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2024年11月27日
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【「ヘブンズドアー! 『ツンできない』ッ!」】

2010年02月22日
 矢に貫かれ、スタンド能力を身につけた。よし、好都合なことに遊びに来ているボクっ娘で試してみよう。
「ヘブンズドアー! 『ツンできない』ッ!」
 ボクっ娘の顔がまるで本のようにめくれる。そこに『ツンできない』と書き込み、スタンド解除。さてどうなる?
「う、ううん……タカシ、ボクに何かした?」
 梓は頭を振って俺に尋ねた。自分に何が起こったか理解していないようだ。
「何もしてないよ?」
「……そう? それならいいんだけど」
 さて、見た目上は何ら変わっていないようだが、はたして俺のスタンドは機能しているのだろうか。実践だ。
「ところで。梓、ちゅきちゅきー」
 我ながらとても気持ち悪いが、これくらいやった方が分かりやすいだろう。いつもの梓なら「タカシが狂った! ……いや、いつも通りカナ?」とか言うに違いないが、さて。
「な、なんだよ、いきなり。恥ずかしい奴だなあ」
 む、ちょっと反応が違うが概ねいつも通りか。失敗か。
「……まあ、ボクもちゅきちゅきだけどね」
 梓はぼそっと付け足した。成功だ。さて、こうなったらエロいことしたいよね。例えば、ふ、ふ、風呂に一緒に入るとか! で、洗いっことか! 手が滑らせもにゅもにゅやーんえっちとか! とか!
 ほとばしる妄想に鼻息を荒くしてると、梓が俺をくいくい引っ張った。
「ね、ねぇ……本当にボクに何もしてない?」
「してないっての」
「うー……でも、でもね、なんか知んないけどね、タカシがすっごい好きなんだよ。好きすぎて、むきゅーって感じなんだよ。なんかしたでしょ?」
 なんだ、むきゅーって。つーかなんでそんな恥ずかしい事を真顔で言いますか。こっちが恥ずかしいジャマイカ。
「し、してない」
「ホントにぃ……? うー、なんだろ、うー……やっ!」
 気合を込めて梓が俺の背中に抱きついてきた。
「なんですか」
「なんか知んないけど、すっごくタカシに抱きつきたいんだよ! したでしょ、なんか!」
「だから、してないっての」
 『ツンできぬ』とは書いたが、『抱きつけ』とは書いてない。
「くんくんくん」
「匂うな。犬か」
「ぬー……落ち着くよっ!」
「なんで怒ってんだよ」
「タカシなんかに抱きついて落ち着く自分が不甲斐ないよっ! もっと気骨あったよ、ボク!」
「不甲斐ないって……俺が好きなのか嫌いなのか、どっちやねん」
「ちょー好きだよっ! それはそれとして、ボクってこんなふにゃふにゃじゃなかったような気がすんだよ!」
「じゃあ離れれ」
「超お断りだよっ! なんだか一時でも離れたくない気分だよ! むぎゅーだよ!」
 むぎゅーと言いながら梓がむぎゅーと抱きしめてくるのでむぎゅー(困惑)。
「あぎあぎあぎ」
「いていて、頭かじるねい」
「うー……幸せだよっ!」
「だから、なんで怒ってんだよ」
「怒ってないよ! 感情を持て余してんだよ!」
「性欲を持て余す?」
「惜しい! ちょっと違う! それMGS!」
 なぜか詳しかった。
「性欲はともかく、ちゅーはしたいよ! いい?」
「あははははは。梓は冗談が上手だなあ」
 こんな状態の梓とそれは、流石にダメだ。どうにか背中から引き剥がし、『ツンできない』を訂正せねば……!
「ね、何にもしないからさ、ちょっとこっち向いて」
「任せろ」(反対方向を向きながら)
「…………」(無言で反対方向に顔を移動)
「…………」(その反対に)
「こっち向け! ちゅーできないだろっ!」
「あっ! 梓、見ろ! 空から金星人が!」
「嘘が下手すぎだよ! 小学生でも騙されないよ!」
「いやいや、空は空でも蒼井そらのことだから」
「……怖いよ!」
 蒼井そらが開いて中から金星人が出てくる様でも想像したのか、梓は一瞬固まった。その一瞬を逃さず、梓から離れる。
「あっ! ず、ずるい!」
「ヘブンズドアー! 『ツンできない』を解除ッ!」
 再び梓の顔が本のようになり、そこに書かれた『ツンできない』を消す。
「…………」
 どうだ? 戻ったか?
「……あ、あううううーっ!」
 梓は真っ赤になって俺を叩いた。
「やあ、戻ったようですね」
「な、な、なんてことさせるんだよっ、ばかっ!」
「しかも、全部覚えているようで何よりです」
「ちっとも何よりじゃないっ! アレだろ、ボクに惚れ薬的な何かを盛ったろっ! じゃなきゃ説明できないよっ!」
 どうしよう。「スタンドでツンを取り除いただけです。いやはや、ものすっごいことになりましたね」とか言ったら怒るよな。よし、ここは大人な対応で。
「えっと、そうです。こう、ごばーっと盛りました。ごめりんこ」
「嘘っぽい! ホントのこと言えよっ!」
「いや、本当に。こう、惚れ薬をぐわーって。決してスタンドとか使ってない」
「スタンド……?」
 いかん。

 まあ結果から言うと、全部ばれた。
「ボクは! 別にタカシのことなんて! 好きじゃないもん! 惚れ薬盛られたんだもん! スタンドでツンを取ったとか意味分かんないし!」
 そんなわけで、超真っ赤な顔でがなる梓が超うるせえ。
「あーはいはいそうな、惚れ薬盛られたんだよなー。別に俺のことなんて好きじゃないもんなー」
「そうだよ! そうに決まってるよ! それはそれとして、もースタンドとかいうの使うの禁止だかんねっ! 理由は不明であり以後ずっと不明!」
「はいはいはい」
 ご立腹なボクっ娘の頭をなでて必死にご機嫌を繕う俺だった。

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