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2024年11月23日
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【猫を初めて触るツンデレ】

2010年05月09日
「なぁタカシ。聞いた話によると、猫を飼い始めたそうだな」
 昼休み、飯をもそもそ摂っているとみことに話しかけられた。
「ああ、そうなんだ。もう、もふもふでふかふかで鼻が濡れてて可愛いぞ~。なでるたびに発狂しそうになる」
「そ、そうか。……実は、その、私は猫が少し好きでな。よかったら見せてくれないか?」
「……おまえが猫好き?」
「す、少しだ少し! それほどではない!」
「……それほど、ねぇ」
「も、もうよい! おまえなんかに頼んだ私が馬鹿だった!」
「あー待て待て、……実は、うちの猫は娘さんに撫でられるのが好きなんだ。よかったらそのうち家に来て遊んでやってくれないか?」
「そ、そうか! 仕方ないな、遊んでやるか!」
 手のひらを返したように破顔するみことに、俺はそっとため息をついた。

「な、なぁ、どんな猫なんだ? 可愛いか? 噛んだりしないか?」
「……その質問三回目。ちったぁ落ち着け」
 早速今日遊びたいと言うみことを連れ、俺は自宅への帰路をだらだら歩いていた。
「う……すまぬ。恥ずかしながら、猫を触るのは初めてのことで……幾分緊張しているのかもしれん」
「……みことが緊張。わはははは!」
「なっ、なにが可笑しい!」
「くっ、くくくっ……いや、悪ぃ悪ぃ。ちょっとな、普段のおまえの言動からは信じられない言葉だったんで」
「……ふん。どうせ私は心臓に毛が生えてるほど豪胆だと言いたいのだろう?」
 少し拗ねたように口を尖らすみことに、俺は笑って言った。
「ちげーよ。らしくないけど、女の子っぽくて可愛いって言いたいの」
「だっ、だだ誰が可愛いだ、誰が! 訳の分からんことを言うのはよせ!」
「お、ぼちぼち着くぞ」
「私の話を聞けッ!」
 夕焼けに負けないくらい顔を赤くしてるみことと一緒に玄関をくぐる。
「にゃー」
「お、出迎えご苦労さん」
 ぐるぐるとノドを鳴らす猫を抱え、自室へ向かおうとするがみことが着いてこない。
「どした? 俺の部屋はこっちなんだけど……」
 みことは猫をじっとみつめ、固まったまま動かないでいた。
「これは……可愛いな」
 ほぅ、と濡れた息を漏らす。気のせいか、目が潤んでいるような。
「感動するはいいけど、さすがに玄関先で遊ぶのは勘弁な。俺の部屋に来い」
「わ、分かっている! 偉そうに指図するでない」
 一挙一動を見逃さないためか、猫をじっと見つめたままみことが俺についてくる。猫が怯えたようににゃあと鳴いた。
「んじゃ部屋行くけど、途中でっぱりがあるからそこでこけんなよ」
「……ああ」
 分かってんのかなぁ、ホントに。まぁいいや。
 俺はにゃーと鳴く生き物を抱えたまま部屋へ向かった。
「わきゃ!?」
 変な鳴き声がした。
 案の定、みことが気持ちのいいこけっぷりを発揮していた。パンツ全開、白さが眩しい。
「う、いたた……なんでこんなところにでっぱりがあるんだ?」
「ああ」
「まったく……先に言っておいてくれ」
「ああ」
「……貴様、どこを見ている?」
「ぱんつ」
「き、きき貴様ッ! 乙女のパンツを見るとは何事だッ!」
 しまった、素直さが仇に。
「まぁなんて言うか、その、ナイスパンツ」

 顔面を腫れさせながらも、どうにか自室に着く。猫を放すと、慣れたようにベッドに飛び乗った。
「はい、これが俺の部屋。部屋の持ち主はただいま顔が痛いけど、素敵だろ?」
「汚い。掃除したらどうだ」
「面倒なのです」
「はぁ……まったく、タカシらしいな」
「お褒めに預かり恐悦至極」
 肩をすくめてから、みことは猫のそばに寄った。そして、恐る恐る手を伸ばす。
「はぁ……はぁ……」
「みこと、鼻息荒いぞ」
「うるさい!」
 みことの大声に怯えたのか、猫が俺に飛びついてきた。
「あ……」
「おーよしよし。怖かったな」
 俺の胸でにゃーと鳴く猫。
「ず、ずるいぞ! 私にも抱かせろ!」
「ずるいと言われても……猫が勝手に来るんだから仕方ないじゃないか」
 猫のノドをくすぐると、ごろごろと気持ちよさそうにノドを鳴らした。
「あ、ああ……私も、私も撫でたい」
「はぁ……ほれ」
 俺は猫を持ち上げ、みことの前に晒した。
「これなら逃げないだろ。安心してなでろ」
「み、みくびるな! 私一人でこの程度完遂できる!」
「そうか、なら」
「だ、だが、貴様がどうしてもと言うならやってやらんこともない」
「…………。どうしても」
「そっ、そうか! ……では、いざッ!」
 過剰に気合を入れ、みことが震える手を猫の頭にかざす。
「みことみこと、力入りすぎ。握りつぶすつもりか」
「うっ、うるさい! わかっておる! ……はふー、はふー」
 目が血走ってて鼻息荒すぎる。怖い。
 俺の恐怖を感じ取ったのかそれとも動物的本能が察したのか、猫が俺の手から逃れぴゅーっと部屋から出て行ってしまった。
「……き、き、貴様ッ! どうしてくれるッ!」
「俺のせい!?」
「ええいうるさい! 全部貴様のせいだ! こうなったら、触れるようになるまで貴様の家に通うからな! 拒否権はない! いいな!」
 有無を言わさぬ物言いに、俺はこくこくと壊れた人形のように頷くのだった。

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