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2024年11月23日
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【辛いもの食ってつらそうなツンデレ】

2010年04月19日
 コンビニに以前話題になった暴君ハバネロがあったので、話のタネに買ってみた。
 コンビニ袋を携え外に出ると、偶然小さな先輩に出会った。
「よお、先輩。今帰りか?」
「…………」
「え、見れば分かるだろ? いや、そうなんだけど……」
「…………」
「え、何買ったのかって? これ、スナック菓子」
 菓子と聞いて、先輩の目が怪しくきらめいた。
「…………」
「え、よこせ? いや、いくら先輩が妖怪ハラヘッタでも、これは先輩みたいなおこちゃまには辛くて無理だ」
 先輩は俺の体によじ登った。そして俺の胸あたりまで登ると、器用にほっぺを引っ張られた。
「……先輩、んな無理して引っ張らなくても」
「…………」
「え、無理してない? ……そースか。まぁそれはともかく、辛いのダメだったろ、確か」
「…………」
「え、大丈夫? 大人だから辛いのへーき? いや、無理だって。お兄さんの言うこと聞いときなさい」
 先輩は地面に飛び降り、不満そうにほっぺを膨らませて俺のすねを蹴った。
「痛い痛い! ああもう、わーったよ。その代わり、辛くても我慢しろよ」
 菓子を渡すと、先輩は待ちきれない様子で袋を破った。そして、一息にスナックを口に入れた。
 最初笑顔だった先輩の顔が、みるみる悲しそうに変化していく。
「だから言ったろ、先輩にゃ無理だって。ほら、ここに吐き出せ」
 しかし、先輩は頭を振って咀嚼した。涙目になりながらも、先輩はなんとか飲み込んだようだ。
「…………」
「え、全然へーきだった? そっか、なら残り全部やるよ」
 先輩が凍った。
「いや、俺は単に話のタネに買っただけだから。美味しく食べれる奴が食うに限るだろ」
 先輩はあぅあぅと言葉にならない声で何かを訴えようとしていた。
「よかったな先輩、タダでお菓子もらえて。らっきー♪」
 先輩は小さく“全然らっきーじゃない”と悲しげに言った。当然、聞こえないフリをした。
「よし、ここは先輩の得意技である“菓子一気食い”を披露してもらおうか」
 先輩が再び凍った。
「…………」
「え、折角貰ったものを一気に食べるなんて申し訳ない? ははっ、何言ってんだよ先輩。俺は先輩に喜んでもらえりゃ、それでいいんだ」
 先輩の頭をなでると、先輩は泣きそうな目で俺をみつめた。
「う……」
 この、子犬のような目に弱い。
「…………」
「え、年上の綺麗なお姉さんをいじめて楽しいか、このクソ虫……って言った?」
 先輩は半泣きのままコクコク頷いた。
「あははははー……先輩♪ 食え」
 先輩の小さな口を無理やりこじ開け、その中にハバネロを注ぎ込む。
「!!!??」
 先輩は目を白黒させて道路を跳ね回った。
「わはははは! 大丈夫か、先輩?」
 買っておいた清涼飲料水を先輩に渡すと、先輩は一気に飲み干した。
「…………」
「え、おいしかった? やっぱり辛いのなんてへーき? ……すごいな、先輩」
 強がりもここまでくると、逆に感心してしまう。
「…………」
「でも、もういい? お腹いっぱい? そりゃ残念、こんなのもあるんだけど」
 袋の中からチョコレートを取り出すと、先輩は目を輝かせた。
「…………」
「え、やっぱりちょっとお腹空いた? ……先輩、可愛いな」
 馬鹿にされたと感じたのか、先輩は頬を膨らませて俺の脚を蹴った。
「わはははは! はい先輩、チョコあげる」
 チョコを渡すと、先輩は途端に機嫌を直して嬉しそうに頬張った。
「……先輩、リスみたい」
 先輩は口をもごもごさせながら「リスじゃないもん」と小さく呟くのだった。

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