれは俺も悪いかもしれないが、主にお前の責任だろ」
 帰り道。あの後、ようやっと周囲の様子に気づいた沙夜が真っ赤な顔で自分の席に戻っていったはいいが、それからまた機嫌を損ねてしまったようで、今こうして一緒に帰りながらもその手は俺の腹を抓り続けており痛い。
「そもそも、お前が寝なけりゃ済む話だったんだ。というか、寝ぼけるのが悪いと言うか」
 沙夜はむすーっとした顔で俺の話を聞いている。
「しかし、困ったな……寝ぼけてああなるってことは、普段の行いを改める必要があるかもな。例えば、家でひっつくの禁止とか」
 沙夜の顔が驚愕の表情で固まった。
「沙夜?」
 ほっぺをふにふに押してみるが、反応がない。死んだ?
「……っ!」
「うわあっ! びっくりした」
 死んだと思われた沙夜だったが、どっこい生きてた。突然俺の服を掴み、激しく首を横に振ってる。
「あー、ええと、ひっつく禁止が嫌なのでせうか?」
 今度は首を激しく縦に振っている。そこまで必死にならなくてもいいと思う。
 と思ってたら、沙夜は俺のお腹にぎゅっと抱きつき、きゅーきゅー鳴きだした。
「あー……いや、そこまで嫌なら禁止しないから。落ち着け」
「……?」
「あ、うん、大丈夫大丈夫。これからも引っ付き放題で、沙夜にっこり俺もにっこり」
「……♪」
 沙夜は安心したようにほにゃっとした笑顔を見せた。その笑顔につられるように自分の頬が緩むのを感じながら、沙夜の頭をなでる。
「♪♪♪」
 嬉しそうな沙夜の顔を見てたら、頭をなでていた手が沙夜のほっぺに移動していた。そのまま優しくさすさすする。
「……♪」
 沙夜はうっとりした表情で俺を見つめた。どこか目がうるんでいる。
「ほっぺ、好き?」
「♪」
「そうか。俺も好き」
 ほっぺをふにふにしたり沙夜の鼻をつんつん突ついていたが、ふと我に返るとここは往来。キャッキャするに相応しくないだろう。
「とりゃーず、帰るべ。帰ってから続きをば」
「♪♪♪」
 俺の手をとり、沙夜はご機嫌な様子でぶんぶん振った。
「そして今気づいたが、寝ぼけ対策を何も考えてなかった。やはり家で引っ付く禁止令を」
 手をばってんされた。ダメなようです。
「ばってんならば仕方ない。また追々考えよう」
 コクコクうなずく沙夜と一緒に帰宅しました。

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