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2024年11月23日
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【ツンデレとバレンタイン】
2010年02月02日
今年はバレンタインが土曜日なので、残念ながら学校は休みだ。いや、本当に残念だ。学校があれば死ぬほどもらえたろうになあ!
……な、泣いてないよ、泣いてないよ!?(見えない何かに必死に抵抗)
落ちてたタオルで目元を拭っていると、インターホンが鳴った。はてこんな日に一体誰が。……ひょひょひょっとして可愛いおにゃのこが俺の家をつきとめ、ち、ち、ち、チョコを!?
矢も楯もたまらず転がるように受話器を取り、耳元にあてる。
「は、は、はい」
『別府くん、先生です。先生が来ました。開けてください』
「その声は大谷先生か。聞こえてくるロリ声に、一瞬にしてテンションが下がった」
『なんでいきなりテンション下がるんですか! あとロリ声ってなんですか! 先生、大人なので低音の魅力満載ですよ! ごあー!』
「ごあー?」
『そです。ごあーです。分かったら、開けてください』
「先生がそこで『お兄ちゃん♪』って媚びたら開ける」
『絶対に嫌ですッ! 先生、大人ですから別府くんはお兄ちゃんじゃないです! むしろ別府くんが先生をお姉ちゃんと呼ぶべきです! ほら、呼んでください!』
「お姉ちゃん」
『……て、照れますね』
「満足したら帰れ変態」
『へ、変態なんかじゃないです! 変態は別府くんの方です!』
「まあ、否定はしないが」
『そこは否定してくだたいっ!』
「くだたい?」
「もー! 揚げ足取らないでください! ちょっと用があったんで来たんです! いーから開けてください!』
なかなか愉快だったが、あんまり玄関先で喚かれても迷惑なんで、家にあげることにした。
「まったくもー……どして家に入るだけでこんな苦労しなくちゃならないんですか?」
ぶちぶち言いながら、自称大人の大谷先生が家に入ってきた。小さな体に似つかわしくない大きな鞄を持っている。なんだ?
「苦労した方が喜びもひとしおだろ」
「こんなことで苦労なんてしなくていいんですっ!」
「いやはや」
「いやはやじゃないですよぅ。……さて」
そう言うと、先生は居住まいを正し、俺に向き直った。
「先生、大人なので来るもの拒まずです」
「先生のビッチ宣言に、思わずしおしお」
「ちちち違いますっ! 何を言うですか貴方は!? まだしたことないです!」
「ほほう、それは興味深い情報だ」
「うぐ……な、何を言わせるですかっ! そ、そんなのはどーでもいいんです、どーでも」
先生は顔を赤くしながら、何でもない風を装った。
「そじゃなくて、その……きょ、今日は何の日か知ってます……よね?」
「全人類の半数が俺の元へチョコを届けに疾走する日だ。現在までに、数十万人が俺の元へチョコを届けに参った」
「……どこにあるんですか、その大量のチョコは」
「食った」
「質量保存の法則に従うと、別府くんのお腹は破裂してますよ?」
「食ったそばから消化するんだ。今日だけで既に両手両足では足りない数便所へ走った」
「きちゃないですっ! そんな強がりはいーんです。そもそも、今日は逆チョコの日ですよ?」
何を言ってるのだろう、この人は。
「さ、先生にチョコレートください。あ、だいじょぶですよ。先生、義理でも全然おっけーですから♪」
何を言ってるのだろう、この人は。
「別府くんはどんなチョコくれるんですか? 先生、ごでぃばっての食べてみたいです」
よく分からないが、スイーツ臭がするのでご退場願おう。
「べ、別府くん!? ほうき、それホウキです! 先生、ホウキで転がされてます!」
「大丈夫、ホウキは使い慣れてる」
「そんな心配してませんっ! ぷわっ、埃が、埃が口の中に入りましたよ!?」
「死にはしないさ。あ」
「みぎゃー!?」
先生はごろごろ転がされ、段差にどすんと頭から落ちた。
「うぐぐぐ……痛いです、頭が割れそうです」
「あー……ごめん。頭痛薬取ってくる」
「そんなのじゃ取れない痛みですっ!」
「薬じゃ治らない病……やれやれ、恋の病か。やっかいだな」
「やっかいなのは別府くんの頭ですっ! もー、先生をホウキで掃く生徒なんて、聞いたことありません!」
「奇遇だな、俺もだ」
「ぎにゃー!」
先生が怒った。怒った?
「別府くん! ちょっとそこに座りなさい!」
「はい」
「誰も先生の膝に座れなんて言ってませんよ!? 重い、重いです!」
「教職を預かる者が、この程度の重圧に根を上げてどうする」
「物理的に重いんです! うぐー、うぐぐー、膝が潰れますー!」
割とマジっぽかったので、腰を浮かす。先生はほっとしたように息を吐いた。
「どして先生を掃くんですか! 先生、埃まみれで誇りが汚れちゃいましたよ! ……ふふん?」
「別にうまくないですが」
「ええっ!?」
ええじゃねえ。
「ええと、先生を掃いた理由は、簡単に言うとスイーツ連中は殺せって電波が囁くんだ」
「うちの生徒がもうダメです!」
もうダメとか言うな。
「冗談はともかく、一応聞いておくが、逆チョコのためにうちに来たのか?」
「別府くんのおうちだけじゃなくて、他の生徒たちの家にも行きました。いっぱいチョコもらいました♪」
そう言うと、先生は持っていた鞄を開けた。チョコレートが山と詰め込まれている。
「いー風習ですよね、逆チョコ♪ 甘いのいっぱい食べれて、先生幸せです♪」
「あー、一応聞いておくが、お返しにちゃんと先生もチョコあげたんだろうな?」
「どしてですか? 先生のチョコがなくなるじゃないですか」
「……そですか」
きっと他の連中も知らず家にあげてしまい、先生に請われてチョコを買いに走ったのだろう。お返しのチョコがないとも知らず。哀れな……。
「さっ、それじゃ、別府くんの番です。チョコください」
「……はぁ。別にいいけど、チョコを溶かして俺の分身に塗りたくるから、恍惚とした表情でぺろぺろ舐めてくれよな」
「別府くんとてもえっちですっ!!!」
それが何を指すのかを一瞬で察知したのだろう、先生は全力で顔を赤くした。
「だって、合法ロリだし、いいかなーって。てへ」
「なんですか合法ロリって! 先生、大人ですからロリとか言う単語は似つかわしくないんです! いーからください! チョコ! ちょーこー!」
先生はその場に横になり、じたじたと暴れだした。どこが大人だ。
「分かった、分かったから暴れるな。スカートの中が丸見えだぞ」
「みっ、見ないでくださいっ! 別府くんえっちです!」
しゅばっと居住まいを正し、先生は俺を睨んだ。
「むー……み、見ましたか?」
「当然だろ。くまぱん!」
「うわぁぁん! 別府くんが『やーい、先生の見た目にお似合いだぁー』って吹聴しますー!」
してねえ。物まねがムカツク。
「ほら、泣くな。チョコ買ってきてやるから」
「ぐすぐす……本当ですか?」
「ああ。麦チョコとチロルチョコのどっちがいい?」
「安く済まそうとされてますー! うぇぇぇん!」
厄介。厄介だ、この人。
結局何がいいのか分からなかったので、近所のコンビニまで一緒に来た。
「しっかし、あれだけもらっておいて、まだもらおうとするとは……本当にチョコが好きなんだな、先生」
「え、えーと……まあ、それもそうなんですが」
先生は恥ずかしげにうつむき、指と指をくにくにと合わせた。
「? まぁいいや、入るぞ」
むぃぃぃんと自動ドアが開く。らっしゃっせーという店員のやる気のない声を受け、中へ。
「んと……どれがいーですかね。別府くん、選んでください」
「これ」
「チロルチョコです! 20円です! 不許可です!」
「贅沢だなあ……じゃ、これで」
「おせんべです! もはやチョコですらないです!」
「食いたくなったんだ」
「むー……別に買ってもいいですけど、ちゃんとチョコも買ってくださいよね、チョコ」
「へーへー」
先生と一緒にぷらぷらと店内を探索する。どれにしようかと思ってたら、視界に隅っこに先生が俺の持つカゴの中に何か入れようとしているのが映った。
「何やってんだ、先生」
「ひゃうわっ!? ちち違います、違います!」
「……『マシュマロ』」
「だだっ、だってだってだって! おいしそーだったんですもん!」
「没収」
「あああああ……」
元あった場所にマシュマロを戻すと、先生は力なくうな垂れた。
「ましゅまろー……」
「嫌と言うほどチョコを食えるんだから、いらないだろ」
「それはそれとして、食べたかったんですー。別府くんのばか」
「自分で買えよ……」
「ヤです」
このわがまま合法ロリが……あとでヒィヒィ言わせてやる。
「うぅ? なんか寒気が……」
「俺の思考が先生に流れ込んだんだろ」
「なんかとっても怖いですっ!」
などとぎゃーぎゃー言い合いながら、しばし店内をうろつく。その甲斐もあって、どうにか先生のお眼鏡に適うチョコを見つけた。
「ポッキーねえ。うまいけど、こんなのでいいのか?」
「いいです。ポッキー、おいしいです」
レジで清算して、店を出る。
「あれ?」
一緒に出てきたと思ったが、先生はなぜかまだ店内にいた。一度お菓子コーナーに戻り、何かを掴んでレジで清算してる。
……ああ、マシュマロか。なんか知らんが欲しがってたし。
「はぁはぁ……そ、それじゃ行きましょ、別府くん?」
「おっけー」
先生と一緒に帰宅。
「さて。それじゃ、はい。逆チョコとかいう不愉快な風習」
「ものすっごく受け取りづらいですっ!」
先生はとても嫌そうな顔をしながら俺のポッキーを受け取った。
「……えへ」
しかし、受け取った途端、嬉しそうに先生の顔が綻んだ。
「まあ、嬉しそうで何よりだ」
「べ、別に別府くんにもらったから嬉しいんじゃないですよ!? ち、チョコが好きだからですよ!?」
「一発芸、まな板の上の鯉」
「なんでこのタイミングで一発芸なんてするんですかっ!」
「いや、お茶を濁さないといてもたってもいられなくて」
「あ、あぅぅ……」
先生の顔が真っ赤になった。ええい。
「い、いーからもう帰れ。チョコはやったぞ」
「あ、あの、あのあの、そーしたいんですけど、そのあの、……こ、これ」
先生は持ってたコンビニの袋を探った。マシュマロがどうしたってんだ。
「……あ、あの、これ。どぞ」
そう言って差し出されたのは、マシュマロではなく、見紛うことなきチョコレートだった。
「え。えと?」
「……きょ、今日はバレンタインです。ほほほら、逆チョコもらったし! お、お返し、お返しですよぅ! やだなあ別府くん、意識しちゃって!」
「いや、他の生徒にはやってないとか言って」
「なな何のことか先生分かりません、分かりませんとも! そ、それじゃ別府くん、また学校で!」
呆然とする俺にチョコを渡すと、先生は顔を真っ赤にしたまま部屋から飛び出していった。
「はは……」
手に残るチョコレートに、我知らず笑いが込み出てくるのだった。
……な、泣いてないよ、泣いてないよ!?(見えない何かに必死に抵抗)
落ちてたタオルで目元を拭っていると、インターホンが鳴った。はてこんな日に一体誰が。……ひょひょひょっとして可愛いおにゃのこが俺の家をつきとめ、ち、ち、ち、チョコを!?
矢も楯もたまらず転がるように受話器を取り、耳元にあてる。
「は、は、はい」
『別府くん、先生です。先生が来ました。開けてください』
「その声は大谷先生か。聞こえてくるロリ声に、一瞬にしてテンションが下がった」
『なんでいきなりテンション下がるんですか! あとロリ声ってなんですか! 先生、大人なので低音の魅力満載ですよ! ごあー!』
「ごあー?」
『そです。ごあーです。分かったら、開けてください』
「先生がそこで『お兄ちゃん♪』って媚びたら開ける」
『絶対に嫌ですッ! 先生、大人ですから別府くんはお兄ちゃんじゃないです! むしろ別府くんが先生をお姉ちゃんと呼ぶべきです! ほら、呼んでください!』
「お姉ちゃん」
『……て、照れますね』
「満足したら帰れ変態」
『へ、変態なんかじゃないです! 変態は別府くんの方です!』
「まあ、否定はしないが」
『そこは否定してくだたいっ!』
「くだたい?」
「もー! 揚げ足取らないでください! ちょっと用があったんで来たんです! いーから開けてください!』
なかなか愉快だったが、あんまり玄関先で喚かれても迷惑なんで、家にあげることにした。
「まったくもー……どして家に入るだけでこんな苦労しなくちゃならないんですか?」
ぶちぶち言いながら、自称大人の大谷先生が家に入ってきた。小さな体に似つかわしくない大きな鞄を持っている。なんだ?
「苦労した方が喜びもひとしおだろ」
「こんなことで苦労なんてしなくていいんですっ!」
「いやはや」
「いやはやじゃないですよぅ。……さて」
そう言うと、先生は居住まいを正し、俺に向き直った。
「先生、大人なので来るもの拒まずです」
「先生のビッチ宣言に、思わずしおしお」
「ちちち違いますっ! 何を言うですか貴方は!? まだしたことないです!」
「ほほう、それは興味深い情報だ」
「うぐ……な、何を言わせるですかっ! そ、そんなのはどーでもいいんです、どーでも」
先生は顔を赤くしながら、何でもない風を装った。
「そじゃなくて、その……きょ、今日は何の日か知ってます……よね?」
「全人類の半数が俺の元へチョコを届けに疾走する日だ。現在までに、数十万人が俺の元へチョコを届けに参った」
「……どこにあるんですか、その大量のチョコは」
「食った」
「質量保存の法則に従うと、別府くんのお腹は破裂してますよ?」
「食ったそばから消化するんだ。今日だけで既に両手両足では足りない数便所へ走った」
「きちゃないですっ! そんな強がりはいーんです。そもそも、今日は逆チョコの日ですよ?」
何を言ってるのだろう、この人は。
「さ、先生にチョコレートください。あ、だいじょぶですよ。先生、義理でも全然おっけーですから♪」
何を言ってるのだろう、この人は。
「別府くんはどんなチョコくれるんですか? 先生、ごでぃばっての食べてみたいです」
よく分からないが、スイーツ臭がするのでご退場願おう。
「べ、別府くん!? ほうき、それホウキです! 先生、ホウキで転がされてます!」
「大丈夫、ホウキは使い慣れてる」
「そんな心配してませんっ! ぷわっ、埃が、埃が口の中に入りましたよ!?」
「死にはしないさ。あ」
「みぎゃー!?」
先生はごろごろ転がされ、段差にどすんと頭から落ちた。
「うぐぐぐ……痛いです、頭が割れそうです」
「あー……ごめん。頭痛薬取ってくる」
「そんなのじゃ取れない痛みですっ!」
「薬じゃ治らない病……やれやれ、恋の病か。やっかいだな」
「やっかいなのは別府くんの頭ですっ! もー、先生をホウキで掃く生徒なんて、聞いたことありません!」
「奇遇だな、俺もだ」
「ぎにゃー!」
先生が怒った。怒った?
「別府くん! ちょっとそこに座りなさい!」
「はい」
「誰も先生の膝に座れなんて言ってませんよ!? 重い、重いです!」
「教職を預かる者が、この程度の重圧に根を上げてどうする」
「物理的に重いんです! うぐー、うぐぐー、膝が潰れますー!」
割とマジっぽかったので、腰を浮かす。先生はほっとしたように息を吐いた。
「どして先生を掃くんですか! 先生、埃まみれで誇りが汚れちゃいましたよ! ……ふふん?」
「別にうまくないですが」
「ええっ!?」
ええじゃねえ。
「ええと、先生を掃いた理由は、簡単に言うとスイーツ連中は殺せって電波が囁くんだ」
「うちの生徒がもうダメです!」
もうダメとか言うな。
「冗談はともかく、一応聞いておくが、逆チョコのためにうちに来たのか?」
「別府くんのおうちだけじゃなくて、他の生徒たちの家にも行きました。いっぱいチョコもらいました♪」
そう言うと、先生は持っていた鞄を開けた。チョコレートが山と詰め込まれている。
「いー風習ですよね、逆チョコ♪ 甘いのいっぱい食べれて、先生幸せです♪」
「あー、一応聞いておくが、お返しにちゃんと先生もチョコあげたんだろうな?」
「どしてですか? 先生のチョコがなくなるじゃないですか」
「……そですか」
きっと他の連中も知らず家にあげてしまい、先生に請われてチョコを買いに走ったのだろう。お返しのチョコがないとも知らず。哀れな……。
「さっ、それじゃ、別府くんの番です。チョコください」
「……はぁ。別にいいけど、チョコを溶かして俺の分身に塗りたくるから、恍惚とした表情でぺろぺろ舐めてくれよな」
「別府くんとてもえっちですっ!!!」
それが何を指すのかを一瞬で察知したのだろう、先生は全力で顔を赤くした。
「だって、合法ロリだし、いいかなーって。てへ」
「なんですか合法ロリって! 先生、大人ですからロリとか言う単語は似つかわしくないんです! いーからください! チョコ! ちょーこー!」
先生はその場に横になり、じたじたと暴れだした。どこが大人だ。
「分かった、分かったから暴れるな。スカートの中が丸見えだぞ」
「みっ、見ないでくださいっ! 別府くんえっちです!」
しゅばっと居住まいを正し、先生は俺を睨んだ。
「むー……み、見ましたか?」
「当然だろ。くまぱん!」
「うわぁぁん! 別府くんが『やーい、先生の見た目にお似合いだぁー』って吹聴しますー!」
してねえ。物まねがムカツク。
「ほら、泣くな。チョコ買ってきてやるから」
「ぐすぐす……本当ですか?」
「ああ。麦チョコとチロルチョコのどっちがいい?」
「安く済まそうとされてますー! うぇぇぇん!」
厄介。厄介だ、この人。
結局何がいいのか分からなかったので、近所のコンビニまで一緒に来た。
「しっかし、あれだけもらっておいて、まだもらおうとするとは……本当にチョコが好きなんだな、先生」
「え、えーと……まあ、それもそうなんですが」
先生は恥ずかしげにうつむき、指と指をくにくにと合わせた。
「? まぁいいや、入るぞ」
むぃぃぃんと自動ドアが開く。らっしゃっせーという店員のやる気のない声を受け、中へ。
「んと……どれがいーですかね。別府くん、選んでください」
「これ」
「チロルチョコです! 20円です! 不許可です!」
「贅沢だなあ……じゃ、これで」
「おせんべです! もはやチョコですらないです!」
「食いたくなったんだ」
「むー……別に買ってもいいですけど、ちゃんとチョコも買ってくださいよね、チョコ」
「へーへー」
先生と一緒にぷらぷらと店内を探索する。どれにしようかと思ってたら、視界に隅っこに先生が俺の持つカゴの中に何か入れようとしているのが映った。
「何やってんだ、先生」
「ひゃうわっ!? ちち違います、違います!」
「……『マシュマロ』」
「だだっ、だってだってだって! おいしそーだったんですもん!」
「没収」
「あああああ……」
元あった場所にマシュマロを戻すと、先生は力なくうな垂れた。
「ましゅまろー……」
「嫌と言うほどチョコを食えるんだから、いらないだろ」
「それはそれとして、食べたかったんですー。別府くんのばか」
「自分で買えよ……」
「ヤです」
このわがまま合法ロリが……あとでヒィヒィ言わせてやる。
「うぅ? なんか寒気が……」
「俺の思考が先生に流れ込んだんだろ」
「なんかとっても怖いですっ!」
などとぎゃーぎゃー言い合いながら、しばし店内をうろつく。その甲斐もあって、どうにか先生のお眼鏡に適うチョコを見つけた。
「ポッキーねえ。うまいけど、こんなのでいいのか?」
「いいです。ポッキー、おいしいです」
レジで清算して、店を出る。
「あれ?」
一緒に出てきたと思ったが、先生はなぜかまだ店内にいた。一度お菓子コーナーに戻り、何かを掴んでレジで清算してる。
……ああ、マシュマロか。なんか知らんが欲しがってたし。
「はぁはぁ……そ、それじゃ行きましょ、別府くん?」
「おっけー」
先生と一緒に帰宅。
「さて。それじゃ、はい。逆チョコとかいう不愉快な風習」
「ものすっごく受け取りづらいですっ!」
先生はとても嫌そうな顔をしながら俺のポッキーを受け取った。
「……えへ」
しかし、受け取った途端、嬉しそうに先生の顔が綻んだ。
「まあ、嬉しそうで何よりだ」
「べ、別に別府くんにもらったから嬉しいんじゃないですよ!? ち、チョコが好きだからですよ!?」
「一発芸、まな板の上の鯉」
「なんでこのタイミングで一発芸なんてするんですかっ!」
「いや、お茶を濁さないといてもたってもいられなくて」
「あ、あぅぅ……」
先生の顔が真っ赤になった。ええい。
「い、いーからもう帰れ。チョコはやったぞ」
「あ、あの、あのあの、そーしたいんですけど、そのあの、……こ、これ」
先生は持ってたコンビニの袋を探った。マシュマロがどうしたってんだ。
「……あ、あの、これ。どぞ」
そう言って差し出されたのは、マシュマロではなく、見紛うことなきチョコレートだった。
「え。えと?」
「……きょ、今日はバレンタインです。ほほほら、逆チョコもらったし! お、お返し、お返しですよぅ! やだなあ別府くん、意識しちゃって!」
「いや、他の生徒にはやってないとか言って」
「なな何のことか先生分かりません、分かりませんとも! そ、それじゃ別府くん、また学校で!」
呆然とする俺にチョコを渡すと、先生は顔を真っ赤にしたまま部屋から飛び出していった。
「はは……」
手に残るチョコレートに、我知らず笑いが込み出てくるのだった。
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