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2024年11月21日
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【ツンデレに耳かきしてもらったら】
2010年01月31日
居間でテレビを見てたら急に耳が痒くなったので、耳掃除をする事にする。
「マスターが自身の耳孔を棒状の凶器で貫こうとしている現場を目撃。とてもよい光景なので、録画しておきましょう」
奥で家事をしていたアンドロイド、ヒナタがやってきて嫌な事を言う。
「違う。これは耳掃除と言って、耳を掃除してるの。貫こうとはしてない」
「じゃあ貫いてください」
「なんで!?」
「そうすれば、きっと胸がすく思いとやらを感じられるに違いないという確信にも似た思いがするヒナタなのです」
こいつは俺をサポートするためのアンドロイドなんだけど、どうも俺を小馬鹿にしている節がある。
「もういい。出てけ。俺は静かに耳掃除したいのだ」
「それなら、ヒナタがしてあげます」
「え、マジ!? やたっ、鉄面皮の皮肉娘とはいえ、一応は女なので膝枕の耳掃除に憧れる思春期の青年としては嬉しい感じ! やってやって!」
「お任せください、マスター。このような感じで行います」
耳かきを渡すと、ヒナタは視認できないほどの速度で何度も虚空を突いた。
「その速度でされると、一緒に脳まで掃除されそうですが」
「大丈夫、一瞬で仕留めて見せます」
「仕留めんな! 誰も殺してくれなんて頼んでない! 耳掃除してほしいの、耳掃除!」
「面倒ですね」
「おまーがしてやるって言ったんだろーが!」
こいつといたら脳の血管切れそう。
「マスターの血圧が160に急上昇。少し危険だと報告します」
「えっ、そんな機能まであるのか? すごいな、ロボだけあって機能が充実してんだな」
「まぁ、カンですが」
「…………」
こいつ嫌い。
「どうしました、マスター。これほど綺麗で聡明、完全無欠なアンドロイドが側にいるというのに不機嫌そうですね」
「おまいが言うところの美点全てが、根性悪ひとつで消されるけどな」
「美点がない人間は言うことが違いますね」
こいつすごく嫌い。
「も、いい。自分で耳掃除するから、耳かき返して」
「否定。ヒナタの仕事を取らないでください。ヒナタが行います」
「ダメだっての。おまいがすると、脳みそまで一緒に掃除するだろうが」
ヒナタの持つ耳かきを取ろうと手を伸ばすが、ガードされ奪えない。
「大丈夫です、ヒナタを信じてください。マスターの信じるヒナタを信じてください」
「おまいのことなんて1mmたりとも信じてねーっ! そんなパクリ名セリフ言われても心動かねーっての!」
叫びながら耳かきを引っ張るが、女の力とは思えないほどの力で握られており、取れない。
「ぐぎぎ……おまえ、すげー力だな。かの有名な妖怪、ゴリラ女か?」
「アンドロイドですので、多少は力持ちです。が、マスター相手でしたら普通の女性程度の力で充分でしたね」
「あっ、カッチーンと来たぞ! 今のセリフに男としてのプライドが刺激されたぞ! もー何が何でも奪ってやる!」
「ヒナタの唇を、ですか。マスターは気持ち悪いですね」
「言ってねーっ! 気持ち悪い言うなっ! 誰がおまいみたいな性悪ロボ子とキスしたいなんて思うか!」
「…………」
ヒナタは無表情なまま耳かきをぐいっと引っ張った。すると、耳かきを掴んでいた俺は、釣られた魚のごとく空中を飛んでいた。
「おや? どうして俺は空にへぶっ!」
そのままの勢いで顔面から壁に激突する。したたかに鼻を打ちつけ、とても痛い。
「……ったあ~! 何しやがるこのポンコツ!」
鼻を押さえながらヒナタに向き直る。
「ヒナタのような見目麗しいアンドロイド相手にキスしたいと思わないなんて、マスターは異常ですね。一度脳洗浄をお勧めします」
「死ぬわっ! 何度も言うが、おまいみたいなのとロボと、どうしてキスなんてしようと思うかね。まぁ、マルチみたいな可愛いはわわっ娘なら考えないでもないけど」
「はわわ」
「…………」
「はわわ」
無表情のまま、淡々と“はわわ”という言葉を羅列するヒナタ。
「マスターは私の萌え動作に心を奪われた様子。必ずや、キスしようとするに違いありません。マスターの要望とは言え、とても嫌だと感じずにはいられないヒナタです」
「おまいは分かっちゃいない……何も分かっちゃいない! “萌え”とはいわば、心の泉から湧き出る雫! そんな模造品で俺を満足させるなんて不可能だ!」
「こういった話題になると、マスターは途端にハキハキ喋りますね」
「…………」
「とても憮然としている顔に満足したので、耳掃除してあげます。さ、横になってください」
その場に正座し、ヒナタは膝をぽんぽん叩いた。ここに寝ろ、ということらしい。
「耳を抉るのか?」
「それがマスターの望みとあらば、やぶさかではありません。掘削用ドリル取ってきますね」
「待って取りに行かないで抉るのノー! 普通にしろ、普通に! いいか、痛いこと禁止だぞ! 泣くからな!」
恐る恐るヒナタの太ももに膝を乗せる。うっ……こいつ、ロボのくせに人みたいに柔らかいな。ふにふにしてる。
「……マスター、ヒナタの太ももに顔をこすりつけるのはおやめください」
「しっ、してないぞお、俺はすりすりなんてしてないぞお!?」
本当はしました。気持ちよかったです。
「おかしいですね。マスターの表情、声の調子、発汗、動悸、全ての要素が嘘と告げています」
「なっ、何ぃっ!? そ、そんなことまで分かるのか!?」
「まぁ、カンですが」
なにこの適当な機械。で、なんで俺は何度も騙されるのか。
「しかし、マスターの反応を見る限り、ほぼ確実に嘘ですね」
「……ああそうさ、嘘さ! したさ、ヒナタのふっにふにの太ももにすりすりしたさ! ははっ、笑うなら笑えよ! 哀れな俺を笑うがいいさ!」
「ヒナタには表情を作る機能はないので、笑えません。なので、声だけで笑ってあげます。ははははは」
無表情ではははと声をあげるヒナタ。なんだかとってもムカツク。
「さて、それでは耳かきをします。神への祈りは済みましたか?」
「え、そんな危ないことなの?」
「ヒナタに搭載された最新式コンピュータによると、43%の確率で成功すると出ました」
「なにその低い数値!? やめて耳掃除やめて!」
「大丈夫、残りは勇気で補います」
「なんか聞いた事あるセリフですよ!? ていうかそこまでして耳掃除してほしくないしやめてやめてやめて!」
「がががーがががーがおがいがー」
「人が生きるか死ぬかの瀬戸際にへったくそな歌を歌うとな!?」
「…………」
「おや、機嫌を損ねましたね? 耳かきの動きが急に乱雑になりましたよ? ていうかホントすいませんやめてください死にますもう死にますからひぎゃあああ!」
あまりの恐怖に気絶。
「……マスター、起きてください。マスター、起きてください」
「…………」(気絶中)
「起きないと、脳に電極を刺して強制的に起こします。3、2、1」
「起きた!」
「……ちっ」
「ちって言った! 刺す気だったよこのロボ!? ていうかなにその手のでっかい電極!?」
「気のせいです」
気のせいとか言いながらヒナタは巨大な電極を投げ捨てた。隠す気ゼロじゃん。
「マスター、掃除完了です。ぴっかぴかになりましたと宣言するヒナタです」
「ん? ……おお、耳がすっきりしてる!」
「奇跡とはこのことを言うのですね」
奇跡が起きないと無事じゃない耳掃除なんて聞いたことない。
「過程はともかく、耳掃除してくれてサンキュな。もう頼まないけど」
「マスターの感謝を確認。と同時に、“モウタノマナイケド”というノイズも確認。ノイズを記憶から消去」
なんて都合のいいロボなんでしょう。
「マスターの望みを叶えられたヒナタは、素晴らしいアンドロイドだと自画自賛します。自画自賛モード発動。偉い偉い」
自分で自分の頭をなでる変なロボ。表情は変わらないが、どこか満足そうだった。
「変なのでやめなさい。なでなでくらい、俺がやってやるよ」
むっくら起き上がり、ヒナタの手を止めてから頭をなでる。
「あ……」
ほんのり、ヒナタの頬に朱が差す。
「へぇ、そんな機能はあるのな。表情もつけりゃいいのに」
「機能……? 何の事か、ヒナタには理解不能です。マスターの伝達能力は赤子未満と断言します」
「断言すなっ! 頬が赤くなる機能があるんだなって言ってんだよ」
「そんな機能、ヒナタには搭載しておりません。脳の障害により、マスターにはそう見えているだけと判断します」
「イチイチ人を障害者扱いすなっ! 実際赤いんだよ、おまえのほっぺ」
そう言いながら、ヒナタのほっぺをつんつんする。やーらかい。
「ひゃっ」
ヒナタの口からやけに甲高い、似つかわしくない可愛らしい声が飛び出した。
「……ひゃっ?」
「気のせいです。ヒナタはそんなこと言ってません。マスターの耳はヒナタのドリル耳掃除により粉砕され、正常に機能していないと思われます」
「なんだよドリル耳掃除って! 掃除成功したんだろーが! 粉砕されてたら聞こえてねーっての!」
「うるさいです。細かい事を気にする男は女性にもてないと思うヒナタです。……もっとも、マスターはそんなものに関係なく、女性と縁がなさそうですが」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「……マスターの仮定情報を確定情報に変更。想像通り、マスターは女性に縁がない。記録。完了」
俺の悲しい個人情報がヒナタに記録されてしまった。
「ああもう知らんっ! 俺は部屋で寝る!」
「不許可。マスターはまだヒナタへのなでなでが完了しておりません」
「ここまで馬鹿にされてするかっ!」
「マスターの狭量さを垣間見たヒナタですが、それはそれです。一度なでなですると言った以上、何が何でもなでなでしてもらいます」
ここにすれ、と頭を差し出される。まったく、誰がするか!
「しないと、睡眠中に言った寝言を再生します」
「え……なに、俺なんか変なこと言ったの?」
「…………」
「なんか言えよう! 怖いじゃんか!」
「…………」
「分かった、分かったよ! なでりゃーいいんだろ、なでりゃ!」
半ばヤケクソ気味に、ヒナタの頭をなでる。
「もっと優しくしないと、再生します」
脅迫を受けたので、泣く泣く優しく頭をなでる。
「……あー、いい感じです。マスターは何をやってもダメな超ダメ人間ですが、なでなでが上手なので嫌いじゃないです」
「いや、他にも多少は取り得あると思うが。さすがになでなでだけじゃないだろ」
「ぐだぐだ言ってる暇があれば、もっと愛情を込めてなでるべきだと提案するヒナタです」
「もうしんどい」
「あと20時間頑張ってください」
「長い! 長すぎる!」
「やれやれ、マスターはひ弱ですね。根性なしなマスターなので、20分くらいで我慢します」
目を閉じてなでなでを受ける無表情なロボを撫で続ける俺、という奇妙な構図のまま、数十分過ごす。
「おい、もういいだろ? 充分に労わったと思うが」
「……にゅ~」
ヒナタの口から間延びした、似つかわしくない可愛らしい声が飛び出した。
「にゅー?」
「……にゅ~」
いかん、なですぎてヒナタがおかしくなった! なんか口がωな感じになってるし!
「まあいっか、可愛いし」
「……にゅ~」
にゅーにゅー鳴き続けるヒナタをしばらく眺めてた。程なくしてから元に戻ったヒナタにそのことを伝えると、
「超気のせいです。ヒナタはそのような言語扱いません。記憶から抹消してください。忘れないと抹殺します」
と、真っ赤になりながら脅迫してきた。怖かったけど、ちょっと可愛かった。
「マスターが自身の耳孔を棒状の凶器で貫こうとしている現場を目撃。とてもよい光景なので、録画しておきましょう」
奥で家事をしていたアンドロイド、ヒナタがやってきて嫌な事を言う。
「違う。これは耳掃除と言って、耳を掃除してるの。貫こうとはしてない」
「じゃあ貫いてください」
「なんで!?」
「そうすれば、きっと胸がすく思いとやらを感じられるに違いないという確信にも似た思いがするヒナタなのです」
こいつは俺をサポートするためのアンドロイドなんだけど、どうも俺を小馬鹿にしている節がある。
「もういい。出てけ。俺は静かに耳掃除したいのだ」
「それなら、ヒナタがしてあげます」
「え、マジ!? やたっ、鉄面皮の皮肉娘とはいえ、一応は女なので膝枕の耳掃除に憧れる思春期の青年としては嬉しい感じ! やってやって!」
「お任せください、マスター。このような感じで行います」
耳かきを渡すと、ヒナタは視認できないほどの速度で何度も虚空を突いた。
「その速度でされると、一緒に脳まで掃除されそうですが」
「大丈夫、一瞬で仕留めて見せます」
「仕留めんな! 誰も殺してくれなんて頼んでない! 耳掃除してほしいの、耳掃除!」
「面倒ですね」
「おまーがしてやるって言ったんだろーが!」
こいつといたら脳の血管切れそう。
「マスターの血圧が160に急上昇。少し危険だと報告します」
「えっ、そんな機能まであるのか? すごいな、ロボだけあって機能が充実してんだな」
「まぁ、カンですが」
「…………」
こいつ嫌い。
「どうしました、マスター。これほど綺麗で聡明、完全無欠なアンドロイドが側にいるというのに不機嫌そうですね」
「おまいが言うところの美点全てが、根性悪ひとつで消されるけどな」
「美点がない人間は言うことが違いますね」
こいつすごく嫌い。
「も、いい。自分で耳掃除するから、耳かき返して」
「否定。ヒナタの仕事を取らないでください。ヒナタが行います」
「ダメだっての。おまいがすると、脳みそまで一緒に掃除するだろうが」
ヒナタの持つ耳かきを取ろうと手を伸ばすが、ガードされ奪えない。
「大丈夫です、ヒナタを信じてください。マスターの信じるヒナタを信じてください」
「おまいのことなんて1mmたりとも信じてねーっ! そんなパクリ名セリフ言われても心動かねーっての!」
叫びながら耳かきを引っ張るが、女の力とは思えないほどの力で握られており、取れない。
「ぐぎぎ……おまえ、すげー力だな。かの有名な妖怪、ゴリラ女か?」
「アンドロイドですので、多少は力持ちです。が、マスター相手でしたら普通の女性程度の力で充分でしたね」
「あっ、カッチーンと来たぞ! 今のセリフに男としてのプライドが刺激されたぞ! もー何が何でも奪ってやる!」
「ヒナタの唇を、ですか。マスターは気持ち悪いですね」
「言ってねーっ! 気持ち悪い言うなっ! 誰がおまいみたいな性悪ロボ子とキスしたいなんて思うか!」
「…………」
ヒナタは無表情なまま耳かきをぐいっと引っ張った。すると、耳かきを掴んでいた俺は、釣られた魚のごとく空中を飛んでいた。
「おや? どうして俺は空にへぶっ!」
そのままの勢いで顔面から壁に激突する。したたかに鼻を打ちつけ、とても痛い。
「……ったあ~! 何しやがるこのポンコツ!」
鼻を押さえながらヒナタに向き直る。
「ヒナタのような見目麗しいアンドロイド相手にキスしたいと思わないなんて、マスターは異常ですね。一度脳洗浄をお勧めします」
「死ぬわっ! 何度も言うが、おまいみたいなのとロボと、どうしてキスなんてしようと思うかね。まぁ、マルチみたいな可愛いはわわっ娘なら考えないでもないけど」
「はわわ」
「…………」
「はわわ」
無表情のまま、淡々と“はわわ”という言葉を羅列するヒナタ。
「マスターは私の萌え動作に心を奪われた様子。必ずや、キスしようとするに違いありません。マスターの要望とは言え、とても嫌だと感じずにはいられないヒナタです」
「おまいは分かっちゃいない……何も分かっちゃいない! “萌え”とはいわば、心の泉から湧き出る雫! そんな模造品で俺を満足させるなんて不可能だ!」
「こういった話題になると、マスターは途端にハキハキ喋りますね」
「…………」
「とても憮然としている顔に満足したので、耳掃除してあげます。さ、横になってください」
その場に正座し、ヒナタは膝をぽんぽん叩いた。ここに寝ろ、ということらしい。
「耳を抉るのか?」
「それがマスターの望みとあらば、やぶさかではありません。掘削用ドリル取ってきますね」
「待って取りに行かないで抉るのノー! 普通にしろ、普通に! いいか、痛いこと禁止だぞ! 泣くからな!」
恐る恐るヒナタの太ももに膝を乗せる。うっ……こいつ、ロボのくせに人みたいに柔らかいな。ふにふにしてる。
「……マスター、ヒナタの太ももに顔をこすりつけるのはおやめください」
「しっ、してないぞお、俺はすりすりなんてしてないぞお!?」
本当はしました。気持ちよかったです。
「おかしいですね。マスターの表情、声の調子、発汗、動悸、全ての要素が嘘と告げています」
「なっ、何ぃっ!? そ、そんなことまで分かるのか!?」
「まぁ、カンですが」
なにこの適当な機械。で、なんで俺は何度も騙されるのか。
「しかし、マスターの反応を見る限り、ほぼ確実に嘘ですね」
「……ああそうさ、嘘さ! したさ、ヒナタのふっにふにの太ももにすりすりしたさ! ははっ、笑うなら笑えよ! 哀れな俺を笑うがいいさ!」
「ヒナタには表情を作る機能はないので、笑えません。なので、声だけで笑ってあげます。ははははは」
無表情ではははと声をあげるヒナタ。なんだかとってもムカツク。
「さて、それでは耳かきをします。神への祈りは済みましたか?」
「え、そんな危ないことなの?」
「ヒナタに搭載された最新式コンピュータによると、43%の確率で成功すると出ました」
「なにその低い数値!? やめて耳掃除やめて!」
「大丈夫、残りは勇気で補います」
「なんか聞いた事あるセリフですよ!? ていうかそこまでして耳掃除してほしくないしやめてやめてやめて!」
「がががーがががーがおがいがー」
「人が生きるか死ぬかの瀬戸際にへったくそな歌を歌うとな!?」
「…………」
「おや、機嫌を損ねましたね? 耳かきの動きが急に乱雑になりましたよ? ていうかホントすいませんやめてください死にますもう死にますからひぎゃあああ!」
あまりの恐怖に気絶。
「……マスター、起きてください。マスター、起きてください」
「…………」(気絶中)
「起きないと、脳に電極を刺して強制的に起こします。3、2、1」
「起きた!」
「……ちっ」
「ちって言った! 刺す気だったよこのロボ!? ていうかなにその手のでっかい電極!?」
「気のせいです」
気のせいとか言いながらヒナタは巨大な電極を投げ捨てた。隠す気ゼロじゃん。
「マスター、掃除完了です。ぴっかぴかになりましたと宣言するヒナタです」
「ん? ……おお、耳がすっきりしてる!」
「奇跡とはこのことを言うのですね」
奇跡が起きないと無事じゃない耳掃除なんて聞いたことない。
「過程はともかく、耳掃除してくれてサンキュな。もう頼まないけど」
「マスターの感謝を確認。と同時に、“モウタノマナイケド”というノイズも確認。ノイズを記憶から消去」
なんて都合のいいロボなんでしょう。
「マスターの望みを叶えられたヒナタは、素晴らしいアンドロイドだと自画自賛します。自画自賛モード発動。偉い偉い」
自分で自分の頭をなでる変なロボ。表情は変わらないが、どこか満足そうだった。
「変なのでやめなさい。なでなでくらい、俺がやってやるよ」
むっくら起き上がり、ヒナタの手を止めてから頭をなでる。
「あ……」
ほんのり、ヒナタの頬に朱が差す。
「へぇ、そんな機能はあるのな。表情もつけりゃいいのに」
「機能……? 何の事か、ヒナタには理解不能です。マスターの伝達能力は赤子未満と断言します」
「断言すなっ! 頬が赤くなる機能があるんだなって言ってんだよ」
「そんな機能、ヒナタには搭載しておりません。脳の障害により、マスターにはそう見えているだけと判断します」
「イチイチ人を障害者扱いすなっ! 実際赤いんだよ、おまえのほっぺ」
そう言いながら、ヒナタのほっぺをつんつんする。やーらかい。
「ひゃっ」
ヒナタの口からやけに甲高い、似つかわしくない可愛らしい声が飛び出した。
「……ひゃっ?」
「気のせいです。ヒナタはそんなこと言ってません。マスターの耳はヒナタのドリル耳掃除により粉砕され、正常に機能していないと思われます」
「なんだよドリル耳掃除って! 掃除成功したんだろーが! 粉砕されてたら聞こえてねーっての!」
「うるさいです。細かい事を気にする男は女性にもてないと思うヒナタです。……もっとも、マスターはそんなものに関係なく、女性と縁がなさそうですが」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「……マスターの仮定情報を確定情報に変更。想像通り、マスターは女性に縁がない。記録。完了」
俺の悲しい個人情報がヒナタに記録されてしまった。
「ああもう知らんっ! 俺は部屋で寝る!」
「不許可。マスターはまだヒナタへのなでなでが完了しておりません」
「ここまで馬鹿にされてするかっ!」
「マスターの狭量さを垣間見たヒナタですが、それはそれです。一度なでなですると言った以上、何が何でもなでなでしてもらいます」
ここにすれ、と頭を差し出される。まったく、誰がするか!
「しないと、睡眠中に言った寝言を再生します」
「え……なに、俺なんか変なこと言ったの?」
「…………」
「なんか言えよう! 怖いじゃんか!」
「…………」
「分かった、分かったよ! なでりゃーいいんだろ、なでりゃ!」
半ばヤケクソ気味に、ヒナタの頭をなでる。
「もっと優しくしないと、再生します」
脅迫を受けたので、泣く泣く優しく頭をなでる。
「……あー、いい感じです。マスターは何をやってもダメな超ダメ人間ですが、なでなでが上手なので嫌いじゃないです」
「いや、他にも多少は取り得あると思うが。さすがになでなでだけじゃないだろ」
「ぐだぐだ言ってる暇があれば、もっと愛情を込めてなでるべきだと提案するヒナタです」
「もうしんどい」
「あと20時間頑張ってください」
「長い! 長すぎる!」
「やれやれ、マスターはひ弱ですね。根性なしなマスターなので、20分くらいで我慢します」
目を閉じてなでなでを受ける無表情なロボを撫で続ける俺、という奇妙な構図のまま、数十分過ごす。
「おい、もういいだろ? 充分に労わったと思うが」
「……にゅ~」
ヒナタの口から間延びした、似つかわしくない可愛らしい声が飛び出した。
「にゅー?」
「……にゅ~」
いかん、なですぎてヒナタがおかしくなった! なんか口がωな感じになってるし!
「まあいっか、可愛いし」
「……にゅ~」
にゅーにゅー鳴き続けるヒナタをしばらく眺めてた。程なくしてから元に戻ったヒナタにそのことを伝えると、
「超気のせいです。ヒナタはそのような言語扱いません。記憶から抹消してください。忘れないと抹殺します」
と、真っ赤になりながら脅迫してきた。怖かったけど、ちょっと可愛かった。
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